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ドクターチョコレート第3話。意外なくらいに楽しんでます。乃愛ちゃんが可愛いのもあるけど、坂口健太郎がかなりの当たり役です。10才の少女を子供扱いせず、まるで大人と接するように振る舞ってるけど、それが坂口健太郎の場合、あながち演技でもなく、ふだんの彼を見ても、ほぼ役柄と変わらないのよねw子供と対等な姿勢で真摯に接している。根っからそういうキャラの人なんだろうな。その意味で、この役は、彼以外にありえなかったかなと思います。◇そして、↓この2人がドラマを引き締めてる感じ。ちなみに、主人公の両親を殺害したのは個人ではなく、得体の知れない巨大な組織って雰囲気ですね。まあ、黒幕探しがこれ見よがしに迷宮入りするのは、いつもの秋元のパターンだし、そこにはさほどの期待感もありませんが、今のところは面白く物語を引っ張っています。こっちがバディになっていく? ◇来週は眞島秀和が登場。…また由貴ちゃんと共演?
2023.05.07
ペントレの第3話です。こうしてみると、やっぱり「漂流教室」とはだいぶ様相が違いますね~。「漂流教室」は、水も食料もない砂漠だったけど、「ペントレ」が遭難したのは森の中だから、水もあって、野草もあって、蛙や鳥もいるし、その気になれば虫などのタンパク質も取れる。来週あたりは、カエル食か昆虫食になりそうな予感(笑)。なので、「漂流教室」のように、殺し合いになったり、人肉を食らったりすることにはならない。壮絶さという点では、雲泥の差があります。◇消防士や体育教師は活力がみなぎってるし、槙野万太郎ばりに植物に詳しい人もいるし、リンちゃんみたいにキャンプに慣れた人がいれば、火を起こしてスープも作れます。今回は、竹で作った器と箸で、採れたての山の幸を食べてましたが、まるで料亭や高級旅館の夕飯のようでした!そのうえ、美容師もいるから髪も切ってもらえるし、ネイリストがいるから食紅で爪も染められる?もう、至れり尽くせりじゃん!!お尻が拭けるからフキ。どうやって吊り革はずしたの?電車の部品って簡単に解体できるのねw◇ちなみに、萌歌が着替えたのは体操着を持参していたから。赤楚くんが着替えたのは、外国人観光客から服の提供があったからでした。きっと観光客は数日分の着替えも持ってたろうし、日本でいろんなお土産も買い込んでたんでしょう。…ってことで、若くて、健康で、病気や怪我にさえならなければ、かなり快適に生きていけそうな気がしてきた(笑)。逆に、ドラマとしては、過酷なサバイバルよりも、ごちゃごちゃした人間関係とか、過去の人生の後悔ぐらいしか、描くことがなくなった気もする。なんなら萌歌をめぐる三角関係のラブコメに発展しそう。◇この先の懸案事項としては、病人や老人のケアや薬不足などの問題。さらには、夏や冬をどう乗り切るかってことでしょう。ちょっと気になるのは、夜空にオーロラが見えることですね。もしかして、地軸がずれてしまったの?地軸がずれていたとしたら、夏にはずっと昼が続き、冬にはずっと夜が続くことになる。かりに酷暑や極寒が訪れるとすれば、あらかじめ水や食料を備蓄して、温度の保たれたトンネルや地下空間で過ごすしかないかも。◇でも、いちばん有力なのは、やっぱり「メタバースでしたw」ってオチなのよね~。それなら、ヒゲが生えないのも説明がつきます。
2023.05.06
ペントレの第2話。未来世界への遭難から、2~4日ほど経ったようですが、スマホの電源は切れたものの、あいかわらず、男性にはヒゲが生えてこないし、女性のメイクも崩れていません。◇それどころか!!次週の予告を見ると!!…萌歌と赤楚くんが着替えているw着替えの謎を考察!!#上白石萌歌 #赤楚衛二 #ペンディングトレイン #ペントレ #ペンディングトレイン考察 #ペントレ考察 pic.twitter.com/2waY4fN4ve— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) April 29, 2023意外に快適なペントレライフ?着替えの理由は分からないけど、文明が死滅したとはいえ、文明の遺産はいたるところに残っているのかもしれません。◇とりあえず水場が見つかったので、飲料水だけでなく、入浴とか、洗濯とかも、なんとかなるのかもしれないし、食べられる野草の知識をもった人がいれば、けっこう生き延びられるのかもしれませんし、鍋代わりの器があれば、野草スープを煮込めるかも。◇男性の顔にヒゲが生えてこないのは、脚本の問題というより、演出ぐるみで意図的にやってる可能性が高い。男性がみんなヒゲ面になって、視聴者が画面に耐えられなくなるのを避けてるのか、SNSのトレンド入りを狙って、あえて「ツッコミどころ」を色々とまぶしてるのか、あるいは、なんらかの超常現象で、人間の新陳代謝が止まってるのかもしれないし、じつは「メタバースでした!」ってオチも捨てがたい。はたまた、制作側が「リアリティを追求する気なし!」ってことを、暗に宣言してるのかもしれません。…まったくの余談ですが、Official髭男dismも、そのバンド名のわりには、ヒゲを生やしたメンバーが一人もいないよね。◇ほんとうなら、1~2日ぐらい経った時点で、泣き出す女性や、凶暴になる男性が、もっと沢山いても不思議ではないし、4日も経ったら、泣いたり怒ったりする気力すらなくなって、ほとんど身動きできなくなる人が続出しそうだけど、意外なほどに、まだ理性も精神力も保たれてますよね。夏ではなさそうなので、体臭の問題とか、虫の問題とかは、それほど顕在化しないのかしら?でも、トイレの問題は、そろそろ深刻になってきても不思議ではない。スコップがなかったら穴も掘れないし、水場で汚物を処理できるかも微妙なところです。擦り傷の消毒ができないのも辛いよね。◇人間がいなくなった世界なら、夜には驚くような満天の星空が広がるはずだけど、満月しか見えなかったのは肩透かしです。満天の星空。まあ「満月だったから星が見えない」という理屈も成り立つけど。崖の上からは富士山まで見渡せましたが、水場があるのだから、崖の上が頂上ではありませんよね。そう考えないと物理的に成り立ちません。◇このドラマの最大の不安要因は、「脚本が金子ありさ」ってことなのだけど(笑)いまのところは、まだ決定的に破綻してるとまでは言えない。TBS×金子ありさ×ヒゲダン×上白石姉妹 …といえば、完全に「恋つづ」のフォーマットと同じなので、このままラブコメに移行したら、それはそれで笑えるけどwどうせなら、ミネラルウォーターのペットボトルじゃなく、午後ティーのペットボトルをどこかで拾ってきて、沢のほとりで萌歌&海が飲んでもいいのよね。なんなら白石聖ちゃんもまじえて。
2023.04.30
テレ朝日ナイトドラマ「波よ聞いてくれ」。◇面白かったです。けっして一般受けしそうな内容ではないし、小芝風花のキャラ変に馴染めない人もいるだろうけど、わたしはさほど気にならない。このドラマの世界観が好きです。海辺の町のローカルな雰囲気に惹かれるのよね。昔でいうと、長瀬智也の「彼女が死んじゃった」とか、もっと遡れば、斉藤由貴の「湘南物語」みたいな感じ。そういえば、片岡鶴太郎の「海岸物語」とか、中井貴一と小泉今日子の「最後から二番目の恋」とかも、海辺の町が舞台でしたね。◇このタイトルを見て、てっきり横浜が舞台かと思ってましたが、そうではありませんでした。第1話に「舞波町」という地名が出てくる。別れた男は九州男児。主人公は釧路出身。アルバイト先はスープカレー屋さん。Wikipediaによると、原作漫画は札幌が舞台とのこと。でも、札幌に海はないし、一体どこなの?…で、よくよくTVerを見直してみたら、「千葉県沙村市高崎区舞波町」が舞台と分かりました。これは実在しない地名なのですね。原作者の名前が「沙村広明」なので、そこから作った架空の地名だろうと思います。あんまり千葉っぽさは感じないけれど、まあ、架空の港町だと思えばいいのかもしれません。◇原作は読んでいませんが、海辺の町の人間模様を描く物語になるのかな。それほど暗い話にはならなそうだし、気軽に雰囲気を楽しみたいと思います。それにしても、小芝風花は、意外にグラマーなのでびっくり!つーか、けっこうガタイよくね? 肩のあたりとか。彼女がフィギュア選手だったのは知ってますが、なんか格闘家みたいな体型だと思いました…(笑)。
2023.04.25
日テレ「ドクターチョコレート」。秋元康の企画ってことで、どうも不信感を拭えないけれど、第1話は、予想以上に面白かったです。でもねえ…秋元康の企画って、センセーショナリズムにばかり終始して、結局、中身が何もないまま、たんなる企画倒れに終わってしまいがち。唯一、いままでに満足できたドラマは、テレ東の「じゃない方の彼女」だけです。結局は、脚本家の手腕に委ねられるってことですね。◇でも、まあ、白山乃愛ちゃんをいきなりの主役に抜擢した勇気は買う!東宝シンデレラになって数ヶ月でこれだけ出来るのはスゴイ。彼女は、いま10才なのですね。「レミゼ」のときの山本耕史が10才で、「家なき子」の安達祐実が12才でしたから、そのへんも意識した配役なのでしょう。◇日テレの、しかも東宝シンデレラによる医療サスペンスなので、浜辺美波の「ドクターホワイト」っぽくなるのかと思いきや、雰囲気的には、完全に「ブラックジャック&ピノコ」でしたね。つまり、サスペンスというよりファンタジーの感が強かった。いい意味での漫画っぽさがあって、可愛らしさと楽しさを押し出してる感じ。チームの全員にあだ名をつけたのも分かりやすいし、最後にみんなでチョコレートを食べるのも悪くないと思います。— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) April 23, 2023 ◇ところで、西野七瀬&由貴ちゃんは、テレ東の「言霊荘」につづいて秋元ドラマでの共演。まあ、由貴ちゃんは高井麻巳子の親友だから仕方ない。乃愛ちゃんの後見人って感じもあるし。西野七瀬の美しさも、物語のよいアクセントになってます。↓これは笑ったw — Dr.チョコレート【公式】毎週土曜よる10時! (@drchocolate_ntv) April 19, 2023
2023.04.23
楳図かずお&大森美香の「漂流教室」は、もうどんな結末だったのか覚えていませんが、やたらと絶望的な話だった記憶がある…。でも、あらためてネットで調べてみたら、(すくなくともドラマのほうは)タイムワープによるパラレルワールドの話で、最後はそれなりに希望のある結末だったらしい。◇今回の「ペントレ」では、萌歌が赤ん坊を抱いて走っている場面が、たぶん最後のほうに出てくるはずだから、やはり何らかの希望がある結末になるとは思う。…でも、そこに至るまでの道のりは、かなり苛酷で壮絶なものになるのでしょうね。◇今回は、子供たちではなく大人たちの物語なので、たんにサバイバルが描かれるだけでなく、それぞれの「過去」の物語にも重心が置かれるようです。とくに、主人公と出所した弟との物語が軸になる感じ。杉本哲太は、結婚指輪を投げ捨てて「フリーダム!」と叫んでましたが、そのうち妻と子供が恋しくなるんじゃないの?(笑)◇ちなみにタイトルの意味は、「(時空間に)宙吊りの列車」みたいなことでしょうか。— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) April 21, 2023
2023.04.22
テレ朝「警視庁・捜査一課長」スペシャル9~映えスポット連続殺人事件~ を観ました。シャープな映像にふざけた脚本。ますます独自路線を邁進してました(笑)。青春という名のラーメン?◇ 登場人物は…見た感じを語る三田寛治。特ダネ記者の徳田寧々。強情さが勝る郷城勝。ぽよぽよの大福売ってるぽよの豊福保代。イケイケで行こうの池井景子。勝とうと勝つ気の加藤香月。エグいほどレベチな未来に託した江口未来。エグチの謎を秘める江口姫子。咎は酷いよ外川英雄。才気に欠ける斉木翔。盛りすぎてるな森杉照奈。羽ばたきたいなら羽場滝奈。(演じたのは「ギャル論破王」のみりちゃむです)…て感じ?ぽよぽよの大福売り。白い粉の正体。◇ まさに今回は、ギャルマインドでやりたいようにやったスペシャル版で、難解なギャル語の解明が最大のテーマでした。大岩が電話を受け取ると、「なくなったのは木曜夜8時」だと!…何が?? 以下は、真相のネタバレです。ラスボス"GM"の意味は、「General Manager」でもなければ、「ごめん」や「ギャルマインド」の略でもなく、やっぱり「Gojyo Masaru」の頭文字だったようです。"エグチ"と呼んだ意味も、「エグいほどレベチ」の略ではなく、「江口の未来のぶんを生きている」からでした。あまりにもギャル語に翻弄されすぎていたのですね。スケバンだったかどうかは内緒。◇ ところで、笹川部長ですが、なにやら謎の首輪を嵌められていました。大岩は笹川の額に自分の額を合わせて、これを取り外していました。どういう仕組みなのでしょうか?てっきりメタバース的な装置かと思いましたが、Twitterを見ると、エヴァの「DSSチョーカー」バトロワの「ガダルカナル22号」…などの説があるようです(汗)。◇ こまかいあらすじは次のとおり。12年前に大岩に出会ったころ、エグいほどレベチなギャルのエグチ(江口未来)に、トイプーおにぎりを貰って生き延びていた池井景子は、ともに論破大会を目指したエグチを病気で失った後、GM(ギャルマインド)革命を起こすためにイケイケで行こうと、論破代行会社のGMレボリューションを設立し、未来のエグチになり代わって街中のギャルにおにぎりを配っていました。GMレボリューションのGM(ゼネラルマネージャー)になった加藤香月は、才気に欠ける斉木翔などの秘書を使い捨てる強情なGojyo Masaru(郷城勝)に、論破で勝とうと勝つ気で挑みましたが、勝ちきれませんでした。それどころか特ダネ記者の徳田寧々を殺すように強要されますが、エグチの未来の姿になり代わって殺害を試みたものの、自分を「エグチ!」と呼んだ徳田寧々のことを殺せませんでした。結局、エグチの未来の姿になり代わって、徳田寧々も加藤香月も殺すという酷い咎を負ったのは、強情なGojyoにインサイダー情報を流していた外川英雄でした。エグチの未来のぶんを生きているギャルたちを、おにぎりで支援しつづけていたエグチの母の江口姫子は、池井景子に咎が及ばないように死体を移動したのでした。◇いろいろイミフすぎて、かなりキャパいけど、とりま、空き時間も楽しそうでした。床嶋佳子と仲よさげな由貴ちゃん。◇ じつはカッコいい山本清香のテーマ曲!↓これもカッコいいのよね。↓これも素敵だし。↓これは大福のブルース。
2023.04.06
あらためて「舞いあがれ!」の最終回。柏木や倫子たちは、なぜか東大阪の「ノーサイド」に集合していました。これは大きな謎とされています。◇ひとつの可能性として、国際線のパイロットである柏木が、たまたま関西空港に降りる機会に合わせて、他のメンバーが大阪に集まったとも考えられます。しかし、《かささぎ》の初フライトの現地ならともかく、リモート視聴ならどこででも見れるのだし、航空学校の同窓生にとっては、東大阪なんて縁もゆかりもない場所なのだし、しかも、舞はそこにいないのだから、彼女の兄の義父の喫茶店に集まっても仕方ありません。…ってことで、もしスピンオフが作られるとすれば、そこらへんの謎も明かされるんだろうと思います。ただ、わたしには、もうひとつの仮説もあります。◇舞が五島に着陸するとき、「まもなく1つめの目的地に到着します」と言ったので、わたしはつい、「やっぱり次の目的地は宇宙なのかしら?!」などと考えたのだけど、…よくよく考えてみると、次の目的地はたぶん離陸した最初の海岸であり、そこからさらに、東大阪まで飛ぶんじゃないかと思うのですよね。そうでもなければ、柏木たちがノーサイドに集まる理由は見当たらない。つまり、ノーサイドに集まった面々は、そこから小学校のグラウンドあたりに全員で移動し、舞や貴司や歩の乗った《かささぎ》の着陸を待つのでは?◇実際、《かささぎ》は、「五島列島~本土で就航した」とはいうけれど、その本土ってのがどこなのかは明示されていません。離陸したポイントも、なんとなく長崎の海岸かな~とは思ったものの、ほんとうのところはよく分からない。もしも《かささぎ》が、たとえばドクターヘリみたいに、緊急時に飛ぶことまで想定しているのなら、たんに同じ場所を定時に往復するのではなく、いつでも、どこにでも、フレキシブルに飛べるのでなければならないし、たまたま最初の操縦者は舞になりましたが、ほかにも操縦できる人間がいなければ成立しない。電力で飛ぶ《かささぎ》は、一回の飛行距離がどれほどか分からないし、一回の充電時間がどれほどか分からないけれど、すくなくとも、東大阪で製造した機体を、最終的には五島まで運んだのだから、(トラックや船で輸送したのでなければ)もういちど自力で東大阪まで戻ることだって、出来ないはずがないのよね。なお、五島から大阪までは800kmぐらいあるようで、一般のヘリコプターなら4時間ほどの距離です。◇ちなみに、画面で見るかぎり、《かささぎ》の乗員定数は3人でしょうから、もし東大阪に戻ってくるとしても、ノーサイドに集まった面々と会えるのは、やっぱり舞と貴司と歩の3人だけでしょうね。一部の視聴者は、柏木と若葉が対面することを熱望してますが、残念ながら、若葉を東大阪に連れてくるのは無理です。そもそも、彼女はめぐみ丸を運転しなきゃならないし、東大阪には何の用もありません(笑)。柏木のほうも、国際線のパイロットですから、かりに東大阪で舞に再会したとしても、すぐまた関空から旅立つだろうし、長崎くんだりまで若葉に会いに行く暇などなく、そもそも会いにいく必要もありません。…赤の他人なので(笑)。柏木若葉「silent snow」
2023.04.05
テレ東「今夜すきやきだよ」が終了。もともと2人が一緒に住んでた部屋は、家賃の8割をアイコが負担してたから、彼女が結婚して出ていったら、家賃はどうするんだろう?と思ってたけど…まず、アイコは、結婚してまもなく出戻ってきて、いわゆる「別居婚」をはじめましたよね。その後、出産と子育てをきっかけに、ようやく夫婦生活を再開した。その頃になると、トモコのほうも、自分ひとりで家賃を払えるようになったらしく、アイコ名義だった部屋を自分名義に変更しました。◇アイコは、ドラマの序盤で、≫ 恋愛とか結婚に、家事能力ってマストなの?≫ 楽しい会話と幸せなセックスがあればOKじゃないの?と言ってたので、きっと彼女には「通い婚」が合ってるよね~。と思ってたんだけど、…アイコが最初に選択した別居婚は、まさに「通い婚」みたいなものでした(笑)。いまどきの別居婚ってのは、もともと一人暮らしをしていた男女が、その住居を変えないまま婚姻関係を結ぶことなので、平安貴族みたいに、あっちこっちの女のもとへ通うわけじゃないけど、まあ、これも一種の「通い婚」と言えなくはない。双方に経済力があって、生活スタイルも確立してるなら、あらたに部屋を借りて同居をはじめるよりも、従来の生活をたがいに維持するほうが楽なのでしょうね。上沼恵美子みたいに、もともと連れ添った夫婦が、婚姻関係を解消せずに別居することも、(たんに離婚の手続きが面倒だから?)最近では「別居婚」と呼ぶらしいのだけど、その場合にも、やはり経済的な余裕は必要です。◇もちろん同居するほうが経済的には安上がり。しかし、別居婚は、緊急時非難などのセーフティネットにもなるし、人間関係やサービスの多用な選択肢も確保できるし、経済的に余裕があるのなら、生活スタイルもそのほうが安定的な気はする。DVも発生しにくいかもしれません。ちなみにアイコの場合は、結婚を機にトモコと同居していた部屋を出て、いったんは夫の家に引っ越したけれど、すぐに出戻ってきた後は、逆に夫のほうが同じマンションに部屋を借り、同一マンション内での「別居婚」となりました。それでも、それぞれが支払う家賃の総額は、さほど変わらなかったわけですね。トモコはもともとルームシェアだったし、夫も、もともと独り暮らしだったから。一般に、「別居婚」は生活費が倍になるはずだど、それは双方が一人暮らしをすればの話であって、それぞれがルームシェアや実家住まいなどをすれば、意外に安上がりな「別居婚」もありうるってこと。◇若い夫婦が「別居婚」をする場合、子供をどこで育てるかという問題が出てくる。アイコは、夫婦で子育てをする一般的な生活を選びましたが、たとえば、トモコとのルームシェアを維持したまま、そこで子育てする選択だってあり得なくはなかった。トモコも、アイコの子供が可愛くて仕方ない感じだったし、夫が育休を取るよりも、トモコに謝礼を支払って手伝ってもらうほうが、かえって合理的だった可能性もあります。実際、妻が実家に住むような「別居婚」なら、そこで両親と一緒に子育てをすることになる。◇ルームシェアをしていたときに、アイコが生活費を稼いで、トモコが家事を担当したように、それぞれが得意な役割を分担するという発想に立てば、昔の上流家庭における乳母や家政婦みたいに、夫婦の外部で子供を育てていく選択があってもいいと思う。外部に委ねることを「夫婦の責任放棄」と非難すべきじゃない。子供にとっても、核家族のなかで育つことが幸福だとは限らないし、むしろ開かれた人間関係のなかで育つほうが健全かもしれない。実際、子育てにおける「夫婦の責任」といっても、現実に子育てをするのはたいてい妻一人なのだから、それは共依存の不健全な母子関係に繋がりかねないし、かえって非合理な環境での子育てというべきです。すべてを夫婦の内部で完結させるのではなく、「別居婚」によって多用なネットワークが活かせるなら、そのほうがはるかに合理的。それは子育てのみならず、生活全般について言えると思う。◇ところで、アイコが出産するかどうか迷ってた時期がありましたが、あのときの夫との会話を聞いてたら、現在の夫婦が「子供をもつ動機」の弱さを、あらためて感じてしまいました。国家レベルでいえば、「少子化対策ために子供が必要」という理由ははっきりしてるけど、個人レベルでは、子供を必要とする理由って、ものすごく弱い。せいぜい、「子供が好きだから」とか、「家族を作りたいから」とか、そういう感情的で漠然とした動機しかない。あとは「出来ちゃった」という結果論でしょう。昔のように、「跡継ぎが必要」とか、「働き手が必要」といった明確な動機ではありません。アイコの夫は、「子供がいたほうが楽しそう」と話してましたが、それってペットを飼うときの動機と大差ないし、生まれてくる子供にとって幸福なのかも疑問に感じる。むしろ、出産のリスクや、キャリアへの影響や、生活上の負担、経済的な負担などを考えれば、子供を産まない選択のほうが合理的に思えてしまう。◇国家レベルでは「子供を増やす選択」が合理的なのに、個人レベルでは「子供を産まない選択」のほうが合理的。つまり、マクロとミクロの利益は相反する。若い世代からの財政収入を当てにしつつ、子供への財政支出はしないという発想が変わらない限り、この矛盾はけっして解消されません。結局のところ、子供は社会が産み育てていかなければならない。その負担を個人に負わせている限り、この矛盾はけっして解消されない。◇出産の必然性どころか、結婚の必然性さえ、どんどん目減りしています。今回のドラマで明らかになったのは、同居する人との生活上の相性が、セクシャリティやジェンダーとは無関係だってこと。たとえセックスをする相手が異性でも、生活上の役割分担は同性が相手のほうがいいこともある。逆に、アロマアセクの人であっても、疑似結婚のような生活があったほうがいい場合もある。ジェンダーの点からいえば、女性のほうが外で働いて、男性のほうが家事や育児をするのが合理的なこともある。だとすれば、女性の苗字は変えないほうが好都合だったりもする。同性婚や夫婦別姓に反対してるのは、おもに「統一教会」系の保守政治家ですが、これがいかに結婚や出産の妨げになっているかが分かります。◇国は、少子化だけでなく、そもそも未婚率が深刻だと思ってるでしょうが、個人の視点で考えれば、結婚という選択は、セクシャリティの相性だけでなく、ジェンダーの壁を乗り越えて相性を測るのも困難でめんどくさいし、生活スタイルを変えることや、キャリアを失うことのリスクも大きいし、むしろ結婚しない人生のほうが安定的に思えてしまう。こういうことは、学者や、政治家や、官僚が、たんに机上で数字の計算だけをしても解決しません。それが現代の「現実」だと思います。◇◇◇…さて、話はぜんぜん変わりますが!トリンドル玲奈は、NHKの「わたさば」で丸山礼と仲良くなったらしく、民放の旅番組では秩父でふたり旅をしてました。年齢はトリンドルのほうが6つ上らしいけど、二人の関係性がNHKのドラマとほぼ同じだったので、それが可笑しかったです。◇…こういうことを書くと、最近は「差別だ」と言われるかもしれないけど、トリンドル玲奈みたいなフランス人形みたいな人が、家でエプロンしてご飯作って待っててくれるって、それだけで、今回のテレ東のドラマの設定は、おとぎ話みたいなファンタジーだったのよね(笑)。こんどは、萩原利久とのドラマがはじまるようなので、それもちょっと気になってます。甲田まひるの曲もすこし漁りました。アジアンポップとヒップホップがうまく融合してる。
