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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在28位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在22位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在11位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在4位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在8位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在3位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在17位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在6位・消費者金融ずるずる日記(8/27予約、副本6、予約112)現在102位・パッキパキ北京(8/29予約、副本9、予約111)現在91位・転がる珠玉のように(9/05予約、副本7、予約87)現在79位・原爆裁判(9/11予約、副本?、予約133)現在129位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵・書いてはいけない日本経済墜落の真相:図書館未収蔵・金水敏『よくわかる日本語学』・闇の中国語入門・奪還 日本人難民6万人を救った男:・ぜんぶ、すてれば:延滞本返却後に予約する<予約分受取:7/07以降> ・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、8/06受取)・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、8/27受取)・パンとサーカス(8/28予約、9/01受取)・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、9/12受取)・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、9/22受取予定)**********************************************************************【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【消費者金融ずるずる日記】 加原井末路著、三五館シンシャ、2024年刊<「BOOK」データベース>より1990年代の半ば、30歳のときに足を踏み入れ、50歳で退職するまでの20年を私はこの業界ですごし、お金にまつわる悲喜こもごもを目撃した。私が在籍した期間は、消費者金融業界が栄華を極めてから、2010年の法改正施行を経て、没落していく年月でもあった。-本書にあるのはすべて私の実体験である。「お客を追い込む仕事」。サラ金社員が経験した、貸し手と借り手のお金の修羅場。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten消費者金融ずるずる日記【パッキパキ北京】綿矢りさ著、集英社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりコロナ禍の北京で単身赴任中の夫から、一緒に暮らそうと乞われた菖蒲。愛犬ペイペイを携えしぶしぶ中国に渡るが、「人生エンジョイ勢」を極める菖蒲、タダじゃ絶対に転ばない。過酷な隔離期間も難なくクリアし、現地の高級料理から超絶ローカルフードまで食べまくり、極寒のなか新春お祭り騒ぎ「春節」を堪能する。街のカオスすぎる交通事情の把握や、北京っ子たちの生態調査も欠かさない。これぞ、貪欲駐妻ライフ!北京を誰よりもフラットに「視察」する菖蒲がたどり着く境地とは…?<読む前の大使寸評>追って記入rakutenパッキパキ北京【転がる珠玉のように】ブレイディみかこ著 、中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりLike A Rolling Gem。大人の山あり谷ありライフを越えていけ!結婚するゲイの友人、職人魂を燃やす父、イギリスで、日本で、社会の底を支える労働者たちの人生劇場。泥くさい毎日を“宝石”に変える著者3年ぶりの最新エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(9/05予約、副本7、予約87)>rakuten転がる珠玉のように【原爆裁判】山我浩著、毎日ワンズ、2024年刊<商品説明>より日本初の女性判事・三淵嘉子が昭和三十年代に裁判官を務めた「原爆裁判」に焦点を当てた書き下ろし。原爆を巡るアメリカの闇を追及すると共に三淵嘉子の半生を紹介、さらに、世に名高い「原爆裁判の判決文」も付載した一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/11予約、副本?、予約133)>rakuten原爆裁判【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・デジタル朝日「好書好日」でめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.09.22
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図書館で『世界(2024年7月号)』という本を、手にしたのです。特集2「日本の中の外国人」が・・・気になるのです。そして、「中国製EVの排斥」「DV(デジタル・ビークル)競争」についても気になるのです。【世界(2024年7月号)】雑誌、文藝春秋、2024年刊<出版社>より【特集2】日本の中の外国人 日本に暮らす外国人は340万人を超える。働く現場は、小売、流通、介護、製造、建築、農業、漁業など多岐にわたる。だが、その法的地位は常に不安定だ。奴隷労働との批判が強かった「技能実習制度」に代わり、新たに「育成就労制度」が創設されるが、看板と実態には依然へだたりがある。容易に永住権取り消しができる入管法改正案も準備され、安定して日本で暮らす人々も生活をおびやかされている。難民の受け入れは依然として少なく、3回目以上の申請は強制送還が可能に。排外主義からくるヘイトにさらされる人々もいる。<読む前の大使寸評>追って記入iwanami世界(2024年7月号)自動車産業の潮流が語られているので、見てみましょう。p111~113<EV競争からDV競争へと向かう自動車産業:鶴原吉朗>■EVの販売台数に「陰り」 2024年に入り、世界でEVの販売台数がスローダウンしているという報道が目に付くようになった。 これまで、世界のEV化をリードしてきた欧州では、EVの販売台数が、2023年12月に、2020年以来初めて前年同月比マイナスになった。2023年12月にドイツのEV補助金が突然打ち切られたことや、フランスで中国からの輸入EVが補助金の対象から除外されたことなどが響いたと見られる。 米国では2023年の年初から年末にかけて対前年比のEV販売台数の伸びが低下し、2024年の1月と2月はついに対前年比マイナスに転じるなど、EV販売の失速が顕著だ。2023年にEV販売で世界トップだった米テスラは、2024年第1四半期の出荷台数が、コロナ禍で自動車販売が落ち込んだ2020年第2四半期以来、約4年ぶりのマイナスになった。(中略) 世界のEV販売台数の約6割を占める中国でもEVの成長率が鈍っている。2021年に前年比約160%増だった販売台数は、年々低下し、2024年の伸び率は20%程度になると中国汽車工業協会は予測する。その一方で、エンジンの付いたPHEV(プラグインハイブリッド車)の販売台数は2023年に約83%伸びた。 中国では2022年末でEVへの補助金が廃止になった一方で、自動車取得税が新エネルギー車(EV、PHEV、FCV(燃料電池車))では2025年まで免除されている。このため、EVよりも価格が安く、航続距離も長いPHEVの販売台数の伸びにつながっている。2023年の中国におけるEVの販売台数はPHEVに対して約2.5倍だが、今後同等になる可能性もある。■「補助金バブル崩壊」と「中国製EVの排斥」 ここまで紹介してきたように、世界でEVの成長率が鈍化、もしくはマイナスに転じている一つの要因は「補助金バブル崩壊」であるが、もう一つの要因が「中国製EVの排斥」である。 まず欧州では、前述のようにフランスが中国製EVを補助金の対象から外したことで、売れ筋だった中国製の割安のモデルに2023年12月から補助金が支給されなくなった。(中略) 米国では、欧州以上に中国製EVを狙い撃ちにした排斥が進んでいる。2022年8月に「インフレ抑制法(IRA)」が成立し、米国で生産されているEV以外は税額控除の対象から外されたほか、米国で生産しているEVでも、搭載するバッテリーに使用する部品や材料に厳しい制限が設けられ、中国ばかりでなく日本や欧州の多くのEVが税額控除の対象から外された。 しかし、それだけでは終わらなかった。2024年5月14日、バイデン政権は米国通商代表部(USTR)に対してEVやバッテリーの米通商法301条に基ずく対中追加関税の関税率を引き上げるように指示した。具体的には、中国製のEVに現在の4倍の100%、EV用を含むリチウムバッテリーに対しては現在の7.5%から25%に引き上げる。これは、欧州以上の中国製EV排斥政策と言ってよい。 日本でも2024年4月から、EV補助金の支給金額の算定方法が見直され、中国製EVの補助金額が少なくなった。従来の補助金額は航続距離など車両性能や機能を基に算定していたが、24年度からはメーカーの充電設備の整備状況や製造時のCO2排出量なども加味した。代表的な車種の場合で補助金額は、従来の65万円から35万円に減額された。■EV競争からDV競争へ このように、先進各国で進む中国製EVの排斥は、自国の自動車産業の保護につながる一方で、EVの普及を減速させると予想される。というのも、中国製EVは圧倒的なコスト競争力を備えており、中国製EVを排斥するということは、自国の市場から割安なEVを締め出すことにつながるからだ。 中国製EVの影響を除いても、欧米では当初の思惑ほどEVの販売が伸びていない。このため欧米の完成車メーカーはEVシフトのスローダウンを余儀なくされている。2030年までにすべての販売車種EV化を目指していたドイツの高級車メーカーのメルセデス・ベンツが、2024年2月の決算発表の場でこの計画の撤回を発表したほか、米フォードモーターも2025年に予定していた次世代EVトラックや3列シート大型EVの販売時期をそれぞれ延期した。一方でフォードはPHEVのラインアップを拡大する。 逆にいえば、現在はEVが「ブーム」の段階を過ぎ、地に足を着けた形で普及していく段階に入ったところだといえる。ガソリン車やディーゼル車、あるいはハイブリッド車といったカテゴリーと同様に、EVについても自分の予算や使い方などに合わせて最適なものを選ぶための選択肢の一つと考えるべきだ。『世界(2024年7月号)』1:埼玉クルド人コミュニティ
2024.09.21
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図書館で『走り続ける力』という本を、手にしたのです。おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪【走り続ける力】山中伸弥著、毎日新聞出版、2018年刊<「BOOK」データベース>よりノーベル賞科学者の「人間力」に迫る!iPS細胞による再生医療の実現に向け、京大iPS細胞研究所(CiRA)を率い、苦闘する日々…ノーベル賞科学者の栄光と挫折を、山中伸弥が自ら語る!周囲の証言を交え初めて描く、「人間力」の秘密。<読む前の大使寸評>おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪rakuten走り続ける力最後に永山悦子さんが説く「解説」を、見てみましょう。p201~205<解説:永山悦子> 山中教授の好きな言葉の一つに、「人間万事塞翁が馬」がある。人生における幸せや不幸は予測が難しく、不幸だと悲しんでいたことが幸せに、幸せと喜んでいたことが不幸に、いつ転じるか分からないのだから、安易に喜んだり悲しんだりするべきではないというたとえだ。 山中教授の人生は、まさにこの言葉通りといえる。iPS細胞ができるまでの道は平坦ではなかったし、これからの臨床応用が実用化するまでの道はさらなる困難が待ち構えているかもしえない。だからこそ、後輩たちや研究所の行く末、iPS細胞の行く末が頭から離れることがないのだろう。 一方、常々感じるのは、山中教授の基礎研究への思いの強さだ。「化学は驚きに満ちている。常識を覆したり、皆が信じていたことが違ったり、そういうことにワクワクする。私はそのワクワク感が大好きで研究者になった」と話す表情は明るい。 2018年4月、東京都内で開かれた新経済連盟の「新経済サミット2018」で、山中教授は人気ロックバンド「X JAPAN」のYOSHIKIさんとともに登壇した。そこで、科学と芸術の共通性が話題になったとき、山中教授は「私は『サイエンス=アート』だと思っている。YOSHIKIさんと同じように革新的なものを創造する作り手が科学者であり、科学者はアーティストだと考える」と話した。 神も想像していなかったに違いない「iPS細胞の発明」は、まさにアーティストの作品といえるのかもしれない。山中教授が続けて話したのは、基礎研究の魅力と研究環境の重要性だ。「私たちは、研究資金のために論文を書くのではなく、クリエイティブかつイノベーティブな仕事をするために論文を書ている。そのような基礎研究に没頭するためには、自由な時間が必要だ。それにもかかわらず日本には『失敗は恥』というような文化があり、失敗を許さない直線的な文化だと感じる。米国は円のような文化で、失敗も成功につながる過程の一環と考えられている。日本の文化も変わらなければならないのではないか」 自分自身の研究だけではなく、後に続く若手の研究も考えての発言のように聞こえた。だからこそ、iPS細胞研究を支援するための基金のPRにも自然と力が入るのだと感じる。 毎日新聞の連載コラムのタイトル「走り続けて」は、山中教授のアイデアだった。私たちもいくつか提案したが、「走り続けて」に対する山中教授の強い思いを感じ、決定した。今振り返ると、このタイトルにして良かったと思う。 思い返せば、2007年にヒトiPS細胞の作製の論文を発表した際の記者会見で、山中教授は「マラソンだとゴールが見えた感じで、再生医療研究が一気に進む可能性がある。でも日本がそのままテープを切れるかどうかは分からない」と語った。2012年にノーベル賞を受賞した翌日の記者会見では、「研究開発は本当にマラソンに似ている。マラソンの間も水分や栄養の補給が必要だが、今回のストックホルムにはそういった栄養補給のような意味があった」と話していた。山中教授の頭の中では、「研究」と「走ること」は重なっているようだ。 本書でも書かれているように、山中教授は、常にビジョンに向かって走り続けている。国内外のマラソンにも参加し、走り続けている。日々のランニングでも、耳に付けたイヤホンから流れているのは、音楽ではなく英会話のプログラムだ。「米国へ行くといまだに英語で苦労しているから、少しでもうまくなりたい」からだという。そのまじめさには感服するしかない。 私がインタビューした際、山中教授は「自分と同じ経験をした前任者はいない。CìRA所長の難しいところは孤独なところ」と明かした。そんな孤独感、iPS細胞研究への患者や家族の皆さん、社会からの大きな期待、そして研究所トップとしての責任を背負いながら、山中教授はビジョンと信念へ向かって今日も走り続ける。iPS細胞の生みの親として、CìRA所長として、先頭を走り続ける山中教授が見る風景を、これからも追いかけたい。『走り続ける力』2:素顔の山中伸弥:永山悦子『走り続ける力』1:臨床応用というゴール
2024.09.19
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図書館で『走り続ける力』という本を、手にしたのです。おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪【走り続ける力】山中伸弥著、毎日新聞出版、2018年刊<「BOOK」データベース>よりノーベル賞科学者の「人間力」に迫る!iPS細胞による再生医療の実現に向け、京大iPS細胞研究所(CiRA)を率い、苦闘する日々…ノーベル賞科学者の栄光と挫折を、山中伸弥が自ら語る!周囲の証言を交え初めて描く、「人間力」の秘密。<読む前の大使寸評>おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪rakuten走り続ける力「第二部 人間・山中伸弥」でジャーナリスト・永山悦子が見た山中先生を、見てみましょう。p89~96<第五章 素顔の山中伸弥:永山悦子>■信念の人「山中伸弥」という研究者に対する一般的なイメージはどんなものだろうか。世界で初めてiPS細胞を開発し、ノーベル賞を受賞した世界的な研究者であり、京都大iPS細胞研究所(CiRA)を率いるリーダー・・・。一方、山中さんを直接知る人々の意見を総合すると、「信念の人」というのが「人間・山中伸弥」を表現するうえで一番しっくりくるように感じる。 山中さんの信念が、研究者、職員、学生を併せて約600人にも上る組織であるCiRAと世界のiPS細胞研究を引っ張っているのだ。 幼い頃の山中さんは、町工場を営む両親のもとで育った。ラジオや時計を分解して遊ぶのが好きな子どもで、「壊しては元に戻せなくなって、母によく怒られた。研究者というよりも技術者の血の方が強かったかもしれない」と話す。中高一貫の大阪教育大附属天王寺中学・高校に進学し、数学と物理が得意科目だった。大学受験のときも生物はとらず、「(神戸大)医学部に入ってから高校レベルの生物を学んだ。娘が高校生のときに生物の問題を聞かれたが、難しくて『高校生はこんなことできなくてもいい』とごまかしたほどだ」と山中さんは笑う。 柔道やラグビーに打ち込んだ中学、高校、大学時代は骨折を繰り返し、それが整形外科医を志すきっかけになった。しかし、医師になってからは、父の死、そして治療法のない重い病気の患者たちに接して、「今の医療では治せない病気を治したい」と基礎研究を目指すようになる。米国に留学して体のさまざまな細胞や組織になる能力を持つES細胞(胚性幹細胞)に出会うと研究にのめり込んだ。 もう一つ、大きな出会いだったのが、留学先のグラッドストーン研究所のロバート・マーレー所長だった。山中さんが第二章の最後に紹介していたように、研究者として成功するために欠かせない言葉であり、山中さんの座右の銘ともいえる「ビジョン・アンド・ワークハード」をマーレー所長から教えられたのだ。 帰国後、米国時代とは違って研究がうまく進まなくなり、「PAD(ポスト・アメリカ・ディプレッション)、米帰国後うつ症候群」になったことは、山中さんの講演では恒例のエピソードだろう。「研究をやめて臨床医に戻ろうか」と落ち込んでいた1999年、奈良先端科学技術大学院大学の助教授のポストを得ることができた。 その際、研究室の大学院生を集めるために打ち出したのが、夢のような構想「患者自身の細胞を時計の針を逆回りさせるように受精卵のような状態に変化させ、ES細胞と似た細胞を作る」だった。 このとき山中さんは内心、「20年や30年はかかる。最終的にできないかもしれない。しかし、奈良先端科学技術大学院大学に拾ってもらった。一度死にかけたのだから何か面白くて難しいことをやろう」と考えていたという。また、120人の学生を約20の研究室で争奪する構図だったため、「一人も大学院生が来なくては研究にならない」(山中さん)という思いもあった。 この「夢」は、実現への道筋はまったく未知数だったものの、研究の方向性としては重要だった。当時、ES細胞を使った研究をめぐっては、ES細胞が受精卵から製作するため「命の萌芽を壊して作る」という倫理的な問題、さらにES細胞をもとに作った細胞や組織を患者に移植すると拒絶反応が起きてしまうという治療上の課題が指摘されていた。 これらの課題を解決する一つの方法として、クローン技術があったが、遺伝的に同一の個体を作り出すため「クローン人間」を生み出す恐れなど、さらに大きな倫理的な問題があり、技術もまだ確立していなかった。再生医療の実用化を願う難病患者にとって、ES細胞でもなく、クローン技術でもない使いやすい細胞は待望の存在だった。 その後、夢は現実になった。 山中さんはES細胞やクローン技術に関する過去の研究から、「ES細胞の特徴を維持するために欠かせない遺伝子が分かり、それを体細胞に送り込めば、ES細胞のような細胞を作れるはずだ」と考えた。「絶対無理と思われていることでも、理論的に正しければ必ず実現する」というビジョンを据え、遺伝子探しを始めた。公開されている遺伝子データベースを活用し、ES細胞で特異的に発現している遺伝子の候補を捜していった。 2004年までに24種類に絞り込まれ、その年に京都大へ移った後、24種類の中にiPS細胞を作り出すために必要な4種類の遺伝子が含まれていることを突き止めた。2006年にマウスの皮膚細胞からiPS細胞を製作することに成功したという論文を発表、翌年にはヒトの皮膚細胞からも製作に成功したと発表した。 マウスでiPS細胞を作ったという論文を発表した直後は、世界の研究者も疑心暗鬼だった。あまりにも簡単な方法だったからだ。山中さんが招待を受けて出席した米国での研究会後、夜に立ち寄ったバーで外国人の研究者が「たった四つの遺伝子でできるなんておかしい」と話す声が聞こえた。山中さんは「くやしかったが、実験データはきちんとそろっているからすぐに分かるはずだ」と考えたという。 その通り、すぐに世界的な競争が巻き起こり、ヒトiPS細胞を作ったという論文の発表は米国のチームと同着になった。これを受けて、哺乳類のクローン技術の第一人者として有名な英国のイアン・ウィルムット博士がヒトのクローン技術の研究を中止すると発表するなど、世界中に影響が及んだ。山中さんは後日、こう話している。「目の前にチャンスがあり、やるという選択肢とやらないという選択肢があるときには、基本的にはだいたいやる」。そんな姿勢が、iPS細胞を引き寄せたといえるだろう。 そして、2012年10月、山中さんが自宅で「ガタガタうるさかった洗濯機を直しているとき」、スウェーデンから携帯に電話がかかってきた。ノーベル医学生理学賞の受賞の連絡だった。英国のジョン・ガードン博士との共同受賞だった。山中さんはその年の12月、ストックホルムで開かれたノーベル賞の授賞式に、父章三郎さんの形見の腕時計をして臨んだ。式の前、「父がそこにいるつもりでメダルを受け取りたい。父が私を医者にしてくれた。今日は一緒に喜んでくれえるのではないか」と話した。■リーダーとして 山中さんに「ノーベル賞を授賞して人生が変わったか」と問うと、「自分の場合は、ノーベル賞よりもヒトのiPS細胞ができたことが人生のターニングポイントだった。それまでは研究者だったが、それからは仕事が変わった。ノーベル賞は、その流れが加速したという意味だったと思う」と答えた。 ヒトiPS細胞の作製が成功すると、動物であるマウスを使った2006年の論文とはうって変わって、臨床応用への可能性が一気に広がり、iPS細胞や再生医療の研究を巡る環境は激変した。 2008年に京都大の「物質―細胞統合システム拠点」に「iPS細胞研究センター」が設置され、2010年には単独の研究所としてCiRAが誕生した。CiRAは、基礎研究から臨床研究まで一貫して取り組む世界で初めてのiPS細胞に特化した研究所だ。山中さんは所長としてiPS細胞の研究と臨床応用の司令塔を担うことになった。ヒトiPS細胞ができるまでは、一研究室のトップとして研究の没頭し、若手研究者を叱咤激励する日々だった。そんな山中さんがより大きな組織を率いる「リーダー」となった。『走り続ける力』1:臨床応用というゴール
2024.09.19
