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図書館で『マーズ 火星移住計画』という大型本を、手にしたのです。ぱらぱらとめくってみると、2ページぶち抜きのカラー画像も多く、とにかく大迫力が・・・ええでぇ♪【マーズ 火星移住計画】 レオナード・デイヴィッド著、日経ナショナルジオグラフィック社、2016年刊<「BOOK」データベース>より20××年、人類はついに火星の地に降り立つー。そんな近未来への道程を、科学面、技術面、精神面から考察。NASAやESAといった世界の宇宙開発機関をはじめ、スペースX社などの民間の取り組みを徹底取材。火星を“第2のふるさと”にするために必要なこと、解決すべき課題を多角的に分析。探査機がもたらした赤い惑星の姿、開発中のロケットや居住施設など、迫力満点のビジュアルを約200点収録。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると、2ページぶち抜きのカラー画像も多く、とにかく大迫力が・・・ええでぇ♪rakutenマーズ 火星移住計画キュリオシティの着陸地点付近火星における生命の痕跡について・・・見てみましょう。p155~156<生命のしるし> 火星に生命体が存在する可能性、あるいはかつて存在していた可能性を探るために送り込まれた米国のバイキング1号と2号が火星に着陸してから、数十年の時間が流れた。何年もかけてデータが解析され、26回もの生命検出実験が行われたが、バイキングから望む答えが返ってくることはなかった。 バイキングプロジェクトに関与した研究者のほとんどは、火星に生命は、火星で声明は検出されなかったと考えたが、この判断に納得しない科学者も一部にいたため、探索は続けられた。それから数十年が経過した現在、各国が火星探査に投じた費用の総額は数十億ドルにのぼる。火星の生命は遠い昔に死に絶えているかもしれないし、そもそも存在すらしなかったのかもしれない。それでも、火星の生命を探す計画は現在もしっかりと息づいている。 バイキングのミッション以来、「高度な科学技術を取り入れた火星探査が盛んに行われてきました。現在も火星の気候変動や、過去に存在した生命の痕跡の可能性について調査が進められています。また、火星で生物が暮らせるかどうかという点も、以前からの大きな研究テーマです」―こう話すのは、NASAのゴダード宇宙飛行センターの主任研究員にしてマーズ・サイエンス・ラボラトリー/キュリオシティ火星探査車科学チームの一員、ジェームズ・ガービン氏だ。 火星は世界的にみても非常に重要な科学のフロンティアだと彼は言う。その根拠として彼が挙げるのは、最近になって発見された有機分子の存在や、大気中に微量に含まれるメタンガスの量の変動だ。 過去の火星の地質的変化には堆積過程が関わっていた形跡があり、水が重要な役割を果たした可能性が強く推測されるため、こちらも興味深いという。 目前に迫った火星探査の次のステップは、さらに高度なミッションを進めることだとガービン氏は言う。「現在、NASAは2030年代に火星に人間を送り込むことを目指しています。これに先立って、2020年代に私たちは有人探査に向けた準備という転換点を迎えます。その際、まずは無人ミッションで態勢を整えていくことになるでしょう」 NASAは原子力電池で走行し、多様な地形に対応した次世代の火星探査車の打ち上げを2020年に予定している。この探査車は、すでにキュリオシティが行っている探査活動をに加わり、調査対象として選ばれた地点の探査を行って過去の生命の痕跡を探す。また、最終的に地球に持ち帰るためのサンプルを集める作業も検討されているが、非常にコストがかかるため、賛否が分かれている。 火星のサンプルを地球に持ち込むリスクは非常に小さいと考えられているが、ゼロとは言えない。火星のサンプルは生物学的に非常に貴重なものだが、地球に持ち帰ることにはリスクも伴う。マイク・クライトンの「アンドロメダ病原体」(早川書房)で描かれた大惨劇のように、火星からやってきてはい回る気味の悪い生き物が地球の生物圏を蝕む可能性に対して冷静さを欠いた“口撃”が始まったり、社会的な不安が高まったりすることも予想される。『マーズ 火星移住計画』1:移住者の身体面や医学的問題
2022.08.20
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図書館で『ヘミングウェイで学ぶ英文法』という本を、手にしたのです。ヘミングウェイの作品を原書で読んで英語力が上がるなら、すっごくためになるなあ。【ヘミングウェイで学ぶ英文法】倉林秀男著、アスク出版、2019年刊<商品レビュー>よりヘミングウェイは、いつか原書で読んでみたいと思っていました。が、実際に読んでみると、英語自体はそんなに難しくないように見えるのに、なぜかよく意味が取れないということがありました。本書には、ヘミングウェイの短編がまるごと6つ入っています。それぞれに、ものすごく丁寧な「文法解説」がついているんです。文法上のどんなところに気をつけながら読めば、ちゃんと作品を理解できるのかがわかるので、すっごくためになります。<読む前の大使寸評>ヘミングウェイの作品を原書で読んで英語力が上がるなら、すっごくためになるなあ。<図書館予約:(10/11予約、副本3、予約0)>rakutenヘミングウェイで学ぶ英文法第一話「Cat in the Rain」を、見てみましょう。p9~14<Cat in the Rain>【原文】 There were only two Americans stopping at the hotel. They did not know any of the people they passed on the stairs on their way to and from their room. There room was on the second floor facing the sea. It also faced the public garden and the war monument. There were big palms and green benches in the public garden. In the good weather there was always an artist with his easel. Artists liked the way the palms grew and the bright colors of the hotels facing the gardens and the sea. Italians came from a long way off to look up at the war monument. It was made of bronze and glistend in the rain. It was raining. The rain dripped from the palm trees. Water stood in pools on the gravel paths. The sea broke in a long line in the rain and slipped back down the beach to come up and break again in a long line in the rain. The motor cars were gone from the square by the war monument. across the square in the doorway of the cafe a waiter stood looking out of the empty square.【訳文】 ホテルに泊まっているアメリカ人はふたりだけだった。彼らは部屋に向かう時も、出る時も、階段ですれ違う誰一人と知るひとはいなかった。彼らの部屋は海に面した二階にあった。その部屋は公園と戦争記念碑にも面していた。公園には大きなヤシの木々と緑色のベンチが並んでいた。天気に恵まれた日には、いつも画架を据える絵描きがいた。 彼らはヤシの木々の枝ぶりや、公園と海に面して連なるホテルの鮮やかな色彩を気に入っていた。イタリア人らは戦争記念碑を見上げるために遠くからやってきていた。その記念碑は銅製で雨の中で煌めいていた。雨が降っていた。雨粒がヤシの木々からしたたり落ちた。砂利道には水たまりができていた。雨の中、海では、波が横一文字に砕け、浜辺からすべるように後退し、戻されては、雨の中で再び横一文字に砕けた。 戦争記念碑の脇の広場から自動車はすべて消えていた。広場の向こう側のカフェの入り口では、ウェイターの一人ががらんとした広場を眺めながら立っていた。***********************************************************【ここに気を付けて読もう】①このpassedは自動詞ですか、それとも他動詞ですか? They did not know any of the people they passed on the stairs on their way to and from their room.②冒頭にIn the good weatherがきている理由はわかりますか? In the good weather there was always an artist with his easel. ③前の文に an artist がありますが、この文ではthe artistではなくartistsと複数形になっている のはなぜでしょうか? Artists liked the way the palms grew…④この文のstoodの意味はわかりますか? Water stood in pools on the gravel paths.
2021.11.01
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図書館で『カウボーイの米国史』という本を、手にしたのです。先ごろモームの『剃刀の刃』を読んだのだが、物語の背景がちょうどカウボーイが出てくる米国だったので、カウボーイの歴史に興味が湧いたのです。【カウボーイの米国史】鶴谷 寿著、朝日新聞社、1989年刊<「BOOK」データベース>より西部劇に登場するカウボーイと現実のカウボーイはどう違っていたか!カウボーイのすべてをたどる。<読む前の大使寸評>先ごろモームの『剃刀の刃』を読んだのだが、物語の背景がちょうどカウボーイが出てくる米国だったので、カウボーイの歴史に興味が湧いたのです。amazonカウボーイの米国史プロローグに映画『真夜中のカウボーイ』が出てきたので驚いたのです。そのあたりを見てみましょう。p9~11 1969年にアメリカで製作された『真夜中のカウボーイ』という映画作品がある。 冒頭で、主役の一人であるジョー。バックという男が、カウボーイ姿で、テキサスからニューヨークに出てくるのである。彼は、カウボーイ姿の恰好良さと美貌と、たくましい肉体によってニューヨークの女性たちを魅惑し、あわよくば富みと栄光を手に入れようというのである。 しかし現実は、甘くもロマンチックでもない。逆に、金を捲きあげられてしまう。ここでもう一人の主人公であるラッツオというペテン師と知り合う。二人の間に友情が生れた。ラッツオの夢はフロリダに行くことである。 このラッツオのためにジョーは男娼にまで身を落とし、金を稼ぐ。若干の金を手にしたジョーは屈辱と泥にまみれたカウボーイ姿と訣別しラッツオと二人で太陽と新しい生活を求めてフロリダへ出発する。しかし体の衰弱していたラッツオはマイアミの日光の輝く海辺を見ることもなく途中で死ぬのである。 この作品は虚飾に満ちた大都会ニューヨークの混沌とした泥沼から必死にはい上がろうとする二人の若者を、鮮烈な感覚で捉えた異色の作品である。筆者には、颯爽としたカウボーイが最後には、テキサス男の栄光の象徴であるカウボーイ姿を脱ぎ捨てて悄然とフロリダに去ることに興味がある。 カウボーイは、テキサス男ばかりでなく、アメリカの男性の象徴でありイメージなのである。その背景には強いアメリカという意識があり、開拓時代のロマンが生きつづけている。この映画は、現実には、古き良き西部の夢がすでに消え去っているにもかかわらず、それが、郷愁としてアメリカ人の心に強く残っていることを思わせるのである。(中略) このようにアメリカ人自身が、カウボーイはアメリカ人を代表するものとみなしている。アメリカ合衆国以外の国の人たちも、アメリカ人について抱いているイメージの中で、まず心に浮かぶのは、この「カウボーイ」イメージであろう。カウボーイは、単にアメリカ男性のイメージを最もよく代表しているだけでなく、アメリカの国家そのものを象徴していると考えられる。
2021.02.22
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図書館で『㈱貧困大国アメリカ』という本を手にしたのです。大使がかねてより嫌っていたウォール街やモンサント社のあくどさが告発されているようですね。・・・ということで借りたわけです。【㈱貧困大国アメリカ】堤未果著、岩波書店、2013年刊<「BOOK」データベース>より「1%vs99%」の構図が世界に広がるなか、本家本元のアメリカでは驚愕の事態が進行中。それは人々の食、街、政治、司法、メディア、暮らしそのものを、じわじわと蝕んでゆく。あらゆるものが巨大企業にのまれ、株式会社化が加速する世界、果たして国民は主権を取り戻せるのか!? 日本の近未来を予言する、大反響シリーズ待望の完結編。<読む前の大使寸評>大使がかねてより嫌っていたウォール街やモンサント社のあくどさが告発されているようですね。・・・ということで借りたわけです。rakuten㈱貧困大国アメリカ遺伝子組み換え作物が述べられているので、見てみましょう。p78~81 <業界関係者だらけのFDA> アイオワ州のトム・ハーキン上院議員によると、1995年から2003年の間にUSDA(農務省)から支払われた農作物助成金は約1000億ドル(約10兆円)、うち七割は上位10%の巨大アグリビジネスに流れたという。こうした助成金で自国の農業を保護する国は少なくないが、アメリカでは過去数十年で、その受給者が小規模農家からアグリビジネスに上書きされていった。 シャーマン博士はこうした公的資金の無駄を撤廃するというオバマの公約が、就任後百八十度翻ったと批判する。 「オバマ大統領は選挙時の公約と真逆なことをやりました。食の安全に関わる要職に、業界関係者をずらりと任命したのです。 FDA(食品医薬品局)の上級顧問には、遺伝子組み換え種子の最大手であるモンサント社の副社長マイケル・テイラー。農務長官には、元アイオワ州知事で、自治体によるの発案者デアルトム・ビルサック。これでは規制される業界の人間を規制する側に入れているのと同じです。 オバマ大統領の就任で、やっと食品業界と政府の間の回転ドア人事にメスが入るかと思ったが、これでは垂直統合と規制緩和がまた進み、業界はさらに巨大化するでしょう。結局のところ、彼も歴代大統領と同じだったのです」 だがマイケル・テイラーに関しては、回転ドアが回るのはこれが初めてではなかった。 1992年にFDAが「遺伝子組み換え作物を実質的に通常の食品と同等に扱う」ことを発表した際、モンサント社の顧問弁護士を経て、FDAのGM作物政策担当副長官の座に就いていたのはテイラーだった。 彼はFDAの食品ガイドラインからGM表示義務を削除し、企業のGM作物安全評価データの一般公開を免責した。GM作物市販製品第一号である、モンサント社製「遺伝子組み換え牛成長ホルモン(rBGH)」を承認し、同ホルモン剤を投与した牛の牛乳について、ラベル表示を不要にしたのもテイラーだった。 牛に注射すると牛乳の生産量が三割増産するこの成長ホルモンは、カナダ、EU、オーストラリア、ニュージーランド、日本、国際食品規格委員会など27カ国といくつかの国際機関で禁止されている。 モンサント社が安全性を主張する一方で、通常2年は必要とされる長期的影響のテストデータの不在、モンサント社による90日間の自社試験結果の非公開、投与した牛の乳房感染症増加と、rBGHミルクに含まれる、人間の乳ガン、結腸ガン,前立腺ガンに関係する高レベルインスリン様成長因子(IGF-1)、牛乳への膿汁混入がもたらす抗生物質の過剰使用など、安全面への懸念からの禁輸措置だ。 だがFDAは今も「健康に影響はない」としてrBGHを承認し続け、全米の牛の三割が、週二回rBGHを注射されている。先進国で唯一rBGH入りの牛乳を飲み続けているのは、GM表示義務のないアメリカの国民だけなのだ。 テイラーは94年に食品安全検査局行政官に就任し、その後政府を離れてすぐモンサント社の副社長に「栄転」している。 シャーマン博士の言うとおり、いくら大統領選挙期間中に立派なことを豪語しても、就任後の本音は予算や人事を見れば一目瞭然だ。 オバマ大統領は今回新しく、議会の承認が不要なUSDA(農務省)直属機関である食料農業国立研究所を政府内に設立、所長にはモンサント社が出資するダンフォース・プラント科学センターのセンター長だったロジャー・ビーチーを指名した。ビーチーは大統領選挙の際、オバマ陣営の選挙資金に大きく貢献した一人だ。 TPP交渉における要職である、USTR農業交渉主任には、以前クリントン政権下のUSDAでバイオテクノロジーを推進したイスラム・シディキが任命された。彼は世界の農薬市場の四分の三を占めるモンサント他五社を代表するロビー団体「クロップ・ライフ・アメリカ」の副社長でもある。『㈱貧困大国アメリカ』1
2021.02.15
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図書館で『㈱貧困大国アメリカ』という本を手にしたのです。大使がかねてより嫌っていたウォール街やモンサント社のあくどさが告発されているようですね。・・・ということで借りたわけです。【㈱貧困大国アメリカ】堤未果著、岩波書店、2013年刊<「BOOK」データベース>より「1%vs99%」の構図が世界に広がるなか、本家本元のアメリカでは驚愕の事態が進行中。それは人々の食、街、政治、司法、メディア、暮らしそのものを、じわじわと蝕んでゆく。あらゆるものが巨大企業にのまれ、株式会社化が加速する世界、果たして国民は主権を取り戻せるのか!? 日本の近未来を予言する、大反響シリーズ待望の完結編。<読む前の大使寸評>大使がかねてより嫌っていたウォール街やモンサント社のあくどさが告発されているようですね。・・・ということで借りたわけです。rakuten㈱貧困大国アメリカアグリビジネスのメカニズムが述べられているので、見てみましょう。p73~75 <食品業界とウォール街の最強タッグ> 垂直統合による食と農業ビジネスの巨大化を誰よりも歓迎したのは「ウォール街」だ。 大手銀行や投資銀行、資本家、ヘッジファンドらは、食の業界における吸収・合併に積極的に関与し、資金融資から入札のための有価証券発行、新規株式公開手続きや戦略的アドバイスにいたるまで、あらゆる金融サービスを提供して後押しした。数十億ドル市場の農業ビジネスと食品加工業界は、銀行にとってはトップクラスの大口有料顧客だ。海外からの原材料仕入れが拡大するなか、海外市場とのキャッシュ管理だけで毎月莫大な手数料が入ってくる。 食と農業ビジネスの統合が進めば進むほど、ウォール街には手数料が湯水のごとく流れこんだ。リーマンショックでアメリカ経済全体が、深刻な不況と高失業率に苦しんでいたときでさえ、ウォール街から活気が消えることはなかった。アメリカ国内のSNAP受給者が4600万人という史上最大記録を突破する一方で、食品業界では2009年から2011年の2年間でおよそ1000件の吸収・合併契約が成立。そしてこの勢いは、今も衰えることなく加速し続けている。 「この数十年で最も二極化が大きく進んだのは、リーマンショックで景気が一気に悪化した時期でした。経済破綻を起こした張本人であるウォール街の人間たちは、自分たちの引き起こした惨事への反省はそっちのけで、どんどんスケールが大きくなる食品業界の買収・合併で得られるブローカー手数料の計算に夢中だったのです」 そう語るのは、マンハッタン在住の証券アナリスト、マーク・ブラウンだ。 「今でも忘れられないのは、このころ大きくニュースになった、クラフト社による、英系企業キャドバリー社の買収ですね。190億ドル(約1兆9000億円)という大きな額で行われたこの買収劇には大手金融機関や投資銀行がたくさん関わった。そのときの筆頭アドバイザー兼融資元は、政府から最大額の公金を受けて救済されたばかりの、シティグループとモルガンスタンレーでしたよ」 ウォール街とタッグを組んで吸収・合併を繰り返し、企業規模が拡大するにつれ、食品・アグリビジネス企業の役員会や株主には、金融業界幹部の名が増えていった。食品加工企業上位20社の株式を直接または間接保有する株主は現在436人だ。彼らは特定の業界または相互に便宜を図る形でさまざまな決定を下し、国境を越えたネットワークを着々と張りめぐらせてゆく。 「ビジネスは大規模になると、ウォール街にとってのドル箱になります。規制緩和と寡占化で巨大化した「食」と「農業」が優良投資商品になる条件が揃ったところで、金融業界は強力なロビー活動を行ない、政府に対し一気に法改正の圧力をかけました」 2000年にクリントン大統領は、商品市場の規制を緩和するに署名、これにより「食料価格」は、ウォール街の望みどおり、株式と同じようなマネーゲームの対象になった。 この法改正によって、先物取引の性質は大きく変えられてゆく。 それまで農家とメーカーの間の先物契約は、収穫された作物を重量あたりの合意価格で売買し、メーカーが作物をその価格のまま関連会社に売却するしくみだった。これによって、生産者もメーカーも極端な価格変動から守られる。ところが「商品先物近代化法」によって、この図の中にウォール街という第三プレイヤーが入り、メーカーは農家との「先物契約」を、合意価格に上乗せした「商品」として投資銀行に売れるようになった。ウーム 「食料」は投機の対象となったのか・・・ウォール街の資金にあかしたロビー活動が効いたようですね。まったくアグリーな(汚い)業界である。
2021.02.15
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図書館に予約していた『日本が売られる』という新書を、待つこと9ヶ月ほどでゲットしたのです。この新書は買って読もうかと思ったが、図書館で半年待って読めるとふんだのが甘かったようです。よくあることでおます。【日本が売られる】堤未果著、幻冬舎、2018年刊<「BOOK」データベース>より水と安全はタダ同然、医療と介護は世界トップ。そんな日本に今、とんでもない魔の手が伸びているのを知っているだろうか?法律が次々と変えられ、米国や中国、EUなどのハゲタカどもが、我々の資産を買い漁っている。水や米、海や森や農地、国民皆保険に公教育に食の安全に個人情報など、日本が誇る貴重な資産に値札がつけられ、叩き売りされているのだ。マスコミが報道しない衝撃の舞台裏と反撃の戦略を、気鋭の国際ジャーナリストが、緻密な現場取材と膨大な資料をもとに暴き出す!<読む前の大使寸評>この新書は買って読もうかと思ったが、図書館で半年待って読めるとふんだのが甘かったようです。よくあることでおます。<図書館予約:(2/05予約、10/26受取)>rakuten日本が売られる「働かせ方法案」について、見てみましょう。p138~141<どんなに働いても違法にならないワケ> 「二度と働きすぎで命を落とす人が出ないよう、決意を持って働き方を改革する」 電通社員の自殺が過労死認定された時、安部総理は神妙な表情でこう宣言した。 日本国憲法第27条2項には、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」とある。 だが国内の過労死件数は、毎年増大中だ。2018年7月6日に厚労省が発表した2017年度の過労死労災請求件数は、前年より161件増の2572件で過去最多、1日7人以上が、脳や心臓疾患、精神障害で労災となっている。 国連からも強く非難されている『蟹工船』のような環境がまかり通っているのだ。 それから間もなくして、総理は自らの宣言を行動に移し、日本人の働き方が改革された。 今後、過労死認定される労働者の数は、間違いなく減ってゆくだろう。 どれだけ働きすぎても、これからは合法になるからだ。 2018年5月31日。 衆議院本会議で「働き方改革法案」が可決された。 数々の問題が指摘されていた上に、厚労省がデータを捏造するなど法案決定プロセスもめちゃくちゃだったこの法案、特にその中の「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)は、極めて危険な内容なので、日本中のサラリーマンは絶対に知っておいた方がいい。 労働者の命と健康を守る「労働時間の規制」が、事実上なくなるからだ。 会社はあなたを4週間で4日間休ませれば、残り24日間は24時間働かせても合法になる。 もはや長時間労働が原因で死んでも「過労死」とはみなされないので、統計上の「過労死」が減るという、まさに雇う側と政府の両方いとっては一石二鳥の法律だろう。「高プロの対象は年収1075万円以上で専門分野の人でしょう。自分は関係ないです」と思っているといたら、ちょっと待ってほしい。 この法律は多くの国民に重要部分が知られておらず、かなり誤解されているからだ。 まずこの法律には「年収1075万円」という数字は、どこにも書いていない。 「厚労省の決めた基準平均給与の3倍+若干色をつけた額」がそのくらいという意味で、この金額は国会を通さずに厚労省が好きなように決められる(10円でもOKだ)。 しかも基準給与は、実際もらう給料ではなくもらえる見込みの額なので、例えば1000万円で契約した後、会社から押し付けられた大量の仕事が半分しか終わらずその分給料を半額にされても、あなたは「高プロ」の対象なので、残業代はなしだ。 そんなのおかしい、許されるはずがない! 一体なぜだ? とあなたは思うかもしれない。 これについては、この法案の旗振り役だった、産業競争力会議の竹中平蔵氏がわかりやすく説明してくれている。「時間内に仕事を終えられない生産性のひくい人に、残業代という補助金を出すのは、一般論としておかしいからです」 竹中氏を含め、メンバー全員が大企業役員で構成された政府の産業競争力会議も、もちろん全員一致で同じ考えだ。 共にこの法案をプッシュした経団連と前厚労大臣も、「対象年収はやはり400万円まで下げるべきですなあ」などと言っており、給料が高い低いにかかわらず、とにかく無能な社員に残業代を出すこと自体が間違いだという。 代わりに「時間でなく成果で評価する」高プロを入れれば、そういう社員の生産性が上がるだろうというわけだ。『日本が売られる』1
2019.10.31
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図書館に予約していた『日本が売られる』という新書を、待つこと9ヶ月ほどでゲットしたのです。この新書は買って読もうかと思ったが、図書館で半年待って読めるとふんだのが甘かったようです。よくあることでおます。【日本が売られる】堤未果著、幻冬舎、2018年刊<「BOOK」データベース>より水と安全はタダ同然、医療と介護は世界トップ。そんな日本に今、とんでもない魔の手が伸びているのを知っているだろうか?法律が次々と変えられ、米国や中国、EUなどのハゲタカどもが、我々の資産を買い漁っている。水や米、海や森や農地、国民皆保険に公教育に食の安全に個人情報など、日本が誇る貴重な資産に値札がつけられ、叩き売りされているのだ。マスコミが報道しない衝撃の舞台裏と反撃の戦略を、気鋭の国際ジャーナリストが、緻密な現場取材と膨大な資料をもとに暴き出す!<読む前の大使寸評>この新書は買って読もうかと思ったが、図書館で半年待って読めるとふんだのが甘かったようです。よくあることでおます。<図書館予約:(2/05予約、10/26受取)>rakuten日本が売られるなぜかアメリカの要求に弱いニッポンの各種規制について、見ていきましょう。p56~60<世界は続々とネオニコチノイド禁止へ。日本は?> 農薬メーカーの手は、巨大市場であるヨーロッパにも伸びている。 2008年にEUでネオニコチノイドが認可された時、欧州委員会消費者保護部門が根拠として提出した報告書の骨子を作っていたのは、化学薬品生産メーカーである世界最王手「バイエル社」だった。 その後、複数の市民団体や独立した第三者研究機関が再検証すると、危険性を示す実感結果が明らかになる。欧州委員会の自作自演に激怒した彼らは世論に訴え、関係者にしつこく見直しを働きかけ、EUの農薬政策は大きく方向転換させられることになった。 2013年12月。 EUは、欧州食品安全機関(EFSA)の、「一部ネオニコチノイド系農薬に子供の脳や神経などへの発達性神経毒性がある」との科学的見解に基き、安全性が確定するまで、ネオニコチノイド系農薬を主成分とする全殺虫剤の使用を一部禁止した(その後2018年に全面禁止)。 このEUの決定を受け、他の国も次々に後に続いてゆく。 スイスはすぐにEUと同じ内容で一部使用禁止(その後全面禁止)、翌年2014年には韓国とオランダが禁止を決定する。 2015年にはブラジルが綿花の開花時期に畑の周りでネオニコチノイドを使用することを禁止、カナダは2015年、16年、17年と3年かけて段階的に使用禁止にし、台湾では2017年に一部禁止、かつて日本で冷凍毒入り餃子や残留農薬が凄まじい冷凍インゲン(基準値の3万4500倍)が大騒ぎになったあの中国ですら、習近平になってから農薬の規制強化と禁止を具体的に進め始めた。 もっと素早い国もある。 すでにフランスは2006年に使用を、ドイツは2008年に販売自体を禁止していた。 養蜂家たちの働きかけで2008年からトウモロコシのネオニコチノイドの種子処理を禁止したイタリアでは、年々増えるミツバチの大量死がパタリと止まったという。 相変わらず農薬メーカーと二人三脚のアメリカでは、一つの州(2016年にメリーランド州が禁止)を除き、一種のみの一部規制と新規登録停止以外は、全土で使用され続けている。 では日本はどうだろう? 前述した山田敏郎教授(当時)が2013年に発表した実験結果でも、諸外国と同じ結論が出た。 致死量でない低濃度でも、ネオニコチノイドが残留いた餌を食べたり汚染された水を飲んだりしたハチは帰巣本能を失い、群れが崩壊する。念のため濃度を100倍に薄めてみたが、12週間後には死滅したという。これは見過ごせない結果だった。例えばブドウ一つとってみても、日本人は安全基準値がヨーロッパの500倍という濃度で、ネオニコチノイドを体内に入れているのだ。 山田教授はこの実験データを示し、ネオニコチノイドの削減を呼びかけた。 2010年には日本農業新聞が、北海道など全国22ヶ所でのミツバチ死滅被害報告を発表、ハチの死骸の92%から、ネオニコチノイド農薬が検出されている。 だが米国のミツバチ大量死現場を視察した日本政府が出した結論は、福島第一原発事故後に国民が繰り返し聞かされたのと同じ、あの台詞だった。「ミツバチの大量死の原因は、ストレスです」 そして日本政府のお墨付きを得たネオニコチノイド農薬は、猛スピードで使用量が拡大してゆく。<日本は野菜40種のネオニコ残留基準を大幅に緩和> 2013年10月。政府はほうれん草、白菜、カブなど40種の食品の、ネオニコチノイド系農薬「クロチアニジン」の残留農薬基準値を最大2000倍に引き上げた。クロチアニジンは、独バイエル社と住化武田農薬の2社が特許を持っている。今回その製造と販売をする住友化学から基準値引き上げの要望を受けた農水省が改定を申請し、厚労省医薬食品局の食品安全部基準審査課が然るべきデータをもとに安全審査を行ない、基準値を変更したという。
2019.10.30
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前米大統領補佐官のハーバート・マクマスターさんがオピニオン欄で「北朝鮮軍備は強力、首脳会談なければ戦争もあり得た」と説いているので、紹介します。(マクマスターさんのオピニオンを6/01デジタル朝日から転記しました) もしあのとき米朝首脳が会談していなければ――。昨年4月まで米政権中枢で外交・安全保障を取り仕切ったマクマスター前大統領補佐官が「そこにあった危機」を語った。北朝鮮の核・ミサイル問題から、激化する米中対立の行方まで。今後の東アジア情勢はどうなるのか。戦略家の視線の先にある世界を聞いた。Q:2017年ごろ、あなたが北朝鮮に対する軍事攻撃に最も積極的だった、と複数の米政府当局者から聞きました。本当ですか?A:その通りです。もちろん北朝鮮との軍事衝突を避けたいと思っていました。しかし、米国と同盟国である日本、韓国が最悪の事態に備えることが重要です。そのためにあらゆる軍事的選択肢を準備しておくべきなのです。Q:軍事攻撃はどのぐらい現実的だったのでしょうか。「可能性は30%」と語った上院議員もいました。A:数字で表すのは難しいですが、もし方針転換ができていなければ、戦争に向かって突き進んでいたでしょう。トランプ大統領は就任当初から北朝鮮の核保有を許さないと断言していたからです。Q:しかし米軍が攻撃すれば、北朝鮮の反撃によって韓国や日本に大きな被害が出かねません。それでもなお軍事的選択肢をとるのですか。A:北朝鮮が開発したミサイルなどの兵器で他国に輸出しなかったものはありません。シリアのような残虐な国家の核開発も支援しました。これを防ぐために北朝鮮の核関連施設を破壊する予防的攻撃の準備をしておくことがとても重要なのです。もちろん地域の同盟国と調整せずに安易に決断するわけではありませんが。Q:そうはいっても実際に核を持った国を攻撃するのは難しく、現実的とは思えません。A:多くの人はしっかりと議論しないまま、北朝鮮が抑止力のために核を求めていると思っています。しかしこれは誤った解釈だと私は分析しています。朝鮮戦争が始まった1950年以来、すべての侵略行為は北朝鮮が起こしています。 通常兵器だけでもすでに非常に強い抑止力を持っている。北の核兵器は米韓同盟を破壊し、北朝鮮主導で武力による統一をするための『伝家の宝刀』なのです。だからこそ米国と同盟国は、最悪の事態が起きた時にすぐに対抗できる軍事措置を準備しておくことが極めて大切なのです。Q:昨年3月に韓国政府高官が「金正恩・朝鮮労働党委員長がトランプ大統領に早い時期に会いたいと言っている」と米側に伝えました。トランプ氏はこれに応じましたが、同席していたあなたは反対したという話を聞きました。A:首脳会談の開催に反対したのではありません。大統領に懸念を表明したのです。北朝鮮に核・ミサイル開発を断念させるための『最大限の圧力』政策を始めてから効果を上げるのに十分な時間が経っていませんでした。過去の政権による金体制との交渉の失敗のパターンを熟知していたので、我々は適切な時期まで待つのが重要だと考えたからです。金正恩(委員長)に関する情報も少なく、会うことの危険性もありました。Q:でも、トランプ氏は押し切ったわけですね。A:大統領が一度決めたからには、それをうまく利用してチャンスにしたいと思いました。これまでの事務レベルによる多国間協議は失敗を繰り返しましたが、今回はトップ同士の会談です。我々は初の首脳会談に向けた良い環境づくりに全力を尽くしました。Q:にもかかわらず、2度の会談は成果を上げていません。むしろ昨年6月の会談後、米韓は大規模合同軍事演習を中止しており、戦闘能力の低下が懸念されます。A:無責任なことだと思います。最高司令官である大統領が軍事手段を選ばないと予測していたとしても、軍は有事の際にはいつでも実行できる軍事行動を用意しておかなければならないのです。 ■ ■Q:米中関係は対立が激化しています。その火ぶたを切ったのが、17年末にあなたが主導してつくった「国家安全保障戦略」(NSS)だったとみています。この中で中国について世界の秩序を変えようとする「修正主義勢力」「競争国」と位置づけたのには驚きました。A:そうでしょうね。冷戦後、米国の外交政策における最も重大な転換だったからです。間違った前提に基づいていたそれまでの対中政策とは根本的に異なります。Q:間違った前提とは何でしょうか。A:中国は今の国際秩序の中で共存していくと考えられてきました。ルールに基づいた国際貿易や商慣習を受け入れ、国家資本主義型から自由市場経済に変わっていくという前提です。そうなれば当然豊かになり、中国国内の民主化も進むと考えられてきました。Q:米主導の国際秩序を支える存在に変える関与政策ですね。A:ところが実際は、攻撃的な外交攻勢によって、自由で開かれた秩序に替わるシステムを築こうとしています。まさに中国の王朝が周辺国を従えた冊封体制の現代版です。さらに中国へ進出した外国企業に技術移転を強要したり、サイバー攻撃を使った前例のない大規模な産業スパイ活動をしたりしていることが明らかになりました。 中国は領有権を主張する南シナ海で人工島を造成し、軍事化を進めるなど外交・安全保障でも極めて攻撃的になっています。シルクロード経済圏構想『一帯一路』を通じて、世界中で戦略的に支配力と影響を強めてもいます。Q:完全に裏切られたわけですね。新たな対中政策は具体的にどのようなものでしょうか。A:私が補佐官になった直後の17年初めから、これまでの対中政策の見直し作業を始めました。まず中国は『戦略的競争国』であるという考え方を基本としました。 中国による洗練された攻撃から、我が国の重要な利益である自由で開かれた社会を守らなければなりません。ただ、これは協力の扉を閉じていることを意味しているわけではありません。誰も望まない直接的な衝突を避けるためにも、共通の利益がある分野では協力を強めていくことが最良の方法です。 ■ ■Q:トランプ政権は台湾海峡への米艦艇の派遣を増やして関与を強めています。一方、先日インタビューした中国軍高官は「中国が台湾を武力統一しても米国が軍事介入をする可能性は低い」と言っていました。A:中国の軍高官は歴史を無視するようないい加減なことを言うべきではありません。第2次世界大戦後、中国と北朝鮮は、米国の防衛区域外にある韓国に侵攻しても介入しないとみて、朝鮮戦争に踏み切りました。その後も米国は世界中に強力な軍を派兵して戦争を防ぐことに貢献してきました。インド太平洋地域でも引き続き米軍を展開していきます。Q:中国は東シナ海や南シナ海でも攻勢を強めています。最近は「海上民兵」と呼ばれる漁民も動員するようになっています。A:中国は慣習にとらわれない兵力を使っています。海上民兵は準軍事組織と言えますが、海軍に準じる米沿岸警備隊でも対応していく必要があります。警備隊の艦艇が最近、インド太平洋地域で展開するようになったのもそのためです。民兵を雇っている会社や個人への経済制裁も必要でしょう。Q:米国は今後、中国にどのように対処していくべきだと考えますか。A:中国はこれまでたくさんの約束をしてきましたが、そのほとんどが守られていません。習近平国家主席が15年、ホワイトハウスでオバマ大統領と会見した際、『中国は産業スパイ活動をやめる』と宣言しました。ところが実際は、より積極的になっています。 中国と貿易問題を交渉しているライトハイザー米通商代表部代表ら各閣僚は約束だけではなく、実行するかどうか検証することを重視しています。中国共産党が本当に態度を改めたことを確認できるまでは、追加関税を維持しておくのが賢明だと思います。 *ハーバート・マクマスター前米大統領補佐官(国家安全保障担当):1962年生まれ。湾岸戦争、イラク戦争に参戦。米陸軍中将だった2017年2月から大統領補佐官。米ハドソン研究所日本担当部長に就任予定。■取材を終えて 米軍切っての戦略家と評されただけあって、どんな質問にも理路整然と答えてくれた。わずかに感情の高ぶりを感じたのが、北朝鮮を巡る対応を尋ねた時だ。核・ミサイル施設を先制攻撃する作戦が政権内で練られていたことを示唆した。米朝両首脳による電撃的な会談が開かれていなければ、軍事衝突になっていた可能性を示すものだ。当時、危機の瀬戸際だったという切迫感が伝わってきた。 気になったのは対中関係だ。中国について何度も口にしたのが「懐疑的」。不信感がマクマスターさんがつくった対中政策の基礎になっており、米中対立の激化を引きおこしているように感じた。先日インタビューした中国国防大学の劉明福教授とは、台湾問題などの認識が大きく異なっていることも浮き彫りになった。双方の軍の戦略家の話を聞いて、両国の対立が激化していくという一点しか共通点がなかったことに、事態の深刻さがある。(峯村健司)(耕論)米高官が見た東アジアハーバート・マクマスター2019.6.01この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップR12に収めておきます。
