がんのリスクが低下
夕食は午後9時までに,2時間以上経ってから就寝を!
公開日:2018/08/08
Timing of Dinner and Bedtime Tied to Increased Cancer Risk
Pam Harrison / Medscape 2018/7/25
午後9時までに夕食を済ませ、食事から2時間以上経ってから就寝することは、乳がんと前立腺がん両方のリスクを有意に低下させることがスペインの集団ベースの研究で示唆された。
これら2種のがんは、夜間シフト勤務との関連性がすでに示されている。
「本研究では、夜勤で見られるほど極端ではない、概日リズムで制御されている睡眠や食事のタイミングの変化が、長期的な健康への影響と関連し、世界で最も蔓延しているがんのリスクを増大させていることを示唆している」と治験責任医師らは述べている。
「これらの所見により、食事とがんの研究において概日リズムを評価する重要性が浮かび上がった」と医師らは付け加えている。
スペイン・Barcelona Institute for Global Health(ISGlobal)のManolis Kogevinas氏を筆頭とする著者たちは、過去の栄養とがんに関する研究においては、食べるタイミングよりも食物の種類(例:果物や野菜など)ならびに食事の摂取量に焦点を置いていたと述べている。
「夕食を早めの時間(午後9時前)に取り、夕食から就寝までの時間を長め(2時間以上)に空けていた被験者は、午後10時よりも遅くに夕食を取り、夕食から就寝までの時間が短かった被験者に比べて複合的ながんリスクが約25%低下した」と治験責任医師は記している。
この結果が確認されれば、「夕食の時間が遅い南ヨーロッパなどの文化において、この影響がとくに重大となりうる」と、Kogevinas氏は追記している。
本研究論文は、7月17日付International Journal of Cancerオンライン版に掲載されている。
この調査結果は、2008〜13年までの間、スペインの12地域で実施された集団ベースの症例対照研究であるMCC-Spain試験から得られたものである。
夜勤経験者を除外した後、乳がん患者1,205例および前立腺がん患者621例を対象として解析がなされた。
ほかに、スペインの同地域にあるプライマリケア施設からランダムに選んだ女性1,321人および男性872人を対照群とした。
また、被験者のクロノタイプ(朝型か夜型のどちらか)と、世界がん研究基金/米国がん研究協会(WCRF/AICR)のがん予防勧告にどの程度従っているかという情報についても評価した。
乳がんと診断された女性の約27%は生活習慣が健康的で、それがWCRF/AICRスコアにも反映されており、対照群の女性においてはその割合が31%であった。
前立腺がんと診断された男性と対照の男性被験者の間にも、同様の差がみられた。
「夕食(メインの夕食)から就寝までの時間を延ばすことで、がんのリスクは減る」と、Kogevinas氏らは報告している。
たとえば、夕食から2時間以上おいて就寝した被験者において、乳がん、前立腺がんを合わせたがんのリスクは20%低減した。
前立腺がんでは、乳がんよりもその効果が「わずかに明らか」であった。
同様に午後9時までに食事を済ませた場合も、午後10時以降に夕食を取った場合と比較して両種のがんのリスクが約20%低減したが、こちらもまた乳がんよりも前立腺がんのほうが、効果がわずかに明らかであった。
本研究では、2種のがんとクロノタイプとの関連性について評価し、朝型の人にとっては夕食から就寝までの時間を長く取ることが、最も予防効果が高いということを確認した。
朝型では、就寝まで2時間以上ある人において両がんのリスクが34%低減したのに比べて、夜型ではたった14%であったと論文には記されている。
予想を裏切らず、「がん予防対策をきちんと守ることが乳がん予防効果と関連し、対策をあまり守らなかった場合との差が出ることとなった」と筆者らは認めている。
この効果は、前立腺がんではあまり顕著でなかった、と彼らは加えた。
その上、がん予防勧告をきちんと実行した場合、夕食を取って2時間以上経過してから就寝した人では両がんのリスクが35%低減し、勧告にあまり従わなかった人でその割合はほんの10%であった。
ISGlobalの共同執筆者であるDora Romaguera氏は、食事のタイミングがどのように乳がん、前立腺がんのリスクに影響を及ぼすかを明らかにするには、ヒトでのさらなる検討が必要であると注意喚起している。
食行動
今回の結果に関してMedscape Medical Newsからコメントを求められたカリフォルニア州バーバンク・米国がん協会のMark Guinter氏は、食事のタイミングや頻度を含む食習慣の研究や、それらがいくつかのがんリスク要因および結果とどのように関連しているかには、長年関心を持っていたと述べている。
「私は以前、女性の過体重および肥満と朝食の摂取を検討する研究(未発表)に関わっていた」と、Guinter氏は詳しく述べた。
さらに、「朝食を取らない、あるいは朝食を毎日取る女性は、週に3〜4日朝食を取る女性よりも過体重や肥満になりにくいことが示された」と同氏は述べている。
また、同氏は、同試験で5年間追跡したところ、朝食をまったく取らない、または朝食を必ず取る女性は過体重や肥満になりにくいことが示された、と加えた。
MCC-Spain試験で得られた結果に関して、Guinter氏は、個人レベルでリスク因子を分析することが重要であり、国民全体がどのように行動するのかには関係ないだろう、と注意を促している。
動物における試験からは、摂食のタイミングが概日リズムに関わる遺伝子発現に影響しうることが示唆されている、と同氏は言った。
「こうした概日リズムの乱れは、遺伝子がどのように発現するかに依存して、害にもなり、また保護的にもなりうる」とGuinter氏は説明している。
「しかし、それらの遺伝子が発現される1つの手段として、全身性炎症の増大がある」と同氏は続ける。
「そこで、食事の摂取が概日リズムに影響し、それに続き日々の生理学的プロセスが影響を受けるという仮説は絶対に妥当である」と、同氏は述べている。
Guinter氏は、午後9時までに夕食を済ませ、夕食が終わる時間と就寝時間までの間を2時間取ることを勧めるのは時期尚早であると指摘した。
しかしながら、同氏は「これは関心の高い領域である」と言う。
「願わくは、これから結果が積み上がっていき、それを用いてさらにわれわれが研究を進め、生活習慣の改善とがん予防に役立つ勧告を導き出せるような研究がもっと実施できたらと思う」と述べた。
ISGlobal is supported by La Caixa Banking Foundation. The authors and Dr Guinter have disclosed no relevant financial relationships.
Int J Cancer. Published online July 17, 2018. Full text
Medscape Medical News2018
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2018年09月03日
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