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朝ドラ「舞いあがれ!」。先週までで青春篇が終わった感じ?◇ドラマにケチをつけるわけじゃないけど、大学の人力飛行サークルの話を見ていて、ちょっと競技のありかたに疑問が湧きました。たしかに、パイロットの体形や体力に合わせて、機体の設計を変えるのも大事な技術なのだろうけど、記録そのものは、理系的な技術ではなく、ほとんどパイロットの体力に負っているように見えます。これじゃあ、理系の競技じゃなくて、ほぼ体育会系の競技なのでは??◇ただでさえ、日本は、いまだ実用的な国産飛行機も作れてないし、ロケットの打ち上げもたびたび失敗してるわけですが、学生の技術コンテストがこんなことでいいんだろうか?実際の競技がどういうものなのか知らないけど、やっぱり純粋に「理系的な技術」で競うべきだろうと思います。それから、試験飛行を陸上でやったら、墜落したときに死者が出るんじゃないか、との懸念ももちました。そこらへんも発想が「体育会系」になっているのでは?◇さて、ここからはドラマの話。脚本は3人体制とのことですが、ここまでは桑原涼子がひとりで書いてますね。彼女の脚本は、『心の傷を癒すということ』『彼女が成仏できない理由』など、NHKの中編ドラマを過去に見ています。どちらの作品も、脚本家自身が格闘しすぎてやしないかと思うほど、良くも悪くも真面目すぎる脚本だった印象があって、視聴者に伝わる以前のところで無駄に格闘してる感じでした。その点、今回の朝ドラは、わりと滑らかに物語が展開していますし、案外、長編ドラマに向いてるのかもしれません。◇祖母と母の過去の確執や、母と娘の共依存の問題は、やや腑に落ちないところもあって、いまだに大学生の主人公が、「母の許し」を得ないと好きなことがやれないのは、やはり共依存の関係が抜け切れてないように見えるけど、そこらへんは、我が道を歩んでいる兄とも対比されながら、今後もなお物語のテーマであり続けるのかもしれません。◇一方、演出のほうは、派手さはないけれど、むしろ地味な良さが出ていると思います。そして、今さらですが、子役の浅田芭路ちゃんがとても上手でしたね。パッと目を見開いて、何かを初めて見るときの演技が、かつての「おしん」の小林綾子を彷彿とさせました。それから、「もがいてたらええんや」との助言をくれた、又吉直樹の古本屋もいい役どころだなと思っています。福原遥は、「ゆるキャン△」ほどの当たり役ではないけれど、ほどよく無難にこなしてるんじゃないでしょうか。総じて、よく出来ていると思います。
2022.11.14
霊媒探偵・城塚翡翠。先週はクソつまらない話で、ほとんど脱落寸前だったのだけど、今回はけっこう面白かった!(笑)一般の水準からすれば、「神回」と呼ぶほどではないけど、このドラマにかぎっていえば、第3話はベストだったかもしれません。いや、これからもっと面白くなる??最初に霊能力で犯人が分かってしまうコロンボ的展開とか、降霊をすると負担が大きくて消耗するとか、魂の匂いがするとか、そういう謎のお約束設定にもだいぶ慣れてきました。今回は予測した犯人とは違いましたが。微妙に間抜けなギャグ展開もツボで、翡翠と香月の変な恋愛寸止めの間はジワジワ笑える。今回の犯人は写真屋の娘。映像への異常な愛情のために人を殺すという心理も、なかなかに不気味な説得力があって面白かったです。 最後に「翡翠を殺して写真を撮りたかった」というオチもよい。そして、いつものように、ドラマそのものの映像の美しさも絶品でした!青緑赤ピンク黄の配色赤い車がカッコいい。赤っぽい画面。ロシア映画みたいな緑っぽい画面。
2022.11.06
TBSの「クロサギ」。TVerでは2006年版も配信中。山下智久と堀北真希は、日テレ「野ブタ」の直後に共演していたんですね。▼今回の配役は以下のように変わっています。山下智久 → 平野紫耀堀北真希 → 黒島結菜尾美としのり → 船越英一郎哀川翔 → 井之脇海加藤浩次 → 山本耕史奥貫薫 → 中村ゆり山崎努 → 三浦友和朝ドラ「ちむどんどん」からは、黒島結菜&井之脇海&津嘉山正種が、大河「鎌倉殿の13人」からは、山本耕史&坂東彌十郎&栗原英雄がスライド出演。山本耕史は前作ヒロインの旦那様ですね!◇2006年版では、山下智久もヤンキーっぽいキャラだったし、刑事役の哀川翔も、黒幕の山崎努も、いかにも裏社会にいそうなキャラだったけど、今回はメインのキャラは、みんな堅気の人間に見えます。そこが逆にリアリティを感じるところ。今回のキャストのなかでは、船越英一郎がいちばん悪人顔なのだけど(笑)、なぜか彼は詐欺に騙されるヒロインの善良なお父さん役。そこもちょっと変化球になっている。2006年版では、尾美としのりがヒロインの「叔父」の設定で演じていました。(ヒロインの「父」を演じていたのは泉谷しげる)◇この物語でいちばん面白いのは、最大の宿敵である詐欺の首魁がいちばん近くにいるところ。2006年版の山崎努は、いかにも「裏社会のドン」って感じだったけど、今回の三浦友和は、どう見ても「堅気の板前さん」にしか見えません。そこがかえってスリリングで興味が湧きます。
2022.11.02
霊媒探偵・城塚翡翠。今夜は第3話が放送されますが、おくればせながら第2話を見ました。清原果耶は当たり役だし、他のキャストもハマってるし、映像も美しくて魅力的なのだけど…話がくだらなすぎてツライ(笑)。現場にいた主演2人に容疑がかからないのはご愛嬌としても、リビングを通らないとトイレに行けない建物とか、容疑者が3人に絞られる中での殺人とか、事件のお膳立てが稚拙すぎます。中庭に面した壁に窓がなくて、用途不明なデッカい鏡が掛かってたり、設定がありえなさすぎて萎えた。リビングを通らないとトイレに行けない洋館w中庭に面した壁に窓がなくてデッカい鏡w他殺体を発見した愛人も、パソコンのデータだけ消して翌朝まで寝てるし…。しまいには、「論理の取っ掛かりになるのは翡翠さんの夢だけです!」とか、滝沢カレン並みに何言ってるかわからないし…。◇でも、まあ、推理ドラマって大抵こんなもんなのよね。作ってる人たちも、くだらないのは重々承知なのだろうけど、それでもこういう作品が出来てしまうのは、きっと何かドラマ業界とか出版業界のカラクリがあるのでしょう。次回からは、音声を消して映像だけぼんやり眺めようかな。— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) October 30, 2022 映像はほんとに綺麗なのよね。
2022.10.30
第3話。あいかわらず映像は綺麗ですが、内容的には、ついていくのが結構大変。純愛系ドラマにはあるあるだけど、あまりに繊細すぎて、若干、キモチ悪さがなくもない(笑)。◇いちばん驚かされるのは、弟の光(板垣李光人)くん。ほぼ彼氏…?かと思うほど、お姉ちゃん想いの弟くんですよね。あるいは女子の親友みたいに、彼氏のことまで親身に心配してくれます。欧米になら、こういう男子がいるかもしれないけど、ついに現代日本にもこんな男子が現れた??◇そして湊斗(鈴鹿央士)のキャラ。今回は、彼女を奪われるのを畏れて嫉妬したのではなく、無二の親友に呼びかけても返事がなかったことが悲しかった…というオチでした。そういう心理はべつに不自然じゃないだろうけど、鈴鹿くんが演じると、ちょっとBLっぽく見えてしまう(笑)。もともと、付き合いはじめる前に、ブラック労働に追われている紬を心配した際のエピソードも、なんだか女子目線で心配してくれているような感じだった。いまひとつ、この二人が男女の関係にあるようには見えないのよね…。弟くんも、彼氏くんも、なんとなく女子っぽい。◇要するに、このドラマは、異様なくらいに優しすぎる3人の男子が、ひたすらヒロインをちやほや心配してくれる世界線になっていて、そのリアリティの斬新さに戸惑ってしまう。はたして、新進の女性脚本家が、自分の世界に浸って自分の願望を書いてるだけなのか、それとも確信犯的に「新しい男子像」を提示しているのか。この異次元の世界線を受け入れられるかどうかが、ドラマを見るうえでの踏み絵になってる気がします。今回も喫茶店の映像が美しいですね。
2022.10.25
Tverで、2014年の「ごめんね青春!」が再配信されていました。主演は、錦戸亮×満島ひかり。もともと学園ドラマには、若手俳優の出世作的な側面がありますが、川栄李奈、黒島結菜、竜星涼など、最近の朝ドラ俳優たちが出演していた作品とあって、今あらためて注目されているのかもしれません。ほかにも、重岡大毅、森川葵、小関裕太、トリンドル玲奈、矢本悠馬、白洲迅、久松郁実、鈴木貴之、富山えり子、笠松将などが出てます。◇数あるクドカンの名作のなかで、ちょっと地味な印象がありましたが、あらためて観ると、じつによく出来たドラマ。一見、バカバカしいコメディだけど、じつは放火という重い罪をきっかけに、青春の過ちというだけでは済まないほど、人生を狂わされてしまった人々の物語。それが、さまざまな失敗や後悔や後ろめたさを巻き込みながら、最後には、すべての要素が、贖罪と和解と赦しへ回収されていきます。終わってみると、かなり芸術的な脚本だなあと思う。仏教とカトリックの融合というシャレにもなっています。コメディとして単純に楽しむこともできるけれど、クドカンの作家性について語るべき要素が多いドラマ。勝つよりも負けのほうが青春!面白い負け方をしてこそ記憶に残る、それが青春!腑に落ちないくらいは我慢しなさい!青春なんだから!冴えないのが青春!寒いのが青春!分かれ道も脇道も近道も行き止まりもある!一本道ではない、好きなだけ方向転換していい!そんなメッセージを投げかけています。◇風間杜夫と平田満の「蒲田行進曲」コンビが出てるのもネタ。このドラマをきっかけに、2017年のNHK「アシガール」など、黒島結菜と川栄李奈は共演を重ねていきます。斉藤由貴は、波瑠と、2017年のNHK「お母さん、娘をやめていいですか?」で再共演。白洲迅とは去年のテレ東「冷ダン」で再共演してますね。そして黒島結菜と竜星涼が「ちむどんどん」で。ひなたとニーニー。
2022.10.21