2019.06.04
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図書館で『日本を棄てた日本人』という本を、手にしたのです。カルフォルニアに住む日系人をレポートしているようだが・・・なにやらディアスポラ日本人を予感させるようで、怖い気がするのです。【日本を棄てた日本人】石戸谷滋著、草思社、1991年刊<「BOOK」データベース>より年々その数を増し、いまや日系人社会の中でも特別な地位を占めるようになった「新一世」たち。高度経済成長がはじまった1960年代なかば以降にアメリカに渡った彼らの多くは、貧しさをのがれて日本を去るわけでもなく、金を稼ぐために移住するわけでもない。彼らはいったい何を求めてアメリカに渡るのだろうか。彼らのカリフォルニアでの活動を追うことはカリフォルニアという場所の特徴を知ることになると同時に、彼らを追いやった日本の社会の問題点を浮き彫りにすることにもなる。<読む前の大使寸評>カルフォルニアに住む日系人をレポートしているようだが・・・なにやらディアスポラ日本人を予感させるようで、怖い気がするのです。amazon日本を棄てた日本人波乱万丈のレヴンズ静子さんを、見てみましょう。<5人に1人の>p106~110 レヴンズ夫妻の自宅のあるトーレンスは、ダウンタウンのほぼ真南に位置する地区で、その南はもう太平洋である。かつては延々と畑が広がっていた場所だったというが、今日ではロサンジェルスの格好な郊外住宅地に生まれ変わっている。 トーレンスはまた、日本人が最も多く住んでいる地区として知られている。日本人居住区としては、かつてはその北にあるガーデナが有名だったが、最近はメキシコ人や黒人が大挙して移住してきたため、日本人はその南側、つまりトーレンスに追いやられつつあるという。トーレンスは工場も多い地区でやや殺風景な印象を与えるが、ダウンタウンにも空港にもビーチにも近い便利な場所である。 知人に紹介されてレヴンズ静子さんに電話し、話を聞かせてもらえないかとお願いしたとき、私は電話口で彼女の元気の良さに圧倒された。「ええ、私でよかったら、どうぞいらしてください。午後2時ごろがいいですか? 夕方には主人も帰るから、夕食を食べてらっしゃい。ね、ぜひそうして? そうすればアメリカ人の家庭がどんなものかも見られるし・・・」 というわけで、アメリカ人の家庭の見学も兼ね、私はレヴンズ家におじゃますることにした。 門口で私を出迎えてくれた静子さんはやせ形で長身の女性で、肌はよく陽に焼け、丸顔に眼鏡をかけたところが愛嬌があった。年齢は40代の半ばを過ぎたところ、ご主人とは16歳の年齢の隔たりがあるという。静子という名前とは裏腹に、大きな声でとにかくよくしゃべる人である。「シズコではこっちの人は発音しづらいから、名前をスージーに変えちゃったの」と彼女は言った。もらった名刺にもSUZIと書いてある。 レヴンズ家の自宅は、建物自体は決して新しくはないが、室内は趣味のいい落ちついた調度品で飾られていて、いかにも住み心地の良さそうな家だった。タイルのコントラクターを営むレヴンス氏のこと、バスルームと洗面所は最新式の豪華な設備を施している。窓が大きく明るい食堂の椅子に腰を落ちつけ、私は静子さんの身の上話に耳を傾けることにした。 静子さんはあるカメラ・メーカーの附属診療所に勤める医師の娘として東京に生まれた。写真大学を卒業したあと、彼女は物理写真の技師としてある自動車メーカーに就職する。物理写真とは、たとえばプロペラを回転させ、それにストロボを当てて写真を写して、プロペラ本体に疵が入っているかどうかをテストする技術である。彼女はここに五年間勤めたあと、写真の技術を磨くために神戸にある写真の現像所に転職、まもなく東京の現像所に移った。 静子さんはこの現像所に7年間勤めた。だが、そこは小さな会社で残業が多く、女性ゆえに昇進の道も閉ざされているし、上司とポリシーが遭わないこともあって、彼女はこの仕事にしだいに嫌気が差してきた。「大学を卒業してもう10年以上たってるでしょう。こんなところで一生こき使われるわけにはいかないって考えたのよ」と静子さんは言う。「それで、アメリカに行こうと決心したの。ここにいて朽ち果てるよりは、失敗してもいいから自分を試してみたいと思って。もちろん、35歳にして職を投げだすのにはそれなりの勇気がいりましたよ」 こうして1978年、静子さんは単身アメリカに渡ることになった。もちろん、このとき彼女は自分がカルフォルニアに定住することになるとは思っていなかった。 最初の2年間、ロサンジェルス市内のアダルト・スクールに通った。学生ビザの規定により1日6時間で週5日間、計30時間の授業を受け、週末だけビア・バーのウェートレスをして働いた。あとは蓄えを取りくずしながらの生活である。 アダルト・スクールを終えたあと、静子さんはいよいよ本格的に働きはじめる。弁護士を使って学生ビザを継続してもらう一方、友人のコネで船員相手の免税店の店員になったのである。2年で日本に戻ろうという当初の計画はいつしかご破算になっていた。「アメリカに来て、やっと『正常に呼吸ができるようになった』っていう感じがしたのね。ここでは自分のキャラクターを抑えたり隠したりする必要がないでしょう? 日本という国は、ぬるま湯みたいなところで、とにかく目立たずにじっとしてればいいのよ。みんな湯から首だけ出して、上目づかいにまわりを見まわしてる感じでしょう? あんなところじゃまともに呼吸はできないわよ」 静子さんは、免税店のオーナーに永住権の申請をしてもらっていた。だが、そろそろ下りる時期かなと思っていた矢先、「店をたたむことになったから」と申請をキャンセルされてしまったのだった。「でも、その店はクローズする店舗を拡張しちゃって・・・。でも、私のほうもしばらく前からそこで働いてなかったから、あまり文句も言えなかったけど」 その後もまた、静子さんはさまざまな場所で働くことになる。もちろん、すべて不法就労だった。友人と組んでレストランを開いたこともあったが、二人とも身を入れて働かなかったためにこの商売は失敗に終わってしまう。 静子さんはボーイフレンドもたくさんいた。一度はサンタモニカで白人の男と同棲したこともあったが、結局は別れることになる。こんなことをしながら、彼女がカリフォルニアに渡ってきて早くも4年以上の年月がたっていた。ここまでは、静子さんは標準的なはみだし者の道を歩んだことになる。「1982年のおおみそかの晩のことだったの。アメリカに来て5年目ね。この晩、友人の社交クラブのパーティーがあって(社交クラブってほら、独身の人が相手を捜す集まりよ)そこの受付を頼まれたのね。私は会員じゃなかったの。それが、たまたまいまの主人が(彼もやはり会員じゃなかったんだけど)やってきて、いっしょにダンスをして、電話番号を交換して別れたの。それで1月3日に旅行から戻ったら、彼から電話があって、もう何回となく電話したって言うの、私が旅行しているあいだに。それで会ってみたら、とってもカンファタブル(心地よい)人で、いっしょにいるとまるでアームチェアに座っているみたいだったのね。それで、1月9日にラスベガスで結婚しちゃったわけ」 いずれにせよ、アメリカ人との結婚によって彼女は自動的に永住資格を得た。 静子さんのご主人、レヴンス氏はタイルのコントラクターである。日本では、ビジネスといえば会社組織でおこなうものと相場が決まっているが、アメリカでは、全体の70パーセントまでがスモール・ビジネス、つまり個人単位のビジネスだという。スモール・ビジネスで成功すれば、ブルーカラーであっても一流大学卒のエリートと肩を並べるだけの収入が得られる。『日本を棄てた日本人』2:寅さんのスシ・バー『日本を棄てた日本人』1:アメリカの移民法
2019.02.07
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図書館で『火星で生きる』という本を手にしたのです。表紙にTED Booksとシリーズ名が見えるとおり、いかにもアメリカの本でんな。…と、言いつつも借りた反米の大使でおます。【火星で生きる】スティーブン・ペトラネック著、朝日出版社、2018年刊<「BOOK」データベース>より 2027年、流線形の宇宙船が火星に降りていくーいまや問題は火星に「行く」ことから、そこでどう「暮らす」かへと移った。 イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、マーズワンといった民間プレーヤーが宇宙をめぐって激しく開発競争を展開するなか、新型ロケットやテラフォーミング技術など、火星移住に向けた準備は着々と進んでいる。駆り立てるのは地球の危機と人類の探求心。数々の科学誌編集長を歴任したジャーナリストが、宇宙開発史から環境的・経済的な実現可能性まで、「最後のフロンティア」火星の先にある人類の未来を活写する。<読む前の大使寸評>表紙にTED Booksとシリーズ名が見えるとおり、いかにもアメリカの本でんな。…と、言いつつも借りた反米の大使でおます。rakuten火星で生きるメイフラワー号第5章「火星の経済学」でイーロン・マスクの火星入植構想を、見てみましょう。p76~78 マスクにとっては、イギリスによる「新世界」の植民地化と火星入植との類似点が、いまだに強い印象を残しているようだ。「ちょうどアメリカと一緒です。初めてアメリカに渡ったイングランド船は何艘だったでしょう。たったの一艘です。そこから早送りして200年後を見てみると、イングランドからアメリカへ渡る船は何艘になったでしょう。数千艘です。きっと同じようなことになります。新世界には希望があった。そこが火星だったとしても同じことです」 マスクの考えでは、最終的には数百万に上る人々が火星行きを望むようになる。マーズワンなどの火星移住プロジェクトに申し込む人の数から見て、実際のところ彼は正しいのかもしれない。しかし、マスク自身は進んで旗振り役をするつもりはないという。「私がどうしたいかではなく、人がどおうしたいと思うようになるかという話ですからね。私には、人々が何を望むようになるかとか、そういうことはわからないのです」。 と言いつつも、マスクはこう付け加える。人々が火星に行きたいと望むのであれば、「私たちが設計中のシステムがそれを可能にしてくれます。うまくいけば2050年には数万人がランデブー飛行で並んで火星に行くことになるでしょう」。 しかしここで少し話を巻き戻してみよう。こうした開拓者たちが火星に向かう前に、最初の探検を誰かがしなければならないのだ。 マスク以外の、他のさまざまな火星探査計画によれば、火星に着陸し短期滞在する前に2つのことができていなければならない。適切な着陸地点および滞在場所を探し当てることと、大量の物資を前もって地球から送っておくことだ。理想的には、有人探査に先立つ補給ミッションで、ロボットを使って住居施設を建設・維持しておくことが望ましい。 マーズワンの計画ではこのようなシステムが提案されている。ローバーを使って、宇宙飛行士に先立って運ばれて来た部材から住居を造るのだ。資材をきちんと着陸させ、それを組み立てる機械やロボットを用意し、資材をあちこち運搬し、宇宙船や付属の膨張式設備を作り直す。必用な技術は多岐にわたるが、決して無茶な試みではないだろう。しかし、マーズワンが目標とする2025年までにこれらすべてを達成できる見込みはほとんどない。『火星で生きる』5:第8章「ゴールドラッシュの再来」p172~177『火星で生きる』4:第6章「火星で生きる」p86~89『火星で生きる』3:民営化する宇宙開発競走p38~43『火星で生きる』2:夢の続きp13~15『火星で生きる』1:イントロダクション 夢p8~10
2018.10.14
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図書館で『火星で生きる』という本を手にしたのです。表紙にTED Booksとシリーズ名が見えるとおり、いかにもアメリカの本でんな。…と、言いつつも借りた反米の大使でおます。【火星で生きる】スティーブン・ペトラネック著、朝日出版社、2018年刊<「BOOK」データベース>より 2027年、流線形の宇宙船が火星に降りていくーいまや問題は火星に「行く」ことから、そこでどう「暮らす」かへと移った。 イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、マーズワンといった民間プレーヤーが宇宙をめぐって激しく開発競争を展開するなか、新型ロケットやテラフォーミング技術など、火星移住に向けた準備は着々と進んでいる。駆り立てるのは地球の危機と人類の探求心。数々の科学誌編集長を歴任したジャーナリストが、宇宙開発史から環境的・経済的な実現可能性まで、「最後のフロンティア」火星の先にある人類の未来を活写する。<読む前の大使寸評>表紙にTED Booksとシリーズ名が見えるとおり、いかにもアメリカの本でんな。…と、言いつつも借りた反米の大使でおます。rakuten火星で生きるNASAが降りてしまった宇宙開発競走を、見てみましょう。<第2章 民営化する宇宙開発競走>p38~42 NPO「インスピレーション・マーズ」が打ち上げを予定しているのは2018年。15年に1度しかやって来ない火星と地球の軌道のめぐり合せを利用すれば、往復501日のフライバイが1度のエンジン燃焼で可能になるからだ。あとは火星まで慣性で飛び、その後ろをぐるっと回って(スイングバイ)再び地球へと慣性で戻って来る。こうした離れ業ができるロケットはまだ実用段階にはない。チトーによれば、2021年に金星のスイングバイを経て火星のフライバイ軌道に入る代替案もあるという。 アマゾンのジェフ・ベゾス、グーグルの共同創業者ラリー・ペイジ、マイクロソフトの共同創業者ポール・アレン、企業家で冒険家のサー・リチャード・ブランソンらもまた、莫大な資金を投入して、新たに始まった民間の宇宙開発競走に何らかの方法で参入しようとしている。これまでのところ、その様相は開拓時代のアメリカ西部と同じくらい混沌としている。ただし今回のフロンティアは宇宙空間だ。そして、火星に人類を送り出そうという民間の計画は決して少なくないにもかかわらず、目下のところ、NASAが重い腰を上げるよりも早く人類の火星到達を実現してくれそうな企業は、ただひとつしかない。 ベルンヘル・フォン・ブラウンからアポロ11号へとまっすぐ1本の線をたどれるように、宇宙飛行士たと乗せて2027年に火星に降り立つ宇宙船からはイーロン・マスクのところまで一直線の軌跡が描けるだろう。その火星着陸船には、スペースXのロゴが描いてある可能性がいちばん高い。 マスクは現代の企業家の中でおそらくもっとも先見の明があるように思う。スタンフォード大学の応用物理学の博士課程を退学した7年後、マスクは自身が共同創業者であるペイパルとジップツーの株を売り、3億2400万ドルの純益を手にしたという。その資金は、彼が2002年に創業したスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)社に使われた。続いて彼が共同で設立したテスラモーターズは、自動車産業に革命を起こそうとしている。(中略) マスクが民間でロケット会社を始めた理由はひとつしかない。「スペースXを始めた目的は、ロケットの技術開発を進めること。すべては火星に自給自足の恒久的な基地を建設するためなのです」と彼は2014年5月に発言している。ここで少し立ち止まってマスクの会社の名を見返してみよう。スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ…「エクスプロレーション(探検)」という単語に注目してほしい。先人フォン・ブラウンと同じく、マスクは宇宙飛行が当たり前になった人間社会の実現に心奪われているのだ。 彼はそのうち地球に住み続けられなくなることをはっきりと認識している。人類が自らの住処である地球に対して無関心すぎると、ずいぶん不満を感じているようだ。地球にいるままでは人類は絶滅するという端的な事実から、彼は決して目を逸らさない。ウン イーロン・マスクの動静は、全米の株価にも影響するわけで・・・別格でんな♪『火星で生きる』2:夢の続き『火星で生きる』1:イントロダクション 夢
2018.10.11
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図書館で『火星で生きる』という本を手にしたのです。表紙にTED Booksとシリーズ名が見えるとおり、いかにもアメリカの本でんな。…と、言いつつも借りた反米の大使でおます。【火星で生きる】スティーブン・ペトラネック著、朝日出版社、2018年刊<「BOOK」データベース>より 2027年、流線形の宇宙船が火星に降りていくーいまや問題は火星に「行く」ことから、そこでどう「暮らす」かへと移った。 イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、マーズワンといった民間プレーヤーが宇宙をめぐって激しく開発競争を展開するなか、新型ロケットやテラフォーミング技術など、火星移住に向けた準備は着々と進んでいる。駆り立てるのは地球の危機と人類の探求心。数々の科学誌編集長を歴任したジャーナリストが、宇宙開発史から環境的・経済的な実現可能性まで、「最後のフロンティア」火星の先にある人類の未来を活写する。<読む前の大使寸評>表紙にTED Booksとシリーズ名が見えるとおり、いかにもアメリカの本でんな。…と、言いつつも借りた反米の大使でおます。rakuten火星で生きる夢の続きを、見てみましょう。<イントロダクション 夢>p13~15 この開拓者たちが始めた大旅行は、ずっと先の未来にまで影響を与えることだろう。ロケット用の宇宙空港を行き来する、宇宙飛行が当たり前の社会が実現する。低重力の惑星からの打ち上げが容易になり、そこから太陽系外縁部への宇宙飛行も可能になるはずだ。 近い将来、火星に着陸するロケットが持つ意義は、未知の世界への第一歩というだけに留まらない。それは、人類の安全保障策そのものなのだ。現実問題として、地球上で人類が行き続けられなくなる原因はいろいろある。環境破壊を食い止められないかもしれないし、核戦争が勃発するかもしれない。 たったひとつの小惑星と衝突するだけで生命の大半が消滅しうるし、最後には太陽が膨張して地球を飲み込んでしまう。そうなる前に、私たちは宇宙を飛びまわる種へと姿を変え、他の惑星のみならず、最終的には他の恒星系でも生きていけるようにする必要に迫られている。 移住に挑む最初の人類は、種としての存続をかけた望みの綱なのである。はじめは小規模だった基地が成長してコロニーを形成し、やがて住民は新たな種に変貌して瞬く間に生息地を広げるかもしれない。彼らを火星へと運んだロケット製造会社はさらに数百機のロケットを建造中で、人類存続のため数十年以内に居住者を5万人にするのが目標だ。地球に残った私たちが滅亡したとしても、彼らが人類の英知と達成とを受け継いでくれるだろう。 実のところ、少なくとも30年前からずっと、火星に到達することは可能だった。アポロ11号による人類初の月面着陸、その10年ほどあとに初の火星着陸、という展開は充分にありえることだった。そのために必用な技術のほとんどは、かなり前から知られていた。私たちがそのチャンスをなかなかものにできなかったというだけなのだ。 その失敗の裏にある事情は知っておいてもいい。あるアメリカ大統領のたったひとつの決定が、その後の宇宙旅行の伸展を数十年にもわたって阻害していたこと。それがなければ、地球人の意欲は2世代にわたってかき立てられ、夢を現実にする人類の力が存分に発揮されていたかもしれないこと。約50年前、私たちはすでに、太陽系の中へ、そしてさらにその先へと進出する力を手にしていたのだ。『火星で生きる』1
2018.10.11
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図書館で『火星で生きる』という本を手にしたのです。表紙にTED Booksとシリーズ名が見えるとおり、いかにもアメリカの本でんな。…と、言いつつも借りた反米の大使でおます。【火星で生きる】スティーブン・ペトラネック著、朝日出版社、2018年刊<「BOOK」データベース>より 2027年、流線形の宇宙船が火星に降りていくーいまや問題は火星に「行く」ことから、そこでどう「暮らす」かへと移った。 イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、マーズワンといった民間プレーヤーが宇宙をめぐって激しく開発競争を展開するなか、新型ロケットやテラフォーミング技術など、火星移住に向けた準備は着々と進んでいる。駆り立てるのは地球の危機と人類の探求心。数々の科学誌編集長を歴任したジャーナリストが、宇宙開発史から環境的・経済的な実現可能性まで、「最後のフロンティア」火星の先にある人類の未来を活写する。<読む前の大使寸評>表紙にTED Booksとシリーズ名が見えるとおり、いかにもアメリカの本でんな。…と、言いつつも借りた反米の大使でおます。rakuten火星で生きるヴィクトリア・クレーターイントロダクションを見てみましょう。<イントロダクション 夢> 地球と火星の環境は似ているところもある。たとえば、火星の地形と同じような場所は地球にもある。南極にあるドライバレーやハワイの火山に見られる砂漠などだ。 しかし、火星の環境が生やさしいものでないことは他の多くの点から明らかだろう。火星の1日は地球よりも39分25秒長いだけだが、火星の1年は地球よりもずっと長い687日。だから、季節はそれぞれ2倍の長さになる。 火星の軌道は楕円形のため、冬と夏の寒暖差は地球に比べてずっと大きく、南半球では夏の暑さや冬の寒さが地球よりも厳しい。最終的に、火星の開拓者たちは基地を2つ建設することになっている。赤道のすぐ南に夏用、北側には冬用、というわけだ。 しかし、さしあたって、人類で初めて火星の上を歩く者たちが24時間以内に始めなくってはならない最重要課題は、水の探索である。 NASAのランダー(着陸船)やオービター(周回衛星)による火星探査から、「レゴリス」と呼ばれる火星の表土には十分な量の水が存在すると予測されている。それが本当かどうか確かめるわけだ。 自分たちの飲料水としても、酸素を作るためのストックとしても、水は必要だ。宇宙飛行士たちはそのために、NASAのオービターが見つけた、不純物の混じっていない氷が一面に張っているクレーターに着陸したのだ。その輝きが実は氷ではなかったとしたら、氷を含んでいそうなレゴリスを探さなければならない。近くにそうした氷がなければ、地中レーダーによって地下水を探し、ドリルで穴を掘ることになる。 次の宇宙船が到着するのはこの先2年後。その前に、十分な余裕を持って、宇宙飛行士たちはもっと長持ちする建物を造る必用がある。これはレゴリスから作ったレンガで建てることになっている。ウーム これはまるでSF映画の『オデッセイ』のような近未来ではないか・・・やっぱりアメリカ人の夢には、かなわんで♪【オデッセイ】リドリー・スコット監督、2015年米制作<movie.walker作品情報>よりマット・デイモンが火星に取り残された宇宙飛行士を演じる、リドリー・スコット監督によるサバイバル・ドラマ。残り少ない酸素や食料をよそに、科学の力を武器に生き残ろうとする主人公ワトニーと、彼を火星に置き去りにしてしまった事を悔やみ、救出しようとする人々の葛藤や友情を描く。原作はアンディ・ウィアーのベストセラー小説。<観る前の大使寸評>ハリウッド映画を極力観ないようにしているのだが・・・リドリー・スコット監督のハードSF映画となると観ないわけにはいかないだろう。movie.walker【オデッセイ】
2018.10.10
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図書館に借出し予約していた『アメリカ 暴力の世紀』という本を、およそ半年待ってゲットしたのです。ジョン・ダワーといえば、日本通の学者として著名であるが・・・トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文とやらが、興味深いのです。【アメリカ 暴力の世紀】ジョン・W.ダワー著、岩波書店、2017年刊<「BOOK」データベース>より第二次大戦および冷戦の覇者、アメリカ。そのアメリカは、どのような経緯で現在の世界の、そして自国の混沌を生み出してしまったのか。大ベストセラー『敗北を抱きしめて』の著者があらたに取り組む、アメリカの暴力の歴史。軍事をめぐる歴史と、テロなどの不安定の連鎖拡大の現状について、簡潔に、かつ深く洞察した。特別の書下ろしとして、トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文を付す。<読む前の大使寸評>ジョン・ダワーといえば、日本通の学者として著名であるが・・・トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文とやらが、興味深いのです。<図書館予約:(1/15予約、7/04受取予定)>rakutenアメリカ 暴力の世紀核抑止力とか核の脅威(続き)を、見てみましょう。NPT条約と北朝鮮の関係あたりです。p37~40第3章 冷戦期における核の脅威 1964年の中国の核実験成功によって、「核兵器保有国クラブ」は5ヶ国となった。それから4年後、「核兵器不拡散条約」という国際条約への署名が開始され、1970年から効力を発した。俗に「NPT(核不拡散条約)」と呼ばれるこの条約には、いくつかの特徴が見られる。核保有5ヶ国による核兵器独占を固定化することを目指す一方で、その他の国々には核兵器を開発したり取得したりしない誓訳を求めた。同時に、核技術の平和利用を促進し、その面では核保有国が非保有国を援助するという条約内容である。 NPT条約の前文ならびに第6条では、究極的な「核軍縮」をめざして誠実に努力することへの義務と「厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約」への義務が謳われている。 NPT条約は、米ソ核兵器競争を終らせることもなかったし、非保有国が核兵器を保有することを防ぐこともなかった。21世紀までに、当初の核保有5ヶ国にイスラエル、パキスタンとインド、さらに北朝鮮が加わった。2015年初めの段階で、NPT条約に参加している国は190ヶ国。しかし、イスラエル、パキスタン、インドの3ヵ国の核保有国はNPT条約に署名していないし、北朝鮮は2003年にNPT条約から脱退した。 にもかかわらず、核不拡散という理想がもたらした影響は大きい。国内外の両方からの圧力のために、核兵器を保有していた国、あるいは保有を計画中ないしは考慮中であった少なくとも24の国々が、最終的にはNPT条約に署名した。 1970年以前におけるこうした国々にはエジプト、イタリア、日本、ノルウェー、スウェーデン、西ドイツも含まれていた。1970年以降では、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、ルーマニア、南アフリカ、韓国、スペイン、台湾、ユーゴスラビアがそのリストに入る。ソ連崩壊時に核兵器を相続したベラルーシ、カザフスタン、ウクライナの三つの旧ソ連邦国は、その保有を放棄した。中東では、国際的な圧力のゆえに、イラクが1991年に、リビアがかなり遅れて2003年に核兵器製造計画を中止した。 その一方で、核兵器保有断念へのこうした積極的な動きに逆行する動きもあり、核技術の「平和利用」推進によって、数十ヶ国が、核兵器を生産しようと思えば自国の原子力技術をそのために利用する能力を備えることとなった。2014年3月の段階では、軍備管理協会は「核兵器製造可能」国として、44ヶ国もの国々を挙げている。 ソ連崩壊と冷戦終結に伴って、核兵器均衡という恐怖は、変化はしたが消滅したわけではない。冷戦後のこれまでの経緯が示しているように、政治、イデオロギー、人間の本性、技術の特性である不可逆性など、いろいろな要因が全部重なり合って、その消滅を不可能にしている。(中略) しかしながら、いろいろな情報から今やようやく分かっていることであるが、冷戦が熱い戦争へと展開するのが避けられたのは、全くの幸運と偶然の故であったことも確かなのである。究極的には、核タブーが核兵器の使用を最終決定する人間を制御したが、そうした制御を不可能にしかねなかった動きが三つの方向からあった。 一つは、初期の核戦争計画者たちが持っていた終末論的な「聖戦」のためには核を使うという信念。二つ目は人的または機械的な判断間違い、すなわち核兵器による相互攻撃という事故を偶然に引き起こしそうになった「誤まりの警報」や「危機一髪」での回避。そして、三つ目は、1945年以降に起きた武力紛争の中で、核タブーを感じない上層部の人間が、ある特定の紛争では核兵器の使用を実際に考慮することをたびたび行なったこと。「非核化」を弄ぶかのような北朝鮮の金正恩であるが・・・ニッポンも(公には出来ないが)核カードを隠し持つ必要が生じている昨今ではあるまいか。『アメリカ 暴力の世紀』3:核抑止力とか核の脅威(続き)『アメリカ 暴力の世紀』2:核抑止力とか核の脅威『アメリカ 暴力の世紀』1:日本語版への序文
2018.07.14
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図書館に借出し予約していた『アメリカ 暴力の世紀』という本を、およそ半年待ってゲットしたのです。ジョン・ダワーといえば、日本通の学者として著名であるが・・・トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文とやらが、興味深いのです。【アメリカ 暴力の世紀】ジョン・W.ダワー著、岩波書店、2017年刊<「BOOK」データベース>より第二次大戦および冷戦の覇者、アメリカ。そのアメリカは、どのような経緯で現在の世界の、そして自国の混沌を生み出してしまったのか。大ベストセラー『敗北を抱きしめて』の著者があらたに取り組む、アメリカの暴力の歴史。軍事をめぐる歴史と、テロなどの不安定の連鎖拡大の現状について、簡潔に、かつ深く洞察した。特別の書下ろしとして、トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文を付す。<読む前の大使寸評>ジョン・ダワーといえば、日本通の学者として著名であるが・・・トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文とやらが、興味深いのです。<図書館予約:(1/15予約、7/04受取予定)>rakutenアメリカ 暴力の世紀核抑止力とか核の脅威(続き)を、見てみましょう。p34~37第3章 冷戦期における核の脅威 アメリカの戦略ならびに戦術核兵器の大部分が、ソ連と中国の共産圏を「封じ込め」る重要な手段として、国外に配備された。1978年に国防総省が制作した最高機密研究で、1990年代になって公開された資料では、アメリカ合衆国は、太平洋地域を含む海外の27ヵ所に38種類の核兵器を配備したことが示されている。その27ヵ所のうち、18ヵ所は独立国内であり、9ヵ所が旧アメリカ統治領または現在はアメリカの領有となっている地域である。 1955年からNATOで配備され始めた核兵器の数は、1960年には3000発、1965年には6000発、そしてピーク時の1971年には7300発に達している。そのほぼ半数がドイツに配備されたが、それらは21の異なった種類の核弾頭であった。 1954年から1972年までの間に、アメリカ軍は、第二次世界大戦終結時から事実上アメリカ軍占領下にあった沖縄に19種類の核兵器を貯蔵していた。国務省の研究報告書から得られる「太平洋陸揚げ」表は、1963年から1970年までの間に沖縄に持ち込まれた核兵器の数が1000発以上であることを示している。その大半が嘉手納基地に送り込まれている。 日本の他の地域では、三沢や板付のアメリカ空軍基地に、核分裂物質を取り外した核爆弾が貯蔵されていたし、佐世保や横須賀の主要な海軍基地には核兵器を搭載した戦艦が停泊していた。1956年末の「極東司令部の原爆作戦」と題された機密報告書では、核兵器あるいは核兵器関連部品を貯蔵している場所、あるいは緊急事態や戦争が起きた場合に核兵器を受け取る場所として挙げられた地点が、日本全国で13ヵ所リストアップされている。 その他の公開済みのアメリカ側資料によると、東京郊外の府中や横須賀の空軍基地、ならびに沖縄の嘉手納基地では、極東地域における核戦争の計画立案が行なわれていたことが明らかとなっている。 日本が「平和憲法」を保持しており、核兵器が使われた唯一の国であるということから強い反核意識を国民が持っているにもかかわらず、1960年代初期には自衛隊が、核兵器使用を想定したアメリカ軍との合同演習に参加しているのである。 アメリカ合衆国は、1970年代初期までにアジアからほとんどの核兵器を引き上げたが、日本の港に寄港する核搭載の戦艦は例外とされた。こうした核搭載戦艦の動きに関しては、日本政府はほとんどの場合、情報を持っていることを否定するか無視するかのどちらかの態度をとって、アメリカと共謀する不誠実な政策をとった。(中略) 1946年から62年まで、アメリカ合衆国は、マーシャル諸島と太平洋中央部のその他の地域を含むいわゆる太平洋核実験地域で105回にわたる核実験を行なった。ここで行なわれた実験回数はアメリカが実施した全ての核実験の一割にしか当らなかったが、それらの実権の多くが高レベル放射能を拡散する水爆実験であり、爆発規模は特別に大規模なものであった。その結果、太平洋における核実験の核出力の合計は、他の場所でのアメリカ核実験の総核出力を大幅に上回っていた。 このままでは核爆発の威力がさらに強められるのではないかという不安と、放射性降下物に対して世界中で高まってきた懸念から、1963年には部分的核実験禁止条約(LTBT)が締結された。 禁止条約の内容がその条約名からも一目で分かるように、正式名は「大気圏内・宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約」である。締結に至るまでの交渉の経緯は長くて困難なものであった。交渉開始は、放射性降下物で日本の漁船員を汚染したビキニ環礁における水爆実験、「キャッスル・ブラボー」が行なわれた翌年の1955年にまでさかのぼる。そして最終的な同意にようやく達したのは、米ソ両大国が核戦争勃発の手前までいった1962年のキューバ・ミサイル危機の後であった。 部分的核実験禁止条約の署名は、アメリカ合衆国、ソヴィエト連邦、それに1952年に核保有国クラブに加わったイギリスの三ヶ国の代表が、モスクワで行なった。1960年と1961年に4回の核実験を行なったフランスは、それから30年後まで署名しなかった。『アメリカ 暴力の世紀』2:核抑止力とか核の脅威『アメリカ 暴力の世紀』1:日本語版への序文
2018.07.09