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図書館で『身近な漢語をめぐる』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・漢字の蘊蓄、漢詩が述べられていて興味深いのである♪【身近な漢語をめぐる】 木村秀次著、大修館書店、2018年刊<「BOOK」データベース>より生活にいきづく漢語の知られざる魅力を探る。【目次】1 読みのすがた(字、茶ー字音のみの漢字/菊、蝶ー古訓と漢字音 ほか)/2 意味のうごき(青春(一)-漢詩における「青春」/青春(二)-明治文学の「青春」 ほか)/3 表現のはたらき(粛粛、蕭蕭ー畳語型の漢語オノマトペ/「深深」と「しんしん」-漢字表記と仮名表記 ほか)/4 文明とのかかわり(沸騰ー古代漢語の再生と比喩/蒸発ー蘭学者の造語 ほか)<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・漢字の蘊蓄、漢詩が述べられていて興味深いのである♪rakuten身近な漢語をめぐる冒頭の「Ⅰ 読みのすがた」で「熟字」(二つ以上の漢字表記の語)が述べられているので、見てみましょう。p48~50<時雨、紅葉 熟字訓(一)>■『万葉集』における表記の工夫『万葉集』(759)は約350年間にわたる4500首の和歌などを収める日本最古の歌集である。 片仮名も平仮名もまだ成立していない時代の編集で、すべて漢字を用いて日本語を写している。中国語に卓越した人なら、想いや考えを漢文で表わせる。しかし、和語の表現、とりわけ歌の発音・調べは伝えることができない。それを表わすために漢字の意味にかかわりなく音と訓によるたどり着いた。この「万葉仮名」は『万葉集』の表記方法の根幹をなしている。 ところが、別の方法もとられた。それは多様で、あらゆる工夫がなされているといった感じがする。 例えば、「はる(春)」を表わすのに漢字の意味とは無関係に音だけを借りた万葉仮名「波留」とするとともに、正訓(固定した普遍的な訓み)の「春」の漢字を用いたり、また「暖」によって、「はる」と訓ませたりしている。「あきかぜ」には万葉仮名の「安伎可是」とともに「秋風」、更には「冷風」と記したりしている。 こうした「暖」や「冷風」の「冷(あき)」などは正訓の「春」「秋」に対して、漢字の意味からの連想による臨時的な訓みで、「義訓」と称されている。他にも「寒(ふゆ)、五更、丸雪、去家、壮士、求食、私語」など類例は多い。 ■「熟字訓」とは この義訓につながるものの中に「熟字訓」がある。熟字(二つ以上の漢字表記の語)を、それぞれの漢字一字ずつ読まずに、全体をまとめて一つの和語に読むもので、現在よく用いられる熟字とその読みは「常用漢字表」の「付表」に収められている。「付表」の語を中心にいくつか挙げると、灰汁(あく) 小豆 (あずき) 伯父(おじ) 一昨年(おととし) 神楽(かぐら) 陽炎(かげろう) 鍛冶(かじ) 風邪(かぜ) 五月雨(さみだれ) 白湯(さゆ) 時雨(しぐれ) 竹刀(しない) 素人(しろうと) 松明(たいまつ)山車(だし) 黄昏(たそがれ) 以降略 これらの熟字は中国製が多いが、日本製のものもある。例えば、神楽、鍛冶、白湯、足袋、裸足などは日本で生まれた熟字で中国語には存在しないか、あっても一般的ではない。それぞれ意味を汲み日本で二字の漢字をあてたものである。 日中辞典によると、「鍛冶屋」は中国語では「鉄匠」、「白湯」は「白開水」(開水は中国語で湯)、「裸足」は「赤脚」や「赤足」と表現される。(中略) 中国の古典籍にある語でも、現代中国の口頭語として一般的ではないものもある。「松明」は「火把」とか「火炬」と表し、「風邪」は漢方医学の用語で現在一般には「感冒」あるいは「傷風」と表現している。また、「海苔」は中国では広く海藻を意味し、食品の「のり」は「紫菜」と言う。『身近な漢語をめぐる』2:茶の歴史『身近な漢語をめぐる』1:漢字の成り立ち
2024.09.18
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図書館で『身近な漢語をめぐる』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・漢字の蘊蓄、漢詩が述べられていて興味深いのである♪【身近な漢語をめぐる】 木村秀次著、大修館書店、2018年刊<「BOOK」データベース>より生活にいきづく漢語の知られざる魅力を探る。【目次】1 読みのすがた(字、茶ー字音のみの漢字/菊、蝶ー古訓と漢字音 ほか)/2 意味のうごき(青春(一)-漢詩における「青春」/青春(二)-明治文学の「青春」 ほか)/3 表現のはたらき(粛粛、蕭蕭ー畳語型の漢語オノマトペ/「深深」と「しんしん」-漢字表記と仮名表記 ほか)/4 文明とのかかわり(沸騰ー古代漢語の再生と比喩/蒸発ー蘭学者の造語 ほか)<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・漢字の蘊蓄、漢詩が述べられていて興味深いのである♪rakuten身近な漢語をめぐる冒頭の「Ⅰ 読みのすがた」で茶の歴史が述べられているので、見てみましょう。p7~10<茶の歴史>「茶」(チャ)も中国語の発音に基づく「字音」であり、また、一字の漢語である。辞典による異なりがあるが、『新字源 改訂新版』(角川書店)では、呉音ダ、漢音タ、唐音サで、チャは慣用音としている。 白川静『字通』(平凡社)は「茶は古い字書に見えず、その初文はおそらく「茶」であろう」という。「茶」は音「ト」で、「にがな」というキク科の多年草と、いわゆる「チャ」の二つをさす。解字辞典や漢和辞典によると、「にがな」と「チャ」の二つの植物を区別するために「チャ」の場合は一画減らしたものとし、一説にその時代を唐代とする。 日本の「茶」の歴史について、『日本大百科全書』(小学館)から関連部分を引用する。 喫茶の歴史のもっとも古いのは中国で、地理的に近いわが国には天平時代(729~749)にその風習が入ってきたようである。(中略) 805年(延暦24)伝教大師最澄が茶の種子を持ち帰り比叡山麓に植えたと伝えられ、806年(大同1)には弘法大師空海も茶の種子や茶を搗く石臼を持ち帰ったといわれている 日本に存在しないもので、名称もなく中国語音に基づいて「チャ」と読みならわすことになる。 帰国僧たちの持ち帰った茶は団茶(蒸した葉を石臼でついて固めたもの)であった。薬用の役割をもつ貴重品で、朝廷や寺院などでわずかに飲まれるにすぎなかったようである。日本の歴史書では『日本後期』弘仁6年の条に初めて現れる。 大僧都永忠、手自煎茶奉御。 永忠は唐に留学した僧。嵯峨天皇が唐崎に行幸した際、茶を煎じて奉った。西暦815年のことである。 同じ9世紀、嵯峨天皇は『凌雲集』に収める五言律詩の中で、詩を吟じつつ芳香の茶を搗き琴の調べに耳を傾ける、とうたい、菅原道真は『菅家文草』で、五言古詩「東方未眠 悶飲一杯茶」(仮中書懐詩)と詠む。茶の効用と道真の心境の一端をかいま見る思いがする。 日本で本格的な茶の栽培が始まるのは大分後れた12世紀後半であった。宋から帰国した臨済宗の開祖栄西は抹茶法を伝えるとともに種子を持ち帰った。譲り受けた、高山寺の明恵上人は栽培に取り組み、収穫した種子を全国各地に配って普及に努めた。これが後年の宇治、伊勢、狭山茶などの銘柄茶のもとをなしたという。 14世紀に入ると、茶は日本人の生活の中にとけ込み、中国の「家常便飯」に基づいて「日常茶飯(事)」という四字熟語まで生まれるに至った。『身近な漢語をめぐる』1:漢字の成り立ち
2024.09.16
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図書館で『走り続ける力』という本を、手にしたのです。おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪【走り続ける力】山中伸弥著、毎日新聞出版、2018年刊<「BOOK」データベース>よりノーベル賞科学者の「人間力」に迫る!iPS細胞による再生医療の実現に向け、京大iPS細胞研究所(CiRA)を率い、苦闘する日々…ノーベル賞科学者の栄光と挫折を、山中伸弥が自ら語る!周囲の証言を交え初めて描く、「人間力」の秘密。<読む前の大使寸評>おお 山中先生のiPS細胞が出ているではないか。興味深いのである♪rakuten走り続ける力「第一部 走り続けてⅠ」の冒頭から、見てみましょう。p12~16<臨床応用というゴール>■立ち止まる余裕はない 2007年に私たちのチームがヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製に成功したと発表してから11年になりました。「iPS細胞技術を一日でも早く患者の皆さんのもとへ」という思いで、私が所長を務める京都大iPS細胞研究所(CìRA)のメンバーや国内外の研究者が研究に取り組んできました。皆の努力のおかげで予想以上のペースで研究が進み、いくつかの病気で臨床応用の可能性が見えてきています。 まずは、iPS細胞について簡単に説明します。私たちの体は一個の受精卵が分裂し、多種多様な細胞へ分化して作られます。いったん分化した細胞、例えば皮膚の細胞は皮膚のままで、皮膚の細胞が突然筋肉の細胞になることはありません。細胞の種類ごとに運命が決まっています。 iPS細胞は、細胞に少数の遺伝子を導入することで細胞の運命がリセットされ、受精卵のような状態になったものです。どんな細胞にも変化し、ほぼ無限に増殖する能力があります。私たちはこの特徴を生かし、病気の治療法の開発にむけた研究を進めています。 iPS細胞を使う研究には「再生医療」と「創薬」があります。 再生医療とは、iPS細胞などから体の組織や臓器を作り、病気やけがで損なわれた機能を補う医療です。 2014年には、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーのチームが中心となり、加齢黄斑変性という目の病気を持つ患者さんの皮膚細胞からiPS細胞を作り、そのiPS細胞から網膜の細胞シートを作製し、患者さんの目に移植しました。これはiPS細胞を使った世界初の臨床研究で、臨床応用の可能性を示す大きな一歩でした。2017年3月には、事前に備蓄しておいた他人の細胞から作ったiPS細胞を使って同様の手術が実施されました。 iPS細胞のもう一つの可能性は創薬、つまり新しい薬の開発です。患者さんの細胞からiPS細胞を作り、それを患部の細胞に変化させると、病気の症状を細胞レベルで再現できます。その細胞にいろいろな物質を投与して、細胞の状態を改善できれば、その物質が薬の候補になると考えられます。 11年前、私たちは世界のチームと競い合う中、最初にヒトiPS細胞の作製に成功したという論文を発表しました。 私たちの目標は、初めから人への応用でしたが、ピクンピクンと拍動するヒトiPS細胞から作った心筋細胞を見たとき、「やっと人でできた。でも、これからだ」と緊張したのを思い出します。 当時、私は「マラソンに例えるとゴールが分かった感じ」とお話ししました。もちろんゴールまでの道を平坦だと思ってはいませんでしたが、立ち止まる余裕はありません。 ある時、難病の子どもを持つ女性から「おからだに気を付けてください」と声をかけられました。看病で大変な中、私たちのことまで気遣ってくださる姿に、涙が出そうになったことを思い出します。 そういった患者さんやその家族の思いが、私たちの研究の原動力になっています。■長い道のり 1987年に神戸大学医学部を卒業した私は、整形外科医を目指して臨床研修医となりました。少しでも患者さんたちの力になれるように、日夜、奮闘していました。しかし、当時の医学ではどうすることもできない病気もたくさんありました。 私は医師になってすぐ父を亡くしました。せっかく医師になったのに実の父に何もしてあげることができず、無力感にさいなまれました。「今の医学では治すことのできない患者さんを、どうしたら救えるのだろうか」 そんな思いで飛び込んだのが研究の世界です。 臨床と研究は、同じ「医学」ですが、いざ飛び込んでみると全く違う世界でした。 研究者の卵として最初に取り組んだ実験で、予想と正反対のことが起きました。臨床の現場でもし予想外の反応が起きたら大変です。患者さんの命にかかわる恐れもあるからです。ところが基礎研究では、予想外の結果は新たな発見につながるチャンスだとわかり、この瞬間に「自分は研究の方が合っている」と思いました。 その後、何度も予想外の結果に遭遇しましたが、そのたびに自分でも思っていなかった方向に研究が進んでいきました。そして、たどり着いたのがiPS細胞でした。
2024.09.16
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図書館で『身近な漢語をめぐる』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・漢字の蘊蓄、漢詩が述べられていて興味深いのである♪【身近な漢語をめぐる】 木村秀次著、大修館書店、2018年刊<「BOOK」データベース>より生活にいきづく漢語の知られざる魅力を探る。【目次】1 読みのすがた(字、茶ー字音のみの漢字/菊、蝶ー古訓と漢字音 ほか)/2 意味のうごき(青春(一)-漢詩における「青春」/青春(二)-明治文学の「青春」 ほか)/3 表現のはたらき(粛粛、蕭蕭ー畳語型の漢語オノマトペ/「深深」と「しんしん」-漢字表記と仮名表記 ほか)/4 文明とのかかわり(沸騰ー古代漢語の再生と比喩/蒸発ー蘭学者の造語 ほか)<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・漢字の蘊蓄、漢詩が述べられていて興味深いのである♪rakuten身近な漢語をめぐる冒頭の「Ⅰ 読みのすがた」で漢字の成り立ちが述べられているので、見てみましょう。p3~5<一つの漢字は一つの漢語> 漢字は、個々に一定の形があり、発音ができ、しかも(仮名やローマ字などと違って)意味もそなえている。つまりそれぞれが字であると同時に語(単語)である。先に挙げた字は、現在の日本語の中で訓の存在しない単一の「漢語」(字音語)といえる。 「もじ」の意味を表わす「字」も、その一つである。 私たちは感情・意思や情報・思想を伝える主要な手段として、言葉を用いる。その言葉による伝達は、「話し言葉」(音声言語)と「書き言葉」(文字言語)の両面によってなされている。 音声言語は、文字言語よりはるか前に発生した。口から耳へという過程を通して行われる音声言語は、より直接的ではあるが、本来は一回限りで瞬間的に消え去り、また遠方に伝えることができない。 文字は、音声のこのような時間的な制約と空間的な限界を乗り越えようとする必要と要求から生み出されたものと考えられる。文化が進むにつれて、音声を固定し、記録・保存することが必要になる。文字は人間の偉大な発明の一つである。<「字」に訓がないのは?>「字」という漢字は、漢和辞典で、「ワカンムリ」の部首に入れるものと「子」の部首に収めるものとがある。おおむね共通していることをまとめると、「ワカンムリ」+「子」から成る会意兼声文字で、現行の「ジ」の発音は呉音とされる。「ワカンムリ」(呉音メン、漢音ベン)は、屋根の形にかたどり「いえ」を示し、「子」(呉音・漢音シ)は、頭が大きく、手足のなよなよした乳児の形にかたどって「こ」を表わす。「字」は、「家の中で子を生む」ことを原義とし、派生して「ます(増)」、「やしなう(養)」意味に広がる。 本項目で話題としている「もじ」の意味はそこから生じる。それは、基本構成の単体字=象形・指事の字を基とし、その組み合わせによる複体字=会意・形声の字が、あたかも子が生まれるように次々と生じ増すから、という(ちなみにもともとは、単体字を「文」といい、複体字が「字」であるが、のちに広く全体を「字」あるいは「文字」と総称するようになった)。
2024.09.15
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図書館に予約していた『黄色い家』という本を、待つこと7週間ほどでゲットしたのです。「BOOK」データベースが今世紀最大の問題作!と讃えているが、興味深いではないか♪【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>「BOOK」データベースが今世紀最大の問題作!と讃えているが、興味深いではないか♪<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家「第一章 再会」の冒頭から、見ていきましょう。p7~9<1> このさき、自分がどこで生きることになっても、何歳になっても、どうなっても、彼女のことを忘れることはないだろうと思っていた。 けれど今さっき、偶然に辿りついた小さなネット記事で彼女の名前を見るまで、そんなふうに思ったことはもちろん、彼女の名前も、存在も、一緒に過ごした時間も、そしてそこで自分たちがしたことも、なにもかもを忘れていたことに気づかなかった。 吉川黄美子。 同姓同名かもしれないという考えが一瞬よぎったけれど、この記事に書かれているのがあの黄美子さんだということを、わたしは直感した。 わたしはその記事を三度くりかえして読んだあと、胸の奥から塊のような息を吐いた。指さきがかすかに震えて感じられるくらいに、心臓がどきどきと脈打っていた。黄美子さんだ。間違いない。あの黄美子さんが捕まったのだ。 吉川黄美子、と名前を検索してみると、似た内容のものがひとつと、あとは数行の報告の記事がもうひとつ、引っかかっただけだった。どっちも小さな扱いの記事だ。あとは姓名判断や画数占い、女の子にお勧めの名前がどうのというページだけ。黄美子さん本人に関する情報は、わたしがさっき目にした事件以外にはネットには存在しないみたいだった。 わたしは、なにをどこから考えるべきなのかを整理しようとした。もう一度、最初の記事のページに戻って日付を確認した。 この記事が掲載されたのは2020年、1月10日。今から三ヶ月くらいまえのものだ。そして事件が起きたのは去年、2019年の5月と書いてある。 でも、いくらしっかり読んでも、そういう日付の意味するところがうまく理解できなかった。初公判から三ヶ月がたっているのはわかったけれど、被害者や関係者がいま現在どんな状態でいるのかとか、事件や裁判がこれからどんな展開になっていくのか、そういうことがわからなかった。今、黄美子さんはどうなっているんだろう。これからどうなるんだろう。そういうのは、いったいどこで知ればいいんだろう。 取り調べについてや、拘置所なんかの順序やルールみたいなものも、まったく想像ができなかった。わたしが思い浮かべることができるのは、殺風景な灰色の小部屋とか、手錠とか、表情のない裁判官とか、法廷画家の描いた似顔絵とか、そういうドラマやニュース番組なんかで見たことのあるしょうもないイメージだけだった。
2024.09.14
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今回借りた3冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・黄色い家・走り続ける力・身近な漢語をめぐる<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【走り続ける力】山中伸弥著、毎日新聞出版、2018年刊<「BOOK」データベース>よりノーベル賞科学者の「人間力」に迫る!iPS細胞による再生医療の実現に向け、京大iPS細胞研究所(CiRA)を率い、苦闘する日々…ノーベル賞科学者の栄光と挫折を、山中伸弥が自ら語る!周囲の証言を交え初めて描く、「人間力」の秘密。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten走り続ける力【身近な漢語をめぐる】 木村秀次著、大修館書店、2018年刊<「BOOK」データベース>より生活にいきづく漢語の知られざる魅力を探る。【目次】1 読みのすがた(字、茶ー字音のみの漢字/菊、蝶ー古訓と漢字音 ほか)/2 意味のうごき(青春(一)-漢詩における「青春」/青春(二)-明治文学の「青春」 ほか)/3 表現のはたらき(粛粛、蕭蕭ー畳語型の漢語オノマトペ/「深深」と「しんしん」-漢字表記と仮名表記 ほか)/4 文明とのかかわり(沸騰ー古代漢語の再生と比喩/蒸発ー蘭学者の造語 ほか)<読む前の大使寸評>追って記入rakuten身近な漢語をめぐる
2024.09.13
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在4位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在29位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在23位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在15位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在5位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在10位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在3位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在19位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在7位・消費者金融ずるずる日記(8/27予約、副本6、予約112)現在106位・パッキパキ北京(8/29予約、副本9、予約111)現在99位・転がる珠玉のように(9/05予約、副本7、予約87)現在83位・原爆裁判(9/11予約、副本?、予約133)現在134位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵・書いてはいけない日本経済墜落の真相:図書館未収蔵・金水敏『よくわかる日本語学』・闇の中国語入門・奪還 日本人難民6万人を救った男:<予約分受取:6/25以降> ・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、8/06受取)・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、8/27受取)・パンとサーカス(8/28予約、9/01受取)・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、9/12受取予定)**********************************************************************【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【消費者金融ずるずる日記】 加原井末路著、三五館シンシャ、2024年刊<「BOOK」データベース>より1990年代の半ば、30歳のときに足を踏み入れ、50歳で退職するまでの20年を私はこの業界ですごし、お金にまつわる悲喜こもごもを目撃した。私が在籍した期間は、消費者金融業界が栄華を極めてから、2010年の法改正施行を経て、没落していく年月でもあった。-本書にあるのはすべて私の実体験である。「お客を追い込む仕事」。サラ金社員が経験した、貸し手と借り手のお金の修羅場。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten消費者金融ずるずる日記【パッキパキ北京】綿矢りさ著、集英社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりコロナ禍の北京で単身赴任中の夫から、一緒に暮らそうと乞われた菖蒲。愛犬ペイペイを携えしぶしぶ中国に渡るが、「人生エンジョイ勢」を極める菖蒲、タダじゃ絶対に転ばない。過酷な隔離期間も難なくクリアし、現地の高級料理から超絶ローカルフードまで食べまくり、極寒のなか新春お祭り騒ぎ「春節」を堪能する。街のカオスすぎる交通事情の把握や、北京っ子たちの生態調査も欠かさない。これぞ、貪欲駐妻ライフ!北京を誰よりもフラットに「視察」する菖蒲がたどり着く境地とは…?<読む前の大使寸評>追って記入rakutenパッキパキ北京【転がる珠玉のように】ブレイディみかこ著 、中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりLike A Rolling Gem。大人の山あり谷ありライフを越えていけ!結婚するゲイの友人、職人魂を燃やす父、イギリスで、日本で、社会の底を支える労働者たちの人生劇場。泥くさい毎日を“宝石”に変える著者3年ぶりの最新エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(9/05予約、副本7、予約87)>rakuten転がる珠玉のように【原爆裁判】山我浩著、毎日ワンズ、2024年刊<商品説明>より日本初の女性判事・三淵嘉子が昭和三十年代に裁判官を務めた「原爆裁判」に焦点を当てた書き下ろし。原爆を巡るアメリカの闇を追及すると共に三淵嘉子の半生を紹介、さらに、世に名高い「原爆裁判の判決文」も付載した一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/11予約、副本?、予約133)>rakuten原爆裁判【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・デジタル朝日「好書好日」でめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.09.12