フジ木曜劇場「silent」。今夜は第3話が放送されますが、おそまきながら第2話まで見ました。莉子と共演した目黒蓮、萌歌と共演した川口春奈に釣られた感じ(笑)。脚本の生方美久ははじめて目にする名前です。ヤングシナリオ大賞を獲った新人だそうです。セカチュウ、1リットルの涙、キミスイなど、いわゆる"純愛路線"に連なる作品といえますが、今年の莉子の「セカコイ」と同じように、綺麗な映像で撮るスタイルが定着していますね。ややセンチメンタルになり過ぎてる部分も目につきますが、まあ、この手の純愛系ドラマにはあるあるでしょう。◇Wikipediaには「手話ドラマ」なる項目があります。1995年に放送された、常盤貴子×トヨエツ「愛していると言ってくれ」酒井法子×大沢たかお「星の金貨」この2つの作品が起点になってるっぽい。それ以前といえば、ヘレンケラーの物語が何度か作品化されていて、わたしも大昔に映画を観た記憶があります。ヘレンケラーの場合は聴力だけではありませんが。去年は「コーダ あいのうた」が注目を集めました。— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) February 13, 2022 考えてみたら、「愛していると言ってくれ」を書いた北川悦吏子は、その後、ほんとうに片耳を失聴してしまって、それが「半分、青い」の執筆に繋がったわけなので、何か因縁めいたものも感じます。◇今回のドラマは、中途失聴をした主人公の青年が、恋人と別れる選択をし、喋ることをやめてしまったところからドラマが生まれている。視聴者は、最終的に、彼のこの選択を許すことができるのかどうか。ただ2人が結ばれただけではハッピーエンドになりません。現在の交際相手である鈴鹿央士や夏帆にも救いがなければ、視聴者のなかにモヤモヤが残ってしまいますよね。そして、主人公2人の弟と妹の関係も気になるところ。ハッピーエンドにならない可能性も含めて、どんな結末になるのか。せっかく見始めたので、最後まで見届けます。映像は美しいですね。川口春奈がフランス映画の女優さんみたいに見えてくる。
2022.10.20
霊媒探偵・城塚翡翠。清原果耶のキャラにぴったりの役。ほかのキャストも上手くハマってるし、映像もやたらと凝ってて綺麗だし、オカルトサスペンスな雰囲気も楽しめたんだけど、— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) October 17, 2022 肝心の推理と、事件の真相がショボくて拍子抜け…(笑)泣き女って何なんだろう?まだオカルトなのかサスペンスなのか判然としませんが、とりあえず、雰囲気は楽しめそうです。
2022.10.18
朝ドラ「ブギウギ」のヒロインが決定。笠置シヅ子役は、てっきり田村芽実と思い込んでいたのに(笑)趣里でしたね。ドラマ「アイドル 明日待子」でのチョイ役は、いったい何のフラグだったんだろう??
2022.10.17
水曜ドラマ「ファーストペンギン!」。なかなか面白かったので、期待がもてそうです。日テレ×森下佳子のタッグなのね。題材としては、池井戸潤の経済ドラマみたいな感じ?オリジナル脚本とのことで、坪内知佳さんの実話はあくまで「原案」ってことでしょうか?キャスティングは、堤真一のコワモテ軍団に女子が乗り込むパターン。長澤まさみの「セーラー服と機関銃」を思い出します(笑)。国は応援してるのに地元が邪魔をする…って構図が、なかなかリアルだなあと感じました。実際、そんなもんだよねえ。
2022.10.07
遅ればせながら「石子と羽男」の最終回。ちょっと物足りなかったかな。マチベンの物語であるがゆえか、一話完結スタイルであるがゆえか、物語のスケールがこじんまりしてた感は否めない。最後にラスボスの詐欺を暴ききれず、被害者が完全に救われないところにも、ちょっとフラストレーションが残りました。◇石子の父の綿郎が長期間の調査をして、敵の懐にまで入り込んでいたのだから、きっと最後にはラスボスを退治して、「さすがはお父さんっ!」って結末になるものと期待しましたが、そうはならないんですね。結果的には、ちまちましたポイ捨ての軽犯罪を告発して、なんとか食い下がって社会的信用を失墜させる…というオチ。それがマチベンの限界ってことかもしれないし、あえてスッキリ解決しきらないところに、制作者の意図するリアリティがあったのでしょうか。…でも、タバコのポイ捨てで逮捕したところで、社会的信用を失わせることができるのかどうかは疑問。世論がどっちに転ぶかわかりませんが、かえって同情論が広がってしまう惧れもあるのでは?◇綿郎が、絵本の「スイミー」の話をしていたのも、なにか意味があるんでしょうね。いずれ被害者たちの声が集まれば、徐々にラスボスの悪事が浮き彫りになる、という今後の展開を暗示してるのか。続編を予定してるのか知りませんけど、あのラスボスの悪事を暴き切るには、やはり羽男の姉や父との連携も必要になるのかなと思う。
2022.10.06
すでに次作「舞いあがれ!」が始まったこともあり、また、文春などメディアの論調が少し変わってきたこともあり、SNSの反省会タグもすっかり大人しくなったみたいです。今では、つまらない揚げ足取りの残りカスみたいなツイートが、ちらほら散見されるだけですね。「次はどの評論家をぶっ叩こうか?!」と息巻いてみたものの、どいつもこいつも、前回の碓井広義と同じで、例のとおり「共感できない」と「ご都合主義だ」を並べ、一般視聴者と大差のない記事を書いている奴らがほとんどです。逆に、この人たちは、「共感できない」と「ご都合主義」というタームを取り除いたら、ほとんど何も書けなくなってしまうんじゃないかしら?と心配になるほど、批評言語の貧弱なライターも目につきます。そして、そんな素人まがいの評論家にありがちな、もうひとつの典型的で紋切り型の批判が、「主人公が成長してない」ってやつですね。この主張もまあ、いたるところの記事で見かけます。◇もともと、朝ドラにかぎらず、「ドラマは主人公の成長物語でなければならない」みたいな思い込みに無根拠に囚われている人たちは多い。朝ドラでも「ヒロインの成長」などとよく言いますが、実際のところ、人間なんて、そうそう成長できるものではありません。年をとるほどズル賢く醜くなることはあっても、むしろ人間の基本的な本性は、子供の頃から変わらないのだ、というほうが正しい。これは歴代の朝ドラヒロインについてもいえます。たとえば「おちょやん」の千代は、少女のころからすでに考え方が大人を上回っていたし、逆に、父親のテルヲのほうは死ぬまでバカのままだった。人間なんて、そんなものです。今回の「ちむどんどん」の場合、ヒロインの暢子はわりと早い段階で経済的な自立をし、経営的に独立をし、その後の紆余曲折をへて、沖縄に「野菜食」の発想と技術を持ち帰ったところが、彼女の《料理人としての成長》だったとはいえますが、たしかに、人格的にはほとんど成長しませんでしたし、成人してなお幼稚園児みたいなキャラだったといえます。しかし、それの何が悪いのか。◇もともとこのドラマは、「愛すべき沖縄のバカ兄妹」が巻き起こす騒動の物語なのだから、そういうキャラクターの設定で間違ってるわけじゃない。良子といい、暢子といい、たとえば婚約者の実家を訪問するときに、ギトギトのサーターアンダギーをビニール袋に入れて、心からの善意で持っていってしまったりするわけだけど、ある意味では、そこがこのバカ兄妹の愛すべきところなわけで、変に気の利いた高級百貨店の手土産なんぞを持っていく姿を見せられても、かえって小賢しくて嫌味に見えてしまうに違いありません。結果的には、重子さんも、家政婦の波子さんも、そういうバカ兄妹の幼稚さと純粋さに心を動かされたわけだから、物語の展開から考えても、ああいう描写には合理性がありました。◇賢秀の破天荒なキャラについても、一部には「沖縄人を愚弄した描写」と考える向きもあるかもしれませんが、わたしが思うに、「沖縄のドラマだから沖縄を全面的に美化すればいい」ってものでもなくて、沖縄に実在するアンダーグラウンドなヤンキー社会を戒めるためにも、そこで安易な商売が横行しやすい実態に警鐘を鳴らすためにも、賢秀が引き起こす数々の騒動描写にはそれなりの意義があったと思うし、もちろん本土の側にだって、あいもかわらず詐欺に騙される人たちや、ネズミ講などに手を出したりする人たちはたくさんいるわけだから、そういう人たちへの注意喚起の意味でも、ああいう泥臭い描写には一定の役割があったと思います。朝から不愉快なもの見せられてイライラする、と感じる人たちがいるのもおおいに分かりますが、見ていてひたすら気分さえ良ければドラマとして優れてるのかといえば、かならずしもそうとはいえない。コメディのオブラートに包みながらも、歴史や社会の不愉快な側面に目を向けさせる工夫は必要です。◇最終回では、歌子が倒れる、というお約束の釣りネタがあって、ここでもバカ兄妹たちが、相も変らぬ騒動を巻き起こします。医者は「出来ることは全部やった…」みたいに言うのですが、もちろん、それは、たんに「熱が下がらなくて目が覚めない」というだけのことで、べつに誰も「死にそうだ」とは一言も言ってないし、まさか、せっかく下地先生が送ってくれた手紙を宙に浮かせてまで、ほんとに歌子が死んだりする展開にならないのは明白なのだけど、例によって、この愛すべきバカ兄妹の面々は、放っとけばそのうち自然治癒で目を覚ますのも知らないで、あろうことかタクシーの運転手まで巻き込んで、やんばるの美しい海にむかって、必死になってギャーギャー騒ぐわけです。わたしは、そのバカっぷりに大笑いしながらも、ボロボロ泣いてしまうわけですが、あの最終回こそ、いつまでも成長しないバカ兄妹たちが、最後に辿り着いたバカっぷりの集大成だったわけだから、あれに本気になって目くじら立てて文句を言うほうが、かえって滑稽で無粋じゃないのか、…というより、ほとんど無理解・曲解に近いんじゃないかと感じずにはいられない。〈バカ兄妹の最後のさけび〉◇わたしは、つねづね疑問に感じているのだけど、「うんうん、ヒロインも成長したねえ!私と同じように!」などと満足げに論評してる人たちってのは、いったいどういう目線でドラマを見てるのでしょうか?たとえば今回のドラマでは、《他人に忖度できる大野愛》と、《他人に忖度できない比嘉暢子》とを比較して、「他人に忖度できるようになってこそ人間の成長!」みたいなおかしな主張がSNSに湧き上がったのですが、その種の炎上に「同調」したり、その種の風潮に「忖度」しながら記事を書いたりして、みんなで徒党を組んで大声をあげている人たちを見ると、この人たちは、周囲の空気を読んで、同調して、忖度しながら、集団でバッシングをしたり、いじめをしたりする行為のなかにこそ、自分たちの「成長」を実感しているのではあるまいかと、なにやら寒気がしてきます。むしろ、集団的ないじめや炎上に加担しないためには、空気も読めず、忖度もできないことのほうが、よほど人間としてすばらしいんじゃないかとさえ思えてくる。