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図書館に借出し予約していた『アメリカ 暴力の世紀』という本を、およそ半年待ってゲットしたのです。ジョン・ダワーといえば、日本通の学者として著名であるが・・・トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文とやらが、興味深いのです。【アメリカ 暴力の世紀】ジョン・W.ダワー著、岩波書店、2017年刊<「BOOK」データベース>より第二次大戦および冷戦の覇者、アメリカ。そのアメリカは、どのような経緯で現在の世界の、そして自国の混沌を生み出してしまったのか。大ベストセラー『敗北を抱きしめて』の著者があらたに取り組む、アメリカの暴力の歴史。軍事をめぐる歴史と、テロなどの不安定の連鎖拡大の現状について、簡潔に、かつ深く洞察した。特別の書下ろしとして、トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文を付す。<読む前の大使寸評>ジョン・ダワーといえば、日本通の学者として著名であるが・・・トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文とやらが、興味深いのです。<図書館予約:(1/15予約、7/04受取予定)>rakutenアメリカ 暴力の世紀核抑止力とか核の脅威を、見てみましょう。p27~32第3章 冷戦期における核の脅威 第二次世界大戦の勝利感や正義感には、戦後まもなく、それとは裏腹に、深くて永続的な恐怖感という、暗鬱で矛盾に満ちた側面があることがあらわになってきた。この側面は病的に異常なものであり、容易に消滅するようなものではなかった。戦後のアメリカの強大な力は、今もそうであるが、根本的には双極的なものである。すなわち、一方で、物質的にはあらゆる面で自信過剰で圧倒的に強大でありながら、他方では、怯えと不安に苛まれている。 この状態は、まさに軍事計画者たちが考えたように、不利な条件というよりはむしろ利用すべき矛盾であったのだ。不気味な存在である敵に対する恐怖は、大規模な軍事機構を保持すべきだという考えに政治的支援を確保する呼び水となった。高レベルのこの種の不安は、政治家と大衆を味方につけておく支配装置の役割を果たした。かくして、脅威の危険性が誇張されることとなった。例えば、1960年の大統領選挙では、ジョン・F・ケネディがソ連との「ミサイル数の差」を虚偽的に主張したし、1980年代にはレーガン政権が、崩壊しつつあるソ連に関して同じようなことを主張した。あるいは、少なくとも考えられる最悪の事態に対処できるような準備をしておくことが必要だと言ったのである。 彼らの政治的な成功が、こうした主張にかかっていたわけである。同じように、官民両方にわたる様々な人間が「安全保障」を自分たちのために利用したし、もちろん「防衛」関連産業の利益もこれにかかっていた。 このように体制内に組み込まれた恐怖感情は、技術的変化によって、また資金をめぐる郡内部での、とりわけ空軍側の競争意識によっても高められた。同時に、高レベルでの心理的不安の創出は、核兵器によって脅威を与えるという方法にとって理想的であるとさえ、トップレベルの軍事計画者たちは提言した。 例えば、ベトナム戦争期の1969年10月、リチャード・ニクソン政権下のホワイトハウスは、アメリカ合衆国がハノイを核攻撃するように見せかける「カモの釣針」作戦という、短期間の秘密作戦を仕組んだことがある。 ニクソンの側近の一人であったH・R・ハルデマンは後年、ニクソン大統領が彼に以下のように述べたと紹介している。「私、ニクソンが使う軍事力の脅しだったら、なんだってやりかねないと彼らは信じるようになるだろう。…君、私はこれを「狂人の理論」と呼ぶんだ。戦争を終わらせるためなら、私がなんだってやりかねないという限界にまで来ているのだと、私は北ベトナムに信じ込ませたいんだ」。しかし「狂人」理論が核攻撃計画者に影響を及ぼしたのは、これが初めてでも最後でもない。理性的と非理性的な軍事机上作戦の違いは、このように、見分けがつきにくいものなのである。 傲慢と恐怖、好戦性と脅しの混在が強まった状況が、言うまでもなく、長く続いた冷戦であり、それは1945年から始まり、1989年のベルリンの壁崩壊と、その2年後のソ連体制の崩壊まで続いた。その数十年は、1949年のソ連の初の核兵器実験から始まった米ソ核開発競争の特徴からも明らかなように、緊張した、実際に危険度の高い時期であった。 アメリカ合衆国では、この核兵器増強は、初期の段階から「大規模報復」という概念、すなわち、1953年10月にアイゼンハワー政権によって正式なものになった作戦として正当化された。「大規模報復」は1960年代からは「相互確証破壊」理論で説明され、その頭文字をとったMADという適切かつ不気味な略語が広く知られるようになった。これらの理論の根底にあったのは、核抑止力という考えであった。 要するに、「相互確証破壊」は、第二次世界大戦中の英米によるドイツと日本の諸都市への空爆戦術を、今度は、核兵器による攻撃目標を敵国の人口密集地域にするという仮定にまでレベルアップしたものであった。 軍事施設あるいは工業設備を直接の攻撃目標とする場合でも、大量の数の市民が殺害される可能性があることは、核攻撃を抑止するするという点からすれば極めて望ましいと考えられた。かくして「相互確証破壊」のあからさまな目的は、敵が「最初の核攻撃」を行なった場合には、報復として「二回目の核攻撃」を行って敵を圧倒的に破壊する能力を持つというものであった。 しかし同時に、もしも敵の攻撃力が比較的劣勢であるならば、こちら側から先制攻撃をかけるという動機にもなるという考えであった。1959年に発表され、しばしば引用されたアメリカの有力な核戦術家アルバート・ホールステッターの論文の表現では、米ソの核対決の状況は「微妙な恐怖の均衡」にまで悪化していた。アメリカの戦略として核の脅威を煽ることはあっても、同盟国にとっては核の傘はお題目でしかないわけです。・・・一方、安倍さんは「安全保障」を自分たちのために利用してきましたね。トランプさんが登場した今、ニッポンにとって核抑止力とは、(論理的には)自前の核武装でしか有り得ない状況に至っております。さて、どうなることやら?『アメリカ 暴力の世紀』1
2018.07.07
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図書館に借出し予約していた『アメリカ 暴力の世紀』という本を、およそ半年待ってゲットしたのです。ジョン・ダワーといえば、日本通の学者として著名であるが・・・トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文とやらが、興味深いのです。【アメリカ 暴力の世紀】ジョン・W.ダワー著、岩波書店、2017年刊<「BOOK」データベース>より第二次大戦および冷戦の覇者、アメリカ。そのアメリカは、どのような経緯で現在の世界の、そして自国の混沌を生み出してしまったのか。大ベストセラー『敗北を抱きしめて』の著者があらたに取り組む、アメリカの暴力の歴史。軍事をめぐる歴史と、テロなどの不安定の連鎖拡大の現状について、簡潔に、かつ深く洞察した。特別の書下ろしとして、トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文を付す。<読む前の大使寸評>ジョン・ダワーといえば、日本通の学者として著名であるが・・・トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文とやらが、興味深いのです。<図書館予約:(1/15予約、7/04受取予定)>rakutenアメリカ 暴力の世紀日本語版への序文を、見てみましょう。p8~10日本語版への序文 「アメリカ・ファースト」や「アメリカを再び偉大な国にする」という彼の好戦的な宣言が意味しているのは、根本的にはそういう不安のことなのである。アメリカ合衆国がこれまで防衛してきたと主張する価値観には全く関心がない。そうした価値観とは、民主主義、規則に則った世界秩序、国際条約の重要性、人権ならびに市民権の擁護、最適な多国間協力という理想などである。 「社会正義」というのは、彼の政治用語においては軽蔑すべき言葉なのである。「国際主義」も同じように扱われている。 そのような反動的かつ自己愛的で、悪名高いほど激情的な人間が、現在、そしてこれからの数年間、圧倒的に破壊的な暴力を使う権限を持っているということは恐ろしいことである。トランプが、国内の政治的困難に応じるために、海外に攻撃先を求めていくということを想定するのは不当なことではない。こうした方策の中には、北朝鮮あるいはイランに対する軍事攻撃、シリアやアフガニスタン、あるいは中東・北アフリカのその他の国に対する軍事攻撃の可能性が含まれている。 現在高まりつつあるロシアや中国との緊張関係が、トランプの病的とも言える自己中心的な行動によって急激に悪化することも十分ありうる。実に驚くべきことだが、すでに彼は、アメリカとEUやNATOの関係でさえ不安定にしてしまった。 トランプに対する最も厳しいアメリカの批判者の中には、彼の正気のほどを疑問視し、彼を「一種の病気」と呼ぶ者たちさえいる。これほど頻繁には使われてはいないが、しかし最終的にはもっと不安を呼び起こす表現は、トランプはアメリカと世界の両方に見られる醜悪な流れの兆候でありまたその象徴でもある、と見なすものである。 現在の我々にとって極めて危険なことは、トランプ個人ではなく、むしろ彼を世界の全般的状況のバロメーターとしてみることができいるという事実である。トランプの不寛容性と「アメリカ・ファースト」の愛国主義は、国際主義の拒否と、世界的に見られる民族間、宗教間の憎悪、愛国主義的な憎悪と完全にマッチしているのである。 もっと具体的に言うならば、トランプの極端な言語表現と行動を好む性癖は、もともとアメリカの気質なのである。彼は、アメリカの国家と社会には力があり、その力が第二次世界大戦以来、繰り返し自国の高貴な理想を唱導し、推進してきたと考えている。しかし同時にそれが、アメリカの軍事化と世界的規模での非寛容性と暴力行使に積極的に加担してきたのである。 この後者のアメリカは、常に、偏狭な行為、人種偏見、被害妄想とヒステリーを生み出してきた。ドナルド・トランプのような扇動政治家で残酷な軍事力を重要視する人物は、こうした状況でこそ活躍するのである。いわゆる「アメリカの世紀」のこの暗鬱な戦後史の側面の分析が、この小著のテーマである。
2018.07.07
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<鬼門は自動運転車R3>臍が曲がった大使は、ただいま自動運転車に対して批判的な論調を集めています。・・・要するに、アップルやグーグルそしてアメリカ人が嫌いなだけだったりして(笑)・ウーバー自動運転車の人身事故・『ビッグデータの罠』・AIをもっと温かく見守る・テスラ社の自動運転車は怖い・グーグルの自動運転車・自動車産業デジタル化の未来・無くても困らない自動運転車・オートメーション・バカR3:『ウーバー自動運転車の人身事故』を追記<『ウーバー自動運転車の人身事故』>ウーバーの自動運転車が人身事故を起こしたようです。やはり起きたかの感があるわけで、イーロン・マスクの大型ロケットが爆発するのとは別の恐さがあるなあ・・・2018/03/20ウーバー自動運転車が死亡事故 米アリゾナ州で通行人はねるより 【AFP=時事】米配車アプリ大手のウーバー(Uber)は19日、アリゾナ州で同社の自動運転車が死亡事故を起こしたことを受け、自動運転車の試験走行を停止したと発表した。同社によると、事故は18日夜、アリゾナ州テンピで発生。運転席にオペレーターが座った状態で自動運転を行っていた車が、通りを歩いていた女性をはねた。女性は病院に搬送されたが、後に死亡した。 ウーバーの広報担当者はAFPに対し、被害者の遺族への弔意を表明。「この事故を捜査する地元当局に全面的に協力している」と述べた。同社は事故を受け、テンピやピッツバーグ、サンフランシスコ、カナダのトロントで試験中だった自動運転車の使用を停止したという。 自動運転車が通行人を巻き込む死亡事故を起こしたのは初めて。2016年には米電気自動車(EV)大手テスラ(Tesla)が自動運転車業界で初の死亡事故を起こしており、今回の事故を受け、同業界が自動運転車の導入を急ぎ過ぎているのではとの懸念が高まることが予想される。【翻訳編集】 AFPBB News『ビッグデータの罠』という本が指摘していたように、「実際に公道での走行が一般開放されるまでにはまだ何段階ものクリアしなければならない課題がある」ようです。<『ビッグデータの罠』4>図書館に予約していた『ビッグデータの罠』という本を、待つこと5日でゲットしたのです。先日の朝日の記事(ニッポンの宿題)個人データ どこまでを読むにつけ、えらいこっちゃ!ということで、この本を図書館に予約していたのです。大使はビッグデータに悪しきイメージを持っているのだが・・・ビッグデータの恐さを、見てみましょう。p110~112<ビッグデータに命をあずけられるのか> ビッグデータを駆使した事例にスマートガンがある。スマートフォンが電話の改革であったように、スマートガンは銃器の改革を目指している。そもそも軍事分野はIT技術の導入に積極的である。コンピュータやOR(オペレーションズ・リサーチ)自体が軍事的な要請の元に発展してきたものであるし、近年では戦力単位のネットワーク化が著しい。 艦と艦、車と車はいうに及ばず、人と人の単位ですらリンクされ、その状態や戦力分布が一元管理される。もはや、山本五十六が後方で南雲機動部隊の動向をはかりかねていたような事態は起こり得ないのだ。 この潮流が個人の持つ銃器の世界にも起ころうとしている。ショットガンやハンドガンの電子機器化である。2000年頃にハンドグリップに指紋認証を施し、所有者本人でないと撃てない銃が提案されたが、スマートガンではそれを一歩進めて、撃つべきでない人は撃てない仕様を目指している。その判断にビッグデータが使われるのである。本当にきちんと機能すればの話だが、市街戦における民間人への誤射、狩りにおける人への誤射などを劇的に減らすことができるだろう。 ただ、今までの経緯を踏まえると、こうした技術の本格導入は容易ではない。認証機構を持った銃ですら、満足に導入されていないのだ。誤射で多くの人が亡くなっている米国ですらだ。 やはり、最終的な信用度がないのである。よく基幹システムの可能性は99.999%(ファイブナイン)が必用と言われる。24時間365日稼動のシステムで、1年間に5分しか止まってはいけない計算になる。パソコンでOSを再起動させるのにもこの程度の時間がかかってしまうことを考えると途方もなく困難な数値だが、確かに電気、ガス、水道、金融、交通といったインフラではこのくらいの精度がないと困る。 こうしたインフラがこれまでに培ってきた信頼性と比較すると、まだ情報システムの信頼性は低いのである。 情報システムの信頼性向上は喫緊の課題であり、今後大きくクローズアップされることが予想される。現在テストを行なっている自動車の自律運転システムが本格導入される際にも問題点として立ち上がってくるだろう。自動車の自動走行技術は、公道を問題なく走れる水準に達しているが、実際に公道での走行が一般開放されるまでにはまだ何段階ものクリアしなければならない課題がある。 たとえば、技術的にはどのくらい安全性が高められるかだ。今のところ自動運転車の深刻な事故は報道されていない。状況判断や接近回避の技術はすでに高い水準に達している。しかし、機械が故障するかもしれない。また、販売して実用に供する場合は、完全自動運転にするのか、あくまでドライバーのサポートにとどめるのかも明確にしなければならない。グーグルは前者の立場で、トヨタは後者の立場だ。前者は故障時の対応に不安が残り、後者は緊急事態が生起して人間と機械の判断が割れたときに、どちらを採用するのかの問題がある。【ビッグデータの罠】岡嶋裕史著、新潮社、2014年刊<「BOOK」データベース>よりあなたのクラウド・データは見知らぬ国に保管されている!ビッグデータはいいこと尽くめじゃない。電話番号、スケジュール、写真、ドキュメントなど、クラウドに委ねることが当たり前となった時代、膨大なデータを誰がどう管理・活用しているか知っているだろうか?無料、便利さと引き換えに少しずつ侵食される個人の情報。プライバシーを脅かす「新たな監視社会」に警鐘を鳴らす。<読む前の大使寸評>先日の朝日の記事(ニッポンの宿題)個人データ どこまでを読むにつけ、えらいこっちゃ!ということで、この本を図書館に予約していたのです。<図書館予約:(2/15予約、2/20受取>rakutenビッグデータの罠(中略)***************************************************************<オートメーション・バカ>おお アメリカにも自動運転車嫌いが、おったでぇ♪【オートメーション・バカ】ニコラス・G.カー著、青土社、2014年刊<「BOOK」データベース>より運転手がいなくても車が走り、パイロットが操縦しなくても飛行機が安全に飛び、さらには、自分の必要としているものも、道徳的な判断さえも、すべて機械が教えてくれる世界。それは一体どんな世界なのかー。ベストセラー『クラウド化する世界』『ネット・バカ』の著者が鮮やかに暴き出す、すべてが自動化する世界のおそるべき真実!【目次】第1章 乗客たち/第2章 門の脇のロボット/第3章 オートパイロットについて/第4章 脱生成効果/第5章 ホワイトカラー・コンピュータ/第6章 世界とスクリーン/第7章 人間のためのオートメーション/第8章 あなたの内なるドローン/第9章 湿地の草をなぎ倒す愛<読む前の大使寸評>いかにも探検家の角幡唯介さんが選びそうな本である。角幡唯介さんが次に目指すのは北極だそうだが、この探検にはGPS機能の機器を持参しないそうで(星座観測、六分儀を使用?)、オートメーションを拒否して動物的感覚を頼る計画だそうです・・・・すごい♪また、アップルやグーグルが自動運転車の製造を目論んでいるようだが・・・・何と心ときめかない製品ではないか(笑)<図書館予約:(5/15予約、9/19受取)>rakutenオートメーション・バカオートメーション・バカby角幡唯介オートメーション・バカbyドングリ要するに、アップルやグーグルそしてアメリカ人が嫌いなだけだったりして(笑)この記事は、左のフリーページの「鬼門は自動運転車」に収めておくものとします
2018.03.20
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図書館に予約していた『ヒルビリー・エレジー』という本を、待つこと半年でゲットしたのです。トランプ大統領を誕生させたラストベルトのヒルビリーたちは、如何なる人たちなのか…わりとホットなドキュメンタリーなんだろう。【ヒルビリー・エレジー】J・D・ヴァンス著、光文社、2017年刊<BOOK」データベース>よりニューヨーク生まれの富豪で、貧困や労働者階級と接点がないトランプが、大統領選で庶民の心を掴んだのを不思議に思う人もいる。だが、彼は、プロの市場調査より、自分の直感を信じるマーケティングの天才だ。長年にわたるテレビ出演や美人コンテスト運営で、大衆心理のデータを蓄積し、選挙前から活発にやってきたツイッターや予備選のラリーの反応から、「繁栄に取り残された白人労働者の不満と怒り」、そして「政治家への不信感」の大きさを嗅ぎつけたのだ。トランプ支持者の実態、アメリカ分断の深層。<読む前の大使寸評>トランプ大統領を誕生させたラストベルトのヒルビリーたちは、如何なる人たちなのか…わりとホットなドキュメンタリーなんだろう。<図書館予約:(6/19予約、12/12受取)>rakutenヒルビリー・エレジー最後に「解説:渡部由佳里」を、見てみましょう。p408~412<解説> トランプのラリー(大規模な政治集会)のロックな雰囲気は、国家予算や税金について難しい話を真面目にするライバルとはまったく異なった。トランプは「とてもひどい」などといった小学校で学ぶ程度の単純な語彙だけを使ってオバマ大統領をけなし、ライバル候補を揶揄し、マイノリティや移民を非難して群衆を湧かせた。 このとき気付いたのは、大衆は国家予算や外交政策の詳細などには興味がない、ということだった。プロの政治家をすでに胡散臭く思っているので、たとえ実直に説明していても、「煙に巻こうとしているだけ」と感じてしまうのだろう。 それにひきかえ、「オバマ大統領や議会は災害」「メキシコが送り込むのは、ドラッグと犯罪とレイプ魔」「アメリカは日本が関税なしで何百万もの車を売りつけてくるのを許しているくせに、貿易協定を結べずにいる」「イスラム教徒のアメリカ入国を禁じる」というトランプの言葉は、ふだん彼らが感じていることそのものだ。言いたくても言えなかった真実を代弁してくれるトランプに、観衆が引き込まれていくのが見える。 さらに実感したのは、群集心理を察知する、トランプの天賦の才だ。 トランプは、もとは「不動産王」として知られていたが、全米で2004年に始まった『アプレンティス』というテレビ番組で、全米のスターになった。参加者が「見習い(アプレンティス)」としてトランプの会社での採用を競うもので、課題に取り組んだ参加者が、番組の最後に重役室に呼ばれ、そのうち一人が、トランプから「お前はクビだ」と言い渡される。 この独裁的な経営手法は専門家からは批判されたが、ビジネスの素人には非常にわかりやすくて面白い。視聴者は、テレビで観るトランプの「決断力とカリスマ性」に惹かれた。(中略) トランプを冗談候補としてあざ笑っていた政治のプロたちは、彼が予備選に勝ちそうになってようやく慌てた。都市部のインテリとしか付き合いがない彼らには、地方の白人労働者の怒りや不信感が見えていなかったからだ。そんな彼らが読み始めたのが、本書『ヒルビリー・エレジー(田舎者の哀歌)』だ。 無名の作家が書いたこのメモワール(回想記)が、静かにアメリカのベストセラーになっている。 著者のJ・D・ヴァンスは、由緒あるイェール大学ロースクールを修了し、サンフランシスコのテクノロジー専門のベンチャー企業のプリンシパルとして働いている。よく見かけるタイプのエリートの半生記が、なぜこれだけ注目されるのかというと、ヴァンスの生い立ちが普通ではないからだ。 ヴァンスの故郷ミドルタウンは、AKスチールという鉄鋼メーカーの本拠地として知られる、オハイオ州南部の地方都市である。かつて有力鉄鋼メーカーだったアームコ社の苦難を、川崎製鉄が資本提携という形で救ったのがAKスチールだが、グローバル時代のアメリカでは、ほかの製造業と同様に急速に衰退していった。失業、貧困、離婚、家庭内暴力、ドラッグが蔓延するヴァンスの故郷の高校は、州の最低の教育レベルで、しかも2割は卒業できない。大学に進学するのは少数で、トップの成績でも、ほかの州の大学に行くという発想などはない。大きな夢の限界はオハイオ州立大学だ。 ヴァンスは、そのミドルタウンの中でも貧しく厳しい家庭環境で育った。両親は物心ついたときから離婚しており、看護師の母親は、新しい恋人を作っては別れ、そのたびに鬱やドラッグ依存症を繰り返す。 母親代わりの祖母がヴァンスの唯一のよりどころだったが、十代で妊娠してケンタッキーから駈け落ちしてきた彼女も、貧困、家庭内暴力、アルコール依存症といった環境しか知らない。小説ではないかと思うほど波乱に満ちた家族のストーリーだ。 こんな環境で高校をドロップアウトしかけていたヴァンスが、イェール大学のロースクールに行き、全米のトップ1%の裕福な層にたどり着いたのだ。この奇跡的な人生にも興味があるが、ベストセラーになった理由はそこではない。 ヴァンスが「Hillbilly(ヒルビリー)」と呼ぶ故郷の人々は、トランプのもっとも強い支持基盤と重なるからだ。多くの知識人が誤解してきた「アメリカの労働者階級の白人」を、これほど鮮やかに説明する本は他にはないと言われる。『ヒルビリー・エレジー』1:ヒルビリーあるいはスコッツ=アイリッシュの現状『ヒルビリー・エレジー』2:白人労働者の政治意識著者のバンス氏がインタビューで取り残された白人たちを語っています。
2017.12.18
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図書館に予約していた『ヒルビリー・エレジー』という本を、待つこと半年でゲットしたのです。トランプ大統領を誕生させたラストベルトのヒルビリーたちは、如何なる人たちなのか…わりとホットなドキュメンタリーなんだろう。【ヒルビリー・エレジー】J・D・ヴァンス著、光文社、2017年刊<BOOK」データベース>よりニューヨーク生まれの富豪で、貧困や労働者階級と接点がないトランプが、大統領選で庶民の心を掴んだのを不思議に思う人もいる。だが、彼は、プロの市場調査より、自分の直感を信じるマーケティングの天才だ。長年にわたるテレビ出演や美人コンテスト運営で、大衆心理のデータを蓄積し、選挙前から活発にやってきたツイッターや予備選のラリーの反応から、「繁栄に取り残された白人労働者の不満と怒り」、そして「政治家への不信感」の大きさを嗅ぎつけたのだ。トランプ支持者の実態、アメリカ分断の深層。<読む前の大使寸評>トランプ大統領を誕生させたラストベルトのヒルビリーたちは、如何なる人たちなのか…わりとホットなドキュメンタリーなんだろう。<図書館予約:(6/19予約、12/12受取)>rakutenヒルビリー・エレジー白人労働者の政治意識を、見てみましょう。p292~297<第11章 白人労働者がオバマを嫌う理由> 大学生活の2年目は、1年目と同じく晴天の日に始まり、私は前年と同じように興奮していた。新しいアルバイトが加わり、さらに忙しくなったが、とくに心配はしていなかった。それよりも気になったんは、自分は24歳で、大学2年生としては少し年をとりすぎていることだ。 そのうえ、海兵隊で4年間を過ごしたために、ほかの学生と接したときに、実際の年齢以上のへだたりを感じるようになっていた。外交政策がテーマの学部ゼミの最中に、ひげをだらしなく伸ばした19歳のクラスメートが、イラク戦争に関する意見を長々と語ったことがある。「戦地に行った経験のある人は、高校から大学にストレートに進学した人よりも、概して知的水準が低い」と彼は言った。そして、兵士たちは、イラクの国民に敬意を払っていない、意味もなく虐殺しているのがその証拠だ、と主張したのである。 客観的に見ても、とんでもない意見だった。海兵隊時代の友人たちは、多様な政治観を持っていたし、戦争についても、およそ思いつくかぎりの意見が存在していたと言ってよかった。戦友たちは、確固たるリベラリストであり、その多くは、軍の最高司令官(当時はジョージ・W・ブッシュだった)に対して、いい感情を抱いていなかった。この戦争では、得られる利益に比べて払う犠牲が大きすぎる、とその戦友たちは思っていたからだ。それでも誰ひとりとして、海兵隊ではそんなことを口にする者はいなかった。 クラスメートが話し続けているあいだ、私はイラクの文化を学ぶために受けた、終わりのないトレーニングを思い出していた。靴の底を人に向けてはならない。イラクの投票所の職員を警護したことも思い出した。自分たちの政治的な意見を押し付けないように注意しながら、職員に選挙の大切さを説明するのがいかに大変だったか。 英語をひと言も話すことのできないイラクの若者が、フィフティ・セントのラップの曲「イン・ダ・クラブ」を一字一句まちがえずに上手に歌うのを聞いて、若者の友人たちと笑いあったこともある。 そしていま、大学の教室で、汚らしいひげを生やした愚かな青年が、まるで私たちがスポーツをするかのように人を殺したと主張しているのだ。(中略) 卒業式には出席しないつもりだったが、さすがにそれは家族が許さなかった。そのため、壇上にのぼって卒業証書を受け取るまで、座り心地の悪い椅子に3時間も座っていなければならなかった。 詔書を受け取ると、学長の後ろをすり抜けてさっさと壇上から降りてしまった。おそらく私は、その日、学長と握手をしなかった唯一の卒業生だったのではないだろうか。さっさと次に進みたいと私は考えていた。(中略) 私が自分の人生にきわめて楽観的だったのとは対照的に、隣人たちのほとんどは悲観的だった。肉体労働者が長年直面してきた不況が、ミドルタウンの住民の将来に大きな影響を与えていたのである。 世界的な金融不況に加え、そのあとの揺り戻しが思いのほか小さかったことで、ミドルタウンの景気は急速に悪化していた。だが、短期的な不況よりも問題なのは、すでに“信仰”に近いものになっていたニヒリズムが、ミドルタウンの町全体に広がっていたことだ。 ミドルタウンの住民には、「誰かを英雄視しない」という気質がある。少なくとも政治家はヒーローではなかった。当時(そしておそらく今も)、バラク・オバマはアメリカで誰よりも尊敬される人物だったが、国全体がオバマの登場に沸き立っているときですら、ミドルタウンの住民はオバマに疑いの目を向けていた。 2008年の時点で、ブッシュを支持する人はほとんどおらず、ビル・クリントンはそれなりに愛されてはいたものの、彼をアメリカの道徳的衰退の象徴とみなす人のほうが多かった。ロナルド・レーガンはもうはるか昔の人だ。ミドルタウンでは軍隊の人気が高かったものの、現代の軍隊には、ジョージ・パットンのような人物はいない。住民たちはおそらく、軍幹部の名前をひとりも挙げることができなかっただろう。 長いあいだ私たちの誇りの源だった宇宙計画も時代遅れとなり、宇宙飛行士に対する尊敬の念もすでに薄れていた。アメリカ社会の核心に、私たちミドルタウンの住民を結びつけるものは、何ひとつなかったのだ。『ヒルビリー・エレジー』1著者のバンス氏がインタビューで取り残された白人たちを語っています。
2017.12.18
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図書館に予約していた『ヒルビリー・エレジー』という本を、待つこと半年でゲットしたのです。トランプ大統領を誕生させたラストベルトのヒルビリーたちは、如何なる人たちなのか…わりとホットなドキュメンタリーなんだろう。【ヒルビリー・エレジー】J・D・ヴァンス著、光文社、2017年刊<BOOK」データベース>よりニューヨーク生まれの富豪で、貧困や労働者階級と接点がないトランプが、大統領選で庶民の心を掴んだのを不思議に思う人もいる。だが、彼は、プロの市場調査より、自分の直感を信じるマーケティングの天才だ。長年にわたるテレビ出演や美人コンテスト運営で、大衆心理のデータを蓄積し、選挙前から活発にやってきたツイッターや予備選のラリーの反応から、「繁栄に取り残された白人労働者の不満と怒り」、そして「政治家への不信感」の大きさを嗅ぎつけたのだ。トランプ支持者の実態、アメリカ分断の深層。<読む前の大使寸評>トランプ大統領を誕生させたラストベルトのヒルビリーたちは、如何なる人たちなのか…わりとホットなドキュメンタリーなんだろう。<図書館予約:(6/19予約、12/12受取)>rakutenヒルビリー・エレジーハンク・ウィリアムズヒルビリーあるいはスコッツ=アイリッシュの現状を、見てみましょう。p8~11<はじめに> 私は白人にはちがいないが、自分がアメリカ北東部のいわゆる「WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)」に属する人間だと思ったことはない。そのかわりに、「スコッツ=アイリッシュ」の家系に属し、大学を卒業せずに労働者階層の一員として働く白人アメリカ人のひとりだと見なしている。 そうした人たちにとって、貧困は、代々伝わる伝統といえる。先祖は南部の奴隷経済時代に日雇い労働者として働き、その後はシェアクロッパー(物納小作人)、続いて炭鉱労働者になった。近年では、機械工や工場労働者として生計を立てている。 アメリカ社会では、彼らは「ヒルビリー(田舎者)」「レッドネック(首筋が赤く日焼けした白人労働者)」「ホワイト・トラッシュ(白いゴミ)」と呼ばれている。 だが私にとって、彼らは隣人であり、友人であり、家族である。 アメリカ社会において「スコッツ=アイリッシュ」は特徴的な民族集団のひとつだ。「アメリカを旅すると、スコッツ=アイリッシュが揺るぎない地域文化を一貫して維持していることに驚かされる」と、ある著述家が書き記している。「ほかのほとんどの民族集団が、その伝統を完全に放棄してしまったのに対して、スコッツ=アイリッシュは、家族構成から、宗教、政治、社会生活に至るまで、昔のままの姿を保っている」 文化的伝統をこのうえなく大切にする姿勢には、家族や地域に対する深い情愛や、いちずな献身という好ましい側面がともなう一方で、多くの好ましくない面もある。私たちスコッツ=アイリッシュは、外見にしても、行動様式にしても、話し方にしても、とにかく文化的背景が異なる人やよそ者を好まない。 これから述べる私の人生を理解するには、私が自分自身を「スコッツ=アイリッシュのヒルビリーだ」と心の底から思っていることを、知っておいてもらう必要がある。 民族意識がコインの片面だとすると、もう片面は地理的環境だ。 18世紀に移民として新世界にやってきたスコッツ=アイリッシュは、アパラチア山脈に強く心を惹かれた。アパラチアは、南はアラバマ州やジョージア州から、北はオハイオ州やニューヨーク州の一部にかけての広大な地域だが、グレーター・アパラチア(大アパラチア)の文化は、驚くほど渾然一体としている。 ケンタッキー州東部の丘陵地帯出身の私の家族は、みずからを「ヒルビリー」と呼んでいる。カントリー歌手のハンク・ウィリアムズ・ジュニアも、田舎の白人を賛美する「ア・カントリー・ボーイ・キャン・サバイブ」という曲で、自分はヒルビリーだと歌っている。 グレーター・アパラチアが民主党の地盤から共和党の地盤へと変わったことが、ニクソン以降のアメリカ政治の方向を決めることになった。そして、白人労働者階層の将来がどこよりも見えにくいのもまた、グレーター・アパラチアなのである。社会階層間を移動する人が少ないことに加え、はびこる貧困や離婚や薬物依存症など、私の故郷はまさに苦難のただなかにある。 したがって、私たちが悲観的になるのも当然といえる。驚嘆すべきは、さまざまな世論調査の結果、アメリカで最も厭世的傾向にある社会集団は白人労働者階層だという点である。 大半が想像を絶する貧困に苦しんでいるラテン系の移住者と比べても、また、物質的な面での成功の見通しという点で白人に後れをとり続けている黒人と比べても、白人労働者階層は悲観的なのだ。 現実というのはつねに、ある程度の皮肉を許容するものだが、私のようなヒルビリーが、ほかの社会集団よりも人生を悲観しているという事実は、何か別の事態が進行していることを示している。 そして、実際そうなのだ。私たちヒルビリーは、かつてないほど社会的に孤立していて、その状態を次の世代に引き継ごうとしている。 私たちが信じていることも変わりつつある、ヒルビリーの信念は教会を中心に形づくられるが、そこでは感情に訴える言葉が重視され、子どもたちが成功するために必用な、社会的サポートを軽んじる姿勢が見られる。 私たちの多くは、労働力という面から見ると落伍者であり、よりよい機会を求めて新天地を切り拓くのを諦めてしまっている。ヒルビリーの男たちは「男らしさの危機」に直面し、その男らしさを重視する文化こそが、変わりゆく社会でヒルビリーの成功を妨げている。カントリー&ウェスタンのファンだった大使は、早くからヒルビリーという言葉を知っていたのだがヒルビリーの実態について知らなかったわけです。つまりは、この本のようなレポートに触れることがなかったからでしょうね。著者のバンス氏がインタビューで取り残された白人たちを語っています。
2017.12.15
