「テクノデリック」(1981年)
(初回盤のジャケット)
a.「前へならえ」「右向け右」「左向け左」「休め」「気をつけ」「回れ右」「腕を胸の前に上げて痙攣(ケイレン)の運動」、さあオマエもやれ、
b.「痙攣の運動」ってどうやるんすか、それにオマエとはなんすか、
a.むかしこの曲が、流行ってたころ、中学生の家庭教師をしてて、この「TAISO」って曲がクラスで流行ってるって聞いて驚いたことがある、
b.なんで驚いたんすか、
a.この「テクノデリック」ってアルバムはYMOの中でも難解なアルバムとして有名だから、
b.難解といえば、レッド・ツェッペリンの「プレゼンス」同様、口ずさめるような歌がほとんど入ってない、コトバをしゃべる延長のような声、この「TAISO」でもわざと拡声器つかって生の声を潰すようにしてる、
a.確かに変なアルバムでなあ、アルバムの出だしから変なんだ、
b.直訳すると、「これは私が今までに食べたパンの中でもっと醜 (みにく) いに違いない」、訳わかんないっす、
a.いきなり奇妙なパンの話から始めるとは、YMOもなかなかやるなあ、
b.感心してる場合ではありません、こんなアルバム売れるんすか、熱心なファンはみんなCDに買い換えてるし、YOUTUBEじゃフルアルバムただで聞けるし、音楽も分かりづらいし、
a.いや売れなくていい、ただ、これを知らない若い世代にこのアルバムのすごさ、素晴らしさが少しでも伝われば、それでいいのだ、
b.なにがスゴいんすか、
a.レッド・ツェッペリンの「プレゼンス」と同じ事が当てはまるけど、天才的なミュージシャンたちが集まってアルバムを作るあいだに、ひとつかふたつ必ずとんでもない作品を作り上げてしまうことがある、YMOのばあいは、この「テクノデリック」とその前の「BGM」、
b.どちらも、難解そうだなあ、うす暗いしなあ、
a.そう、リスナーを喜ばせる音楽というより、自分らの納得できる音を追求したらこうなったっていうようなアルバム、
b.リスナーとしては爆発的に売れた「テクノポリス」や「ライディーン」の延長でやって欲しかった、
a.興行的にもその路線が儲かることは明白、
b.それなのに、こんな薄暗く分かりにくいアルバムを作っちゃった、なんでですか、
a.なんでやろ、そういえば、考えたこと無かった、
b.「テクノデリック」なんて出だしからいきなり薄曇(ウスグモ)りのうっとうしいイメージ、やたらドラムの無機的な響きが強調されてるし、コトバにならないようなタクシー無線のノイズみたいの入ってるし、
a.57秒から聞こえるよな、「ビ〜ヨン、ビヨン」って、なんだろうなあ、今聞いてもスゴいなあ、
b.なにがスゴいんすか、
a.行くとこまで行った音、もう後(アト)がないんだ、
b.後がないって?
a.だれも真似できないとこまで行っちまったんだ、本人たちまで含めて、もう二度とこれほどの独創性は実現しない、そういったところがスゴいんだ、
b.じゃあこの「テクノデリック」もその前の「BGM」と合わせて、空や雲、山や川みたいに成っちゃったんすか、
a.そうともよ、ツェッペリンの 「プレゼンス」 と同じように、自然物に近い存在、そこに残り続ける城壁みたいな、そんなレベルに行っちゃったんだ、
b.それは良いことなんすか、
a.こういうリスナー度外視の作品はこの上なく取っつきにくいから、とにかく慣れるしかないんだ、こっちが辛抱(シンボウ)強く合わせていくというか、すると段々、波長が合ってきて、彼らが何と向き合ってるか分かってくる、
b.するとどうなるんすか、
a.取っつきにくいアルバムだけど、人間の創造力の素晴らしさが感じ取れるようになる、それは良いとか悪いとか快とか不快とかいうレベルを超えて、やはりスゴとしか言えない世界、
b.何に向かってるとかいう訳じゃないんすか、
a.そう、日本一になろうとか、世界的なスターになろうとか、そういう生臭いプロモート(興行的な売り上げ)の世界じゃなくて、ただひたすら音楽に向き合う姿、たとえばエアロスミスのアルバムで 「Done With Mirrors」 がいちばん好きなのは、そういうひたむきさが感じ取れるからなんだ、余計なモノが入ってない、だからすっと入っていけるんだ、ミュージシャンのココロへ、
b.そういえば、ベートーベンの最高傑作「ミサソレムニス」の楽譜にもそんな走り書きがありました、
a.「ココロから出て、ココロへ向かえ」、そんな意味だったなあ、英語でいうとHeart to Heart、
b.「モノを運ぶんじゃない、ココロを届けるんだ」、
a.なんだか、宅急便のCMみてえだなあ、じゃあそろそろ、おあとがよろしいようで・・・
YOUTUBE から「テクノデリック」(全曲入ってます)
http://www.youtube.com/watch?v=k4S7a3hK6MA
小中学校でもう一度、流行してほしい「TAISO」は22分12秒から、
「どうしてもCDがエエんじゃ」っていう志 (こころざし) の高い君にはコレだ!
しっかり聴き込んで立派なアーティストになってくれたまえ!
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