◇まあ、ドラマやコメディのお約束が理解できず、大真面目になって目くじらを立ててしまう滑稽な視聴者や、何が何でも些末な粗探しをしつづけねば気が済まないと、そこに自分の存在意義を賭けようとする視聴者がいたとしても、それはそれで個々人の行為としてなら問題ないのだけど、よりによって、評論家やら、大学教授やら、政治家までが、そういう集団的な炎上に便乗してしまうのだとすれば、これはもう、職業的な意味で「不適格」と言わざるをえません。とりわけ、大学教授やら政治家にかんしては、「そんなことまでして自分の名前を売りたいのか…。」と、これまたうすら寒い気持ちになるのです。だいたいにおいて、大学で「メディア論」なんぞを教えているような自称大学教授は、ほぼほぼ胡散臭いと相場が決まっているのですが、今回の件で、SNSの炎上騒動に便乗して名前を売ったような連中は、学者倫理の観点からいっても完全にアウトというべきでしょう。それから、元農水副大臣の礒崎陽輔にかんしていえば、この人は、おおかた政界への復帰に向けて、必死でネット民に同調しようと画策しているわけですよね。元来が極右のアベトモだし、統一教会シンパの疑いもありますが、かつての安倍や麻生がそうだったように、俗情に媚びる手法がいまだに有効だと考えているんでしょう。大分県選挙区 ちなみに、今回の苛烈なバッシングを裏側から見ると、テレビ視聴率の下落傾向を食い止めるための手段として、SNSの「炎上」が逆に利用されてしまってる面もありますから、じつは正義感を振りかざして必死に叩いていた人たちは、NHKの策略にまんまとハメられていた可能性もなくはない。とはいえ、メディアやジャーナリズムが炎上を煽る状況はけっして健全ではないし、ましてアカデミズムや政治なんぞが安易に乗っかるべきではありません。◇こちらの記事を読むと、news.yahoo.co.jp/byline/suzukiyuji/20220917-00315564実際にSNSで酷評していたのは「ラウドマイノリティ」の人種ではないか、との推察もあるようです。わたしも、今回の炎上を牽引していたのは、いわゆる「ラウドマイノリティ」の可能性が高いかなと思う。つまり、たんに書き込み回数が多いだけの少数者ですね。ツイッターの場合はフォローによる相互連携の作用なども関係してくると思います。実際のところはよく分からないし、べつにラウドマイノリティの言論を抑圧する必要はないんだけれど、すくなくともメディアの側は、その主張をあたかも「世論」であるかのように報じるべきではないし、かりにラウドマイノリティと実数的な世論とのあいだに乖離があるのなら、それを把握するための技術や方法論をはやめに確立すべきだと思います。
2022.10.05
遅まきながら、日テレ「初恋の悪魔」最終回を見ました。とくに後半の展開には、坂元裕二の不穏で暗い面を感じていましたが、やっぱり、ちょっと怖い内容でしたね。◇第2章がはじまったとき、「馬淵と鹿浜は最後に救われるのかしら?」と注目していたのですが、両者が迎えた結末は、かなり対照的でした。馬淵のほうは、ほぼ救われたように見えるけど、鹿浜のほうには、はっきりとした救済が与えられない。むしろ孤独の底へ突き落とされたようにも見える。こういう底のない孤独の描き方が、いかにも坂元裕二らしい怖さなのよねえ。思えば「最高の離婚」にも、そういう描写がありました。◇医学的なことはよく分かりませんが、わたしは、てっきり、2人のセスナの人格(というか記憶)が、最終的には統合されるものと予想していました。けれど、実際は、片方のセスナが消えてしまう、…という寂しいラスト。彼女は結局、リサにも会えないままに消えてしまった。そして鹿浜は、彼女にリンゴの剥き方を教えることが出来なかった。…もともと、「馬」と「鹿」と「小鳥」という名前自体が謎でしたが、なぜ「鹿」にだけ救いが与えられずに終わるのでしょう?そこにも坂元裕二という作家の謎が隠れている気がする。◇さて、怖いといえば、殺人鬼の描き方もかなり怖かったですね。坂元裕二のドラマで、これほど人が死んだり殺されたりするのは初めてでは?…そして、結局、「初恋の悪魔」というタイトルの意味は何だったの??馬淵の兄・朝陽(毎熊克哉)のセリフには、「雪松さんは初恋の人のようなものです」というのがあって、その雪松がじつは殺人鬼の父であり、朝陽は、初恋のように尊敬していた上司に殺されたわけなので、そこにタイトルの意味があったのかもしれません。しかし、そこに作品の中心的なテーマがあったとも思えない。◇ちなみに、このドラマのタイトルは、英語では「Love with a Case(外箱への恋)」となっています。この「Case」というのは、中身の人格ではなく、人間の肩書や容姿のことでしょうか?つまり、「Case(外箱・器)」とは、一方では、殺人鬼の父としての「中身」とは異なる、尊敬すべき上司としての「器」のことであり、他方では、人格的な「中身」は2つあるのに、見た目の「器」は1つというセスナのことでもある。…そんな感じ?※なお、「case」には、「事例」「症例」などの意味もあるし、「病人」「変人」「哀れな人」などの意味もあるようです。◇さらに怖いといえば、わたしがいちばん怖かったのは、いとも簡単に冤罪を生み出してしまう警察署内の描写!あの妙に明るいノリが、かえって怖かった。うすうす「冤罪じゃないか」と疑念をもっていても、上層部の意向に逆らってまで捜査しようとしないし、「上が決めたんだし、もうコイツが犯人でいいじゃんw」と、じつに朗らかな雰囲気で冤罪を作り出していく。その様子が、やけに能天気で明るい。一人の人生を狂わせかねないことだというのに、上層部の権威に対する忖度が優先され、さらには職場内の同調性のほうが優先されてしまう。まさに、日本社会の縮図。余計なことは考えず、難しいことも考えず、周囲の空気にも逆らわず、ただ明るく笑ってやり過ごそう、…という同調圧力。余計な疑問を差し挟む人間のほうが、かえって忌避される。前例や権威に逆らう人間のほうが、厄介者だと見なされる。恐るべき日本人の「権威主義」と「忖度主義」と「同調主義」…。…おりしも、朝ドラ「ちむどんどん」では、他人に忖度できない沖縄人に対して、「忖度できる心を養うことが人間的な成長だ!!」という主張が SNS のなかに湧き上がりました。まさに、これが、今も昔も日本の大衆のなかにある集団的無意識。SNSの論調じたいが集団的な同調主義で成り立っています。…これに対して、坂元裕二が描き出したのは、そういう日本人の「同調主義」や「忖度主義」こそが、警察署内でいとも簡単に冤罪を生み出しかねない…という恐るべき悪夢なのでした。◇さらに、もうひとつ驚いたのは、(実際のところはどうなのか知らないけれど)冤罪で収監されていた人が、何のサポートもなく社会に放り出されることですね。リサ(満島ひかり)が刑務所から釈放されたとき、彼女を迎えに来ていたのは、唯一、セスナだけでした。警察や司法関係者が謝罪に来るでもない。弁護士が保護しに来るでもない。公的な機関がサポートしてくれるでもない。数年間の人生を理由もなく奪われた末に、いきなり社会へ放り出されてしまう。これもまた怖すぎます。※調べてみたところ、「刑事補償(冤罪補償)」という金銭的な制度はあるようです。…って、それだけかよ。
2022.10.03
TBS「ユニコーンに乗って」最終回を見ました。教育系アプリと、スタートアップ企業にかんするトピックを、物語のなかでひととおり提示した…って形かもしれないけど、わたしとしては、まだ不足があったように感じます。それは、大きく以下の3点。◇第1点は、「スタディーポニーキャンパス」の完成形が、結局、どのようなものか見れなかったこと。そこが不満ですね。まだまだ発展途上のアプリだったとはいえ、とりあえず世間にはリリースされたのだから、そのメタバース空間を最後に体感させてほしかった。予算的に、そこまで映像化できなかったのでしょうか?◇第2点は、そもそも、肝心の教育コンテンツを、だれが作ってるのかが分からなかったことです。あらゆる分野の教育コンテンツを提供するには、それぞれの専門知識が必要なわけで、それを社内のスタッフだけで作れるわけがありません。はたして外部の監修者を招いているのか、それとも外部に丸投げして委託しているのか、あるいは既存のコンテンツを買い取りor借り受けしているのか。…本来、双方向ネットワークのなかに学習システムを構築するのなら、もっとも合理的な方法は、企業側が教育コンテンツを一方的に提供し、それをユーザーが受け身で消費するのではなく、いわば「学びたい人」と「教えたい人」をマッチングしながら、出会いのプラットフォームにしてしまうことだと思います。たとえばYoutubeなどには、すでにそういう側面があります。これは海外展開をする場合にも同じで、自動翻訳システムを取り入れながら、自然発生的に学習環境が育っていく「場」を構築すればいいのです。…わたしは、そもそも「教育」という概念が嫌いなのですが、それは、教育というものが容易に固定化・権威化しやすいからです。教育内容は、けっして確定的であってはならないし、たえずアップデートされつづけなければなりません。そして、教える立場の人間は、むやみに権威化されてはならないし、たえず学ぶ側によって吟味され、取捨選択されねばなりません。たとえ教える側であっても、本質的に「学ぶ人間」であることに変わりないのだから、ほんとうに必要なのは「教育系アプリ」ではなく「学習系アプリ」なのです。だれもが学ぶ場でなければならない。◇第3点は、ハードウェアにかんする問題です。ドラマのなかでは、データ量の小さいスマホでも利用できるようにする、…みたいなエピソードがありましたが、それ以上に大きなトピックは、むしろ「視力低下」などの健康面での問題だろうと思う。子供がスマホで長時間勉強し続ければ、何らかの健康被害が出てくるのは目に見えているのだから。せっかくM&Aによって大企業と組むのならば、新しいハードウェア開発の展望までを示してほしかったです。◇◇◇さて、ドラマの終盤では、いちおうラブコメとしての体裁にも落とし前をつけていました。しかし、ラブコメとしては全体的に淡白でしたね(笑)。脚本にはそれなりの必然性があったと思いますが、演出面でのエモーショナルな力強さには欠けた。その結果、俳優たちの演技にも大胆さや冒険が乏しかった。図書館という場も、いまいち活かしきれていなかった。…ある意味で、このラブコメは、功(杉野遥亮)が自立をするまでの物語でもあったのだけど、彼の頼りなげなキャラは最後まで変わらなかった。残り2組のカップルも、例によって取ってつけたような印象で(笑)全体的に薄味のラブコメに終わってしまったと思う。元カノを恋愛リアリティショーに行かせるってのも、処理の仕方としてちょっとビミョーでした。むしろ、下手にラブコメの体裁などにこだわらず、あくまで《ビジネスストーリー》に徹したほうが、かえって物語としては盛り上がったんじゃないでしょうか?