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図書館に予約していた『THE PIVOT-アメリカのアジア・シフト』という本を、待つこと5日でゲットしたのです。図書館で、この本を受け取ったとき、ゲッ ずいぶん分厚い本ではないか…予約本を受け取る際の、嬉しいやら困るやらのパターンでおました。【THE PIVOT-アメリカのアジア・シフト】 カート・キャンベル著、日本経済新聞出版社、2017年刊<「BOOK」データベース>よりアメリカの次の一手は?「ピボット」は、トランプ新政権も無視できない歴史的必然。米国きっての日本・アジア通の著者による包括的な戦略論。日本の対米・対中関係を展望する上で最良の書。【目次】序章/第1章 ピボットを定義するー新アジア政策の最初の一手、その起源、成功、そして批判/第2章 ピボットの舞台ー興隆するアジア、そこで問われているもの、その影響の大きさ/第3章 ピボット以前の行動様式ーアメリカをアジアへと結ぶ歴史が奏でる主旋律/第4章 ピボットに先行する取り組みーアメリカのアジア戦略に繰り返し現れる要素/第5章 ピボットとアジアの未来ー変貌する地域が直面する6つの選択/第6章 ピボットのための計画ー10項目の行動指針でアメリカのアジア戦略を構想する/第7章 ピボットをめぐるリスクーアメリカのアジア政策の課題/第8章 ピボットの実行ー現代外交の教訓<読む前の大使寸評>図書館で、この本を受け取ったとき、ゲッ ずいぶん分厚い本ではないか…予約本を受け取る際の、嬉しいやら困るやらのパターンでおました。この本はトランプ大統領出現前に書かれているが・・・表紙の地球儀の絵にあるように、ピボットの中心(コンパスの針)は中国に位置しています。つまり、リバランス戦略とは対中国戦略であることを意味しているようです。<図書館予約:(11/23予約、11/28受取)>rakutenTHE PIVOT-アメリカのアジア・シフトキャンベル氏の中国観、日本観を、見てみましょう。p448~452<第8章 ピボットの実行> ■中国は大きな国なのだよ アジアを知ることは、上下に変動する波形の曲線をたどるようなものである。アジアを理解し、見抜こうと努める内に、当初は分かりやすい地域と思えていたアジアが、やがて複雑な場所に見え始め、再び単純になり、また、理解不能に感じられるという具合である。 外交や安全保障でアジアを担当し始めたばかりの者は、最初の出会いで得た基本的な印象で分かったつもりになるが、歴史的背景がすっかり頭の中に入っている熟練のアナリストは、実に微に入り細にわたって現状を説明する。一方、中国のもったいぶった官僚ならば、問題の本質を深い洞察で切り出し、短い明瞭な文章にまとめてみせる。簡潔は複雑さをもたらし、複雑さは最終的には簡潔に帰着するのである。 何年も前になるが、ハワイのアメリカ太平洋軍本部を訪れた時のことである。筆者はワシントンから来た外交官らの一行と一緒で、現地の将校ならカーキ色のスラックスに花柄のアロハシャツ、ラップアラウンド型サングラスといういでたちのところを、こちらは居心地の悪いダークスーツの装いだった。 提督は巨大な椅子に深く座り、現代の中国(我々のグループはほとんどが何十回も訪れたことがあり、長年、仕事で担当してきた)に驚嘆させられる点について考えを述べた。提督は、中国の内部事情や対外的な野心に関する機密情報の説明を、真珠湾の防空壕の奥で懸命に働く軍事情報担当チームから受け始めたところだった。それゆえ、次のように確実なこととして強調することができた。「あなた方も知っているように、中国は大きい国なのだよ」。(中略)■2階層ゲームの理論 ハーバード大学のロバート・パットナム教授の「2階層ゲームの理論」に関する素晴らしい論文は、この学問分野に大いに関連し、これからの研究活動の方向を明らかにしている。彼の観察によれば、どのような国際的な外交交渉は常に、もうひとつの似たような構図の国内協議を伴っている。そして、外交が結果的に成果を上げるためには、外交だけの枠組みの中で考えずに、外交と国内政治の二つの階層の間で相互に影響し合う可能性があることを理解し、実際に予期しなければならないとした。 確かに、国内での協議の展開次第では、それが外交に絡み合ってくるため、フットボールのセットプレーでボールを蹴る際のように周到に計算して進めなければならない外交にとっては、最も難しい部分である。 筆者が経験した最も強烈な2階層ゲームは、沖縄県の米軍基地をめぐる複雑な情勢に関するものだった。1995年に日本の少女が学校帰りに暴行を受ける悲劇的な事件が起きて以降、アメリカと日本は、時には張り詰めた、きわめて困難で、そしてますます両国にとって重大になっていく交渉に臨んできた。海兵隊の駐留を維持しつつも、適切に調整し、地元への負担を減らすことが目標であり、沖縄に前方展開している米軍の能力を平和と安定に役立てることは変わらない。 両国の外交官はこの20年、交渉を担当してきたが、双方がそれぞれに、本件と関連する国内政治の問題に取り組まなければならなかった。日本政府の観点からすれば、沖縄の議員や県民の強い不満に丁寧に対処することが求められる。沖縄の人々はしばしば、県内の米軍基地の行方について、どんな交渉にも一切妥協しない立場を見せるほどだ。 一方、アメリカ側では、アジア・太平洋の足がかりとなっている米軍の沖縄駐留の根本理念や訓練に影響する議論については(国務省ではなく)海兵隊が責任をとる姿勢を強く示している。アメリカと日本の外交交渉は、互いに受け入れ可能な調整のため徹底的に議論し、長いテーブルを挟んで向かい合う外交官の姿とともに多くの注目を集めている。 ただ、現実には、このような人目を引く外交交渉の前に何度も開かれる、非公開の場での議論と会合がカギを握っている。そこでは、それぞれの自分の主張を貫いている国内の利害関係者たちが何とか結論を固め、最終的な交渉条件が基本的に形づくられ、決まっていく。ウン 国務次官補を務めたキャンベル氏は、ジャパン・ハンドラーズのひとりと目されるだけに・・・外交交渉のシーンには現実味がありますね。『THE PIVOT-アメリカのアジア・シフト』1
2017.12.06
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図書館に予約していた『THE PIVOT-アメリカのアジア・シフト』という本を、待つこと5日でゲットしたのです。図書館で、この本を受け取ったとき、ゲッ ずいぶん分厚い本ではないか…予約本を受け取る際の、嬉しいやら困るやらのパターンでおました。【THE PIVOT-アメリカのアジア・シフト】 カート・キャンベル著、日本経済新聞出版社、2017年刊<「BOOK」データベース>よりアメリカの次の一手は?「ピボット」は、トランプ新政権も無視できない歴史的必然。米国きっての日本・アジア通の著者による包括的な戦略論。日本の対米・対中関係を展望する上で最良の書。【目次】序章/第1章 ピボットを定義するー新アジア政策の最初の一手、その起源、成功、そして批判/第2章 ピボットの舞台ー興隆するアジア、そこで問われているもの、その影響の大きさ/第3章 ピボット以前の行動様式ーアメリカをアジアへと結ぶ歴史が奏でる主旋律/第4章 ピボットに先行する取り組みーアメリカのアジア戦略に繰り返し現れる要素/第5章 ピボットとアジアの未来ー変貌する地域が直面する6つの選択/第6章 ピボットのための計画ー10項目の行動指針でアメリカのアジア戦略を構想する/第7章 ピボットをめぐるリスクーアメリカのアジア政策の課題/第8章 ピボットの実行ー現代外交の教訓<読む前の大使寸評>図書館で、この本を受け取ったとき、ゲッ ずいぶん分厚い本ではないか…予約本を受け取る際の、嬉しいやら困るやらのパターンでおました。この本はトランプ大統領出現前に書かれているが・・・表紙の地球儀の絵にあるように、ピボットの中心(コンパスの針)は中国に位置しています。つまり、リバランス戦略とは対中国戦略であることを意味しているようです。<図書館予約:(11/23予約、11/28受取)>heibonshaTHE PIVOT-アメリカのアジア・シフト第1章「ピボットを定義する」の一部を見てみましょう。p59~61<ピボットへの批判に応える> ■中国を挑発しているのだろうか? ピボットに対してよくある反応は、無益なことに、また危険なことに、中国に敵意を抱かせてしまわないか、という懸念の表明である。今から見ていくように、こうした議論は人を誤解させかねないものを幾分含んでおり、正さなければならない。 第1に、ピボットの主題はアジアとの絆の強化であり、中国を封じ込めることではない。第2に、中国との建設的で生産的な関係を築くことはピボットの重要な一部であり、それはピボットが最初に宣言されて以降、変わっていない。そして、最も力点を置いていることを強調したい。 中国の政策立案者の一部は危ういことに、アメリカはアジアから撤退すると思い描き、そしてアメリカのこの地域での影響力を割り引いて考えようとしている。そんな時にピボットは、アメリカがアジアにおいて強国であり続けることを北京に気づかせようと狙っているのである。 ピボットは中国に対する懸念から始まったのだと受けとめる人たちもいるのだが、彼らがしばしば忘れているのは(ロバート・サターが思い出させてくれるように)ピボットは中国だけでなく、アジアに対する「戦略的、経済的、そして政治的な考慮を組み合わせた、より広い見地に基いている」ことである。 ピボットはワシントンと北京との結びつきをこの地域の課題の中心に据えるような「中国第一」の対アジア・アプローチを拒否する。代わりに、中国政策をより広い、包括的なアジア政策の枠組みに埋め込んでいる。 この枠組みでは、アメリカは時刻の経済を成長させ、グローバルな課題を解決し、ならびにこの地域の将来を左右する平和を保つために、多くのアジアの国々と外交、経済、そして軍事のすべてにわたって結びつきを強化しなければならないことを原則にしている。 ピボットが中国に焦点を合わせているとの見方は、アジアが世界で強烈な存在感を放つ国々の故郷であることを考えれば、むしろ根拠薄弱ですらある。アジアには世界で最大の民主主義国(インド)、第3位の経済大国(日本)、最大の民主制のイスラム国(インドネシア)、多くの最重要な製造業(韓国、台湾、マレーシア、ベトナム)がある。このように必然的に重要でダイナミックな国々との関係を改善することは自明なほど大切である。それに加えて、ピボットには、他の地域での利害にとらわれ、国内経済の低迷に苦しんだアメリカがアジアで影響力を維持できるのかという、現地にある懸念を和らげる目的がある。 そのように説明した上でのことだが、アメリカの対中政策はピボットの重要な構成要素である。オバマ大統領が中国の習近平国家主席との共同記者会見で述べたように「強固で協調的な中国との関係は我々のアジアへの旋回の中心にある」。アジアで最大の経済圏とそのような関係を築ければ、アメリカは、中国に対してだけでなく、中国の隣の国々に対しても、不要で非生産的な摩擦(それは多くのアジアの国々の利益に資するものではない)を引き起こすつもりはないと示すことができる。 一部ではピボットが封じ込めに似ているとの指摘があるが、それは根拠のない、人を困惑させる主張である。まともなアメリカの政策立案者で、中国に対する封じ込めを支持する者はほとんどいない。アジアの大半の国々には中国との深い経済的な関係があり、複雑な相互依存が進む中では、封じ込めというソ連との冷戦期までさかのぼる概念は、ほとんど、あるいはまったく意味をなさないからである。実際、この地域の最重要な国々は北京と強い商業的なつながりを持つと同時に、ワシントンと安全保障上の重要な関係を結んでいる。これがワシントンにとって持続的なアジア戦略を組み立てるにあたっての課題である。 より良い戦略とは、中国と可能な限り協調することであり、同時に中国が国際規範を支持し、国境を越えた世界的な課題の解決に向けての協力体制に貢献するよう仕向けることである。その時、中国がアジアの平和と繁栄にとって中心となる事柄について意見を異にするのであれば、アメリカは決意を持って対応するつもりであると示唆することになる。 そのような目標に向かってアメリカは米中戦略経済対話と呼ぶ年次会合を立ち上げ、拡大してきた。当初は経済政策に関する両国のハイレベルの関係者だけの対話だったが、それを多くの政府機関や個別のプログラムを含む戦略関連の包括的なひとまとまりの対話に広げ、双方の関与を広く、深いものにした。 アメリカはまた、戦略的安全保障対話という会合を創設した。ここを通じて、海洋の安全保障やサイバーセキュリティーなど互いに神経質になる事柄を取り上げ、かつてない高官レベルで議論している。(中略) アジアへの旋回政策は、もちろん、アジアの未来にとって中心的な事柄についてのアメリカの決意を対外的に知らせることでもある。多くの批判は、この大切なニュアンスについて、ごまかしている。 例えば、数年前まで多くの論客たちは、中国が金融危機後、アメリカのアジアへの関与について疑念を抱き、次第に行動が大胆になり、自己主張を強めていると指摘していた。ところが、ピボットが宣言され、アメリカのこの地域についての決意が明らかになると、同じ批判者たちが突然、ピボットは中国の不安を和らげるには不十分であり、また、あまりに中国に対して威嚇的だと不満を述べたのである。ウン 現在の中朝同盟のような状況とは異なり、カート・キャンベルはわりと理性的な戦略を述べているように思います。だけど、トランプさんのフリーハンドが強くなった今は、米朝間の偶発的開戦の危機は高まったと思うのです。
2017.12.06
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図書館に予約していた『英語という選択 アイルランドの今』という本を、待つこと20日ほどでゲットしたのです。ぱらぱらとめくると・・・英語帝国主義とか、アイリッシュ・ディアスポラという大使のツボがうずくような言葉が見えるのです。【英語という選択 アイルランドの今】嶋田珠巳著、岩波書店、2016年刊<「BOOK」データベース>より長い歴史があり書記法と文学の伝統もある一国の言語が英語に取って替わられる。最初はゆっくりと、あるときからは一気に。それは社会経済的要因と個々人の選択の結果として起きたことだった。アイルランドにおける言語交替はどのように進み、どんなことばを生んだのか。人々は今、ことばに対してどんな思いを抱いているのか。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくると・・・英語帝国主義とか、アイリッシュ・ディアスポラという大使のツボがうずくような言葉が見えるのです。<図書館予約:(5/02予約、5/24受取)>rakuten英語という選択 アイルランドの今アイリッシュ・ディアスポラが気になるので、そのあたりを見てみましょう。p44~46 <そとに開かれるアイルランド> アイルランドだからこそ語れること。アイルランドに、理論的ないし思想的な可能性を見出した研究者に、『ポストナショナリズムの精神』(2000年)の著者、立川健二がいる。「思想としてのアイルランド…ナショナル・アイデンティティを超えて」と題された第1章において、立川は「アングロかつゲーリック。カトリックかつプロテスタント。土着的かつ入植的。リージョナルかつコスモポリタン」というリチャード・カーニーの言葉を引いて、アイルランドの本質的な「ハイブリディティ(混血性)」、あるいはアイルランド人の多義性について論じている。(中略) とくに、立川のつぎの言葉には、言語に関するアイルランドの位置づけが端的に示されている。アイルランド人はまた、「英語帝国主義」の最初の犠牲者として、また英語だけでなくナショナル・アイデンティティの根拠としてのゲール語というもうひとつの言語、マイノリティの言語をもつ立場から、「英語帝国主義」を内部から告発する資格を秘めているのではないだろうか。アイルランド人は、「小言語」の立場を「大言語」をとおして、マイナーの立場をメジャーな媒体をとおして世界に訴えることのできる稀有なポジションにあるのである。 「アイルランド人」はなにもアイルランド共和国に住む人たちだけを指す言葉ではない。北アイルランドに生きる人々も、政治的区画としてはイギリスに属するということがあっても、「アイリッシュ」としてのアイデンティティをもつかもしれない。そしてまた、アイルランドは移民の多いことでも知られる。 歴史的にアイルランド人は数百万人の単位で、アメリカ、カナダ、オーストラリアを中心としたさまざまな地域に離散した。すなわち、全世界にアイルランド人の離散民、アイリッシュ・ディアスポラがいる。そして、アイルランドの人たちはわりと誇らしげにそのことを語ってくれる。 ちなみに今日においても、アイルランド人はよく外に出る。「ケルトの虎」が去って経済が下向きになったここ数年は、仕事が見つからない若者の流出がニュースで取り上げられることもしばしばである。アイルランドの人々は概して、外から来る人々に門戸を広げるようなところがあるが、みずからもわりと身軽に世界へと出かける。そのようなことだから、世界のどこにもアイルランド人はいる。 「アイリッシュ」は、国境を越え、あるいは国民国家の境界を越える。立川健二が論じるように、ディアスポラを通じても維持されている「アイリッシュ」というアイデンティティは、ナショナリティに拘束されない文化的アイデンティティのありかたを示唆しているようだ。ウン わりと明るいアイリッシュ・ディアスポラが、いいではないか♪アイルランドといえば、『onceダブリンの街角で』という映画を思い出すが・・・大使はだいたいアイルランドという貧乏で、かつ文化的な国に好感を持っているのです。【onceダブリンの街角で】ジョン・カーニー監督、2006年、アイルランド制作<goo映画解説>より ダブリンの街角で、男(グレン・ハンサード)はストリート・ミュージシャンをしている。しかし、彼の前に足を止める者はいない。そこへ雑誌や花を売っている女(マルケタ・イルグロヴァ)が現れる。矢継ぎ早な質問を疎ましく思いながら、男は昼間の彼の仕事である掃除機の修理を約束させられる。翌日、女が壊れた掃除機を引きずってやってくる。彼は再会に驚きながら、その強引さに押され、彼女がピアノを弾かせてもらうという楽器店に立ち寄る。彼女のピアノの腕を確信した彼は、自分が書いた曲を一緒に演奏してみないかと持ちかける。 彼女は一人で家族を養っていたのだが、寂しさゆえ男の優しさに心が揺らぎ始めていたのだった。一緒にロンドンへ行き音楽をやろうと彼は誘うが、母を連れて行っていいかとの一言で、二人の間に沈黙が訪れる。完成したCDを受け取る女…。<大使寸評>大使はだいたいアイルランドという貧乏で、かつ文化的な国に好感を持っているのだが・・・この映画でも、貧乏でも素晴らしい歌を作りだすところが、ええでぇ♪それから、この映画の素晴らしいのは、主人公の本業がミュージシャンであり、作中に歌う歌が本物であるところでしょうね♪もちろん、しっかりした脚本で、映画としてもいい線いっていると思います。goo映画onceダブリンの街角で
2017.05.28
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図書館で『オスプレイ配備の危険性』という本を手にしたのです。オートローテーションが効かない機体と聞けば、工学系の人間には「フェイルセイフでない」と聞えるわけで・・・たちどころにその危険性が認識できるのだが。【オスプレイ配備の危険性】真喜志好一, リムピース著、七つ森書館、2012年刊<「BOOK」データベース>より第1章 危険なオスプレイが全国に展開される(オスプレイが全国に展開されることの意味/オスプレイとは、どんな航空機か/低空飛行訓練が全国で展開される)/第2章 オスプレイ配備の危険性(オスプレイの何が問題か/オスプレイ普天間配備の危険性/主任分析官が証言するオスプレイの欠陥/V―22オスプレイー空飛ぶ恥)/第3章 沖縄のオスプレイ問題(1995年からの問題の経緯/環境アセスメントとオスプレイ配備/オスプレイ配備をめぐる住民への説明と国会答弁/ジュゴン訴訟で得られたオスプレイ配備の議事録/アッス訴訟でのタカミザワ証人尋問/「環境レビュー」と事故説明文書から読めること/米軍の安全基準に合わない普天間飛行場は即時閉鎖を)<読む前の大使寸評>オートローテーションが効かない機体と聞けば、工学系の人間には「フェイルセイフでない」と聞えるわけで・・・たちどころにその危険性が認識できるのだが。rakutenオスプレイ配備の危険性オスプレイの欠陥に関するアーサー・レックス・リボロ氏の証言を見てみましょう。p73~74 ■オートローテーションの能力欠如 オートローテーションとは滑空のヘリコプター版である。ヘリコプターはすべてエンジン故障や回転翼の駆動システム内の故障でパイロットがローターへのパワーの伝達を意図的に切る必要に迫られる、あるいはローターそのものの故障で完全にあるいは突然パワーを喪失しても滑空して安全に着陸できる能力を持っている。 V-22が安全に自動回転できないということは今ではメーカーも海兵隊も認めていることだ。しかしこのことが提起する意味合いはほとんど深刻に受け止められていない。すなわち、V-22はもし民間の輸送機だったらFAA(連邦航空局)規則によって基本的耐空性要件を満たしていないということだ。 にもかかわらず、海兵隊幹部はこの問題にまったく懸念を示しておらず、若者が戦闘という状況下で、V-22に乗員として乗るよう求めることにまったく抵抗はない。 FAAの耐空性要件は軍用機には適用されないが、過去には同等の要件がすべての乗客を乗せた軍用機に課されていた。V-22は国防総省内でこの政策からの最初の逸脱を意味する。私の考えでは、このことは、この航空機の大儀に対する盲目的忠誠心を支えるために皮肉にも兵士の命を軽視していることを意味する。 海兵隊首脳部や、それに国防総省調達担当高官や連邦議会が消極的同位を通して、この非難さるべき態度を取ることは、彼らが今後V-22の戦闘による損失に加担したことになる。オートローテーションだったら命を救えたかもしれないのに。このかなり大きなそして道理に合わないリスクの意識的軽視は法的には無謀な行為と見なされると思う。 V-22のエンジンが全部駄目でも固定翼モードに転換することによって安全に着陸できると主張する擁護者は自分をごまかしているかあるいは故意に事実を歪曲している。V-22は垂直離着陸モードから固定翼モードに転換するのに12秒必要だ。この間に、両方のエンジンが作動しなくなるかまたは一つのエンジンが相互接続のドライブ・シャフトとともに故障したときには、V-22は理想的な条件下で、約1600フィート落下する。だから、地上1600フィート以下で垂直離着陸モードでいるときに全パワーを喪失した場合は、大惨事を引き起こす。こんな危険なV-22の訓練は、アメリカの過疎地域とか海上で行ってほしいものである。人口稠密な日本での訓練などとんでもないのだが。
2017.02.13
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映画監督、オリバー・ストーンさんが「介入主義を捨て、戦争への道避ける」と説いているので、紹介します。あのスノーデン氏が日米安保の機密を語っているあたりが怖いです。(オリバー・ストーンさんへのインタビューを1/24デジタル朝日から転記しました)過激な言動で物議を醸すドナルド・トランプ氏が超大国のトップに就いた。政権批判の映画を世に出し続けてきた米アカデミー賞監督が「トランプ大統領もあながち悪くない」と意外な「評価」をしている。かつてはトランプ氏に手厳しい発言もしていたオリバー・ストーン監督に、真意を聞いた。Q:米大統領選の結果はショックだったと米メディアに語っていましたが、ツイッターで「トランプを良い方向にとらえよう」とも書いていました。A:ヒラリー・クリントン氏が勝っていれば危険だったと感じていました。彼女は本来の意味でのリベラルではないのです。米国による新世界秩序を欲し、そのためには他国の体制を変えるのがよいと信じていると思います。ロシアを敵視し、非常に攻撃的。彼女が大統領になっていたら世界中で戦争や爆撃が増え、軍事費の浪費に陥っていたでしょう。第3次大戦の可能性さえあったと考えます。 米国はこうした政策を変える必要があります。トランプ氏は『アメリカ・ファースト(米国第一主義)』を掲げ、他国の悪をやっつけに行こうなどと言いません。妙なことではありますが、この結果、政策を変えるべきだと考える人たちに近くなっています。Q:トランプ政権下で、米国の介入主義は終わりを迎えると?A:そう願っています。米軍を撤退させて介入主義が弱まり、自国経済を機能させてインフラを改善させるならすばらしいことです。これまで米国は自国経済に対処せず、多くが貧困層です。自国民を大事にしていません。ある面では自由放任主義かと思えば、別の面では規制が過剰です。トランプ氏もそう指摘しており、その点でも彼に賛成です。 トランプ氏はまともではないことも言います。かつてないくらいに雇用を増やすなんて、どうやって成し遂げられるのか私にはわからない。だがものすごい誇張だとしても、そこからよい部分を見いださねばなりません。少なくとも米国には新鮮なスタイルです。 彼は、イラク戦争は膨大な資産の無駄だった、と明確に語っています。正しい意見です。第2次大戦以降すべての戦争がそうです。ベトナム戦争はとてつもない無駄でした。けれども、明らかに大手メディアはトランプ氏を妨害したがっており、これには反対します。トランプ氏がプラスの変化を起こせるように応援しようじゃありませんか。Q:プラスの変化とは?A:例えばロシアや中国、中東、IS(過激派組織「イスラム国」)への新政策です。テロと戦うためロシアと協調したいと発言しており、これは正しい考えです。Q:ロシアが米国にサイバー攻撃したとされる問題について、監督は疑義を呈していますね。A:米国の情報機関について私は極めて懐疑的です。米中央情報局(CIA)は長年、多くの間違いを犯してきました。キューバのピッグス湾事件やベトナム戦争、イラクの大量破壊兵器問題です。米国は世界をコントロールしたがり、他国の主権を認めたがらず、多くの国家を転覆させてきました。そんな情報機関をけなしているトランプ氏に賛成です。だが、そうしたことは社会で広く語られません。米国社会のリーダー層と反対の立場となるからです。Q:リベラル派が多いハリウッドは反トランプ氏が目立ちます。A:そのリベラルと呼ばれてきた人たちが、ものすごい介入主義者と化しています。リベラルと言われるクリントン氏をみればわかります。民主党は中道右派となり、左派を真に代表していません。 ■ ■Q:米政府による個人情報の大量監視を暴露したCIA元職員エドワード・スノーデン氏を描いた新作映画「スノーデン」を撮ったのはなぜでしょうか。A:私は、いつも時代に合わせて映画をつくっています。2013年にスノーデン氏の暴露を知り、衝撃を受けました。米国が監視国家だという疑いが確信になりました。スノーデン氏の弁護士の招きでモスクワに行って以来、彼と9回会って話を聞いたのです。 映画はスノーデン氏の証言に基づいてつくっています。彼が09年に横田基地内で勤務していた頃、日本国民を監視したがった米国が、日本側に協力を断られたものの監視を実行した場面も描きました。スノーデン氏は、日本が米国の利益に背いて同盟国でなくなった場合に備えて、日本のインフラに悪意のあるソフトウェアを仕込んだ、とも述懐しています。これは戦争行為でしょう。あくまで彼が語る話であり、確認をとろうにも米国家安全保障局(NSA)側と話すことは認められませんでした。でも、私は経験上、彼は事実を話していると思っています。米情報機関は映画の内容を否定するでしょう。米大手メディアも取り合いません。でも、そこから離れて考えてほしいと思います。 ■ ■Q:米議会は昨年、スノーデン氏がロシアの情報機関と接触しているとの報告書を出しました。A:まったくのたわ言。動機も見当たりません。彼は米国の情報活動が米国の安全保障に役立つ形で改善されることを願っています。彼はまず、ジャーナリストに情報を提供したし、今も表だって理想主義的な発言を続けています。スパイがやることではないでしょう。 スノーデン氏がモスクワに着いた時、経由するだけでロシアに滞在するためではなかった。空港でロシアの情報機関の職員から『私たちに出せる情報はないか』と言われ、『ノー』と答えたそうです。彼は出国したがっていました。南米諸国からは受け入れの申し出もあったようですが、米政府の手がおよび、安全が確保できそうにありません。結果としてロシアが最も安全だとなったのです。Q:就任後、トランプ氏はCIAの影響で反ロシアに陥るかもしれないと懸念していますね。A:彼がそうなる可能性はあるでしょう。でもトランプ氏はビジネスマン。貿易を好む限り、ビジネスマンは戦争をよしとしません。Q:トランプ政権下でスノーデン氏はどうなるでしょう。A:トランプ氏はスノーデン氏を非難しましたが、大統領に就任後、米国の情報機関がいかに堕落したものかを知れば、違った感情を持つようになるかもしれません。ニクソン元大統領は訪中し、レーガン元大統領はゴルバチョフ旧ソ連書記長と会談しました。トランプ氏も変わり得るでしょう。彼が情報機関の本質を知るにつれ、内部告発者寄りになっていく可能性があります。ウィキリークスに情報を提供したマニング上等兵も減刑となったし、スノーデン氏にもいずれ寛大な措置がなされることを願っています。 ■ ■Q:映画「スノーデン」の制作にあたっては、米国からは出資が一切得られなかったそうですね。A:米国のどの映画スタジオにも断られ、大変でした。彼らの多くは政府と関係があり、政府の何かを踏んでしまうのを恐れて自己規制したのだと思います。制作にはとても困難を伴い、なんとか配給会社は見つかりましたが、小さな会社です。Q:かつて、監督は映画「JFK」などで、米大手スタジオ「ワーナー・ブラザース」とよく連携していました。A:今回、ワーナーにも断られました。米国がテロとの戦いを宣告した01年以降、米国に批判的な映画をつくるのが難しくなり、そうした映画がどんどん減っています。米軍が過剰に支持・称賛されたり、CIAがヒーローに仕立てられたりする映画やテレビシリーズが目立ちます。非常に腹立たしいことです。Q:今回は結局、どうやって資金を集めたのでしょう。A:少額資金を集めながら悪戦苦闘。フランスとドイツからの出資が支えとなりました。欧州議会がEU加盟国にスノーデン氏の保護を求める決議をするなど、欧州は彼に耳を傾けています。2度の大戦を経た欧州は国家による監視を好まず、その危険性も理解しています。英国は例外ですけれど。Q:そうした状況下、今後も映画制作を続けられますか。A:わかりません。今はプーチン・ロシア大統領についてのドキュメンタリー映画を仕上げているのですが、(商業映画としては)『スノーデン』が私の最後の作品になるかもしれません。米国では映画制作への協力を得にくくなっているためです。仮につくるとしても、たぶん国外で制作することになるでしょう。Q:トランプ氏は、彼を批判した俳優メリル・ストリープ氏をツイッターで罵倒しました。今後、米映画業界は萎縮していくのでしょうか。A:そうなるかもしれません。ただ、私はハリウッドの政治とは一線を画しています。時に嫌われることもありますが、これまで同様、私は発言し続けます。(聞き手・藤えりか) *Oliver Stone:1946年生まれ。従軍したベトナム戦争を題材にした「プラトーン」「7月4日に生まれて」でアカデミー監督賞。トランプ政権への期待オリバー・ストーン2017.1.24この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップR2に収めておきます。
2017.01.27
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図書館で『食料の帝国』という本を手にしたのです。現代のアメリカと中国を食糧という視点で見るとどうなるのか?大使の興味は、いつもこのG2になるのです。【食料の帝国】エヴァン・D.G.フレイザー, アンドリュー・リマス著、太田出版、2013年刊<「BOOK」データベース>より食物が世界文明を築きそして崩壊させた。メソポタミアからエジプト、古代ギリシャ・ローマ、中世ヨーロッパ、現代のアメリカ、中国まで、食糧の視点から描く1万年史。<読む前の大使寸評>現代のアメリカと中国を食糧という視点で見るとどうなるのか?大使の興味は、いつもこのG2になるのです。rakuten食料の帝国アメリカ型農法の特殊性を見てみましょう。p171~173 <トマトの勝利> 人類の農業の歴史のなかで、カリフォルニアのトマトほど利益を出した果実はないだろう。トマトは大量の公的資金の恩恵にあずかり、20世紀のフルーツビジネスを先導する地位にカルフォルニアを押し上げる一助となった。トマトもまた、食糧が絶え間ない政治の駆け引きによって維持されていることを示す顕著な例のひとつにすぎない。 トマトがそんな存在になるまでには紆余曲折があった。1900年代半ばには、カルフォルニアのトマトは手摘みで収穫されていた。たいていはメキシコからの低賃金の出稼ぎ労働者がおこなっており、1962年には、4000ヵ所の農場に5万人の労働者が働いていた。その頃、カルフォルニア大学からトマト収穫機とともに、収穫機の金属パーツでつかんでも痛まない新製品を発表したが、関心を示す者はいなかった。収穫機1台に2万5000ドルを投資する価値が見出せなかったのである。収穫機の発表から3年後も依然としてカルフォルニアのトマトの96.2パーセントは手摘みで収穫されていたが、アメリカ連邦政府は1960年代初めに出稼ぎ労働者の取り締まりを決定していた。 アメリカのトマト生産者は、度重なる罰金とメキシコの生産者に市場シェアを奪われることを恐れて動揺した。多くの生産者が農場を捨て、残った生産者は合併し、機械の導入を進める。1973年にはトマト農家の数は600軒未満に減り、農場労働者の数もわずか1万8000人に減少した。カルフォルニアではほぼすべてのトマトが機械で収穫されるようになる。19世紀後半には、農業と工業に関する研究をおこなう目的で、政府から土地をキョウヨされた大学が設立され、近代化を後押ししたが、ちょうどそれと同じように政治がトマト生産の近代化の追い風になった。 政府が推し進める分野には、民間の資金も流れ込むのが通常で、逆に民間が押し進める分野にも政府の資金がついてくる。トマト生産者の統合が進んだ頃、連邦政府は、サン・ホワキン・ヴァレーの西側に州間高速道路5号線を建設することを決定する。フレズノ郡のこの区域がアメリカのトマト生産の中心地となることと、灌漑や食品加工、輸送をおこなう民間企業がこの状況から利益を得ようと殺到したことは、決して偶然ではない。 アメリカ人の食生活はカルフォルニア流に適応していく。1950年から1975年のあいだに、冷凍食品の消費量は3倍以上の伸びを見せ、事実上、消費者と地元の生産者の市場が切り離されていく。瓶詰めのパスタソースや冷凍豆、缶入りスープの時代の到来である。世界じゅうの人々が、付加価値のある製品として販売される加工食品を食べるようになった。温暖な気候と肥沃な土壌という恵まれた地理的条件が、業界団体、政策、テクノロジーというきわめて現代的な要素とあいまって、カルフォルニアを20世紀の野菜生産のメッカへと成長させた。 州内のいたるところで作物の上からは農薬が散布され、地中には化学肥料が施された。科学の力を借りて効率を極限まで高めた農業がおこなわれ、水質汚染が進んでいるという事実を誰もが無視していた。小麦農場から果実や野菜などの園芸作物が豊かに実る土地へとカルフォルニアを変貌させた灌漑も、地下水のある帯水層を劣化させていた。 当初は作物の水やりには河川の水が使われていたが、1920年代に入ると地中深くの地下水を利用するようになり、その量は雨では補いきれない量にのぼった。1980年代の推定(状況は過去30年間改善されていない)によると、カルフォルニアの地下水面は年間平均で15センチから1メートル低下していた。近年では、ポンプで地下水が大量に汲み上げられているせいで、実際に地面が陥没してしまった場所もある。 サン・ホワキン・ヴァレーでは、ポンプによる汲み上げが始まってから、1万3470平方キロにわたり30センチから9メートルの地盤の沈下が見られる。農作物には当然水が必要だが、帯水層から地下水が流出している状況は、持続可能性の点から見て理想的とはとても言えない。カリフォルニアは今後、農業のやり方を変更せざるをえなくなるだろう。アメリカ人の食生活はカルフォルニア流に適応していったそうだが・・・・伝統食とか食育という意識が乏しいかの地の民に、大企業が誘導する食生活が定着したようです。清教徒の入植者のやることといったら、神がかっているというか、アホというか・・・利益にこだわるモンサントやトランプさんみたいですね。『食料の帝国』1
2017.01.24
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図書館で『食料の帝国』という本を手にしたのです。現代のアメリカと中国を食糧という視点で見るとどうなるのか?大使の興味は、いつもこのG2になるのです。【食料の帝国】エヴァン・D.G.フレイザー, アンドリュー・リマス著、太田出版、2013年刊<「BOOK」データベース>より食物が世界文明を築きそして崩壊させた。メソポタミアからエジプト、古代ギリシャ・ローマ、中世ヨーロッパ、現代のアメリカ、中国まで、食糧の視点から描く1万年史。<読む前の大使寸評>現代のアメリカと中国を食糧という視点で見るとどうなるのか?大使の興味は、いつもこのG2になるのです。rakuten食料の帝国単一栽培作物の長所、短所を見てみましょう。p237~239 <未来の食糧帝国> 20世紀半ば、科学者は成育が早く、密集して植えることができ、なおかつ食用以外の部分(レタスの根など)に栄養分を取られない作物を生み出そうと品種改良を始める。その取組みを牽引した遺伝子学者のひとりが、アイオワのコーン・ベルトと呼ばれるトウモロコシ栽培地帯出身のノーマン・E・ボーローグである。 ボーローグは1940年代、の援助のもと、メキシコに研究所を設け、すぐれた小麦とトウモロコシの新品種開発に取り組む。彼は小麦の茎の構造的な欠陥を修正したいと考えた。最も豊かに実を付ける小麦品種は、茎が実の重みに耐えかねて、実が熟す前に倒れてしまう。肥料を与えると、栄養が行きすぎて成長しすぎてしまい、さらに早く倒れてしまうため、収量の増加に結びつかなかった。これを解決するため、ボーローグのグループは草丈の低い半矮性品種を開発した。茎が短くて太く、丸々とした実の重みにも耐えられる品種である。 半矮性の小麦品種は、人口肥料の力を借りて、最高4500キロほどだった1ヘクタールあたりの収量を9000キロにまで増加させることができた。ボーローグは世界の食糧供給に貢献したとして1970年にノーベル平和賞を贈られ、半矮性の小麦と稲はメキシコからマレーシアまでの貧しい農村地帯に広く植えられた。 農地の生産性を倍増させることで、飢餓という世界的な問題は解決されたかに見えた。世界は栽培作物を特化させ、ボーローグの開発した種子だけを植えた。最初の実験から50年後、ボーローグの品種は数えきれないほどの伝統的な植物を農地から追いやり、かつては多様な生物が生息していた場所を広大な単一栽培の農地に変更させてしまった。 このように、ある種のなかで遺伝子の多様性が失われる現象を「遺伝的浸食」という。中国では今や、大海原のように広がる単一栽培の畑のなかに在来種の稲の田んぼが小島のようにぽつりぽつりと点在する風景が広がり、ギリシャでは1930年から1960年のあいだにほぼすべての小麦在来種が姿を消してしまった。現在、人間や動物が食べている穀物はほぼすべて、ボーローグとそのグループが緻密に実地試験を繰り返した成果なのである。 遺伝的浸食はボーローグの種子が引き起こした唯一の問題ではない。より差し迫った問題は、ボーローグの種子が糞などの自然の肥料だけでは栄養が足りず、生き延びられないことにある。そのため、高収量の作物を育てている農地には大量の人口肥料が使用される。日本では1950年代にはボーローグが開発した稲品種が導入されており、1950年から1974年のあいだに肥料にかかるエネルギーコストが400パーセントも上昇している。 農業用機械に消費されたエネルギーは12倍に跳ね上がった。米の収穫量は50パーセント増加し、消費エネルギーに見合った成果が上がったかにも見えたが、別の見方をするとそうとも言えない。稲田から得られるエネルギーをそれを生産するのに消費されたエネルギーで割った比率を見ると、1950年には消費カロリーあたり生産されたカロリーは1.27だったが、1974年には0.38まで落ち込んでいる。 それ以降には、多くの野菜を温室で栽培うるようになっており、エネルギー比の計算では温室野菜が最悪の数値になるかもしれない。北方の国々のほとんどは同じく野菜の温室栽培をしてきた。たとえば、アメリカ、メイン州のトマトは、12月でもいつもボストンのスーパーマーケットに並んでいる。 ボーローグの品種は、農家と害虫のいたちごっこも引き起こした。不自然に収穫量が増え始めると、害虫も敏感にそれを察知する。農家は化学農薬で対抗した。1950年代、新種の作物がツマグロヨコバイの注意を惹きつけると、アジアの農家は殺虫剤を散布してツマグロヨコバイを退治した。しかし害虫を捕食し、その数を抑制していた益虫のクモまでも殺してしまう。ツマグロヨコバイは回復するが、クモの個体数は元に戻らず、その後の害虫の被害が悪化する。さらに悪いことに、殺虫剤の過剰使用のせいで害虫に殺虫成分への耐性ができてしまう。1970年代初めになる頃、日本では有効な殺虫剤がなくなってしまったこともあった。それ以来、科学者はツマグロヨコバイの遺伝子との競争を続けている。 じつは単一栽培植物を植えなければ、強力な殺虫剤は必用がない。殺虫剤の使用を制限し、多様な作物を栽培すれば、農場は害虫を捕食する益虫や益鳥から最大の恩恵を受けられるだろう。しかし現実には、さらに強力ですぐれた品種を開発することで、ボーローグの構築したシステムの改良を目指すのが最も一般的な戦略となっている。