2023.04.04
Eテレの「すイエんサー」が終了。女の子のための理科番組って感じで、コンセプトが面白かったし、子供だったら真似したくなる実験をやってました。14年間も続いたってことで、番組の視聴者のなかには、ほんとにリケジョになった人もいるでしょうねえ。◇最後の「知力の格闘技」は、すいチームがエリート大学チームに勝ってましたが、まぐれ当たりじゃなく、安定的な実力で圧勝してる感じが凄かったです。前にも書いた奥森皐月とか、由貴ちゃんのミスマガの後輩にあたる豊田ルナとかが、(↑この人はなんとなく若いころの薬師丸ひろ子に似てます)このチームにいたけど、やっぱり頭よさそうなのよね。◇過去のすイガールには、清野菜名とか、福原遥もいたとのこと。ちなみに「すイエんサー」って、「サイエンス」のアナグラムだったことを、いまになって、はじめて知りました(笑)。奥森皐月と豊田ルナ。向かい風に負けず飛行機を飛ばそうとする福原遥。隣はガッテンの山根千佳。すでに舞いあがろうとしてる。
2023.04.02
朝ドラ「舞いあがれ!」が終了。てっきり舞は宇宙へ行くものと思ってたのに!地球の大気圏内に留まりました。しかも、だいぶ低空(笑)。とはいえ、朝陽くんは航空宇宙工学を専攻してるらしいし、娘の歩ちゃんは宇宙人とお友達みたいだから、大気圏を超えるのは次の世代に託された感じ?◇まあ、「空飛ぶクルマ」にも夢がありますよね。Wikipediaによると、eVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft/イーブイトール)は、電動の垂直離着陸機である。人が乗り込める大型の有人eVTOL(空飛ぶクルマ、有人ドローン)の開発も進められている。日本の経済産業省は、eVTOLについて「電動垂直離着陸型無操縦者航空機」を正式名称としている。つまり、電気を動力として、垂直離着陸が可能であり、飛行に航空機パイロットを必要としない航空機を指す。2021年10月29日、日本のスカイドライブが型式申請を行った。2022年9月7日、大阪府は2025年大阪・関西万博での商用運航を目指す「空飛ぶクルマ」について、2023年2月に大阪城公園で有人の実証飛行を行うと発表した。大阪府によると、日本国内での有人の実証飛行は初めてという。機体は米国「LIFT AIRCRAFT」社製の「HEXE(ヘクサ)」の1人乗りの機体を使用し、巡航速度は時速約100キロ。大阪城公園敷地内で離着陸や昇降時の動作を確認する。観覧席も設ける予定。…だそうです。◇アビキルが開発した空飛ぶクルマは、騒音の少ない小型ヘリコプターって感じで、ちゃんとパイロットが操縦してましたが、経産省が目指してるのは、あくまでパイロットの不要な航空機です。なお、経産省に型式申請した「スカイドライブ」は、東大阪ではなく、愛知の会社。やっぱり日本の機械産業は、大阪じゃなくて愛知なんでしょうか?だとすれば、それはやはり、家康が全国の職人を愛知や静岡に集めたからですね。≫ 愛知のトヨタと、静岡のヤマハ◇空飛ぶクルマが普及するために必要なのは、1.衝突や渋滞のない飛行ルートの確保。2.天候悪化や燃料切れや故障の際に緊急着陸できる場所の確保。3.墜落や騒音被害の回避。…ですよね。また、自動車が走るのに道路が必要なように、空飛ぶクルマが飛ぶのには空気が必要ですが、地上の空気は道路ほどには安定していません。つねに無風状態ではないからです。しかし、風の影響を受けない安定的な飛行ができなければ、乗用車に代替するのは難しい。なお、上の「スカイドライブ」のイメージでは、途中まで自動車として一般道を走行し、道路脇の駐車スペースから離陸しているようです。きっと着陸にも何らかの駐車場を使うのでしょう。◇もし空飛ぶクルマが普及したらどんなことが起こるでしょうか?・移動時間の短縮。移動距離の増大。・山や川を越えるのが容易に。・災害避難が容易に。・大陸の国境が有名無実化。・人々が上空からの視野を獲得。人間の世界観が変容。・地上の交通渋滞が解消。もし空飛ぶクルマが乗用車に代替したらどうなるでしょうか?・地上の交通事故が激減。・アスファルトの車道が激減。・都市部のヒートアイランド現象が改善。・既存の車道の土地活用。・建物の玄関は一階でなく屋上に。・屋上の高さが一律になって建物どうしが空中で連結。…などなど。社会は劇的に変わるかもしれません。おつかれだったね~ぃ。画像は「ゆるキャン△2」です(笑)。
2023.04.01
TBS「夕暮れに、手をつなぐ」が終了。最終話は、神回だったかも。美しい映像と良いシーンの連続だったから、夢中になってのめり込んでしまいました。第1話と最終話だけを見れば、ファンタジックで美しいラブストーリーだったともいえる。◇北川アンチの視聴者は、彼女のドラマを、「古臭いバブル期の恋愛ドラマ」だと侮蔑するけれど、それは言いがかりの面もあって、「半分青い」や「ウチカレ」は、すくなくとも恋愛を成就させるためのドラマではなかったし、作品のテーマも恋愛とは別のところにあった。だから、わたしは今回も、「世界で一番美しいラブストーリー」なんてのは、おおかたミスリードのキャッチコピーだろうと踏んで、これは実際は恋愛ドラマではなく、ヒロインの恋愛も成就しないと予想してました。しかし、終わってみれば、わりと王道のラブストーリーでしたね…。◇わたしは、最後の最後まで、これは恋愛ドラマではないと信じてたので、むしろ重要なのは、自傷メンヘラ同性愛少女のセイラの存在や、娘を捨てた母親の存在なのだろう、と考えてました。つまり、空豆や音が、セイラや母親の苦悩にどう向き合うかが、この物語の最大の肝だと思っていた。しかし、空豆に対するセイラの愛が明らかになったのも、母親と空豆の再会が果たされたのも、すでにラスト近くだったから、そこから後は、さしたる波乱もなく、セイラの「妹」や「自傷」や「同性愛」の問題も、母親の「苦悩」や「後悔」の問題も、娘との「葛藤」や「和解」の過程も、とりたてて深く突きつめられることはなく、あっさり落とし前がついちゃった感じ。たとえば、序盤の爽介だのアリエルだのの話を割愛して、あと2~3話ぶんくらい物語を前倒しすれば、もっと深い内容にも出来ただろうけど、結局のところ、セイラの存在も、母親の存在も、空豆と音の恋のダシでしかなかったっぽい。誰か、優しくしてくれる人に会いたい。セイラみたいだ。セイラの家の事情や、嘘の理由、弱く震える心、オンエアではカットされたものが、たくさん入ってます。セイラはおかしな人ではないです。 https://t.co/TDhCpVsShs— 北川悦吏子 (@halu1224) April 1, 2023 ◇シュガーベイブの音楽だとか、ナミビアのYoutube動画だとか、なにやら気まぐれに挿入されたような要素も多く、まるで一筆書きみたいな脚本だと思えたし、北川悦吏子も、さかんに「体調が悪い」と言ってたので、もしかしたら、体力や精神力がもたなくて、全体の構成を考えたり、細部の吟味や推敲をする余裕がなく、ほんとに一筆書きで書いてるんじゃないの?…とも疑ったのだけど、まあ、王道的なラブストーリーとして考えれば、全体の構成もこれで間違ってなかったのだろうし、ジャニヲタを喜ばせるためのドラマとして見れば、むしろこれこそが正解だったのかもしれません。やっと仕事部屋の整理。空豆の言葉も音の言葉も全部捨てる。思いつくとこうして、打っておく。実際、使えるのは10分の1。バイバイ、夕暮れー。 pic.twitter.com/VFVhriPB0j— 北川悦吏子 (@halu1224) April 1, 2023◇しかし、肝心のラブストーリーも、いまひとつ説得力に欠けたのは否めない。そもそも、空豆と音が、いつお互いのことを好きになったのか、正直、あまりよく分からないし、二人が一緒の下宿で過ごした期間は、設定上どのぐらいの長さだったのか分からないけど、体感的には、さほど長くなかった気がしたし、たしかに二人でじゃれあったりはしてたものの、それで恋愛感情が育まれたようには見えなかった。爽介やアリエルの存在は、いわゆる「三角関係要員」だったのでしょうが、その三角関係をのりこえて、空豆と音の恋愛感情が高まった…とも、あまり思えない。◇広瀬すずは、たしかに空豆のキャラになりきってたけれど、その「恋」にのめり込んでるようには見えなかった。…というより、こんなことを言ったら身も蓋もありませんが、ぶっちゃけ、広瀬すずって、そこらのイケメンよりもずっと男前で、恋愛への興味や、異性への興味が乏しいように見えるのよね。もしかしたら、北川悦吏子もそれを見越したうえで、空豆のキャラクターを作ってたかもしれないけれど、それにしても、空豆の恋愛には、いまひとつ説得力が乏しかったと思う。◇そもそも、「北川悦吏子の脚本で広瀬すずのラブストーリーを作ろう」と考えたのは誰だったんでしょうね。脚本家自身だったのか。広瀬すず側の事務所だったのか。あるいはTBSのプロデューサーだったのか。いまさらだけど、そのコンセプト自体に無理があった気がしないではない。現在の広瀬すずは、あまり恋をしそうな女性には見えないからです。北川悦吏子は、ほんとうにラブストーリーが書きたかったのかしら?そして、広瀬すずは、ほんとうにラブストーリーに出たかったのかしら?◇とはいえ、今回の作品にも、北川ドラマの魅力は随所に感じられました。たとえば、ファッションデザイナーの遠藤憲一なんて、ほかではなかなか見られないし、もともとエンケンは上手い俳優だと思うけど、このドラマでも彼の上手さは際立っていた。最終回での、空豆と久遠のダイアローグも素晴らしかった。東京に戻ってこねえか?もったいないじゃねえか、せっかくパリで成功したのによ。おいは、ファッションもデザインも、よう分からんくなってしまったとよ。何のために誰のために作っとるのか、よう分からんくなってしまった。作ることにときめかなくなってしまった。心あるデザイナーなら、いちどは通る道だ。ここがまだ途中やと言うとですか?お前のデザインには力がある。世界中の人に着てもらいたいと思わないのかよ。おいは目の前の人が幸せになるのが見たか。まったく、おまえ正真正銘のバカだな。そんだけ才能あんのによ。それ神様のギフトだぞ。神様に何をどう貰っても、どう生きるかはその人の自由よ。人間も生まれて死ぬなら、ファッションは一瞬の夢だよ。だからこそ美しいんじゃねえか。そうじゃ。でも、もうええと。俺には負け犬の遠吠えにしか聞こえないけどな。人生を戦うために生まれてきた人と、楽しむために生まれてきた人がおると。おいは楽しむために生まれてきた。先生とは違う。こん服、おいが作ったとよ。よかデザインやろ?このリボン、みんな真似して作りよらす。このリボンのデザイン、片方が短いんだな。それを人が真似して作るとどうなる?両方同じ長さにしてくんじゃないのか?それ、おまえ気になんないのか?片方だけもう少し短くしてくんないかなとかって思わないのか?思う。それが神様のギフトだ。お前に与えられた才能だよ。生きていくのが楽しいだけのやつなんているかよ。俺そんなの信じないね。どう生きたって楽しいだけなんてあるわけがない。楽しみながら戦うんだよ。なあ、もういちど東京でやり直さないか。いや、おいはもう自分の道ここで見つけましたんで。そっか。これぞダイアローグって感じ。どちらが正しいわけでも、どちらが間違ってるわけでもない。どちらの言い分にも理があるのよね。◇はじめて見た俳優ですが、黒羽麻璃央も美しかったです。やっぱり北川悦吏子は、優しい男のエレガントな魅力を引き出すのが巧い。トヨエツや佐藤健はもちろん、中村倫也を見出したのも北川悦吏子ですよね。◇わたしは、てっきり中村倫也のことを、仮面ライダー俳優か何かだと思っていた(笑)。でも、今回の報道などを見ると、やっぱり最初の大きなブレイクは、朝ドラの「半分、青い」だったようです。わたしは、とくに彼を意識して追ってはなかったけど、「崖っぷちホテル」とか、「凪のお仕事」とか、「美食探偵」とか、「岸辺露伴」とか、「石子と羽男」とか、中村倫也の主要な作品を意外に押さえていた。さらに調べてみたら、「風のハルカ」とか、「神はサイコロを振らない」とかにも出てたのね。ぜんぜん覚えてませんが(笑)。朝ドラの「風のハルカ」に出てたってことは、大森美香も、彼の魅力を見抜いていた可能性が高い。脚本家の能力って、そういうところに出ます。
2023.03.31
今年の大河「どうする家康」は、だいぶアンチが多いらしいのだけど、わたしは、かなり面白いと思って見てる。裏切りや欺きが横行して、敵と味方がはげしく入れ替わる戦国の世を、コンフィデンスマン的な発想でドラマティックに描くところに、古沢良太の真骨頂があるのでしょうね。大胆な虚実をまじえた構想力が前面に出ています。◇なまじ歴史を知っているアンチにとって、自由に構想されたフィクションは目障りかもしれないけど、むしろ大河ドラマにこそ自由なフィクションは必要です。NHK大河の時代考証は、「分かっていることは忠実に」「分からないことは可能なかぎり自由に」というのが原則だと思う。いちばん良くないのは、根拠のない既存の解釈を追認することです。固定観念にもとづくイメージは、誤まった歴史観を助長しかねないし、のみならず、歴史研究の妨げにもなってしまう。それを避けるためにも、史実が完全に明らかでない部分については、過去の解釈を積極的に変えていったほうがいい。凝り固まった歴史イメージを振り落とすために、なるべく自由な解釈に開いておくほうがいい。それこそがNHK大河の役割ともいえます。民放などの時代劇は、既存の安易なイメージに寄りがちだから。◇歴史小説や時代劇を愛好する素人ほど、新しい自由な発想に対しては否定的になるものですね。実際、アンチの多い大河ドラマでは、時代考証への批判が、なぜか一般の視聴者から出てくる。だけど、NHKの考証担当者よりも詳しい一般視聴者なんて、そうそういるわけがないのよね。ほとんどの場合は、たんなる半可通の素人が、過去の時代劇や歴史小説を「史実」と勘違いしてるだけ。そういう馬鹿な批判には取り合う必要がありません。今回の「どうする家康」への批判を見てても、ギャーギャー騒いでるのは半可通の素人ばかり。ほんとうの専門家からの批判はほとんど見られない。◇◇古沢良太は、瀬名の奪還エピソードについても、椿姫=お田鶴のエピソードについても、おそらく虚実をまじえて物語を構成したのでしょうが、それだけに非常にドラマティックだった。お田鶴が夫の裏切りを密告したという部分などは、まったくの想像なのだろうけど、実際の文献でも、夫は家康と内通し、妻は家康と戦ったとされていて、結果として夫婦の立場が違ったのは間違いないし、であれば、妻の「密告」という仮説にも整合性はあります。◇大筋でいうと、序盤では「今川家の敗北」を描いた形ですね。公家の文化にかぶれた今川家は、弱肉強食の戦国の世に適応しきれなかった。Wikipediaによれば、「戦乱を避けた公家(冷泉為和ら)が駿府に下向したこと」が、今川家に円熟した公家風文化をもたらしたらしいのですが、それがかえって裏目になってしまった。野村萬斎が演じる義元は、いかにも雅な公家風だったし、蹴鞠しかできない氏真も、戦国大名としては無能だった。お田鶴も、今川家の雅な文化を愛するあまり、戦国の世に適応していく者たちを恨まずにいられなかった。逆に、瀬名や元康は、苦しみながらも戦国の世にかろうじて適応しえたってこと。そのことに説得性を与える物語として、序盤の人間ドラマが構想されていたと思います。◆ただし、椿姫と氏真の人物像については、古沢脚本の難点も感じました。というのも、いったん悪役的な印象をミスリードしておいて、後になって初出しの回想シーンでそれを修正していたからです。彼らが「椿」や「蹴鞠」を愛する平和主義者だという話は、視聴者にとっては初めて知る情報だったから、これは伏線の回収というよりも、いわば後出しジャンケンですね。コンフィデンスマン的な《どんでん返し》ならともかく、あえて大河でこういう手法をとる意味は乏しいと思う。氏真は無能ではなかった!(クリックすると「YouTube 歴史探偵」が見れます)◇もうひとつ、序盤の内容で興味深かったのは、一向宗の描写です。一般に、戦国仏教は「来世志向」だと思われてるけど、ドラマではむしろ「現世志向」のように描かれてました。いわく「現世の罪は現世かぎり」。この世の罪は来世で帳消しにされる、と。信徒たちは、人生を思いきり楽しんでる感じでした。寺内町には、豊富な生産物の取引や分配があり、自由な恋愛があり、戦はなく、歌や踊りなどのエンタメもある。ぶっちゃけ、とても世俗的なのですね。NHKプラスでは、英雄たちの選択「三河一向一揆の衝撃」が再配信されてましたが、そこでも磯田道史らが、「中世の寺院は大学だった、土倉は銀行だった」「タックスヘイブンだから金持ちが集まった」と話してました。◇ヨーロッパにせよ、日本にせよ、中世は、宗教的蒙昧が支配してしまった時代ですが、日本の場合は、「忠義のために死ね」という武士の信念のほうが、仏教よりも、はるかにカルト宗教的であって、それにくらべれば、むしろ現世主義的な仏教のほうが、世俗的な近代性を先取りしていたかもしれない。そもそも、本来の仏教は、信仰というより哲学に近いもので、その根本にあるのは「空」の世界観だから、キリスト教やイスラム教みたいに、来世なんぞを前提に考えるはずがないのよね。そうした意味でも、戦国仏教が、宗教的な力じゃなく、むしろ世俗的な力によってこそ民衆の支持を集めた、という解釈は、意外なくらい説得的だと思う。◇◇古沢良太が、かなり自由な構想をもって、大胆に物語を作ってるのは間違いないけど、同時に、時代劇の場合は、なかなか史実どおりには出来ない部分もある。その最たるものが、古語です。前作「鎌倉殿の13人」でも、現代語と侍風の言い回しが混在してましたが、現代語が古語でないのはもちろん、じつは侍風の言い回しでさえ、ほんとうの古語ではない。能や歌舞伎でさえ理解できないのだから、当時の話し言葉や書き言葉を正確に再現してしまったら、一般の視聴者には、まったく理解ができません。なので、時代劇で話される言葉は、それっぽく作った「時代劇言葉」でしかなく、ほんとうの古語ではない。それを勘違いして、「大河ドラマでは正確な古語を話すべき」などと思い込む視聴者は後を絶たないのだけど、それもまた、馬鹿な批判の類です。◇これと同じことは、現代劇の方言についても言える。北川悦吏子の「夕暮れに手をつなぐ」では、広瀬すずの九州方言にネットの批判が殺到していたけど、ドラマで使われる方言が正確である必要はないし、もし、青森や沖縄などの方言を正確に再現したら、ほとんどの視聴者には理解できなくなります。そもそも、古語にしても、方言にしても、どこかに「正しい言語」なるものが存在するわけではなく、時代ごとのグラデーションがあり、地域ごとのバリエーションがあるだけなので、せいぜい、それっぽくすることしか出来ない。言語に対して無知な人間ほど、「正しい言語を使え」などと主張するのですが、それこそが馬鹿な批判のたぐいであって、まともに取り合うべきものではありません。所作などの細かい振る舞いについても同じですが、すべてを正確に再現していたら、ドラマとして成立しないし、どこにも「正しい言語」が存在しないのと同様に、確定的に「正しい所作」が存在するわけでもない。言語にせよ、所作にせよ、さまざまな可能性を排除しないことのほうが重要です。◇◇…所作といえば、元康と瀬名のキスシーン(寸止め)には驚きました。日本で「接吻」という翻訳語が生まれたのは明治だし、恋人や夫婦がキスをするようになったのも、おそらくハリウッド映画の影響だろうから、日本人のキスは、わりと最近のことだと思ってました。しかし、じつは日本にも、室町時代から性的な行為としての「口吸い」があり、江戸時代の春画にもキスシーンは描かれてるらしい。いまだに違和感はありますが、今後は時代劇でもキスシーンが普通になるのかも。