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図書館で『明治日本写生帖』という文庫本を、手にしたのです。写生帖と名乗っているとおりで、当時の日本の挿絵が満載されているわけで、興味深いのです♪*********************************************************【明治日本写生帖】フェリックス・レガメ著、KADOKAWA、2019年刊<「BOOK」データベース>より開国直後の日本を2度訪れたレガメ。紙とペン、そして旺盛な好奇心を携えたフランスの画家は、憧れの異郷で目にするすべてを描きとめた。誕生したばかりの帝国議会の様子は?富裕層と庶民の学校はどう違う?市川團十郎の歌舞伎の舞台裏とは?天皇、軍人、僧侶から、名もなき人や子どもまで、明治の人と風景を克明に描く図版245点。ジャポニスムに火を付けた画家の知られざる全貌。日仏交流史における意義に迫る解説を収録。<読む前の大使寸評>写生帖と名乗っているとおりで、当時の日本の挿絵が満載されているわけで、興味深いのです♪rakuten明治日本写生帖当時の「芝居と相撲」あたりを、見てみましょう。p186~188<芝居と相撲> 日本では、芝居は通俗的な娯楽である。宗教を実践するのが庶民ばかりであるのと同様に、芝居もほとんどすべて大衆に向けられたものである。今日ある日本人が、寺にも、芝居小屋にも足など踏み入れたこともないと語るのは、決して珍しいことではない。階級(もはや現在では残っていないが)の境が非常に明確だった頃は、役者たちは全く評価されず、彼らの子孫がその穢れを洗い落とすには、役者という職業とは無関係の何世代も後の時代を待たねばならなかった。 また、舞台に女性が出演することは、固く禁じられていた。女性の役は、幼少期からこれを専門として躾けられた男性によって演じられ、そのうちの何人かは、その名が後世に残るほど、その演技が完璧の域に達することもあった。 日本の舞台芸術は、当初は宗教的な観念を着想源とし、次いで歴史的事件や茶番劇もその題材として用いられた。われわれ西洋にはミストールという神秘劇があったが、日本には能が現在も残っている。われわれの神秘劇が中世の教会で行われ、次いで君主たちのもとに引き継がれ、そののち、大衆へとその場を移したのと、日本の能も同様である。西洋と日本の最大の共通点は、現在の状態に至るまでに辿ったその段階に見ることができる。 日本では、肉体を鍛錬することが高く評価されており、そのことから生じた見世物は、芝居が得ているのと同じくらい、あるいは、それ以上の人気を博している。相撲の力士たちは代々この職に就いており、特殊な食事法に従って、その肉体は驚異的な発達を遂げている。また、力士たちは、彼らを熱狂的に賛美するこの国において、独自の集団を形成している。 相撲小屋の開設(相撲には常設の会場がない)が告げられると、その町の住民すべてが沸き立つ。街路には、生き生きとした装飾の幟が一杯に立てられ、力士が住む家の門には、贔屓からの現物や現金の寄進を受け付けるために、花や貴重品でいっぱいの陳列台が置かれる。開幕の何日か前には、竹組みで作られた櫓の上に登った人が、太鼓で興行を知らせる。 この櫓は、五、六千人を収容できる広い場内を見下ろすようにそそり立っている。板と竹で建てられた相撲小屋は、あまり快適ではない。円形の広い場内の中央には、九、十メートル四方の土台(土俵)が設置されている。この土俵の上には、竹で編まれた屋根があり、垂れ布の付いた四本の梁によって支えられている。そして柱を背にし、観客に背を向ける形で四人の審判(行司)座っている。 行司たちは、砂でできた円形の土俵の境を成している俵によって、力士たちと隔てられている。土俵の境(俵)より外に相手を押し出すか、または、相手の膝だけでも地面に付けることで、闘いの勝者となる。役者と力士は、物見高い日本人の二大お気に入りである。
2024.09.11
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図書館に予約していた『パンとサーカス』という本を、待つこと4日ほどでゲットしたのです。予約本を受け取る時いつも思う事だが、装丁が想定と違うわけで・・・この本の分厚さに、まず読破する気が萎えたのです。【パンとサーカス】 島田雅彦著、講談社、2022年刊<「BOOK」データベース>よりCIA就活生が日米両政府を巧みに欺く、「私の暴走にどうかお付き合いください」世直しか、テロリズムか?日・米・中・韓を壊乱する壮大なエンターテインメント!<読む前の大使寸評>予約本を受け取る時いつも思う事だが、装丁が想定と違うわけで・・・この本の分厚さに、まず読破する気が萎えたのです。rakutenパンとサーカスまず「第一部 Ⅰ」辺りの語り口を、見てみましょう。p14~16Ⅰ スクールデイズ 桜田マリアの一日は早く、長い。 早朝、母桜田祥子が営む居酒屋「吉祥」の仕込みを手伝うと、大学に行く。授業は月曜から木曜日までぎっしり入っているが、火、水、金の週三日はソープランドでアルバイト、月、木、土はキャバクラ「スノービューティ」で接客している。風の谷のナウシカのように過重労働を強いられているのは、幼馴染みの借金は総額600万円、その内訳はホストクラブのツケとホストへの貢ぎとパチンコの負けだが、「お父さんの入院費と弟を大学に行かせるお金をなんとかしないといけない」と嘘をつき、マリアに借金の保証人になってもらった挙句、男と行方をくらませた。 マリア20歳の時の出来事である。 ―おまえはバカではないが、ここまで他人に甘いのは病気としか思えない。バカは治らないが、病気なら何とかなる。 マリアの行動をどうにも理解できないのは母親だけでなく、腹違いの兄火箱空也も同様だった。どうすれば、あの親父からマリアみたいな純真な娘が生まれるのか、大いなる謎だ。母親の方に似たのかといえば、それはもっと考えにくい。控えめに見ても、あの女は掃き溜めがよく似合う欲の塊で、マリアを生んだのが唯一の罪滅ぼしといってもいいくらいだ。 兄は時々、「吉祥」に食事をしにくるが、妹のマリアの無事を定期的に確かめるためだった。自分が監視していないと、何処までも他人の食い物にされ、ついには骨に成り果てることを本気で心配していた。―オレだって忙しいんだから、おまえを酷い目に遭わせた奴をいちいち制裁している暇はない。―別にそんなこと頼んでないよ。―けじめを付けないと、オレの示しがつかないんだよ。「おまえに嫌な思いをさせた奴をいつでも殺してやる」と兄がいえば、妹は「殺したい人はいない」と答える。二人はそんな関係だった。空也は、マリアを騙して、借金を背負わせた女とそれをそそのかしたホストにすでに追っ手を差し向けていた。―空也が余計なことをするから、どんどん住みづらい世の中になっちゃうんだよ。―おまえが他人を甘やかすから、誰もが無責任になり、生きづらい世の中になるんだ。 空也は何かにつけ性善説と性悪説を持ち出す。性悪説を取る空也は、この世界は元々、悪に染まっているいるので、力による支配しか実行力を持たないと考えている。マリアがクリスチャンでもないのに、「汝の隣人を愛せ」を実践しているのを見ると、歯痒くてたまらない。といって、マリアが自分と同じ濁った水の中に暮らすことは望んでおらず、つい「余計なお世話」を焼いてしまうところが、この腹違いの兄妹の唯一の共通点だった。 二人は別々の家庭に育ち、それぞれ18、16になるまで兄妹の関係にあることを知らなかった。ソープオペラでは当事者たちが衝撃を受ける場面だが、二人は平然と事実を受け止めた、いや受け流そうとした。このあとテロの首謀者として指令を出す空也とか、「アメリカに奉仕し、中国を敵と見なす」という路線とか、中国国家安全部を必要悪として活用するとか、読みどころは満載であるが・・・読破するには長すぎるようです。
2024.09.09
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図書館で『杉原千畝の実像』という本を、手にしたのです。杉原千畝については、外務省本省の方針に反してユダヤ人に日本通過ビザを発給したことで知られるが、興味深いのです。【杉原千畝の実像】古江孝治著、 ミルトス、2020年刊<「BOOK」データベース>より第二次世界大戦中、外交官だった杉原千畝は外務省の方針に反して日本通過ビザを発給し、多くのユダヤ人を救った。杉原はなぜビザ発給の決断に至ったのか。そしてその覚悟とは…。多くの資料を紐解き、様々な証言や時代背景に照らして、知られざるその理由に迫る!<読む前の大使寸評>杉原千畝については、外務省本省の方針に反してユダヤ人に日本通過ビザを発給したことで知られるが、興味深いのです。rakuten杉原千畝の実像「第4章 ビザ発給の決断と覚悟」で、ヨーロッパにおけるユダヤ避難民政策を見てみましょう。p63~66<日本政府のユダヤ避難民政策> ヒトラーの残酷なユダヤ人排斥政策のため、身の危険を感じた多くのユダヤ人は避難民となった。これは当初、日本にとって遠く離れたヨーロッパでの対岸の火事に過ぎなかったが、その後ヨーロッパの在外公館において日を追う毎に日本通過ビザを求める避難民は増え続け、直接火の粉が降りかかる問題となった。日本政府がこれにどのように対処したのか、順を追ってみていこう。 1938年10月7日、日本に流入する避難民が増加するのを危惧した近衛文麿外務大臣は、在外公館長へ「ユダヤ避難民の入国に関する件」を発令した。それは、日本の同盟国であるドイツとイタリアが排斥したために外国に避難せざるを得なくなった者(主にユダヤ人)を、日本に受け入れることは好ましくないとして、国内および各植民地に彼らの入国を禁止するものだった。 この頃、日本、ドイツ、イタリアでは防共協定が結ばれていたが、それはさらに強固なものにする日独伊三国同盟を締結しようとしていた。つまり、ユダヤ人排斥政策を取っていたナチス・ドイツに配慮した対応だった。 しかし、この通達を受けたヨーロッパの在外公館にはビザを求めるユダヤ避難民が連日押しかけてきており、日本からの指示はその状況を無視したものだった。ビザ発給を求める避難民への対応に追われていた在外公館からの悲痛な訴えに対して、日本政府の動きは鈍かった。そればかりか、1938年10月20日に外務大臣に任命された有田八郎は、在外公館に対して、日本に向けて渡航中の者にも「入国を断念するように」と厳しい指示を出した。(中略) 1940年8月になると、外務省と内務省は、杉原が発給した要件不備のビザを持ってウラジオストクから敦賀港へ続々と上陸する避難民の対応に苦慮していた。外務省では以前から、外国人の入国者は1500円、通過者は250円を上陸の際に提示するという内規があった。しかし、避難民に関する取り決めはなかった。さらに上陸に際して入国審査をするのは内務省だったが、両省庁の間で取り扱いが一致しない問題が生じていた。 松岡外務大臣は内務省と協議した結果、今後日本に入国する外国人で避難民と認定される者に対して、目的国までの必要な渡航費あるいは渡航チケットを持っていること、そして日本に滞在する日数に応じて、一人につき一日当たり最低25円見当の宿泊費用を到着時に持っていることが必要であると決定した。 1940年10月10日、松岡大臣は在外公館へ「外国避難民に対する査証取扱方に関する件」として訓令を出し、その対応を始めた。<なぜビザを発給したのか>(中略) 杉原自身がビザ発給について書いた資料は多くない。その少ない中でも前章で紹介したロシア語でタイプ打ちされた書簡がある。 杉原はビザ発給について、この書簡の中で次のように答えている。「結局8月10日、私は東京との無意味な対話を中断することを決めた。私には領事館閉鎖に伴う多くの作業もあったことから、対話は時間の無駄にしかならなかったのである。こうして8月11日には、独断で通過査証の発給を始めた。責任のすべてを負うことを決め、日本から先の旅を証明する書類を所持しているか否かを問わず、私は自分のところにやってきた文字どおり全員の人に査証を発給したのである」 ここの「8月11日には、独断で通過査証の発給を始めた」の日付については議論の余地があるが、本省とのやり取りを「時間の無駄」と結論づけ、「責任のすべてを負う」ことや、要件不備を承知の上で、「文字どおり全員の人に査証を発給した」という当時の杉原の心境が綴られている。さらに「もっぱら人道的精神の命じるがまま、他者に対する愛情から・・・もっとも失職することは予見していたのだが、私に請うすべてのポーランド人に対して査証を出し続けた」と書き、ビザを発給した思いと覚悟を述べている。『杉原千畝の実像』2:ヨーロッパでのユダヤ人排斥『杉原千畝の実像』1:杉原千畝の成り立ちの一端
2024.09.07
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図書館で『杉原千畝の実像』という本を、手にしたのです。杉原千畝については、外務省本省の方針に反してユダヤ人に日本通過ビザを発給したことで知られるが、興味深いのです。【杉原千畝の実像】古江孝治著、 ミルトス、2020年刊<「BOOK」データベース>より第二次世界大戦中、外交官だった杉原千畝は外務省の方針に反して日本通過ビザを発給し、多くのユダヤ人を救った。杉原はなぜビザ発給の決断に至ったのか。そしてその覚悟とは…。多くの資料を紐解き、様々な証言や時代背景に照らして、知られざるその理由に迫る!<読む前の大使寸評>杉原千畝については、外務省本省の方針に反してユダヤ人に日本通過ビザを発給したことで知られるが、興味深いのです。rakuten杉原千畝の実像「第3章 外交官時代」で、ヨーロッパでのユダヤ人排斥を見てみましょう。p47~49<プラハでもビザ発給> リトアニアのカウナスでのビザ発給は第2部で詳しく述べるので、ここではカウナスから移動したプラハでのことを先に見ていこう。カウナスの日本領事館に避難民が集まり始める1カ月前の6月15日、ソ連はリトアニアに侵攻し、8月3日にリトアニアを併合した。杉原は、ソ連当局や外務省から領事館を閉鎖するよう何度も通告を受けていた。 1940年8月29日、杉原は次の任地としてチェコのプラハへの異動命令が発令された。9月4日にカウナスを発ち、ベルリンに立ち寄った後、9月12日にプラハへ着任。前任者は総領事代理の市毛孝三だった。市毛は1939年6月から1年あまりの勤務を終え、1940年11月に日本に帰国した。 1941年1月15日、杉原は松岡洋右外務大臣に宛てて、「ドイツのボヘミヤ・モラヴィア保護領の統治業績並びにチェコ民族の対ドイツへの感情に関する件」と題してチェコにおけるドイツ軍と地元の状況について報告した。その中のユダヤ人に関する項目で、「ドイツ側が旧法律の手始めとして、ユダヤ人排斥の法律を制定したことにより、ドイツ国内と同じように規制を行い、この法律によってユダヤ人は、すべての官公庁の公職やその他の職業(特に医薬業、法律業、技術、獣医業)に就くことが禁止された」とユダヤ人の置かれた現状を報告している。 また、事実上ドイツに占領されていたチェコの保護領政府については、「ドイツ側の顔色を窺い、協調と妥結の建前を採っていた」とし、一般市民については、「出版や集会の自由を極度に制限されているため、その真意は現状においては不明だが、概ね保護領政府と同じようだ」と分析した。杉原はその他にも、ドイツの統治方針や財政、経済上の措置、さらに日用品や家屋資料、そして労働者や農民の生活状況などについても詳細に報告した。 杉原によると、チェコにおけるドイツのユダヤ人政策は過酷なものだった。公職をはじめとする多くの職業に対して厳しく制限したばかりではなく、ユダヤ人企業を没収し、銀行や主要産業などを彼らから取り上げた。ユダヤ人はすべてを奪われ、コミュニティは崩壊し、地獄のような状況下に置かれていた。 外務省の外交史料館には、プラハの杉原がビザ発給について松岡大臣に宛てて報告した調書「査証(ビザ)調書並発給表送付ノ件」が残されている。それによると、プラハの総領事館では1940年1月18日から1941年2月26日までに、105枚のビザが発給された。市毛は37枚のビザを発給し、杉原は68枚だった。そのうち95枚がユダヤ人に発給されている。 また、発給を受けた人のほとんどがドイツ国籍であり、渡航先は上海、アメリカ、ウルグアイ、アルゼンチン、日本など11の国と地域にわたっており、その多くが日本通過ビザだった。 市毛と杉原が発給したビザにより、果たして何人のユダヤ人が助かったのか、カウナスと同様、正確な数は不明である。ただ、後に残された多くのユダヤ人がナチスによって虐殺された事実を考えると、プラハでのビザも歴史的に大きな意味を持っている。『杉原千畝の実像』1:杉原千畝の成り立ちの一端
2024.09.07
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図書館で『杉原千畝の実像』という本を、手にしたのです。杉原千畝については、外務省本省の方針に反してユダヤ人に日本通過ビザを発給したことで知られるが、興味深いのです。【杉原千畝の実像】古江孝治著、 ミルトス、2020年刊<「BOOK」データベース>より第二次世界大戦中、外交官だった杉原千畝は外務省の方針に反して日本通過ビザを発給し、多くのユダヤ人を救った。杉原はなぜビザ発給の決断に至ったのか。そしてその覚悟とは…。多くの資料を紐解き、様々な証言や時代背景に照らして、知られざるその理由に迫る!<読む前の大使寸評>杉原千畝については、外務省本省の方針に反してユダヤ人に日本通過ビザを発給したことで知られるが、興味深いのです。rakuten杉原千畝の実像「第2章 満州時代」で、杉原千畝の成り立ちの一端を見てみましょう。p28~29<ハルビン日本総領事館> 母の死から明けた1922年4月、杉原は招集解除によって京城からハルビンに戻った。自宅ではロシア人やフランス人教師からロシア語などの学びを続けていた。午前中はハルビン日本総領事館を手伝い、午後からは日露協会学校の聴講生として勉学に励む毎日だった。 1923年3月3日、杉原に満洲里への転学命令が出された。この転学の措置には理由があった。前年12月に成立したソビエト連邦は、白系ロシア人を敵対視していた。そのため日本の外務省は、白系ロシア人たちと関りがあったハルビンの留学生を分散させようとしたのである。 3月30日、杉原はハルビンから満洲里へ出発し、翌31日に到着した。満洲里では、ハルビン同様に領事館を手伝いながらロシア語を学んだ。そしてよく1924年2月8日、満洲里の日本領事館で外務初期生として採用された。同時に本省での研修のため帰国を命じられた。 杉原は2月22日に洲里に出発する際、かねてから交際していたアポロノア・クラヴディヤ・セメノヴナとの国際結婚の許可願いを松井慶四郎外務大臣に提出した。その後ハルビンの総領事館に立ち寄り、山内総領事に婚姻届を提出。3月5日に東京に到着し、本省での研修が始まった。 外務省で10ヶ月あまりの研修を終えると、杉原はハルビンの総領事館への勤務を命じられた。1925年1月3日に東京を出発し、13日にハルビンへ着任した。すでにクラヴディヤとの入籍を済ませていた杉原は、新婚生活を住み慣れたハルビンでスタートさせた。 ハルビンの日本総領事館での仕事で特筆すべきは、二つの大著をまとめていることである。そして1926年11月の報告書『「ソヴィエト」聯邦国民経済大観』(全608頁)、そして1929年8月の『「ソヴィエト」聯邦ノ外交10年史』(全387頁)である。特に『経済大観』は入手困難なソ連の資料を集め、的確な分析で経済事情を多角的にまとめた労作だった。この経済大観は外務省内でも高い評価を受け、1927年に外務省欧米局で活字製本され、省内に配布されたほどだった。 ハルビンの日本総領事館では、後に深く関わることになる二人の人物との出会いがあった。一人は新しく総領事として赴任した大橋忠一、もう一人は後にウラジオストクの日本総領事館の総領事代理になった根井三郎である。 大橋忠一は、1893年12月8日岐阜県生まれで、杉原と同郷だった。1918年7月に東京帝国大学を卒業して外務省に入省。1931年3月、ハルビンの総領事に就任した大橋は、外務省内で配布されていた杉原の『「ソヴィエト」聯邦国民経済大観』の存在を知っていた。大橋は、杉原の情報収集・分析能力に注目していた。後述のとおり、大橋がソ連との鉄道譲渡交渉を見据えて杉原を満洲国外交部に引き抜いたことを見ても、その期待度が高かったことが分かる。
2024.09.05
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図書館で『Newton(2024年5月号)』という雑誌を、手にしたのです。特集「H3ロケット打ち上げ成功」が・・・気になるのです。*********************************************************【Newton(2024年5月号)】雑誌、ニュートンプレス、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌につきデータなし<読む前の大使寸評>追って記入rakutenNewton(2024年5月号)まず特集「H3ロケットと世界の最新ロケット」でH3ロケットの開発を、見てみましょう。p66<スペースⅩ社が変えたロケットの常識。日本は追いづけるのか:米本浩一> H3ロケット試験機2号機が無事に打ち上がったことによって、10年にもおよぶ開発に一区切りがついた。しかし、その間に世界のロケット開発の潮流が変化してきた。 H3ロケットの開発がはじまったのは2014年4月のこと。人工衛星の大型化やたくさんの小型衛星をまとめて打ち上げ、連携させて一体的に運用する「衛星コンステレーション」などに対応しながら、低コストで打ち上げられる手段を得るためだ。 また、日本は1994年に初の純国産液体燃料ロケットである「H—Ⅱロケット」を開発して以降、液体燃料ロケットの新規開発を行ってこなかった。そのため、このまま新しいロケットの開発をしないでいると、技術やノウハウが失われてしまう。今後もロケットの開発や製造をつづけるためにも、日本は2014年にH3ロケットの開発に踏み切った。■難航したH3ロケットの開発 H3ロケットはH—Ⅱロケット開発以来、20年以上ぶりに取り組んだ新規開発だ。とくに第1段のLE—9エンジンの開発は難易度が高かったため、開発は難航した。H3ロケット1号機は種子島宇宙センターの発射台から空高く打ち上がった。だが、打ち上げは失敗してしまった。 ZAXAと三菱重工は、失敗の原因に対策を施し、2024年2月17日の打ち上げにこぎつけた。今度は、1段目、2段目ともに正常に作動し、完璧に飛行した。この成功により、日本の宇宙開発は大きく前進し、関係者は胸をなで下ろした。 だが、喜んでばかりはいられない。日本がロケット技術を維持、発展させていくためにも、H3ロケットによる打ち上げビジネスを成功させる必要がある。再使用型宇宙輸送システムの研究に取り組んでいる東京理科大学の米本浩一教授は、「H3ロケットの打ち上げ費用を早急に目標の50億円にする必要がある」と指摘する。■低価格化の鍵は再使用 H3ロケットを開発している10年間で、ロケットをめぐる世界の情勢は大きく変化した。スペースⅩ社は、2010年6月にファルコン9ロケットの初飛行を成功させると、同年12月にはドラゴン補給船試験機1号機の打ち上げを成功させた。そして、2012年10月にはドラゴン補給船実用初号機の打ち上げを成功させ、国際宇宙ステーションへの商業補給サービスを軌道に乗せた。 スペースⅩ社はファルコン9の改良を重ね、打ち上げ頻度を上げていった。2023年には1年間に96回も打ち上げの半数に近い回数をファルコン9が占めている。さらに、スペースⅩ社はファルコン9の第1段の回収、再使用も進めている。ファルコン9の打ち上げでは、分離された第1段が海上の回収船にもどり、着船するようすはおなじみの光景となった。
2024.09.03
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今回借りた3冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・パンとサーカス・明治日本写生帖・週刊東洋経済 1/20<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【パンとサーカス】 島田雅彦著、講談社、2022年刊<「BOOK」データベース>よりCIA就活生が日米両政府を巧みに欺く、「私の暴走にどうかお付き合いください」世直しか、テロリズムか?日・米・中・韓を壊乱する壮大なエンターテインメント!<読む前の大使寸評>追って記入rakutenパンとサーカス【明治日本写生帖】フェリックス・レガメ著、KADOKAWA、2019年刊<「BOOK」データベース>より開国直後の日本を2度訪れたレガメ。紙とペン、そして旺盛な好奇心を携えたフランスの画家は、憧れの異郷で目にするすべてを描きとめた。誕生したばかりの帝国議会の様子は?富裕層と庶民の学校はどう違う?市川團十郎の歌舞伎の舞台裏とは?天皇、軍人、僧侶から、名もなき人や子どもまで、明治の人と風景を克明に描く図版245点。ジャポニスムに火を付けた画家の知られざる全貌。日仏交流史における意義に迫る解説を収録。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten明治日本写生帖【週刊東洋経済 1/20】雑誌、東洋経済新報社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌につきデータなし<読む前の大使寸評>追って記入rakuten週刊東洋経済 1/20
2024.09.03