2017.01.24
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図書館で『外来種は本当に悪者か?』という本を手にしたのです。外来種もさることながら・・・外来種に直面する人間の反応のほうが面白そうでおます。【外来種は本当に悪者か?】フレッド・ピアース著、草思社、2016年刊<「BOOK」データベース>より著名科学ジャーナリストが敵視されてきた生物の活躍ぶりを評価し、外来種のイメージを根底から覆す、知的興奮にみちた科学ノンフィクション。よそ者、嫌われ者の生き物たちが失われた生態系を元気にしている!?<読む前の大使寸評>外来種もさることながら・・・外来種に直面する人間の反応のほうが面白そうでおます。rakuten外来種は本当に悪者か?清教徒の支配下にあるアメリカでは、外来種はどのような扱いを受けたのでしょうね。p92~97 <ようこそアメリカへ> 旧世界イギリスの人間である私は、アメリカ人は新しいものを積極的に取り入れたり、方向転換するのが得意だと思っていた。ところが外来種への彼らの対応を見ていると、かならずしもそうではなさそうだ。英雄もあっというまに悪人へと転落する。その一例がマメ科のクズだ。 成長が速く、「奇蹟のつる植物」として20世紀初頭のアメリカ南部でもてはやされた。とくに砂嵐の激しい乾燥地帯では、クズのあざやかな緑と香りたかい花がまたとない救いだったのだ。荒れた大地と疲弊した人びとを癒やし、再生させるという意味で、クズはいわば「植物のニューディール」だった。 原産地がアジアだろうと関係ない。そもそもアメリカは、世界を一からつくれると信じて集まってきたよそ者の国なのだから。クズはそんなアメリカにふさわしい植物だった。ところが半世紀後、奇蹟のつる植物は、「南部を食いつくすつる植物」に変貌していた。ほかの樹木を枯らし、耕作地に侵入し、建物を破壊し、送電線を切る悪魔になっていたのだ。 いったい何があったのか? 変わってしまったのはクズ? それともアメリカ? クズの原産地は中国だ。いまでも地方の村では、クズのつるを編んで縄やかごをつくったり、繊維を取りだして紙に漉いたりしている。根は漢方薬として利用される。葉は飼料になるし、飢饉のときは人間も食べていた。ただしクズという呼び名は日本語で、アメリカに入ったのも日本経由だった。 1870年代、東京のアメリカ公使館に勤務していたトマス・ホッグは、日本の植物を採集してはニューヨークの兄弟が経営する種苗店に送っていた。クズもこの種苗店で観賞用として販売された。フィラデルフィアに1000万人が詰めかけた1876年の建国百周年記念博覧会をはじめ、全米で開かれた万国博覧会で、会場の日本庭園にクズを積極的に使うよう働きかけたのもホッグだった。 ホッグの見立てどおり、クズはたちまち人気を集めた。園芸業者は「フロントポーチにぴったり」と売りこんだ。1909年の雑誌『グッド・ハウスキーピング』は、紫色の花の「かぐわしい香り」をたたえ、「何も育たない土地にもよく根づく」と評した。いまにして思えばそれが最初の警告だったわけだが、当時はむしろ利点だったのだ。 政府の農業関係者も興味を示し、クズの葉を家畜飼料に推奨した。どこでも育つクズは、とりわけ旱魃対策として注目された。1935年、政府に新設されたばかりの土壌保全局のヒュー・ハモンド・ベネット局長は、南部の綿栽培で荒れた土壌を回復させる切り札として、クズを強力に推した。クズは成長が速く、1日に30センチ近く伸びる。葉が茂って地面を覆えば、風雨による侵食が防げるし、地中深く根を張って水を吸い上げてくれる。大気中の窒素を固定するバクテリアを持っているので、土壌が肥沃になると良いことずくめだった。 こうしてクズ・ブームが巻き起こる。ラジオもひと役買った。ジョージア州の農夫チャニング・コープは、自宅ポーチにミニラジオ局を設けて番組を放送していた。クズを植えていた彼は全米クズ愛好会を結成すると、『アトランタ・コンスティチューション』紙にクズ礼讃の記事をたびたび発表した。「クズこそは神がジョージア州民に与えたもうた寛大な贈り物」であり、魂を「浄化」してくれる植物だとコープは高らかに宣言している。「私たちが大地を育めば、大地も私たちを育んでくれる」 キング・オブ・クズとなったコープは、ジョージア州環境保護マン・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。クズが地面を埋めつくす光景を見れば、いまのアメリカ人はぞっとするだろう。けれども当時は、南部の環境と経済を救う頼みの綱だった。1935年から1950年代はじめまでのあいだに、政府の種苗場が育てたクズの苗は1億本になる。道路や線路の土手にはクズの種がまかれ、クズを植える農家には奨励金も出た。こうしてクズの栽培面積は8000平方キロにまで広がった。(中略) しかし時代は変わっていく。「望まれない場所にもよく根づく」クズの特性は、早くも1953年には認識されていた。1970年代、土壌保全局は土壌流出防止に役立つ植物リストから、ひっそりとクズをはずす。そして1997年、ついにクズの立場は正式に逆転し、連邦有害植物法に定める有害植物リストに入った。在来の潅木や樹木、作物を脅かす邪悪なエイリアンになったのである。「葉が密に繁茂するため、その下では他の植物は枯れるか衰弱する。茎や幹に巻きつき、その重さで樹木や潅木の枝を折ったり、あるいは全体を根こそぎにする」 かつては奇蹟のつる植物とうたわれたクズも、政府の文書でこう説明されるまでになった。充分な光合成ができるだけの日照があれば、クズはどんなところでも育つ。電柱をはいのぼり、樹木を締めつけ、生け垣を覆いつくし、廃墟となった建物を占領する。旺盛すぎる繁殖力と生命力は、もはや悩みの種でしかない。南部での繁殖面積は2万8000平方キロにもなり、1年に500平方キロ弱増えつづけているという。 だがクズ自身は何も変わっていない。日本ではいまも有用植物の扱いだ。変わったのはアメリカの土地の使い方である。家畜は飼育場で肥育させるようになり、南部の牧草地は多くが放棄された。家畜に葉を食べられることがなくなり、増えるいっぽうのクズは、南部のあらゆる場所にはびこりはじめる。牧草地が林になったところでも、クズは厄介者だった。もはやクズは敵である。(中略) 現代アメリカにおいて、クズはあらゆるものを象徴する。『ニューヨーク・タイムズ』のウェブサイトで検索をかけると、クズをたとえに持ちだした表現がごまんと出てくる。なかには不可解な比喩もあったりするが、それを掘りさげていくと、アメリカ人の精神構造を暴くことになりそうだ。映画が「全篇ジューイッシュ音楽で満ちている」のも、「自己満足のプロットだらけ」の本をけなすのも、みんなクズがたとえだ。有名人の話しかたは「クズの葉の下に隠れた枝のように、南部風アクセントがちらりと顔を出す」と言われ、ファッションショーを最前列で見る出席者は、脚を組んだ様子を「クズのつるみたい」と表現されていた。 ウーム クズは初期には栽培が奨励され、そして今では有害植物とされたようだが・・・ アメリカでは、日本人には理解できない神がかった動きが起こるようですね。
2017.01.20
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今回借りた4冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は、強いていえば、「フィールドワーク」でしょうか♪<市立図書館>・いまでも天国にいちばん近い島・捨てる女<大学図書館>・外来種は本当に悪者か?・極限の民族図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)************************************************************【いまでも天国にいちばん近い島】森村桂, 後藤鐵郎著、PHP研究所、2002年刊<「BOOK」データベース>より青春時代、心を熱くしたあの大ベストセラーが輝く写真とともに甦る。本書は、『天国にいちばん近い島』(角川文庫)の物語をもとに、写真撮影を行い、新たに書き下ろしエッセイを加えて、再編集したものである。<読む前の大使寸評>大ベストセラーの後日譚であるが…写真が綺麗だし、この地域の日系人が興味深いのです。rakutenいまでも天国にいちばん近い島************************************************************【捨てる女】内澤旬子、本の雑誌社、2013年刊<「BOOK」データベース>より突然あたしは何もない部屋に住みたくなった。生活道具や家具などから自ら長年蒐集してきたお宝本や書き続けてきたイラストまで大放出する捨て暮らしエッセイ。<読む前の大使寸評>断捨離のエッセイかと思いきや、パラパラとめくると著者の収集癖がすご~い♪rakuten捨てる女************************************************************【外来種は本当に悪者か?】フレッド・ピアース著、草思社、2016年刊<「BOOK」データベース>より著名科学ジャーナリストが敵視されてきた生物の活躍ぶりを評価し、外来種のイメージを根底から覆す、知的興奮にみちた科学ノンフィクション。よそ者、嫌われ者の生き物たちが失われた生態系を元気にしている!?<読む前の大使寸評>外来種もさることながら・・・外来種に直面する人間の反応のほうが面白そうでおます。rakuten外来種は本当に悪者か?************************************************************【極限の民族】本多勝一編、朝日新聞社、1967年刊<カスタマーレビュー>より昔々、朝日新聞に連載されていた新聞記事を切り取って今でも持っている。当時(中学生)、こんな経験が出来る新聞記者っていう職業を面白そうだと思ったけれど、エスキモーの生活でカリブーの内臓を食べる話を読んで早々にギブアップした。エスキモーからニューギニアそしてアラビアと今から考えたらかなりの短期間に3ヶ所に実際に住み込んでのルポルタージュである。全て本当に面白い。いたずらに学術っぽくなく内容が深い。<読む前の大使寸評>著者の芳名は知っているが、その著書を読むのは初めてかな。rakuten極限の民族************************************************************とまあ・・・・抜き打ちのように、関心の切り口を残しておくことも自分史的には有意義ではないかと思ったわけです。図書館大好き193
2017.01.19
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中京大学教授の佐道明広さんがオピニオン欄で「独自の戦略持ち、米に注文を」と説いているので、紹介します。(佐道さんのオピニオンを1/14デジタル朝日から転記しました) 1945年の敗戦で占領軍が進駐して以来、主権を回復してからも、米軍が日本国内に駐留しなかった日は1日もありません。戦後100年、2045年の日本にも、米軍基地は各地に残るのでしょうか。この先のロードマップを、どう考えればよいのでしょう。■独自の戦略持ち、米に注文を 佐道明広さん(中京大学教授) 本来、外国の軍隊が自国の中に居続けるのは、占領期を除けばきわめて例外的なことです。しかし多くの日本人は当たり前に思っていて、疑問に感じていません。 これだけ状況が変わってきているのに、米軍基地について、ほとんどの日本国民は考えていない。しわ寄せは全部、沖縄に行っている。基地という宿題を解決しようとするなら、日本の安全保障はどうあるべきか、政府だけでなく、国民も考える時期に来ています。 日米安保の本質は「基地と防衛の交換」です。「基地を提供する代わりに日本を守ってください」という発想から始まっている。欧州でもドイツやイタリアなどに米軍基地がありますが、北大西洋条約機構(NATO)という枠組みで、互いに防衛の義務を負う「双務性」がかなりある。「基地と防衛の交換」ではないんです。 日本が、例外中の例外ともいえるやり方をとっているのは、やはり憲法9条の制約が大きいから。憲法問題にならない範囲内で、国を守るためのウルトラCとして、「基地と防衛の交換」という方法が発明された。もともとは、日本の防衛に米国を巻き込もうという発想だったのです。 しかし、安保体制のもとで、日本の外交・安全保障政策は、米国の戦略にいかに合わせていくか、いかに米国に見捨てられないようにするかだけを考えるようになった。日本独自の戦略というものがなくなってしまいました。 * 日本は、防衛や安全保障の戦略をもつことが必要です。国会で、国家安全保障問題調査会のようなものを与野党がつくり、国際情勢の調査や有識者ヒアリングを行い、徹底的に議論する。憲法についてもタブーにせず、きちんと議論していくべきでしょう。 NATO加盟国のアジア版のようになることも一つの選択肢ですが、完全に「普通の国」になる必要はありません。日本は少し違っていてもいい。平和国家として、「これはやらない」と憲法に明記することも考えられます。 自衛隊の役割は何なのかも、根本的に考え直すべきです。国防、災害救助の支援、国際協力という三つの役割をこなしていくには、自衛隊は組織的にも、予算的にもすでに限界に来ています。防衛予算を倍にできるわけがない。 むしろ、海上保安庁をもっと拡充してはどうでしょうか。海保の船なら、相手もいきなり軍艦を出してくることはできません。海上警察力を強化すると同時に、海保と自衛隊との連携のあり方も検討すべきでしょう。 中国の状況なども考えると、米軍が日本に駐留を続けることは当面必要だと思います。日本だけでできることには、どうしても限界があります。とはいえ、基地は本来、日本が提供しているものです。全部米軍の都合に合わせるのではなく、「我が国の防衛戦略はこうです。だから基地の数や場所はこうしてください」と言える関係にしていかなくてはいけない。 * 1950年代に比べれば、米軍基地は大きく減りました。日本から注文をつけたからです。57年には岸信介首相がアイゼンハワー米大統領に、在日米軍の地上兵力を減らすよう要望しました。70年代には、関東地方の米軍基地を整理・統合する「関東計画」が行われました。しかし、いつからか注文をつけなくなり、米国に合わせるだけになった。基地もほとんど減らなくなりました。 しかし、明確な戦略をもって米国と議論していけば、沖縄の海兵隊撤退の可能性を含めて、基地のあり方を変えていくことはできるはずです。(聞き手・尾沢智史) ◇佐道明広:1958年生まれ。専門は日本政治外交史。著書に「戦後日本の防衛と政治」「自衛隊史」「沖縄現代政治史」など。これからトランプさん統治下の日米同盟が始まるのだが…安倍さんにしろ、我々庶民にしろ、かなり心して対応しないとアメリカのポチとなりかねないのだが。白井聡さんが、朝日オピニオン欄で次のように展望しています。『ひたすら対米追従するという日本側の本質は何ら変わっていないのだから、米国の国益追求がむき出しになる分だけ、今後、従属の露骨さはむしろ強まると思います。』(ニッポンの宿題)米軍基地のこれから佐道明広2017.1.14この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップR2に収めておきます。保護者なき日本白井聡2016.11.25
2017.01.17
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<『背水の陣』>図書館で『背水の陣』という本を手にしたのです。赤瀬川原平さんが日経エコロジーという雑誌に連載したエッセイ集であるが…赤瀬川さんと日経エコという取り合わせが、行き当たりばったりというか、シュールでいいかも♪【背水の陣】赤瀬川原平著、日経BP社、2003年刊<「BOOK」データベース>よりぼくのような人間までもが、環境問題を考えなければならなくなった。中古カメラから原発まで、「環境と身体」をゲンペイさんが「哲学」します。【目次】中古省とはなんだろう/パリの古物/ゴミの増長/犬のウンとのつきあい/長崎の路面電車/手抜きウイルスを考える/自分と環境はどこが違うのか/Uターンの兆し/ゴミの原産地を探る/家具と削るとよくなる〔ほか〕<読む前の大使寸評>赤瀬川原平さんが日経エコロジーという雑誌に連載したエッセイ集であるが…赤瀬川さんと日経エコという取り合わせが、行き当たりばったりというか、シュールでいいかも♪rakuten背水の陣エッセイ集だから、どこから読んでもいいし、また全部読む必要もないわけで、暇人にとっては、それが魅力のひとつである。…ということで、ひとつ見てみましょう。p74~78 <ゴミの原産地を探る> 自然にはゴミがない、と言った人がいた。テツガクだなと思う。 ゴミは必ず人間が生み出すものだ。つまりゴミは人口物品に限られる。 たしかにそうで、たとえば山の中の枯葉や枯枝の落ちたのがゴミかというと、そうは見えない。そうは感じられない。樹の根元に枯葉が落ちていても、それは自然だと思う。倒木がごろんとあって、その表面がぼろぼろに朽ちて黴が生えたりしていても、それはゴミに見えない。自然だと思う。汚いとは思わない。 でもそこに、脚の折れた、バネの飛び出した長椅子がどんと転がっていて、ところどころ布が腐って黴が生えていたりしたら、それはゴミだと思う。汚いなあと思ってしまう。 では自然の中にゴミはないとして、ゴミは人間だけが生み出すものだとして、それじゃあ人間は自然じゃないのかという問題がある。大自然のイトナミの中にあるんだから人間も自然物であって、人間の生み出すゴミも自然物ということになるんじゃないか。 理屈ではそうなるかもしれないが、それはやはり理屈で、廃棄された人工物はどうしてもゴミに見える。枯葉はゴミに見えず、一方、タバコの箱のひしゃげたのはゴミに見えてしまうんだから、仕方がない。見ているのは人間である。 これは面白い問題だ。 ゴミというのは人間の作る人工物から出てくる。それをたとえば動物が見たらゴミでも何でもないのだろうが、それを人間が見るとゴミに見える。 ゴミはすべて人間にからむ物なのだ。 廃車だったか何だったか、何か構造物の廃品を海に沈めると、魚たちはそれを魚礁として利用をはじめる。何かそういう画面を雑誌かテレビで見たことがある。(中略) 問題は人工物、人工的というところにある。 最近の研究によると猿もけっこう道具を使うし、使うだけでなく枝を折るくらいの道具作りをすることがわかってきている。そうすると「猿工」「猿工物」「猿工的」となるのだろうが、まあ理屈はいうまい。ウーム 暇というか、テツガク的なエッセイやんけ♪
2016.12.25
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『永続敗戦論』の著者・白井聡さんがオピニオン欄で「自立の意思なく、追従露骨に」と説いているので、紹介します。(白井さんのオピニオンを11/25デジタル朝日から転記しました)「日本が(在日米軍の駐留経費で)公正な負担を払わなければ、日本を守ることはできない」。そんな発言を続けてきたトランプ氏が次期米大統領に就く。同氏の主張は、戦後、米国を「保護者」のように見てきた日本の常識を覆すものだ。日本にとって、危機なのか、好機なのか。■自立の意志なく、追従露骨に 白井聡さん(政治学者) トランプ氏が米大統領選で当選すると、安倍晋三首相は飛んでいきました。「夢を語り合う会談をしたい」と言って。夢みたいなことを言うなよと思いましたね。 安倍さんは選挙戦中クリントン氏には会った一方で、トランプ氏をスキップしてしまった。それを挽回したかったのでしょう。飼い主を見誤った犬が、一生懸命に尻尾を振って駆けつけた。失礼ながら、そんなふうに見えました。恥ずかしい。惨めです。それを指摘しないメディアもおかしい。 米国が孤立主義に振れれば、日本は対米従属から対米自立へと向かわざるを得なくなる。私も早く自立してほしいと思います。ではすぐにそっちへ向かうかと言えば、官邸や外務省にはそのビジョンも意志もないでしょう。だって、見捨てないでくださいご主人様、とやったばかりですよ。 大統領選中の報道や論議もおかしかった。トランプになったら、ヒラリーだったら、日本への影響はどうだこうだ、と。これは変でしょう。自分たちはこうしたい、というのが一切なくて、米国はどうなるかという読み解きばかり。異様です。何も考えずに米国にくっついてさえいればいいと思っている証拠でしょうね。 * 今後、日本に米軍の駐留経費を100%負担せよと言ってくるかもしれません。いや150%、200%出せ、かもしれない。はたして安倍政権は断れるのか。私は断れるという気がしません。 そもそも、米軍基地の有無や規模と自立性の程度はほとんど関係ない。ドイツを見てください。巨大な米軍基地がある。それで米国の顔色をうかがうような政治をやっていますか。違いますね。 沖縄で米軍基地問題がこれだけ軋轢を起こしているのに、なぜ政府は正面から向き合わないのか。 もし、私が権力中枢にいたら、「日米安保を断固維持するために、なんとかして地元の怒りを静める」と考えます。4月には沖縄でレイプ殺人事件がありました。1995年の米兵による集団暴行事件の記憶もある。内心慌てている米国に、こちらは「日米地位協定ぐらい改定しないとまずい」と持ちかける。その気があれば、強い姿勢で交渉できるはずです。 でも日本政府はやらない。最強の用心棒を怒らせやしないか、恐れているからでしょう。だから沖縄の苦悩には向き合わずに、とにかく米国のご機嫌をとっている。 親米保守政権にとって一番大事なのは、米国支配の世界秩序が続くことです。米国に寄りかかっていれば、自分の立場を守れ、変わる必要はない、と思えるからです。 日本のTPP反対派にはトランプ氏に期待する向きもありますが、楽観していません。「アメリカ・ファースト」とは、TPPなど手ぬるい、米企業のために日本はもっと市場を開けろという要求だと解釈できる。国民皆保険をやめて米の民間保険会社を入れろとか、水道事業を民営化しろとか。こうした要求に抵抗する覚悟が現政権にあるとは思えない。 * ひたすら対米追従するという日本側の本質は何ら変わっていないのだから、米国の国益追求がむき出しになる分だけ、今後、従属の露骨さはむしろ強まると思います。 90年前後に冷戦が終わり、敗戦によって生まれた対米従属を続ける必要はなくなったのに、保守政権はその後もそれをやめようとしない。だから私はこれを「永続敗戦」だと名づけました。この構図がなお続く可能性は高い。 保護者なき日本はどこへいくか、ですか。そもそも日本にとって保護者は存在したのでしょうか。これは国と国との関係です。親分と子分の関係だって、互いに都合がいいから。利害が変われば関係も変わる。もし「愛してくれているから同盟関係にある」などと信じているとしたら、そんなおめでたい国は日本だけでしょう。(聞き手 編集委員・刀祢館正明)*白井聡:77年生まれ。京都精華大学専任講師。13年の「永続敗戦論」(石橋湛山賞)が話題に。ほかに「戦後政治を終わらせる」「『戦後』の墓碑銘」など。保護者なき日本白井聡2016.11.25・・・ということで、この際、白井さんの『永続敗戦論』を読み返してみようと思うのです。この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップR1に収めておきます。
2016.11.27
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新保史生さんや栄藤稔さんが朝日のオピニオン欄で「AIと生きる」ことの意味や倫理を語っているので、紹介します。とにかく、自動運転たら技術は、基本的に「おせっかいな技術」と思い、鬼門として毛嫌いしている大使なので・・・そのあたりを見てみたいのです。(お二人のオピニオンを11/9デジタル朝日から転記しました)自動運転からがんの診断に至るまで、さまざまな分野で人工知能(AI)を活用する研究が進んでいる。AIの実力とはどれほどなのか、そして私たちはどう備えたら良いのか。■「人間第一」のルール必要 新保史生さん(慶応大学教授) AIの技術は進んでいるのに、それに対する人間の考えが追いついていない。それが今の状況です。 自動走行車で事故があったら、責任はドライバーにあるのか、メーカーにあるのか。そんな、AIを社会としてどう受け入れていくかという制度づくりの議論が、ようやく始まったところです。 法律面を考えてみても、表現の自由やプライバシーなど憲法上の問題から、刑法や民法、安全保障など国際法上の問題まで、今後は幅広い検討が必要になります。 AIと言っても、すでにある自動走行車と、「ターミネーター」のようなSF的なものを一緒に議論すると、混乱してしまう。議論の前提を整理する必要があります。 課題の緊急度では、まずは現に問題が起きている分野です。米国では自動走行中の死亡事故も起きている。さらに、いつ起きてもおかしくない問題。AIを搭載したドローンが墜落し、人的被害が出るようなケースを考える必要がある。SFのような想定問題は、その先のことです。 まずは緊急度が高い課題を念頭に、将来的には具体的な法律に落とし込む必要があります。ただ、現在進んでいるのはその基礎となるAI開発の原則や制度づくりです。 制度づくりと言うと、規制強化と思われがちです。しかし実際には、ルールが未整備だと、参入へのちゅうちょが生まれ、かえってイノベーションを阻害してしまいます。 日本は世界をリードするロボット大国。その優位をAIで生かすためにも、制度整備の議論を急ぐべきです。 私も参加した総務省の有識者会議「AIネットワーク化検討会議」は今年4月、まず「AIの研究開発の原則」として、「透明性」や「プライバシー保護」など8項目のたたき台をまとめました。同月末に高松で開かれたG7の情報通信大臣会合で、この「原則」を日本から提案し、各国も賛同しました。今後はこれをベースに国際的な議論が進むことになります。 検討会議での議論のきっかけは、私が昨年秋に試案としてまとめた「ロボット法 新8原則」です。SF作家アシモフが提唱したロボット工学の倫理「3原則」や経済協力開発機構(OECD)のプライバシーガイドラインを参考に、AIの進展も踏まえてアップデートしました。 そこで最初に取り上げたのが「人間第一の原則」です。 AIの活用で効率は上がる。ただ、それが人間にとって幸せかどうかは別問題です。作業を単純にAIに置き換えれば、機械ですから融通はきかない。人間が幸せになるよう、人間優先でAIをうまく使いこなす必要があります。その理念が、議論の出発点になると思っています。(聞き手・平和博) *新保史生:70年生まれ。OECDデジタル経済セキュリティ・プライバシー作業部会副議長。著書に「情報管理と法」。**************************************************************■社会課題解決のツールに:栄藤稔さん(NTTドコモ執行役員) 国立研究開発法人の科学技術振興機構で、AI活用プロジェクトを統括しています。昨年、AIの画像認識力が人間の「目」を超えたという研究結果が発表されました。たとえば、そっくりな双子の顔を人間はよく間違えますが、最新のAIは間違えない。 最近は、動画認識による自動運転や、文法だけでなく経験則にも学ぶ自動翻訳が、AIの最先端です。私が社長の子会社「みらい翻訳」のAIの英作文力は、TOEIC700点の人の水準。日英の言い回しを数百万も学習させて到達できました。 ただ、日本でAIというと、鉄腕アトムのような人型の万能ロボットをイメージする人が多いですが、欧米企業の技術者の間では「賢い機械」ぐらいの受け止め方。実際、まだまだAIは単純な認識をしているだけです。水を見せると、「水」という名前だとは判断しますが、それが「流れる」「飲める」といったことは理解していない。人間の意識とは程遠いのです。 だからこそ欧米の企業で進むのは、AIを、社会を効率化するツールとして活用する取り組みです。例えば、がん検査の画像診断で、AIの画像認識能力を活用し、医師の診断を補助してもらう。今後は農業や食品加工の分野でも、例えばトマトの熟れ具合を見極めて一番いい時に収穫するといった取り組みが進むでしょう。 そして大事なのは、今やAIの基本技術はオープンソース(公開)化されており、ネット上で入手できる点です。そこからダウンロードすれば、だれでも使えるし、改良してアップロードもできる。最先端の技術開発を続ける一握りの米国大手をのぞけば、大半のAI企業は、目的に最も合ったコモディティー(汎用品)のAI技術を組み合わせることで勝負しています。 日本も、高齢化などが進む国だからこそできる社会課題の解決に、公開されているAI技術を使ってもっと取り組めると思います。ただ、その際に障害となるのは、日本では各産業の取り組みや社会の様々なデータが、まだデジタル化して蓄積されておらず、AIが読み込める状態になっていないことです。デジタル化できていないと、AIの学習に使えず、その果実を取れません。 とにかく有用と思われるデータをネット上にアップロードし、デジタル化を進めることが、AI時代には欠かせないと思います。AIの最先端技術では世界と競えなくとも、さまざまなデータを蓄積して、「そんなところがデジタル化されてるの」という分野をつくる。それを汎用品のAIに学習させて、AI活用の成功例を作り、次につなげていく。そこに、日本の活路もあると思っています。(聞き手・吉川啓一郎) *栄藤稔:60年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)から2000年にドコモへ。14年からイノベーション統括部長。要するに、アップルやグーグルそしてアメリカ的商法が嫌いなだけだったりして(笑)なお、AIのディープラーニングなんかについてはAIは人の脅威か、アルファ碁の圧勝で語られています。(耕論)AIと生きる新保史生2016.11.9この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップR1に収めておきます。
2016.11.10
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<(耕論)変な国アメリカ?>本日9時頃から米大統領選の開票作業が始まるそうだが・・・・矢口教授や厚切りジェイソンさんが朝日のオピニオン欄で「変な国アメリカ?」と語っているので、紹介します。(お二人のオピニオンを11/8デジタル朝日から転記しました)8日は米大統領選投票日。イスラム教徒の入国禁止、国境に壁……問題発言を繰り返すトランプ氏が最後まで支持を集めるのはなぜなのか。米国は「変な国」になったのか、そう思う私たちが変なのか。■分断と融合、いつも併存:矢口祐人さん(東京大学教授) 日本から見ると、トランプ氏の支持者は極論の持ち主に思えます。しかし、米国社会全体から見れば、おかしな人でも、ひどく偏った人でもない。外国から見ると「奇妙」でも、米国では「普通」の人が大勢いるから、トランプ氏優勢の州があれだけある。 米国はもともと巨大な分断を抱えた国です。多くのノーベル賞受賞者を出しながら、4割の人が進化論を信じていない。カリフォルニア州などには、聖書の創造論の「正しさ」を展示する博物館があります。来館者はごく普通の人たちが多く、進化論は信じないけれど教育や科学の大切さは否定しない。一方で、リベラルな知識層の知人に「行ってみよう」と誘うと拒否反応を示す。そういうものの存在すら認めたくない。完全に分かれてしまっているんです。 トランプ氏支持者の中心は、白人、男性、地方在住、大学を出ていないブルーカラー層です。そうした人が、共和党主流派ではなくトランプ氏を支持したのは、人種問題がとても大きい。米国社会に占める白人の比率は確実に減っています。白人男性を中心とした伝統的・保守的な価値観が揺らぎ、形容しがたい不安が広がっている。それをトランプ氏は巧みにすくい上げたといえます。 民主党のサンダース氏も似ています。格差が拡大する中で若者は将来への不安にさいなまれている。一部の金持ちに極端に富が集中する一方、学生は学費を賄うための多額の借金に苦しんでいる。そうした若者の不満をつかんだ。 ただ、人種や学歴、都市と地方、貧富による分断というのは、突然出てきたものではありません。米国は、常に外から人が入ってくる国で、新しく来た人々への感情的反発が必ず起きる。激しい貧富の差も常にある。ずっと存在する分断が、今回の大統領選で非常にわかりやすい形で具現化されたのだと思います。 それに大きく寄与したのがメディアです。CNNなどのニュース専門テレビ局にとって、トランプ氏は非常においしい素材です。彼のセンセーショナルな発言を報道すればするほど視聴率も上がる。メディアとトランプ氏の共犯関係が、劇場型の大統領選を生み出してしまった。 この大統領選を経たことで、米国社会の分断が加速するとはあまり思いません。分断はもともと存在したもので、トランプ氏が作り出したわけではない。また、政策的にも、人々の意識の中でも、積極的に融合を進める動きはあります。個人のレベルでは人種の融和は進み、黒人と白人の結婚や、そこから生まれる子どもたちも増えている。 でも、それに対する根強い反発もある。融合と分断のベクトルが常に並行して存在する。それがアメリカです。(聞き手・尾沢智史) * 矢口祐人:1966年生まれ。専門はアメリカ研究。著書に「奇妙なアメリカ」「憧れのハワイ」など。**************************************************************■被害意識がトランプ熱に:厚切りジェイソンさん(お笑い芸人) ホワイ、アメリカンピープル 米国人はなぜこんなにトランプ氏を支持するのか、ですか? 日本の皆さんが疑問を持つのも、当然ですね。 僕はミシガン州のチェルシーという田舎町で、共和党を支持してきた両親の元で育ちました。一番近いコンビニまで砂利道を車で20分。エンジニアの父親は、仕事よりも神様が大事な真面目なキリスト教徒でした。僕も両親と週に3回教会に通っていました。父は今も教会で毎月のように説教をし、そのユーチューブのリンクを送ってきます。 両親は選挙の際、どの候補の主張が聖書に近いかを考え、ずっと共和党候補に投票してきました。でも今回初めて「あれ、トランプ氏は共和党候補だけど、聖書に近いのかな」と悩んでいると思う。 トランプ氏は政治家ではないから、何かを変えてくれる――というのが今の米国の空気です。今ある問題を「何かのせい」にしている人からの支持が多いと思う。「おまえのせいじゃないよ」って、言ってくれるのを求めてる。 例えば、私の出身州の街、デトロイトの自動車産業の人々は、仕事が減って不満を持っている人が多い。そこで、「日本の車さえ入ってこなければこんなに苦しまなくて済んだ」と。地域によってはメキシコ移民のせいで仕事がなくなったと思う人も多い。 本当はそんな簡単な話ではないんです。でも、仕事を失った人は、そういう話を聞きたがる。車の品質とか価格とか、本当のことを見なくなる。その不満をトランプ氏が拾っている。人の不満に火をつけて共通の敵をつくることで人気を集めるのはヒトラーのやり方ですよ。 米国の資本主義は、品質の良いモノ、安いモノ、頑張る人を歓迎するはずです。なのに「オレの仕事がなくなるなら歓迎できないよ」となっている。私の知る本当のアメリカではないと思います。 イスラム系の人を差別する発言も結構やばい。これも米国の根本と全然違います。宗教の自由、言論の自由、思想の自由を大切にしてきた国なのに……。宗教は心の中のこと、生き方のことだから、外から区別のしようがないでしょう。危ないですよ。魔女狩りのようなことを繰り返すことになってしまいます。ちゃんとがんばって、米国を本当に愛している人を強制的に追い出すことになりかねない。 でもどうしてそんな主張が支持される変なことになっているのか、ですか? 僕は米国は今でも、自由で多様な価値を認める国だと思っています。ただ、怒っている一部の人たちに聞こえの良いことをトランプ氏が言い、さまざまな不満を持つ人たちもなびいてしまっているというのが現状です。米国のイメージも含めて、心配ですね。(聞き手・池田伸壹) * 厚切りジェイソン:本名はJason David Danielson。1986年米国生まれ。2014年に日本で芸能界デビュー、IT企業役員も兼務。【選挙結果を受けて】大使は次のようにツイートしたのです。トランプ大統領が誕生したんやて・・・・それはないぜ! 悪夢じゃ。この番狂わせには、多くの共和党員も驚いているようです。とにかく増大するヒスパニックと国内の経済格差にさらされたプアホワイトの怒りが、外交未知数の下品な大統領を選んだのかもしれないですね。(耕論)変な国アメリカ?矢口祐人2016.11.8 この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップR1に収めておきます。