2023.03.28
もう最終週なのですね。予告を見ても、物語がどこに着地するのか、まったく読めない。いやいや、「舞いあがれ!」だけに、どこにも着地しないで舞いあがったまま終わるとか?わたしの関心はいまだに、「大気圏を超えるのか、大気圏内に収まるのか」…ってところにあるのだけど、そんなこと気にしてるのはわたしだけかも(笑)。Tverでは「ゆるキャン△2」を視聴中。同じ女優であるのを忘れてしまうくらい、ぜんぜんキャラがちがうのよね。「すイエんサー」も終了。そして、過去のスゴ技動画などを番組サイトで公開中です。福原遥さんによる紙飛行機作り…リアル #舞いあがれ!な動画もございます。他にも「手紙を超ピッタリ3等分に折りた~い!」とか「カレーうどん 飛びはねさせずに食べた~い!」などございます。▼動画を見る▼https://t.co/JXd6Nybg4V pic.twitter.com/0ZV6VsFXT9— NHK広報 (@NHK_PR) March 4, 2023
2023.03.27
読売テレビ「しょうもない僕らの恋愛論」 が終了。ほとんどの視聴者は、拓郎と絵里が結ばれるとか、くるみと悠が結ばれるとか、そういう結末を予想したと思うけど、…ぜんぜん違いました。かといって、絵里は古舘の息子と結ばれるわけでもなく…。わたしは見ていませんが、Huluでは「10.5話」が配信されていて、そこでは、どうやら、くるみと悠が結ばれ、絵里と古舘の息子が結ばれる、…みたいな方向に展開してるらしい。実際、くるみと悠にかんしては、高校生の男女があんなにいつも一緒にいるのに、ぜんぜん異性として意識してないってのが、さすがにちょっと不自然ではありました。そのHuluの「10.5話」を見るかどうかは、視聴者がそういう結末を望むかどうかでもあり、有料コンテンツへの誘導という面もあると思うけど、わたしとしては、地上波をあえて未完に終わらせたことの意義を感じました。◇前回までの絵理は、20年もの片思いをしてきたわりに、ずいぶんと拓郎に無理難題を要求していて、くるみ(あるいは安奈?)への嫉妬も相俟ったのか、拓郎の想いが自分へ向いてないことに苛立ち、結局は、自分で身を引いてしまったように見える。かたや、くるみのほうは、高校卒業から数年経っても、ずっと拓郎への一途な想いが変わらず、もう成人してもいるので、そのままいけば結ばれそうな雰囲気だったし、わたしもそういう結末で納得しかけたけど、…結局は、こちらも結ばれずに終わりました。拓朗は、最後まで安奈が好きだったわけですね。しかし、いったんは絵理の想いを受け入れました。ただし、くるみの想いは最後まで受け入れなかった。そこには、やはり年齢の問題があったと思う。◇悠がくるみに言ったセリフに、「まともな恋愛をしろ」という一言があったけど、拓郎もまさに、その分別にしたがって、絵理との恋愛は受け入れる一方、くるみとの年の差恋愛は避けたように見えます。つまり、絵理との恋愛は「まともな恋愛」だけれど、くるみとの恋愛は「まともじゃない恋愛」ってこと。そういう年齢的な自制をかけていたのですね。しかし、「まともな恋愛」っていったい何でしょう??◇ドラマを見ている視聴者は、「お似合いの男女」が結ばれることを無意識に望むし、それにしたがって、拓郎と絵理が結ばれるとか、くるみと悠が結ばれるとか、そういうことを望みます。その視聴者の願望に沿うのがドラマの予定調和でもある。現実においても、「誰と誰はお似合い」だとか、「誰と誰はくっつくべきじゃない」とか、外野の人間が、当人の気持ちとは無関係に、「あるべき恋愛」や「まともな恋愛」について、好き勝手なことを言いがちです。つまり、何が「まともな恋愛」なのかを、当事者ではなく、世間が決めてしまうのよね。親や友人でさえ、当人の気持ちを無視して、勝手な助言で恋愛の邪魔をするものだし、しまいには当人も周囲の考えに左右されてしまいます。恋愛ドラマも、その観念に沿って作られることが多い。でも、何が「まともな恋愛」かなんて、本来なら他人が決めることじゃないし、誰と誰が「お似合い」とか「お似合いじゃない」とか、はっきりいって余計なお世話なのよね。◇…まともな恋愛とは、いったい何なのか。それこそ、矢田亜希子が押尾学と結婚したときには、わたしも正直「どうなんだろう?」と思ったし、その結婚が破綻したときには、「ほら言わんこっちゃない」と思ったけど…今だったら、そういうことは考えない。だって、そんなことは当人の気持ちの問題だし。結果的にそれが破綻するとしても、外野がとやかく言うべき話ではない。たとえお似合いの男女でも、破綻するときは破綻するし、たとえ不釣り合いな男女でも、上手くいくときは上手くいく。恋愛において、何が「まともな恋愛」だとか、誰と誰が「お似合い」とか「お似合いじゃない」とか、そんなことは他人や世間が決める話じゃないし、それは年の差恋愛についても言える。◇ドラマの設定だと、くるみが17才のときに拓郎が41才で、くるみが20才になると拓郎は44才で、くるみが25才になると拓郎は49才です。もちろん、年齢の差は埋まらないけれど、徐々に恋愛の許容量は増す気もする。あとは当事者の気持ちが持続するのかどうかの問題。地上波の物語をあえて未完にしたのは、そういう含みをもたせる意味もあったように感じます。ちなみに、このドラマは、原作者が男性で、脚本家はほぼ女性。演出家は、2人が男性で1人が女性。とくに松本花奈は、弱冠25才の若い演出家ですね。おそらく制作陣のあいだでも、年齢や性別によって、物語の見方や考え方が違うだろうし、そこもちょっと興味深いところではあった。◇◇◇余談ですが、三角テーブルって、何の伏線でもなかったのね(笑)。てっきり3人が疑似家族になるのだろうと読み違えました。さらに、漫画家のワカタマコは、「ワカタ・マコ」なのか、「ワカ・タマコ」なのか分からなかったけど、そもそも女性じゃなくてキム兄だったというオチ!◇なお、このドラマは神保町を舞台にしていて、神保町シアターがたびたび出てきました。絵里と悠は、マキノ正博の「鴛鴦歌合戦」を観てました。オープニングのテーマ曲も、なにやら小津安二郎っぽい雰囲気があって、もしかしたら制作陣のなかに映画オタクがいたのかも。矢田亜希子って、実際はお金持ちヤンキーみたいな人だから、プライベートな実像と、演じるキャラに乖離があるけれど、昔から、小津映画の原節子みたいに、良家のお嬢様的な役を演じてきた面があって、今回も、強気なキャリアウーマンなのに、片思いをつづける映画オタク…という、いまひとつ分かりにくいキャラを演じてました。古館の息子くんも、本業はミュージシャンなのだと思うけど、ショボめの役でもぜんぜん選り好みしないのですね。古舘佑太郎が作ったadieu「愛って」。矢作歌子。#ちむどんどん #上白石萌歌 #井之脇海 #adieu3 pic.twitter.com/lmIR3J7Img— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) August 31, 2022「ナラタージュ」にも出てたので、萌歌とは何かと縁がある。
2023.03.24
日テレ「リバーサルオーケストラ」が終了。当初は、「のだめの二番煎じ」という先入観がありましたが、全体の構成はけっこう良く出来てて、じつは「のだめ」ともコンセプトがかなり違っていた。◇基本的に、「のだめ」や「蜜蜂と遠雷」などは、天才的な演奏家をメインにした物語でしたが、今回は、しがない地方オケの団員たちの物語。そこが従来の作品とは大きくコンセプトが違う。地方の公共オーケストラは、自治体の厳しい財政で支えられており、地方政治の権力争いとも無縁ではいられない。名の知れた私設オーケストラが、潤沢な企業資金で運営されるのとは対照的なのですね。そんなクラシック界の構造的な問題も垣間見える。団員たちは、それぞれに家庭の事情などを抱え、安い給料で肩身の狭い思いをしながら、細々と音楽を続けている。かつては「神童」と呼ばれた人や、有名オケで活動した経験のある人も、いまは地方の公共オケ団員の身分に甘んじてる。けっして華やかな世界じゃなく、わりと地味な世界です。◇今回のドラマで推されていたのは、チャイコフスキーの交響曲第5番でした。なぜチャイコなのか?のだめが「ベト7」を推したのは有意義だった。ドラマから20年ちかく経っても、いまだ「ベト7」は人気のレパートリーであり続けてるし、あの曲がベートーヴェンの印象を変えた面も大きい。▶ それについては以前こちらにも書きました。それに対して、チャイコといえば、一般にはバレエ曲のほうが人気なわけだけど、あえて今回、管弦楽曲を推した理由は何か?たぶん、それもやはり、地方オーケストラの問題と関係があるのでしょう。◇一流オーケストラの場合、チャイコフスキーって、やや軽く見られがちだけれど、地方で公共オケを運営していく場合には、ブラームスやマーラーってのもちょっと難しいし、やっぱりチャイコあたりが重要なレパートリーになるのだと思う。なんといっても、親しみやすくてキャッチーですからね。とくにチャイコの5番は、ただキャッチーであるのみならず、楽曲としての深みも、格調の高さもあるし、地方オケのレパートリーとしては最適な選択のように思います。今後は「チャイ5」が人気楽曲になるのかもしれませんね。なお、ドラマのなかでは、屋外や老人ホームなどで演奏するシーンもありましたが、そうしたボランティア活動も大事だし、「クラシックはコンサートホールで聴くもの」という固定観念を取り払うのも、けっこう大事なことです。◇ドラマでサントラを担当したのは清塚信也と啼鵬。清塚信也は「のだめ」にも参加していたのよね。今回の挿入曲のアレンジも素敵でした。 とくに印象的に使われていたのは、やはりチャイコの5番とラフマニノフのピアコン2番でしょうか。一方には戦争の問題もあるけれど、なんだかんだでロシアものって、感情を掻き立てるからドラマ向きです。玉響カンタービレ チャイコフスキー/交響曲第5番 わたし自身は、「のだめの二番煎じ」という先入観もあいまって、このドラマにちょっと乗り遅れてしまい、第4話あたりから見はじめて、最終回まで見たあとに、また最初にもどって1話から3話を見た形…(笑)。ドラマとしての引きがやや弱かったのは否めないし、脚本も、中盤のエピソードなどがちょっとゆるくて、詰めの甘いところも見受けられたし、わたしはそのへんから見始めたので、なおさらハマり損ねた。キャストが地味めなのも、引きが弱い理由になってはいたけど、けっしてミスキャストだったわけではなく、個人的には相武紗季をひさしぶりに見れたのも嬉しかった。わたしのように、乗り遅れた人や乗り損ねた人もいると思うので、もし第2シーズンを作るなら、今回の第1シーズンを2~3時間にまとめて、ぜひ総集編を作ったらいいんじゃないかと思います。◇なお、個人的な意見だけど、こういうドラマって、ほんとうは春ドラマよりも冬ドラマのほうがいい。やはりクラシックがいちばん盛り上がるのは、秋から冬にかけてのシーズンだし、かりに12月に最終回を迎えれば、その足でクラシックのコンサートにも行きたくなると思う。いずれにせよ、もう「のだめ」からは17年も経ってるし、若い世代は「のだめ」を見てないわけだから、こういうドラマは定期的に作られてもいいですね。ちなみに今年の秋には、上野樹里の主演で「のだめ」がミュージカルになるそうです。シアタークリエ「のだめカンタービレ」上野樹里×三浦宏規×上田一豪×茂木大輔
2023.03.23
朝ドラ「舞いあがれ!」は難しいテーマに挑んでますね。舞と御園が立ち上げた「こんねくと」は、子会社の形をとってるけど、その業務は生産者組合に近い。つまり、生産者どうしをつなぎ、それを消費者に媒介して、商品開発やブランディング、そして小売りまで担うってこと。日テレの「ファーストペンギン」では、漁協の仲介を取っぱらって、生産者と消費者が直接つながる仕組みを作っていましたが、舞と御園の試みは、それとは真逆の提案です。むしろ、農協や漁協みたいに、まずは生産者どうしが繋がる仕組みを立ち上げようって話。組合ではなく、子会社の形をとるのは、そのほうが機動的で小回りも利くからだと思う。◇ドラマを見ていて気がついたことだけど、おそらく製造業(第二次産業)の場合、農業や漁業(第一次産業)とは違って、元請けと下請けをつなぐ「商工会議所」は存在しても、生産者と消費者をつなぐ「生産者組合」が存在しないのよね。今こそそれが必要とされてる…って話でもある。これは、「あさが来た」や「青天を衝け」の、五代友厚とか渋沢栄一の話にまで遡るけれど、もともと商工会議所ってのは、国や自治体や大企業による巨大事業と、下請けの中小企業とを連絡する仕組みであって、農協や漁協のように、生産者と消費者をつなぐ機関ではなかったのだと思う。◇大企業による元請けの場合は、あくまで需要に合わせて供給の形を考えるので、通常は、収益性の高い事業に特化しながら、大量生産によって価格を下げていくことになります。しかし、収益性の高い事業にのみ特化することは、その反面で、技術の多様性を失うリスクにもなる。本来なら、たとえ少量の生産であっても、多様なニーズに応えていくほうが、技術の多様性を守っていけるし、受け継いでいける。◇生産者組合の場合は、供給側の立場から需要を掘り出すことになります。大口の顧客や大多数の庶民に、大量生産による低価格商品を売るのではなく、むしろ富裕層や事業者・法人などに、少量の高価格商品を売る形になるはずです。ただし、収益性が高まれば、かえって低価格の大量生産ベースに乗せられてしまうので、その場合は、アイディアや権利を売って、大企業による海外生産などに委ねる形になるのかもしれない。◇日テレの「ファーストペンギン」の場合は、曲がりなりにも現実の成功モデルがありました。しかし、今回の「こんねくと」の場合は、かりに何らかのモデルがあるにせよ、はっきりとした成功例はまだ存在しないのだと思う。なので、これは、ひとつの提案であり、思考実験の可能性が高い。この脚本が分かりにくいとすれば、それは、このビジネスモデルそのものが、まだ十分に確立していないからだろうと思います。ネットを見ても、このコンセプトを理解した記事はほぼ皆無で、あいかわらずドラマ評論家の無能っぷりを示しています。脚本の内容が分かりにくくなると、視聴者のなかにもアンチが蛆虫みたいに湧いてきて、SNSではまた「反省会」が盛り上がりはじめてますが、理解できないものを叩くのが大衆心理の常だとはいえ、それは多分に大衆側の理解力の欠如の問題でもある。◇今にして思えば、菱崎重工の下請け生産を断ったのも、ひとつの伏線だったのでしょうねえ。その意味で、今後のIWAKURAが、下請けとして飛行機などの部品生産を担う可能性は、ほとんど無くなったように思える。現実の三菱重工も、舞い上がるどころか、いまやどんどん舞い落ちていて、国産飛行機の事業からは撤退、H3ロケットの打ち上げも失敗、自動車事業にも展望があるとはいえない。そう考えると、IWAKURAが、大企業の下請けから脱却するのは、方向性としては間違っていないのだと思う。◇ただし、中小企業の連携のなかでなら、IWAKURAが飛行機やロケットの事業にかかわる可能性は、十分にありうるだろうし、テレビドラマとしても、最後に舞い上がらないはずはない。なので、わたしは、いまだに舞が宇宙へ飛ぶだろうと思ってます(笑)。
2023.03.10
テレ朝「警視庁アウトサイダー」が終了しました。最後はけっこうイイ話だった。それぞれの事情が絡み合ってて、思ったほどの巨悪や極悪人は存在しなかった感じ。視聴率は、最終回が2桁越えということで、テレ朝サスペンスとしては及第点ってところ?◇脚本は、わりにしっかり構成されていた。ただ、サスペンスにはありがちだけど、登場人物の名前がかなり覚えにくくて、それがちょっと事件の構図を分かりにくくしていた。架川、蓮見、水木という、メイン3人の名前でさえ覚えにくいのに、…蓮見の実父が梶間で?…兄貴がわりが羽村で?…水木の実父が有働で?…架川の先輩が藤原で?そのうえ、当麻とか、椛島とか、折原とか、小山内とか、信濃組とか、鷲見組とか、誰が誰で何が何だか終盤までよく分からなかった。せめて登場人物の名前と顔が一致すれば、さぞや視聴者の考察も盛り上がったろうに、ちょっと前提が分かりにくすぎたかなと思う。まあ、蓋をあければ、警察内部とヤクザの癒着はあったものの、思ったほど複雑な構図ではなかったし、前半に「18箇所も刺すのは女」というフラグもあったから、もし視聴者がこぞって考察していたら、かえって真犯人の推理は、容易にすぎたのかもしれません。◇事件の内容が分かりにくかったのは、やたらにネタドラマ的な演出のせいでもあって、たぶん、警視庁捜査一課の最終シリーズみたいに、《サスペンス面》と《ネタドラマ面》の、ほどよい両立が狙いだったとは思うのだけど、とくに序盤の数回は、堤幸彦のパロディと思しき木村ひさしの演出が、あまりにもガチャガチャしすぎて、一話完結のストーリーでさえ何が何だか分からず、ネタとしても空回りしてる感がありました。むしろサブの演出家のほうが落ち着いてましたねwとはいえ、後半になるにつれ、観てる側もだいぶノリと小ネタに慣れてきて、西島秀俊の下手なコメディ演技も、それ自体をネタとして笑えるようになりました…(^^;テレ朝ネタ。#はぐれ刑事純情派 #警視庁捜査一課長 #遺留捜査 #警視庁アウトサイダー https://t.co/IkuUdJ6dJr pic.twitter.com/pWyDCFf6hk— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) March 5, 2023 ◇ちなみに、西島秀俊の俳優デビューは、1992年の「はぐれ刑事純情派」第5シリーズだそうです!そして翌93年に、彼は、石田ひかりの「あすなろ白書」にも出てるんだけど、わたしは、萌歌のツイートを見るまで、それを知らなかった!「あすなろ白書」って、石田ひかりと筒井道隆のほかに、誰が出てたのかまったく思い出せないし、たぶん、あのドラマをまともに見てなかったんだな…。つーか、わたしには、そもそも、冬吾以前の西島秀俊の記憶がほとんどない…(笑)。— 上白石 萌歌 (@moka_____k) February 13, 2023柴門ふみ×北川悦吏子明日ならハクション。◇さて、わたしのお目当ては、もっぱら萌歌だったわけですが、もともと手脚が長くて見栄えがするので、それを活かした刑事の役はハマってたと思うし、とんちんかんな天然キャラも合っていました。ちなみに萌歌は、日テレの「バンクオーバー」でも、刑事の役で華麗な蹴りを見せていたwそういえば水木ちゃんは、架川と蓮見を「尊い関係」と勘違いしてましたが、その誤解って、ちゃんと解けたんだっけ??◇萌歌については、カムカムで「姉の兄」だった濱田岳との共演も、それ自体、ひとつのネタだったのですが、それ以外に、長濱ねるとの「親友共演」もネタ、野波麻帆との「東宝シンデレラ共演」もネタ、石田ひかりとの「妹女優共演」までがぜんぶネタww石田ゆり子が、デビュー前に水泳選手だったのは有名ですが、妹のひかりも水泳をやってたみたいだし、萌歌も、過去作品ではすでに水泳3種目を泳いでるし、姉の萌音は、父親に似て陸上での活躍が多かったらしいけど、やっぱり運動神経がいいから水泳もできるとは思う。なので、石田姉妹と上白石姉妹は「水泳姉妹」でもあります。それを踏まえて、母と娘にバタフライを泳がせれば完璧だったのだけど、(萌歌の残りの4種目目はバタフライです)スタッフはそこを見落としていた可能性が高い!!adieuネタ。 アデュー♪左が親友。右が三代前のシンデレラ。水泳姉妹の妹共演。 小ネタ的には、「エッて言うな」とか「エモ散らかし」とか、カフェオレの欧陽珈琲とかもじわじわ笑えたので、カフェラテ個人的には、最後に萌歌が「ラヴイズオーヴァー」を熱唱すると期待したのですが、それも叶わなかったです…(^^;そこらへんが、テレ朝はまだまだだな。欧陽菲菲— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) February 15, 2023 — まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) January 23, 2023
2023.03.03