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在3位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在6位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在31位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在33位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在19位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在5位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在10位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在5位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在21位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在8位・消費者金融ずるずる日記(8/27予約、副本6、予約112)現在111位・パッキパキ北京(8/29予約、副本9、予約111)現在105位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』・原爆裁判:延滞資料を返した後→予約<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵・書いてはいけない日本経済墜落の真相:図書館未収蔵・金水敏『よくわかる日本語学』・闇の中国語入門・奪還 日本人難民6万人を救った男:<予約分受取:6/25以降> ・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、8/06受取)・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、8/27受取)・パンとサーカス(8/28予約、9/01受取予定)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【消費者金融ずるずる日記】 加原井末路著、三五館シンシャ、2024年刊<「BOOK」データベース>より1990年代の半ば、30歳のときに足を踏み入れ、50歳で退職するまでの20年を私はこの業界ですごし、お金にまつわる悲喜こもごもを目撃した。私が在籍した期間は、消費者金融業界が栄華を極めてから、2010年の法改正施行を経て、没落していく年月でもあった。-本書にあるのはすべて私の実体験である。「お客を追い込む仕事」。サラ金社員が経験した、貸し手と借り手のお金の修羅場。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten消費者金融ずるずる日記【パッキパキ北京】綿矢りさ著、集英社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりコロナ禍の北京で単身赴任中の夫から、一緒に暮らそうと乞われた菖蒲。愛犬ペイペイを携えしぶしぶ中国に渡るが、「人生エンジョイ勢」を極める菖蒲、タダじゃ絶対に転ばない。過酷な隔離期間も難なくクリアし、現地の高級料理から超絶ローカルフードまで食べまくり、極寒のなか新春お祭り騒ぎ「春節」を堪能する。街のカオスすぎる交通事情の把握や、北京っ子たちの生態調査も欠かさない。これぞ、貪欲駐妻ライフ!北京を誰よりもフラットに「視察」する菖蒲がたどり着く境地とは…?<読む前の大使寸評>追って記入rakutenパッキパキ北京【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・デジタル朝日「好書好日」でめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.09.02
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図書館で『世界(2024年7月号)』という雑誌を、手にしたのです。特集2「日本の中の外国人」が・・・気になるのです。*********************************************************【世界(2024年7月号)】雑誌、文藝春秋、2024年刊<出版社>より【特集2】日本の中の外国人 日本に暮らす外国人は340万人を超える。働く現場は、小売、流通、介護、製造、建築、農業、漁業など多岐にわたる。だが、その法的地位は常に不安定だ。奴隷労働との批判が強かった「技能実習制度」に代わり、新たに「育成就労制度」が創設されるが、看板と実態には依然へだたりがある。容易に永住権取り消しができる入管法改正案も準備され、安定して日本で暮らす人々も生活をおびやかされている。難民の受け入れは依然として少なく、3回目以上の申請は強制送還が可能に。排外主義からくるヘイトにさらされる人々もいる。<読む前の大使寸評>追って記入iwanami世界(2024年7月号)まず特集2「日本の中の外国人」で埼玉クルド人コミュニティを、見てみましょう。クルド人移民やマイノリティに対する街宣、フェイク情報はかくも過酷になっているのかと、暗然とするわけです。p116~118<埼玉クルド人コミュニティ:安田浩一>■日本語教室の内と外 正しい日本語が仕えているかどうかチェックしてほしい・・・クルド人男性(43歳)に頼まれた。 毎週日曜日、外国人支援団体「在日クルド人と共に」(埼玉県蕨市)が主催している日本語教室。たまたま近くにいた男性を取材しようと思っただけなのに、話しかけたら即席の“講師”をするはめになった。 彼が“教科書”として用意していたのは『産業廃棄物叉は特別管理産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会テキスト』なる冊子である。「廃石綿等及び石綿含有廃棄物」「特定粉じん排出等作業実施」といった難解な言葉が並ぶ。男性がそれをゆっくり読み上げながら、漢字の意味を私に問う。私だって、よくわからない。―これ、日本人でも難しいです。「でも、覚えないとね」―なんで?「産廃事業の管理者になりたいんです。講習会を受けて試験に通れば、許可してもらえるかもしれない」―許可って?「滞在」 そう、ここでいう「許可」とは、日本での在留資格のことである。 彼が生まれた故郷のトルコを離れたのは、いまから20年前。多くのトルコ出身クルド人がそうであるように、差別から逃れるための“脱出”だった。たどり着いた日本で難民申請を繰り返したが認められることはなく、現在は「仮放免」の身である。 同胞の多い川口市に居を定め、難民申請中に覚えた産廃の仕事を、いつかは自身で切り盛りしたいと考えている。必要なのは、彼が言うところの「許可」だ。そのための近道が、資格取得だと信じている。「日本の役に立つことをすれば、日本だって私を認めてくれる」 どんな形でもいい。正規の在留資格さえ得ることができれば、仕事をすることもできる。健康保険にも入ることができる。当たり前の人間として生きることができる。自分も、妻も、子どもたちも。だから小難しいテキストを日本語教室に持ち込み、ひとつひとつの文言を頭に焼き付けているのだ。 日本国内に住んでいるクルド人は約3000人と言われ、そのうち約2000人が川口市や蕨市など埼玉県南部に住む。仮放免者などの非正規滞在者も少なくない。 「在日クルド人と共に」は、こうした人々に日本語を教えるだけでなく、交流の場として日曜日に事務所を開放している。温井立央代表理事によると、「日本人と普通に話したことのない人もけっこういる」のだという。 ここに集まるクルド人は、年齢も立場もさまざまな人々だ。日常生活に不便を感じて日本語を学びに来る人がいる。学校の授業に追いつくために通う子どもたちもいる。子どものいる母親は、学校からの「お便り」を理解するために教室に足を運ぶ。 日本人スタッフのひとりも、こう話す。「ボランティアの日本人と会話するためだけに来ている人も多いですよ。日本語が上達したね、と声をかけるだけで、みんな嬉しそうな顔を見せてくれるんです。日常生活の中で成功体験を持たない人がほとんどですから」 みんな表情が明るい。「学ぶ」というより、まさに楽しんでいる。 私の“教え子”となってしまった男性も、実は日本語能力は相当に高く、会話にはまったく不自由しない。テキストに記された「中和処理」なる文言を私に確認しながら、「中国と日本のことだと思った」と大声で笑った。 だが・・・その数時間後、事務所の目と鼻の先で、クルド人たちの笑顔を奪い取るような醜悪な風景が広がった。 この日(5月19日)午後、蕨市内ではクルド人排斥を訴えるヘイトデモがおこなわれたのだ。デモを主催したのは、これまで川崎駅前で在日コリアンに対する差別デモや街宣を繰り返してきた「日の丸街宣倶楽部」なる団体。旭日旗や日章旗を振り回しながら外国人に向けてヘイトスピーチを繰り返してきた“実績”を持つヘイト団体だ。 同日のデモに参加したのは、代表の渡辺賢一氏を中心にわずか5名だったが、それでも埼玉県警は数百人の機動隊を動員。周辺の道路を封鎖しただけでなく、県警自らが“人間の盾”となって、ヘイト団体のデモを守った。 少人数のデモであっても、地域への影響は大きい。「強〇、誘拐、危険運転」などクルド人そのものを中傷するプラカードを掲げた隊列のおかげで、少なくないクルド人はこの日、外出を諦めた。クルド料理店の前から険しい表情でデモを見ていた30代のクルド人男性は、「子どもには見せたくない」と独り言のようにつぶやいた。 当然だろう、デモ隊は個別の「犯罪」やトラブルを理由に、クルド人全体を中傷しているだけでなく、明確に差別を煽っているのだ。 しかも、デモはこの日が初めてではない。これまで幾度となく、蕨、川口のクルド人集住地域で繰り返されてきた。在特会(在日特権を許さない市民の会)の流れをくむ日本第一党なども、「クルド人は出ていけ」と叫びながらデモをおこなっている。5月26日にも「日本侵略を許さない国民の会」ナルヘイト団体が、「移民は日本から出ていけ!」とわめきながら、蕨、川口両市を練り歩いた。 いずれの団体も、これまで各地で在日コリアンなどのマイノリティにヘイトスピーチをぶつけてきた差別者集団だ。外国人集住地域への理解も思い入れもなく、面白半分に差別と排外主義を煽っているようにしか見えない。だが、そのたびに旭日旗が打ち振られ、排斥が叫ばれ、ただ地域で暮らしているだけのクルド人に不安と恐怖を与える。 5月12日に川口駅前でおこなわれた「日の丸街宣倶楽部」の街宣では、ヘイトに抗議する市民が、街宣参加メンバーから暴行されるといった事件も起きた。 被害者の50代男性によると、同団体がヘイト街宣を終えて引き揚げる際、「早く帰れ」と抗議。すると、参加メンバーのひとりが男性の左目付近を殴打し、かぶっていた帽子も吹き飛んだという。男性は川口署に被害届を出し、現在、埼玉県警が捜査中だ。 実は、同団体メンバーらは、過去にもヘイトデモ、街宣を繰り返すなか、同種の事件を三回も起こしている。 被害男性が続ける。「暴力のエスカレートを怖れます。私は日本人ですから直接的なヘイトクライムではないにせよ、クルド人差別に抗議したことで暴行を受けました。内実は差別事件でもあるわけですよ」
2024.09.02
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図書館で『漢字とアジア』という文庫本を、手にしたのです。漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【漢字とアジア】 石川九楊著、 筑摩書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より東アジアにおいて、漢字は単なる記号ではなかった。文明圏をかたちづくる中核として、日本では平仮名を、朝鮮ではハングルを、越南ではチューノムを生み出し、歴史を大きく動かしてきた。渤海の独立、沖縄の結縄、アイヌ社会の形成にも影響をあたえた漢字は、私たちの精神に何をもたらしたのか?鬼才の書家が、漢字文化の研究をもとに、より広い文明的な視野から東アジア2000年の歴史を読み解く。<読む前の大使寸評>漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪rakuten漢字とアジア「第10章 無文字社会から問う」で日本語の乱れとか美しい日本語が述べられているので、見てみましょう。p298~301■美しき二重言語の構造 昨今、「日本語の乱れ」が問題視されていますが、その原因の多くは接続法あるいは連続法に関わる問題といえます。たとえば、コンビニなどで買い物をしたときに、近年、レジの若い店員は「千円からお預かりします」と言いますが、この「から」は明らかに間違いです。 接続に関する助詞を間違えているのです。「千円」や「預かる」はそれ自体で意味をもつ自立語、つまり「詞」です。日本語の難しさはその自立語をどのように繋いでいくかという点にあります。「千円からお預かりします」という例でいえば、「から」と「ます」のような詞辞関係における「辞」の部分が問題になってくるのです。 別の観点からいえば、「詞」は主として漢字が担当し、「辞」は漢字で書きあらわせない部分なので仮名が担当します。「千円からお預かりします」といわれれば、預かっているのなら返してくれと言いたくもなるのですが(笑)、間違えるのは、「から」というような助詞であったり、「お」を付けるかどうかという敬語の問題であったり、仮名書きのところで生じています。 しかし、この助詞は意味のアクセントとしては非常に弱い。実際には「から」も「お」も「ます」も、なくても意味は通じます。 極端にいえば、中国語には「辞」がありません。中国語ふうにいえば、「千円 預かる」になります。どうしても完了形にしたければ、、「千円 預かった」という形にするだけのことです。日本語の場合には詞のあいだに助詞を挟み込む構造になっているのです。 ところが普段われわれは、「あの人、かっこいい」とか「私、大好き」というように、ほとんど単語を並べるだけの日本語を日常的に使っています。これも立派な日本語です。いってみれば助詞は適当であってもいいとも言えるのです。とくに東アジアの言語は漢語中心の言語ですから、単語を並べればいいのです。 言語の乱れを問題視する人々は、仮名の部分の乱れを指摘します。世の中の多くの人は、「辞」の部分、繋ぎの部分が間違っていることを指して、「言葉が乱れている」と騒いでいます。これでは「美しい日本語」というのは、「繋ぎの部分」を正しく使えるかどうかという問題にすぎません。 しかし私にいわせれば、むしろ漢字のほう、つまり使える語彙が減ってきていることのほうが、より重大な問題です。それが日本語の危機の本質だと思います。仮名の部分にばかりこだわると、「繋ぎの部分」にだけ長けた人が出てきて、文法上の間違いもなく見栄えはすこぶるいいけれども、内容の乏しい日本語が生まれてくることにもなりかねません。■美しき二重言語の構造 以上述べてきたように、日本語というのは、音訓二併制と詞辞の分化という二つの意味において、漢字と仮名の二重性でかたちづくられています。このような特性をもった日本語が私たちの文化の中心にありますが、日本の周辺には、日本文化を相対化できる視点をもった言語、文化的集団が二つあります。そのひとつがアイヌです。言葉はあっても文字をもたない集団、それがアイヌです。 いまの子供たちがどんなに文字を知らない、勉強をしないといっても、基本的にまわりには文字が氾濫しています。テレビからも出てくるし、町にもいっぱい文字がありますから、その影響を子供たちは受けています。ところが、その文字がアイヌには存在しなかったのです。文字のない言葉、それがアイヌ語であり、それをこの孤島で担ってきたのがアイヌです。したがって、本質的な規定をすれば、この列島の言語における無文字のシンボルがアイヌ語だということになります。 無文字のアイヌが一方にあって、そのもう一方には、日本語を受け入れつつも、日本とは少し違う文化的な態度をとった地方があります。それが琉球です。これが日本語を相対化できるもうひとつの言語集団です。 前章でみてきたように、琉球は二重複線言語を受け入れています。「たまおどんのひのもん」のような漢字仮名交じりの碑を建てていることが、そのことを象徴しています。にもかかわらず一方で琉球は、そのもとになった大陸の単音節孤立語の中国語も受け入れています。二重複線言語である日本語と中国語をさらに二重に受け入れているのです。『漢字とアジア』4:沖縄における漢字・漢文・平仮名の状況『漢字とアジア』3:日韓併合、独立闘争あたり『漢字とアジア』2:ハングルの特徴『漢字とアジア』1:漢字文明圏の叡智
2024.09.01
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図書館で『漢字とアジア』という文庫本を、手にしたのです。漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【漢字とアジア】 石川九楊著、 筑摩書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より東アジアにおいて、漢字は単なる記号ではなかった。文明圏をかたちづくる中核として、日本では平仮名を、朝鮮ではハングルを、越南ではチューノムを生み出し、歴史を大きく動かしてきた。渤海の独立、沖縄の結縄、アイヌ社会の形成にも影響をあたえた漢字は、私たちの精神に何をもたらしたのか?鬼才の書家が、漢字文化の研究をもとに、より広い文明的な視野から東アジア2000年の歴史を読み解く。<読む前の大使寸評>漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪rakuten漢字とアジア「第9章 ヤポネシアの空間」で沖縄における漢字・漢文・平仮名の状況を、見てみましょう。p285~287■なぜ沖縄は漢文地帯にならなかったのか それでは、平仮名はいつごろ沖縄に入ってきたのでしょうか。沖縄が日本と接触する機会は古くからあって、遣唐使の中継地点としても使われていたのですから、その頃から当然いろいろな人たちが日本から沖縄に入っていますから、なんらかの形で、平仮名以前の万葉仮名も漢字と同様に入っていたと考えるのが自然です。 平仮名がどのように受け止められたかについて、東恩納千鶴子さんという人が『琉球における仮名文字の研究』という本を書いています。この本によると、「すでに12世紀頃には仮名文字が沖縄に移入されたと考えられるが、それを立証する資料がない」とあります。網野善彦さんなどもおそらくこの東恩納さんあたりの研究をもとに、12世紀頃には仮名文字、女手が沖縄に入っているといっています。それは十分にありうる話です。 ただ、女手を本格的に使いこなせるようになったことと、1429年に尚巴志が沖縄全島を統一したことのあいだに、かんれんがないわけではないと私は思うのです。つまり、「沖縄は、仮名文字が流入し、音写文字による沖縄語表記が可能になって、ヤポネシアとなった」のであり、このときに沖縄はヤポネシアになったと考えた方がいいと思います。 要するに、私が言いたいのはこういうことです。ヤポネシアをどのように捉えるべきかについてはいろいろな議論がありますが、そのひとつに、「もともと倭があった。北の方にはアイヌがいた。沖縄を含み込むようなかたちでもともとヤポネシアがあった。大陸から文化が移入されて、その中央部が中国化あるいは半島化され、その影響が遺された」という考えがあります。 ただ、私はそうは考えない。「平仮名が入り込んで、平仮名文を使いこなせるようになったときに、じつは沖縄が日本化され、そのとき初めてヤポネシアに入るようになった」というふうに考えます。このように考えた方が正確だと思うのです。 ここで大きな問題となるのは、「なぜ沖縄は漢語・漢文地帯にならなかった」ということです。もしも漢語・漢文地帯になるとすれば、まず台湾からです。台湾が漢語・漢文地帯になって、ここに漢文で治める王が生まれて台湾を統一し、現住民をの言葉を圧倒して漢語化が進む。沖縄もそこに組み込まれるか、あるいは沖縄にもまた少し違う王が生まれる、という姿になっただろうと思います。 なぜ沖縄は漢文地帯にならなかったのか。その理由は、ひとつには島が小さかったからだろうと思います。国家というものは、いくつかの地方勢力がぶつかりあい、その後にはじめて形成されるものです。その点では、沖縄はやはり限界があります。琉球弧は端から端までの距離がものすごく長く、日本列島と同じくらいの距離をもっていて、かつ、一つひとつの島が小さく人口も少ない。 そうすると、そこでは中国式の支配の思想、要するに儒教思想であるとか、あるいは政治制度を本格的に学ぶ必要がない。なぜか。それこそ平和な嵩算のもとに生きている無文字の村落共同体が数多くあり、そういう環境では支配者である王は、中国式の支配の思想を学ぶよりも、平仮名という表音文字をうまく受け入れていった方が簡単に統治できたであろうからです。 要するに、自前の言葉を書き表す上で、平仮名は非常に便利なものであったために、沖縄は漢文地帯にならず平仮名―漢字文明圏になったのだと思います。 沖縄は、小さい島がいっぱい繋がっているという地形的な特殊性ゆえに、平仮名を受け入れたわけです。沖縄に平仮名が入り込むことによって、琉球は日本化したのでしょう。『漢字とアジア』3:日韓併合、独立闘争あたり『漢字とアジア』2:ハングルの特徴『漢字とアジア』1:漢字文明圏の叡智
2024.08.31
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今回借りた3冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「月刊雑誌」でしょうか♪<市立図書館>・世界(2024年7月号)・Newton(2024年5月号)・図書館のお夜食<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【世界(2024年7月号)】雑誌、文藝春秋、2024年刊<出版社>より【特集2】日本の中の外国人 日本に暮らす外国人は340万人を超える。働く現場は、小売、流通、介護、製造、建築、農業、漁業など多岐にわたる。だが、その法的地位は常に不安定だ。奴隷労働との批判が強かった「技能実習制度」に代わり、新たに「育成就労制度」が創設されるが、看板と実態には依然へだたりがある。容易に永住権取り消しができる入管法改正案も準備され、安定して日本で暮らす人々も生活をおびやかされている。難民の受け入れは依然として少なく、3回目以上の申請は強制送還が可能に。排外主義からくるヘイトにさらされる人々もいる。<読む前の大使寸評>追って記入iwanami世界(2024年7月号)【Newton(2024年5月号)】雑誌、ニュートンプレス、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌につきデータなし<読む前の大使寸評>追って記入rakutenNewton(2024年5月号)【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食
2024.08.28
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在9位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在8位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在32位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在34位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在20位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在5位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在11位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在5位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在24位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在8位・消費者金融ずるずる日記(8/27予約、副本6、予約113)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』・原爆裁判:延滞資料があり予約不可<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵・書いてはいけない日本経済墜落の真相:図書館未収蔵・ボクはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2・金水敏『よくわかる日本語学』・闇の中国語入門<予約分受取:5/10以降> ・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取)・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、6/05受取)・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、8/06受取)・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、8/27受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【消費者金融ずるずる日記】 加原井末路著、三五館シンシャ、2024年刊<「BOOK」データベース>より1990年代の半ば、30歳のときに足を踏み入れ、50歳で退職するまでの20年を私はこの業界ですごし、お金にまつわる悲喜こもごもを目撃した。私が在籍した期間は、消費者金融業界が栄華を極めてから、2010年の法改正施行を経て、没落していく年月でもあった。-本書にあるのはすべて私の実体験である。「お客を追い込む仕事」。サラ金社員が経験した、貸し手と借り手のお金の修羅場。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten消費者金融ずるずる日記【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.08.28