2016.11.09
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図書館に予約していた『永続敗戦論』という本を待つこと2日でゲットしたのです。3年くらい前の硬い内容の本なら、予約したらツーカーでゲットできるようです。【永続敗戦論】白井聡著、太田出版、2013年刊<「BOOK」データベース>より「永続敗戦」それは戦後日本のレジームの核心的本質であり、「敗戦の否認」を意味する。国内およびアジアに対しては敗北を否認することによって「神州不滅」の神話を維持しながら、自らを容認し支えてくれる米国に対しては盲従を続ける。敗戦を否認するがゆえに敗北が際限なく続くーそれが「永続敗戦」という概念の指し示す構造である。今日、この構造は明らかな破綻に瀕している。1945年以来、われわれはずっと「敗戦」状態にある。「侮辱のなかに生きる」ことを拒絶せよ。<読む前の大使寸評>この本は待つこと2日でゲットしたのだが・・・3年くらい前の硬い内容の本なら、予約したらツーカーでゲットできるようです。<図書館予約:(9/01予約、9/03受取)>rakuten永続敗戦論福一原発事故や事故現場の労務管理のいかがわしさを、見てみましょう。p7~10<「侮辱」の経験>より まず、事故の発生に際し、政府は、原発周辺住民の避難に全力を尽くさなかった。それを最も端的に物語る経緯は、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)のデータが国民に公表されなかった、という事実である。 しかもそのデータは、国民には隠される一方で、米軍にはしっかり提供されており、菅首相(当時)はSPEEDIの存在そのものを「知らなかった」とシラを切り続けている。当然のことながら、この件について、民間事故調査委員会も、SPEEDIは「」と厳しく批判している。開発に30年以上の歳月と、100億円以上の費用が投じられ、維持運営に年7億円の税金が費やされてきたこの装備は、実にこうした使われ方をしたのである。そして依然として、この件について責任を取らされた人間は誰もいない。 有名になった「想定外」という言葉の内実についてもあらためて思い出しておく必要があるだろう。全電源喪失事故を想定しないという政府・電力会社が事故以前にとっていた方針がそもそも論外なのであるが、より具体的には、2006年の国会において吉井英勝衆議院議員(共産党)が「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」を提出し、地震・津波による原発の全電源喪失の可能性を指摘していた。 しかも、このように外部から指摘されるまでもなく、東京電力の側も福島第一原発における津波対策の強化の必要性を繰り返し検討していた。現在報道されているのは、2006年と2008年におけるものである。にもかかわらず、東電は事故発生当時から繰り返してきた「想定外」という説明を、自社による事故調査報告書においても基本的に守り続けている。 そして、忘れてはならないのは、事故そのものが収束したと言うには程遠い状態にあり、いまもなおその現場で被爆をこうむりつつ作業に従事している多くの人々がいるという事実である。種々の報道によれば、これらの人々が、その任務の死活的重要性と危険性に照らして、しかるべき待遇を受けているとは到底思えない。(中略) 現に約70年前、この国は、「やれば必ず負ける」と各界の権力者・識者のほぼ全員が理性の上では承知していながら、太平洋戦争を開戦した。つまり問題は、この事故が処理されうるに適切な体制を構築する意思を現在の政府という組織が実際に体現できているのか、ということであって、関係者が主観的意識の次元でどう考えていようが、それは意義を持たない。 そして、旧態依然たるの結晶のごとき多重下請の労務構造によって現場の作業が担われているという事実は、かかる体制の不在を象徴するものではないのか?が引き起こした事故をによって解決しうる、という空しいばかりでなく危険な夢想がここにはある。 原発業界の関係者にとって実際の安全よりも「安全神話」がより重きをなしていたのと全く同じように、実際の事故収束よりも「収束宣言」という言葉のほうが、時の政治家にとってはるかに重要なものとして認識されたことを、われわれはすでに見た。無論、こうした「夢想」はすぐにでも「悪夢」に転化しうる。「侮辱のなかに生きることを拒絶せよ」とのやや過激なお言葉が・・・ええでぇ♪
2016.09.08
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図書館で『日本戦後史論』という本を手にしたのです。なんか一度借りたような本であるが…ま いいかということで借りたのです。【日本戦後史論】内田樹著、 徳間書店、2015年刊<「BOOK」データベース>より日本人にとって戦後とは何なのか。いま起きている問題の根底にあるものは何か。タブーなしの徹底対談!【目次】第1章 なぜ今、戦後史を見直すべきなのか(戦後史を見直す動きは時代の要請/日本の歪んだ右傾化 ほか)/第2章 純化していく永続敗戦レジーム(ほんとうの民主主義がない日本/なじみやすかった対米従属と対米自立 ほか)/第3章 否認の呪縛(「敗戦の否認」の呪縛/「何かの否認」により成り立つ国家 ほか)/第4章 日本人の中にある自滅衝動(事実認識が正確にできないようになってしまったのはなぜか/極論を楽しんでしまう日本人の気質 ほか)<読む前の大使寸評>なんか一度借りたような本であるが…ま いいかということで借りたのです。rakuten日本戦後史論日本人の属国根性あたりを見てみましょう。p169~175 <日本がアメリカの属国であることを、日本人はどれだけ受け止めているか>白井:日本がアメリカの属国であるという事実には、やっぱりリアリティがないんじゃないですかね。これは皮肉でもなんでもなく、メディアがバーチャルリアリティを作り出す力のすごさの証拠です。「ともかく日米というのは友好なんだ」と。「アメリカ様は日本に対して愛情を持っているんだ」という虚妄の前提を作っているわけです。 先にも言ったように、戦前の天皇制が戦後は国際化して、天皇の位置がアメリカに取って代わられたというのが私の持論です。なぜそんなシステムが必要になったかというと、アメリカが日本を愛していないかもしれないということになると、さらに遡って、昭和天皇は全然国民を愛していなかったんじゃないかという疑惑になるわけで、これは国民にとって最も受け入れがたいトラウマになる。なので、「昭和天皇は国民を愛していた」という幻想を保たなければいけないから、「アメリカは日本を愛している」という幻想も保たなければならない。 しかし国家関係においての愛情だの、友情だのなんて、そもそもあり得ません。冷戦構造が崩壊してグローバル化したときに、アメリカの日本についての経済的位置づけが変わりました。庇護するべき対象から収奪の対象になったんです。内田:その通りです。白井:最初に表れたのが70年代のニクションショックであり、次にプラザ合意だったと思います。そこで起きたのがいわゆるマネー敗戦ですね。 宮崎駿さんが2000年ぐらいにこんなことを言っていました。たしか『ハウルの動く城』が出たときだったと思います。曰く、80年から現在までの歴史の流れは、太平洋戦争のときと同じだというのです。どういうことかというと、目的もわからないまま戦争を始めて、最初は「勝った、勝った」と喜んでいた。ところがいつの間にか戦況が悪くなって大変なことになっている。現在は、戦時中でいえばインパール作戦あたりの時期に該当するのではないか。会見でそういうことを言っていた。 ここでの問題は何かというと、明らかに日本は経済領域で対米戦争をしていたわけなのですが、そのことに無自覚だったし、かつ、その戦争目的が何であるのかがわかっていなかった。だから、勝ちきった時点でそのヘゲモニーを維持するための行動を何もしなかった。そうこうしているうちにいつの間にか反転攻勢を掛けられて、あっという間に収奪される対象へと落ちぶれてしまった。たしかに宮崎さんが言う通り、第二次大戦のときとそっくりなんです。(中略)内田:エズラ・ヴォーゲルが「ジャパン・アズ・ナンバーワン」って言ったころには、それなりの意識があったと思うんですよね。例えば政治で世界を領導することはできないけれど、電気製品や自動車のスペックなら日本人が世界標準を作り出せるという気負いがあった。代償行為ですけれどね。属国だから、政治イデオロギーや政治システムでは世界標準をご提示できない。でも、「ものづくり」でなら世界標準を作り出せる。それで国民的なプライドを保持できると思ったんじゃないですか。白井:経済的に世界的な勝利を収めた瞬間に、政治では何を言っていたかというと、中曽根康弘のレーガンに対する不沈空母発言です。ずっと属国でいますということを宣言し、レーガノミクスにファイナンスしてあげた。しかし、結局レーガンがレーガノミクスで何をやったかといったら、軍拡競争にソ連をもういちど引きずり込んで、ついていけないソ連を崩壊させた。 それでもって冷戦構造が崩壊するわけだから、日本にとって地政学的に見て快適な環境が壊れた。だから、非常にバカげた話なんです。自分にとっての最高の環境を、わざわざお金を貸して、というか正確にはお金をあげてぶち壊したんですから。自滅なんです。 だから、経済的に勝利する一方で、その経済的な勝利というのが何に基いていたのかを日本は理解していなかった。あのときに国際政治の中でそれまでとは違う地位を確立しなければならなかったのに、アメリカの傀儡であることを選び続けた。 何しろもともとルーツを辿っていけばアメリカからお目こぼししてもらった元ファシストのような人たちがやってきた政権ですから、例えば統一ドイツのような立ち位置を占めることは国際環境的にできない。そこから没落していくことになったわけですね。お二人とも、「次は勝つ!」とまでは言わないけど・・・・親米でないことは明らかであるわけで、心強いかぎりでおます♪『日本戦後史論』1
2016.07.25
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図書館に予約していた『反知性主義』を、半年待ってようやくゲットしたのです♪表紙に「いま世界でもっとも危険なイデオロギー」というフレーズが見えるが、どんなかな?まあ(良くも)悪くも、アメリカを牽引している反知性主義という宗教的なイデオロギーを知りたいわけです。【反知性主義】森本あんり著、新潮社、2015年刊<「BOOK」データベース>よりアメリカでは、なぜ反インテリの風潮が強いのか。なぜキリスト教が異様に盛んなのか。なぜビジネスマンが自己啓発に熱心なのか。なぜ政治が極端な道徳主義に走るのか。そのすべての謎を解く鍵は、アメリカで変質したキリスト教が生みだした「反知性主義」にあった。いま世界でもっとも危険なイデオロギーの意外な正体を、歴史的視点から鮮やかに描く。<読む前の大使寸評>表紙に「いま世界でもっとも危険なイデオロギー」というフレーズが見えるが、どんなかな?まあ(良くも)悪くも、アメリカを牽引している反知性主義という宗教的なイデオロギーを知りたいわけです。<図書館予約:(6/22予約、12/23受取)>rakuten反知性主義この本は、アメリカにおける信仰について多くを述べています。手っ取り早く要点を読み取るには、プロローグとエピローグがいちばんということで、まずプロローグから。p24~25<宗教の伝播とウィルス感染>より キリスト教は、それぞれの土地に根付いて発展する際に「土着化」のプロセスを経る。もし読者の中に、「アメリカはキリスト教の本場だ」と思っている人があれば、ここは少し考えを改めていただかねばならない。キリスト教は、アメリカにとっても外来の宗教である。アメリカだけでなく、キリスト教はヨーロッパにとっても、いやどこの国どの文化にとっても、異質な外来宗教である。その外来の宗教が、土着化の程度に応じて変異するのである。 このプロセスは、生体がインフルエンザなどのウィルスに感染した時のことを考えるとわかりやすい。ウィルスは、宿主に受け入れられ、そこで繁殖してゆく過程で、宿主に大きな影響を及ぼすが、同時に自分自身をも変化させてゆく。亜種が生まれるのである。そのように自分を変化させることによって、ウィルスはいっそうよく宿主の生態環境に適応することができるようになり、ますます自己繁殖してゆくようになるのである。 それと同じように、宗教も伝播の過程で、その土地の文化に大きな影響をもたらしつつ、同時にみずからを変化させてゆく。宗教学的に言うと、これは「土着化」や「文脈化」と呼ばれるプロセスである。それが成功すればするほど、宗教はその土地に独自のものとなり、変容を遂げてゆくわけである。 仏教も、日本に伝来して次第に根づいてゆくうちに、それまでの教えや実践の伝統を離れて独自の変化を遂げていった。キリスト教もアメリカという土壌も根づくうちに、強調点や視座を変えながら適応を繰り返してきた。その結果、おおもとの精神は同じであるとしても、それぞれの土地や文化に即して独自の現象形態が生み出されるようになったのである。 アメリカという土壌は、この意味でキリスト教というウィルスにとって絶好の培養地であった。大繁殖したキリスト教は、その過程でアメリカ社会を大きく変容させたが、同時にみずからも変貌を遂げ、多くの亜種を生み出してゆく。次に、エピローグから「先鋭化してきた反知性主義の背景」を見てみましょうp262~263<反知性主義が生まれた背景>より では、そのような反知性主義が、なぜアメリカのキリスト教を背景にして生まれ、先鋭化していったのか。 しばしば言われるように、アメリカは中世なき近代であり、宗教改革なきプロテスタンティズムであり、王や貴族の時代を飛び越えていきなり共和制になった国である。こうした伝統的な権威構造が欠落した社会では、知識人の果たす役割も突出していたに違いない。 それが本書で辿ったアメリカの歴史であるが、反知性主義はそれと同時に生まれた双子の片割れのような存在である。双子は、相手の振る舞いを常にチェックしながら成長する。他の国で知識人が果たしてきた役割を、アメリカではこの反知性主義が果たしてきた、ということだろう。 本書は最初から最後まで、キリスト教がアメリカにおいて土着化ないし文脈化したこと、そしてその結果が宗教と道徳の単純なまでの同一視であること、の二点を強調してきた。 ダニエル・ベルという政治哲学者によると、アメリカ史には「政治における妥協性」と「道徳における極端性」が共存している。アメリカは、一方では欲望全開で何でもありのフロンティア社会であり、かつ同時に禁欲的で厳格な法律をもったお上品の国である。都会には売春と飲酒と賭博が蔓延する一方で、プロテスタント的・中流階級的な倫理観は他のどの国よりも強い。だからアメリカでは、敬虔が道徳主義に道を譲り、神学が倫理学に従うのである。その結果、妥協を旨とするはずの政治が道徳の極端性を帯び、政治が道徳化してしまった。宗教の道徳家も、これと同じプロセスの産物である。 もうひとつ忘れてはならないのが、平等という理念である。 1950年代にマッカーシーが極端で理不尽な知識人攻撃を繰り返していた時ですら、人びとは彼の反知性主義にある種の正当性を感じていたという。それは、そこにいかにもアメリカ的で明快な大義名分、すなわち民主的平等を求める熱情が含まれているからである。反知性主義の核心部あたりを、見てみましょう。p221~233<反知性主義の完成>より■戦闘的な反知性主義のヒーロー 「ハーバード主義・イェール主義・プリンストン主義」とは、20世紀初めの大衆伝道家ビリー・サンデーを題材に創られたシンクレア・ルイス原作の映画『エルマー・ガントリー』に登場する言葉である。 極貧の生まれから大リーグ野球選手となって名を馳せ、やがて福音伝道者へと転身したサンデーは、学校教育をほとんど受けておらず、聖書や神学の知識もない。その説教は壇上を走り椅子を振り回す型破りのスタイルで、単純ながら強いアピール力があった。そのサンデーを模した映画の主人公のガントリーは、伝道集会をまるで地方回りのサーカスのように仕立て上げ、野卑なアトラクションで人を呼び込む。そういう手法を仲間に批判されると、開き直って次のように語るのである。【そうさ、あんたは5ドルもする百科事典で、おれは2セントのタブロイド紙だ。お高くとまった連中は、そういうのが好みかもしれん。だが、ハーバード主義・イェール主義・プリンストン主義にはうんざりだ。おれは神学も生物学も知らないし、学問は何ひとつ知らない。だがな、大衆は誰も百科事典なんか買わない。タブロイド紙を喜んで買うんだよ。おれがその大衆だ。】 すさまじい自信と戦意に満ちたサンデーの姿をよく写し取った言葉である。エドワーズやホイットフィールドを萌芽期、フィニーやムーディを発展期とすれば、リバイバリズムはサンデーにおいて完成期に達したということができる。アメリカの反知性主義も、同じく彼において一つの完成形態に到達する。彼以降のリバイバリズムや反知性主義は、いわばこの原型をパターンとして応用しているにすぎな。 ビリー・グラハムの大衆伝道しかり、ジョゼフ・マッカーシー上院議員の共産主義者狩りもまたしかりである。信仰復興運動も、第3次まではその波が明確に数えられるが、第4次以降は史家によって数え方がまちまちで拡散している。■牧師資格の取得 反知性主義のヒーローたちに共通することだが、サンデーには学歴がまったくない。神学校で勉強したことはなく、大学はおろか高校すら出ていない。そんな彼が、どうやって聖書の言葉を語る伝道者になれたのだろうか。元大リーガーとしての名声があったとしても、それで知識の欠けを補えるものではない。伝道を始めたはよいが、その後も彼は長い間、いわば無資格で「無免許運転」であった。 ヘレンとの結婚後、彼はそのまま彼女との出会いの場であるシカゴの長老派教会に籍をおくようになったが、その長老派教会が彼に「伝道者」としての資格を認定したのは、ようやく7年後のことである。正式な「牧師」資格の認定には、それからさらに5年を待たねばならなかった。それにしても、長老派といえばインテリ教会の代表格で、牧師になるための資格試験もある。いったいサンデーは、どうやってその試験を切り抜けたのか。 牧師検定の口頭試問では、サンデーは神学や歴史についての質問に「それは私には難しすぎてわからない」「その問題はパスします」という答えを連発した。しまいには、検定委員の方が音を上げてしまい、こう切り出したという。「もう試験を打ち切りにしようではないか。彼は、ここに座っているわれわれ検定委員をみな足し合わせてもかなわないほど、多くの魂をキリストに導いたのだ。神が認めておられる伝道者を、われわれが落第させるわけにはゆくまい。」こうしてサンデーはめでたく牧師としての資格っを得ることになった。 本書をここまでお読みの方はもう説明の必要もないが、そもそもキリスト教の伝道者となるためには、牧師の資格は不要である。どこかの教会で正規の伝道者と認定してもらう必要もない。いや、そんな資格だの肩書きだのがあっても伝道には何の役にも立たず、かえって邪魔になるだけだ。神の言葉を宣べ伝えるのに必用なのは、地上の権威ではなく神ご自身の承認である、というのがその根本的な確信の在り処なのである。
2015.12.27
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今日の朝日新聞に「自動運転車、公道走行に現実味」として載っているが・・・ちょっと待てよ。車として開発の資源を傾ける方向は、もっと他にあるのではないか?大使としては、グーグル・カーなどの開発の方向性が気に食わないのである。省エネの安価な車などを目指すのが、経営の王道ではないのか、と思うのである。2015.11.29自動運転車、公道走行に現実味 事故・渋滞減に期待より ハンドルやアクセル、ブレーキの操作をしなくても道路をスイスイ走る「自動運転車」が現実味を帯びてきた。交通事故の大幅削減、渋滞の解消、自分で運転できない高齢者らの移動手段――。高まる期待の一方で、乗り越えるべき課題は少なくない。 10月上旬、首都高速道路でトヨタ自動車が試作車を走らせた。東京・お台場にある有明インターのゲートをくぐり、運転手がハンドルに付いているボタンを押すと「オートドライブ(自動運転)モードを開始します」と音声が流れた。ハンドルから手を離した状態のまま、車はカーブを走り、方向指示器を出しながら本線に入っていった。 有明インターから福住インターまで5キロ余り。車線変更をして前の車を追い越す場面もあった。今年、こうした自動運転の最新の試作車を各社が公道で走らせ始めた。 自動運転の最大の目標は交通事故を減らすことだ。2014年の交通事故死は4113人。原因は速度超過や脇見運転など運転手の不注意が目立つ。運転操作を機械に委ね、人間の不注意が入り込む余地を減らしていけば、交通事故も減っていくと国などは期待する。 自動運転の技術の一部は、安全に走るために運転手を支援するシステムとして、すでに市販車に導入されている。障害物を検知して車を減速させる「自動ブレーキ」や、車線のはみ出しを警告したり、戻したりする機能などだ。 運転手を支援する安全技術を積み重ねた先に、運転手が関わらない完全な自動運転を達成するというのが自動車会社の進め方。トヨタやホンダは20年に高速道路で、日産自動車は一般道で、ほぼ自動運転する車の販売を目指す。マツダは開発は進めるものの「運転の楽しみを重視する」として今のところ完全な自動運転は目指さない考えだ。■状況認識力、向上 ここにきて自動運転車への期待が急速に高まっているのは、周りの状況をとらえるセンサーや、運転操作を制御するコンピューターなどが格段に高性能になってきたからだ。 トヨタの試作車では、フロントガラス上部に付けたカメラが前方の様子や車線を確認し、ミリ波レーダーで前後の車間距離を監視する。さらに、ライダーと呼ばれるセンサーを前方と後方に三つずつ搭載。周囲の車の位置や形まで認識する。 路上を走る際、センサーがとらえた状況と、カーナビよりも詳細な専用の3次元地図とを比べ、違う部分を「障害物」と判断していくという。車線やカーブの曲がり方など通常の道路図に加え、その時々の交通規制や障害物などを盛り込んだ3次元地図は、自動運転に欠かせない基盤情報だ。 走りながら的確に判断していくには、高度で素早い情報処理がかぎを握る。そのため、自動運転車にはグーグルなどのIT企業も参入を目指している。 DeNAなどは20年に運転手のいない「ロボットタクシー」を走らせる目標を掲げる。市販の車を改造してつくる方針で、年明けにも神奈川県内で実験をする予定。広報担当者は「運転手なしで目的地に行くことができれば、その技術は自動で自宅に荷物を届ける宅配サービスなどにも応用できる」と話す。■技術以外も課題 渋滞時のイライラからの解放、移動しながら車内で仮眠や仕事も――。そんな自動運転の未来だが、課題はまだまだ山積みだ。 実際の路上ではほかの車や歩行者などがいて、不測の事態も起こりうる。日産の開発担当者は「たとえば、渋滞の交差点で右折するのは難しい。運転手が人間同士ならアイコンタクトで『どうぞお先に』ということがあるが、今の技術ではまだまだ」と説明する。 大雨や霧、豪雪など悪天候でもセンサーが誤作動しないのかという検証や、事故が起きた時の責任の所在などの検討も必要だ。ニセの通信などで不正アクセスされて車が乗っ取られるおそれもある。 倫理的な問題もある。たとえば子供の急な飛び出しを避けるために他の車と衝突してしまう場合、車をどう制御するのか判断が難しい状況も起こりうる。対向車線へのはみ出しが禁止された道路で障害物を避けるために車線をはみ出すケースや、合流地点で制限速度を超えて車の流れに入るケースなどもある。 自動車メーカーなどでつくるNPO「ITSジャパン」の天野肇専務理事は「自動運転車が市場に出る前に決めなければいけないことはまだまだ多い。加えて、運転を機械に任せることを、社会がどう受け入れるかがカギになると思う」と話した。(木村俊介)■「完全」にはまだ段階 運転手が関与しない「完全」な自動運転の達成までには段階がある。レベル1は加速やブレーキ制動、ハンドル操作の一部が自動で、安全運転の支援の状態。レベル2はその三つのうち複数の操作を任せる。レベル3は三つの操作が自動だが、緊急時などは運転手が操作する。完全な自動運転はレベル4だ。■長年の開発 自動運転の試験としては、1996年に開通前の上信越道をメーカー各社の11台の乗用車が走った例がある。トラックでも等間隔で前の車に付いて走る試験などが実施されている。米国では戦場の無人化のため、砂漠や基地跡の街路を走るコンテストが開かれた。■国はインフラ支援 国は自動運転の共通基盤となる詳細な地図づくりを進める。2017年までに制度やインフラなどの整備を進め、東京五輪が開かれる20年には東京でレベル3を、20年代後半以降に完全な自動運転の達成を目指している。とにかく、自動運転とは膨大な経営資源を必要とする技術である。無駄なことに力を注ぐ余裕はないはずである。アップルのウェアラブルコンピューターもそうだけど、そんなものが無くても困らないのである。自動運転車もしかり・・・無くても困らないのである『オートメーション・バカ』という本に、グーグル・カーの愚かしさが載っているので見てみましょう<第1章 乗客たち>p15~17 右手はドリンクホルダーになった。わたしは更新され、最新になったというだけでなく、解放された気分になっていた。 長続きはしなかった。やることが少なくなったという喜びは確かにあったが、薄れていったのだ。新たな感情が入りこんできた・・・「退屈」である。誰に対しても、自分に対してさえも認めたくはなかったけれど、シフトレバーとクラッチペダルが懐かしくなりはじめていた。それらが与えてくれた、コントロールと関与の感覚が恋しかった・・・できるだけ勢いよくエンジンをよみがえらせる能力、クラッチを離したりレバーをつかんだりする感触、低速ギアに切り替えるときのちょっとしたスリル。オートマ車はわたしを運転手ではなく、乗客の気分にさせた。腹が立ってきた。 そこから突っ走ること35年、2010年10月9日朝のこと。グーグル社社内開発者でドイツ生まれのロボット工学者、セバスチアン・スランは、驚くべき報告をブログにポストした。グーグル社が「自動運転する車」を開発したといいうのだ。グーグル本社の駐車場をとろとろ走る、不恰好なプロトタイプではない。 誓って道交法にかなった車(正確に言えばプリウス)であり、スランによれば、カリフォルニアとネヴァダの路上を、すでに10万マイル以上走行しているというのだ。すでにハリウッド・ブールヴァードもパシフィック・コースト・ハイウェイも走り、ゴールデンゲート・ブリッジを行き来し、タホー湖の周りもぐるっと回っていた。フリーウェイを走る車に交じり、交通量の多い交差点を渡り、ラッシュアワーの渋滞のなかをのろのろ前進していた。衝突を避けるため大きくハンドルを切ったこともあった。それらをみなこの車は、自分でやっていたのだ。人間の手助けなしに。おどけた謙虚さでスランは書く。「ロボット工学史上初めてではないかと思う」。 自動運転する車を作ったこと自体は大事件ではない。エンジニアもちょっとした技術職人も、少なくとも1980年代以来、ロボット自動車や遠隔操作自動車を作ってきた。だがそのほとんどは、垢抜けないおんぼろ品だった。その使用は閉鎖されたトラックでの試験走行や、歩行者も警察もいない、砂漠など人里離れた場所でのレースやラリーに限られていた。しかし、スランの報告が明らかにしたことに、グーグルカーは違っていた。 交通史とオートメーション史の両者においてこれが画期的だったのは、複雑に荒れ狂うカオスのような現実世界を進んでいくことができる点だった。レーザー距離測定機とレーダー・ソナー送信機、モーション・デテクター(動作検知器)、ビデオカメラ、GPS受信機を備えたこの車は、周囲の状況を精細に感知できる。向かっている先を見ることができる。 (文字数制限により省略、全文はここ)【オートメーション・バカ】ニコラス・G.カー著、青土社、2014年刊<「BOOK」データベース>より運転手がいなくても車が走り、パイロットが操縦しなくても飛行機が安全に飛び、さらには、自分の必要としているものも、道徳的な判断さえも、すべて機械が教えてくれる世界。それは一体どんな世界なのかー。ベストセラー『クラウド化する世界』『ネット・バカ』の著者が鮮やかに暴き出す、すべてが自動化する世界のおそるべき真実!【目次】第1章 乗客たち/第2章 門の脇のロボット/第3章 オートパイロットについて/第4章 脱生成効果/第5章 ホワイトカラー・コンピュータ/第6章 世界とスクリーン/第7章 人間のためのオートメーション/第8章 あなたの内なるドローン/第9章 湿地の草をなぎ倒す愛<読む前の大使寸評>いかにも探検家の角幡唯介さんが選びそうな本である。角幡唯介さんが次に目指すのは北極だそうだが、この探検にはGPS機能の機器を持参しないそうで(星座観測、六分儀を使用?)、オートメーションを拒否して動物的感覚を頼る計画だそうです・・・・すごい♪また、アップルやグーグルが自動運転車の製造を目論んでいるようだが・・・・何と心ときめかない製品ではないか(笑)<図書館予約:(5/15予約、9/19受取)>rakutenオートメーション・バカオートメーション・バカby角幡唯介オートメーション・バカbyドングリ
2015.11.29
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図書館で予約していた『街場の戦争論』という本を約3ヶ月待ってゲットしたのです。当地の図書館では、売れ筋の小説ならいざ知らず、堅い内容の本なら3ヶ月ほど待てば借りられるというわけですね♪折りしも、政権与党は安保法案を参院特別委で16日に採決する方針だそうです。えらいこっちゃ、アメリカの戦争に加担するニッポンになるのか?【街場の戦争論】内田樹著、ミシマ社、2014年刊<「BOOK」データベース>より改憲、特定秘密保護法、集団的自衛権、グローバリズム、就職活動…。「みんながいつも同じ枠組みで賛否を論じていること」を別の視座から見ると、まったく別の景色が見えてくる!現代の窒息感を解放する全国民必読の快著。<読む前の大使寸評>内田先生なら、集団的自衛権をどう論じるか?とにかく、国会でも安保法案で時間稼ぎ審議中でもあり、全国民必読の本というのもうなずけるのです。<図書館予約:(6/01予約、9/06受取)>rakuten街場の戦争論この本は読みどころが多いので(その2)として紹介します。戦争法規とか、日本人の失ったものあたりを見てみましょう。<戦争は犯罪ではない>よりp24~27 国際法というものがあります。戦争犯罪は軍法に基き、軍事法廷で裁かれる。そういうルールになっています。でも、それはあくまで「たてまえ」です。戦勝国は「戦争犯罪」をかなり恣意的に敗戦国に適用し、無限に処罰し続けることができる。 極東軍事裁判では、弁護人に立ったベン・ブルース・ブレイクニーは裁判の管轄権についてきわめて論理的かつラディカルな批判をしたことで知られています。彼はこう述べました。 「戦争は犯罪ではない。戦争法規があることが戦争の合法性を示す証拠である。戦争の開始、通告、戦闘の方法、終結を決める法規はもし戦争自体が非合法ならまったく無意味である。国際法は、国家利益追求の為に行う戦争をこれまでに非合法と見做したことはない。歴史を振り返ってみても、戦争の計画、遂行が法廷において犯罪として裁かれた例はない。国家の行為である戦争の個人的責任を問うことは法律的に誤りである。なぜならば、国際法は国家に対して適用されるものであって、個人に対してではないからである。戦争での殺人は罪にならない。それは殺人罪ではない。戦争が合法的だからである。」 そして、さらにこう続けました。 「われわれは、広島に原爆を投下した者の名を挙げることができる。投下を計画した参謀長の名も承知している。その国の元首の名前も承知している。彼らは、殺人罪を意識していたか?」 もちろん、彼らは殺人罪では訴追されることはありません。「それは彼らの戦闘行為が正義で、敵の行為が不正義だからではなく、戦争自体が犯罪ではないからである」。 僕はこのとき裁かれたA級戦犯たちにはさまざまなレベルでの政治責任があると思いますけれど、それでもブレイクニーのこの弁護のロジックは話の筋目が通っていると思います。しかし、極東軍事裁判の判事たちはこのロジックを退けました。そして、原爆を落として勝った側はいかなる罪にも問われないが、戦争を計画し実施して負けた側には戦争犯罪を適用しました。 僕ももいいい年ですから、そういうことで青筋立てて怒ったりしません。「世の中というのは、そういうものだ」と思います。戦争を始めた人たちだって「世の中そういうものだ」とわかっていて戦争を始めたのですから、大日本帝国戦争指導部にはこのダブルスタンダードについて文句を言う権利はない。 権利があるとしたら、それは「日本が戦争に勝って、アメリカの戦争指導者たちを軍事法廷で裁くときに、私なら決してアメリカの戦争指導者たちを戦時国際法以外の罪状で告発することはしなかったであろう」という仮定法的な命題を説得力のある証拠に基いて立証し得た人だけです。残念ながら、そのような可能性を持っていた人は戦犯たちの中にはひとりもいなかった。(中略) 日本は戦争に負けることで多くのものを失いました。それはどのようなものか。「そんな話はもう止めよう」と言って済まされるものではありません。僕たちの国は敗戦であまりにも多くのものを失った。それを回復しなければ、この国は蘇生しない。そして、僕たちが敗戦で失った最大のものは「私たちは何を失ったのか?」を正面から問うだけの知力です。あまりにもひどい負け方をしてしまったので、そのような問いを立てる気力さえ敗戦国民にはなかった。 その気力の欠如が戦後70年続いた結果、この国の知性は土台から腐蝕してきている。僕にはそのように思えるのです。ですから、僕たちはあらためて、あの戦争で日本人は何を失ったのかという痛々しい問いを自分に向けなければならないと思います。内田先生が、独自外交や鳩山下ろしの事例を語っています。<従属国民マインドの完成>よりp103~104 アメリカの許可を得ずに日本が展開した外交の最後の企ては、1972年に田中角栄と周恩来の間で取り交わされた「日中共同声明」だったと僕は思います。田中角栄が電撃的に「日中共同声明」を発表したとき、キッシンジャーは「田中を決して許さない」と激怒したと伝えられています。そして、その直後、アメリカの上院で開示された情報で田中が没落するというロッキード事件が起こります。 僕たちが知るかぎり、戦後アメリカに逆らって独自外交を展開しようとした総理大臣が長期政権を保った事例はありません。民主党政権の鳩山由紀夫がそうでした。オリバー・ストーンは先の講演の中で、「日本には大儀や理想を語る政治家がひとりもいない」と言ったあとに前言撤回して、「いやひとりいた。それは最近オバマ大統領の沖縄政策に反対してオバマにやめさせられた人だ」と付言しました。鳩山にしても小沢一郎にしても、民主党政権のときに明確に対米自立を口にした政治家たちはたちまちのうちに引きずりおろされました。 ただし、オリバー・ストーンが「オバマにやめさせられた」というのは間違いだと思います。だって、アメリカ大統領にはそんな内政干渉じみた直接行動をとる必要がないからです。「この政策はアメリカの国益に反するのではないか」と忖度して、「鳩山をおろせ」と活発に世論形成してくれる政治家や官僚やジャーナリストが日本国内には掃いて捨てるほどいるのですから。 鳩山首相は「外国の軍隊が占拠している土地を日本に返してほしい」という当然の希望を述べただけです。でも、「そういうことを言って日米同盟関係の信頼を傷つけたことによって日本の国益を損なった」というロジックが連日メディアを賑わしました。アメリカの国益を損なう人間は日本の国益を損なう売国奴だという奇妙なロジックに対して誰も「変だ」と言わないことが「変だ」と僕は思います。街場の戦争論1byドングリ
2015.09.16