ドラマ「三千円の使いかた」最終回を見ました。最後のエピソードは、けっこう難しい問題!かつて息子のために借りた教育ローンの返済を、結婚を前にした息子に押しつけてくる親。まあ、もともとは自分の就学のための借金なのだから、息子のほうもそれを了承するけれど…息子の婚約者はそれを納得できません!自分たちの結婚後の生活費が削られるからです。まるで生活笑百科のご相談みたいなお話!ローンを支払うべきなのは、実家の親なのか、それとも息子夫婦なのか??もっといえば、経済リテラシーがなさすぎる家の息子は、経済リテラシーがありすぎる家の娘と結婚できるのか??…って話でもあります。ネットでも意見が割れていました。◇最終回の決着のしかたは、まず新婦の側の実家が借金を一括で返済し、それを無利子で新郎に貸すという形でした。つまり、結婚するなり、義父と新郎は貸借関係になるのですね(笑)。けっしてファンタジックな結末ではなく、ドラマとしては、わりと妥協的で生々しい決着。実際にありうる話かもしれません。まあ、新郎側の実家が返済から逃れることに変わりはないので、こういう決着には賛否両論もあると思う。結婚そのものを諦める場合もあるだろうし、現実的な対応は、人それぞれだろうなと思います。視聴者のあいだで意見が割れるようなテーマを、テレビドラマが突きつけてくるのも悪いことじゃない。◇わたし自身の立場は、前回の放送を見たときから、こちらの「婦人公論」の記事とほぼ同じでした。▶ https://fujinkoron.jp/articles/-/7821たしかに借金の押しつけは不愉快だけれど、経済リテラシーの欠如した人々を、ドラマのなかで断罪しても仕方ないって気がしてた。…だって、経済リテラシーの欠如した人なんて、世の中にはたくさんいるし、正直、わたし自身も計画的にお金を使うのが苦手だし、そのこと自体を糾弾することはできないと思う。◇現在では、政府も、国民に「経済リテラシー」をもつよう促しているのですね。▶ https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201404/1.htmlしかし、たんに呼びかけるだけでは不十分で、政府が本気でそう考えるのなら、全国民に義務教育で学習させなければならない。それを「自己責任」の問題で片づけるべきではありません。◇現代社会は、人々にさまざまな「リテラシー」を要求します。しかし、誰しもが、かならずしも万全なリテラシーを身につけられるわけではない。かつて読み書きのできない人たちが沢山いたように、メディア・リテラシーのない人もたくさんいるし、ヘルス・リテラシーのない人もいるし、エコノミック・リテラシーのない人もいて、しかも、そうしたリテラシーの有無が、社会の格差をどんどん拡大させている。たんに「リテラシーがない」というだけの理由で、就労ができなかったり、結婚や出産ができなかったり、しまいには社会生活さえままならずに、生きていけなくなってしまう人が出てきています。◇とくに高齢者になるほどリテラシーは失われます。独り暮らしになれば、なおさらです。メディア・リテラシーがなければ、スマホも使えず、ネットにもアクセスできず、必要な情報が得られずに、誤まった情報に振り回される。ヘルス・リテラシーがなければ、自分の健康を適切に管理できず、必要な検査や医療も受けられず、かりに薬を処方されても、それを正しく服用できず、みずからオーバードーズで薬害を被ったりする。エコノミック・リテラシーが欠如していれば、むやみに浪費してしまったり、あやしげなサービスに金をつぎ込んだり、あるいは逆に、自分と他人の所有の分別がいいかげんになって、店で万引きを繰り返したりもする。それらは「病気」や「犯罪」と見なされるかもしれませんが、じつは「リテラシーの欠如」という面もあるだろうと思います。◇なんでもかんでも「自己責任」で済ませる社会は酷です。むしろ、リテラシーの欠如した人々がいることを前提に、セーフティーネットのある社会を作らなければならない。そうしないと、情報や医療や経済の格差がどんどん拡大し、国民社会が分断して、ついには国家の凋落を招いてしまう。それは個人の病理というよりも、社会の病理だと思います。ドレミファドンで中尾ミエがMISIAの曲を当てたのが驚き。
2023.02.26
NHK「昭和歌謡ミュージカル~また逢う日まで」を見ました。去年4月にBSプレミアムで放送されたドラマ。シュガーベイブ…というより、EPOの「DOWN TOWN」のダンスシーンも可愛かったし、浅香航大の歌う吉田拓郎の「流星」にもグッときました。◇莉子がいちばん最初に歌ったのは、山口百恵の「プレイバック Part 2」なのだけど、…そういえば、浜辺美波もカラオケでかならず山口百恵を歌うらしい。上白石萌歌も、姉の影響で、カラオケの十八番は山口百恵の「愛の嵐」だそうです。座右の書も山口百恵の自伝だとのこと。なにげに百恵好きな東宝シンデレラたち。— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) July 5, 2021◇斉藤由貴&福本莉子は、安定の「物理基礎」コンビだけど、脚本の桑原裕子も東宝芸能の人。無内容で荒唐無稽なパロディドラマでしたが、莉子のあっけらかんとしたキャラに引っ張られて、なんとなく楽しく見れてしまった。物語のテーマは、隣の芝生が青く見えるように、ちがう時代のほうが良さそうに見えるよね、…って話なのだけど、まあ、わたし自身は、ちっともバブル時代に戻りたいとは思いません。「バイビー!」とか、「ガンバルンバ!」とか、むしろ思い出すだけでイラッとしますwww— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) June 3, 2022 ◇莉子といえば、去年の「セカコイ」が韓国で大ブレイクしているとあって、(現時点で実写日本映画の歴代2位を動員中)再来週の日本アカデミー賞でもスポットが当たるか楽しみ。…とはいっても、作品賞にはノミネートされてないし、そもそも映画賞自体にまったく権威がないのだけれどwとりあえず莉子は新人賞に名前が挙がってます。— 「今夜、世界からこの恋が消えても」セカコイ🌍❤ 2/15(水)Blu-ray&DVD発売! (@sekakoimovie) February 15, 2023
2023.02.23
朝ドラ「舞いあがれ!」第19週は、下町ロケットではなく半沢直樹じみた内容。さすがに投資家が勝ち続けるドラマなんてありませんよね。兄の悠人の転落は、織り込み済みだったとも言える。◇この悠人の転落は、今回の朝ドラのなかで、とくに重要なエピソードでした。過去の朝ドラにも、「娘を売り飛ばした父親」(おちょやん)とか、「娘を捨てて米兵と駆け落ちしたヒロイン」(カムカム)などがいて、そのつど "朝ドラ史上最悪" と言われたりしましたが、今回の悠人のインサイダー取引とその賠償額は、おそらく朝ドラ史上「最悪の犯罪」だろうし、なおかつ朝ドラ史上「最大の借金額」だろうと思います。◇そもそも岩倉家が、父の代に工場新設やリーマンショックで抱えた借金は、「ちむどん」の比嘉家の借金なんぞとは比較にならないほど、巨額で深刻だったはずですが、悠人が裁判で請求された損害賠償額は、それをも超えるでしょう。悠人は、その失敗のスケールにおいて、父を超えてしまったのですよね。◇たとえば、「なつぞら」の咲太郎とか、「カムカム」の算太とか、「ちむどん」の賢秀とか、過去の朝ドラにも"ダメ兄貴"は沢山いましたが、この「舞いあがれ」の悠人の犯罪は、過去のダメ兄貴の放蕩なんぞとは比較にならないほど重大で、損害賠償額がどれほどかも想像できません。そもそも、今回の悠人の兄貴像は、過去の"ダメ兄貴"とはだいぶ類型が違っていて、けっしてバカ兄貴ではないのですよね。むしろ、優秀すぎるがゆえに危機をはらんでしまうタイプ。ここに桑原亮子の独創があります。◇じつをいうと、ドラマの序盤では、望月家の「働かない父」とか、梅津家の「働けない息子」のほうが、物語に暗い影を落とすだろうと心配していたのだけど、実際には、岩倉家の失敗や転落のほうがはるかにスケールが大きく、それに比べれば、望月家や梅津家の問題など些細なものに見えてしまいます。しかし、岩倉家の面々は、七回転んでも八回起き上がるような人たちなので、息子が違法取引で有罪判決を受けてもすぐに立ち直り、五島の実家の人たちも平然と笑って生き抜いている。これこそが、桑原亮子が今回の朝ドラに持ち込んだ「新しい家族モデル」です。清く正しく慎ましい家族ではなく、壮大な失敗や転落を繰り返しながら、七回転んでも八回起き上がってくるような家族。逆に言えば、令和の日本人は、そういう生き方をモデルにするほかないってことでしょう。◇まあ、岩倉家の場合は、父であれ、母であれ、兄であれ、妹であれ、何度でも起き上がってくるほどの、傑出した能力や不屈の精神力をもっていて、そこらの凡人が容易に真似できるわけではありません。しかし、そんな異様なポテンシャルをもったハイスペック家族だからこそ、きっと宇宙にまで行くだろう、とも思うのです。…ちなみに、わたしは先週まで、舞は「かぐや姫」で、久留美は「月のウサギちゃん」で、貴司は「紀貫之」か「サンテグジュペリ」だと思っていたのですが、今日の放送を見たら、舞と貴司は「織姫と彦星」でしたねw
2023.02.15
NHK「探偵ロマンス」最終話を見ました。…謎だらけの結末でした。◇第3話のラスト部分で、笠森刑事(浜田学)が後工田邸に招き入れたのは、郷田くんだったのですね。笠森は、狭間警部(大友康平)の部下を装っていたけれど、じつは住良木の手先だったわけです。彼は、無慈悲にも後工田寿太郎を射殺しましたが、たぶん廻戸を射殺したのも、ピスケンを射殺したのも、そしてオペラ館の2階席からお百を撃とうとしたのも、この笠森だったのではないかしら?そして、廻戸殺しをピスケンになすりつけ、後工田殺しはお百や郷田くんになすりつけようとした。おそらく笠森は、ほかの不良学生のように住良木に洗脳されたのではなく、はじめから住良木の側近として、日本の警察組織内部に潜り込んだのだと思う。◇さて、制作統括の櫻井賢によれば、脚本家の坪田文はすでに「セカンドシーズン」を構想していて、男装の麗人を演じた市川実日子にも、はなから "続編込み" でオファーしている、とのこと。なので、続編が制作されるのはほぼ確実です。https://news.yahoo.co.jp/articles/513a42d2a398621df792d0d5e5b4865aa8af1b4aさらに、住良木を演じた尾上菊之助によれば、白井三郎と住良木の過去を描いた「エピソード0」も存在するそうです。https://news.yahoo.co.jp/articles/6d217f07602e43179db21c7c521356cdd803cf24どちらかといえば、続編よりもエピソード0が見たいし、ロシア編や上海編が見たい!◇…てなわけで、まだ未完ではあるのだけど、これほどのスケールとクオリティの作品が、「震災100年」とか「乱歩100年」とかの特別枠ではなく、通常枠の「土曜ドラマ」だったというのがスゴイです(笑)。個人的には、2017年の「眩~北斎の娘~」とか、2021年の「忠臣蔵狂詩曲No.5~中村仲蔵出世階段」をも凌ぐ出来だったと思う。(↑どちらとも芸術祭大賞作品です)◇最終回に残された謎は、大きく8つほどあったと思います。Q1.なぜ相馬京子と村山隆子は瓜二つだったか?Q2.本物のお勢さんは生きているのか?Q3.お勢さんとロマノフ家の関係とは?Q4.踊り子のお百は、住良木が祖父の仇だと知っていたか?Q5.イルベガンの卵とは何か?Q6.なぜ相馬久代の背中にはイルベガンの入れ墨があるか?Q7.住良木の「物語」とは共産主義か、国粋主義か、新興仏教か?Q8.男装の麗人の正体は住良木平吉なのか?…だいたいこんな感じ。ほかにもあるかしら?◇で、わたしの考察によれば、以下のような答えが導き出されます!!1.お勢の夫はロマノフ家の財宝を手にした軍人。日本軍は、日露戦争の際に、シベリアでロマノフ家の財宝を奪ったとも言われていますし、あるいはロシア革命が勃発する前に、満州でロマノフ家の財宝を預けられたとも言われています。劇中の宝石「イルベガンの卵」は、おそらくファベルジェの卵から着想したのでしょうが、重要なのは、伝説のイルベガンが「七頭竜」であるということ。その"卵"の名を冠する宝石は、「七つの顔を操る能力」の源泉であると同時に、「イルベガンの巣へ侵入する鍵」なのだろうと思います。お勢さんの夫は、これを持っていた軍人であり、住良木と相馬姉妹は、これを奪還しようとしたのでしょう。ロシア革命とともに流出したロマノフ王朝の金塊500トン2.住良木はロマノフ王族の生き残り。わたしが思うに、住良木はロマノフ家の生き残りであり、ことによったら、皇帝ニコライ2世かもしれません。日本語の〈すめらぎ〉は「住良木」であると同時に「皇」だからです。その場合、革命軍に処刑されたのは替え玉だったってこと。史実によると、ニコライ2世の右腕には「竜の刺青」があったそうです。この刺青は日本の長崎で彫られたらしいのですが、さすがに七頭竜ではないものの、一説によれば、彼にとって「竜」は権力の象徴だったとのこと。住良木は、お勢さんの夫を殺害し、相馬京子との争いにも打ち勝って、イルベガン(=七頭竜)の卵たる宝石を奪還し、その「七つの顔を操る能力」を手に入れたのだと思います。踊り子のお百から見れば、住良木は「祖父の仇」だったはずだし、さらに「祖母の仇」だったかもしれないのですが、住良木は、お百を洗脳して手なずけてしまいました。そして、国際協調主義者だった外務次官の後工田寿太郎を暗殺し、日本軍のシベリア出兵によって干渉戦争をけしかけ、ロシアの革命政権を打倒しようとしているとも思えます。刑事の笠森も、もともとロマノフ朝の人間なのではないでしょうか。帝政ロシア最後の皇帝ニコライ二世。ロマノフ王朝はよみがえる?3.相馬姉妹はタタール人の女スパイ。わたしが思うに、相馬姉妹もロマノフ朝に関係しているのではないかしら?もしやテュルク系騎馬民族(タタール人)の立場で革命に加わり、スパイとして日本に渡って「相馬」姓を名乗ったとか?そうでもなければ、久代の背中にイルベガンの刺青がある理由が分からない。姉の京子は、白井三郎の助手になりすますことで、住良木を出し抜いて「イルベガンの卵」を横奪し、シベリア領内にタタール人国家を打ち立てようとしたのかも。じつは彼女はまだ死んでおらず、鳥羽に潜伏して「村山隆子」の名で10年間を過ごし、ふたたび東京に戻って妹の久代(=美摩子)と落ち合い、住良木との因縁の対決に挑んだとも考えられます。事実、村山隆子は、第3話で「美摩子にも住良木にも会った」と話しており、たんなる田舎の教師とは思えない動きを見せています。わたしの予想が正しければ、村山隆子の背中にもイルベガンの刺青が彫られているはずです。スルタンガリエフと1920年のタタール自治共和国設立◇◇住良木は、お勢さんに変装した姿で、白井三郎に「イルベガンの卵」を預けたり、おもむろに接吻したりもしていましたが、そこには、ある種の恋愛感情があるようです。そのことは、上述の尾上菊之助のインタビューからもうかがえる。そう考えると、白井三郎もまた、ロマノフ朝に関係する人物なのかもしれません。実際、草刈正雄も、尾上菊之助も、浜田学も、みんな日本人離れした目鼻立ちと体型に見えなくはないし、松本若菜も、石橋静河も、やはり色白で日本人離れした容姿に見えてしまいます。それとは対照的に濱田岳や泉澤祐希や大友康平や近藤芳正なんかは、小柄な日本人顔だし、本上まなみなども典型的な日本人女性に見えるのよね。◇※わたしの予想は9割ぐらいハズレます。悪しからず!もし住良木平吉が、のちの遠藤平吉、すなわち怪人二十面相の原点だとすれば、その変身能力は「七頭竜」の力による七変化では足りず、やっぱり二十変化ぐらいじゃなきゃいけませんよね。そこが難点です。落書きが「南無阿弥陀仏」だった理由もいまいち分かりません。◇◇ところで、ドラマを企画した演出家の大嶋慧介によれば、「海外の人も楽しめるエンタメを作ろうという方針」のなかで、大正という時代を物語の舞台に選んだのだそうです。日本の大正時代は、フランスのベルエポックや、アメリカのジャズエイジにも匹敵するような、モダニズム文化の爛熟と頽廃の時代であり、けっこう怖くてヤバイ時代でもある。鈴木清順の映画や、「鬼滅の刃」などの時代設定にも重なるし、「岸辺露伴」の世界観の原点でもあるし、物語の題材としては非常に面白く、海外からの関心も高まってる気はします。その際に、江戸川乱歩や泉鏡花は中心的なコンテンツになる。文豪怪奇コレクション猟奇と妖美の江戸川乱歩/恐怖と哀愁の内田百閒/耽美と憧憬の泉鏡花◇なお、ドラマには「下水道」らしき映像がたびたび出てきましたが、今回の物語には関係しませんでした。わたしは、てっきりCGの映像かと思いましたが、実際には、神戸の湊川隧道でロケをしたようです。湊川隧道は1900年に建設されていて、大正期に作られた東京の下水道よりも、さらに古いのですね。
2023.02.13
NHK「探偵ロマンス」第3話。このドラマ、ヤバすぎ!!ワケわからないけど!次回ですべての謎が解けるのかしら??◇落書きの犯人は踊り子のお百だった!そして、お百はお勢さんの孫の正一郎だった!だけど、お勢さんの正体は変装していた住良木だった!…どゆこと?◇美摩子と連れだって浅草を歩く住良木は、まるで鬼舞辻無惨(=月彦さん)ではないですか!美摩子「変な気分。あなたが太陽の下にいる…」住良木「昼間に見る夢も悪くないものですよ」美摩子「悪夢じゃないといいんだけど…」実際、無惨様は太陽の下を歩きませんからね…住良木は、落書きの不良学生たちに「先生」と呼ばれています。…何の先生??そもそも住良木が言う「昼間に見る夢」って何なのか。やっぱり共産主義の世界かしら?下宿人の郷田くんも、「あなたが悪いんじゃないです。世界が悪いんです」という住良木の教えに感化されてしまった。郷田くんが読む「一寸法師」の最後の頁にはイルベガンのマーク!美少年のお百も、「何を美しいと思うのか。そこにその人の生きる様が現れる」とは "尊敬する先生の言葉" なのだと語ります。廻戸殺しの翌日から不良たちに声を掛けていたのは、どうやらお百だったようです。もしや、住良木は、お百の悲しみや、郷田くんの苦しみや、不良学生たちの不満などを吸い上げながら、みんなで世界を染めようとしているのかしら?人を鬼へと染め変える無惨様みたいに。◇お百は、10年前の事件で背中に火傷を負ったお勢さんの孫…すなわち正一郎でした。しかし、白井三郎の前に現れたお勢さんは、じつは住良木が白粉で変装した偽物のお勢さんだった!なぜ住良木は、お勢に変装して探偵の白井三郎に近づき、彼に「イルベガンの卵」を預けたのでしょうか?それどころか、お勢さんの姿で白井三郎に接吻してましたよ!…どゆこと?本物のお勢さんは生きてるの?◇蓬蘭美摩子=相馬久代は、住良木=お勢の正体を見破りました。彼女の姉は、かつて白井三郎の助手だったのだけど、(なぜか村山隆子に瓜二つ!)妹の久代のほうは「女スリ」 だったらしい!スカートの下にはピストルも隠していました!しかし、住良木は久代を拉致してしまったようです。BAR《K》の入口には、あなたの大切なもの「相馬久代殿」戴きますとのメッセージ。◇…ところで、白井三郎と平井太郎は、後工田寿太郎の暗殺を未然に防ぎましたね。犯人は、舞台上の踊り子お百でしたが、そのお百を観客席から撃とうとした人物もいる。後工田は、殺された画商の廻戸から、「イルベガンの巣」の秘密を託されていたようです。白銀の地に眠る財宝がそこに?シベリアの貴重な鉱山、大鉱脈?それを手に入れた者が世界を手にする…。後工田は、こう言いました。≫ イルベガンの巣の存在を私は世界に公表するつもりです。≫ 協定を結び、各国共有の…終盤のシーンでは、R町の後工田邸に入る男を、刑事が迎え入れていました。◇後工田寿太郎の名は、日露戦争の頃に外務大臣だった小村寿太郎(1855-1911)と同じですが、ドラマの舞台である1919年に外務次官だったのは、むしろ幣原喜重郎です。幣原喜重郎は、当時の「シベリア出兵」に関係しています!以下はウィキペディアからの抜粋です。シベリア出兵とは、1918年から1922年までの間に、第一次世界大戦の連合国(イギリス・日本・フランス・イタリア・アメリカ・カナダ・中華民国)が「革命軍によって囚われたチェコ軍団を救出すること」を名目にシベリアに共同出兵した、ロシア革命に対する干渉戦争の一つ。共産主義の封じ込めという目的のほかに、帝政時代の外債と露亜銀行などのさまざまな外資を保全する狙いもあった。米国の歴史学者の分析によれば、当時の日本側の事情として、領土獲得への野心・日露戦争後に失った利権の奪還・地政学的な理由(日本はロシアと地理的に近く、さらに日本の利権が絡んだ満州、日本統治下の朝鮮半島は直接ロシアと国境を接していた)等のみならず、政治的・イデオロギー的な理由もあった。すなわち、日本の政体(国体)である天皇制と革命政権のイデオロギーは相容れない以上、共産主義が日本を含めた同地域に波及することをなんとしても阻止する必要があった。…とのこと。ロシア発の共産主義が世界を染めようとしている一方で、世界の資本主義が、シベリアの資源を争奪していたのです。NHK土曜ドラマ『探偵ロマンス』オリジナル・サウンドトラック
2023.02.05