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図書館で『世界SF作家会議』という本を、手にしたのです。世界SF作家会議ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【世界SF作家会議】フジテレビ/早川書房編集部【編】、早川書房、2021年刊<出版社>より新井素子、冲方丁、小川哲、高山羽根子、樋口恭介、藤井太洋という現代日本を代表するSF作家が集結。緊急会議を行い、全人類に突きつけられた課題を徹底討論する。劉慈欣、ケン・リュウほか海外SF作家が緊急参加、提言を行う。司会:いとうせいこう、大森望<読む前の大使寸評>追って記入kinokuniya世界SF作家会議いとう:大森:まず「第1回 世界SF作家会議」で司会のいとうせいこうさんと顧問の大森望さんの対談を、見てみましょう。p11~13<第1回 世界SF作家会議>いとう:こんばんわ、いとうせいこうです。世界SF作家会議、はじまりました。新型コロナウイルスが話題になっていますが、これによって世界が今どういうふうに変わっていくのかかを最もよく知るには、SF作家に集まってもらうしかないんじゃないかと思っておりまして、SF作家の想像力に期待しております。お隣は、世界SF作家会議顧問、大森望さんです。よろしくお願いいたします。大森:顧問の大森です。よろしくお願いします。いとう:確かに、70年代ぐらいまでは、世界の問題はSF作家がよく発言していましたし、訊かれていましたね。大森:そうですね。テレビでもSF作家の人が、アポロが月に着陸してこの先このどうなりますかとか、訊かれてコメントするのが仕事みたいな。いとう:80年代ぐらいから訊かれなくなってしまったのかなと。なんでだかはわからないですけれども。その精神に立ち返ってやってみたいと思います。SF作家は日々、未来のことを考えているのが仕事ですから、『未来のプロ』ともいえるわけで。アフターコロナの世界はどのようになるのか、SF作家の皆さんに考えていただきたいと思います。われわれのやっていることは意義あることなんですよね。大森:もちろんです。どんな突拍子もないアイデアがSF作家から出てくるのか楽しみですね。普通の人が考えないようなことを考えることが仕事なので、なにそれ? と思うようなこともあるかもしれませんが、それがSF作家の役目ですから。いとう:5年、10年して、その通りだったということもいろいろあると思います。大森:千年後に正しかったとわかるとか。地質年代で考えるとか。小松左京さんがよくおっしゃっていましたけど、一億年もすれば人類の痕跡なんて消えてなくなるんだから、地球の歴史にとっては環境問題なんて屁でもないと。いとう:大幅にとりましたね。大森:それぐらいのスケールになるとどうでもよくなるという。いとう:SF作家が一堂に会するといえば、いま小松左京さんの話も出ましたが、今から50年前の大阪万博の時に世界中のSF作家が集まったというのがありましたよね。大森:国際SFシンポジウムですね。当時まだ、鉄のカーテンというのがあって、西側のSF作家が東側のSF作家と会うことは一切なかった。ところが、万博の年の日本で、英米カナダのSF作家とソ連のSF作家が史上初めて同席したんです。いまから50年前、そういう歴史的なイベントが日本で行われていたんですね。いとう:先見的じゃないですか。大森:そうです。このシンポジウムのために来日した、『2001年宇宙の旅』で有名なアーサー・C・クラークが小松左京とテレビで対談したりね。いとう:すごいですね。それから50年ですか、本当にもう一度SF作家の頭脳に頼るときがきたということで、今宵、世界SF作家会議に参加する作家の皆さんをご紹介いたしましょう。
2024.08.27
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図書館で『漢字とアジア』という文庫本を、手にしたのです。漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【漢字とアジア】 石川九楊著、 筑摩書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より東アジアにおいて、漢字は単なる記号ではなかった。文明圏をかたちづくる中核として、日本では平仮名を、朝鮮ではハングルを、越南ではチューノムを生み出し、歴史を大きく動かしてきた。渤海の独立、沖縄の結縄、アイヌ社会の形成にも影響をあたえた漢字は、私たちの精神に何をもたらしたのか?鬼才の書家が、漢字文化の研究をもとに、より広い文明的な視野から東アジア2000年の歴史を読み解く。<読む前の大使寸評>漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪rakuten漢字とアジア「第5章 ハングルと朝鮮文化」で日韓併合、独立闘争あたりを、見てみましょう。p177~181■朝鮮の近代と「洋擾」 明治維新後、日本の新政府は朝鮮に国書を送るのですが、「徳川時代とは違う」という理由で、朝鮮は国書(書契)の受け取りを拒否します。そこで、明治政府は、「維新が起こって天皇が親政するようになった」という旨の外交文書を、対馬藩を通して朝鮮に送るのですが、そこに「皇」と「勅」という字があるという理由でまたしても朝鮮側は受け取りを拒絶します。なぜかというと、「皇」は中国皇帝、「勅」は皇帝の勅書のこと。 これらの文字を含んだ文書は、朝鮮が冊封している中国皇帝からしか来ないものだからです。「こんな国書を受け取ったら、中国皇帝から何を言われるかわからない」のです。 朝鮮にしてみれば、日本は友邦ではあっても、日本に冊封されているわけではないから、「皇」「勅」という字が記された文書を受け取るいわれはないのです。 それで、副島種臣(幕末・明治時代の外交家)がまず清国へ行って、「朝鮮は貴国の属国であるか」と問い質すのです。すると清国は、「そういう関係ではない」と回答する。それを受けて、朝鮮へ出向いてその矛盾を質さねばならないという議論が生じます。それがいわゆる征韓論です。 西郷隆盛は、「自分は副島君ほどの外交能力はないかもしれないし、副島君ほどの成果を上げられないかもしれないけれども、向こうへ行って腹を切って死ぬことぐらいはできる」というような言い方をしたようです。それで、「西郷は戦争をする気だ」ということになる。もちろん西郷にまったく下心がなかったわけではないことは、その後の歩みを見れば明らかではありますが。 征韓論争のポイントになるのは、「清が朝鮮は属国ではないといっているのが本当かどうかを朝鮮にじかに確かめにいく」というところにあったのです。 その後、結局朝鮮は、日本を皮切りに、アメリカ、イギリス、イタリア、ロシア、オーストリアとそれぞれ通商条約を結んでいきます。ところがその条約を調印した後に朝鮮は、「朝鮮は中国の属邦」という声明書を相手国に送るのです。これは一種の中国を後ろ盾にした安全保障です。つまり、朝鮮は小国だと見なされるとあぶないので、中国が後ろ盾にあることを誇示しているのです。■大韓帝国の成立 前述したとおり、李朝の終わりの頃には、「朝鮮は中国の藩国である」という宣言をすることによって、植民地化を逃れようとしました。その朝鮮が冊封体制から離れ、近代において独立したのは1897年から1910年までのわずか13年間にすぎません。 1897年に国号を朝鮮から大韓帝国に改めます。日本が大日本帝国と名乗っていたので、それにあわせるように、朝鮮も大韓帝国としたのです。ここではじめて国王が皇帝になります。 これはわずか100年ほど前の話で、そんなに古い話ではありません。それから13年間、中国(清)との宗属関係下の王政を廃し、皇帝を名のる大韓帝国として皇帝専制による国家を始動させたのですが、すでに日本の日韓併合の方向は決定していて、1910年に、「韓国併合ニ関スル条約」が調印され、日韓が併合(日本の植民地化)して国号を朝鮮と改め、朝鮮総督府が設置されます。『漢字とアジア』2:ハングルの特徴『漢字とアジア』1:漢字文明圏の叡智
2024.08.25
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図書館で『漢字とアジア』という文庫本を、手にしたのです。漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【漢字とアジア】 石川九楊著、 筑摩書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より東アジアにおいて、漢字は単なる記号ではなかった。文明圏をかたちづくる中核として、日本では平仮名を、朝鮮ではハングルを、越南ではチューノムを生み出し、歴史を大きく動かしてきた。渤海の独立、沖縄の結縄、アイヌ社会の形成にも影響をあたえた漢字は、私たちの精神に何をもたらしたのか?鬼才の書家が、漢字文化の研究をもとに、より広い文明的な視野から東アジア2000年の歴史を読み解く。<読む前の大使寸評>漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪rakuten漢字とアジア「第5章 ハングルと朝鮮文化」でハングルの特徴を、見てみましょう。p168~170■ハングルの特殊性 朝鮮語は日本語と同様に、語彙のなかで漢語の占める割合が50~60パーセントあると言われています。半分以上は漢語からなる言葉で、漢字を撤廃してハングル表記に変えたところで、日本語を片仮名表記するようなものです。あくまでもハングルの裏には漢字が貼りついています。 漢語については、その漢字一字一字が本来もっている意味を捨象して、ただ音だけを写しているにすぎないのです。■ハングルの三つの特徴 ハングルは上述したような特徴をもっています。そのハングルの特殊性を整理すると、次の三点が指摘できます。 まず「中国音の挑戦訛り化」ということです。ここで間違ってはならないのは、挑戦は日本と異なり、基本的に政治の上層部は漢語・漢文の世界に生きつづけていたという事実です。 上層部の指導者は、公用としてはずっと中国音でしゃべっていた。その音をハングルで書き、それが朝鮮式にいわば訛って定着されたのです。あるいは社会の下層部までいって訛った中国音が、そこに定着されたのです。それが朝鮮語の漢字音になっています。 二つ目は「漢字単位表記」です。ハングルの子音記号・母音記号を漢字の単位に従って表記します。母音記号や子音記号を縦や横に綴るのではなく、漢字に従って一枡にまとめますから、線状に綴ることができません。これはハングルに「筆記体がない」ということでもあります。日本には平仮名と片仮名がありますが、平仮名は筆記体のみがあり、片仮名には筆記体がありません。 筆記体というのは、語を単位に続字・分書(わかちがき)しようとする指向性をもった文字です。言葉は単語単位でまとまろうとするものです。 たとえば、続字・分書の方向に沿って生まれた平仮名では、「あめ が ふる」というように、文章がつくれます。ところが、漢詩・漢文の間に分け入って翻訳するために開発された片仮名では「ア・メ・ガ・フ・ル」と「アメ」や「フル」も連合するようには書かれず、「アメ ガ フル」というかたちの綴字にはぎこちなさがつきまといます。 平仮名の場合であれば「あめ」の二字や「ふる」の二字が連続することに何の不都合もありません。「雨」と思って「あめ」とすんなり書けずに「ア・メ」と書かなければならないとすると、なめらかな思考が断たれてしまいます。片仮名では独立した文章や歌が成り立ちにくいのです。 続字できないという点において、ハングルは片仮名に近い。先に見たようにハングルの場合は、朝鮮地方特有の言葉(国語)も漢字語も一字一字を楷書の漢字のような単位で表記するため、続字ができないのです。 ハングルは非常に難しい位置にある文字です。片仮名と似た性格をもちますが、いわば漢語を前提にそれを普及させるためにできたハングルにおいて、その専用によって漢語との繋がりをわからなくすることは、文化的にも非常に損失だと思います。 ましてや朝鮮式に訛って表記されているのですから、ますます漢語との繋がりがわからなくなり、造語力も落ちます。そういう意味で、ハングルというのは非常に難しい位置にある文字だと思います。漢字ハングル交じり表記に戻るほうが、文化的には得策だと思われます。『漢字とアジア』1:漢字文明圏の叡智
2024.08.24
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図書館で『漢字とアジア』という文庫本を、手にしたのです。漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【漢字とアジア】 石川九楊著、 筑摩書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より東アジアにおいて、漢字は単なる記号ではなかった。文明圏をかたちづくる中核として、日本では平仮名を、朝鮮ではハングルを、越南ではチューノムを生み出し、歴史を大きく動かしてきた。渤海の独立、沖縄の結縄、アイヌ社会の形成にも影響をあたえた漢字は、私たちの精神に何をもたらしたのか?鬼才の書家が、漢字文化の研究をもとに、より広い文明的な視野から東アジア2000年の歴史を読み解く。<読む前の大使寸評>漢字文明圏について触れた本ってか・・・面白そうではないか♪rakuten漢字とアジアまず「序章 漢字文明圏とは何か」で漢字文明圏の叡智を、見てみましょう。p17~20<言語と文字から歴史を読みなおす> アメリカ依存の政権ができてからというもの、下火になりましたが、ヨーロッパの「EU」に倣って2000年代初頭には「AU(アジア連合)」という言葉が生まれました。また1990年代以降の急速な中国の経済発展とともに「東アジア」なる言葉もよく耳にし、目につくようになりましたが、それでは、東アジアとは、どのように定義すればよいのでしょか。 結論的にいえば、日本、中国、韓国・朝鮮、台湾、越南(ベトナム)が含まれる東アジアというのは、単なる地理的な概念ではありません。「漢字文明圏」というかたちで括ることのできる歴史的、地理的、文化的な共通性をもつ地域です。 たとえば、イスラムは地理的にいえば西アジアということになりますが、それでは東アジアと西アジアと合わせてアジアという定義づけが可能かというと、私にはそうは思えません。 東アジアというのは地理的な概念ではなく、「漢字文明圏」つまり「有文字・無宗教の歴史的、地理的、文化的地帯である」とわたしは定義したいと思います。とりあえず、「漢字文明圏」と表現しましたが、「一文字が一語である漢語文明圏」と言う方が正確です。 西欧アルファベット、アラビア系文字、インド系文字とは異なり、漢字は一語が一字、つまり「言葉即文字(漢語=漢字)」という構造をもつ、よりも優先の言葉であり、それゆえ、変化しにくく、水圧も高い言葉です。 東アジアの各国は、例外なく、この漢語・漢字を共通項としてもつことによって生まれ、括られ、再生産されている地方であり、また、この漢字に対する戦略の違いによって、中国、日本、朝鮮・韓国、越南などの国が生まれています。ちなみに漢語依存率は、中国では九割以上、越南は七割、日本や朝鮮・韓国でも五割以上を占めます。 アジア的段階の前にアフリカ的段階という概念を持ち込んだのは詩人にして思想家・吉本隆明さんですが、私の解釈ではアフリカ的段階とは無文字段階を意味します。東アジアは文字を持っており、かつ、宗教を持つヨーロッパなどとは違い無宗教です。有文字・無宗教の歴史的、地理的、文化的地帯、また歴史段階を東アジアと規定できると思います。 ただしこのときに、日本には仏教や神道があるではないか、朝鮮にも儒教やキリスト教、また道教もあるではないか、と考える人も多いと思います。しかしこれらは今私がここで使う宗教という範疇には入りません。それらは無宗教のなかでの政治思想や学問であったり、週刊であったり、世界観であったりというレベルのもので、宗教ではありません。宗教といったところで、いずれも、これらは近代以降、西欧キリスト教をモデルに再構成されたそれにほかなりません。 2001年の9.11事件を経て、これから世界の人類がどういう方向に向かうのかを考えるときに、吉本さんが規定するようなアフリカ的段階、ヘーゲルやマルクスがいうところのアジア的段階を経て、そのあとつづいて古代、中世、近世、近代、現代と区分される時代があるという西欧型の歴史観は、民主制的近代化を促すという意味で、有効な歴史観として機能したことは事実です。しかし、同時にまたその限界も見えてきたように思われます。 たとえば、少々強い言い方をすれば、東アジアにおいては、紀元前三世紀、秦の始皇帝時代に、基本的には宗教段階を終えていますから、西欧やイスラムが二次的に衣替えしたとはいえ、いまだ宗教的な観念の宇宙を払拭しきれていないことは、西欧は秦の始皇帝時代以前の歴史段階にとどまっているという言い方さえできないわけではありません。また、中央集権の郡県制と地方分権の封建制のあやとしての政治制度や中華・華夷性の国際外交制度をもつ先進地方でありつづけました。孔子をはじめ諸子百家の脱宗教=政治化んための言説や為政者のための倫理、道徳が、現代日本の経営者にも役立つのはそれゆえです。 言葉から離れられない人間の歴史を、言葉のスタイル、とりわけ、文(書き言葉)と言(話し言葉)の関係、つまりは言語に対する文字の関係から分類して世界史を考えなおすのが本書の狙いです。 その新しい歴史観では、言葉即文字の、文(書き言葉)中心の構造をもつ東アジアの漢字文明圏がまずひとつあります。次いで第二に、発音記号のごとき文字しかもたない、言(話し言葉)中心の構造をもつ欧米・西アジア・南アジア・北アフリカの宗教文明圏があります。これは子音と母音をもつアルファベット文明圏と、子音優位のイスラム文明圏と、母音優位のインド文明圏の三つの文明圏に分けられます。さらに、もうひとつ第三のアフリカ的な無文字文化圏を想定し、大きくはこの三極の歴史の総合として考えていくというものです。 むろん、東アジア漢字文明圏が西欧やイスラムなど他の文明圏と対立するというわけではありません。かつて、「東洋的叡智」という言い方がありましたが、はじめにお話ししたように東アジアは宗教をすでに脱した歴史段階にあり、西欧よりも先の思考をすでに持っています。その東アジア的叡智が生きて活躍できる場もまた21世紀に確実にあると思われます。
2024.08.24
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図書館で『文・境雅人』という文庫本を、手にしたのです。境雅人という気になる役者のエッセイってか・・・面白そうではないか♪ところで、NHKの早朝番組『卜伝紀行』で時代劇を演じる境雅人さんであるが・・・若くて殺陣も上手だし、なかなかのもんやでぇ♪*********************************************************【文・境雅人】境雅人著、文藝春秋、2013年刊<「BOOK」データベース>より堺雅人は鞄に原稿を書くための道具を入れて、持ち歩いている。撮影の合間に楽屋で、休みの日に喫茶店で、「演じる」ことについて考え、文章にするのだ。そうして生まれた54作の本格エッセイに加え、作家の宮尾登美子氏、長嶋有氏との対談やインタビュー、写真を掘り起こして収録。役者の思考や日常が垣間見える一冊。出演作品リスト付き。<読む前の大使寸評>境雅人という気になる役者のエッセイってか・・・面白そうではないか♪rakuten文・境雅人半世紀ほど昔の自動車学校といえば、指導教官の教え方が怖いことで知られていたが、今では優しくなっているようですね。「学」で自動車学校が語られているので、見てみましょう。p81~85<学> ふと思いたって自動車教習所にかようことにした。 あたりまえだが生まれてはじめての運転だ。 アクセルをふんで加速しても、ブレーキをかけて減速しても、ものめずらしさにいちいち興奮してしまう。 刺激的な毎日でありがたいのだが、ヒトははじめての経験をするときは余裕がなくなってしまうものらしい。 指導教官からなにか注意をうけるたびに、ふくれたり、シュンとなったり、弁解しようとしてみたり、投げやりになってみたりと、実にいそがしい。 自分がこんなに情緒ゆたかな人間だなんておもってもみなかった。 まるで中学生のような傷つきやすさだ。 もちろん僕は32なので、なるべく取りみださないよう気をつけてはいる。それでも時々おそろしく険しい目つきで説明をきいていたりするのだ。 先生にしてみればいい迷惑だろう。自動車学校の生徒がみんな僕のようなら、先生がたには同情すらおぼえてしまう。 そもそもモノをおしえる職業には、一種のものがなしさがつきまとう。 生徒たちのハラハラドキドキにつきあってなだめすかして慣れさせても、落ちついた生徒はサッサと卒業してしまう。 生徒たちにとってがっこうはなにかを教わる場所なので、あたらしい経験ができなくなればもうその場所に要はないのだ。 ながい時間をかけて運転技術をおしえたところで、教え子がドライブに誘ってくれたりすることはない。生徒たちは初めての経験をおえて次々といれかわっていき、教師だけがおなじ場所にとどまりつづける。 さびしくなったりしないのだろうか。 教師に同情する生徒なんて気味がわるく、先生がたにはかえって迷惑かもしれない。いま教師役をやっていてついついそんなことを考えてしまうのだろう。 映画『ハチミツとクローバー』は美術大学の学生5人が主人公だ。 彼らはいつも仲がよく、撮影していないときでもみんなでワイワイとたのしそうだ。学生役の5人のうち、加瀬亮さんや伊勢谷友介さんは僕と年齢もあまりかわらない。(中略) ところで、自動車教習所だが、ひと月ほどで無事に卒業することができた。 けれどもいま欲しいクルマは、補助ブレーキのついた教習車だったりする。もちろん指導教官つきだ。二人でのんびりドライブするのもわるくない。 先生がたにとってそれが一番迷惑なハナシだとはおもうけど。『文・境雅人』2:「酒」のお話し『文・境雅人』1:まえがきにかえて
2024.08.21
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図書館で『墜落』という本を、手にしたのです。次期支援戦闘機開発がアメリカからの横槍で純国産できなくなるというお話しのようで・・・面白そうではないか♪*********************************************************【墜落】真山仁著、文藝春秋、2022年刊<「BOOK」データベース>より2022年6月金城華が夫の一を刺殺。DVに耐えかねた妻が夫を殺した単純な事件として解決するはずだった。しかし、担当検事の冨永真一は不審を感じ、自ら捜査に乗り出す。ほぼ時を同じくして糸満市で自衛隊の戦闘機の墜落事故が発生。民間人が死亡したことで軍事基地が集中する沖縄では、抗議デモが巻き起こる…。かつてない臨場感で沖縄の姿を炙りだす、冨永検事シリーズ第三弾にして最高傑作!<読む前の大使寸評>次期支援戦闘機開発がアメリカからの横槍で純国産できなくなるというお話しのようで・・・面白そうではないか♪rakuten墜落まず冒頭の語り口を、見てみましょう。p6~9<プロローグ> 1987年10月23日、アメリカ・カリフォルニア州エドワーズ空軍基地・・・。 航空自衛隊航空開発実験集団所属のテストパイロット楢原隼人三佐は、F—16の複座で荒っぽい操縦に耐えていた。 いや、この振動や不快感は、パイロットの腕によるものだけではない。明らかに、機体から放たれる違和感だ。 元々、F—16は、世界最強にして最速と言われながら高価すぎたF—15の反省を踏まえ、LCF=低価格戦闘機というコンセプトで設計製造された。 エンジンにしても、プラット・アンド・ホイットニー社のF100ターボファンエンジンを二基搭載しているF—15と異なり、F—16は、シングルエンジンだ。装備も軽装で、威圧力がない。 軽佻浮薄という言葉がぴったりで、LCFは、低性能戦闘機という意味じゃないのか、という陰口を聞いたこともあった。 前評判通り、低コストなりの乗り心地だ。こんなボロ戦闘機をベースに、「俺たちの戦闘機」を開発しなければならないのか。だが、メーカーも技本(防衛庁技術研究本部)も、「原型が分からなくほどのスーパー戦闘機をつくる!」とやる気満々なのだ。 彼らの情熱のためにも、俺はこのクソ原型機の長所と欠点を洗い出さなければならない。“ヘイ、ハヤト、そろそろ帰還するが、何かリクエストはあるか” 操縦稈を握る米軍のテストパイロットの声がヘルメットに内蔵されたイヤホンを通じて響いた。あと数十分もこんな下手くそパイロットの後ろに乗るなんて、地獄そのものじゃないか。 早く地上に帰してくれ! と言いたいところだが、まだ、確認しておきたい点が残っている。「きりもみで急降下した後、急上昇してほしい」“任しとけ!” 機体はいきなり先端を下方に向け、急降下に入った。さすがにメリケンは洗いな。楢原は、こんな強引な操縦は絶対にしない。文句の一つも言いたいところを堪え、楢原は奥歯を食いしばって加速度に耐えた。 フリーフォール状態で数回スピンする中、機体の状態を分析する。 想像以上に安定性が悪い。 そのまま失速して墜落するのではと感じた時、ようやく機体が向きを変えた。無理な方向転換のせいで、全身にかかるGは、強烈だった。 機体にかかる負担も相当なもので、悲鳴のような振動が始まる。 全身を集中力の塊にする時間が続いた後、不意に機体は青い空に向けて急上昇に切り替わった。 着陸後のフィードバックが終わるのを待ちかねたように、同行している枝本の技官が近ずいてきた。「先ほど、本局から連絡があったのですが、次期支援戦闘機は、日米共同開発に決定したという通達が、官邸から防衛局長に下されたそうです」 85年9月、枝本は「FSXの国内開発は、エンジンを除いて日本単独で充分可能」という答申を政府に出す。それは枝本が「零戦復活を目指す」という狼煙と言えた。 全て自前で開発する「純国産戦闘機」の実現が、航空自衛隊にとって、いや日本国にとっての彼岸だった。 ところが、開発が緒に就いた矢先に、アメリカから、「純国産はまかりならない」という横槍が入った。 基幹開発業者である大亜重工や枝本からは、悲嘆の声が上がるが、すぐに「アメリカの既存機をベースにしさえすればいいのであれば、徹底的に改造すればいい」と発想転換を行う。 防衛庁は粘り強く交渉を重ね、なんとかF—16を独自に改造することの内諾を取る。それがFSX開発計画だった。そこで楢原はベースとなるF—16の性能を調査するために、エドワーズ空軍基地で、性能確認と分析作業を続けていたのだ。 なのに、いきなり官邸から一方的な通告が来るとは。「局長は、それを受け容れたのか」「らしいです」 1週間前、わざわざエドワーズ空軍基地まで出向いて、「ハードネゴシエーションは必至だが、俺を信じてくれ」と楢原に胸を叩いた男の約束とは、その程度か。「空幕長はなんと?」「抗議したそうですが、官邸の決定は絶対だと一蹴されたそうです」 官邸の決定ではなく、アメリカの命令だろう。「悪い、ちょっとタバコを吸ってくる」 ひとり建屋を出た楢原は、見渡す限り砂漠しか見えない場所まで歩いて、腹の底から大声を上げた。 怒りなのか、哀しみなのかも分からない大きな感情の塊が一気に噴き出した。 俺たちは、何一つ自分たちで決めさせてもらえないのか。 そんなことで、自分の国をどうやって守るんだ! 声を張り上げたせいか、涙が溢れ出た。 もう一度、声を張り上げた時、耳をつんざくような音が轟き、上空をF—16二機編隊が通過した。