2022.09.10
世代的に「大奥」というと、20年前の浅野妙子×フジテレビ版を思い出しますが、こちらは、よしながふみの漫画による男女逆転版の「大奥」。◇男子のみを襲う謎の疫病「赤面疱瘡」が蔓延し、男性数が激減した江戸時代を舞台にしたSFパラレルワールド。将軍の家光が亡くなると、男装した娘の千恵が、家光に成り代わる!そして、大奥には、日本中から絶世の美男子たちが集められ、公家出身の美しき僧・万里小路有功も、女装して大奥入り!万里小路有功は「までのこうじ/ありこと」と読みます。◇原作は、2004年から2020年にかけてメロディ(白泉社)で連載され、単行本は全19巻が刊行。2010年~2012年には、TBSの金子文紀が、神山由美子の脚本で映画化&TVドラマ化。千恵=家光には、多部未華子。万里小路有功には、堺雅人。◇そして、今回のNHK版では、「3代 徳川家光×万里小路有功 編」と、「5代 徳川綱吉×右衛門佐 編」と、「8代 徳川吉宗×水野祐之進 編」と、さらに大政奉還までのストーリーを実写化。脚本は『JIN-仁-』の森下佳子。千恵=家光には、堀田真由。万里小路有功には、福士蒼汰。そして春日局に、斉藤由貴です。
2022.09.09
テレビ東京系、「量産型リコ -プラモ女子の人生組み立て記-」。最終回だけを見ました(笑)。ガンプラを作るドラマだったんですね~。いかにもテレ東らしいマニアックな趣向。もっとはやく内容を把握していれば、きっと初回から観たと思うのだけど、気づいたときには遅すぎたっ!◇大森美香の「ニコニコ日記」にガイセイバーZが登場して以来、「トクサツガガガ」のジュウショウワンとか、 「超速パラヒーロー」のガンディーンとか、女子向けドラマに戦隊ヒーローを組み込む流れがあるけれど、ガンプラ作りって発想はかなりの斜め上だった。でも、わたしも年代的にいって、ファーストガンダムはそれなりに見ていたし、由貴ちゃんがシャアに心酔していたのもあるし、あながち興味のない世界ではない。実際にプラモデルを作るのは大変そうだけど、出来上がりを見るとカッコいいし、なんだか心惹かれます再放送があれば最初から見てみたいと思います。YouTubeには、プラモデル作りの動画もアップされているようです。
2022.09.04
日テレ『初恋の悪魔』が第2章に突入。先週の老婆との関わりのなかにも、鹿浜の「魂の救済」の要素がありましたが、いよいよ第2章では、馬淵と鹿浜(馬鹿コンビ!)がそれぞれに救済されていく?馬淵が好きなセスナと、鹿浜が好きなセスナ。一人のなかに2人の女がいます。すこしずつ『初恋の悪魔』というタイトルの意味に近づいてる?◇満島ひかりが登場しました。安田顕や田中裕子とおなじく坂元ドラマの顔なじみ。風が気持ちいい日に家に帰ったりしちゃ駄目だ。人生でいちばん素敵なことは遠回りすることだよ。遠回りしてる今がいちばん素敵な時なんだよ。なんとなく『Mother』や『anone』にも通じるようなテーマ性です。坂元裕二の物語には、じつはちょっとアブナい面があって、ここにも、やや不穏で暗い面が見え隠れしている。まるで統一教会からの脱会の是非を問うような話だったりもします。◇それはそうと、第1章は一話完結型のスタイルだったのに、第2章からは連続型にシフトするっぽい。むろん、そのほうがいいと思う。そもそも前季から今季にかけては、やたらと一話完結型のドラマが多すぎるのです。塚原あゆ子組の『石子と羽男』や、飯豊まりえの『オクトー』も一話完結型です。それなりには面白いけど、やはり全話連続型の力強さには劣る。◇この『初恋の悪魔』の場合も、坂元裕二×水田伸生という組み合わせへの期待があったものの、やはり一話完結型であることに不満がありました。序盤もそれなりには面白かったけれど、 あくまで通好みドラマの域を出ず、地味な印象にとどまっていた。前シーズンにかんしても、綾瀬はるかの『元彼の遺言状』(フジ)や、ディーン・フジオカの『パンドラの果実』(日テレ)が、なぜか一話完結型になっていて、そのことに最初から失望してしまいました。なぜ全話連続型にしないのだろう?、と。◇一般に、軽いテイストのコメディの場合は、前後を気にせず見られる一話完結型の気楽さがあるものの、重厚な内容のサスペンスの場合は、そのスタイルがかえって足枷になってしまいます。毎度毎度、最初から設定を把握し直さなきゃならない面倒臭さがあるし、それだけで毎話ごとに半分ぐらいを費やしてしまうし、そのことによって物語のスピード感も削がれてしまうから。たとえば塚原あゆ子組の『最愛』などは全話連続型でしたが、重厚な内容でありながらも、物語をぐいぐい引っ張っていくスピード感があった。もともと、TBSの綾瀬はるかのドラマ(『仁』や『天国と地獄』など)にも、フジテレビのディーン・フジオカのドラマ(『モンテクリスト伯』など)にも、そのような魅力がありました。そっちのほうが視聴者のニーズは高いはずです。もしかしたら、一話完結型のスタイルをとっているのは、スポンサーの意向に合わせて話数を調整するためかもしれません。しかし、そのような発想がかえって首を絞めている。数字しか見ない人間ほど、安易なことを考えるのですよね。
2022.08.25
NHKの特集ドラマ「アイドル」を見ました。戦前の元祖アイドル、明日待子の物語。脚本は「おちょやん」の八津弘幸。演出は「スカーレット」の鈴木航。主演は「偶然と想像」や「セカコイ」の古川琴音。わたしのお目当ては田村芽実(笑)。ちなみに来年の朝ドラの笠置シヅ子役は、まだ発表されてませんけど、わたしは田村芽実だろうな、と思ってる。◇その田村芽実の歌は残念ながら聴けなかったけど、ドラマはよく出来ていた。無駄のない脚本。簡潔な描写。力のある演出。あまりにも簡潔すぎて73分では物足りないくらい。むしろ2時間くらいの映画で観てみたかった。朝ドラ「おちょやん」もそうだったけど、八津弘幸作品には映画的なケレン味があります。…と思ったら、BSプレミアムでは、8月29日に89分拡大版が放送されるらしい。…ちなみに、田村芽実といえば、アンジュルムの伊勢鈴蘭が、地元の北海道時代に、生前の明日待子から日本舞踊を習っていた!!…なんてウソのようなホントの話があるようです。https://ameblo.jp/angerme-new/entry-12758662628.html◇さて、物語の舞台は、新宿のムーランルージュ。昔のエンターテイメントの中心地はあくまでも浅草であって、新宿・渋谷・池袋なんてのはたんなる竹林だった、…なんて昔の話もときおり耳にするけれど、文化都市としての地位が、東から西へ、つまり浅草・上野から、徐々に新宿・渋谷・池袋へと移り代わっていくわけですね。とりわけ新宿でいうと、1960年代に唐十郎の芝居やフォークゲリラがあって、1970年代に副都心開発があって、1980年代にタモリが活躍して、1990年代に椎名林檎が登場して、…みたいなイメージがあります。しかしながら、戦前戦後の新宿・渋谷・池袋がただの竹林だったのかと言うと、かならずしもそうではなくて、Wikipedia にはこうあります。1885年に日本鉄道品川線(後の山手線)が開通し、新宿駅が宿場の西はずれ角筈(つのはず)に作られる。開業当時は田畑の広がる東京郊外の田舎の駅で、1日の利用者数は50人ほどであった。続いて、甲武鉄道(現:JR中央線)、東京市街鉄道が新宿駅に乗り入れ、1915年(大正4年)には京王電気軌道(現:京王線)が乗り入れ、ターミナル駅としての姿を見せ始める。そして、その流れを決定的にしたのが、1923年に起きた関東大震災である。表層地盤の弱い都心部の銀座や浅草などの下町エリアは繁華街が全滅し人口が激減したのに対して、武蔵野台地(山の手台地)の東端に位置する新宿は地盤が強くほとんど被害を受けなかったために、渋谷、池袋といった他のターミナル駅とともに、郊外の人口の急増にともない駅周辺が新たな繁華街として発展することになったのである。なるほど。新宿が本格的に発展しはじめたのは関東大震災の後だった。つまり、大河「いだてん」的に言うと、関東大震災によって浅草十二階が崩壊してしまった。そして、朝ドラ「純情きらり」的に言うと、震災後から戦前にかけて、池袋には貧乏画家たちの集落(池袋モンパルナス)があり、それと同時期に、新宿にはムーランルージュがあったということなんですね。現在に続く新宿の文化が、このムーランルージュにこそはじまっている。とりわけ「アイドル文化」という観点でいえば、それは浅草から新宿へ移り、さらに原宿から秋葉原へと移っていったのです。◇ドラマのなかで印象的だったのは、主人公の歌う「恋はやさし野辺の花よ」でした。もともとはスッペのオペレッタ『ボッカチオ』の曲で、すでに震災前の浅草オペラでも人気になっていた。明日待子は、ムーランルージュ支配人(おそらく佐々木千里)の反対を押し切って、前線の兵士を慰問するために大陸へ渡ります。さながら、現代のモー娘やAKBが、自衛官募集の広告に出るのと同じですね。しかし、現地の隊長から彼女に向けられた感謝の言葉は、次のようなものだった。敵を倒すのが我々の戦争なら、兵を笑って死なせてやるのがあなたの戦争ですな。明日待子は、この言葉に衝撃を受けます。実際、彼女が見送った兵士の多くは帰ってこなかった。バカですよね。ファンにとって私は生きるための力なんかじゃなかった。死にに行くための支えだった。