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May 29, 2009
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カテゴリ:  *玄上八絹さん
玄上八絹さんの同人誌、『君棲む空に花びらの舞う』を読みました。
ルチル文庫『千流のねがい』の前日譚になる、美しい物語です。

祖父の容態が悪化し、神社を継ぐ為に実家に戻った征士郎は、神道系の中学を卒業したばかり。
祖父の介護をしつつ神主として懸命に勤める毎日でしたが、ある日、誰も居ないはずの場所で背中にどんぐりをぶつけられた事から始まって、玄関で脱いだ靴にどんぐりや松葉が詰め込まれていたり、上がり框の敷き布がぐっしょり濡れていたのを知らずに踏んでみたり、そんな嫌がらせが繰り返されるようになりました。
祖父に訴えても笑われるばかりで、でも、その後も幼稚な悪意が込められた仕打ちは止まず、堪りかねて自分の存在が迷惑かと祖父に詰め寄った背中に、またどんぐりがぶつけられました。
振り返ると、壁に思い掛けない隙間が出来ていて、そこからどんぐりが飛んできます。
出て来るよう祖父に促され、壁を開いて姿を現したのは、金の耳と金のしっぽのある‘狐の子’でした…

『千流のねがい』は、神の遣いである狐の‘人形’である凛と人間の颯太が恋に落ち、そして運命から開放される物語でした。
今作は、凛が棲む神社の先輩狐である鞘と、神社の神主の征士郎が、出逢い、反発と混乱と擦れ違いを経て、人間と狐の哀しい過去を乗り越え結ばれる様子が丁寧に綴られています。
『千流のねがい』で既に鞘の死は語られており、むしろ主人公となった分、悲嘆も深くはなるのですが、二人の恋に絶えず花々が降りかかりその濃密な想いが匂い立ち、決して悲恋ではない事を知らしめます。
月の零した雫の如き美々しい鞘と、静かな内に強さを蓄えた清々しい征士郎の、永遠に美しい恋の物語なのです。

まだ16歳の征士郎にしても、まだ幼体の鞘にしても、ただただ未熟なばかりです。
初々しい心は鋭利な部分を持ち、お互いも自らも傷付き合います。
涙と淋しさと、そして沸き立つ恋心が切なく、そして焦れったくてなりませんでした。
鞘の内にある哀しい記憶を知り、自分の想いを押し殺そうとして征士郎は凍える夜に佇み、そんな征士郎を案じ、過去の記憶が心臓を締め上げるのを承知で鞘は外へ出ようとします。
静かな雪の夜に、それまで内に篭めていた恋がとうとう外へ溢れ出ていく様子が鮮やかで、激しく熱い想いの体温を感じ、それが鞘の生命を永らえさせるのだと解りました。

実際、征士郎の想いは絶え間なく緻密に注がれ、短いだろうと予想され、鞘自身が諦めかけてもいたその生命に奇跡をもたらせました。
季節を綴り、花を追い、祈りを重ね、年月を共に過ごした美しい記憶は、避け難い運命が訪れても、奇跡に終りはありません。
征士郎の静かな慟哭に送られた鞘の魂は、永遠の自由を得て空を我が棲みかとして、晴れ晴れと征士郎を抱きしめている事でしょう。
ほんの束の間、二人で育てた凛が文字通り鞘の忘れ形見で、その後の征士郎を孤独にさせないのも、読者にとっても何よりの慰めです。
颯太と語り合う征士郎は、可愛い娘を嫁がせてほっとした父親のようで、空に向け凛の幸福を告げる姿に、しみじみと泣けました。

鞘の奇跡と凛の幸福によって、狐の哀しい運命は昇華されました。
あとは、発端の狐の悲劇が、読者としても避けられない物語となりました。
あとがきで、玄上さんは書かれるご意志を明らかにされていますが、これが悲劇と解っている以上やはり覚悟をしてしまいます。
恋によって胸を引き裂かれ、断末魔の苦しみを細胞に刻み込んだ凄まじい悲劇は、記憶した苦痛と恐怖に苛まれながら、それでも人を恋うる事をやめなかったその後の狐たちに、‘真実’が秘められているのではないかと思うのですが…

 『君棲む空に花びらの舞う』 2009年5月 27000Hz
   玄上 八絹





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Last updated  May 29, 2009 10:27:55 PM
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