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政治学者・五百旗頭真さんがインタビューで「力と利益と価値、米外交の3原則を複眼的に見据えよ」と説いているので、紹介します。(五百旗頭真さんへのインタビューを8/06デジタル朝日から転記しました)戦後日本では二つの米国像がぶつかり合う。民主主義や大衆文化に象徴されるあこがれとしての米国と、強引なパワーとしてふるまい畏怖(いふ)される米国だ。この巨大な存在にどう向き合うべきか。原資料に基づいて日米関係の歩みを研究してきた政治学者に聞いた。Q:戦後70年は敗戦、占領、安保と米国と向き合う70年でした。A:開国を迫られたペリーの黒船以来、日本にとっての運命的な関わりは、米国が多いですね。日露戦争の講和はセオドア・ルーズベルト米大統領のあっせんでした。そして、連合国による占領も、マッカーサー最高司令官のもと、米国主導でした。 占領とは、占領された側にとっては苦々しいもので、『よい占領』というものはありません。しかし、日本占領は『もっとも少なく悪い占領』でした。米国は真珠湾攻撃の後すぐに、日本の事情に通じた専門家を集め、3年かけて対日占領政策をつくりました。 天皇制と官僚機構を残して、間接統治を行った。ニュートラルな技術集団として、官僚機構を使ったのです。既存の軍や警察、バース党などの機構を全部排除して大失敗した最近のイラク占領とは対照的です。そもそも、日本の場合は、明治の自由民権運動や大正デモクラシーなど、自前の民主主義経験もあった。戦後日本は日米の共同作品だと思います。Q:日本人の対米観には、あこがれと反発が共存しています。A:米兵が演習場に入った農婦を射殺したジラード事件や、沖縄での少女暴行事件のようなとんでもない事件が起こると、日本側の怒りが爆発する。在日米軍がいることで対外的な安全性は増すけれども、国内に問題が残る。しかし、大きな枠でみると、米国との関係は、知的交流や草の根交流など市民社会同士の絆は太く、相互理解の進んだ関係を築けています。 日本が独立を回復したのは朝鮮戦争の最中で、沖縄返還もベトナム戦争の時期でした。米国の軍はともに決定に反対でした。ところが、米国の政治指導者は、軍事的便宜を乗り越え、日米の長期的友好を優先する判断をしました。米国は、日本政府が本気で望むことに対しては、案外ていねいな対応をしています。 ■ ■Q:一方、日米は対等でないとの批判もありますが。A:世界一の超大国と対等な国などありません。軍事的な面でみれば、ずいぶん長い間、米国と日本は大人と赤ちゃんのようなものでした。戦後日本は、安全保障を米国に頼り、経済発展に専念してきた。『同盟』という言葉が、外交文書で使われるようになったのは、1970年代末の大平正芳内閣のとき。 米国がベトナム戦争で傷ついて国力がどん底になり、他方、日本がGNP1%の枠内で着実に防衛力を整備し、無視しがたいレベルに達した。さらに冷戦終結後、北朝鮮危機や中国の台頭をにらんで、橋本・クリントン時代に日米安保を再定義し、東アジアの安定のための公共財として位置づけられたのです。こうして日米関係は、米国のアジア政策の中軸となりました。 ただし、課題が依然としてあります。米外交に、日本は非常に幻惑されやすいのです。Q:幻惑されやすいとは。A:米外交は一つの原理で動いているわけではありません。私の恩師である故高坂正尭(まさたか)・京大教授は、国家を『力の体系』『利益の体系』『価値の体系』であると考えました。米国は、この三つを強烈に持っています。 第1次世界大戦に参戦したウィルソン大統領は、『民主主義のための戦争』と説きました。米外交は、はばからず価値を前面に立てる。また『ドル外交』という言葉があるように、経済的利益もよどみなく追求します。経済は相互利益をもたらすものであり、平和の基礎だと考えている。忘れてはいけないのは、力の側面です。米国はアジアにおいて一つの国が排他的に支配することを嫌う。戦前のロシアや日本、現在は中国が問題ですね。三つのレベルで米外交を複眼的に見ることが必要です。Q:オバマ外交には、あまり「力の体系」を感じませんが。A:力の面では、オバマは甘い政権でしょう。カーター政権(77~81年)がベトナム戦争の傷に苦しんだように、オバマはアフガニスタンとイラクの戦争を終えその傷を癒やす役割を担っています。しかし、米外交は振り子の原理で動く。次の政権は、力の行使に敏感な政権になるでしょう。 南シナ海における中国の現状変更を認めないと、オバマ政権は遅ればせながら立場を明確にしました。単に言葉だけではないかと思いがちですが、次の政権が自由に行動する根拠を与えているのです。戦前、日本が満州を侵略したとき、スチムソン国務長官は不承認政策をとった。日本の軍部は、高をくくったが、結局その後、中国をめぐって日米は戦争に突入した。米外交の原則を軽く見るのは危うい。Q:日米関係と中国との関係は今後どうなるでしょうか。A:日本からみると、日米同盟は巨大な存在です。しかし、米国にとっては、あくまでも多くの国際関係のひとつ、ワン・オブ・ゼムなんです。 歴史的に見ると、中国がアジアの大国でした。米国にとって、アジアの中心大国に復帰する中国の絶対値はプラス・マイナスを含めて大きくならざるを得ないでしょう。しかし、だからといって、日米関係を軽視するほど米外交は幼稚ではありません。だからこそ、日米同盟はとりわけ重要だとの判断が基調です。 ■ ■Q:米国は、日本の指導者をどう見ているのでしょうか。A:戦後ワシントンであつく歓迎された首相は、ことごとくアジアとの関係をうまくこなした人です。岸信介は57年の訪米前に東南アジアを回り、やっかいだった戦争の賠償問題に道筋をつけました。佐藤栄作も、訪米前にアジア・太平洋諸国を巡った。中曽根康弘は、就任直後に韓国を電撃訪問した。 同盟の価値は、日本がアジアでよき世話役を務めているからこそ高まります。周辺国といがみ合ってばかりいると、米国が仲裁のコストを払わねばならない。いま日韓関係が悪いことが日米同盟にマイナスなのは、明らかです。 日本外交にとって、米国とアジアは二者択一ではありません。日米同盟は大変な資産であり、ますます大事にすべきですが、アジアをぞんざいに扱ってはいけない。20世紀の日本は、米中両国と戦争をして国を滅ぼしました。そこから学ばねばなりません。 かつて私も参加した小渕恵三首相の諮問機関『21世紀日本の構想』懇談会は、東アジアにおける協力関係を一段と強化すべきだとして『隣交』を提案した。日米同盟+アジアの『隣交』です。中国とは少なくともけんかをしない、利益を共有できる関係を保つことです。Q:日中間は、歴史問題が大きな障害となっています。A:和解には相手があることですが、まずは、日本側がほんとうにすまなかったという思いを率直に表明することです。私たちにとって戦争は大昔かもしれませんが、侵略された側にとっては身近な過去なのです。そして、中国側が、戦後日本の平和的発展を評価し、『父祖の代は苦しんだが、いまのあなたたちの世代の責任ではないので、寛容な気持ちが持てる』という言葉を返せれば、戦後日本の平和的発展を評価すれば、ともに前に進めるのです。Q:それは可能でしょうか。A:第1次安倍政権から福田康夫政権にかけて、中国の指導者が、戦後日本の平和的発展を評価し、日本の開発援助に感謝を表明した時期がありました。その後またいがみ合いに戻ってしまいましたが、あの信頼関係を再構築せねばなりません。Q:我々自身も、戦後日本に自信を持たねばなりませんね。A:戦後日本は『力の体系』一辺倒の国家を反省し、『利益の体系』一辺倒で経済大国になったように見えます。しかし、大切に育んだ価値もあります。青年海外協力隊は今年で50年になりますが、日本の開発援助は、欧米とはひと味違って、途上国の底辺まで入り、現地の人と同じ目線で国造りに努力してきた。 人に優しい日本の価値外交です。価値外交とは、民主主義や人権などの理念を振りかざすだけではありません。こういう生き方が、国際世論調査における日本の高い評価を支えています。その資産は今後も大切にしたいものです。 *五百旗頭真:43年生まれ。熊本県立大理事長。神戸大教授、防衛大学校長を歴任。著書に「米国の日本占領政策」「占領期 首相たちの新日本」など。<取材を終えて> 小泉首相による自衛隊のイラク派遣、戦争をめぐる政府見解を否定した田母神俊雄・航空幕僚長の発言など、節目節目で五百旗頭さんは批判的見解を明らかにしてきた。ときにはバッシングも浴びたが、筋を通した。背景にあるのは、冷徹なリアリズムと、歴史から謙虚に学ぼうとする健全なナショナリズムである。保守主義が本来持っているはずの美質が、そこにある。(編集委員・三浦俊章)米国との間合い百旗頭真2015.8.06 この記事も朝日のインタビュー記事スクラップに収めておきます。
2015.08.07
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ジョン・ダワーさんがインタビューで「国民が守り育てた反軍事の精神、それこそが独自性」と説いているので、紹介します。安部さんの70年談話にダワーさんを引用すれば、格調高くなるのだが・・・それはないか(笑)。(ジョン・ダワーさんへのインタビューを8/04デジタル朝日から転記しました) あの戦争が終わって70年、日本は立つべき場所を見失いかけているようにみえる。私たちは何を誇りにし、どのように過去を受け止めるべきなのか。国を愛するとは、どういうことなのか。名著「敗北を抱きしめて」で、敗戦直後の日本人の姿を活写した米国の歴史家の声に、耳をすませてみる。Q:戦後70年を振り返り、日本が成したこと、評価できることは何だと考えますか。A:以前、外務省の高官から『日本はソフトパワーを重視する』と聞かされたことがあります。日本車、和食、漫画やアニメ、ポップカルチャー。世界が賛美するものは確かに多い。しかし、例えばハローキティが外交上の力になるかといえば、違うでしょう。世界中が知っている日本の本当のソフトパワーは、現憲法下で反軍事的な政策を守り続けてきたことです。 1946年に日本国憲法の草案を作ったのは米国です。しかし、現在まで憲法が変えられなかったのは、日本人が反軍事の理念を尊重してきたからであり、決して米国の意向ではなかった。これは称賛に値するソフトパワーです。変えたいというのなら変えられたのだから、米国に押しつけられたと考えるのは間違っている。憲法は、日本をどんな国とも違う国にしました。Q:その理念は、なぜ、どこから生じたのでしょうか。A:日本のソフトパワー、反軍事の精神は、政府の主導ではなく、国民の側から生まれ育ったものです。敗戦直後は極めて苦しい時代でしたが、多くの理想主義と根源的な問いがありました。平和と民主主義という言葉は、疲れ果て、困窮した多くの日本人にとって、とても大きな意味を持った。これは、戦争に勝った米国が持ち得なかった経験です。 幅広い民衆による平和と民主主義への共感は、高度成長を経ても続きました。敗戦直後に加えて、もう一つの重要な時期は、60年代の市民運動の盛り上がりでしょう。反公害運動やベトナム反戦、沖縄返還など、この時期、日本国民は民主主義を自らの手につかみとり、声を上げなければならないと考えました。女性たちも発言を始め、戦後の歴史で大切な役割を果たしていきます。Q:政治は何をしたでしょう。A:私の最初の著書は吉田茂首相についてのものですが、彼の存在は大きかった。朝鮮戦争の頃、国務長官になるジョン・ダレスは、憲法改正を要求してきました。吉田首相は、こう言い返した。女性たちが必ず反対するから、改憲は不可能だ。女性に投票権を与えたのはあなた方ですよ、と。 その決断はたいへん賢明だったと思います。もし改憲に踏み込めば、米国はきっと日本に朝鮮半島への派兵を求めるだろうと彼は思った。終戦のわずか5年後に、日本人が海外に出て行って戦うようなことがあれば、国の破滅につながると考えたのです。 その決断の後、今にいたるまで憲法は変えられていません。結果、朝鮮半島やベトナムに部隊を送らずに済んだ。もし9条がなければ、イラクやアフガニスタンでも実戦に参加していたでしょう。米国の戦争に巻き込まれ、日本が海外派兵するような事態を憲法が防ぎました。 ■ ■Q:現政権が進める安保法制で、何が変わると思いますか。A:日本のソフトパワーが試練にさらされています。集団的自衛権の行使に踏み込み、日本を『普通の国』にするというのが保守政治家らの考えですが、普通とは何を指すのか、私には分かりません。国際的な平和維持に貢献するといいつつ、念頭にあるのは米軍とのさらなる協力でしょう。米国は軍事政策が圧倒的な影響力を持っている特殊な国であり、核兵器も持っている。そんな国の軍隊と密接につながるのが、果たして普通なのでしょうか。Q:戦後の日本外交は、米国との関係を軸にしてきました。A:日本の外交防衛政策を知りたければ、東京でなくワシントンを見ろとよく言われます。環太平洋経済連携協定(TPP)への参加しかり、アジアインフラ投資銀行(AIIB)加盟についての判断しかり。核戦略を含め、米国の政策を何でも支持するのが日本政府です。その意味で、戦後日本の姿は、いわば『従属的独立』だと考えます。独立はしているものの、決して米国と対等ではない。 過去を振り返れば、安倍晋三首相がよく引き合いに出す、祖父の岸信介首相が思い浮かびます。岸首相は確かに有能な政治家ではありましたが、従属的な日米関係を固定化する土台を作った人だと私は考えています。 同様に、孫の安倍首相が進める安全保障政策や憲法改正によって、日本が対米自立を高めることはないと私は思います。逆に、ますます日本は米国に従属するようになる。その意味で、安倍首相をナショナリストと呼ぶことには矛盾を感じます。Q:現在のアジア情勢を見れば、米軍とのさらなる協力が不可欠だという意見もあります。A:尖閣諸島や南シナ海をめぐる中国の振る舞いに緊張が高まっている今、アジアにおける安全保障政策は確かに難題です。民主党の鳩山政権は『東アジア共同体』構想を唱えましたが、それに見合う力量はなく、米国によって完全につぶされました。 だからといって、米軍と一体化するのが最善とは思えません。冷戦後の米国は、世界のどんな地域でも米軍が優位に立ち続けるべきだと考えています。中国近海を含んだすべての沿岸海域を米国が管理するという考えです。これを米国は防衛と呼び、中国は挑発と見なす。米中のパワーゲームに日本が取り込まれています。ここから抜け出すのは難しいですが、日本のソフトパワーによって解決策を見いだすべきです。 ■ ■Q:対外的な強硬姿勢を支持する人も増えています。A:ナショナリズムの隆盛は世界的な文脈で考えるべきで、日本だけの問題ではありません。今、世界のいたるところで排外主義的な思想がはびこり、右派政治の出現とつながっています。グローバル化による格差が緊張と不安定を生み、混乱と不安が広がる。 そんな時、他国、他宗教、他集団と比べて、自分が属する国や集まりこそが優れており、絶対に正しいのだという考えは、心の平穏をもたらします。そしてソーシャルメディアが一部の声をさらに増殖して広める。これは、20年前にはなかった現象です」 北朝鮮や中国は脅威のように映りますが、本当に恐ろしいのはナショナリズムの連鎖です。国内の動きが他国を刺激し、さらに緊張を高める。日本にはぜひ、この熱を冷まして欲しいのです。Q:では、日本のソフトパワーで何ができるでしょうか。A:福島で原発事故が起き、さらに憲法がひねり潰されそうになっている今、過去のように国民から大きな声が上がるかどうかが問題でしょう。今の政策に国民は疑問を感じています。安倍首相は自らの信念を貫くために法治主義をゆがめ、解釈によって憲法違反に踏み込もうとしている。そこで、多くの国民が『ちょっと待って』と言い始めたように見えます。 繰り返しますが、戦後日本で私が最も称賛したいのは、下から湧き上がった動きです。国民は70年の長きにわたって、平和と民主主義の理念を守り続けてきた。このことこそ、日本人は誇るべきでしょう。一部の人たちは戦前や戦時の日本の誇りを重視し、歴史認識を変えようとしていますが、それは間違っている。 本当に偉大な国は、自分たちの過去も批判しなければなりません。日本も、そして米国も、戦争中に多くの恥ずべき行為をしており、それは自ら批判しなければならない。郷土を愛することを英語でパトリオティズムと言います。 狭量で不寛容なナショナリズムとは異なり、これは正当な思いです。すべての国は称賛され、尊敬されるべきものを持っている。そして自国を愛するからこそ、人々は過去を反省し、変革を起こそうとするのです。 *John Dower:38年生まれ。マサチューセッツ工科大学名誉教授。著作に「吉田茂とその時代」、ピュリツァー賞受賞の「敗北を抱きしめて」など。<取材を終えて> とても大切なものなのに、思いのほか、本人は気づいていない。外から言われて、かけがえのなさを知る。よくあることだ。敗戦後に日本が手にしたものこそ世界に誇りうる、という指摘にはっとした。そうか、自分たちの手元を見つめればいいんだ。 戦後の日本人は立場を問わず、自らの国を愛することに不器用になっていたのだろう。反発したり、逆に突っ走ったり、どこかの国に依存したり。愛国という言葉に素直になれない。70年前、形容しがたいほど惨めで痛ましい敗戦を経験し、国家への信頼を一度、完全に失ったのだから、それも当然なのだが。 戦後70年の夏は、この宿題に向き合う好機かもしれない。国家という抽象的なものではなく、戦後を生き抜いた一人ひとりの道程にこそ、よって立つ足場がある。 (ニューヨーク支局長・真鍋弘樹)日本の誇るべき力ジョン・ダワー2015.8.04 この記事も朝日のインタビュー記事スクラップに収めておきます。
2015.08.05
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万国国際法学会会長レイン・ミュルレルソンさんがインタビューで「働かない国際法、背景に米一極支配」と説いているので、紹介します。やはり、アメリカの強引な価値観が中東全体に混乱をもたらしたようですね。(ミュルレルソンさんへのインタビューを2/05デジタル朝日から転記しました)中東では過激派組織「イスラム国」が暴力をむき出しにする。1年近く前、ロシアがクリミア半島併合に動いたウクライナでは東部での戦闘がまた激化している。「力」が横行する世界の現状をどう見るか。国際社会はどう対応すべきか。世界の秩序を律する役割を期待されるのが国際法だ。内外の代表的な研究者の意見を聞いた。■万国国際法学会会長、レイン・ミュルレルソンさん 《主権国家を基本にする国際社会の秩序を律して、紛争解決の枠組みとなる――。国際関係で国際法はそうした役割を求められている。旧ソ連生まれのミュルレルソン氏はゴルバチョフ元大統領の国際法顧問として、西側諸国との相互依存や協調に基づく「新思考外交」を支えた。》Q:世界各地で深刻な紛争や事件が続き、国際法がその役割を十分に果たせないでいる現状を、専門家としてどう見ますか。まず「イスラム国」については。A:中東のテロリストにより日本人も殺害されたことはすべての良心ある者、人類にとっての悲劇です。犠牲となられた方々に、私は深く哀悼の意を表します。 国際法との絡みで答えるならば、『内政不干渉』や『武力不行使』などの国際法の原則を無視し、自由とか民主主義をアフガニスタンやイラクにまでも武力で広げようとした米国の試みが、『イスラム国』のようなテロ組織を生んだ大きな要因だったといえるでしょう。自分たちとは別の世界に属するといえるこれらの国々に自分たちの価値観を植えつけることができる。そんな米国の単純素朴さが、中東全体に混乱をもたらしてしまったのです。Q:世界の多くの地域の人々に、自由や民主主義への志向や期待があることは事実ではないですか。A:確かに世界には、民主主義を拡大する余地、その民主的な達成を深化させる余地はあるでしょう。けれど、歴史は民主主義や市場経済の勝利に不可避的に向かうのだから、これを後押しするべきだという考え方には、大きな問題があります。 これまでの人類史を見る限り、いかなる社会、経済、政治システムも長期間そのままの姿を保ったものはない。民主主義が例外であるとは言えないと私は考えています。Q:そうはいっても、独裁体制による人権抑圧や大量破壊兵器開発などの脅威に、国際社会は何らかの形で対応せざるをえません。A:2011年に米英仏中心の多国籍軍の介入によってカダフィ体制が崩壊したリビアでは、その後過激派が台頭し、安定とはほど遠い。リビアでもフセイン体制崩壊後のイラクでも、これらの国の体制転換を唱えた人々がめざした状態は訪れていません。民主主義を急いで進展させようとする試みは、深刻な紛争や内戦などの大変動をつくり出しました。 米国という超大国が国際法を自分なりに解釈して行動する一極的世界の下では、国際法はよく機能できないということです。事態の改善のためには、米国とその伝統的な同盟国だけでなく、幅広い国際社会の合意形成が必要です。しかし、今の米国はまだ、こうした目的のために、どこの国であろうと平等な立場で合意をしたくはありません。 ■ ■《ソ連が崩壊した1991年、ミュルレルソン氏は父祖の地であるエストニアに戻り、第1外務次官として、欧米とロシアが勢力を競うバルト海沿岸で、独立して間もない国の外交の舵取りに当たった。その地政学的条件はウクライナと似ている。》Q:ロシアは昨年3月にクリミア半島を併合しました。「国際法に違反して、ウクライナとの国境の現状を力で変えた」と国際的にきびしく批判されています。A:ロシアは確かに国際法を破りました。プーチン大統領自身、クリミア併合を国際法違反であると間接的に認めたと受け取れる発言をしています。これまでプーチン氏は、コソボのセルビアからの独立について、『力による現状の変更で国際法違反』と主張してきました。Q:北大西洋条約機構(NATO)による99年のセルビア空爆で米欧がコソボ紛争に「力」で介入し、独立へと導いたというわけですね。A:そうです。それが今回、クリミア併合を語る際に『コソボでもそうだったように』と、併合を正当化する前例として使いました。米欧にできることならロシアにも同じことができるはずだという理屈です。 プーチン氏がこれほど攻撃的なのは、昨年2月にヤヌコビッチ政権の崩壊に至ったウクライナの政変の背景に、安全保障や経済の点でロシアに極めて重要な隣国の体制を転換しようとする米欧の狙いをみたからです。米国の上院議員や国務省高官たちが政権崩壊前、ウクライナの首都キエフで反政府派勢力を公然と後押ししました。これもまた国際法の『内政不干渉』の原則に抵触しかねない、大変に危険な傾向でした。 ありていに言ってしまえば米国にとってもロシアにとっても、重要なのは国際法の順守ではない。大国として、自分たちに有利な世界秩序を形成する争いにいかに勝つかが、何よりも重要なのです。ロシアにも米国にも自分の利益があり、その二つの利益がウクライナをめぐって衝突した。それがウクライナ危機の本質なのです。Q:大国が事実上国際法を侵犯して様々な紛争が起きている。そんな状況を少しでも変えていくためにはどうするべきでしょうか。A:米国とソ連が激しく争っていた冷戦時代、国際法は大変によく働いていたとはいえませんが、それでも米ソのお互いの牽制(けんせい)によって、いまよりも機能していました。既に述べたように、冷戦後に米国という超大国の行動へのチェック役がいなくなったことが国際法の機能を弱めました。注意すべきなのは、現在が、米国一極支配が次の段階に至る移行期であるという点です。 米国が、自らの求めるものを得るために世界で自由に力を行使することは次第にできなくなってきました。経済では中国が数年後には追いつくことができるでしょう。中国やロシアなどの新興大国の利益や立場を国際秩序に、もっと反映させていくことが必要だと思います。 米ドルが依然基軸通貨であるため、米国は他国にしわ寄せする形で有利な環境をつくれます。そこが中国などには不満なのです。国際社会をより安定させて国家間の不信や紛争の原因を減らすには、米国、欧州連合(EU)、中国、ロシア、日本、インド、ブラジルなど、世界の『極』になるべき国々が協力し合う体制をつくらねばなりません。 ■ ■Q:「極」として主張するプレーヤーが増えれば増えるほど、協力への合意形成は難しくなりませんか。A:たとえば環境など、多くの国が協力しやすい具体的な問題から、解決していくための努力を共に重ねることがまず必要でしょう。こうした努力もせず、国家間の意思疎通が十分とれずに『極』同士が勢力を競い合うままでは、『武力不行使』や『内政不干渉』といった国際法の基本原則が機能することはますます難しくなり、暴力の応酬もよりエスカレートしかねません。新しい時代に対応して、そんな危機感を持つことが国際社会にはもっと求められるのではないでしょうか。Q:「多極化に向かう新しい時代」という観点から、中東問題の解決策を提案してもらえますか。たとえばイランは『イスラム国』が敵視するシーア派の大国ですが。A:確かに中東では、力の中心、地域の大国としてイランが存在感を一層強めつつあります。イランは安定した国家であり、アラブの君主国よりはずっと民主的です。イラン抜きに中東の様々な問題を解決するのは非常に難しい。活用しないで良いはずがありません。 米国とロシアの関係は全体としては悪いけれども、イランの核開発問題に関する交渉ではロシアは米欧とよい協力を続けています。ロシアがイランに対して影響力を持っていることが、その背景にあります。やはりロシアが友好関係にあるシリアの化学兵器廃棄でも、米ロは協力できました。イラクの混乱収拾に向けても、ロシアと米欧はこのように協力することができるはずだし、しなくてはいけません。 徐々に、たとえ小さな一歩であっても、こうした協力を世界各地で拡大していくことが大切なのです。 *Rein Mullerson:1944年生まれ。エストニアのタリン大学教授。2013年から万国国際法学会会長。同学会は1904年に「国家間紛争の平和的解決への貢献」でノーベル平和賞を受賞している。■時代にあった国連改革こそ 人権教育啓発推進センター理事長・横田洋三さん 「イスラム国」は国際法上の国家ではない武装集団ですが、いまの国際法の下でも戦時国際法が適用されます。禁止された戦争犯罪を行った「イスラム国」の責任者は今後、ハーグの国際刑事裁判所(ICC)で裁かれる可能性があります。 現状ではその責任者たちをすぐに逮捕し裁判にかけることはできないので、当面、影響力を低下させるための軍事的措置を国連の下でとる必要があります。安保理の「世界の平和への脅威」という決議の下に、有志連合や安保理が組織する平和活動による、何らかの強制行動による対応を進めるべきでしょう。 この議論はまだありませんが、今日の国際法体系から出てくるひとつの対応策だと考えます。その際にネックとなるのは、活動の中心となるべき米国の国内世論です。安保理ではロシアや中国が拒否権を行使すれば決議は通りませんが、そのために妥協することは、米国内では「外交の失敗」と受け止められてしまう。 イラク戦争のときもそうでした。本来は安保理決議の下で行動すべきだったのに、米国はそれを回避して一方的に軍事行動をとった。その結果大きな代償を支払うことになり、今日の中東の混乱、そして「イスラム国」の脅威というリスクを負うことになってしまったのです。 背景にあるのは、米国の支配力は落ちてきているのに、米国の一般国民が政府ほどにはその現実を認識していないギャップです。「自由と民主主義」を掲げ、米国を基準に世界をつくれば世界は平和になり繁栄するという楽観論がまだ支配的です。任期末まで指導力を維持し、歴史に名の残る大統領になりたいオバマ氏には国民の意識を変えたいけれども変えられないジレンマがあります。 いまの国際関係では、国連および国連を中心にした国際機構の働きを無視しては、もはや政治も経済も語れません。米国も国連秩序を前提にしないと動けなくなっています。 その国連は、今年創設70周年を迎えますが、国際社会の変化は大きく、時代にそぐわない部分が見えてきました。その典型が世界の平和に責任を負う安保理の構成や手続きです。最近の世界情勢は、政治経済の実態や国際社会の民意をより的確に反映する国連改革を求めています。 当面は、安保理常任理事国5大国の拒否権行使の制限や、拒否権を持たない常任理事国の枠の創設などの検討がなされるべきでしょう。(聞き手はいずれも機動特派員・大野正美)暴力、鎮めるためにレイン・ミュルレルソン2015.2.05
2015.02.06
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マイケル・グリーン米戦略国際問題研究所副所長がインタビューで「領土奪還目的なら地域に武力容認論、日本も抑止に必要」と説いているので、紹介します。ウクライナやベトナム沖の領土問題に端を発し、むき出しの帝国主義が見られようになったが・・・新冷戦とも例えられる中華帝国の出現に対して、世界はどう対応するか問われているわけですね。有力なジャパン・ハンドラーズとして知られるマイケル・グリーン氏であるが・・・ワシントンの戦略専門家であるだけに、日本の味方として頼りきることはできないはずですね。(マイケル・グリーン米戦略国際問題研究所副所長へのインタビューを6/20デジタル朝日から転記しました) 日米中を含む、アジア太平洋の主要11カ国・地域の外交・安保専門家に実施したアンケートから、米国の「アジア回帰」(リバランス)に対する圧倒的支持と中国の孤立化がはっきりした。調査を主導した米有力シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン副所長にアジア太平洋のパワーバランスの変化を読み解いてもらった。Q:CSISアジア外交識者アンケートの結果、中国を除く調査対象国・地域の間では、米国の「アジア回帰」に対する支持が平均で約85%と、非常に高いことが分かりました。中国への懸念でしょうかA:そうだと思う。中国の要素がなければ、もっと低かっただろう。地域諸国は、米国がアジアで第1の大国でありつづけることを求めている。前回(2008~09年)の調査と、はっきり異なる点だ。 地域諸国は、米国に挑戦する大国がいなければ、米国が各国の文化や経済に影響力を及ぼそうとするのではないか、と懸念する。しかし、中国のような大国がいていろいろと強制してくると、米国について不満を言う余裕はなくなる。 目を見張るのは、米国の『アジア回帰』について、中国以外はいずれも『中国に対して敵対的だ』とは答えなかったことだ。中国にとって重要な教訓だ。Q:しかし、「今後10年後に経済的に最も重要な国はどこか」という質問に対して、「中国」と答えた人は各国・地域平均で56%。「米国」はその半分の28%でしたA:多くの国々にとって、対中貿易は対米貿易よりも早く増えていくという傾向を反映したものであって、(経済の)実態を示したものではないと思う。中国経済は今後、ますますグローバルな生産ネットワークや資金の流れに組み込まれていく。中国が独裁的な経済システムを構築できるということにはならない。 ■ ■Q:韓国や豪州といった中国をより重要なパートナーと見る国と、日本やインドなど米国を最重要視する国との間で二極化が進んでいますA:米国の同盟国が中国と経済関係を深めると同時に、米国と安全保障関係を深められるか、という問題を提起している。シンガポールのような通商国家は慣れているだろうが、韓国や豪州には新しいことだ。特に韓国だ。前回調査では中国との経済関係より中国の脅威に焦点を当てていた。それが今は親米ではあるものの、中国により温和な見方をしている。もう一つの違いは、日本に対してずっと否定的になったことだ。Q:韓国は、地域の権力構造が米中主導のいわゆる「G2」、あるいは二極支配に向けて変化していると見ているのではA:確かにそういう計算があると思う。韓国では米中の『新型大国関係』の議論をよく聞く。ジレンマが解消できるのだ。つまり一方で、李明博・前大統領時代に悪化した中国との関係を改善させ、同時に、米韓同盟を強化したいと考えている。 青瓦台(韓国大統領府)は、その両方を満足させるには日本との距離をさらに大きくとればよいと考えている。しかし米国が利益を損なうと思っていることに気づき、調整している。韓国の『対中傾斜』はすでにピークに達していて、徐々に解消されると思う。米国は日本に対しては歴史問題を慎重に扱い、関係を悪化させないでほしいと願っている。 ■ ■Q:他の多くの調査対象国と同様、日中ともに8割以上が、奪われた領土を取り返すためなら武力行使を支持すると答えましたA:日本の政策専門家たちが、武力の行使に極めて積極的なことは、注目すべきだ。抑止のために重要だ。この結果に東南アジア諸国の多くが強い警戒感を持つとは思わない。そもそもフィリピン、ベトナム、マレーシアは、日本に断固たる姿勢をとってほしいと思っているからだ。 歴史問題が軍事衝突の原因になりうるかという質問に対し、中国での『なると思う』という回答は、日本の約2倍あった。これは警戒を要する。Q:東アジアでの共同体構築に対する最大の障害は「領土問題の解決の失敗」という結果が出ましたA:5年前の前回調査では、共通の政治システムの不在や、経済発展の段階の違いが主要なもので、安全保障問題に焦点は当たっていなかった。要するに、中国が軍事力や経済力をテコにした強制力をより積極的に使うようになったということで、決定的な変化だ。Q:尖閣諸島問題をめぐっては、日中間で緊張が高まったままですA:安倍晋三氏が首相になる以前、日本の姿勢は非常に予測しにくかった。安倍首相はこの点、非常にはっきりしている。指導者の決意が決定的に重要だ。今、中国がベトナムにしかけているようなことを抑止するのは、まさに日本の首相の決意だからだ。しかし、それだけでは不十分だ。中国の戦略は日米の分断だからだ。その手法は、日本を挑発して過剰反応をさせ、米国に紛争に巻き込まれる不安を抱かせることだ。実際、中国は『安倍政権は危険だ』『米国は日本を封じ込めるべきだ』という説得工作を、ワシントンなどで盛んにしている。Q:効果は上がっていますかA:いや。それはオバマ大統領が訪日した際に、日米安保条約第5条が尖閣諸島にも適用されると発言したことで明らかだと思う。心配なのは、その大統領発言に中国が衝撃を受け、憤ったということだ。中国は対米説得工作が効果をあげていると誤解していた、ということだ。 ■ ■Q:米国の政策エリートが「民主主義」「人権」といった普遍的価値から離れる傾向が見えますA:世界全体が法の支配、民主主義の規範などを兼ね備え、米国と同じようになってほしいと考えていることに疑いはない。それが過去100年以上にわたり、米国のアジア政策の不可欠な要素となっている。ところが今回の調査では、こうした価値を広めることに対する支持が明確に落ちている。衝撃を感じた。Q:なぜでしょうA:複数の要素が作用していると思う。その第一は中東だ。アフガニスタンやイラクでの選挙や民主主義は成果をあげていない。『アラブの春』も結局大きな失望で終わった。中東での民主化プロセスは、どこでも悲惨な結果になった。米国が手を出せば常にやけどをした。第二の理由は、オバマ大統領がこの問題を話さないということだ。ライス大統領補佐官(国家安全保障担当)など政権の幹部も、アジアでの民主主義的価値の重要性について、クリントン元大統領やブッシュ前大統領のようには語らない。これは米国にとって非常に大きな戦略的死角、失敗だ。Q:価値外交と言えば、ロシアのウクライナ問題への対応をめぐって日米がギクシャクしています。米国は、日本が領土保全、内政不干渉といった原理原則を軽視して、ロシアとの外交関係維持を図ろうとしていると批判していますA:安倍政権だけでなく日本の政権はいずれも、石油や天然ガスを産出する国に対して制裁を科すことには消極的だ。ミャンマーやイランに対してもそうだった。しかし今回のケースでは、日本はG7(主要7カ国)と同調すべきだ。そうしないと東シナ海問題に悪い影響が出る。それにもしリスクを冒してまで日本がロシアとの関係維持に走ったとしても、日本が得られる利益は限られる。プーチン大統領は決して北方領土問題で譲歩をしたりはしない。むしろ旧ソ連を再建しようとしている。Q:日本政府の狙いは、中ロが一緒に日米に対抗する事態を防ごうということですA:それこそ単純な戦略思考だ。よく考えてほしい。ロシアと中国が接近するのは、お互いに都合が良いからにすぎない。しかし、いずれ中国はブレーキを踏む。プーチンの味方をすることで米国と対立するつもりはないからだ。一方、ロシアが中国と一緒に行動することにも限界がある。極東地域で中国の圧倒的に多い人口を恐れているからだ。Q:ウクライナ問題は東シナ海にどんな悪影響を及ぼすのですかA:まず、もしプーチンが西側諸国から有効な対抗措置を受けずに、この併合をやりおおせたら、中国が東シナ海や南シナ海で同じような戦術をとっても、ヨーロッパや米国は対抗措置をとらないかもしれない、世界規模での対応は期待できない、ということになる。もう一点は、もし日本が足並みを乱したら、米国が不満を抱くのを世界が見るということだ。中国に、日米同盟にくさびを打ち込む機会を与えることになる。 *マイケル・グリーン:米戦略国際問題研究所副所長 1961年生まれ。日米関係、アジア政策の専門家。ブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)でアジア上級部長。<取材を終えて> 米中は新冷戦に突入するのか――中国の先鋭化と、米国の対中批判の強化を受けて、最近、国際会議でよく出る質問だ。グリーン氏は、そう単純ではない地域の状況を最近の独自の調査結果を踏まえて説明した。その視野の先にあるのは、米国をハブ(拠点)とした新たな地域秩序の構築だ。日本も「しかける」のか、従属変数で終わるのか。それが問われている。(編集委員・加藤洋一)中国も怖いがイスラムのテロを呼び込むのも怖い。 集団的自衛権とは、アメリカの敵を、日本の敵にするようなものである。 そのあたりを天秤にかけるのが、真の安全保障ではないだろうか。もうひとりのジャパン・ハンドラーズとしてカート・キャンベル氏へのインタビューを・米の「アジア回帰」外交 2013.02.09に見てみましょう。変わるアジア太平洋2014.6.20
2014.06.23