ニコニコ笑って「頑張ってください」って、みんなが笑って死ねるよう背中を押してた。アイドルなんかになるんじゃなかった。◇ちなみに、明日待子は、出兵前の「須貝富安」という青年と恋に落ちたのですが、これは実在の人物です。北海道のエンターテインメント企業「須貝興行」の御曹司。(現在はSDエンターテイメント株式会社になっています)https://www.sugai-dinos.jp/100th/history/history_hatten.htmlこの須貝富安は、無事に復員し、めでたく昭和24年に明日待子と結婚しています。もともと明日待子は岩手出身ですが、結婚後は北海道に住みました。◇ラストシーンでは、なんと美空ひばりらしき少女が登場したので、さすがにこれはフィクションだろうと思ったものの、念のために調べてみたら、たしかに昭和21年に、当時は「美空和枝」の名で活動していた美空ひばりが、(本名は加藤和枝ですが、昭和20~22年にこの芸名を使っていた)母とともにムーランルージュへ売り込みに来た事実があるらしい!明日待子と対面したのかどうかはわからないけれど、ひばり母娘がムーランルージュへ来たのは事実のようです。https://www.kaijo.ed.jp/students/832— 佐藤くらら🐈⬛11才 NHK特集ドラマ「アイドル」8月29日BSP 21:00〜放送 (@reikosugar1) August 27, 2022
2022.08.24
鎌倉殿の13人。今夜は第32話が放送されますね。毎週欠かさず見ていますけど、もうねえ、ひどすぎます…。なんなんでしょうねえ。いや、脚本が悪いとか演出が悪いとかの話ではなく、史実そのものがひどすぎるのよ。◇…今更ではありますが、結局、この話って、最初から最後まで、ずっと内ゲバですよね。平家と戦ったのは義経ただ一人で、あとの連中は、ずっとひたすら内ゲバだけをやっている…。頼朝が生きている間は、兄弟同士の殺し合い。頼朝が死んで以降は、御家人同士の殺し合い。いったい何やってるんでしょうか??…って気持ちになる。この無意味な殺し合いの果てに、現在の鎌倉が存在しているのかと思うと、なにやらモノノアワレを感じずにはいられません。◇今年のはじめにNHKで放送された「鎌倉殿サミット2022」で、京都側の立場で発言していた井上章一が、鎌倉幕府のことを「広域暴力団・関東源組」だと言ってたけれど、その意味がいよいよ分かってきました。まさしく、これはヤクザの話。親分の座を奪い合うだけの内部抗争の歴史。もともとは、上方出身の源氏がもたらした殺し合いの習癖だとは思うけど、それがいつしか義理堅い東国の武士にまで伝播してしまった。こんなこといつまでやってるんでしょうね…。本当にひどすぎます。◇序盤にこのドラマの感想を書いて以来、ずっと取り上げられずにいたのは、自分の気持ちが追いつかないのもあったけど、脚本家・三谷幸喜の意図をつかみ切れずにいたから。もともと史実がそういう話だから仕方ないけれど、なぜ三谷幸喜は、こんなヤクザ連中の話を書こうとしたのか?そして、なぜ頼朝の役は大泉洋だったのか?という点に、わたしの関心がありました。以前から、三谷幸喜は、大泉洋のことを「受けの俳優」だと評していた。すなわち、能動的ではなく、受動的な人物を演じるべき俳優。いつも周囲の状況に振り回されるトホホな役回り。実際、頼朝の残虐性は、はたして、主体的なものだったのか、あるいは、やむをえない状況判断にすぎなかったのか、そこがある種のブラックボックスになっていて、つねに自分の意志とは逆のことをしていたようにも見える。本意ではないのに、上総広常を殺し、本意ではないのに、弟の義仲を殺し、本意ではないのに、甥の義高を殺し、本意ではないのに、弟の義経を殺し、本意ではないのに、弟の範頼を殺していたようにも見える。織田信長のような「能動的な残虐性」とはちょっと違う。かりに、いかにも悪人らしい悪人なら、こうした残虐性も理解できるのだけど、なまじっか親しみやすいキャラの大泉洋だけに、しかも、ちょいちょいコミカルな演出が入るだけに、その見かけに反する残虐性に困惑してしまうのです。それにくらべれば、菅田将暉のクレイジーさのほうが、まだしも理解しやすかった。まあ、鎌倉時代の武人たちのロジックを、現代のわれわれが理解できないのは当たり前なのだけど、その不可解さが、いわく言いがたい気持ち悪さとなっており、その気持ち悪さこそが、安易な共感を寄せつけない歴史のリアリティとなっており、それこそが本作の醍醐味にもなっている。>>鎌倉殿による12人殺し◇思い返せば、自分の孫を殺した伊東祐親も理解しがたかったし、さらには、新垣結衣が演じた八重もまた、孫のことを殺し、自分のことまで殺そうとした父に対して、なぜ最後に温情をかけようとしたのかが不可解で、ドラマのヒロインという体裁ではあったものの、かなり理解しがたいキャラでした。◇とはいえ、頼朝が生きているあいだは、まだしも坂東武者たちへの共感は可能だったのよね。味方同士で殺し合うことへのためらいがあったから。しかし、いまとなっては、もはや共感できる人物はほとんどいません。かろうじて共感できるのは政子ぐらいでしょうか?義時も、完全にダークサイドへ堕ちちゃった。だいいち、頼朝や頼家に毒を飲ませたのも、義時なのかもしれないし…。小栗旬もまた、大泉洋とおなじく、能動的なのか、受動的なのかがよく分かりませんが、それゆえに、大泉洋と同じような気持ち悪さが募っていくはずです。いずれは政子も闇堕ちしていくのでしょうか?…でも、今にして思えば、三谷の最初の大河「新選組」も、関東出身のヤンキーの内ゲバの話だったのよね(笑)。
2022.08.21
ユニコーンに乗って。まだ第5話くらいかと思っていたら、いつのまにか第7話まで来ていたんですね。全体的に薄味だし地味なドラマではあるものの、脚本はなかなかしっかりしていると思う。恋愛のムズキュン展開はともかく、ビジネスストーリーとしての面白さがあります。◇第4話には、プロダクトプレイスメントの話が出てきましたが、第6~7話では、チームビルディングの話に付随して、エンジニアや特許データの流出という問題が。さらに、ネットのリテラシーやモラルを高めるために、あえてデジタルデバイド(情報格差)の強い集団に、体験会やモニターへの参加を促すという話。…いつものラブコメのように、意味もなく男女のすれ違いを繰り返すだけではなく、曲がりなりにもビジネスのトピックが物語を動かしている。もちろん、あくまでフィクションだから、実際のビジネスとは似て非なるものだろうけど、ひととおりのトピックを物語に組み込んで現代的なテーマへ触れているところは評価できるし、いろいろと考えさせられるところもあります。◇肝心の恋愛のほうはというと…永野芽郁と杉野遥亮のムズキュン描写に、さほどのワクワク感はありません。(^^;このドラマでは、男子のほうが恋愛体質で、女子のほうが恋愛オンチ、という設定なのだけど、永野芽郁の恋愛オンチは、たんなる無邪気というわけでもなく、なかば自覚して焦らしてるだけのように見えるし、杉野遥亮のほうは、ひたすらヘタレに見える。あいかわらず、永野芽郁と西島秀俊のキュンキュン要素のほうが優っている。◇まあ、どっちにしろ、いつかは永野芽郁と杉野遥亮が結ばれて、ついでに西島秀俊と広末涼子も結ばれるのだと、だれもが予想しているはずですね。…しかし!永野芽郁の母親が奥貫薫で、こちらもやはり離婚しているとなると、つい「こっちのほうがお似合い!」と思ってしまうのよね。西島秀俊,奥貫薫 パナソニック 公式CM ビストロ 八宝菜篇。30秒版配信📺西島秀俊、八宝菜もお手軽簡単ワンボウルで作ってしまう。https://t.co/ZqLACEZ3G6 pic.twitter.com/X4UBvjrJHO— kooss公式 編集室(run) (@jfifdecoder) October 26, 2019実際、永野芽郁は、西島秀俊に「父性」を求めてるのかもしれません。
2022.08.17
