ボクらのカリカチュア

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わたし@ Re: メルの旅 邂逅篇5『鏡と水面』(11/10) 更新頻度の低さで言えば、冨樫かさいこ。
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2008/11/10
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カテゴリ: クロノス
玉座の人物、ユナイデス=エーカーはメルとブリジットを見下ろしたまま黙して語らない。
普段は物怖じしないメルであったが、男を目の前にし、放つ覇気に気圧されて口を開くことが出来ないでいた。

襟足にウエーブのかかった漆黒の総髪。その頭上に輝くのは王の象徴サトゥバクラウン。
ユナイデスが軽く首をかしげると、金色のクラウンが天井の照明を反射して鈍く光を放った。

膝を折り傅いていたギャスパーは、立ち上がるとメルたちの方へと歩み寄る。
沈黙を破ったのはギャスパーであった。

ギャスパー:「エーカー様、」

ユナイデス=エーカーはそこでひとつ「ふむ」と息を漏らし、ギャスパーの答えを遮る。

ユナイデス:「お前たちは下がれ」

眉根を寄せ、いかにも不機嫌そうな顔で、ユナイデスは謁見の間にいたギャスパー以外の全ての兵にそう命じた。
躊躇する者も中にはいたが、彼の命は絶対であり、またその言に逆らうものはこの場にいなかった。
人払いが済んだ後の広間に再び静寂が訪れる。

ユナイデス:「貴様らが、はじまりの街で暴れた二人」

一瞬の間の後、メルが頷いて返事をする。

メル:「そうだ」

ユナイデス:「そしてマエルの失踪に関わり、今はコエリス教団に追われる者」

足を組み換えて頬杖をつくと、ユナイデスは短く笑う。「聞いていたよりもつまらない連中だな」

ブリジット:「わ、私たちをどうする気、おつもりですか」

ユナイデス:「マジシャン。オマエの名はブリジットだったか。零落したバルドー家の一人娘。そして、巷を賑わす怪盗鰤女その人」

ブリジット:「!?」

ユナイデス:「そう警戒してくれるな。何も盗みの咎を問う為にわざわざ呼び出したわけではない。過去を問いただすつもりも無い」

メル:「ボクらに何の用がある」

ユナイデス:「何の?面白いことを言うな。貴様の目的はマタリエルを討伐することだそうだが」

メル:「それがお前に何の関係がある」

ユナイデス:「くくく、ははは、はーっはっはっは」(三段笑い

メル:「何がおかしい」

ユナイデス:「「お前」と、な。俺が魔王と称されるようになってから何度も聞いた事が無い言葉だ」

メル:「そんなこと知るか」

ユナイデス:「ところでお前は何故マタリエルを倒そうとしている?」

メル:「マタリエルが人々を苦しめるからだ」

ユナイデス:「可能か不可能かは別として、だ。お前が行動する必要は無いと思うがな。騎士団が指をくわえて奴らの侵攻を眺めているばかりとでも思ったか?」

メル:「自分に出来ることがあるのに何もしようとしない。そんな風にして生きていたくないだけだ」

ユナイデス:「出来ること?自惚れるな。力も覚悟も無い貴様に、達成できる事なぞこの世に存在せんわ」

メル:「知った口を!覚悟ならある!」

ユナイデス:「自信の無い人間が良く吐く言葉だな。見栄も切れず、中途半端な自己犠牲の精神で己を欺く。「私は今精一杯やっている」と。これは弱者がそうであることを隠すための示威行為・・・。そして、心のどこかで、その事に気づいた誰かが助けてくれると思っている。救いはあると期待している。そうして前を向かず、真実から目を背けている貴様に、覚悟など無い・・・!」

ユナイデスは不意に立ち上がると玉座に立てかけてあった剣を手にした。禍々しい気配を漂わせているその剣は、普段から抜き身のままであるようだ。

ブリジット:「(クラウンにアドルフまで所持しているなんて・・・なんて奴)」

アドルフの柄のあたりに備わっている目がギョロリと蠢き、メルたちをねめつける。

ユナイデス:「ギャスパー、どうだ。こいつらは使えそうだったか?戦士か、それとも唯の人か」

ギャスパー:「未熟ではありますが、成長次第では戦士と足る素質はあるかと」

ユナイデス:「ふ。人払いをしたんだ、そう畏まるなよ」

柔和な表情を浮かべたのは一瞬だけで、メルたちに再び向けた顔は既に怪訝な表情に戻っている。
そして、ブリジットが喉を鳴らして唾を飲み込んだとき。ユナイデスの姿が二人の視界から消える。