2024.08.19
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今回借りた4冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪なお「墜落」は借りていたが期限内に読み切れず、再度借りたものです。<市立図書館>・墜落・漢字とアジア・杉原千畝の実像・世界SF作家会議<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【墜落】真山仁著、文藝春秋、2022年刊<「BOOK」データベース>より2022年6月金城華が夫の一を刺殺。DVに耐えかねた妻が夫を殺した単純な事件として解決するはずだった。しかし、担当検事の冨永真一は不審を感じ、自ら捜査に乗り出す。ほぼ時を同じくして糸満市で自衛隊の戦闘機の墜落事故が発生。民間人が死亡したことで軍事基地が集中する沖縄では、抗議デモが巻き起こる…。かつてない臨場感で沖縄の姿を炙りだす、冨永検事シリーズ第三弾にして最高傑作!<読む前の大使寸評>追って記入rakuten墜落【漢字とアジア】 石川九楊著、 筑摩書房、2018年刊<「BOOK」データベース>より東アジアにおいて、漢字は単なる記号ではなかった。文明圏をかたちづくる中核として、日本では平仮名を、朝鮮ではハングルを、越南ではチューノムを生み出し、歴史を大きく動かしてきた。渤海の独立、沖縄の結縄、アイヌ社会の形成にも影響をあたえた漢字は、私たちの精神に何をもたらしたのか?鬼才の書家が、漢字文化の研究をもとに、より広い文明的な視野から東アジア2000年の歴史を読み解く。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten漢字とアジア【杉原千畝の実像】古江孝治著、 ミルトス、2020年刊<「BOOK」データベース>より第二次世界大戦中、外交官だった杉原千畝は外務省の方針に反して日本通過ビザを発給し、多くのユダヤ人を救った。杉原はなぜビザ発給の決断に至ったのか。そしてその覚悟とは…。多くの資料を紐解き、様々な証言や時代背景に照らして、知られざるその理由に迫る!<読む前の大使寸評>追って記入rakuten杉原千畝の実像【世界SF作家会議】フジテレビ/早川書房編集部【編】、早川書房、2021年刊<出版社>より新井素子、冲方丁、小川哲、高山羽根子、樋口恭介、藤井太洋という現代日本を代表するSF作家が集結。緊急会議を行い、全人類に突きつけられた課題を徹底討論する。劉慈欣、ケン・リュウほか海外SF作家が緊急参加、提言を行う。司会:いとうせいこう、大森望<読む前の大使寸評>追って記入kinokuniya世界SF作家会議
2024.08.19
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図書館で『文・境雅人』という文庫本を、手にしたのです。境雅人という気になる役者のエッセイってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【文・境雅人】境雅人著、文藝春秋、2013年刊<「BOOK」データベース>より堺雅人は鞄に原稿を書くための道具を入れて、持ち歩いている。撮影の合間に楽屋で、休みの日に喫茶店で、「演じる」ことについて考え、文章にするのだ。そうして生まれた54作の本格エッセイに加え、作家の宮尾登美子氏、長嶋有氏との対談やインタビュー、写真を掘り起こして収録。役者の思考や日常が垣間見える一冊。出演作品リスト付き。<読む前の大使寸評>境雅人という気になる役者のエッセイってか・・・面白そうではないか♪rakuten文・境雅人「酒」のお話しが面白いので、見てみましょう。p27~30<酒> 若山牧水(1885~1928)は僕の故郷、宮崎の歌人である。「旅と酒の歌人」などともよばれていて、このふたつをうたった作品はかずおおい。 このうち酒にかんしていえば、26ですでに、 白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり なんて歌をよみ、肝臓をわるくして44でなくなっている。 酒ずきもここまでくれば芸術的なすごみさえかんじられるというものだ。いちど牧水と酒をのんでみたかったような気もするのだが、ちょっとオソロシイ気がしないでもない。もっとも、牧水は前掲した歌のように、ひとりでのむ酒がすきだったらしい。けっして酒癖がわるいタイプではなかったのだ。友人の北原白秋によると、「どうでもしなはれ」が酔ったときの口癖だった、という。 郷土の大先輩とくらべるのはおこがましいけれど、僕の酒癖も牧水とすこしにている。はじめのうち(日本酒で二合くらい)は会話もはずんでたのしいお酒だが、のみすぎると(日本酒で四合くらい)たのしくなりすぎて、どうでもよくなってしまうのだ。 こうなると、たいていのことは「ほめコトバ」にきこえてくるし、深刻な話題にもヘラヘラと相槌をうてるようになる。ちょっとした解脱、といってもいいかもしれない。 それにしても、俳優さんにはどうしてこんなに酒ずきがおおいのだろう。かの世阿弥も『花伝書』で、・・・好色、博奕、大酒、三つの重戒、これ古人のおきてなり などといっているくらいだ。むかしから役者は、ほうっておくと酒をガブガブのんでいたのである。 女遊びやギャンブルも禁止されているところをみると、本当にろくでもないことばかりしていたのだろう。もっとも、そうおもうと気分はすこし軽くなる。みんながみんな、ロバート・デ・ニーロのようにストイックな俳優ではなかったというわけだ。 そういえば去年の大河ドラマ『新撰組!』のメンバーも、みんな酒がつよかった。 僕も宴はきらいではない。よくつきあって飲んでいたのだが、彼らのあまりの酒量に、そのうち僕とは別人種なのだとおもうことにした。アルコール分解酵素などという問題ではなく、基礎体力からちがうらしい。そもそも、ねむらないのである、彼らは。 宴が深夜におよんでくると、みんなくちぐちに、「あした早いから、このまま朝までのんでいよう」 なんてことをいいだす。気がついた時点で、サッサと家にかえればいいのではないだろうか。 さらにくやしいのは、翌日、フラフラの彼らがいい芝居をみせることだ。余計なりきみや自意識がなくなって(それどころではないのだろう)じつに自然で、まっすぐな演技なのである。 これも一種の「どうでもしなはれ」だ。こうした手合いは、けっして無理にはりあおうとせず、遠巻きにながめておいたほうがいい。なにしろ相手はちょっと「解脱」しているのである。『文・境雅人』1:まえがきにかえて
2024.08.18
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図書館で『文・境雅人』という文庫本を、手にしたのです。境雅人という気になる役者のエッセイってか・・・面白そうではないか♪*********************************************************【文・境雅人】境雅人著、文藝春秋、2013年刊<「BOOK」データベース>より堺雅人は鞄に原稿を書くための道具を入れて、持ち歩いている。撮影の合間に楽屋で、休みの日に喫茶店で、「演じる」ことについて考え、文章にするのだ。そうして生まれた54作の本格エッセイに加え、作家の宮尾登美子氏、長嶋有氏との対談やインタビュー、写真を掘り起こして収録。役者の思考や日常が垣間見える一冊。出演作品リスト付き。<読む前の大使寸評>境雅人という気になる役者のエッセイってか・・・面白そうではないか♪rakuten文・境雅人まず「まえがき」らしきあたりを、見てみましょう。P10~14<始 まえがきにかえて>「1988年」というのは、僕がかよっていた宮崎の県立高校にとって、ちょっとした記念の年になっている。ちょうどその年、野球部が夏の甲子園大会に初出場したのだ。僕が入学する1年ほど前のことである。 甲子園なんて、地方の効率普通科高校にとって快挙ともいえる出来事だろう。記念すべき「1988年」は、ほかの部活動やそのシーズンの受験生もがんばって、学校全体がずいぶん盛りあがった1年だったらしい。 けれどももちろん、そんなことは入学していない僕たちには知るよしもないことだ。先輩や教師たちはしばしばその「1988年」の思い出をわれわれ新入生に語ってくれたのだが、そのハナシをきくたびに、いつも僕は東京オリンピックと、その後の高度経済成長を連想することになった。 僕が入学した年(つまり1989年)も、はじめのうちはそうしたムードがつづいていて、行内にはざわざわした期待感がただよっていた。今年もなにか予想もつかない、ワクワクするようなことがおこるのではないかといった、そんな期待感だ。まるで、たくさんの残り火がもういちど盛大に燃えあがるのを待っているような、不思議な雰囲気だった。 お祭りのあとの、余熱のような一年。1989年は、僕の高校にとってそうした意味をもっている。 20年ちかくたった今でも「1989年」の春のことをおもいだそうとすると、たかく舞いあがっていたものが落下する直前の、ふわりとした無重力感のような、そんなとりとめのない気持ちになってしまう。あるいは春というものは、おおかれすくなかれヒトをそうした気分にさせるものなのかもしれない。 いやもしかすると、ハナシはもっとずっと単純で、ざわざわの原因は工事だったかもしれない。数年前から続いていた大規模な校舎の建て替えが、ちょうどその時期おわりかけていたからだ。 毎日つづく作業のため、空気はいつもホコリっぽく、たえずなにかの騒音がしていた。校内にはしきりに業者のトラックが出入りしていて、教員より工事関係者のほうがおおく目につくくらいだったし、立入禁止の場所もあちこちにあって、学校全体が仮住まい、という感じだった。(中略) 高校で同級だった友人たちにきいてみても「1989年」の春の様子をくわしく覚えている人間はほとんどいない。ちょうど、再開発された町並みが工事のあいだどんな様子だったのか、町ゆく人々がだれも記憶していないのと同じようなものだ。 町ゆくひとびとは便宜的に、時間を「一時停止」させて工事現場のまえを通りすぎる。どうせ、しばらくすればあたらしい風景があらわれるのだから、わざわざ立ち止まって眺めたりするものずきはいない。あたらしい建物が完成して、町がふたたび時を刻みはじめるまで、目のまえの風景を「なかったこと」にしているのだ。 工事のあいだの出来事は、しばらくは断片的な記憶として何人かの心に残るかもしれないが、やがてかんなくずをふりはらうように消えてなくなる。僕は卒業してから高校をたずねたことは一度もないけれど、もちろんそこにはあの年の春の痕跡なんてどこにもないだろう。かんなくずのように吹きとばされてしまったのだ。
2024.08.18
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在22位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在5位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在13位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在35位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在42位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在24位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在5位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在13位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在6位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在25位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在11位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』・原爆裁判:延滞資料があり予約不可<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・消費者金融ずるずる日記・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵・書いてはいけない日本経済墜落の真相・ボクはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2・金水敏『よくわかる日本語学』<予約分受取:5/15以降> ・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取)・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、6/05受取)・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、8/06受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.08.17
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図書館に予約していた『鉄道と愛国』という本を、待つこと8ヶ月ほどでゲットしたのです。この吉岡桂子というジャーナリストは、中国に関する確固たる洞察がええわけで、以前からフォローしているわけで・・・今回はシルクロードをめぐるホットな列車旅ですか♪【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。1990年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国「6「赤いはやぶさ」発車ベルはいつ? インド」からインドへの高速鉄道売り込みを見てみましょう。p200~210<6「赤いはやぶさ」発車ベルはいつ? インド> インドにとって初めての高速鉄道を、日本が協力して建設している。南西部の商都ムンバイから北上すること、約500キロ。首相のナレンドラ・モディの地元グラジャート州のアーメダバードと結ぶ構想だ。だが、建設をめぐる交渉は難航し、目標にしていた2023年の開業は、少なくとも5年は遅れる見通しだ。新幹線がインドの大地を駆ける日はいつか、来るのだろうか。(ここで8ページほど中略)■中国人ビジネスマンが語るインド新幹線 アーメダバードでは、郊外にあるサバルマティ・アシュラムに立ち寄った。インド独立の父として知られるマハトマ・ガンジーが住んでいたこともある場所だ。「鉄道で邪悪が広がります」。ガンジーは、著書『真の独立への道』(岩波文庫)で、そう語る。 ペスト、つまり感染症を広げるとして、鉄道を批判したのだ。南アフリカにいた若き日には有色人種として鉄道から降ろされたこともある。この経験は、のちの自由を求めた闘争につながる。インドに戻ってからは三等車に乗って、あちこちを訪ねたことで知られる。 インドの駅はガンジーの肖像画であふれている。ガンジーなら、新幹線に何を広げることを期待するだろうか。■伏せられた情報 この路線を新幹線が走る日はいつか。 目標にしていた23年の開業は、両政府内部では少なくとも28年まで延期されている。だが、正式には公表されていない。事業費の膨張や、その対応策についても明らかにされていない。ODAで円借款を投じるなら、日本政府は国民に向けてきちんと説明する必要がある。 新幹線の輸出そのものを否定するつもりはないが、不透明な事業の進め方には問題がある。海外のインフラ建設は巨額の円借款を投じるにもかかわらず、国内の公共事業に比べて納税者の監視の目が届かない。私がこだわって取材を続ける大きな理由だ。 インドにとって高速鉄道の建設が初めてなら、インフラ輸出に力を入れてきた日本にとっては、現状で新幹線の輸出計画が進んでいるのはインドだけである。 日本とインドは、中国を牽制するために手を組んだパートナーどうしでもある。とりわけ日本が提唱する外交戦略「自由で開かれたインド太平洋」構想にとって、インドは欠かせない存在だ。 もちろん、インドも中国と根深い国境紛争を抱え、「一帯一路」にも反対だ。インドが対立するパキスタンと中国が近しいことも関係をいっそう遠ざける。日米豪印で立ち上げたQUAD(クアッド)という戦略的な枠組みにも加わった。だが、中国を名指しした「対抗」には踏み出さない。インドにとって中国は隣国であり、最大の貿易相手国でもあるからだ。 中国が主導して設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加盟し、副総裁を送り込み、最大の借り手となっている。バンガロールの地下鉄などへ融資をうける。ブラジル、ロシア、中国、南アフリカとともに新開発銀行(NDB)を運営する。22年2月のロシアのウクライナ侵攻後、米欧が主導する対ロ制裁には加わらなかった。ロシアは武器や資源の購入先でもあるからだ。「戦略的自立性」を重んじるインドは、ひとことでいえばしたたかな大国、なのである。『鉄道と愛国』2:そして、あの事故 暗転『鉄道と愛国』1:はじめに
2024.08.17
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図書館に予約していた『鉄道と愛国』という本を、待つこと8ヶ月ほどでゲットしたのです。この吉岡桂子というジャーナリストは、中国に関する確固たる洞察がええわけで、以前からフォローしているわけで・・・今回はシルクロードをめぐるホットな列車旅ですか♪【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。1990年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国「第1部 海を渡る新幹線」から中国の高速鉄道事故を見てみましょう。どうしても嫌中マターに偏るのです、私の場合。p57~63<5 そして、あの事故 暗転>■追突事故「中国の高速鉄道は世界一流だ」 北京―上海高速鉄道の開業を控えた会見で、鉄道省次官の胡亜東は言った。 わずか1ヶ月後。 突然の事故で、その自信は暗転する。 浙江省温州市で高速車両どうしが衝突し、当局の発表で200人を超える死傷者を出したのだ。しかも、発生から数時間後、事故車両の一部は穴を掘って埋められてしまった。被害者の捜索打ち切りを早々に宣言した直後、車両から二歳の少女が助け出された。 衝撃的な事態が明らかになるなか、翌日夕方には運航を再開し、1日半後にはダイヤを完全に復旧させた。 日本の読者の関心が非常に高く、発生直後から北京で取材や出稿に追われた。白地に青いラインの和諧号が高架の軌道からぶら下がる映像を憶えている人も多いはずだ。中国と日本の双方の視点から、あの事故が持つ意味を考えてみたい。(3ページほど中略)■異例の報道合戦 この事故は、中國メディアのあり方も赤裸々に示した。 中国共産党・政府は重大な事故であればあるほど、報道を統制し、情報を管理する。 それだけに、この事故にからんで注目されたのは、その統制をかいくぐって続いたSNSによる情報の発信だ。被害者自身や家族がSNSで次々に声をあげた。直接は関係なくとも事故を知った人々が当局のずさんな対応に怒り、調査を求め、責任を問うた。 私は北京から主に当局の動きを追っていたが、SNSを通じた情報が公式発表より圧倒的に早かった。ひょっとして中国の報道は何かが変わるかもしれない。期待した。SNSを通じた人々の声がテレビや新聞といった伝統的なメディアとコラボするようなかたちで、政府を動かす可能性をみせていたからだ。 上海師範大学影視伝媒学院副教授の陳雅賽が早稲田大学大学院博士課程に在学中に書いた「7・23温州列車脱線事故における中国ネット世論の形成」によると事故にかかわる最初の情報発信は、発生する3分前に、現場近くに住むと考えられるウェイボー(中国版ツイッター)利用者が、速度の異変について書き込んだものだ。発生から13分後には、救助を求める乗客がウェイボーに書き込んでいる。10万回も拡散され、その乗客は2時間後に救出された。 陳は、08年に山東省で発生した列車事故の第一報は中国国営新華社通信が5時間後に伝えたものだったことを指摘し、ネット世論の影響力の増大を論じている。 SNSに押されるように、北京の都市報『新京報』は一報から一面で報じた。商業色が強い新聞や雑誌は連日、大型の特集を組んだ。 鉄道省の記者会見が事故から1日以上も過ぎてからだったことや、車両を埋めたことを救助活動の一環として自己弁護を繰り返したことなどを強く批判した。賠償金についても数々のメディアが疑問を呈した。北京―上海高速鉄道の開業前から、高速鉄道では細かい不具合が多発していたという関係者の証言を伝える報道もあった。中国中央テレビ(CCTV)でも人気キャスターの白岩松が「1ヶ月前であれば(鉄道省の説明を)信じたいと思うが、いまは信じられない」と言い切った。 事件から5日目の7月28日。首相の温家宝が現場に赴かざるをえなくなった。被害者に哀悼をささげ、頭をさげた。家族らを慰問し、記者会見を開く。「事実の通り話そう。病気で11日間、起きあがれなかった。今日も医者にとめられたが、振り切ってやってきた」と釈明した。疲れた表情だった。 この11日間の途中、訪中していた元衆院議長の河野洋平と会談していることから、温の弁明は「仮病」と批判された。その真偽はともかく、国家指導者が自らの健康問題に触れることは極めて異例だった。また、洪水や地震など自然災害ではない事故現場に入り、外国メディアを含めて50分間もの長さの会見に応じるのも非常に珍しい。 それだけ、人々の怒りのマグマがたまっていたのだ。「中国よ、飛ぶように駆ける足を止めよ。人民を待ってくれ。魂を、道徳を、良識を・・・。列車を脱線させるな。崩れ落ちるような橋を架けるな、陥没する道路を造るな、危険な住居を建てるな。もっとゆっくり歩こう。一人一人の命に自由と尊厳を。時代の下敷きにされぬよう、一人一人が平和なゴールへたどりつけるように」 童大換というコラムニストが事故後にネットに投降した文章だ。たいへんな勢いで読まれた。高速鉄道の安全問題を越えて、庶民を置き去りにした超高成長に疑問や不安を感じる人の共感を呼んだ。「安全を失えば、信頼も失う」「(発展のスピードが)速ければいいのではなく、質や効率などを考慮し、何より安全を最優先させる」。温が強調する姿がCCTVで放送された。この日、鉄道省から被害者への賠償金も50万元から91万元へ引き上げられた。事故への怒りは、弱者を踏み台にして発展を急ぐ中国の体制に対する批判にも転じつつあった。『鉄道と愛国』1:はじめに
2024.08.16