TBSの「石子と羽男」。第1話の出来の良さからすると、第2~3話は、やっぱり見劣りがします。内容がやや保守的だし、石子と羽男のムズキュン描写もだいぶ陳腐になってきた。◇第3話は、ファスト映画を題材にしていましたが、「ファスト映画=悪」という前提でつくられた脚本にも、かなりの違和感を覚えました。これって一方的に断罪できるほど単純な問題じゃないでしょ。たとえば、NHKの「100分de名著」のような書籍の紹介や、赤ペン瀧川によるテレビドラマの紹介は許されるのに、なぜ一般個人の編集による映画紹介動画は許されないのか?そもそも著作権にかんする議論は、「作者の保護」や「作品の保護」よりも、むしろ「権利者の保護」や「産業の保護」という面が強いからです。つまり、企業利益こそがなにより「正義」とされている。◇かつては音楽業界でも、サンプリングによる引用やパロディを「悪」とみなし、国内へのサブスクの導入を「悪」と見なすのが主流でした。また、同人誌における「ドラえもん最終回」のような二次創作も、出版社側の一方的な論理によって「悪」と見なされました。現在は、NHKが中心となって、「ファスト映画=悪」とする社会風潮を主導していますが、それもやはり企業利益や産業保護を優先してのことです。かりに、こうした編集動画さえ収益化できるシステムが出来れば、あっという間に政府や企業の態度は変わるでしょうし、法解釈の議論さえ簡単に反転してしまうはずです。そこに最大の胡散臭さがつきまといます。◇この楽天ブログでも、テキストを書いている個人の表現は、すべて企業側の収益のために無償で搾取されています。インターネットの世界では、書き手自身の著作権はまったく無視されており、場合によっては、書き手の意思に反してテキストが無断で消滅することもあります。そのような不平等や不公正が何故まかり通るのかというと、基本的に、資本主義のシステムのなかでは、生産者自身の利益よりも、生産手段をもつ者(資本家)の利益が優先されるからです。ドラマを作っている人間が、そうしたことに無批判な物語を作ってはいけません。◇今回の脚本では、「素人の編集動画が作者や作品を傷つけた」との結論になっていました。しかし、「本編こそが正義であって、編集版は悪である」とか、「企業による編集は良質だが、個人による編集は悪質である」といった議論は、まったくのデタラメというべきでしょう。これは、あくまでも権利上の争いにすぎません。たとえば、本を読まずに、Wikipedia のあらすじに目を通しただけで済ますとか、NHK の「100分de名著」を見ただけで済ますとしても、それは個人の好みと選択の問題であって、べつに責められる話ではない。レコードや CD を、A面の始めからB面の終わりまで聴かずに、数秒の頭出しだけで捨て曲を飛ばしてしまおうが、誰かがサブスクで編集したプレイリストを聴こうが、それもまた個人の好みや選択の問題でしかありません。普通なら5~6時間はかかる書物を、速読術で5~6分で読んでしまう人がいるように、ドラマや映画を倍速再生で見てしまう人がいたり、10分のファスト動画で見てしまう人がいたり、赤ペン瀧川の編集動画で済ませてしまう人がいても、なんら不思議なことではありません。もしも、「本編こそが正義であって編集版は悪だ」と主張したいのならば、映画はつねに、4~5時間のディレクターズカット版のほうを観るべきであって、映画会社の都合で2時間に短縮された通常版など観るべきではありません。◇しかし、そんなことは個人の好みの問題であって、編集の正当性だの鑑賞の正当性だのを問うても仕方ありません。つまり、これは、あくまでも権利上の争いなのです。「音楽のサンプリングは悪である」「同人誌の二次創作は悪である」「インターネットのファスト映画は悪である」…等々といった主張は、つねに既得権益をもった企業の側から出てきます。たしかに一時的な産業保護という観点でいえば、そうした動きを規制する便宜的な措置は必要かもしれません。しかし、著作権の問題の本質というのが、つねに企業と表現者個人の非対称性にあることを理解しなければならない。また、日本で YouTube や Netflix が生まれなかったように、あるいは、サブスク の普及が大幅に立ち遅れたように、既得権益だけを保護しようとする後ろ向きの政策は、かえって日本の産業の国際競争力を削ぎ、メディア文化の発展を遅らせてしまうのだ、…ということも念頭に置かなければなりません。テレビドラマ制作者がいま何を考えるべきなのか。そのことを本気で自問自答していたならば、今回のような脚本の内容にはけっしてならないはずです。
2022.08.05
ユニコーンに乗って。第4話。本来、TBS のラブコメって、「ひたすら楽しくてキュンキュンすれば良い」みたいな枠だとは思うけど、今回はちょっと一味違っている。それなりに意味のある物語を構成してるし、けっこう現代的な課題に取り組んでいるところも面白い。 よくあるラブコメみたいに、どうでもいいエピソードで話数を稼ぎながら、ただ男女をくっつけたり離れさせたりするだけじゃない。◇今回は、学習アプリのサービスを「無償」にすべきか「課金制」にすべきか、…というお話。わたしとしては、たとえば一年間に数千円程度の課金で、あらゆる学習サービスを享受できるのなら、学校や塾の授業料よりずっと安いわけだし、それだけで十分に経済格差を是正する可能性もあるし、けっして高くないと思ってるけど、ここでの主人公は、あくまで「無償」にこだわります。もちろん、ドラマのなかのお話だから、ただちに現実のビジネスへ結びつけられるわけではないけど、かなり現代的なテーマに触れている部分はある。◇近年は、ベーシックインカムに並んで、ベーシックサービスについての議論も進んでいます。すなわち、現金支給ではなく現物支給の社会保障です。警察や消防、義務教育や図書館などと同様に、公的サービスの範囲を医療・介護や高等教育にまで、さらには最低限の衣・食・住にまで広げていく、…というもの。わたし自身、いずれこれらは公的サービスとして、だれもが無償で享受できるようにすべきだろうな、と思う。◇ベーシックインカムにせよ、ベーシックサービスにせよ、それらはつねに「増税」の議論と切り離せないのだけど、今回のドラマで出てきたのは、いわゆる「プロダクトプレイスメント」という広告収入の手法でした。これを用いれば、「課金」によらない無償のサービスが実現できるかもしれない、…というわけですが、同じように、特定の分野に絞ったベーシックサービスなら、こうした手法で「増税」を最小限に抑えられるのかもしれません。貧富の格差を是正し、本質的な意味での人権を実現するためにも、また、社会的な安全保障を確立するためにも、いろいろと新しいアイディアが求められているのだと思います。
2022.08.02
星新一の不思議な不思議な短編ドラマ。満島ひかりの「江戸川乱歩」や、高橋一生の「岸辺露伴」のように、大胆な脚色に期待したのだけれど、思ったほどの斬新さはない。原作の古臭さもあいまって、おおむねレトロなSFといった感じでした。たとえば「薄暗い星で」は、ロボットにも《退屈》や《懐かしさ》や《死の観念》があるといった内容。わりと古典的なSFの発想ですよね。丁寧に映像化されてはいるけど、今となっては驚きに欠ける。◇昔なら、SF というのは架空の物語と思っていたけど、最近では SF もすっかり現実味を帯びてしまって、むしろ「どれだけリアリティがあるか」を吟味するようになっています。たとえば荒川良々が主演した「ものぐさ太郎」などは、アナログな声帯模写を用いた詐欺(詐欺返し?)の話でしたが、あれをフェイク動画やフェイク音声の技術と読み替えれば、それなりに現代的なリアリティがあるかもしれない。◇いちばん面白かったのは、石橋静河が主演した「見失った表情」。いい意味で、星新一らしからぬ世界。ダンスシーンも素敵だった。整形した男女が、表情までをも機械で操作するというお話。これはある意味で、メタバースにおけるアバターの世界といえる。最後は「もう機械には頼らない」という、なにやら良識的なハッピーエンドになっていたけれど、わたしはむしろ、自分のアバターの表情を人工的に制御する時代が、それほど遠くない未来の現実になるだろう、という気がします。
2022.07.29
TBS のラブコメにしては、脚本にメリハリがあるし、構成がしっかりしている。第2話まではひたすら西島秀俊を推して、杉野遥亮は気の毒なくらい惨めな役どころだったけど、第3話では一転して、杉野遥亮と永野芽郁との回想にまるまる一話分をあてました。なかなかの構成だと思います。元カノとの三角関係、そして西島秀俊との三角関係をちらつかせながら、最終的にはハッピーエンドになるんでしょうね。西島秀俊と広末涼子の関係も見どころです。杉野遥亮と前原滉が、テレ東「直ちゃんは小学三年生」のコンビだったのも、ひそかに気になっている。◇教育系アプリのお話ですが、ネットを通じた学習システムについては、わたしも14年ぐらい前にこのブログで色々書いたけど、https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/200806120000/現在はどの程度まで進展しているのでしょうか?・個人の能力とスピードに合わせた学習・苦手分野の絞り込み・習得まで繰り返し受けられるテスト・ゲーム感覚でのランクアップ・教師による生徒の査定ではなく、生徒による教師の査定・選択・幅広い分野の生涯学習こういった点で、既存の教育システムを大きく刷新する可能性があるのだけど、なかなか長年の教育習慣と既得権益を切り崩せない。わたしは、任天堂あたりが、学習ハードウェアやソフトウェアを開発すれば良いと思ってたんだけれど。◇学校は、コミュニケーションと共同作業の体験に特化すべきであって、もはや知識を習得する場としてはふさわしくありません。とくに日本の場合は、学校が、同調主義と排他主義と権威主義の温床になるからです。日本人の同調圧力・いじめ体質・パワハラ体質は、ほかならぬ学校でこそ育まれている。日本人を、そこから解放しなければいけません。
2022.07.25
放送文化基金賞ってことで、名作「ハコヅメ」がTverで再配信中。やっぱり超絶面白い…春のドラマは、どれもイマイチ乗り切れなかったので、久々にこういう優れたドラマを見ると、やっぱり違うなあと思ってしまう。脚本の出来がレベチなのよね。◇そういえば、山田裕貴も出てたんだっけ。博夫さんとは真逆のキャラだけど。ちなみに、戸田恵梨香と永野芽郁は、こんどの湊かなえの映画では母娘役なのだそうです。それも驚き。「母性」
2022.07.07