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G7の場で、安部さんが中国の無法な行動について批判したが・・・・良い悪いは別にして、安部さんは日米同盟をバックにしているわけです。昨今のきな臭い情勢もあり・・・2009年に刊行された『日米同盟の正体』という本を再読しているのだが、4年を経て時代がこの本に追いついた感があるのです。著者の孫崎さんが、この本の最終章「日本の進むべき道」で、卓見を述べているので、その一部を紹介します。<日本独自の道を再評価する必要性>よりp248~250 戦後の日本は、自らの選択ではなかったが、軍事を捨て経済に特化するというモデルを採用した。結果として、グローバリズムが深化し、経済の相互依存性が高まる中で、この行き方が自国の安全を確保する手段となっている。これはキッシンジャーなどが予想しなかった安全保障政策である。 振り返ってみると、戦後日本は国家の行き方として新しいモデルを構築した。そして日本は自己の経済力を高めるにつれ、外交を活発化させた。その中で自己のモデルを他国に押し付けてはいない。しかし、日本と同じモデルを志向するなら、その自助努力を支援する態勢をとった。恵みではない。支援である。 今日、日本くらい、国内秩序が優れた国は世界中にほとんどない。昭和30年代(1950年代後半~60年代前半)の日本は、経済成長の過程で、鉄鋼や自動車など重要産業分野で国際水準に追いつく努力をする一方、弱者を国際的にも国内的にも見捨てなかった。 国内では、地方、農村、中小企業等弱者支援のシステムを作った。国際的には、円借款で発展途上国が自ら立ち上がるのを助けた。1960年前後、日本は自分自身が苦しい中、懸命に弱者の国を救うシステムを作った。(中略) 1981年、アラファトPLO議長を国賓待遇で最初に招待したのは日本である。国際的非難の中にあるカンボジアやミャンマーにも支援の手を差しのべた。 1989年の天安門事件後、G7で閣僚級の中国への親善訪問を禁止した時、親善ではなく交渉であるとして、G7の閣僚で最初に中国を訪問したのは橋本龍太郎蔵相(当時)である。93年にはイスラム原理主義の国家として警戒されていたイランに円借款を供与した。 かつての日本外交は、悪と判断された国も切り捨てるのでなく、西側の価値観を共有できる国へ誘導することを目指した。この努力は今日の日本に対する好意的視線を形成する上で貢献した。 支援の中核となる円借款の貴重な資金源は郵便貯金であった。しかし、日本は郵政を民営化した。地方、農村、中小企業の弱者支援のシステムは今後崩壊してゆく。われわれは本当に弱者救済のシステムを捨てなければならなかったのであろうか。将来、弱者切捨ては社会不安として必ず反動が出てくるだろう。 過去の日本的行き方は国際的にも評価されてきた。世界で最も望ましいと見られる行き方かもしれない。日本が持つ日本的なものの価値を見直してもよいのではないか。 日本への好感度は国の安全保障分野に影響を与えるのみではない。敗戦後、日本に対する政治的評価の厳しい時代、国際社会に出て行った人は、日本の否定的イメージを背負い苦労した。今日、日本人は海外での商談や安全面や個人的つきあいで、日本の好感度の恩恵をいかに受けているか。逆に、日本以外の国民で自国ブランドの評価が低いため、不当に扱われたと嘆く人は多い。個人や企業は、各々の資質や能力を超えて得る日本というプラス・イメージの価値を理解し、その育成に積極的になっていいのではないか。外務官僚だった孫崎さんだから、古巣の政策を肯定する気持ちが含まれているかも知れないけど・・・まあ、卓見だと思ったわけです。なお、次のくだりに日米同盟の本質が表れているかも知れないですね。<日本はなぜ核抑止力を考えてこなかったか>よりp219~222 日本の隣国、ロシアと中国は核保有国である。さらに北朝鮮は核保有国への道を進んでいる。この状況を考えれば、論理的には、日本で核問題を議論するのは当然である。 第二次大戦以降の基本軍事戦略は、相手国が武力攻撃を行わない最終的担保は、攻撃する国に攻撃以上の被害を与えることとしている。この点に議論の余地はない。では日本はなぜこの基本戦略に基き、核兵器保有問題を議論してこなかったのであろうか。 一つに日本の被爆国としての特異性がある。「ノー・モア・ヒロシマ」は国民一体の強い願いである。 しかし、われわれはもう一つの要因、米国の意向という要素に留意しておく必要がある。マイケル・グリーンは前掲論文「力のバランス」で次のように記している(要約)。「サンフランシスコ講和会議時、ダレスは各国代表に対して、戦略的取引に関するアメリカの見解を説明した。第一に日本は民主主義諸国の共同体に留まる。第二に日本は、国連憲章の下で国家自衛権を保持するものの、攻撃能力を発展させることはない。第三にアメリカは日本国内に基地を保持する。ダレスにとり、この3点は譲れないものだった。吉田首相は戦略的取引に伴う非対称性が永遠に続くとは予期していなかったに違いない。日本は、自国の防衛を他国に依存するレベルに留まり続けるべきではないと、首相自身が述べている。 実際、ハーマン・カーンからヘンリー・キッシンジャーに至るまで、日本の経済復興は自立した軍事能力に結びつくだろうと論じてきた」 このグリーンの説明で特異なのは、ダレスが日本に攻撃能力を発展させないことを絶対譲れない点として求め、日米で合意したことである。 西側陣営で、米国に基地を提供する国は多い。しかし、世界中で攻撃能力を持たないことを安全保障政策の基本とする国はまずない。だが、こうした指摘はグリーンだけではない。第4章でも登場したケント・カルダーは、『米軍再編の政治学』で、米軍基地は日本を無力化させる目的を持っていた、と記している。 では、今日、米国の方針はどうなっているのか。 (中略) 「大綱」では、米国が必用な核抑止力を有しているので、「日本に打撃力と核抑止力は持たせない」という状況で推移させる方針が貫かれている。日本に新たな役割分担は求める。日本が国際舞台で危険の負担を行うことは求める。しかし、日本防衛に関しては日本独自の抑止能力は持たせない。これが今日の米国の対日安全保障政策である。 カルダーが述べたように、米軍基地は日本を無力化させる目的を持っていた。また第3章で見たように、少なくとも1992年の時点では、米国防省は日独の核兵器保有を警戒していた。日本に核兵器を持たせないとの目的は、いまでも米国から完全に払拭されたわけではない。【日米同盟の正体】孫崎享著、講談社、2009年刊<「BOOK」データベース>よりアメリカ一辺倒では国益を損なう大きな理由。インテリジェンスのプロだからこそ書けた、日本の外交と安全保障の「危機」。【目次】第1章 戦略思考に弱い日本/第2章 二一世紀の真珠湾攻撃/第3章 米国の新戦略と変わる日米関係/第4章 日本外交の変質/第5章 イラク戦争はなぜ継続されたか/第6章 米国の新たな戦い/第7章 二一世紀の核戦略/第8章 日本の進むべき道<読む前の大使寸評>2009年に出た本であるが、2014年1月に第16刷発行となっている。いわゆるロングセラーというもんだろう。rakuten日米同盟の正体おりしも13日のWEDGEに米アジア回帰に対する「3つの反対論」という記事が出ているが、アメリカのリバランシング戦略を見てみましょう。
2014.06.14
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売国的なTPP参加が条約国から承認されたが・・・参加しないのがベストだったけど、ほんとに安部政権の短慮にはあきれるのです。こうなれば不利益が避けられない場合はTPPから離脱することが肝要ではないでしょうか。(状況が変わったので、タイトルを参加反対から、交渉反対に変えました)日本は遺伝子組み換え作物の世界最大の輸入国であり、役所はダダもれで承認中であるが、日本のマスコミはこの問題にほぼ完黙。この国は植民地か?大手メディアは自民党、財務省、経産省、米国金融、経団連、穀物メジャー、モンサント、生物多様性etcの相関を解明する気があるんだろうか?TPP交渉反対ツイートを3/25~4/07のツイッタ-に見てみましょう。【4月7日】HEAT@HEAT2009:日本とオーストラリアは、EPA交渉で7日、大筋合意する。豪州は中小型の乗用車の輸入関税(5%)を来年の協定発効後すぐになくす。日本も輸入牛肉の関税率を現行の38.5%から20%台に引き下げる方向。複数の日豪交渉筋が明かした。日経⇒http://s.nikkei.com/1mTdCdeHEAT@HEAT2009:『時事放談』での菅官房長官の発言は、日本が米国の要求に従っている限り日米関係は大丈夫だといわんばかりで、裏を返せば、米国の要望に従わなければ日米関係は悪化する可能性があるからそれを避けるためなら米国の要望には従わざるを得ないとも聞こえる。この文脈の中でTPPが語られたことに注目。【4月5日】金子勝@masaru_kaneko:経済財政諮問会議と産業競争力会議が、特区を使って介護や家事の分野で外国人雇用を活用する方針を打ち出した。労働条件が悪くて介護労働者が定着しないのを、さらに労働条件を悪化させる。若者の雇用先をどう確保するのかという発想がかけらもない。http://goo.gl/M07vel【4月4日】印鑰 智哉@tomo_nada:#枯れ葉剤 耐性 #遺伝子組み換え ワタのパブリックコメント(4/16締切)、ワタは食べない? いや食用油や家畜の飼料を通じて食べている。枯れ葉剤を食べたくない人、枯れ葉剤で環境破壊したくない人はパブコメ書こう。https://www.facebook.com/InyakuTomoya/psts/834516513241847?stream_ref=10…安部芳裕@abe_yoshihiro:首相から「厳しい叱責あった」…捕鯨全面敗訴 http://www.yomiuri.co.jp/politics/2014002-OYT1T50081.html?from=tw… タフネゴシエーターとしてマスコミに持ち上げられた鶴岡氏。TPPでも同じ結果になるだろう。日本の官僚に交渉力などないのだ。【3月25日】内田聖子@uchidashoko:PARC自由学校2014(5月スタート)の全講座申込みが始まりました!!!私の企画&おすすめ講座1「超国家企業のリアリティ―コーポラティズムを徹底分析」 http://ow.ly/uVE33 国境を越え自由に活動し、時には国家を訴えもする「超国家企業」の実態を学びます。内田聖子@uchidashoko:★PARC自由学校2014!私の企画&おすすめ講座2★「民主主義の危機!?-安倍政権の徹底解剖」 http://ow.ly/uVEcT 「戦後レジームからの船出」、「美しい日本を取り戻す」、「アベノミクスで景気回復」などと言い放つ安倍政権。その正体を暴いていこう。鈴木宣弘教授は文芸春秋2月号で、GM作物の弊害を述べています。 <TPPが無視するGM食品の恐怖> p443~445より■米でも「表示義務」が問題に アメリカ国内では、GM作物は従来の作物と同等であるとされているため、表示義務はありません。それどころか、「GM作物を使っていません」と表示することすら基本的に許されていないのです。「GM作物を使っていない」と、「組み換えていない方が優良である」という誤解が生まれる可能性がある、つまり、GM作物の売上げを妨害するというのが、その理由です。(中略) しかし、TPPが締結されれば、日本人にとっても表示義務の問題は他人事ではありません。というのも、アメリカはTPP交渉をテコに、自国内と同様、「GM食品が安全でないかのように消費者を惑わすことになるので、表示義務は認められない」という立場を広めようとしているからです。 アメリカが科学的に安全だと認めた産品に、表示義務を課すのは、輸入を阻害する要因となる、問題があるというのなら、危険だという科学的根拠を示せ、というわけです。 そこで、大きな問題となるのはISDS条項です。外国企業が投資先の国で不当な損害を受けた場合、国際機関を通じて、相手国を訴えることができるという取り決めですが、この条項が適用されれば、日本国内のGM食品の表示義務によって、アメリカの農業・食品業界が不当な損害を受けたとされる可能性が高いのです。■食料は武器だ アメリカでは産官学、それに法律面でもGM作物をバックアップしています。その根底には、「食料は武器だ」という米国の食料戦略があります。 もしアメリカからの輸入に食料を依存してしまえば、もうその国はアメリカに逆らえない。たとえば畜産であれば飼料、穀物などであれば種子のシェアを握ることでも、食による支配は可能なのだ―ある日本人農家の方は米国留学中、こんな内容の講義を教授から受けたといいます。 たとえばIMFや世銀からの融資、もしくは援助とセットで、途上国に対し、農産物の関税撤廃を強要する。それも、まともに輸出すると途上国の安価な生産コストに勝てないので、米国の農家に輸出補助金を出して、安く売りつけるのです。アメリカでは多い年で、コメ、トウモロコシ、大豆の3品目だけで1兆円規模の輸出補助金(輸出信用、食料援助も含む)を出しています。途上国の農家が破綻し、食料生産の基盤がひとたび破壊されてしまえば、復活はきわめて困難です。そうして、途上国はアメリカへの依存を脱することが出来なくなる。これが米国の「食料戦略」です。 そうした「食の戦争」には、GM作物はうってつけといえます。科学技術によって作られたGM作物は、モンサント社など開発した企業の「知的財産」として法的に保護されています。農家も、その種を買って使用することはできますが、自家採種、つまり農家が育てた農作物から収穫した種をもとに再度栽培してはならない決まりになっています。つまり、モンサント社製のGM作物を栽培する限り、農家は毎年、かならず種子を買わなければなりません。 先進国で最も低い食料自給率に甘んじている日本は、ある意味でアメリカの食料戦略の最大の犠牲者と呼べるかもしれません。世界でもトップクラスのGM作物消費量は、そのあらわれの一つといえます。食の安全について、日本人が自分で判断できる状況を確立するためにも、「食の自立」に関する冷静な努力がますます必要なのです。日本の規制役所はモンサントの申請に対して、からっきし弱いことで突出しているが・・・TPPという突破口が開いたら、更にこれら倫理無き巨大企業の蹂躙に合うことになるわけです。政権党はTPP推進を目指しているが・・・日本国民の食糧安保は風前のともし火にあるわけで、いったい誰のためのTPPなのか?ということなんだけど。なお、モンサントの手口については、 「モンサントの不自然な食べもの」に詳しく出ております。反TPPの核心TPP交渉反対の輪62これらもTPPで頭悪すぎ包囲網を敷く7に収録し、保存します。
2014.04.09
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在米作家の冷泉彰彦さんがインタビューで「国家主義的言動で印象はかなり悪化、国益を損なっている」と説いているので、紹介します。 国益を損なうように見える安部首相の言動を冷泉さんが危惧しているが・・・日本在住の我々も心配になりますね。(冷泉彰彦さんへのインタビューを2/21デジタル朝日から転記しました) 政権が発足して1年が過ぎ、靖国神社参拝や中韓両国に関する言動から、安倍晋三首相の目指すものへの懐疑と警戒が欧米でも強まっている。政権再交代から間もない昨年1月、この欄でインタビューした在米作家の冷泉彰彦さんに再び聞いた。首相の振る舞い、そして首相を支える日本の民意は、「米国の目」にどう映っているのか。Q:昨年1月のインタビューで、安倍政権に対して米政権は「わかりにくさ」を感じていると指摘されていました。米国は現在の安倍政権をどう見ているのでしょうかA:靖国参拝と国家主義的な言動に対する危機感が、日本では薄すぎます。ダボス会議の発言を報じた欧米メディアを見ると、安倍首相への印象がかなり悪化していることが分かる。ロイター通信の社長が自ら書いた記事では、中国政府高官の『安倍首相はトラブルメーカー』という発言が紹介されています。引用とはいえ、安倍首相こそが『面倒を起こす人』という含意が感じられます。 CNNの単独インタビューでも安倍首相は『習近平政権だけではなく、過去20年、中国はずっと拡張主義だった』と答えた。これでは、中国と関係修復するつもりがあるのかと受け止められる。こんな報道が象徴しているように、安倍政権は一つのイメージにはまり込みつつある。それがどれほど日本の国益を損なうか、分かっているのでしょうか。Q:国益を損なうほどですかA:安倍首相は『(日本の)民主党政権が日米関係を悪くした』と言っていますが、逆です。米国にとって安倍首相への懸念は大きく言って3点あります。まず、日韓関係がこれほど険悪だと、米国の行動を制約する。北朝鮮情勢に対する情報交換や態勢作りで日韓が一枚岩になれないのは、米国にとって大きなリスクです。もし北朝鮮が明日にでも政権崩壊したら、どうするのかと。 二つ目は、経済への波及です。先日、ニューヨーク・タイムズ紙の経済欄に『アジア経済の最大のリスクは日中関係だ』という記事が載りました。中国がくしゃみをすれば世界が肺炎になりかねない今、もし日中関係の悪化が何らかの形で中国経済の足を引っ張り、アジア発の世界的株安が起きたら、その原因は安倍首相だと言われかねない。国家主義イデオロギーを求心力に使いつつ、リベラル的な経済政策をするアベノミクスは、分かりにくいながらも評価されていました。しかし、中国との関係悪化が株安の引き金を引いたら、世界は許さないでしょう。 三つ目は米中関係に対する悪影響です。この2大国の関係は一筋縄ではいかない繊細な代物です。米国は中国の様々なことが気に入らないし、価値観もまるで違うが、我慢している。貿易相手及び国債引き受け手として共存共栄を目指すしかないからです。なのに、安倍首相の無分別な言動が微妙な均衡を狂わせ、米国の国益を左右している。日本人が想像する以上に米国にとって中国は難しい存在です。その遠くて近い距離感を何とかしのいで中国と付き合っているのに、安倍政権は無頓着過ぎる。これでは逆に中国の改革を遅らせてしまう、とオバマ大統領は思っているでしょう。 ■ ■Q:中国の改革を遅らせる?A:そうです。米国は中国に硬軟合わせたメッセージを送り、国際的ルールにのっとるよう促しています。軍事的膨張を牽制(けんせい)し、より開かれた社会と政治体制に軟着陸させようというのが米国の国家意思です。しかし、パートナーである日本が、中国を刺激し、こともあろうに連合国、第2次大戦戦勝国側のレガシー(遺産)を利用させるような事態となっています。Q:「遺産」とは何ですかA:対日戦では多くの米国民の血が流れましたが、その結果、日本は民主化し、日米が共存共栄する平和な太平洋が実現した。ジョン・ダワー氏の言うように、日本は『敗北を抱きしめて』まともな国になったはずでした。ところが戦後70年近く経つ今、中国に『日本は戦後の国際秩序に反している』などと言わせる隙を作っている。米国が主導して作り上げた戦後の国際秩序だというのに、後から入ってきた中国の共産党政権が主役面して正義を名乗るなど、米国政府は許し難いはずです。 ただ、米政府は、安倍首相自身が戦後の国際秩序に真剣に反抗しようとしているとは思っていないでしょう。A級戦犯が合祀されている神社に参拝するのは、そこまで考えた上でのことではなく、単に無思慮な行為だと理解していると思います。Q:靖国参拝に「失望した」という米政府のコメントで、米大使館のフェイスブックが炎上しましたA:安倍首相は反米に傾く人たちに支持されていると見られかねないでしょうね。実際、ネット右翼的な人たちの間では中韓だけでなく、米国も気に入らないという雰囲気が生まれている。堂々と孤立の道を歩め、というような。安倍首相はそんな支持層に引きずられるところがあり、日米関係の資産を過去半世紀なかったような形で傷つけています。 ■ ■Q:なぜ、こんな雰囲気が出てきたのだと思いますかA:市場がグローバル化し、国際化していることの副作用という面は否めないと思います。言語、文化、価値観などで国際化に伴う軋轢が日本社会に押し寄せており、適応する努力が求められている。その反発として、国内にとどまる方が安心だという感情が生まれ、同時に、第2次大戦で悪者となった過去をひっくり返して、国際化への不適応を帳消しにしようとする精神的な作用が出てきたのでしょう。安倍首相自身はそんな自己省察はしていないでしょうが、似たような心性を持った人から支持され、吸い寄せられてしまう。 さらに戦後日本の文化的、思想的エスタブリッシュメントだったリベラル系の人々への反発という感情もあるでしょう。知性とされてきた側を引きずり落としたい衝動、反知性主義とも言える。この日本的な左右対立は、米国の『大きな政府と小さな政府』や『宗教右派とリベラル』の対立よりも、なぜか先鋭的になっている。社会的な意味合いは小さいにもかかわらず、個人的な、心理的な経験として対立が激化しているのがやっかいなところです。 人口減や一部の産業の国際競争力の低下からくる閉塞感に対し、イデオロギーのゲームでうっぷんを解消しているとも言えます。例えば、過剰な反原発感情もそうでしょう。大切な問題ではありますが、必要以上に大きく語られ、人口減少や産業競争力低下といった日本の根源的問題が避けられている。リベラル側から社会全体の行き詰まりを解消する処方箋を出せていないのも確かです。議論が粗雑になった責任の一端は、(日本の)民主党にあります。Q:右が靖国、左が反原発に向かうならば、真ん中は?A:中間的な層が実は多数派ですが、この真ん中はいわゆるノンポリなんです。価値判断など面倒なことにかかわりたくないという巨大な空白があるんですね。是々非々で判断する中間層というのが日本にはない。ふわっとしたノンポリという立場があり、それが巨大なのです。 日本の教育には決定的に欠けていることがあります。社会、政治問題について『自分の意見を持つことの重要さ』を教えないということです。自分の中に核になる考え、抽象的な原理原則を持ち、それに基づいて政策への賛否を決めるという当たり前のことを、公教育で一切教えていない。大きな問題です。 ■ ■Q:政治への根本的な無関心が、今の状況を生んでいるのですかA:具体的な政策が、自分の境遇にダイレクトに跳ね返ってくる感覚が薄いのも確かです。税負担感と、大きな政府、小さな政府といった政策の選択肢が関連づけられていない。財政難でも歳出を絞らない国の赤字体質と、有権者のお上任せ体質の双方が関係するのでしょう。先への不安感だけはみんな持っているが、それぞれの政治への関心は分断されている。ばらばらになった個人は精神的に不安定になり、国家に依拠し、政治参加に刹那的な楽しみを見いだすだけになってしまう。Q:このままでは日本はどうなるのでしょうかA:そう簡単に、日米同盟は崩壊しないでしょう。安倍首相の一連の言動によって日米関係が決定的に悪くなることはない。ですが、衰退と孤立化を早めることにはつながります。日本は突然破綻するのではなく、時間をかけて衰退するだろう、と知人の金融関係者が言っていました。崩壊前に逃げられると思っているから、まだ日本に投資する人がいる、というのです。 *冷泉彰彦:米国在住の作家・ジャーナリスト 59年生まれ。米コロンビア大学院修了。渡米して約20年、ニュージャージー州プリンストンから日本と米国の今を観察している。<取材を終えて> 日本を離れているから見えるものがある。祖国への愛着と同時に、外部から観察する冷徹な目を併せ持つことで、国内では見えにくい、見たくないものが浮かぶ。それを冷泉さんは巧みに言葉に乗せる。安倍政権に対する海外の視線は冷え込み始めている。冷泉さんが語る仮借ない現状認識に、反論できないのが切ない。(ニューヨーク支局長・真鍋弘樹)米国エスタブリッシュと同じ目線に立つような冷泉さんのご意見なんですが、傾聴に値すると思ったのです。世界各国にでかけて中国包囲網を作るかのような安部さんを、わりと評価する大使なんですが・・・ポエムを語るような安部さん自身と、暴言を吐くなど、レベルが低いブレーンには心配になるわけです。
2014.02.24
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自民党は、来週中にも特定秘密保護法案の衆院通過を狙っているようだが・・・・テレビでも連日、コメンテーターが自民党議員に対して懸念を投げかけています。また休日の駅前では、市民の抗議演説、ビラ配りで盛り上がっています。愛国者法がはばを利かすアメリカでは、既に監視・傍受社会が現実のものとなっているようです。もちろん、機密情報保護では日本の一歩先を歩んでいます。そのあたりについて昨今のツイッターを見て見ましょう。●K.Kengo @KKnagomi:秘密保全法で暗黒社会に突入。「政府による『国家機密』の定義は、報道の自由にも大きく影響を与えた。愛国者法の通過以降、米国内のジャーナリスト逮捕者数は過去最大となり、オバマ政権下では七万以上のブログが政府によって閉鎖されている。」堤未果http://goo.gl/9TnnKx ●山澤健一@singstyro:堤未果さんや想田和弘さんといったアメリカ在住経験者が、「秘密保全法」に大きな危機感を抱いているのは、911後わずか45日で成立した「愛国者法」がアメリカ人の自由と人権を奪うものになったということを痛感しているからではないだろうか堤さんいわく、アメリカ発<平成の治安維持法>とのこと・・・・感心する場合ではないが、うまい表現である。デジタル朝日より傍受大国アメリカを紹介します。10/28傍受大国、遠い透明性「令状なし」を合法化より 米国家安全保障局(NSA)による情報収集が、米国の威信を揺るがし続けている。世界中のデータを集め、同盟国の通信の傍受さえ明らかになった。浮かび上がってきたのは、米国が自ら理想として掲げてきた民主主義や透明性、人権の尊重から遠く離れた姿だ。 「世界におけるアメリカのリーダーシップは、その民主主義と透明性にかかっている」 今年8月、オバマ大統領は、NSAの情報収集活動の見直しを宣言した。スノーデン元職員による告発以来、この問題でずっと守勢に立たされてきた政権を象徴する会見だった。 だが、オバマ政権こそが、こうした秘密の情報収集活動を支えてきたのではないか。米通信大手AT&Tの元技術者マーク・クラインさん(68)も、そう考える一人だ。 その建物には、窓がほとんどなかった。 サンフランシスコ中心部にある同社ビル。クラインさんが2003年1月、7階に足を踏み入れると、光ケーブルの基幹回線が「スプリッター」という装置で二つに分岐されていた。それぞれの配線には全く同じ情報が流れ、片方は6階の「641A」という部屋に引き込まれていた。 不審に思ったクラインさんは同僚に話を聞き、社内資料を集めた。この部屋はAT&Tではなく、NSAの管理下にあった。ブッシュ政権(当時)による、捜査令状を取得しないまま実施された通信傍受の一環。「アップストリーム」と呼ばれるシステムで、インターネットの基幹回線から直接傍受する現場だった。大使が全面的にデータを提供しているグーグルだって、NSAに協力しているようです。これって、けっこう怖い現実である。10/28米、光ケーブルでも傍受 NSA、世界の通信対象より 米国家安全保障局(NSA)が少なくとも三つのプログラムを組み合わせることで、インターネットや携帯電話などのほぼ世界中の通信記録を対象に収集、分析していたことがNSA元幹部らの証言でわかった。米中央情報局(CIA)のエドワード・スノーデン元職員が内部告発した活動の全体像が浮かび上がった。 朝日新聞はNSAで通信傍受などに携わった元職員6人に米国でインタビューした。それによると、NSAは「アップストリーム」というシステムを使い、サンフランシスコやニューヨークなどの付近で主に海底の光ファイバーケーブルの情報を直接収集していた。北米には基幹ケーブルなどのネット設備が集中し、世界各地域から送信されるデータの8割以上が経由する。こうした利点を活用し、情報を写し取るものだ。 NSAを巡っては、グーグルやフェイスブックなどの通信事業者の協力を得て業者のデータベースから情報を取り込む「プリズム」が明らかになっている。アップストリームはプリズムの情報と合わせ、通信時刻や相手先といった「メタデータ」を集めていた。 さらに「エックス・キースコア」(XKS)と呼ばれるプログラムは、メールの内容やサイトの閲覧履歴などまで収集できる。 NSA元幹部で2001年まで分析官を務めたウィリアム・ビニー氏(70)は「アップストリームで情報をリアルタイムで集め、プリズムで補った。その情報をもとに傍受対象者を絞り込んだ。XKSを使えば中身も見られる」と証言。ほぼ世界中のネット利用者が対象だったという。ほかの元幹部もこうした仕組みを認めた。(渡辺丘、田井中雅人)朝日デジタルの「縮むアメリカ」シリーズをメモしておきます。<「縮むアメリカ」シリーズ>・無人機攻撃、やまぬ批判 遺族、「憲法違反」と提訴2013.10.30・自由社会に染み込む監視 9.11後「対テロ」大義名分2013.10.29・傍受大国、遠い透明性「令状なし」を合法化2013.10.28(縮むアメリカ)やっと職場へ、観光地も再開 米政府閉鎖、17日ぶり解消2013.10.18
2013.11.12
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穀物メジャーとモンサントと言えば、大使が蛇蝎のように嫌うものであるが・・・図書館で「世界を牛耳る巨大企業」という本をめくっていたら、これが目についたのです。日本の規制役所はモンサントの申請に対して、からっきし弱いことで突出しているが・・・TPPという突破口が開いたら、更にこれら倫理無き巨大企業の蹂躙に合うことになるわけです。政権党はTPP推進を目指しているが・・・日本国民の食糧安保は風前のともし火にあるわけで、いったい誰のためのTPPなのか?ということなんだけど。この本から、そのあたりを紹介します。<穀物メジャーとモンサント>よりp66~67 カーギルやADMと言っても、一般の日本人には馴染みが薄いかもしれない。しかし、世界の穀物の多くはこの2つの企業が掌握している。そこに枯葉剤で知られるバイオ企業モンサントが加わったのが現在の穀物独占の構図なのだ。 '10年に地震が襲ったハイチは復興に際し、はた迷惑な「贈り物」を贈られた。「ウィナープロジェクト」と称して475tの遺伝子組み換え種子がモンサントの“善意”によって寄贈されたのだ。 この種子はモンサント製除草剤「ラウンドアップ」と一緒に販売されるもので、強力な除草効果に耐える特殊な種子だ。 通常、収穫後は新たな種子をまき次の作物を作る。しかし、奇妙なことにモンサントの種子に関してはそれは許されていない。契約によって「知的財産権保護」のため自家採種したものが使えないのだ。 モンサントはこの契約をより確かなものにするためか、採種した種子が発芽できなくなるターミネータ遺伝子を組み込んだ種子を開発している(倫理上の問題から未流通だというが、真相は不明) こうしてハイチの農家は“善意”の贈り物によって一生モンサントにロイヤリティを払わなければいけなくなるのだ。 同様のことは他の途上国でも起きている。いや、それどころか、「食品安全近代化法」の成立を目指しており、アメリカ国内ですら自分たちの管轄外の小規模な農場を壊滅させようとしているのだ。 こうして“奴隷(ゴイム)”に作らせた作物を買い叩き、莫大な利益を得るのはカーギルやADMといった穀物メジャーなのである。この3社は周到で、食品の安全性を審査する機関や環境保護の機関にも3社の関係者が派遣されている。つまり、人体に害があるかもしれない食品を作ろうが、猛毒の除草剤を作ろうが、彼らの思うがままなのである。 奴隷の自由を許さない。実に狡猾な金儲けの仕組みを作ったものだ。 だが、さすがにやり過ぎた。近年ではブラジルを筆頭に、モンサントを相手に訴訟を起こす農民たちが現れてきている。【世界を牛耳る巨大企業】ベンジャミン・フルフォード著、扶桑社、2012年刊<「BOOK」データベース>より世界と日本を支配する「多国籍企業・財団・シンクタンク」総覧。ロスチャイルド、ロックフェラー、米軍産複合体…知られざる多国籍企業を一挙紹介。【目次】第1章 現代史の裏側で暗躍した大企業(第一次世界大戦ー軍需物資の流通利益を独占した当時米国最大の投資銀行JPモルガン/第二次世界大戦ー中立法に違反し、敵国ドイツを密かに支援したアメリカ大企業のあくなき欲望/冷戦ー鉄のカーテンの下では、共同利益のための権謀術策が常に交わされていた ほか)/第2章 世界を陰で操る財団・基金(ノーベル財団ー最も権威あるノーベル賞を選ぶ財団 摩訶不思議な選考基準に賛否両論/ビル&メリンダ財団ー資金力はナンバーワン、世界最大のファミリー財団 その裏では「悪魔の道楽」を行う/ヘリテージ財団ーアメリカ政府御用達の政策提言集団。日中韓の関係をこじらす役割も? ほか)/第3章 国際世論を作り出すシンクタンク・研究所(タヴィストック研究所ーロックフェラーが出資したロンドンの大衆洗脳・扇動技術の研究機関/ランド・コーポレーションーゲーム理論から中性子爆弾まで。異能が集う軍産複合シンクタンク/新アメリカ安全保障センターーオバマ政権下に巣食うジャパン・ハンドラーズたちのシンクタンク ほか)<読む前の大使寸評>著者のジャパンハンドラー、米財団、産軍複合体に関する論調は深く・・・やや勇み足気味かもしれないが、日本の心強い味方である。rakuten世界を牛耳る巨大企業この記事は早速TPP交渉反対の輪48に埋め込んでいます。なお、モンサントの手口については、 「モンサントの不自然な食べもの」に詳しく出ております。
2013.11.11
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図書館で「世界を牛耳る巨大企業」という本をめくっていたらジャパン・ハンドラーズという言葉がヒットしたのです。TPPで押しまくられている昨今だが、このジャパン・ハンドラーズは、果たして親日なのか?反日なのか?・・・・国民的関心事であると思うわけです。まずウィキペディアを覗いてみました。wikipedia知日派より 知日派あるいは知日家とは、日本の社会・文化などに対して深い理解を持ち、影響を及ぼすことができる外国人を指す言葉である。親日・反日とは別問題である。 特にアメリカ合衆国の対日外交において、日本政府の手法を知り尽くし、日本政府中枢をコントロール出来る“ジャパン・ハンドラー”(日本を飼い馴らした人物)を指すことが多い。この意味での代表としてリチャード・アーミテージ、マイケル・グリーン、ジョセフ・ナイ、カート・キャンベルらがあげられる。この本から、ジャパンハンドラーズのあたりを紹介します。<CSIS(戦略国際問題研究所)>よりp108~109CSIS 「日本は51番目の州」と揶揄される根源はジャパン・ハンドラーズたちにある!知的な彼らは決して親日なわけではない。日本を動かすのはアメリカ、いやその背後にいる闇の支配者の利益のため。彼らが構築した日本操作システムを明かす! オバマ政権になって新アメリカ安全保障センター(CNAS)のほうが知名度が上がっているが、もともとジャパン・ハンドラーズの巣窟として、日本からも多くの政治家や官僚、防衛・警察関係者など研究者が派遣されていたのが戦略国際問題研究所(CSIS)である。 CSISは特に「ショー・ザ・フラッグ」と迫ったリチャード・アーミテージによる「アーミテージリポート」が有名だろう。日本に対して有事法制の整備を求めたり、日米同盟の強化を提言したり、どすの利いた顔で恫喝にも似た提言を繰り返してきた。 そしてこのリポートのゴーストライターがマイケル・グリーンだ。小泉純一郎元首相の息子、進次郎がCSIS研究員だったときは教育係だったと言われている。 関東学院大卒の進次郎を留学させ、コロンビア大学大学院で修士号を取らせた後に、CSIS研究員へと就職の世話までしたのがジェラルド・カーチス。彼はロバート・クロウリーという元CIA上級オフィサーが遣わした協力者一覧でエージェントだったと名指しされている。 日本の政官財およびメディアにはCNAS以上に深く食い込んでいる。 まず、日本のメディアとは日経新聞との関係が深く、共同で仮想シンクタンクを起こしているほどだ。 財界では京セラの創業者、稲盛和夫がCSIS設立者のデビッド・アブシャーとじっ懇の仲で、CSIS内に名前を冠する教育研究機関があるほどだ。 政界は先述した小泉進次郎のお守りのみならず、現国民新党の浜田和幸が研究員として働いていた。 このようにCSISは、日本の社会に食い込み、裏で操ってきたのだ。続いて、本題から外れるがヘッジファンドのあたりを紹介します。米金融が主導するIMFや世界銀行も加担して酷い仕打ちがあったようです。<アジア通貨危機>よりp40~41 世界中に「ヘッジファンド」の悪名を轟かせたきっかけともなったアジア通貨危機。はたしてどのような絵図の下で行われたのか?闇の支配者たちの冷徹な収奪のシナリオを暴く! '97年のアジア通貨危機は、国際金融資本周辺の連中が強盗同然の振る舞いをした好例であろう。 「実行犯」は、ジョージ・ソロスを筆頭とするヘッジファンド。ソロス以外にも、この危機で80億ドルの利益を上げたジュリアン・ロバートソンなど、多くのヘッジファンドが空売りを仕掛けた。 絵図はこうだ。まずBIS規制によって日本の銀行を封じ込め、アジアから資金を引き上げさせる。次にアメリカやIMFが主導し、アジアの市場開放を迫り規制を緩和させる。さらにゴールドマン・サックス(GS)などがアジアの時代を強調し、多額の資金をアジア諸国に融資し、バブルを煽る。格付け会社も現実から乖離した高い格付けを行う。となれば後は簡単。一般の投資家がアジアにこぞって投資をし、実力以上の通貨価値まで上昇したところで、一気にヘッジファンドが空売りを仕掛け、国際金融資本は資金を引き上げ、格付け会社は格付けを下げる。ヘッジファンドはボロ儲けし、経済低迷したアジア各国にはIMFが救済の名を借りた経済占領を行う・・・・。これで約1兆ドルがアジア市場から消えたと言われている。唯一、中国だけが売り攻勢に対抗し切り、彼らにダメージを与え台頭を印象づけたのは誤算だったろう。 こんな冷酷な「ゲーム」をする彼らのメンタリティを端的に表わすのが、当時の財務副長官、ローレンス・サマーズ(後の財務長官)が、世界銀行チーフエコノミスト時代に残した「サマーズ・メモ」の一言だ。 「汚染廃棄物は後進国で処分すればコスト低減になる」―。 彼らにとってはアジアなど餌場であり、ゴミ捨て場としか思っていないのだ。【世界を牛耳る巨大企業】ベンジャミン・フルフォード著、扶桑社、2012年刊<「BOOK」データベース>より世界と日本を支配する「多国籍企業・財団・シンクタンク」総覧。ロスチャイルド、ロックフェラー、米軍産複合体…知られざる多国籍企業を一挙紹介。【目次】第1章 現代史の裏側で暗躍した大企業(第一次世界大戦ー軍需物資の流通利益を独占した当時米国最大の投資銀行JPモルガン/第二次世界大戦ー中立法に違反し、敵国ドイツを密かに支援したアメリカ大企業のあくなき欲望/冷戦ー鉄のカーテンの下では、共同利益のための権謀術策が常に交わされていた ほか)/第2章 世界を陰で操る財団・基金(ノーベル財団ー最も権威あるノーベル賞を選ぶ財団 摩訶不思議な選考基準に賛否両論/ビル&メリンダ財団ー資金力はナンバーワン、世界最大のファミリー財団 その裏では「悪魔の道楽」を行う/ヘリテージ財団ーアメリカ政府御用達の政策提言集団。日中韓の関係をこじらす役割も? ほか)/第3章 国際世論を作り出すシンクタンク・研究所(タヴィストック研究所ーロックフェラーが出資したロンドンの大衆洗脳・扇動技術の研究機関/ランド・コーポレーションーゲーム理論から中性子爆弾まで。異能が集う軍産複合シンクタンク/新アメリカ安全保障センターーオバマ政権下に巣食うジャパン・ハンドラーズたちのシンクタンク ほか)<読む前の大使寸評>著者のジャパンハンドラー、米財団、産軍複合体に関する論調は深く・・・やや勇み足気味かもしれないが、日本の心強い味方である。rakuten世界を牛耳る巨大企業
2013.11.10
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