メル:「!」

ブリジット:「あ、う」

ユナイデスはブリジットの後ろに回り込み、アドルフの刃を喉に向けていた。
彼の動作に遅れて部屋の空気が流れ、ブリジットの前髪を揺らす。

ユナイデス:「ほう。気配だけで俺の動きを見たか」

見るとメルはいち早くユナイデスの動作に反応している。

ユナイデス:「さて、メル。お前は先ほど自分には覚悟があると言ったな」

メルは答えない。それを見たユナイデスは口の端を上げ、冷笑を浮かべながら続ける。

ユナイデス:「私はこれから、この魔術師を殺そうと思う」

メル:「止めろ!ブリジットは関係無い、殺すならボクをやれ!」

ユナイデス:「そう言うとは思っていたが、敢えて言おう。寝言は寝て言え。お前には使命があるんだろう?それは、そんなにもすんなりて諦めてしまえるものなのか?第一、この女が関係ないと言うのなら、俺がどうしようが問題なかろう」

メル:「貴様・・・!」

ユナイデス:「私は言葉遊びがしたいわけではない。論点を変えようか。マエルはお前達を助けるために自分を犠牲にしたそうだな。彼は何故お前達を救った?」

メル:「それは・・・」

ユナイデス:「お前が他人をどう思っていようが関係無いんだよ。関係有るか無いか、それは己が決める事じゃない。相手が決める事だ」

ブリジット:「だったら早く殺しなさいよ。あんたの話は聞いてるだけで苛々してくるわ」

ユナイデス:「そう急くな。さあメル、お前の中途半端な覚悟がもう2人も殺そうとしているぞ」

ギャスパー:「ユナイデス、それくらいにしておけよ」

先ほどとは口調を変えてギャスパーが声を発する。だが彼は取りあわない。

ユナイデス:「また、だぞ。またお前は誰かに助けてもらうのか?震えていないでせめて挑んでみせr」

ユナイデスの言葉が途中で途切れる。

ギャスパー:「!?」

瞬きを1つするその一瞬間の内に、メルはユナイデスの横手に飛び込んでいた。
しかしユナイデスは全く動じない。メルは構わず彼につかみかかるが、ブリジットを開放すると同時に、ただの空手でメルを殴り飛ばした。

ユナイデス:「人は生まれた瞬間から、その孤独な生を歩み始める。人は、生涯一人で生きている。人が人同士、わかりあうことなど無い。同じ姿、言語、宗教を持っていようと。どれだけ相手に自分を伝えることができる?誰がそれを測る?それは自分だろう。信じているのは結局相手ではない。自分だ。自分を騙しているんだ。他人に持つ信頼など愚かな感情に過ぎない」

ユナイデスは言いながらメルに迫る。メルは立ち上がって攻撃を続けようとするが、あっけなく、体術だけで組み伏せられてしまう。

メル:「ぐはっ」

ユナイデス:「では何故この世が、そんなにも希薄な関係である人々が仮初にしろある種の秩序の元営みを続けることができる?それは力だ。圧倒的に他者を組み伏す力こそが理!金の力か?それとも政治、権力?違う。暴力こそが、この世を統べる唯一の法だ。倫理や司法など糞の役にも立たん。権力者がそいつを行使しようとするのは、恐れているからだ。犯罪を抑さなかった事に対する憎しみを受けるだけの度量が無いだけ、自分の力だけで己の身を守れないだけ・・・そうした世界で力無き者の命は無価値なのだ」

メル:「おまえは、間違ってる」

ユナイデス:「ならこの状況をどうにかしてみせろ。立ち上がって俺を倒せ。拳を上げ声高に叫んで見せろ、貴様の正義とやらを」

一拍置き返事がないと知ると、ユナイデスは床にへたりこんだブリジットに向き直り、掲げたアドルフを振り下ろした。

メル:「やめろおおおおおおお!」

ガッ

ユナイデス:「・・・ギャスパー」

ギャスパー:「遊びが過ぎるぞ、ユナイデス」

ギャスパーが、ユナイデスの攻撃を己の剣で受けていた。

ユナイデス:「遊び?まあそう取れんこともないか、ククっ」

短く笑い、そこで彼は剣をおろすと、メルとブリジットには目もくれず背中を向けて玉座へと戻った。

ギャスパー:「大丈夫か?2人とも」

ブリジット:「(ギャスパーさんがいなければ、確実に殺されていた・・・)」

メル:「・・・」

ユナイデス:「さて。今現在、諸君らの命を握っているのが誰かと云う事が理解できたかな?」

メル:「お前に生かされるくらいなら死んだほうがマシだ」

ユナイデス:「よく聞けよ。死んだら終わりだと何故気づかない?泥をすすってでも生き延びて、機を伺い、最後まで抗おうとは考えないのか?目先の体面を取り繕うだけでは、何も変えられないぞ」