浅野妙子。最後にどんなアザトいことをやるかと思いきや…ありったけのツッコミどころを並べて、SNSのトレンド上位に喰い込む作戦だったらしい。アザトいにも程があるっ!もうちょっと正攻法で勝負したら??◇まあ、泣いてこそ恋。傷ついてこそ恋。ヒビが入って傷ついても、また何度でも直せばいい。…という作品のメッセージは悪くなかったと思うし、最後は、ネイル先輩のレズ&アセクを唐突にぶっこんだりして、取ってつけたようなポリコレ的配慮もしてたけど、あまりにツッコミどころが多すぎて、ほとんどの視聴者には何も届かなかったと思う。#恋マジ pic.twitter.com/19e5ESKjkK— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) June 21, 2022 ◇おもなツッコミどころは、母と息子の間接近親キッスもさることながら、純が、大津に対して、「ホテルの飯もマズいし、あんたのことも好きじゃない」と言い放ったことであり、その足で柊磨の店に来るや、テーブルのうえに誰のものとも分からぬ料理があって、それをなんの断りもなく勝手に食べはじめたことであり、その足で公園に連れ出し、店を放っぽらかしたまま、ソーシャルディスタンス告白を敢行したことであり、響子が、パリへ発つ直前の要に、「夫に離婚届を置いてきたから私をパリで弟子にして」と謎の告白をしたことであり、結局のところデュビビエの目的が、要をどうすることだったのか分からないところであり、そして何より、ラストシーンで、ひな子となーちょびが別れていたことです。…これらのツッコミどころが功を奏し、SNSでは数日にわたってトレンド入りになったのでした。◇でも、とりあえず、由貴ちゃんが、いまだに松村北斗を相手にでも恋人感満載でイケるんだ!と分かったのは収穫。その点では浅野妙子に感謝します。(^^ナデナデからの~ガブ呑みからの~間接キスからの~!!!恋人感満載www #恋マジ #松村北斗 #斉藤由貴 pic.twitter.com/86xqD0iywD— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) June 20, 2022もはや恋人感しかない!!! #恋マジ #松村北斗 #斉藤由貴 pic.twitter.com/XvG9Ktz0qp— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) June 20, 2022 恋なんて、本気でやってどうするの? Blu-ray BOX
2022.06.21
警視庁・捜査一課長《season6》が最終回でした。◇シリーズ全体の最終回ということで、なかなか凝った作りになっていましたが、ほとんどSFみたいな設定に、かなりの自己言及(というか自虐)ネタを散りばめた内容。やはり賛否両論だったようです(笑)。このシリーズは、しばらく前から「ネタドラマ化」していたけど、今シーズンは、ほとんどギャグ路線に振り切っていて、よくもわるくも話題を呼んでいました。…わたし自身は、そもそもこの手のサスペンスに期待感が薄いので、シリアスだろうが、ギャグだろうが、べつにどっちでもいいのですが (^^;まあ、いつもよりは、だいぶ興味をもって見ることができました。◇テレ朝のサスペンスドラマは、気軽なルーティンで見てる高齢者が多いらしいけど、内容をまともに理解しようとすると、犯罪動機やトリックがあまりにも意味不明なので、かえって頭が疲れて、徒労感に襲われることが多い (^^;そういう意味では、いっそ「ネタドラマ」として楽しむほうがマシ!今回も、犯罪動機やトリックはやはり意味不明だったけど、《メタバース》を《メタフィクション》に掛け合わせた設定は、それなりに興味深かったです。映像もいつもとは少し違って、なにやら黒沢清の映画っぽい不気味な曇り空が広がってたりして、現実感の乏しい架空世界の雰囲気を醸していました。◇メタバースについては、以前も、細田守のアニメがらみで書きましたが、https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202109040000/https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202112080000/今回のドラマでも、アバターとしての人生をとおして、身体的な呪縛から解放されることの自由とか…実体のないモブキャラの悲哀とか…そんなような話だった感じ。◇自己言及ネタとしては、すっかりルーティンに自足したあげく、マンネリと化してしまったこのドラマ自体への、身も蓋もない自己批判を暗に繰り返していました。最終回 自虐ネタ その1。#捜査一課長 pic.twitter.com/N5p7FiLXSI— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) June 18, 2022 ひと月ほど前の文春の記事には、このドラマが「致命的に面白くない」と書かれていたのですが、それに対する自虐アンサーみたいな脚本です。まあ、文春の記事は、かならずしも否定的な内容ではなかったので、あの記事こそが一種の「ネタフリ」だった気もしますが…(^^;https://bunshun.jp/articles/-/54219最終回 自虐ネタ その2。#捜査一課長 pic.twitter.com/MCmYswDpaS— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) June 18, 2022 それに加えて、テレ朝・東映の他作品へのパロディも散りばめられており、これがなかなか複雑怪奇な状況を呈していました。以前から、「刑事ゼロ」の沢村一樹が「科捜研の女」に出演したり、「捜査一課」の内藤剛志が「未解決の女」に出演したり、さながら《テレ朝・警察サーガ》みたいになってたのだけど、今回は、ついに、「捜査一課」と「科捜研の女」のパラレルワールドが、メタバース空間のなかで遭遇してしまうという不思議な事態に。もともと双方のドラマには、複数の同じ俳優が違う役で出演しているのですが、それらのキャラが同一世界に存在するかのような演出でした。※2つのドラマでは序列が逆転している~東京 警視庁(捜査一課)~~京都府警(科捜研の女)~ 石井一彰:理事官 内藤剛志:警視正 金田明夫:警視 西田健 :巡査部長 西田健 :警察本部長 金田明夫:刑事部長 内藤剛志:警部補 石井一彰:組織犯罪対策係 第1回東宝シンデレラで大阪出身の沢口靖子が京都府警におり、それと同期で神奈川出身の斉藤由貴が東京の捜査一課にいる。沢口靖子ネタ。#捜査一課長 #科捜研の女 #東映警察サーガ pic.twitter.com/tvdfT23PLT— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) June 18, 2022ちなみに、2つの世界を遭遇させるメタバースを開発していたのは、本田博太郎が演じる笹川刑事部長だったんじゃないかしら?◇さらには、スケバン刑事(フジテレビ)のヨーヨーが画面に映っていたり、ルパンレンジャー(テレ朝)の工藤遥が捜査一課に加わったり、局の枠を超えた《東映・警察サーガ》みたいになってました。ヨーヨー&卒業ネタ。工藤遥ネタ。#捜査一課長 #スケバン刑事 #ルパパト #東映警察サーガ pic.twitter.com/E9ortXrdtM— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) June 18, 2022 ラストシーンでは、東映のスタジオセットを、一種の「メタバース的空間」ととらえたっぽい演出もあり、実体のないアバターにすぎなかった工藤遥も、パトレンジャーみたいに捜査一課へ加わってしまったので、かりに続編があるなら、もはや完全なSFになりそうです。(^^;
2022.06.20
恋なんて、本気でやってどうするの?第9話。◇いっときは死者が出るかと予測しましたが…どうやら、毒親がおとなしくなったところを見ると、浅野妙子はこのドラマを穏便に終わらせるつもりらしい。ひな子も、純の母親も、これ以上のトラブルの原因にはならなそうだし、物語の行く末は、・純は柊磨を選ぶのか/大津を選ぶのか・要はパリへ行くのか/レストランに残るのかの2点に絞られた感じです。◇おおかたの予想としては…・純と柊磨が結ばれて・アリサとカッツンが結ばれて・要はパリに行って・響子は元の夫婦生活に戻るみたいな感じ?ちなみに、要がパリへ行ったら、純は会社を辞めて、柊磨のレストランを手伝うのかしら?結局のところ、「恋を本気ですべきかどうか」というテーマについて、どういう結論を出すのかは分かりません。酒とバラの日々。 #恋マジ #ナダル pic.twitter.com/QyzTtBjMVu— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) June 14, 2022 ◇一方、身寄りのない毒親については、「息子とその彼女の世話になって生きるしかない」みたいな結論になるんでしょうか?実際、あの毒親は、このまま施設に戻らないとしたら、当面はレストランの裏で玉葱をむき続けるしかありません。どっちにしても、純と柊磨にとって、双方の毒親の存在は厄介であり続けますよね。 月曜のタマネギむき!
