加計学園系列の千葉科学大で客員教授を務める加藤元氏(獣医学)/(C)日刊ゲンダイ
加計学園関係者が一刀両断「獣医学部新設など言語道断」
「加計学園」の獣医学部新設を認めるのか——。設置認可の可否を判断する大学設置・学校法人審議会が実習計画などが不十分だとして、判断を保留する方針を決めた。今月下旬の予定だった文科相への答申は2カ月程度延期される見込みだが、実は加計学園の内部からも異論が出ている。08年から加計学園系列の千葉科学大で客員教授を務める加藤元氏(獣医学)は、「獣医学部の新設なんてとんでもない話。むしろ今、必要なのは大学の数を減らすことですよ」と指摘する。どういうことなのか。
「現在、獣医学を学べる大学は日本に16校ありますが、世界の 最先端をいく米国と比べると、恐ろしいほどレベルが低い。
底上げを図るには、今の16校から多くても4校にまで減らし、1校あたりの教授陣のマンパワーと予算を4倍に増やし、獣医師の専門性を高めるカリキュラムを組む必要があります」
加藤氏は「どうしても大学を新設したいなら、全米獣医師会が設けた基準『AVMAスタンダード』をクリアするようなレベルの高い大学をつくらないと意味がない」と強調。学生1人に対して常勤の教授が1・2倍以上いること、羊、乳牛、馬などの動物が十分にいる環境があることなどがAVMAスタンダードの条件となっている。
「この基準を満たしている大学は日本に一つもありません。難関とされる北大や東大でさえクリアできていないのに、加計学園にクリアできるわけがないのです」
そもそも加計問題は日本の獣医師不足に端を発したものだったが、加藤氏によると、この前提がおかしいという。
「恒常的に不足しているのは所得が低い地方公務員の獣医師であって、都心の動物病院はいつも飽和状態です。大学を増やし、仮に獣医師を倍増させたところで、地方の待遇改善を図らない限り解決にはつながりません。ところが、安倍政権や加計学園は獣医学部を増やせばいいと考えているようです。私に言わせれば、極めて安易な発想だし、自分たちのエゴばかりで本末転倒です」
大学で獣医学部・学科は人気の学科の一つ。学生確保のため、新設を望む大学や自治体が多く、その中の一つが加計学園だった
「加計学園の初代理事長は、獣医学部新設を熱望しており、息子である現理事長も長い間、設置のために尽力してきました。そのことを、加計学園で客員教授を務めている私はよく知っていますが、やはりおかしいものはおかしい。政治家や地方自治体は獣医学・獣医療を本当に必要とする国民の立場に立って物事を考えるべきです」
(聞き手=本紙・岩瀬耕太郎)
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