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図書館に予約していた『堤未果のショック・ドクトリン』という本を、待つこと11ヶ月ほどでゲットしたのです。日本政府が進めているマイナンバーカードであるが、セキュリティに信頼をおけないのでできるだけ取得を先延ばししていたが、このたびマイナ保険証の取得が強制されることになり・・・堤未果さんの告発的な解説を読もうということなんですが。【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>日本政府が進めているマイナンバーカードであるが、セキュリティに信頼をおけないのでできるだけ取得を先延ばししていたが、このたびマイナ保険証の取得が強制されることになり・・・堤未果さんの告発的な解説を読もうということなんですが。<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリンまず「第1章 マイナンバーという国民監視テク」から読み進めてみましょう。紙の保健証が使えなくなるので、この秋には私もしぶしぶマイナンバーカードを作ることになるんですが。p79~83<2 マイナ保険証はここが危ない>■⑤QRコード丸見え、セキュリティがザル はい、いよいよ老若男女全員が心配するポイントです。 一体全体、セキュリティは大丈夫なのか? この制度が導入されたとき、私たちの個人情報を守るために、総務省はわざわざカードと一緒に情報セキュリティ対策用のアイテムをつけてくれました。 カードを入れると、個人番号や性別、臓器提供情報などが目隠しされるよう、入念にデザインされた、ビニール製の専用カードケースです。 これなら持ち歩いても、肝心な情報が盗まれる心配はありませんよ、という政府の優しい配慮でした。 ですが残念なことに、国民からはすぐに悲しみの声が上がったのです。「QRコードが丸見えなんですが・・・」 そう、カード裏面についている、個人番号が含まれるQRコードのほうは無防備でした。中国で、前の人のスマホ画面のQRコードを肩越しに自分のスマホカメラで撮影して盗む犯罪が多発して問題になった、あれですね。個人情報保護委員会は、慌ててQRコードを他人に見せないよう、以下のような注意喚起を出しました。「インターネット等に自らのマイナンバーカードを、裏面のQRコードが見られる状態で掲載することは、・・・これを見た他人がスマートフォン等で読み取ることで、容易にマイナンバー(個人番号)を知られてしまうおそれがあります」 政府が親切に作って配布してくれた「頭隠して尻隠さず」の特性ケースのおかげで、QRコードは隠さなければならないことがわかりました。 ならば持ち歩くのは危ないのでは? 国民の間に広がった不安を一蹴してくれたのは、1日も早くマイナンバーカードを全国民に持ち歩かせることに全力を注ぐ。河野太郎デジタル大臣でした。自分の公式サイトに、マイナンバーについてのQ&Aを掲載したのです。「Q マイナンバーを人に見られても大丈夫なのですか。 A 大丈夫です。 マイナンバーだけ、あるいは名前とマイナンバーだけでは情報を引き出したり、悪用することはできません。 マイナンバーを使う手続きでは、顔写真で本人認証することが義務化されています。 オンラインで利用する時にも、ICチップに入っている電子証明書を利用するので、マイナンバーは使われません。 マイナンバーはそれだけではなにかできるものではありません」(河野太郎公式サイトより) そして、(健康保険証や運転免許証や年金カードなどと一体化した身分証明書になる)マイナンバーカードを使うことで便利になるサービスが増えていくので、カードは持ち歩きましょう! と奨励しています。 大臣、ありがとう。これなら安心して持ち歩けます! ・・・いやいや、本当にそうでしょうか?■⑥海外では問題だらけ アメリカ政府が「カードは持ち歩くな」と警告 デジタル化に関して中国と熾烈な競争を繰り広げているアメリカではどうなっているでしょう? アメリカには社会保障番号という一生変わらない個人番号があるのですが、まず絶対にカードは持ち歩きません。私が住んでいたときも、「カードは金庫の中だよ」という同僚が何人もいたのを覚えています。 社会保障番号が書かれたカード自体にも「DO NOT CARRY IT WITH YOU.(絶対に持ち歩かないでください)」と、わざわざ注意喚起が印刷されています。 いったいなぜでしょう? ズバリ、なりすまし被害が多すぎるのです。 2015年5月には、番号を盗んだ犯人が本人になりすまして確定申告を行い、1万3000人分の還付金を手に入れるという事件が起きました。 他にも、他人の番号でクレジットカードを作ったり不動産ローンを組んだり、銀行口座を開いたりと、似たような犯罪が後をたちません。 その1ヶ月後に起きた事件はさらに深刻でした。 中国系ハッカーの攻撃により、人事管理局から政府職員2150万人分の個人情報が漏洩したのです。 番号のみならず薬物使用歴や外国への渡航歴など、スキャンダルネタになる機密情報が満載ですから、政治的に利用できるでしょう。 2017年には、消費者の信用度を計算する信用調査会社大手エキファックスが大規模なハッキング攻撃に逢い、1億4500万人分の番号が個人情報とともに漏洩してしまった事件がありました。 流出したのは、名前と住所と生年月日、運転免許証番号と社会保障番号、そして20万9000件にものぼるクレジットカード番号です。一生変わらない個人番号は強固な身分証明になり高い値段がつきますから、あっという間に闇市場で売買されてしまいます。『堤未果のショック・ドクトリン』1:紙の保健証が使えなくなる
2024.08.15
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図書館に予約していた『堤未果のショック・ドクトリン』という本を、待つこと11ヶ月ほどでゲットしたのです。日本政府が進めているマイナンバーカードであるが、セキュリティに信頼をおけないのでできるだけ取得を先延ばししていたが、このたびマイナ保険証の取得が強制されることになり・・・堤未果さんの告発的な解説を読もうということなんですが。【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>日本政府が進めているマイナンバーカードであるが、セキュリティに信頼をおけないのでできるだけ取得を先延ばししていたが、このたびマイナ保険証の取得が強制されることになり・・・堤未果さんの告発的な解説を読もうということなんですが。<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリンまず「第1章 マイナンバーという国民監視テク」から読み進めてみましょう。紙の保健証が使えなくなるので、この秋には私もしぶしぶマイナンバーカードを作ることになるんですが。p71~75■高齢者がカードを作らないなら、健康保険証を廃止します 実は日本はけっこうなアナログ社会で、官公庁を筆頭に、地方のお役所もいろいろな手続きはまだ紙ベース、契約書も印鑑が主流です。 総務省の調べでも、2021年時点で70歳以上の半数以上はスマホを持っていません。 いくら政府が、「マイナンバーカードは身分証明書に使えます」「コンビニで住民票の写しや戸籍証明書が取れます」「健康保険証やワクチン接種証明書として使えますよ」「キャッシュレス決済できますよ」「給付金の振り込みが早いですよ」などとメリットを並べ立てても、「海外に遅れてますよ」と煽っても、アナログでそれほど困っていない国民、特に高齢者は腰を上げません。 2021年10月からは健康保険証と紐づけて使えるようにしたものの、かえって負担が増えると現場からは批判の声が。約11万人の医師が所属する全国保険医団体連合会の調べでも、専用のカード読み取り機を導入した医療機関の4割で不具合があったという報告でした。 マイナポイントという餌をちらつかせても、申請期限切れ直前の2022年8月末時点で申し込みは5割以下、政府は困り果てていたのです。 この状況に、強引さと行動力に定評がある河野太郎デジタル大臣は、会見で眉をひそめながらこう言いました。「これは一つ、真剣に考えなければいけない」 法律で強制できないこの状況で、全国民を、有無を言わさず真清窓口に走らせる方法を真剣に考えた河野大臣が決めたのは、国民の選択肢を奪うことでした。 10月にいきなりこう発表したのです。「2024年秋をもって、紙の保険証は廃止します」 国民皆保険制度のある日本で、全国民が必ず持ち歩き、高齢者ほど頻繁に使う健康保険証が今のままでは使えなくなれば、マイナンバーカードを作る以外に選択肢はありません。 たちまち国内に激震が走りました。 運転免許証がなくても、パスポートがなくても、健康保険証があれば身分証明書になる日本では、財布に入れて持ち歩いている人も多いでしょう。 その健康保険証を廃止してマイナンバーカードに統合するというのです。「あったら便利」だったはずのものが、「ないと生活できません」に、するりと入れ替えられた瞬間でした。 では、反対している人は、いったい何を心配しているのでしょう。 まだイマイチわからない、という人のために、マイナ保険証の問題点を順番に見ていきましょう。<2 マイナ保険証はここが危ない>■①カード作成は義務じゃないのに、選択肢を奪って強制「これは違法!」 法律家の立場から真っ先に反対の声を上げたのは、日弁連(日本弁護士連合会)でした。 番号法17条1項には、こう書いてあるからです。「個人番号カードは住民の申請により交付するものとする」 つまり作るか作らないかは、私たち国民の自由。 でも紙の保険証が廃止されればその選択肢は奪われて、事実上の強制になってしまう。日弁連の言う通り、れっきとした違法行為です。 でも政府はそれを認めるどころか、さらに脅しのようなことを言い出しました。「2024年にはすべてマイナ保険証だ。紙の保険証は廃止後1年間は使えます。どうしても嫌なら健保組合などに資格確認書を発行してもらうこともできるけど、その場合自動更新はなしで、受診料はマイナ保険証より高くしますよ」■②医師や病院が追い詰められる マイナ保険証の事実上の強制は、違法なだけではありません。 実は日弁連が反対声明を出す半年も前に、医師や病院からは「勘弁してくれ!」という声が出ていたのです。 2022年6月、政府は閣議決定した「骨太の方針2022」を踏まえ、全国の医療機関に、マイナンバーカードを端末にかざすと保険証の資格確認ができる「オンライン資格確認システム」の2023年4月までの導入を原則義務化しました。 ところが、前述したように、このシステムには不具合が多く導入費用も高いため、導入に多くの医師たちが猛反対。 カードを読み取れなければ、患者は保険が使えず、最悪の場合、その場で10割の窓口負担を払うことになってしまいます。そしてまた、カードリーダーは国から支給されるものの、小さいクリニックほど、システムを使うために従業員が受けるトレーニングの時間と費用といった高額のランニングコストが負担になってしまう。 しかもやりたい放題の政府は、「期限内に導入しなければ、医療機関の資格停止もあるかも」と、またもや脅し。「資格停止だぞ!」ではなく「かもよ・・・?」とちらつかせるところが、なんとも反社会的です。「もう廃業するしかない」と泣き声を上げるクリニックも少なくありません。 埼玉県保険医協会の渡辺義弘副理事長は、医療機関を追い詰める政府のやり方に怒りをにじませ、県民に必死でこう訴えました。「このままでは、地域医療が崩壊する恐れがあると知ってほしい」
2024.08.13
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<『鉄道と愛国』1図書館に予約していた『鉄道と愛国』という本を、待つこと8ヶ月ほどでゲットしたのです。この吉岡桂子というジャーナリストは、中国に関する確固たる洞察がええわけで、以前からフォローしているわけで・・・今回はシルクロードをめぐるホットな列車旅ですか♪【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。1990年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国まず「はじめに」から読み進めてみましょう。ウクライナ鉄道から言及するところが、いかにもジャーナリストではないか。pⅴ~ⅷ<はじめに> 毎日、開くフェイスブックがある。ウクライナ鉄道だ。 ロシアがウクライナを侵攻した2022年2月22日から読み始めた。戦火から鉄路を守り、避難する人たちを運ぶ。動員されて殉死した若い職員を悼む。国内の空港が全て閉鎖されているため、列車で首都キーウを目指す世界の首脳らを迎える。つかの間でも日常を取り戻そうと、あえてイースター(復活祭)を祝う。ロシアの暴挙は、戦時の鉄道の姿をあぶり出している。 ロシアの線路の幅は1520ミリ。旧ソ連の構成国だったウクライナも基本的に同じ幅だ。その先ポーランドからは欧州規格の1435ミリとなる。ウクライナでは一部に残る欧州と同じ幅の鉄路を復旧し、ポーランドに向けて直通列車を運行しようとしている。欧州の鉄路は国境を越えて広がる。線路の幅は勢力圏の象徴である。 鉄道は、国家と個人、政治と経済、歴史と現在が交叉し、越境しあう場所だ。 海を渡る新幹線を追いかけて、30年近くになる。 きっかけは、朝日新聞経済部の記者として1995年から約2年間、運輸省(現国土交通省)を担当したことだ。中国政府が北京―上海に初めて高速鉄道を敷く構想を打ち出し、日本政府は新幹線を売り込もうと必死になっていた。「日中友好」の象徴とされ、ODA(政府の途上国援助)で支援する前提だった。 その後、私は特派員として北京と上海に通算8年ほど駐在し、高速鉄道商戦を取材することになった。中国政府は日本とドイツ、フランスを巧みに競わせた。日欧とも翻弄された。結果的に東北新幹線はやて、独ICE、仏TGVをベースとする車両がすべて中国へ渡った。外国の技術を導入してカエル跳びで一気に進化させるやり方は、中国の産業政策の典型だ。死亡事故を起こしても、トライ・アンド・エラーの一幕として忘れられていく。わずか数年で日本の新幹線網を上回る距離を運行し始め、ほんとうに驚いた。 2020年秋までの3年半はバンコクを拠点にし、習近平政権が進める対外戦略「一帯一路」の沿線20ヵ国以上を訪ねた。中国の影響力を探るためだ。ちょうどアジア各地で高速鉄道構想が浮上し、日本と中国が受注をめぐって激しくぶつかりあっていた。アジアの国々は日中を両天秤にかけた。かつて日欧を手玉にとった中国のように。 正直言うと、これほど早く、中国の高速鉄道が新幹線のライバルとして国際市場に現れるとは思っていなかった。日本のかけ声は、かつての「独仏に負けるな」から「中国に負けるな」に転じた。だが、変わらなかったものがある。ビジネスの最前線にいる企業の人たち以上に政治家や官僚、そして世論が熱くなることだ。同じく巨額の資金がうごめく国家プロジェクトでも、ダムや橋とは違う。新幹線には日本社会の「熱」が宿る。私が「海を渡る新幹線」にこだわり続けている理由の一つだ。 新幹線の源流は、戦前の「弾丸列車」にある。日本国内だけでなく、大日本帝国として侵略した朝鮮半島や中国を抜けて、欧州や東南アジアまで延ばす構想もあった。 第二次世界大戦の敗戦で国外は途絶えたが、国内では東京―下関の計画が時を置かずして甦る。外資導入を前提に政財界の一部が動いた。国鉄には技術者が残っていた。ただ、朝日新聞社説が「「弾丸列車」案に反対す」「新線建設より復旧第一」」(1946年9月3日朝刊)と書いたように、戦火の爪痕は深く、それどころではなかった。 戦前と地続きにあった「夢の超特急」が新幹線となって開業したのは、1964年10月、東京五輪が開かれた秋のこと。東京―新大阪を最高時速200キロ超で走り、約4時間で結んだ。営業速度は世界一。国鉄総裁石田礼助は「新幹線は、全世界の鉄道の新時代を告げるもの」と語っている。敗戦から20年足らず。「安かろう悪かろう」と皮肉られながら欧米に割安の日本製品の輸出攻勢をかけていた時代だ。列強の一角を占めたにもかかわらず敗戦で砕けた日本人のプライドを、新幹線は埋める存在にもなっただろう。 そして、新幹線開業の4年後。日本は西ドイツ(現ドイツ)を抜いて「世界第二位の経済大国」に駆け上る。0系と呼ばれる団子鼻で白地に青いラインが映える初代ひかりは、当時を知る世代にとって「上げ潮」日本の記憶を呼び起こす記号である。 中国が高速鉄道を本格的に開業させたのは、北京五輪が開かれた2008年8月。北京―天津を最高速度350キロで走った。営業速度として世界最速を記録した。日本では「ぱくり新幹線」と揶揄されながらも、中国はあっというまに路線網を広げていく。北京―上海が開業した前年の10年には、中国は経済規模でも日本を追い抜く。「世界第二の経済大国」は入れ替わった。日本と中国は高速鉄道の受注で競い合う存在だ。
2024.08.11
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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・鉄道と愛国・恋する映画・文・境雅人<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。1990年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【恋する映画】 町山智浩著、 スモール出版、2021年刊<「BOOK」データベース>より「恋愛」についての映画は「人生」についての映画である。トラウマ級恋愛映画8本を徹底解剖。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten恋する映画【文・境雅人】境雅人著、文藝春秋、2013年刊<「BOOK」データベース>より堺雅人は鞄に原稿を書くための道具を入れて、持ち歩いている。撮影の合間に楽屋で、休みの日に喫茶店で、「演じる」ことについて考え、文章にするのだ。そうして生まれた54作の本格エッセイに加え、作家の宮尾登美子氏、長嶋有氏との対談やインタビュー、写真を掘り起こして収録。役者の思考や日常が垣間見える一冊。出演作品リスト付き。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten文・境雅人
2024.08.07
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在39位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在18位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在15位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在35位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在44位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在27位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在5位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在14位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在6位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在27位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在13位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』・原爆裁判:延滞資料があり予約不可<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・消費者金融ずるずる日記・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵・書いてはいけない日本経済墜落の真相<予約分受取:5/10以降> ・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取)・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、6/05受取)・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、8/06受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.08.07
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図書館に予約していた『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』という本を、待つこと10ヶ月ほどでゲットしたのです。坂本さんはツイッターやSNSと距離をおくというか、時代の流れに逆らうように「非同期」を意識してきたとのこと・・・アナログな私はしびれるのです♪【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>坂本さんはツイッターやSNSと距離をおくというか、時代の流れに逆らうように「非同期」を意識してきたとのこと・・・アナログな私はしびれるのです♪<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう1章「1 ガンと生きる」の続きを、見てみましょう。p10~11<手術直前のこと> ここで、ぼくの今の病状について説明しておきたいと思います。生々しい話になりますが、しばしお付き合いください。 2014年に発覚した中咽頭ガンはその後、晴れて寛解したものの、2020年6月にニューヨークで検査を受け、直腸ガンと診断されてしまいました。前回、放射線治療がうまくいったので、ニューヨークのそのガン・センターのことを信頼していました。今回は放射線治療と並行して抗ガン剤も服用しました。しかし治療を始めて数ヶ月が経っても、なかなかガンが消えません。 同じ年の12月に日本での仕事があり、その頃、物忘れの多さに悩んでいたこともあって帰国ついでに脳の調子を調べておこうと思い、11月中旬から新型コロナウィルスの感染対策のため2週間の隔離を経てから人間ドックを受けました。そうしたら、脳は正常だったのですが、あろうことか別の場所で異変が見つかってしまった。直腸ガンが肝臓やリンパにも転移しているというのです。 この時点で放射線治療が終わって3ヵ月は経っていましたが、なぜかニューヨークの病院では転移の事実を告げられていませんでした。少なくとも9月末には転移の根っこは見えていたはずなのに。当然、転移自体がショックなことだけど、全米でも一、二を争うガン・センターが見落としていたのか、あるいはどういう理由でか、ぼくに黙っていたことに対して、一気に不信感が芽生えました。『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』1:ベルトルッチとボウルズ
2024.08.05
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図書館で『漢字のなりたち 日英対訳』という本を、手にしたのです。白川先生が中国で生まれた古代語(漢字)を視覚化して語っています♪それも、日本語と英語で語っているのが、いかにも言語学者ではないか。*********************************************************【漢字のなりたち 日英対訳】 白川静, アラン・スウェイツ著、平凡社、2016年刊<「BOOK」データベース>より今も使われる漢字一つ一つに秘められた古代人の信仰や風俗ー豊かで奥深い漢字の世界を歌舞・刑罰・医術など14系列100字でめぐる対訳入門書。<読む前の大使寸評>白川先生が中国で生まれた古代語(漢字)を視覚化して語っています♪それも、日本語と英語で語っているのが、いかにも言語学者ではないか。rakuten漢字のなりたち 日英対訳「白川静漢字暦」から抜粋された「天象」「江河」「鬼神」など14の系列の字が紹介されているが、「江河」を、見てみましょう。P19~22<江河>水はつねに聖なる力の源泉であった。清冽な泉は新しい生命を生み、ほとばしる渓流には生命のリズムがある。また旺洋たる大河はその流域に文明を生み、それ養い育てた。文明のはじめのときに生まれた文字の象形のうちには、そのような水と人間との深いかかわりが、古い記憶として残されている。<Rivers and Streams>Water has a sacred force. Clear springs give birth to new life, and swift streams have a vital rhythm all their own. Moreover, great rivers give rise to and sustain civilizations within thir basins. In the shapes of characters produced at the dawn of civilizations, we can see a distant memory of the intimate connection between water and humans.<川・水>「川」は流れている水の形。勢いよく流れる大きな水の流れを表している。小さな水の流れは水である。<江>「江」の音符(音を表わす符号)は工。工に紅・空のように、左右にわたってゆるやかに湾曲するものの意がある。長江のその全体の流れの姿が、古い時代にもすでに把握されていたのであろう。<河>「河」は甲骨文においては柯に従う。柯は木の柯枝の形。河水(黄河)の上源は古くは知られなかったとしても、オルドスの地帯で一たび直角に南下し、また河曲部に至って、さらに直角に東に向かい、ついに斜して海に入る。その屈折の仕方が柯枝に似ていることを、古人はすでに知っていたのであろう。『漢字のなりたち 日英対訳』2:天象『漢字のなりたち 日英対訳』1:はじめに
2024.08.03