メル:「ぐっ・・・」

ユナイデス:「そういう事だ。わかったらさっさと下がれ」

ブリジット:「な、」

メル:「貴様!」

ユナイデスはギャスパーに向かって「後はさっき言ったとおりだ」と言葉を投げると、大儀そうに立ち上がった。
メルたちの脇を通って廊下へと向かったが、2人は微動だにできなかった。

ユナイデス:「もう1つ。真なる事は虚ろなものと知れ」

少しして後ろで扉の閉まる音がする。

ギャスパー:「・・・悪いが謝りはしない。こうなると知ってあいつに会わせた」

ブリジット:「どういうこと?」

ギャスパー:「奴にすれば遊びのつもりだろう。まあ他にも意図はあるんだろうが」

メル:「あの野郎・・・いつか殺してやる」

ギャスパー:「敵を作るのも好きだしな」

ブリジット:「結局私たちはどうなるのよ」

ギャスパー:「ユナイデスはお前らを殺すつもりも教団に差し出すつもりも無いって事かな。さあ、長旅でお互い疲れてるんだ。ここでならゆっくりと眠ることができる。ひとまず休め。話はそれからだ」

ブリジット:「釈然としないけど、要するに逆らうなって事?くそ食らえだわ(さっきのでちょっと漏らしたし)」

先に立って案内をしようとするギャスパーにメルが言った。

メル:「あいつとマタリエル、どっちが強い?」

ギャスパー:「さあ?」

メル:「お前とあいつとは」

ギャスパー:「そうだな。試合でなら五分近く、殺し合いならまず勝てない。ちなみに俺は、君となら試合でも負ける気がしない」

メル:「嘘吐け」

ギャスパー:「はは、そうすねるなよ。それより傷は大丈夫か?言うことは別にして、あいつ強かっただろ?」

ギャスパーはそうして、メルの頭にポンと手をついた。

前髪で隠れた彼女の目からは、今にも涙がこぼれそうだった。


邂逅篇「了」

涌憎篇につづく





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Last updated  2008/12/01 01:00:40 PM
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Re:メルの旅 邂逅篇5『鏡と水面』(11/10)  
ヘッピリ八兵衛 さん
レベルが上がって ひとつ上のマップへ行くと 桁違いに、痛いんですよね。
しかし、壁を乗り越えると、いつのまにか自分も強くなっている。
イヤァ、RPGって本当にいいもんですねぇ(水野晴郎風w古っw (2008/12/01 02:10:15 PM)

Re[1]:メルの旅 邂逅篇5『鏡と水面』(11/10)  
ヘッピリ八兵衛さん
-----
主人公が最強でイイのは勧善懲悪の物語だけだと思うところがあるのです。(たとえるなら時代劇の黄門、ドラゴンボールのゴクウ)
これはその作品が娯楽であったり、だから感情移入しやすいとか、最悪ある種の達観したプロパガンダであると作り手が開き直っているから。

最近の(といっても結構前から続く)風潮的に、いわゆる悪者も実は良い人だったとか、理があるとかゆー場合には必ずしも主人公(見るもの側の視点を置いていたりする登場人物)は最強であってはいけないんですよ。何故なら相手もある意味で正しい場合に、結局暴力で物事を済まさねばいけない事が物語りの性質上ほとんどであるから。(正義を騙ってなければまあ良いですけど)そんな理不尽な展開(世の中)があってたまるかと。(弱いものがまとまって個を倒すのはまあ有り)

(既にもはや独り言w

特に今のジャンプはそうした糞茶番が座巻する糞雑誌になっているのです。ブリー○とかナ○トはそうした漫画の最右翼だと思います。
とゆーわけで結局何が言いたいかとゆーと、パワーインフレは極力起こしちゃいけないって事です。(チガウ
あとアスクレピオス終わらせるならブリーチ終わりにしろと!だったら最初から載せるな市ねボケがジャンプの編集ども!アフタヌーンが(ほぼ)最強の漫画雑誌!って事です。


オチが水野さんとはw吹きましたwww
わけわからんコメントで申し訳ないです

あとこの話が勧善懲悪の物語なのか否かとゆーとそれは内緒なのです (2008/12/01 02:27:26 PM)

ここにあったかw  
白魔童  さん
辿り着きました^^;;

エーカーがラオウとかぶっとるww
ぃぃ感じだ(・∀・)ウン!!

ギャスパーはジュウザ?トキ??(*'ー'*)ふふっ♪
(2008/12/01 03:52:48 PM)

Re: メルの旅 邂逅篇5『鏡と水面』(11/10)  
わたし さん
更新頻度の低さで言えば、冨樫かさいこ。 (2016/12/15 11:24:34 PM)

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