NHK「探偵ロマンス」第2話を見ました!ピスケンはイルベガンに射殺されちゃった??蓬蘭美摩子(松本若菜)のほんとうの名は「相馬久代」でした。彼女の姉の京子は、かつて白井三郎(草刈正雄)の助手だったようです。お勢さん(宮田圭子)という老婦人も登場しました。◇第1話を見たときは、1909年のイルベガンの事件が、伊達順之助による不良学生射殺事件かと思いましたが…なんか違うっぽいw射殺事件というより、爆破事件(もしくは放火事件)のように見えるし、犠牲になったのは、不良学生じゃなくて、お勢さんの夫と、久代(=美摩子)の姉の京子でした。そして、その京子は、なぜか鳥羽の村山隆子(石橋静河)に瓜二つだった!白井三郎は、イルベガンを弁護したのではなく、たんに取り逃がした…ってことのようです。お勢さんの孫の正一郎も、いまは行方知れずになっている。なお、お勢さんは宝石「イルベガンの卵」の指輪をもっていて、美摩子の背中には「イルベガンの刺青」が彫られています。…どゆこと?◇お勢さんといえば、江戸川乱歩に「お勢登場」という作品があります。乱歩が生み出した稀代の悪女です。正一という息子もいる。NHKでは、満島ひかりもお勢を演じています。倉持裕も、このキャラを使って舞台作品を仕立てている。#上白石萌音 #上白石萌歌 #福本莉子 #倉科カナ #倉持裕 pic.twitter.com/RdivypxEBJ— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) April 23, 2022◇さて、第2話で、いちばん怪しかったのは、上海帰りの住良木平吉(尾上菊之助)でした。読みは「すめらぎ・へいきち」です。秘密倶楽部の噂話によれば、彼は、殺された画商の廻戸庄兵衛から、「人脈」「シベリアの事業」「美しい踊り子」を引き継いだらしい。もともと秘密倶楽部の会員は、みんなロマノフ家と関わりをもっているようです。なお、日本語の「すめらぎ」には"天皇/君主"の意味もありますね。住良木は、お勢さんと密会していたようにも見えます。「優しい人は悲しい人です…」などと、お勢さんと同じようなことを言ってました。さらに住良木は、踊り子の美少年お百に、「白粉の匂いがする…」と言われ、彼からの接吻の求めを"おあずけ"にしていた。美摩子と将棋を差していたときには、将棋よりも囲碁のほうが好きなのだと言い、その理由について、「みんなで手を取り合い世界を染めていくのが美しい」からだと語っています。…みんなで世界を染める?それって、スペイン風邪のこと?それとも、共産主義思想のこと?名前が「平吉」だけに平等主義者なの?秘密倶楽部「赤の部屋」って、コミュニストの赤かしら?◇あらためて当時の時代背景を確認してみます。1905年に日露戦争が終わると、日本とロシアは、米英に対抗すべく協約を結び、満州を南北に分け合っていました。1909年のイルベガンの事件は、そのような時期に起こっています。日本とロシアは、1914年にはじまった第一次世界大戦でも、事実上の同盟関係にありましたが、ロシア革命によってロマノフ王朝が倒れ、1918年にロマノフ家の人々が処刑されたので、反革命軍(白軍)は、ロマノフ家の財宝を、満州の日本軍に預けたといわれています。ロマノフ家の財宝の中でとくに有名なのが、皇室に奉納された58個のイースターエッグで、一般に「ファベルジェの卵」と呼ばれるものです。現在でも7個が行方不明だそうです。ドラマの舞台である1919年は、ちょうど第一次大戦が終わった年にあたり、前年からのスペイン風邪の大流行の真っ只中でもあり、まだロシア革命も進行中でした。ソビエト連邦が成立するのは、震災前年の1922年。すなわち、江戸川乱歩が作家デビューする前年です。…ドラマでは、東京の街に不良学生たちがあふれ、壁には「南無阿弥陀仏」などの落書きがされている。治安が悪化しているのですね。白井三郎は、そんな不良学生と廻戸殺しの関係をほのめかしました。◇初回から気になっていましたが、浅草のスラム街はアヘン窟のようにも見えます。ちょうど「鬼滅の刃」の舞台に重なりますが、大正時代の浅草は、吉原遊郭の全盛期ともいえる。踊り子のお百も、なにやら男娼のようです。実際、戦前の浅草は男娼の巣窟だったそうです。お百といえば、講談や歌舞伎に登場する「妲妃だっきのお百」がいます。毒婦として知られる悪女キャラです。江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」のなかでも、下宿人の郷田三郎が女装をしたときに、「自分が妲妃のお百にでもなった気持」と口にします。◇それから、これも初回からのことですが、平井太郎(濱田岳)と白井三郎が、巨大な下水道のなかを走る映像が何度か出てきますね。たとえば「レ・ミゼラブル」を見ると、すでに18世紀のフランスの地下には、巨大な下水道が張り巡らされていたのが分かります。パリの上下水道は1740年ごろに完成しています。かたや東京の下水道は、ようやく1914年に中島鋭治の計画による工事がはじまり、三河島の下水処理場が稼働するのは、やはり震災前年の1922年。なので、1919年の段階では、下水道はまだ稼働前で、絶賛工事中だったのでしょうね。◇◇◇話は変わりますが…近ごろ、松本若菜をドラマでよく見ますね~。「ファーストペンギン!」でも、「クロサギ」でも「夕暮れに手をつなぐ」でも。とくに今回の松本若菜は際立って美しい!お百を演じる世古口凌も美しかったです。…そして、大橋トリオがつくった萌音の歌も美しかった!こんな歌でしたね…生まれた時代、世界、私ではない私で出会えたらそんな夢見てたの…キーワードは「夢を見る」ということ。耽美と頽廃がもたらす幻想や、革命・災害・戦争の予感のなかで、時代そのものが不思議な夢を見ていたのでしょう。— NHK大阪放送局 (@nhk_osaka_JOBK) January 28, 2023 江戸川乱歩の「一寸法師」もあります!
2023.02.01
NHK「探偵ロマンス」第1話を見ました!◇舞台は、1919年(大正8年)の帝都=東京です。画商の廻戸庄兵衛(原田龍二)がピストルで殺害されます。当初は怪盗ピスケンの犯行と疑われました。ちなみに、現実の「ピス健」とは、1925年に連続ピストル強盗事件を起こした大西性次郎のこと。台湾、満州、上海、朝鮮などを渡り歩き、偽名と変装と軽業を使い、警察に挑戦状を送りつけながら逃げ続けた。ドラマでは「守神健次」の偽名を使っています。かたや、関西の興行ヤクザだった嘉納健治も、やはり「ピス健」と呼ばれていましたが、こちらは大河「いだてん」に登場した嘉納治五郎の甥にあたる人物です。しかし、どうやら真犯人はピスケンではなく、名探偵の白井三郎(草刈正雄)が10年前にかかわった事件の犯人、すなわち怪盗「イルベガン」のようなのです。1909年(明治42年)のイルベガン事件について知っているのは、会員制倶楽部《赤の部屋》を経営している蓬蘭美摩子(松本若菜)です…。彼女のほんとうの名は「久代」のようです。白井三郎は、このイルベガン事件をきっかけに探偵を辞めたらしい。おそらくBAR《K》のマスター(岸部一徳)も、そのあたりの事情を知ってる。◇実際の歴史に照らしてみると、1909年には、当時18才だった伊達順之助による学生射殺事件がありました。探偵の岩井三郎がその正当防衛を立証して、順之助は釈放されている。その後、伊達順之助は、大陸に渡って馬賊となり、1916年の張作霖爆殺事件や満蒙独立運動に関わっていきます。イルベガンの正体は、この伊達順之助なのでは?伊達家の人です!このへんの話は、安彦良和「乾と巽-ザバイカル戦記-」とか、ルパン三世 PART6「帝都は泥棒の夢を見る」とか、渡辺典子の「いつか誰かが殺される」とか、…そのあたりにも通じる内容。もともと「イルベガン」とは、シベリアのテュルク系神話に登場する竜のような怪物のことらしい。なお、蓬蘭美摩子の《赤の部屋》には、ロシア情勢に詳しい外務次官の後工田寿太郎(近藤芳正)や、上海帰りの貿易商である住良木平吉(尾上菊之助)も出入りしています。彼らも大陸の情勢について何か知っているのでしょう。◇これも現実の話ですが、ドラマの舞台である1919年には、当時25才だった平井太郎(のちの江戸川乱歩)が探偵を志し、岩井三郎の事務所の面接を受けて不合格になっています。どうやら平井太郎は、松崎天民の書いた「探偵ロマンス」(1915)という実録本を読んで、日本初の探偵である岩井三郎に興味をもったらしい。ドラマの白井三郎は、この岩井三郎をモデルにしているわけです。横溝正史が昭和7年に書いた「呪いの塔」には、江戸川乱歩をモデルにしたとされる探偵・白井三郎が登場します。さらに同じく1919年、平井太郎は、小学校教師の村山隆子と結婚しています。平井太郎は、その2年前に、三重県の鳥羽造船所に入って庶務課に勤めたのですが、このときに地元の村山隆子と知り合ったようです。≫ 江戸川乱歩とシンフォニアテクノロジードラマで彼女を演じているのは石橋静河です。◇平井太郎は、当時、東京市本郷区の団子坂で、2人の弟とともに「三人書房」なる古本屋を営んでいました。ドラマでは、時子(本上まなみ)の夫婦が、D坂にある古本屋《二人書房》を営んでいる設定です。平井太郎(濱田岳)は、郷田くん(泉澤祐希)とそこに下宿している。この郷田初之助が、鳥羽の造船所時代の友人という設定になっている。なお、江戸川乱歩は、「赤い部屋」「D坂の殺人事件」などの短編を書いており、「屋根裏の散歩者」には郷田三郎なる下宿人も登場します。◇1923年、すなわち大正12年には、関東大震災が起こって浅草のオペラ館が崩壊。その年に、江戸川乱歩が作家としてデビューします。今年は、乱歩の作家デビューから100周年になります。≫ 土曜ドラマ「探偵ロマンス」制作と出演者
2023.01.28
貴司が「千億の星」を短歌に詠んだことで、いよいよIWAKURAの宇宙事業が暗示された感じです。君が行く新たな道を照らすよう千億の星に頼んでおいた舞は宇宙へ行くのでしょうか?◇先日も書きましたが、第1話の「月まで15日」という機内アナウンスや、第3週の「望月家の少女とウサギ」のエピソードから考えるに、桑原亮子は、2023年の干支にちなんで、「月とウサギ」の物語を書こうとしている可能性があり、舞の父が人工衛星に関心を示していたことからも、IWAKURAがいずれ宇宙産業に乗り出す可能性は高い。そうなると、はたして悠人の「金の宇宙人」がロケットに乗るのか、はたまた舞自身が「宇宙船のパイロット」として飛ぶのか、そこらへんが気になってきます。◇おりしも、18日に放送された「クローズアップ現代」では、アルテミス計画など月面事業の展望が取り上げられました。https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4740/2040年ごろには、1万人もの人々が月面都市へ旅行するとのこと。現在のドラマ内の設定は2013年(舞は27才)なので、2040年といえば、そこから27年後(舞は54才)です。後述するように、番組のVTRでは、ご丁寧に「ネジ」の話題まで出てきました。◇すでにドラマにも、三菱重工らしき大企業が登場しています。鶴見辰吾が演じる荒金は《菱崎重工》の重役という設定。かつては、舞の父もそこで働いていたらしい。思えば、「下町ロケット」の吉川晃司は、《帝国重工》の宇宙航空部長だったわけですが、そのモデルも三菱重工だったようです。ちなみに、三菱のグループ企業は不祥事が多く、国との癒着も強くて不信感がもたれているし、とくに三菱重工は軍事産業にも絡んでいるので、あまり朝ドラでそこらへんを美化してほしくありません。わたしは、吉川晃司の演じる鬼教官が「元自衛官」とされた点にも、すこし警戒感を覚えたけれど、朝ドラの内容を、軍事や国防がらみの事業に絡めて美化することには違和感もある。◇他方、先の「クローズアップ現代」によると、月面の《水探査》とか、月面着陸船による《物資輸送》とか、月面都市《ムーンバレー》などの事業は、日本のベンチャー企業が主導しているそうです。そこで取り上げられたのが、ネジの問題!ロケット離陸時の激しい振動に耐えるネジを作るのは難題だそうです。もしや、これを解決するのがIWAKURAなのでは?舞の父が参加した企業セミナーや見学した工場も、そうしたベンチャー企業がらみだったかもしれません。◇先述のとおり、月面都市《ムーンバレー》の計画によれば、2040年ごろには、1000人ほどの研究者が月面に滞在し、10000人ほどが旅行や仕事で月へ出掛けるそうです。そうなると、朝陽くんぐらいの年代の研究者が月面都市に滞在し、舞のようなパイロットが月まで旅客を輸送する未来がありえます。貴司がたびたび口にする《トビウオ》の比喩は、「海の中と外」じゃなく「大気圏の中と外」の話かも!久留美も「望月」家の娘だから、20年前の「まんてん」の宮地真緒みたいに、いつ看護師を辞めて「月へ行く!」と言わないとはかぎらない。それこそ、ラグビーボールみたいな宇宙船で月まで飛翔し、月面でウサギの世話をする時代が来るかもしれません!◇わたしは、先週まで、貴司と朝陽くんはサンテグジュペリなのだと思っていました。彼らは、飛行機と宇宙をつなぐ「詩人」と「星の少年」だからです。しかし、貴司は、その名前から考えると、平安貴族の役人(高貴な司)なのかもしれません。梅津貴司というキャラが短歌を詠むのは、きっと日本の歌人たちが、古代から「梅」だの「月」だのを詠んできたからでしょう。貴司は無意識のうちに、その伝統を負っている。≫ 月を詠んだ短歌もしかしたら、貴司は、在原業平や紀貫之のような歌詠みの生まれ変わりでは?とくに紀貫之は「竹取物語」の作者とも言われてる。舞がかぐや姫になって、望月久留美が月のウサギちゃんになって、貴司がそれを見上げて短歌に詠む、…みたいな流れかも。
2023.01.25
テレ東の深夜ドラマ。蓮佛美沙子&トリンドル玲奈。原作は谷口菜津子の同名コミック「今夜すきやきだよ」。◇去年のNHK「恋せぬふたり」は、アロマ・アセクな男女の共同生活だったけど、こちらは、女子どうしの共同生活です。片方は恋愛体質で、片方はアロマンティック。失恋したばかりのアイコ。アロマを自覚しはじめたトモコ。一部では、女性版「きのう何食べた?」とも言われていますが、けしてレズビアンの物語ではありません。双方ともに、まったく同性愛の傾向はないようです。◇アイコは仕事はできるけど、家事ができません。トモコは家事はできるけど、仕事ができません。なので、ふたりの共同生活は、お互いの欠点を補い合えるし、生活上の役割分担ができるし、そのうえ、一緒にいれば寂しくなくて楽しい。それが共同生活を続ける理由です。◇ところで…料理が苦手なせいで、男性との恋愛につまづきがちなアイコは、こんなふうに言います。≫ なんなの?!≫ 楽しい会話と幸せなセックスがあればOKじゃないの?≫ 恋愛とか結婚に、家事能力ってマストなの?つまり、恋愛や結婚はセクシャリティの相性こそが大事であって、ジェンダーの押しつけは必要ないでしょ!…ってことですよね。◇たしかに、恋愛は、楽しい会話と幸せなセックスがあれば成立するかもしれないけど、結婚は、それだけじゃうまくいかないはずです。一般に、恋愛結婚が破綻しがちな理由はそこにある。実際、アイコとトモコの共同生活がうまくいってるのは、楽しい会話と幸せなセックスがあるからじゃなく、生活上の役割分担がうまくできているからですよね。もちろん、ふたりはレズビアンじゃないから、結婚はしないだろうけれど。◇◇現代の日本では、同性婚がほぼ認められつつありますが、同性婚には2通りの意味がありえます。ひとつは、セクシャリティの相性がよければ同性でも構わないってこと。もうひとつは、セクシャリティの相性とは無関係に、生活上の分担ができれば異性か同性かを問わないってこと。これは、法的な定義というより、当事者の認識の問題ですが、じつは、結婚って、後者の考え方でするほうが、ずっと合理的ですよね。いくらセクシャリティの相性がよくても、生活上の役割分担がうまくいくとは限らないし、性的な相性でさえ、ずっと持続するとは限らない。おそらく昔の結婚は、セクシャリティの相性(すなわち恋愛)よりも、ジェンダーの分担のほうを重視したのです。そのほうが合理的だから。◇たしかに恋愛は、セクシャリティの相性を優先すべきものだけど、結婚はむしろ、生活上の役割分担を優先させるほうが合理的です。なぜなら、結婚したら、仕事と、家事と、セックスと、出産と、子育てを、ふたりで分担/協働でこなさなければならないから。いくらセクシャリティがの相性がよくても、男に仕事ができるとはかぎらない。女に家事ができるとはかぎらない。その分担ができなければ生活は破綻するし、そのうえ出産と子育てもやるなんて困難の極みです。現行の結婚制度は、事実上、《恋愛結婚》を前提に設計されているけれど、セクシャリティの相性だけを基準に結婚するのは、じつは、きわめて非合理なのよね。◇先日、バカリズムの「ノンレムの窓」を見ていたら、松島瑠璃子が書いた《親友契約》という話がありました。婚姻率の低下した社会で、あらかじめ老人の孤独を回避するために、独身の人たちが互いに《親友契約》を結び、生涯をともに生きていく…という話。これって、けっこう現実味のある話だと思いましたが、その場合も、重要なのはセクシャリティの相性ではなく、やはり生活上の役割分担だと思います。そして、その分担は、かならずしも2人でおこなう必要さえなく、たとえば3人や4人でも構わない…って気がする。◇ひとつの思考実験ですが、今回のドラマにおける同性どうしの生活も、ある意味では合理的な「結婚の形」のように見える。もし恋愛をするのなら、その生活の外側で自由にやればよいのだし。
2023.01.20
五島に滞在してる朝陽くんが、「星と飛行機」を結びつけようとしてるので、わたしは、ひたすら、サンテグジュペリのことを気にしてるわけですが、◇じつは、このドラマは、始まった当初から、宇宙のモチーフを随所にちらつかせています。たとえば、第一話の冒頭、幼いヒロインが乗った飛行機のなかで、女性の機長が次のようにアナウンスします。…当機はただいま、追い風に乗って時速1100kmで飛行中です。これは、38万km離れた月へ、たった15日でたどりつけるほどのスピードです。なぜそこで月の話をするの??…と、まずは思ったのです。◇そして、ヒロインの実家が「ネジ工場」だと分かったとき、わたしは『半沢直樹』の鶴瓶の役を思い出したわけですが、同時に、「ネジを飛行機に乗せること」が父の夢だと知ったとき、やはり池井戸潤の原作によるTBSの日曜劇場、すなわち『下町ロケット』のことを思い出したわけですね。吉川晃司が演じる鬼教官の大河内も、やはり『下町ロケット』の財前を彷彿とさせるキャラでした。まさかとは思うけど、飛行機を月まで飛ばそうとしてるのか??…と。ネジ屋さんが月まで飛行機飛ばす話なのはだいたい分かった。#舞いあがれ #下町ロケット pic.twitter.com/zHobW2kkVm— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) October 3, 2022 もちろん、このときはシャレのつもりでツイートしたわけです。しかし、その後もヒロインの父は、人工衛星にかんするセミナーや工場見学に参加したりしていた。◇さらに、ヒロインの親友は久留美ちゃんですが、彼女の苗字って「望月」なのですよね。そして、彼女が舞と出会ったきっかけは、小学校での「うさぎ」の世話でした。ここには、あきらかに「月とうさぎ」のモチーフが現れています。じつは桑原亮子が前に書いた『カノブツ』にも、(よるドラ『彼女が成仏できない理由』)謎の「ウミウサギ」というモチーフが出ていたのですが、今回はまさしく「月の兎」なのです。つまり、桑原亮子は2023年が「卯年」であることを見越して、「月とうさぎ」の物語を書こうとしている可能性がある。もしかしたら、福原愛と山下美月を "ウサギちゃん" コンビに見立ててるのかも。◇それに対して、貴司と朝陽くんは、おそらくサンテグジュペリなのです。なぜなら「詩人」と「星の少年」の組み合わせだから。サンテグジュペリは、サハラ砂漠に不時着したときの経験をもとに『星の王子さま』を書きました。つまり、彼は飛行機で宇宙へ行ったのですよね。◇きわめつけの謎は、兄の悠人が実家に送ってきた、ビリケンさん的な「金の宇宙人」です。あれって、いったい何の伏線なのか。幸運を呼ぶとか、プレミアがついて高く売れるとか、そんなことも想像は出来るけど、もしかしたら、あれが岩倉家を宇宙へ飛ばすのかもしれない。あるいは、岩倉家の人々に代わって、あれ自体が宇宙へ飛んでいくかもしれないのです。
2023.01.16
この物語は、「ヒロインがパイロットになるまでのサクセスストーリー」だと誰もが信じてるはずです。もちろん、わたしもそう思ってます!今のところは…。だって、NHKのキャッチコピーにも、「空を見上げて飛ぶことをあきらめないヒロインの物語」と書いてあるし、ウィキペディアにも、「空とパイロットにあこがれ、 空を駆ける夢へ向かい奮闘するヒロインの挫折と再生を描く」って書いてあるし。なにげに「パイロットになる」とは断言されてないけど…。いや、だって、ヒロインがパイロットになった将来の姿も映像化されたし、さすがにそれを裏切るなんてことないでしょう!!◇しかし、「それ自体が壮大なミスリードだった」…なんてことを桑原亮子がやらかさないとも限らない(笑)。実際、過去の朝ドラでも、「純情きらり」の桜子とか、「半分、青い」の鈴愛とか、これといってヒロインが何も成し遂げずに終わる話はあった。そう考えると、舞がパイロットになれずに終わる可能性もないとは言えない。そもそも、すでに舞は資格も取って、あとは就職さえ決まればパイロットになれるわけで、もう、そのこと自体には、さしたるドラマ的な感動もないって気はする。◇いまや物語の焦点は、パイロットになることじゃなく、父の事業を引き継ぎ、兄とも協力しながら家業を立て直し、やがてIWAKURAのネジを飛行機に乗せる、…という夢のほうに移ってきてる感じ。そして、IWAKURAのネジを乗せることができるなら、ヒロインの操縦する飛行機は、旅客機である必要などどこにもなく、たとえば国産の小さな自家用機でも構わない、…ってところに来てる感じも。五島に滞在している星好きな朝陽くんとの関わりも気になる。「星と飛行機」という組み合わせから考えると、脚本家がサンテグジュペリ的な何かを意識してる可能性もあり、貴司の詩人の感性が、舞と朝陽くんの夢をファンタジックに繋いでいくのかもしれない。いずれにせよ、今後の桑原亮子が何をやらかすかは、まだまだ見通せません。◇◇それはそうと、舞と柏木が別れましたね。「ほんとに付き合ってたの??」ってのが多くの視聴者の印象だと思いますが…そこには、やはり、脚本家の交代の問題が大きく響いている。いまさらだけど、やはり吉川晃司は「鬼教官」じゃなきゃいけなかったのよね。吉川晃司が「鬼教官」であればこそ、舞と柏木はもっと連帯を強められたはずだし、その連帯が自然な恋愛感情にも発展したはずだし、さらには、最後の鬼教官との和解のエピソードも、より感動的なものになったはずなのです。しかし、その脚本のプランが捻じ曲げられてしまった。そのせいで、二人の心の繋がりを十分に描けないまま、なんだか唐突に恋人になってしまい、別れのシーンも淡白なままに終わってしまった。まさしく目黒蓮の無駄遣い。彼の存在意義はほとんどないに等しかった。◇噂によれば(というか本人談によれば)、どうやら吉川晃司の提案で、本来の「鬼教官」のキャラが変更されたらしく、一部の視聴者は、そのことを称賛してもいます。たしかに、「倫子もツンデレ。柏木もツンデレ。鬼教官もツンデレ。」…というんじゃ、あまりに話が安っぽかったのは事実。人間関係の物語をツンデレでしか描けないのは、脚本家の力量不足というほかない。けれど、だからといって、全体的なプランを考慮せずに、脚本の意図を捻じ曲げたりしてはいけなかった。これは、吉川晃司の責任でもあるけれど、その提案を受け入れた演出家の責任でもあるし、それを見過ごしたプロデューサーの責任でもある。◇脚本家の交代に起因する問題は、嶋田うれ葉や佃良太の責任ともいえますが、統括やすり合わせを怠ったプロデューサーの責任ともいえるし、脚本の意図を理解しなかった演出家の責任ともいえます。逆から言えば、自分の意図をきちんと周りに伝えなかった桑原亮子の責任ともいえる。実際のところはよく分かりませんが、やっぱりこれは大いに反省しておくべき点ですね。