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図書館で『漢字のなりたち 日英対訳』という本を、手にしたのです。白川先生が中国で生まれた古代語(漢字)を視覚化して語っています♪それも、日本語と英語で語っているのが、いかにも言語学者ではないか。*********************************************************【漢字のなりたち 日英対訳】 白川静, アラン・スウェイツ著、平凡社、2016年刊<「BOOK」データベース>より今も使われる漢字一つ一つに秘められた古代人の信仰や風俗ー豊かで奥深い漢字の世界を歌舞・刑罰・医術など14系列100字でめぐる対訳入門書。<読む前の大使寸評>白川先生が中国で生まれた古代語(漢字)を視覚化して語っています♪それも、日本語と英語で語っているのが、いかにも言語学者ではないか。rakuten漢字のなりたち 日英対訳「白川静漢字暦」から抜粋された「天象」「江河」「鬼神」など14の系列の字が紹介されているが、冒頭の「天象」を、見てみましょう。P11~13<天象> ことばの終わりの時代に、神話があった。 そして神話は、古代の文字の形象のうちにも、おもかげをとどめている。 そのころ、自然は神々のものであり、精霊のすみかであった。 人々はその中にあって、神との交通を求め、自然との調和を願った。<Natural Phenomena> Mytse arose out of many millennia of language use, and myth had an influence on the shape of ancient Chinnese characters, in those days,the natural realm was the dminion of the gods and the abode of spirits. Humanns also lived in nature's midst and sought communion with the gods and harmony with nature. <風・鳳>「風」は鳳形の取りであらわされ、それは神の使者であった。上帝の命をあまねく伝えるために、東西南北、それぞれの地方にある神々も、みな鳥を使者とし、その往来は風のそよぎとして感知された。風土、風気、風俗は、みなその地の神々の意志によって形成されるものとされた。『漢字のなりたち 日英対訳』1:はじめに
2024.08.01
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図書館で『漢字のなりたち 日英対訳』という本を、手にしたのです。白川先生が中国で生まれた古代語(漢字)を視覚化して語っています♪それも、日本語と英語で語っているのが、いかにも言語学者ではないか。*********************************************************【漢字のなりたち 日英対訳】 白川静, アラン・スウェイツ著、平凡社、2016年刊<「BOOK」データベース>より今も使われる漢字一つ一つに秘められた古代人の信仰や風俗ー豊かで奥深い漢字の世界を歌舞・刑罰・医術など14系列100字でめぐる対訳入門書。<読む前の大使寸評>白川先生が中国で生まれた古代語(漢字)を視覚化して語っています♪それも、日本語と英語で語っているのが、いかにも言語学者ではないか。rakuten漢字のなりたち 日英対訳まず「はじめに」を、見てみましょう。白川先生が語る古代語が見えるのがええでぇ♪P5~7<はじめに> 文字は、ことばの器として生まれた。ことばを視覚化し、形象化して、ことばのもつ呪能をそこに内在させることが、その目的であった。ことばが神と交通する直接の手段であった時代に、ことばを何らかの方法で定着させようとすることが試みられたが、その方法は容易に発見されなかった。それで久しい間、上古の人びとは絵画的な方法、たとえば犠牲の姿や祭儀のようすを描写することなどによって、その呪的な目的を達しようとした。 オーリニャック期やマグダレニアン期の、洞窟の奥深く描かれている動物画は、狩猟の成功を祈る呪的な目的をもつものであったし、イベリアの先史地域の岸壁画、その他未開社会に広汎に分布する種々の象徴的な絵画は、いずれも絵画は、いずれも神がそのその絵を判読してくれるであろうという期待を以てかかれたものであった。中国においても、殷周期の青銅器に残されている図象的な標識のうちには、そういう起原をもつものがあるように思われる。たとえば、『山海経』にみえる奇怪な神像を図象化したらしいものもみられるのである。 しかし、絵画的な表示は、もとよりまだ文字ではない。文字はロゴスを内に宿すものでなければならない。ロゴスとして、存在のあらわれであることばを、その全体系において受け止めうるものでなくてはならない。従って文字は、古代の文化圏のうちでも、最も高い文化段階に達したところでだけ成立した。それらはみな、ことばを視覚化し形象化したもの、すなわち象形文字であった。そしてそれらはまた、神事や儀礼に用いるものとして、神聖文字であった。 文字はそのような職事にたずさわる神聖階級によって創出された。楔形文字、エジプト文字、および漢字がそれである。 しかし文字が象形文字であり、神聖文字であるという基本的性格は、近東においてはながく維持されることがなかった。民族の興亡がはげしく、文化の隆替ということもあって、その文字はやがて他の民族によって借用されるようになったが、そのとき異なることばの体系に適応させるために、ことばと文字との直接的な結合を分離することが必要であった。 文字はその形象の含む本来的な意味を離れて、音標科された。こうしてアルファベットが生まれる。 アルファベットの成立は、文字の大きな進歩とされるものであるが、しかしそのとき、ことばと文字との結合という古代文字のもつ最も本質的なものは失われた。 そして漢字だけが、いまもなおその特質をもちつづけている。 漢字はその成立以来、三千数百年にわたって、そのことばとともに生きつづけ、中国の文化、またその文化圏としての東洋の文化を培う土壌として、尽きることのない生命の源泉をなしている。ことばの形象的な表現である漢字は、したがってことばと同じようにそれ自身の体系をもち、世界観をもっている。そのことが、漢字文化のあらゆる特質を規定しているのである。
2024.08.01
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図書館に予約していた『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』という本を、待つこと10ヶ月ほどでゲットしたのです。坂本さんはツイッターやSNSと距離をおくというか、時代の流れに逆らうように「非同期」を意識してきたとのこと・・・アナログな私はしびれるのです♪【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>坂本さんはツイッターやSNSと距離をおくというか、時代の流れに逆らうように「非同期」を意識してきたとのこと・・・アナログな私はしびれるのです♪<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろうまず冒頭の1章から、見てみましょう。p7~10<1 ガンと生きる>■ベルトルッチとボウルズ「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」70歳の古希を迎えてから、よくそんなことを思います。こんな台詞が映画『シェルタリング・スカイ』(1987年)に出てきたことを憶えている方もいるかもしれません。『ラスト・エンペラー』(1987年)に続いてぼくが音楽を手掛けた、ベルナルド・ベルトルッチ監督の作品ですね。 映画の最後に、原作者のポール・ボウルズが登場し、枯れ葉ぼそっとこう語ります。「人は自分の死を予知できず/人生を尽きぬ泉だと思う/だがすべて物事は数回 起こるか起こらないか/自分の人生を左右したと思えるほど/大切な子供の頃の思い出も/あと何回 心に浮かべるか/4~5回 思い出すのがせいぜいだ/あと何回 満月をながめるか/せいぜい20回/だが人は 無限の機会があると思う」 実際、ボウルズは映画の完成から10年も経たずにこの世を去るわけですが、『シェルタリング・スカイ』に関わっていた頃、ぼくはまだ38歳でした。ボウルズのこの言葉は鮮烈な印象を残しましたが、必ずしも我がこととして捉えていたわけではなかった。 でも、2014年に中咽頭ガンが発覚してから、自らのモータリニティ・・・死についても、自然と考えざるを得なくなりました。 そんな経緯もあって、2017年に発表したアルバム『async』では、『fullmoon』(満月)という曲を作りました。映画の中からボウルズの先ほどの一節をサンプリングし、同じ文章を中国語やドイツ語、ペルシャ語などさまざまな言語に翻訳して、それぞれのネイティブのアーティストに読み上げてもらいました。 一番最後がイタリア語で、実はその朗読をしているのがベルトルッチなんです。「もしイタリア語を入れるなら、あなたしか考えられないんだけど、やってくれるかな?」と軽い気持ちで頼んだら、彼からすぐに「ああ、いいよ」とメールの返信が届き、しばらくして録音した音声データが送られてきました。 ボウルズの声は、戦前のニューヨークで前衛作曲家としても活躍しただけあって枯れた味わいがあり、声質からも並のアメリカ人とは違う教養の深さを感じさせます。対して、ベルトルッチの声は実にドラマティックで、さすがはオペラの国のひとだなと思わせる、こちらも素晴らしいものでした。 しかし、そのベルトルッチも曲の完成から1年後には亡くなります。録音という形ではあるものの、『fullmoon』での声の出演が、彼の生前のアピアランスとなってしまいました。
2024.07.30
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図書館に予約していた『続 失踪願望』という本を、待つこと1ヶ月半ほどでゲットしたのです。この本は日記(続 失踪願望)と、エッセイ(さらば友よ!)の二本立て構成となっているが・・・いずれもややマッチョなシーナが見られて・・・ええでぇ♪【続 失踪願望】椎名誠著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より「おい、シーナ、逃げるなよ」親友からの最期の“檄”その真意とは?書き下ろし「さらば友よ!」収録。老いること、喪失を抱えて生きること、愛するものたちへの思いをまっすぐに。79歳の日録が静かに差し出す新たな人生の世界線…共感必至!<読む前の大使寸評>この本は日記(続 失踪願望)と、エッセイ(さらば友よ!)の二本立て構成となっているが・・・いずれもややマッチョなシーナが見られて・・・ええでぇ♪<図書館予約:(5/31予約、副本?、予約8)>rakuten続 失踪願望「どぶろく、島酒、アイスバイン:2022年10月」から八丈島キャンプあたりを、見てみましょう。p61~64<どぶろく、島酒、アイスバイン:2022年10月>■10月13日(木)「kotoba」の著者インタビューで集英社へ。聞き手は目黒(考二)。ひさしぶりだ。コロナ以降なかなか会えなくなっていた。何してたんだ? と聞くと、家で本を読んでいる毎日と言っていた。文芸評論家そのものじゃないか。 11月に発売となる『失踪願望。』を中心にしばし文章世界の話をする。目黒はやや太っていたが早口に迫力があり、あいかわらずかなわなかった。■10月14日(金) 八丈島は雨だった。 週刊ポストの連載「わしらは怪しい雑魚釣り隊」の取材だ。雑魚釣り隊は第三次怪しい探検隊の位置づけであり、現在は休刊してしまった沖釣り雑誌「つり丸」の連載として2005年にはじまった。2012年からは「週刊ポスト」に移籍して、月に一度どこかの浜辺に出かけては自堕落キャンプを続けてきた。 それが今回の取材で一応、最終回を迎える。担当のケンタロウに「17年のケジメとしてどこか行きたい海はありますか?」と聞かれたので八丈島と答えた。ちなみに第一回は伊豆大島だった。 雨で堤防釣りは中止となり、今夜の肴は出船するメンバーの釣果次第だ。居残り組はキャンプ場で怠惰にビールを飲んだ。ツマミは島寿司だ。文句ない。 夕方に無事、釣り班が豪華絢爛の島魚を仕留めてきて宴会のメドがたった。山下カズも金目鯛を差し入れてくれ、これをしゃぶしゃぶにした。島焼酎がうまい。 夜になっても雨は止まらなかったが、タープに当たる雨音が心地よい。ぼく自身の釣りはちっとも上達しなかったが、こうして釣って食って飲んでの贅沢な17年間だったなあ、と感傷にひたっていたら、どっかで聞いたことのあるメロディーが聞こえてきた。ザコという友人がぼろんぼろんとギターを奏でて歌っていたのだ。 俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ、という寅さんの「男はつらいよ」の主題歌だ。 長く飲食業界での勤務経験があるザコは隊のコックでもあるけれど、スカバンドのミュージシャンでもある。彼が歌う寅さんはぐっとモダンな印象になるが、これはこれで良さがある。 いつの間にか大合唱となった。二番の歌詞に「目方で男が売れるなら」というフレーズがある。これまでも聞いていたはずなのだが、深く考えたことはなかった。いま歌っている酒好きで旅好きな友人はみんな目方でなんか測れない、いいやつらだなと深く頷き、島酒をおかわり。何時に寝たかは覚えていない。■10月15日(土) 今日も八丈島は雨だ。みんなはキャンプをしていたが、トクヤとシーナのために、ケンタロウはコテージを予約してくれた。そのコテージでトクヤが淹れてくれるコーヒーを飲んで、キャンプ場へ行くと、ヅケ丼の朝飯が用意されていた。トシをとるのもいいもんじゃのう。 午後から藍ヶ江へ移動。今夜はカズが漁師仲間らと野外宴会をしてくれるという。昨日、出船したメンバーが仕留めた10キロ超えカンパチの巨大なカマ焼きメインに、茹でたて島ダコの刺身、蒸かした里芋などがゴーカに並んでいる。島の人気居酒屋「むらた」の店主が焼きそば、スパゲッティまで作ってくれ、ほとんど暴飲暴食だ。途中、追加で酒の買い出し隊が出た。 21時くらいまで続いた続いただろうか、風も強くなったので宴会はお開き。コテージに戻ったが、なんだか眠れないので竹田に「寝酒に島酒を頼めるか」と連絡すると、一升瓶とたっぷりの氷を太陽と共に持ってきてくれた。■10月16日(日) 最終日まで雨だったが、それも八丈島らしくていい。 あまった刺身はヅケにしておいたのでそれを使って童夢が島寿司を握ってくれた。ざっと300カン。30人の男たちのためだ。あっという間にもっともっと!のサワギになった。童夢の島寿司はうまい! 残りの野菜をすべて投入した味噌汁も作る。運転手以外はビールを飲んだ。 夕方の便で東京に戻る。まあ八丈島も東京なのだが。 雑魚釣り隊の遠征も2022年で17年になった。テントかついで全国をマタにかけ、海だ岬だ泥洲だ島だとうろついてきた。途中コロナによる遠征の中断があったが初期隊員の8人から年ごとにどんどん増えていき現在はなんと30人になっていた。八丈島遠征の獲物は1メートル級のカンパチをはじめ10種類、100尾あまり。全部で20キロ以上になっていた。『続 失踪願望』1:『あひるのうたがきこえてくるよ』の舞台となった奥会津
2024.07.29
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今回借りた4冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「予約本」でしょうか♪<市立図書館>・堤未果のショック・ドクトリン・ぼくはあと何回、満月を見るだろう・墜落・漢字のなりたち 日英対訳<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【墜落】真山仁著、文藝春秋、2022年刊<「BOOK」データベース>より2022年6月金城華が夫の一を刺殺。DVに耐えかねた妻が夫を殺した単純な事件として解決するはずだった。しかし、担当検事の冨永真一は不審を感じ、自ら捜査に乗り出す。ほぼ時を同じくして糸満市で自衛隊の戦闘機の墜落事故が発生。民間人が死亡したことで軍事基地が集中する沖縄では、抗議デモが巻き起こる…。かつてない臨場感で沖縄の姿を炙りだす、冨永検事シリーズ第三弾にして最高傑作!<読む前の大使寸評>追って記入rakuten墜落【漢字のなりたち 日英対訳】 白川静, アラン・スウェイツ著、平凡社、2016年刊<「BOOK」データベース>より今も使われる漢字一つ一つに秘められた古代人の信仰や風俗ー豊かで奥深い漢字の世界を歌舞・刑罰・医術など14系列100字でめぐる対訳入門書。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten漢字のなりたち 日英対訳
2024.07.28
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在49位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在26位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在1位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在19位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在39位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在49位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在31位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在5位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在15位・池澤夏樹『ノイエ・ハイマート』(6/29予約、副本?、予約?)現在6位・内田樹『勇気論』(7/07予約、副本?、予約?)現在28位・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』(7/27予約、副本?、予約?)現在13位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』・原爆裁判:延滞資料があり予約不可<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・消費者金融ずるずる日記・ヤマザキマリ『水木しげる厳選集 異』:図書館未収蔵・猫社会学、はじめます:図書館未収蔵<予約分受取:4/28以降> ・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取)・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取)・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、6/05受取)・李琴峰『彼岸花が咲く島』(6/19予約、6/25受取)・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、6/29受取)・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、7/07受取)・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、7/07受取)・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、7/18受取)・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、7/27受取)・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、7/27受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【ノイエ・ハイマート】池澤夏樹著、新潮社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/29予約、副本?、予約?)>rakutenノイエ・ハイマート【勇気論】内田樹著、光文社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりモヤモヤを抱えた編集者との“カウンセリング”往復書簡。ジョブズ、フロイト、孔子、伊丹万作、河竹黙阿弥、大瀧詠一、パルメニデス、富永仲基…話頭は転々として奇を極めー。いまの日本人に一番足りないものは何だろうか?読めば心が軽くなるーウチダが綴る9通のメッセージ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/07予約、副本?、予約?)>rakuten勇気論【誰も書かなかった統一教会】有田芳正著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(7/27予約、副本?、予約?)>rakuten誰も書かなかった統一教会【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.07.28
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図書館に予約していた『彼岸花が咲く島』という本を、待つこと1週間ほどでゲットしたのです。この李琴峰という日本で生まれた台湾人作家の使う日本語が興味深いのです。【彼岸花が咲く島】李琴峰著、文藝春秋、2021年刊<出版社>より【第165回 芥川賞受賞作!】記憶を失くした少女が流れ着いたのは、ノロが統治し、男女が違う言葉を学ぶ島だったーー。不思議な世界、読む愉楽に満ちた中編小説。<読む前の大使寸評>この李琴峰という日本で生まれた台湾人作家の使う日本語が興味深いのです。<図書館予約:(6/19予約、副本?、予約0)>rakuten彼岸花が咲く島1章の続きあたりを、見てみましょう。p9~11<1> 島の視点を持っているならば、大海原にぽつんと浮かぶ〈島〉は東西に長く、南北に狭く、ガジュマルの葉のような形をしていることがわかる。偶然にも〈島〉は気候が高温多湿で樹木の生育に適しており、全体的にガジュマルやビロウに覆われて鬱蒼としている。〈島〉の海岸はほとんどが岸壁で、特に最東端の東崎と最西端の西崎ともなると百メートル強の断崖絶壁になる。これらの岩石海岸も植生に覆われており牧場としては最適で、牛や豚、山羊、馬などが飼育されている。砂浜海岸は何ヵ所かしかないが、少女が倒れていた北方の〈北月浜〉がそのうちの一つである。 〈島〉の周囲は風が強く、特に秋から冬にかけては北向きの卓越風で北方の海が大荒れするので、〈島〉への出入りは主に南西にある〈グソー港〉を使う。空港はもちろんない。曾て空港だったと思われる跡地は、今や赤一面の彼岸花の絨毯に覆われている。 海岸以外にも、〈島〉は丘陵や山岳が多い。人々は普段山岳地帯には立ち入らないが、山間の平地へ流れる川は灌漑用水として使われ、米、芋、砂糖黍などが植えられる。平地にある田んぼと畑の周りに人々が集まって、三つの集落ができた。一番規模が大きい〈東集落〉、二番目に大きい〈西集落〉と最も小さい〈南集落〉である。千数百万人の島民はこの三つの集落に分散し居住している。 游娜(ヨナ)が住んでいるのは〈東集落〉である。〈東集落〉は島の北東部に位置し、彼岸花を採りに〈北月浜〉へ出向くのに便利である。少女を発見すると游娜は急いで集落に戻ってオヤを呼び、オヤは車を出して少女を家に運び込んだ。 布団の中で寝込んだ少女は相変わらず顔色が悪く、弱々しく見えた。オヤは游娜が採ってきた彼岸花の花弁を磨り潰し、水を加えて掻き混ぜてから少女の傷口に塗布した。游娜のオヤは旗魚(かじき)捕りを生業としている女性であり、游娜と一緒に生活している。 夜中になると少女は大汗を搔きながら、苦しそうに目を覚ました。まだ身体が重く、頭の内側で啄木鳥(きつつき)が頭蓋を突いているような鋭い痛みが走っているが、傷の痛みはだいぶ治まった。次に襲ってくるのは圧倒的な飢えと渇きだった。渇きのせいで少女は声を発することも叶わないまま、もがきながら上体を起こした。暗闇に目が慣れると、隣の布団で寝ている游娜とオヤの姿に気付いた。 少女は彼女たちを起こさないように気をつけながら、ゆっくり立ち上がろうとした。が、足が思うように動かなくて思わずよろめいてしまい、床に尻餅をついた。 少女が立てた音で游娜も目が覚めた。少女の姿を認めると慌ててオヤを起こし、少女を再び布団の中に寝かせた。「動くは駄目ら! ビアンバナー、薬効発揮したロー」と游娜が言った。 オヤが電気をつけると、少女は眩しそうに目を細めた。ビアンバナーとは何なのかということも気になるが、それより大事なことがあった。「みず」 と少女は言おうとしたが、喉が嗄れていて声にならなかった。「ハ?」と游娜は訊いた。「声を大きいに!」 少女は口の中で唾液が溜まるのを待ってから、それらの唾液を飲み込んで僅かに喉を潤した。そしてもう一度力を振り絞って言った「み、ず」 ここの言葉では、彼岸花は「ビアンバナー」と言うのだそうです。『彼岸花が咲く島』1:冒頭から語り口p2~7
2024.07.27
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