シニア消費、超高齢化が生む巨大市場
2019-2-19
原真人 朝日新聞
CMですっかり有名になった「ハズキルーペ」(税抜き1万167円)。シニアの潜在需要を掘り起こし、累計販売数が500万本を超えた。
ハズキカンパニーによると購入が多い世代は順に、(1)60代女(2)50代女(3)60代男(4)70代女(5)70代男。最近は20~40代にも需要が広がったという。
高齢者ニーズがヒット商品を生むことがある。最近では軽い掃除機、自動ブレーキ機能つきの自動車がそうだ。
本格的な人口減少社会になったこの10年、私たちは「縮小するニッポン」のイメージを強く引きずりすぎた。そろそろ発想を転換するときだ。
幸い日本には立派な成長市場が存在する。超高齢化によって膨らむシニア消費市場である。
国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の高齢者人口(65歳以上)は昨年3560万人。規模では中国(約1億3千万人)、インド(約6600万人)、米国(約4700万人)に次いで世界4位だが、増加ペースはトップクラスである。25年後までに374万人増えて、4千万人に迫ると予測されている。
日本は個人金融資産1800兆円と世界第2位の金持ち国だ。その6割以上をシニア世代が保有する 。この巨大市場で成功し、やがて世界のシニア市場へ。そんな野心的企業、画期的ヒット商品がいつ出てもおかしくないチャンスが広がっている。それがなかなか出ないのは、なぜか。
シニア商品開発にくわしい日本総合研究所の山崎香織氏は、企業の開発姿勢の問題を指摘する。「シニアの多様な生活課題、多様な嗜好(しこう)をつかみきれないまま、通りいっぺんの市場調査をして開発してしまうメーカーが多い」
たしかにニーズの把握は難しい。高齢者が抱える課題は十人十色。一方でメーカーはたとえば食品なら年3億~5億円くらいの売り上げが期待できないと規模の利益が得られず製品化に踏み切らない。これでは市場も生まれない。
山崎氏はいま、メーカーの開発担当者やケアマネジャー、作業療法士らとともに高齢者の生活ウォッチ調査に取り組んでいる。お年寄りの自宅でともに半日過ごすのだ。
「ふだんの生活をもっとよく観察する。そこから始めないとヒントは見えてこない」。生活の不便や苦痛がわかれば、新しい市場が見えてくるかもしれない。
その点、病院や施設で働く作業療法士は、体が不自由な高齢者からきめ細かくニーズを聞きだすプロだ。試行錯誤の作業の末にオーダーメイドの生活用品を作り出す。
そのノウハウは1回限りしか使えないものだった。日本作業療法士協会は、これを汎用(はんよう)的な製品の開発にも生かせないかと、ついに全国的なデータベース化に乗り出した。
日本の高齢者に愛されるモノやサービスなら、きっと世界で愛される。まずは日本のシニアをとりこにするような大ヒットを待ち望む。
(はらまこと 編集委員) * 波聞風問(はもんふうもん)
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