2023.01.16
おそまきながら、ドラマ「silent」最終回の感想。…と、その前に「ボクらの時代」も見た。脚本家&演出家&プロデューサーの鼎談。三人とも第5話がベストの回だと言ってました。わたしは第6話の終盤まで脱落寸前でしたが!(笑)そして、プロデューサーは「最終回が不安」とも口にした。実際、近年にしてはめずらしく11話まであったわけですが、正直いって、終盤の第10~11話は、蛇足の感が拭えませんでした。◇最終回では、なぜか物語の結論を「言葉」に収斂させたのですね。付箋に書いた「言葉」をテーブルの上に並べたり、わざわざ高校まで行って、教室の黒板に「言葉」を書きつけて会話したり、体育館で「言葉」についての昔の作文を読んだり、最後は、かすみ草に「花言葉」を託して次々と受け渡してました。「カスミソウ」が「サクラソウ」の洒落なのかどうか知らないけど、「感謝」という音のない花言葉を、手話と同じように「おすそわけ」していたらしい。たしかに、奈々は、手話が「目に見える言葉」であることを讃えていたし、スピッツも「魔法のコトバ」を歌っていたし、ヒゲダンのテーマ曲も「言葉」について歌っていた。言葉はまるで雪の結晶 君にプレゼントしたとして時間が経ってしまえば 大抵記憶から溢れ落ちて溶けていって消えてしまうでも絶えず僕らのストーリーに添えられた字幕のように思い返した時 不意に目をやる時に君の胸を震わすもの探し続けたいきっと、音がなくても「言葉」があればいい、ってことなのだろうし、手話が伝える「言葉」の価値を肯定的に描きたかったのだろうし、そして新進の脚本家としても、最後の最後に「言葉の力」を訴えて終わりたかったのでしょう。しかし、それまでの物語の流れから考えると、この物語の結論は、やや唐突な印象を拭えなかった。そんなことがテーマでしたっけ?とってつけたような感じ。いまいちピンとこなかった。◇なぜなら、かならずしも言葉は人と人とを正確につなぐわけではないし、むしろ言葉のすれ違いが人と人を切り離すこともあるのだし、実際、この物語のなかでは、いくら言葉を尽くしても分かり合えないことのほうが多かった。それに、もし2人が言葉でしか繋がり合えないのなら、想と紬はずっと手を繋ぐこともできず、可愛いバッグを持ち歩くこともできず、ひたすら手話をし続けなきゃいけなくなる。むしろ、「言葉を超えた繋がりこそ重要」という結論のほうが、視聴者としては、よほど納得感があったはずです。…というより、わたしに言わせれば、≫ 他人の気持ちを思いやるよりも≫ 自分の気持ちに正直になることのほうが大事という第8話の内容こそが結論にふさわしかったのです。◇じつをいえば、第9話も素晴らしかったのですよね。ドラマの最終盤になって、想が聴力を失った過去へ遡る、という内容。この構成の仕方はすごいと思いました。序盤でそれを見せるのと、奈々の物語の後でそれを見せるのとでは、視聴者の受け止め方が大きく違ってくるからです。時系列で物語を語っていくのでもなく、かといって順繰りに遡っていくのでもなく、表層から深層へ分け入ってくような、あるいは細部へ分け入っていくような、通常の脚本ではありえない叙述を確信犯的にやっていた。◇しかし、残念なことに、第10話ではまた振り出しに戻った感じで…(笑)。つまり、「紬の声を聞けないのが悲しいから別れる」みたいな話に戻ってしまった。高校卒業後に紬と別れた理由を、最終盤にきて、あらためてぶり返した形です。それって、基本的には、湊斗が紬と別れたときの、「紬のすべての気持ちを手に入れられないのが悲しいから別れる」ってのと似たような理由。要するに、どちらの男子も、完全に100%じゃなきゃ気が済まないのです。20%の欠落が悲しいから、残りの80%も捨ててしまおう、みたいな話。まあねえ、若いから、気持ちは分からないでもない。◇でも、100%を共有し合える恋愛なんてありえないのです。たとえ健常者どうしであってさえ、同じものを見て、同じものを聞いてるとは限らないのだし。むしろ、2割ぐらいが共有できれば御の字(笑)。想であれ、湊斗であれ、そのことに折り合いをつけられるかどうかが問題だった。すくなくとも、想にかんしていえば、たとえ紬の声を聞くことができないとしても、「声以外の部分を愛せばいい」という結論になるのは自明だった。しかも、それを「言葉」だけに収斂させる必要はなかったのです。声以外のすべてを愛せばいいのだから。サブスクではなくCDを手に取ることの意味もそこにあったはず。音以外のすべてを感じ取ればいい、ってこと。◇余談ですが、最後まで「お姉ちゃん大好き」だった弟くんは、結局ずっとフィクサー的な役回りのままでしたね。弟くんと妹ちゃんが、なぜ繋がってるのかも分からなかったし、なぜその関係を姉や兄に隠してるのかも分からなかった。それから、これも余計なことだけど、篠原涼子は、これまでずっと主役を張ってき女優なだけに、脇役の演技があまり上手くはありませんでした。脇役になっても、まだ主役の演技をしてる感じ。よくもわるくも「スターの輝き」が抜けないのです。年末の紅白でも、堂々たるパフォーマンスを見せていましたが、やはり主役向きの人だなと思いました。
2023.01.13
おそまきながら、ドラマ「クロサギ」の感想です。とても面白かったし、よく出来たドラマだった。原作を基礎にしてるとはいえ、セリフもよく練られてあったし、かなり構築性のある脚本だったと思います。◇わたしはいままで、篠﨑絵里子という脚本家をあまり意識してなかったけど、「クロサギ」「あしたのジョー」「竜の道」など、かなり硬派でハードボイルドな作品を手掛けているのですね。いずれも、下町を舞台に、悲しい境遇に生まれた男の物語で、どの作品にも、共通の世界観があります。フジ「竜の道」の遠藤憲一も、TBS「クロサギ」の三浦友和や船越英一郎も、どこかしら丹下段平みたいなキャラクターだし。◇今回のドラマの最大の魅力は、三浦友和を桂木役に起用したこと。原作ではスナック経営者だし、2006年のドラマ版のときも、山崎努が悪人顔のクラブ経営者を演じていましたが、今回は、三浦友和が、品のよい善人顔の和菓子職人を演じてて、どう見ても堅気の人間にしか見えなかった。そこが、とてもスリリングで、いちばんワクワクしたところだし、なおかつ詐欺のリアリティを強めてもいたと思います。…一方、ヒロインの父親は船越英一郎でした。詐欺の被害者なのに、三浦友和よりもよっぽど悪人顔に見えましたが(笑)、それもまた意外性があって面白かった。そして、加害者である三浦友和と、被害者である船越英一郎が、主人公に対して、ともに"親心"を持っている…。その対照的な図式も面白かったです。◇ほかの登場人物も、全体的にシンメトリックな相関性をなしていました。たとえば、詐欺師になった被害者の息子(平野紫耀)と、検事を目指した被害者の娘(黒島結菜)。一方は、法を疑う詐欺師。他方は、法を信じる検事。ふたりは逆の立場でありながら、たがいに共感しあっていた。それから、刑事になった詐欺師の甥(井之脇海)と、法学助教になった詐欺師の甥(時任勇気)。一方は、叔父を憎んでいましたが、他方は、叔父を強く慕っていました。ふたりは同じ立場に生まれながら、まるで正反対の人物だった。…こうした構造が、物語に強い葛藤とダイナミズムをもたらしていました。きっと中村ゆりとか山本耕史のキャラにも、(2人とも武闘派?殺しまでやってました?)何かしら背景があるんだろうけど、最後まで謎のままでしたね。◇2006年版のドラマは、ミキモトとの対決までで終わっていましたが、今作では、それはあくまで通過点でしかなく、ミキモトの先に、ラスボスがあと2人いました。不可視のラスボス、宝条。身近にいるラスボス、桂木。見えない敵と、見えすぎる敵。そのこともまた詐欺師のリアリティを強めていた。◇…ただ、ミキモトと対決した上海編や、宝条と対決した最終回は、やや盛り上がりに欠けた気もする。ドラマの基本的なテイストが、東京の下町に置かれていたせいもあって、上海に舞台を移しても、永田町や霞が関に舞台を移しても、こじんまりした印象のまま、ちょっとスケール感が乏しかったのです。とくに上海編は、(実際に上海ロケをしたのかどうか知らないけど)街並みにも、登場人物にも、さほどの "上海らしさ" を感じられませんでした。そこが惜しい!◇◇なお、今回のドラマには、「鎌倉殿」のキャストが6人出ていたらしい。※坂東彌十郎、山本耕史、新納慎也、八木莉可子、栗原英雄、たかお鷹それから、黒島結菜と井之脇海は、「ちむどんつながり」「萌歌氷魚つながり」だけでなく、日芸の先輩と後輩なのですね!思えば、クドカンと井之脇海と黒島結菜って日芸つながりなんだなー。◇ちなみに、ネットの反応を見てたら、「桂木さんはいい人!」みたいな反応であふれてたけど、基本、桂木は悪人ですから!野放しにしちゃいけない人間です!!そこを勘違いしてはいけません。これは現実社会でもそうだけど、ヤクザとか悪徳政治家って、実際に会うと、いい人だったりします。しかし、それで騙されてはいけない。◇桂木も、宝条も、法に触れないところで悪事に手を貸していました。宝条の手口もひどかったですね。業績を上げるためだけに、客に多額のローンを組ませて、返せなくなったら担保の家を売らせて、自殺したら、生命保険で支払わせる。そういう詐欺まがいの銀行屋です。実際に、そういう奴らがいるのかも…。
2023.01.12
おそまきながら、NHKの正月時代劇「いちげき」を見ました。原作も良いのでしょうが、やはり脚本がお見事というしかない。非常に完成された脚本。最近のクドカンの脚本は、もう職人芸みたいな次元に達してて、どこにも非の打ちどころがないです。あまりに出来過ぎていて、これといってコメントすることもないのよね…(笑)コメディの体裁ではあるものの、大きな歴史には何の影響も与えず、捨て石として消えざるをえない市井の人々の姿を、ペーソスを込めて描くというあたりが、現在のクドカンの真骨頂になっている感じ。◇キャスティングもよかった!松田龍平は安定の役どころですが、とくに、「勝海舟」に尾美としのり「相楽総三」にシソンヌじろう「伊牟田尚平」に杉本哲太…を当ててくるあたりに、いかにもクドカンらしい皮肉が効いてて面白かった。そして染谷将太には、ちょっと鬼滅の "炭治郎" っぽい雰囲気を感じました。さしずめ、岡山天音が "善逸" で、ティモンディが "伊之助" で、西野七瀬が "禰豆子" で、伊藤沙莉は "神崎アオイ" みたいな感じ(笑)。
2023.01.11
舞いあがれ!第14週。…たしかに、わたしは、先月のはじめごろ、桑原亮子が脚本に復帰したあとに、かなり苛酷な展開が待っている可能性は高い。と予想しましたが、新年早々、想像のはるか上をいく厳しさです…(笑)。◇そして、兄が投資業で失敗しそうに見えるのは、あくまでもミスリード的な「フラグ」であって、実際に転落するのは父だけってパターンもありえます。わたし自身、そのほうが面白いと思ってる。という当てずっぽうな予測が、意外にも当たってしまった。ただし、そうなれば、祖母に逆らって故郷を捨ててきた母の選択は、結果的に間違っていた…ということにもなります。とまで書いたものの、事業失敗以上の悲劇は想像できなかった。◇じつをいうと、脚本家が交代する前の段階で、わたしは「貴司の死」をすこし危惧していました。しかし「父の死」はまったく想定外だった。やはり桑原亮子の脚本は容易じゃありません。しかも、たんに喪失の感情を描くだけでなく、リアルな経済問題をえぐりだしているところが、容赦ないほどに厳しい。…そういえば、わたしは、桑原亮子が脚本に復帰してシビアな展開になったときに、かえってSNS全体に「共感できない!」の嵐が吹き荒れ、はげしいバッシングや炎上が起こるかもしれないとも書きました。まあ、一部にはSNSの拒絶反応も見て取れますが、いまのところ、それほど大きなバッシングや炎上は起こっていません。◇わたしは以前、桑原亮子の過去のドラマの印象について、脚本家自身が格闘しすぎてやしないかと思うほど、良くも悪くも真面目すぎる脚本だった印象があって、視聴者に伝わる以前のところで無駄に格闘してる感じ。と書きましたけれど、やはりそれは、この脚本家の不安要素ではある。つまり、ドラマのなかでは解決しえないほどの厳しい状況を、あえて物語のなかに取り込んで、手に負えないような問題に立ち向かってしまう真面目さ。もちろん、それは欠点ではなく、それこそがリアリティを生んでいるともいえる。◇とにかく、この桑原亮子って人は、けっしてイージーな脚本家じゃないのです。そう安々と「幸せな結末」をもたらしてくれる作家じゃない。そのことは、あらかじめ覚悟しておかなければならない。五島の祖母は、投資家の長男に、「逆風のなかの馬鹿力」を示唆しましたが、そんなミラクルな展開で逆転が可能なのか。それともまだまだシビアでリアルな展開が続くのか。今後も、綱渡りの物語が続くんだろうと思います。
2023.01.09
今夜は「クロサギ」最終回。とっても面白い。最後はどうなっちゃうんだろう?第9話を見ると、黒崎(平野紫耀)が敗北しそうな予感も…。原作を読んでる人は、この結末を知ってるのかしら?ちなみに2006年版ドラマはミキモトとの対決で終わってる。桂木(三浦友和)は、黒崎と宝条(佐々木蔵之介)のどちらを潰すつもりなのか。かりに黒崎が宝条を倒せるとしても、桂木との対決にまで至るのかどうか。山本耕史と船越英一郎の再登場にも期待してます。
2022.12.23
おそまきながら、BSテレ東「最果てから、徒歩5分」の最終回。ずっとTverで見ていました。◇ドラマとしての力強さにはやや欠けたけど、なかなか面白い話ではあったのよね。見始めて、すぐに思い出したのは、2005年の映画「メゾン・ド・ヒミコ」でした。あれは、心に傷を負ったヒロインが、老人ホームのゲイとの交流で癒されていく物語。そのほかにも、高嶋政伸の「ホテル」とか、竹内結子の「ランチの女王」とか、「マイリトルシェフ」とか「崖っぷちホテル」とか、ホテルやレストランが心のオアシスになって、悩める人々の傷を癒していく…みたいなドラマはたくさんあるから、その意味では、かなり既視感があって、日本のドラマとしては類型的な物語なのだけど、今回のお話で面白かったのは、オーベルジュを運営している4人それぞれが、ひそかに知られざる罪を抱えていたこと。◇母との確執。絵を描くことへの夢。推しのアイドルに対して抱く幻想。妹への嫉妬と嘘。他人の幻想を演じることの矛盾。自分を育てた男を愛した少女。少女の母を愛してしまった男。後輩の苦しみに気づけず死なせてしまった青年。最後は、自分たちが救ったお客さんによって自分たちが救われ、4人で一緒に「最果て」から戻ってくる。そして、たとえ憎まれながらであっても、許されない人生を生きていくことを決める。そういう物語です。◇それぞれのエピソードをもっと深めれば、かなり手応えのあるドラマになったと思うけど、表層をなぞっただけで、ちょっと掘り下げが弱く、十分に説得力のある話になってなかったのが残念。全体的にゆるい印象のまま、ドラマの力強さには結びついていませんでした。原作の問題もあるだろうけど、やっぱり脚本の掘り下げが足りないと思う。全8話の長編ドラマなのだから、せめて後半部分は4人のエピソードだけに絞って、それぞれの話をもっと掘り下げることができたはず。◇夕雨子がギルダに雇われたのはいいとして、なぜ妹の名前を名乗る必要があったのか分からないし、出所した妹のその後の人生がどうなったかも分からなかった。一人二役だから無理だったのだろうけど、本来なら、姉妹の再会シーンも見せるべきだったと思う。…でも、まあ、プロット自体は面白いと思うので、別の演出があれば、リメイクで見てみたいと感じました。岡田結実は、カムカムの女中さんにしても、今回の赤毛の役にしても、意外に影のある役がハマってます。沙良役の加藤小夏という人は、鎌倉殿の実朝の正室だったのね。
2022.12.20
13人とは、合議制のメンバーの数じゃなく、義時が殺した人間の数だったのね。そのなかには頼家も入ってます。…って政子の前で言っちゃった(笑)。そして、義時は、北条政子に殺される。◇毒を盛ったのは妻。毒消しを捨てたのは姉。毒を用意したのは無二の親友。すごいドラマです(笑)。なお、義時が死んだのは、承久の乱から3年後の1224年。翌年夏には大江広元と北条政子が相次いで死去。1239年12月31日に三浦義村が死去し、Wikipediaには、「その翌月、ともに北条泰時を支えた時房も義村の後を追うように死去」…とあります。そして、泰時は1242年に亡くなっています。◇鶴丸は、川では死にませんでした。これはきっと八重の霊力ですね。八重が亡くなったのとは別の川ですけど!北条政子も、「泰時は賢い八重さんの子です」と言って、このドラマのヒロインが八重だったことを公式認定。まあ、たしかに八重さんは、身寄りのない子供たちを育てたりして、政子と同じように優しい女性だったけれど、正直、それほど賢かったというエピソードは思い浮かばない(笑)。むしろ、賢さという意味では、比奈さんのほうが賢かったかな、という印象です。◇運慶はピカソを先取りしていましたね!しかし、鎌倉時代の人々にキュビズムが理解されるはずもなく(笑)。あの仏像は捨てちゃったのかしら?いまなら高値がついたでしょうに!その後、運慶は、縛り上げられてどうなったのでしょう?一説によると、運慶の没年は1223年12月11日。義時が死ぬ半年前です…。殺されたの?千利休みたいに。◇若き家康が「吾妻鏡」を読んでいましたね!毒を盛ったのは妻。毒消しを捨てたのは姉。毒を用意したのは無二の親友。すごいドラマ。 #鎌倉殿の13人— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) December 18, 2022
2022.12.19
すっかり年末モードです(笑)。昨日は、夕方にNHK総合で『中村仲蔵』の後編!夜はFMらじるらじるでN響定期公演!◇ドラマ『中村仲蔵』の後編。台本作家にいじめられた仲蔵。弁当幕などと蔑まれた忠臣蔵第五段のチョイ役で、セリフも見得も取り上げられながら、全身白塗りのビジュアルと、鬼気迫る立ち姿と、ただならぬ所作だけで観客を釘付けにした、度肝を抜くような芝居に痺れました。◇夜は、なにげなく聴いてみた、FMらじるらじるの聴き逃しサービス。N響の定期公演です。ラフマニノフの第2コンチェルトと、ドボルザークの新世界。年末の忠臣蔵に負けず劣らず、笑っちゃうほどベタなプログラム!!でも、意外なほど新鮮な気持ちで聴くことができました。…べつに、映画「蜜蜂と遠雷」がらみのピアニストを、意識して追いかけてるわけでもないのだけど、先日は、NHK俳句番組に金子三勇士が出てたし、昨日の演奏は、たまたま河村尚子のピアノだった。そして、べつにラフマニノフが好きなわけじゃないのだけど、去年は藤田真央くんで、今年は河村尚子でラフマニノフを聴くことに(笑)。まあ、ラフマニノフって、ソリストの個性が目立つ音楽だから、つい「どんな演奏かしら?」と気になってしまうのもある。…河村尚子の演奏は、とても華やかで、きらびやかでした。なんならファンタジックといってもいい。クリスマスが近いから余計にそう感じるのかしら?ある意味、リズムも、メロディも、通俗的ともいえるほど、堂々たる分かりやすさを押し出してて、あまりスマートすぎないところが良い。どこにも、難解さとか重々しさとか面倒臭さとかはなくて、夢中で聴き入ってたら、あっという間に終わってしまいました。ファビオ・ルイージのオケも、イタリアの指揮者だからなのか、オペラ的というか、なんなら映画音楽みたい。つい最近、GYAOの無料動画で、フェリーニの映画を見たから余計にそう感じるのかも。…アンコール曲とCDの曲もラフマニノフ。こちらは初めて聞きましたが、なんとなく、ゆったりとして、一足先にお正月の気分を味わえた感じです。…後半はドボルザークの「新世界」。正直にいうと、はなからバカにしてる曲なので(笑)、今まであんまりちゃんと聴いたことなかった。あらためて聴いてみると、へ~、こんな曲だったのね~、と面白かったです。とてもストーリー性のある演奏で、やっぱり映画音楽的な感じがしたのですよねえ。クラシックの演奏を「映画音楽的」といったら、ぜんぜん誉め言葉じゃないだろうけど、けっして薄っぺらいということではなく、映像とか、物語の背景が、ありありと見えてくるような奥行きのある演奏。そのストーリー性に没頭してしまって、一本の映画を見終わったような充実感がありました。とっても楽しかった。◇ラフマニノフも、ドボルザークも、べつに年末とは何の関係もないんだけど、そのベタな分かりやすさが、なにやら年末気分を盛り上げてくれた感じ?(笑)ちなみに、バイロイト音楽祭もらじるらじるで少しずつ聴いてます。夏のバイロイトも、毎年のNHK-FMの刷り込みのせいで、わたしの年末的な気分を盛り上げてくれます(笑)。◇忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段脚本・演出 源孝志音楽 阿部海太郎中村勘九郎・上白石萌音・中村七之助・藤原竜也吉田鋼太郎・高嶋政宏・段田安則・市村正親N響第1973回定期公演ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18」(河村尚子/ファビオ・ルイージ/NHK交響楽団)ラフマニノフ「エレジー 変ホ短調 作品3第1」(河村尚子)ドボルザーク「交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界から」」(ファビオ・ルイージ/NHK交響楽団)CD:ラフマニノフ「前奏曲 変ト長調 作品23第10」(河村尚子)
2022.12.18
NHK大河「鎌倉殿の13人」。ついに北条政子の演説が描かれました。◇なぜ彼女の言葉は、坂東武者たちを奮い立たせたのか。それは、「頼朝さまの御恩」うんぬんの話じゃなくて、結局は、「西のヤツらにまた馬鹿にされてもいいの?」ってことだったようです。その呼びかけへの脊髄反射が、それまでの内部矛盾をすべて帳消しにして、ほとんど勢いだけで朝廷打倒へ向かっていく。現実の歴史なんて、所詮はそんなもんよね。◇鎌倉幕府は、まともな政治体制じゃなかったんだと思います。関東発祥の新選組が、内ゲバだらけのヤンキー集団にすぎなかったように、関東に拠点を置いた鎌倉幕府もまた、内ゲバだらけの広域暴力団にすぎなかった。三谷幸喜は、2つの大河ドラマで、その内実を暴いたといえます。◇頼朝が生きてるあいだは兄弟どうしの殺し合い。頼朝が死んでからは御家人どうしの殺し合い。…そして、義時が執権になったあとも、口先では「頼朝さまの遺志を継ぐ」と言いながら、実際には源氏の血筋を容赦なく根絶やしにしていたし、さらに、口先では「北条のためだ」と言いながら、実際には父を追放し、姉妹の子や孫を殺害し、あげくには妹の実衣まで殺そうとしていました。頼朝の恐怖政治にも、ほとんど大義名分なんてなかったけれど、義時の恐怖政治にも、やはり大義名分なんてなかったと思う。ただ、そのつどそのつど言いがかりをつけては、目についた政敵を次々に粛清しつづけただけで、その矛盾した統治理念はロジックが破綻しつづけていた。いってみれば、それは田舎ヤクザのあてどない内部抗争だった。◇にもかかわらず、なぜ承久の乱において御家人たちは団結できたのか。…これは、あくまで三谷幸喜の解釈だとは思いますが、第一の理由は、妹の実衣を救うために政子が尼将軍になったから。第二の理由は、彼女がある種の「関東ナショナリズム」を焚きつけたから、です。べつに、亡き頼朝さまの御恩が、「山より高かったから」でも「海より深かったから」でもない。源氏の血統と遺志を受け継ぐなんてのは、あくまで後世に語り継ぐためのタテマエにすぎない。むしろ、このときに政子が持ち出したのは、親方の「頼朝さまの遺志」じゃなく、亡き兄「宗時の野望」だったというべきです。その野望を御家人たちにも植えつけたわけですね。坂東武者の世を作る!そのてっぺんに北条が立つ!たしかに、追討の院宣が出た時点で、執権=北条義時の名は、清盛、義経、頼朝に並んで歴史に刻まれるべきだったし、これまで埋もれがちだったことのほうが不思議だと思う。トキューサが、追討令を「記念に欲しい」と言ったのも無理はありません。記念に取っておけば、そのうちプレミアがつくかもしれないような文書だし、追討の院宣って、それぐらい歴史的価値があるといえる。けれど、幕府の歴史を正当化していくためには、やはり北条の名前を目立たせすぎてはいけないし、朝廷を打ち負かす大義名分も、あくまで「頼朝さまの遺志に報いる」って建前でなきゃいけない。そのためにも、政子の演説は、「山より高い」だの「海より深い」だのって話にしとく必要がある。そのシナリオを書いたのは大江広元だったわけですね。大江広元は、義時を生かすためにこそ、最後の最後に義時の意思に背いた形になりましたが、政子は、そのカンペさえも無視して、関東武士の短絡的なヤンキー魂に火をつけたのでした。
2022.12.11
>忠臣蔵ラプソディー第五番>なかむらなかぞう しゅっせのきざはしいよいよ年末ですね~。去年のBSプレミアムの作品が地上波で放送。忠臣蔵役者として名を馳せた中村仲蔵の一代記です。とにかく絢爛豪華な演出で贅沢なつくり!NHKと松竹と東宝と東映がガップリ組んでるのが凄い。前半はさほどの物語の起伏はないものの、やっぱり忠臣蔵がらみなので、いやがおうにも年末感が高まります(笑)。なんなら毎年放送してほしいぐらい。意外にも、髙嶋政宏がハマリ役なのよね。歌舞伎役者に引けを取らぬほどの顔面力の強さが。来週の後半はかなり激しい展開になっていきます。◇脚本・演出の源孝志は、文芸路線を経てなぜか時代劇にのめりこんだけど、次作ではふたたび現代劇に戻るらしい。わたしは、いまだに、20年前の「マイリトルシェフ」が忘れられないのだけど、ほとんど忘れ去られてるのが悲しいです。窪田ミナの音楽が、すべてのドラマサントラのなかでいちばん好きなのよね…。 — NHKドラマ (@nhk_dramas) December 10, 2022
2022.12.11
TVerで、2012年の「浪花少年探偵団」を見てます。とっても楽しい。本放送のときは見てなかったけど、どうやら由貴ちゃんと浜辺美波の唯一の共演っぽいので、見てみたら、すっかりハマってしまいました。コテコテの大阪を舞台にした、東野圭吾の推理小説のドラマ化で、テイスト的には「明るい昼ドラ」って雰囲気。宮部みゆきは、この小説の主人公のことを、「じゃりン子チエを大人にしたようなキャラ」だと言ってるらしいけど、主演の多部未華子は、まさにそんな感じ。いまさらながら、シリーズ化してほしかったと思うほど当たり役です。◇東野圭吾の推理小説の魅力は、たんにトリックの技巧を凝らすだけでも、やたらと考察要素を散りばめるだけでもなく、やはり人間ドラマとしての面白さにあるんですよねえ。段田安則が人情味のある刑事を演じてますが、じんわりしたエピソードにこそ納得感があります。◇ちなみに、由貴ちゃんと美波が一緒に映る瞬間を探してますが、ほとんど見当たりませんww手前の背中が美波。奥が由貴ちゃん。ほんの一瞬だけ同じ画面にwレミゼ以来の古いつきあい。多部未華子と美波。
2022.12.11
日テレ「ファーストペンギン」が終了。す・ご・か・っ・た・・・。素晴らしい脚本。いったい、どこまでが実話だったんでしょうか??◇スッくんの最後のモノローグ。≫これは母と漁師たちの終わらない物語だ…つまり、これは実話としても、まだ終わっていないんでしょうね。きっと森下佳子は、実話以上の物語を書いたのだと思う。先々週ぐらいまでは、ずっとヒロインのほうが正しくて、漁師たちや漁協のほうが間違っていた。しかし、最後は、その立場が逆転してしまう。漁師たちの直感のほうが正しくて、ヒロインのほうが選択を間違えていた…ってこと。波佐間という男が企んでいたのは、海外資本による経済侵略であり、それは詐欺まがいの脱法行為だった。…でも、波佐間には波佐間なりの信念があったように見えます。◇わたし自身、基本的には国の方針が正しいのかなと思いつつ、一方で「漁協の言い分もわかる」という気持ちがありました。漁業の自由化を進めていけば、最終的には国防の問題にまで発展しかねない。お魚ボックスを売るだけの話が、そこまで大きな政治問題に繋がってしまうのですよね。それと同じことは、漁業だけでなく、農業や林業にも言えるのでしょう。自由主義を取るのか。保護主義を取るのか。上から変えるべきなのか。下から変えるべきなのか。外から変えるべきなのか。何が正しいのか、どうすべきなのか分からなくなってくる。そんな脚本のダイナミズムを感じさせました。◇国と、海外資本と、地元マフィアの、いわば三つどもえの闘争があり、ある意味では「マフィアが国を守ってる」みたいな実態もある。地元マフィアは、ヤクザの組員まで送り込んで、殺人まがいのことを仕掛けてきたけれど、それを刑事事件として処理すれば話が終わるわけじゃない。結局、これって、社会の構造そのものを変えなければ終わらないのです。渡辺あやの「エルピス」もかなり政治的だけど、それに劣らぬほど政治的なドラマでした。野木亜紀子の以下のツイートを見ても、本作が現在進行形の闘争の物語だったことが分かる。ファーストペンギンは食われる存在。理不尽な権力者に土下座して身を差し出さないと誰も前に進めない。現実は未だここ。ドラマっぽい明るさを保持しつつもシビアな話だった。#ファーストペンギン— 野木亜紀子@WOWOWフェンス (@nog_ak) December 7, 2022森下佳子はすごいドラマを書いたなー…。TBSの一連の作品とはまったく違う題材でありながら、脚本の完成度はむしろTBSの作品よりも高かったと思う。なお、Tverでは、18年前に森下佳子が書いた「セカチュー」が配信されてます。もともと硬派な脚本家ではあるけれど、今回は、恋愛の要素がほぼないに等しく、ひたすら政治的な作品だったといっていい。ふつうに二股かける女が出てきたりして、恋愛の描写はかなりドライだったとも言えます。つまり、ベタな恋愛要素を絡めなくても、これだけ面白いドラマができるってこと。ほかの脚本家は見習ってほしいし、こうした内容についてきちんと語れる評論家も増えてほしい。◇日テレのドラマとしては、去年の「ハコヅメ」に次ぐヒットです。演出は、あくまでオーソドックスなスタイルで、日テレらしいスタイリッシュな作風ではなかったけど、この作品にかんしては、むしろそれでよかった。キャスティングの面でも、従来とはまったく違ったキャラで俳優を起用してるのがすごかった!— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) November 17, 2022 — まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) November 17, 2022 — まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) November 17, 2022このカップルも素敵でしたね(*^^*)
2022.12.08
ドラマ「silent」第8話。なるほどねー。今回も重要な内容だった。◇男子が女子に気を遣ったり、母が息子に気を遣ったり、健常者が身障者に気を遣ったり…そういうことが、やたらにまどろっこしいドラマだと感じてはいたけれど、今回は、その「気を遣う」ということがテーマになっていた。実際、健常者どうしならば気を遣わなくても済むし、身障者どうしならば気を遣わなくても済むのに、ひとたび健常者と身障者が向き合うと、どうしても、たがいに気を遣わずにはいられない。そういう問題を、どう乗り越えたらいいのか。とりわけ身障者の恋愛を描くうえで、このことは大きなテーマになってくるのですね。まあ、日本人の場合は、健常者どうしでさえ、たがいに気を遣ったり忖度したりする民族なので、身障者に対してはなおさらなんだけど(笑)。そうそう簡単に答えが出せる問題じゃありませんが、今回のドラマが示したひとつの答えは、結局「自分のために行動するのがもっとも誠実だ」ってこと。…たとえば、紬(川口春奈)が手話を覚えたのは、ただ想(目黒蓮)と話したかったからだし、一緒にいるのも、ただそうしたいからだよね、って話。…たとえば、入院した夫を見舞うのは、相手のためじゃなくて自分のためだよね、って話。…たとえば、春尾(風間俊介)が健常者の立場で身障者に示した気遣いよりも、奈々(夏帆)にとっては、ひとりの男性として向き合ってくれてた姿のほうが、よっぽど誠実だったのよね、って話。 誰しも、他人のことは心配するけれど、他人から心配されるのは重荷になって鬱陶しい。相手への気遣いや忖度は、ときとして不誠実であり、むしろ自分のために行動するほうがよほど誠実だってこと。「相手のためじゃなく自分のため」というほうが、ほんとうは相手のためにもなってるんだ、ってこと。日本人は、ややもするとタテマエを重視しがちな民族だけど、タテマエや忖度だけで向き合うのはむしろ失礼であって、やはりホンネを示すことのほうが大事なのだし、それこそが相手に対する本当の礼儀なのかもしれません。◇一方、中途失聴者の想が、「なぜ声で話さないのか」についても、本人からの答えが示されました。>声が出せないわけじゃない。>でも、自分に聞こえないから、誰にも届かない感じがする。>自分で感じ取れないことが、すごく怖い。>いちど声で話すと、>その先ずっと声で話さないと悪い気がする。>聞こえる人は声で聞くほうが楽だって分かってるから、それが辛い。 相手は自分の声を聞いているのに、自分にはそれが聞こえていないという不安。同じ言語を相手と共有できていないことの不安。やはり手話のほうが、同じ言語を共有できている実感があるのですね。◇今回の内容を見ると、この脚本家が、ありえないほどに繊細な機微まですくいあげて、物語のなかに落とし込んでいるのが分かります。あらためて、これだけ難しいテーマを、これだけの集中力を要するドラマ表現のなかで描き、これだけの数字で成功しているのは、なかなかスゴいことだなあと思う。ただ、次回のしんどそうな内容にも、視聴者が耐えられるかどうかは注目すべきところです。シビアな内容になると、かならず難癖をつけて脱落する人たちが現れますから。なお、今回は森口瑤子が出演してましたが、同じヤングシナリオ大賞の坂元裕二の妻が、この作品に参加していることの意味を感じます。さらに、Tverでは、このドラマの先行作品ともいえる、27年前の「愛していると言ってくれ」が配信されてるようです。そして、今日は、ヒゲダンがFNS歌謡祭でテーマ曲を歌うらしい。
2022.12.07
舞いあがれ!第9週。脚本家が交代したことによって、「#舞いあがれ反省会」が活性化するのかと思いきや、それほど過剰な反応は起きていません。むしろ、前作の「ちむどん」のベタなコメディを叩いていた人たちが、なぜか「舞いあがれ」のベタなツンデレには満足してるらしい(笑)。結局、SNSの視聴者が求めてるのは、繊細で複雑なドラマなんぞではなく、たんに「分かりやすい共感」でしかない、ってことですね…。◇逆に、これから後に懸念されるのは、桑原亮子が脚本に復帰してシビアな展開になったときに、かえってSNS全体に「共感できない!」の嵐が吹き荒れ、はげしいバッシングや炎上が起こるかもしれない…ってこと。実際、兄の投資事業とか、父の巨大工場新設とか、岩倉家の「転落フラグ」が立ってしまってるわけだし、桑原亮子が脚本に復帰したあとに、かなり苛酷な展開が待っている可能性は高い。そして、たんに「分かりやすい共感」だけを求めてる視聴者たちは、そういう苛酷な展開を受けつけない可能性が高い。もしも、桑原亮子の脚本がバッシングされる事態になれば、朝ドラは、本格的に、SNSの求める「分かりやすい共感」の範囲内でしか、物語を作れなくなってしまうかもしれません。そうなったら、それは脚本家や制作者にとって悪夢でしかないのだけれど、例によってバカな評論家たちは、ただSNSの世論に追随するばかりで、そうした事態に対して何らの批評性も発揮できそうにありません。◇いまのところ、このたびの脚本家の変更は、さほど悪い結果になってはいませんが、どこにもツッコミどころがないわけじゃありません。最初にも書いたとおり、ツンデレや三角関係をにおわせるような恋愛展開は、あまりにもベタすぎるんじゃないか?…ってのもあるし、たとえば、冷酷な鬼教官という触れ込みだった吉川晃司は、上っ面は『下町ロケット』のキャラを借りているものの、すくなくとも、このドラマでの言動を見るかぎり、どこにも「鬼」と呼ばれるような要素などないし、むしろ温情に厚い教官というべきなんじゃないの?…って気もする。それから、(専門的なことは分かりませんが)方向音痴なパイロットが、北海道の局所的な地形だけを丸暗記しても、それだけじゃ本質的な解決にならないんじゃないの?…ってのもある。そういうツッコミどころが、現状のSNSで許容されていることの疑念もありますが、それ以上に、わたしが引っかかってるのは、兄の投資業に対するあからさまな「偏見」の描写です。◇投資業を批判的に描くのは別にいいと思うけど、それは、あくまで、具体的な業態の中身を描いてからにすべきであって、たんに「投資」と聞いただけで、すべての人物が反射的に眉をひそめてしまうってのは、いくらなんでも職業差別の度が過ぎるし、そういう描写をドラマの「お約束」にしてはいけません。そもそも、兄の投資業だけがヤクザな商売であり、妹の目指してるパイロットとか、父が事業拡大を目指してるネジ作りが、それほどカタギな商売なのかというと、べつにそんなことはないと思います。◇いや、もしかすると、兄が投資業で失敗しそうに見えるのは、あくまでもミスリード的な「フラグ」であって、実際に転落するのは父だけってパターンもありえますけどね。わたし自身、そのほうが面白いと思ってる。父の事業よりも、兄の事業のほうがずっと堅実で安定していた…ってオチなら、それはかなり斬新なドラマになるかもしれません(笑)。現実に、父のようなカタギの商売が、兄のようなヤクザな商売によって救われる、ってことも、ありえない話ではない。金のビリケン宇宙人が、その伏線だったりして??まあ、そんなことになったら、SNSは、またぞろ「共感できない!」と言って荒れるでしょうが。
2022.12.04
城塚翡翠の後編です。てっきり倒叙というからには、これまでの内容を裏側から語り直すのかと思いましたが、そうではなくて、相沢沙呼の『倒叙集』なる原作の映像化なのですね。※ちなみに相沢沙呼って女性かと思ったら男性だそうです。つまり、最初に犯人をネタバレしてから、そのトリックをさかのぼって解き明かしていくという、いわば「コロンボ型」の推理ドラマってこと。なので、ここからは翡翠と真ちゃんの女子バディに変わり、変態シスコン野郎だった瀬戸くんは退場! (T_T)/~~…と思ったら、次回は特別編だそうで、また変態シスコン野郎の瀬戸くんが復活するかも(笑)。◇真ちゃんは、冒頭から、変なデザインのTシャツを着て、ソファに寝そべってアイス食ってるし、今までのキャラとは全然ちがいます。映像は相変わらず綺麗ですが、メタリックでダークな色彩から、パステルカラーの明るい色調が多くなった気がする。◇なぜインチキ霊媒で稼いでいたはずの2人が、犯罪捜査に首を突っ込んでるのかは分からない。たんなる趣味?金持ちの暇つぶし?しかも、わざわざ犯人のアパートの隣の部屋を借りて、霊媒&ハニートラップみたいなことをしたり、真ちゃんが喫茶店のウェイトレスをやったりと、ずいぶんと手間や費用が掛かっています。なお、「叔父は警視なんです」との翡翠のセリフがあり、真ちゃんは警視庁の報告書みたいなものを書いています。その一方で、「また警察庁に利用されてんだろ」との鐘場のセリフもあり、鐘場は警視から警部補に降格したものの、どうやら翡翠のおかげで捜査一課に戻れたようです。※ちなみに警察庁は、警視庁よりも上の組織です。翡翠と真ちゃんは、いったい何者なんでしょうか?◇前編とのギャップという点では、かなり斬新で面白かったのですが、…肝心の推理ドラマの中身は、正直それほど面白いわけでもなく、アリバイのトリックや真相解明の方法もショボいし、犯行動機の掘り下げも物足りないし、人生の過ちとプログラムのバグを重ね合わせるあたりも、取ってつけたような話としか感じませんでした。社長のマンションの鍵が、会社の机の引き出しにあるのも不可解だった。※追記:原作を読むと理由が分かるらしいです…。最後に、翡翠が、これから殺人罪で服役する男にむかって、女性との付き合い方とか、経験の重ね方とかを助言したりするのも変な感じ。冒頭では、真ちゃんがアイスを食べてしまったことを、翡翠が推理で見破るくだりがありましたが、わざわざ、「溶けたアイスがテーブルについていた」とか、「冷蔵庫のアイスが手の体温で少し溶けていた」とか、そんな推理をしなくても、アイスの蓋に名前が書いてないんだから一目瞭然でしょ。※追記:見直してみたら、ちゃんと蓋付け替えてました…。訂正してお詫びします!まあ、物語の出来はともかく、せっかく日テレが凝った作品に挑戦してるのだし、それをひきつづき楽しむことにします。— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) November 21, 2022
2022.11.27
フジ木曜劇場「silent」。やはり今週も奈々(夏帆)のパートがメインでした。紬(川口春奈)をめぐる三角関係の恋愛のネタは、もはやどうでもいい感じ(笑)。つーか、個人的にもなんら興味がない…。むしろ、今後の重要なポイントは、紬と奈々とのシスターフッド的な関係ですね。そして、もうひとつ重要なのは、なぜ手話教室の春尾(風間俊介)が、聴者であるにもかかわらず、手話を学ぶことになったのか、という話でしょう。この2点が物語の焦点になっていくはずです。…先週は、ろう者は、好きな人の声を聴くことも出来ないし、両手を使って手話をするから、恋人同士になっても、手を繋いだり、おしゃれなバッグを持ったりすることさえ出来ない。みたいな話でしたが、…今週は、手話だからこそ、伝えようとする人の気持ちが、まっすぐに自分にだけ飛んでくる尊さがある。わたしは手話で話すことが出来て満足。という奈々の気づきが描かれていました。手話をネガティブに語った心境を乗り越えて、今週は、手話をポジティブにとらえなおす内容。実際、このドラマの手話を見ていると、けっこう単語を覚えられたりもするし、手話の魅力を視聴者にまで伝えてくる力があります。最後は、手話で会話してたのに、おもわず図書館で笑い声をあげてしまって、子供に注意されてしまう、という微笑ましいオチ。◇一方、中途失聴者の想(目黒蓮)が、「なぜ声で話さないのか」ってことが、このドラマのひとつの前提であり、それが考察のネタにもなってるわけですが、今回も、その謎の「答え」は先送りされたまま。なにやら、湊斗(鈴鹿央士)といい、紬といい、想に聴くこと自体をためらったりして、(過保護な母親もそうですが)妙に気を遣いすぎてるところがまどろっこしい!はたして、この謎に、そこまで引っ張るほどの「答え」が用意されているのか、正直、疑わしい気もします。◇SNSなどを見ると、「本人が答えたくないことを聞くのは無神経」みたいな意見もあるけれど、べつに聞くだけなら罪じゃないでしょ(笑)答えたくないなら、本人がそう言えばいいだけの話であって、障害者だからと言って、わざわざ聞く前から先回りして気を遣う必要はない。例の「ちむどん反省会」のときもそうでしたが、相手を慮って忖度することが正義であるかのような風潮が、しばしばSNSで支配的になるのは、とても気持ちが悪いです。まあ、日本人って、世代が代わっても、永久にそういう民族なのでしょうねえ。…なお、「てんとう虫が壮大な伏線」との記事もありましたが、いまのところ、とくに壮大って感じはしません(笑)。この詩集も関係あります?
2022.11.24
ファーストペンギン!今夜は第8話。かなり凄い内容になってます…。当初は、ただ「お魚ボックスを売る」というだけの話で、はたして10話分のドラマになるの?と、ちょっと懸念してたけど、…とんでもなかった。これだけいろんなことが起こるのですねえ。商売の問題だけじゃなく、家族の問題があって、後継者の問題があって、地元社会の問題があって、さらには、ものすごく政治的な問題も絡んでくる。じつによく取材された骨太な脚本です。◇梅沢富美男が、漁協の組合長を演じています。いまもなお、漁協関係者がこのドラマを見たら、きっと梅沢富美男のセリフに頷くんじゃないかなあ。かなりリアルです。彼が守ろうとしているのは、もちつもたれつで成り立ってきた既存の仕組み。さらに第7話では、地元のドンみたいな元政治家が出てきて、殺人みたいなことまで仕掛けてきました。既得権益を守るためには手段を選ばないのですね。◇既存の仕組みを変えようと思ったら、これだけ色々なことが起こるんだろうな。漁協だけでなく、農協とか、医師会とか、スポーツ協会とか、あらゆる団体について同じような事がいえるのでしょう。つまり、足を引っ張っているのは、古い体質に縛られたローカルな社会や組織であり、そこに根差してきたポピュリズム政治ってこと。いわばマフィア的な仕組みになっているのですね。そのような構造が、じつによく見えてくる脚本です。◇これまでにも、NHKの朝ドラとか、TBSの日曜劇場で、経済人のサクセスストーリーが作られることはあったし、最近だと、TBSの「ユニコーンに乗って」みたいに、(たんなるOLのお仕事ドラマじゃなく)女性経営者のドラマも作られるようになってますが、この「ファーストペンギン!」の場合は、ただの経済人のサクセスストーリーじゃない。日本の社会構造まであぶりだす政治的な内容です。フジテレビの長澤まさみの「エルピス」も、かなり政治的なテーマに突っ込んでますけど、このドラマも、じつは非常に政治的な作品なのですよね。◇こういう骨太な脚本は、やっぱり森下佳子の手腕によるところが大きい。彼女がTBSで、綾瀬はるかのために書いた一連の作品も、ほとんどが硬派な内容ばかりだった。意外に恋愛ドラマは少なかったのです。もしかしたら、今後、森下佳子は、日テレの奈緒でドラマを書いていくつもりなのかも。
2022.11.23
おとといの記事にも書いたけど、朝ドラ「舞いあがれ!」の脚本家が交代しました。かなり作風が変わりましたね。「ベタなコメディになった」「ちむどん的になった」と言われれば、たしかにそうです。これはこれで切り換えて、楽しめなくもないとは思うけど、切り換えられない人もたくさんいるでしょうね。NHKが、視聴者にむかって、「脚本家が変わったので皆さんも切り替えてください」…ってわけにもいかんだろうし(笑)。これはちょっと批判されてもしょうがないかな。◇一般に、複数の脚本家による共同執筆はあっていいと思いますが、ともに議論を重ねながら作品を練り上げていくのと、ただバトンリレーのようにして話を繋いでいくのとでは、まったく意味が違います。今回の交代は、桑原亮子側の事情によるものなのか、それとも、外的な判断によるものなのか。つまり、脚本家自身が、航空学校の取材まで追いつかなくなったのか。あるいは、あまりに困難なテーマを抱えすぎて、物語が書けなくなってしまったのか。それとも、物語がシビアになりすぎるのを畏れて、NHKの外部や上層部から横槍が入ったのでしょうか?◇かりに、このまま、序盤で提示したテーマが放棄されてしまうとすれば、それは作品自体を捨てるのも同然。とりあえず《航空学校編》や《パイロット編》などは、後続の脚本家に任せて、この路線でいくとしても、せめて岩倉家の物語や、久留美と貴司の物語については、このまま中途半端にせず、きちんと桑原涼子が復帰して書くべきだろうと思います。たとえシビアな内容になるとしても、わたしはそれを見たいです。
2022.11.23
朝ドラ「舞いあがれ!」。第7週は、けっこう大事な内容でした。◇たまたま先週も同じことを書いたのだけど、この脚本家は、過去の作品を見るかぎり、あまりに真面目すぎて、ドラマ内では解決しえない難しいテーマに取り組んで、七転八倒した挙句、伏線の回収もままならずに、破綻しかねないような物語を書いてしまう人だと思う。今回の朝ドラは、わりと序盤までは滑らかに推移してきたわけですが、第7週の内容には、この脚本家の特質が現れはじめている。やっぱり、かなり困難なテーマに向き合おうとしています。その結果、さまざまなリスクを孕んでいるように見える。今回の脚本が3人体制になったのも、きっとそのことに関係があるんじゃないかと推察します。◇親が「子供を思いやる」というのは、なるべく子供が失敗しないように先回りして心配する…みたいなことなのだけれど、その反対に、親が「子供の自主性を尊重する」ってのは、早い話、子供が失敗することも覚悟する…ってことですよね。そこまでを覚悟しなければ、ほんとうの意味で子供の自主性を尊重することはできない。◇さすがに、今回の朝ドラでは、ヒロイン自身の人生が失敗することはないと思いますが、…ヒロイン以外の人物にかんしては、そのかぎりではない。たとえば、看護師になる久留美の人生は厳しいものになるかもしれません。貴司の人生も救われないまま彷徨いつづけるかもしれません。ヒロインの兄の人生も、どこかで転落するかもしれません。久留美の両親の人生も、最後まで救われないまま終わるかもしれませんし、古本屋の人生も、一般的な意味での成功とは無縁なまま、よりいっそうシビアなものになるかもしれない。この物語の題材には、そういうリスクがあります。◇五島を捨てて駆け落ちしてきた母の人生は、いまのところは上手くいっていますが、はたして父の事業が今後も順調に行くとはかぎらない。どこかで惨憺たる失敗や転落をするかもしれません。そうなれば、祖母に逆らって故郷を捨ててきた母の選択は、結果的に間違っていた…ということにもなります。この物語には、そういうリスクがある。親の判断がつねに正しいわけではないけれど、かならずしも子供の判断が正しいわけでもない。そこに普遍的な《正解》などありえません。どの選択が正しいかなんて、そんなことは誰にも分からない。◇わたしは、今回のドラマが、そのような困難なテーマを選んだ結果、伏線を回収できないまま破綻する危険性もあると思います。すべての人物を救いきれないままに終わるかもしれない。しかし、かりにそうなるとしても、それをただちに「作品の失敗」だと断じるつもりはない。むしろ、そのくらいの覚悟をもって、あえて困難なテーマにいどむ姿勢のほうが正しいと思う。すべての登場人物に救いを与えることが、かならずしもドラマの成功を意味するわけではありません。◇この物語が「サクセスストーリー」だと信じている視聴者にとっては、失敗に終わる人生など受け入れがたいに違いありませんが、それはあくまで視聴者の側のキャパの問題であって、朝ドラの脚本家に課せられた仕事とは、べつに視聴者のキャパの範囲内に収めることではないし、必要があれば、むしろそれを超えていかなければならない。例の「ちむどんどん反省会」の結果、SNSの評判こそが絶対的正義と勘違いした視聴者も多いけれど、もし本当にそうなら、朝ドラはたんなる「視聴率主義」に陥らざるをえません。視聴者のキャパを超えないように、物語を穏便に丸く収めるだけの脚本を書いてたら、いつまでたっても予定調和的なフィクションしか出来なくなる。◇かりに、脚本家自身の選んだテーマが、ドラマのなかでは解決しえないほどに困難なものなら、たとえ多くの視聴者にとって、それが受け入れがたい展開に終始して、はげしい賛否両論やSNSの炎上を巻き起こすとしても、仕方のないことですよね。あくまでも脚本家は、偽りなく、選んだテーマを突き詰めていくしかないと思います。第7週を見るかぎり、この物語には、そういうリスクがあると感じました。追記:第8週から脚本家が嶋田うれ葉に代わりました。今後、桑原亮子が復帰するのかどうか分かりませんが、序盤で提示したテーマがあっさり放棄される可能性もあります。だとすれば、そっちほうがはるかに「作品の失敗」だと思う。テーマを突き詰めたすえに破綻するのならともかく、テーマを安易に放棄するのは、作品そのものを捨てるのに等しい。とくに久留美や貴司の物語については、このまま中途半端にせず、きちんと桑原涼子が復帰して書くべきだと思います。
2022.11.21
城塚翡翠の前編が終わりました。大どんでん返し!すっかり騙された。翡翠の人格が豹変しました。霊媒というのはインチキで、じつは香月よりも論理的な名探偵だった…というオチ。逆に、香月のほうが、「ボクが信じるの論理だけ」というセリフとは逆に、降霊やら死後の世界やらを信じるオカルト野郎だった(笑)。そして、その本性は、若い女性に不条理な怒りをぶつけ、気持ちの悪い歪んだ性欲を発散させてるだけの、勘違いで最低下劣な変態シスコン野郎でした。翡翠と香月の寸止めの恋愛も、キスシーンも、すべて演技だったのですね。◇来週からは倒叙編。きっと「倒叙」というからには、これまでのすべての出来事を、翡翠の視点(あるいは真ちゃんの視点)から、語り直していくのかなあと思うのだけど、予告編を見たら、まったく新しい物語が始まるようでもある。??!実際、これまでの5話分の出来事については、みんな翡翠が語り終えてしまったわけだから、もはや「倒叙」するようなことは何も残っていない。だとしたら、次回からはいったい何を「倒叙」するのでしょう??◇次回以降の話がどうなるのか分からないけど、ドラマの後編をまるごと「倒叙」に当てるってのも、なかなか面白いやり方だとは思う。推理ドラマファンとしても、そのほうが納得感があるし。シナリオを作る側からしても、細かい辻褄をすべて合わせなきゃいけないから、デタラメな脚本を書くことができなくなりますよね。演出する側からいうと、ほとんどの映像を使い回しながら、編集とナレーションだけをやり直せばいいので、制作予算を大幅に節約できる…ってメリットもある。※わたしは以前、別のドラマでもそんなことを書いた記憶があるんだけど、何のドラマだったか忘れてしまった。正直にいうと、わたしは、翡翠の話を聞いてもまだ、ほんとうに「すべてが伏線」になっていたか、ほんとうに「整合的な脚本」になっていたか、十分に納得しきれていないところもあり、香月と同じく、まだちょっと混乱しています。まあ、このドラマは映像がとても美しかったので、かりに次回からの倒叙編が、大部分の映像を使い回すことになるとしても、ほとんど不満はないだろうと思います。— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) November 15, 2022
2022.11.18
フジ木曜劇場「silent」。今夜は第7話が放送されますが、第6話の《音のない世界は悲しい世界じゃない》を見ました。正直なところ、あまり乗り切れずにいたドラマでしたが、第6話の終盤部分はすごかった。ここまでテレビドラマで号泣したのは何年かぶり。今回の終盤15分ほどの内容だけで、のちのちまで「名作」と言われ続けるドラマになったなあ…と思います。◇先々週の第5話で、湊斗(鈴鹿央士)が自分から身を引き、主演の2人がヨリを戻したのを見たとき、え??この話って、もう終わりじゃない?このあとやることあります??と思ったんだけど、そうじゃなかったですね…。この第6話が、いちばん重要だった。ある意味、それまでの話は、第6話のための前フリだったとさえ思う(笑)。最後に奈々が泣くシーンを見て、ヒゲダンのテーマ曲がようやく耳に残るようになりました。◇夏帆が演じる奈々。彼女は、たんなる脇役じゃなくて、もしかしたら、物語でいちばん重要な存在なのかも。そして、夏帆のキャスティングがじつに絶妙なのだなと分かった。このドラマは、ほんとうは奈々が主役じゃないかな、とさえ思う。たしかに紬(川口春奈)は、太陽のように明るくて前向きな主人公だけど、ドラマの主役としては、あまりにも屈託がなさすぎて、それほど面白いキャラではないのよね。むしろ、奈々の悲しみを際立たせるためのポジションなのでは?◇奈々が紬にあてつけた、「プレゼントを使い回されたような気持ち」ってのは、けっこう強烈なセリフです。健常者は、あまりこういうことを言わない。これを「ひがみ・ねたみ」と言えばそうなのだけど、考えてみれば、人間にとって、ひがみやねたみって自然な感情なのよね。だって、人間はけっして平等には生まれていないのだから。そのことを悔しいと感じるのは、ごく自然な気持ちなんだなあと思う。ただでさえ健常者に嫉妬や憧れを抱いてきたのに、自分のわずかな幸せまで健常者に奪われたことの悔しさ、悲しさ。手話で話す人たちは、つねに両手を使う必要があるから、たとえ恋人が出来たとしても、手をつないで歩くこともできないし、おしゃれな可愛いバッグを持つこともできない。ささやかな望みですが、奈々の痛切な想いが分かって泣けてくる。ろう者の人たちは、言葉で意志疎通ができないハンデを補うために、健常者よりも感情を強めに表現する傾向がありますよね。だから、なおさら健常者から見ると、ろう者の人のあまりにもストレートな感情表現に面食らって、ちょっと驚いてしまう。そのへんの描写もリアルでした。このドラマは、とくに若い世代に支持されているとのことだけど、現実のろう者の人たちは、どう捉えているのでしょうか。やたらに「障害者は可哀想」という印象を植えつけるのも、賛否が分かれるところかもしれませんが、すくなくとも、健常者にはなかなか理解しにくい世界を、たくみに想像させる内容になっている点では評価できると思う。そして、今季の助演女優賞は、まちがいなく夏帆でしょう。◇◇◇わたしは、第5話までの内容を、30年前の「東京ラブストーリー」と比較しながら見ていた。4人の男女の恋愛模様という設定が同じだったから。30年前の「東京ラブストーリー」の場合は、やたらと互いにぶつかり合ったり、マウントを取り合ったりするので、あれはあれで、見ていて非常に疲れたのですが、逆に、今回の「silent」のほうは、やたらと譲り合いすぎるし、自分のことを必要以上に卑下したりするので、こちらはこちらで見ていてまどろっこしい、ってのがある。セリフのやりとりも、丁寧といえば丁寧だけど、かえって展開がモタモタしてて疲れる。おおむね、そういう感想を抱いてました。先々週の、湊斗「紬には片思いなんて分からないでしょ」紬 「いま片思いだよ」…みたいなやり取りなどは、なかなか洒落ていると思ったものの、それでも1.25倍速で見るぐらいがちょうどいいかなあ、って感じだった(笑)。◇しかし、若年世代にはとても評判がいいらしいし、わたしごときがそれにケチをつける必要もないし、さらに、ろう者の人たちがどう見てるかも重要な点なので、それについても、わたしがとやかく言う話ではない。くわえて、今後の展開が奈々を中心に動いていくのなら、わたしの興味のほうも、まだしばらくは続きそうです。◇ちなみに、Tverでは、湊斗(鈴鹿央士)と紬の弟(板垣李光人)の過去を描いた、「EP#0~8年前のある出来事~」が配信されている。これって、ちゃんと本編に組み込むべき内容なのよね…。そうしないと、湊斗と弟くんの親密ぶりは謎過ぎるのよ。— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) November 16, 2022
2022.11.17
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