2022.06.15
恋なんて、本気でやってどうするの?第8話。残りは2話です。適度にドロドロしてるのが、浅野妙子のシナリオの痛快さでもあるけど、今回は、さすがに度を超えていて、ちょっとグッタリした。先週までは、ある程度笑って見られていたものの、今週はもう、笑うに笑えない。◇わたしは、先週の段階で、「死者が出るかも!」とハッタリ半分に予測したけど…まさか早速、自殺未遂の話が出て、包丁を持ち出したりするとは。予想以上に過激なペースで話を荒らしてます。次のうち誰か死ぬと予想!#恋マジ— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) June 4, 2022第8話の放送前に投票したのはたったの3人ww…まあ、過去の浅野作品を観てる人でなきゃ、先週の段階でこういう予想はしないでしょうけれど。このドラマが建前として、「アラサー女子の恋愛を描く」って形にしてるのは、あくまでも制作上の都合からであって、脚本家がほんとうにやりたいのは、その背後にいる面倒な人たちの話なのだな、…ということがはっきりしました。若い人たちの恋愛模様の描写のぎこちなさや、作品全体のバランスの悪さも、そういうところに起因するのだろうと思う。◇たしかに、"恋愛が身を滅ぼす"ってのは一定の真実。このドラマも、恋愛をただの綺麗事では終わらせていません。柊磨(松村北斗)がひとりの女子を愛せなかったのは、母との共依存関係から抜け出せなかったから。これは、けっして容易に解決するような問題ではなく、たとえ物語をハッピーエンドに終わらせたとしても、もはや取ってつけたようなハッピーエンドにしかならないかも。◇朝ドラ「純情きらり」の宮﨑あおいがそうだったように、けっして万人に愛されるヒロインにはならないところも、いかにも浅野妙子らしい。母親に振り回されてしまう柊磨の、ちょっと情けない男子像というのも、やはり「純情きらり」の達彦を思い出させます。まるで女子のような表情の松村北斗。彼こそがヒロイン…との噂も(笑)その一方で、きぬちゃんは思いのほか洞察力のある常識人でした!(^-^)↑諸悪の根源です。さて、諸悪の根源は、母親の真弓。しかし、真弓がギャンブルと息子に依存しはじめた原因は、もとをただせば、きっと旦那との冷えた関係にあったのでしょう。腹違いの兄がいることから察するに、もともと旦那には派手な女性関係があったと思われる。そう考えると、いちばん悪いのは旦那ということになりそうですが…社会学的な観点でいえば、こうした逃げ場のない母子依存は、極端な《核家族化》がもたらした必然の結果でもある。じつは現代日本の多くの核家族が、ひそかにこういう問題を抱えていて、「母の日」などの綺麗ごとの家族幻想を撒き散らすキャンペーンも、かえってそうした依存関係をこじらせ続けています。pic.twitter.com/Gv08naCNAo— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) June 7, 2022
2022.06.07
フジ月10。恋なんて、本気でやってどうするの?あと3話ほど残ってると思いますけど、いったい、どう終わらせるつもりでしょうか?あのレストランが上手くいくとは思えないし、レストランの経営に失敗すれば、広瀬アリスと松村北斗の恋愛も、西野七瀬と藤木直人の不倫も破滅せざるをえない。やっぱり恋なんてせずに、地道にお皿のデザインだけやってりゃ安泰だった…ってオチ?さすがに、飯豊まりえが不倫の慰謝料を払う必要はないと思うけど、斉藤由貴のアル中とギャンブル依存が治る見込みはないし、きぬちゃんが戻ってきて狂乱化する可能性もあります。◇浅野妙子の「大奥」や「純情きらり」のことを思い出す。とくに「大奥」のことを考えると、人間のもっとも哀れで惨めで醜い姿に共感を寄せるのが、この人の脚本の真骨頂なのですよね。その特徴がもっともよく現れたのは由貴ちゃんのシーン。小市慢太郎から札束を握らされて、「これ持ってホテルにでもどこでも行け」「息子の邪魔だけはするな」「息子はお前に人生を邪魔され続けて、まともに生きられなくて」「もう息子につきまとうな」と言われて、要は、ギャンブル依存症の更生施設へ帰れと切り捨てられる。…あまりに哀れすぎて笑っちゃったよ。そして、小市慢太郎の演技が絶品すぎる。今季の助演男優賞に推しておきたい。pic.twitter.com/dvdbottuiG— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) May 31, 2022 pic.twitter.com/ITJrNROgMc— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) May 30, 2022 それにしても、過去の浅野作品から考えるに、何人か死んだり、レストランが火事で焼け落ちでもしない限り、もう、この話って収まらないのでは?
2022.05.31
汝の名。最終話。ライオンみたいな山崎紘菜。ブタみたいな北乃きい。…どちらもいい意味で!(笑)2人の女のサドマゾ的な共依存関係。演じることの陶酔と演じる者に対する憧れ。姉は妹への支配と凌辱に喜びを感じ妹は姉への羨望と被虐に喜びを感じる。食う者の喜びと食われる者の喜び。じつは姉妹を演じてるだけの昔の同級生。2人はほんとうは歪んだ形で愛し合っていて男のことなど微塵も愛していない。ほぼ百合。とくに最終話の破滅的な美しさは秀逸でした。— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) May 26, 2022 深夜枠30分で全8話でしたが2時間くらいの映画や舞台にしても良さそうな内容ではある。今回のドラマでは実年齢で3才年下の紘菜がサディスティックな姉を演じる難しさもあったと思うしかりに舞台だったらくりかえし演じるなかで二人芝居の愛憎関係がもっと深まったんじゃないでしょうか。いずれにしてもなかなか稀有な作品でした。
2022.05.27
…小市慢太郎ってさあ、小市こいち・慢太郎なの?小市慢こいちまん・太郎なの?いや、たぶん小市・慢太郎だとは思うけど、わたしは、なんとなく、小市慢・太郎のほうが、ウルトラマン・タロウっぽくていいかな、と思う。いっそ、小壱萬・太郎にしちゃえば、ちっちゃい福沢諭吉くんみたいになりますよね。◇…それはそうと。いつもの小市慢太郎だったら、疲れた初老オヤジっぽい役が多いのだけど、今回は、なかなかダンディで、お洒落で、ちょっと素敵です。なんなら、不倫相手の役でも悪くない感じ。つくづく今回のドラマ、キャストだけはとても魅力的なのよね。中身はともかく…。ただ、小市慢太郎が夫で、斉藤由貴が妻ともなると…ひたすら犯罪の予感しかしませんがw◇さて、飯豊まりえ。わたしのなかの永遠の泉京香さま by 岸辺露伴。いつものとおり、脚は超長いのですけど、じつは、けっこうグラマーなのよね…。ずるい。pic.twitter.com/pcEXd36JSX— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) May 24, 2022 どうでもいいけど、アラサー女子が「タッチ」を歌うって古すぎでしょ。浜辺美波じゃあるまいし。pic.twitter.com/MHERWtzdrr— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) May 24, 2022◇ところで、今週の絹ちゃんはどこへ行ったのでしょうか?このドラマの絹ちゃんは、かなりイジワルな役だけど、それでも、なんとなく、絹ちゃんには幸せになって欲しいのよねえ…。役名「絹ちゃん」じゃないけどね!!まあ、安子をさしおいて、稔さんとベッドインした絹ちゃんもどうかと思うけど、それ以上に、東宝芸能の後輩をさしおいて、稔に抱きついてるこの人はいかがなものか?! pic.twitter.com/AXU0QyMwYr— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) May 23, 2022…的なところに浅野妙子の脚本のあざとさがあります。もちろんっ!そんなものには、…完全に騙されてます!近年のドラマでは、当たり前のように「毒母=斉藤由貴」って図式になってますが… ▽ たまには、いいお母さんのときもあるのよね。 ▽ ちなみに、このセーターはどこで売ってたの?
2022.05.25
ほぼ脱落寸前だったフジの月10ドラマ。「恋なんて、本気でやってどうするの?」ひさしぶりの浅野妙子の脚本だし、メインキャストの6人も好きな俳優ばかりなので、なにげに今季いちばん期待してたんだけど、いかんせん内容が古くさくて、すっかり観る気が失せていた…しかし!ここにきて!!由貴ちゃんの投入で見ないわけにはいかなくなりましたw◇なにやら、更生施設みたいなところにいる、やさぐれたオバサンの役。アル中なのか、それとも薬物中毒なのか分からないけど、松村北斗のことを「恋人」と言い出す始末wヤヴァすぎでしょ…pic.twitter.com/F2HWf1qdwB— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) May 16, 2022 ◇去年は橋部敦子が気を吐いたもんだから、さぞかし浅野妙子もやる気になったんでしょうねえ。わたしも「どんなもんかしら」と思って、期待しつつ、初回からチェックはしていた。しかし、さすがに60才の脚本家が、アラサー女子の恋愛を描くってのは無理があって、その設定の古臭さとか、女子会の台詞のババ臭さとかに辟易してたんだけど、やっぱりメインキャストの6人には惹かれるし、まあ、浅野妙子のことだから、色々あざといことをやるんだろうとは思っていた。実際、アキラ100%を不倫相手に仕立てたり、稔さんと絹ちゃんをベッドインさせてみたり、先週は、広瀬アリスに40秒間ものキスをやらせてみたり、あれやこれやのネタをぶち込んでましたよね。◇でも、まさか由貴ちゃんの投入で、サイコホラーへかじを切るとは予想外でしたwwなんでもやるなあ…、浅野妙子。はたしてどこまでやらかすんでしょうか??あまり過剰な期待はせずに見届けるつもりですが、とりあえず、ドラマの出来不出来にかかわらず、由貴ちゃんとキャスト6人のオフショットには期待します(^^♪これは言霊荘のときのオフショット。あんまり浮かれないように!
2022.05.17
川栄李奈が「しゃべくり007」に出演していました。彼女のAKBおバカ時代から、女優としての成功までの道のりが話題になっていた。◇わたしが川栄李奈に関心をもちはじめたのは、17年の「アシガール」とか、18年の「崖っぷちホテル」の頃だし、彼女のAKB時代のことなどはよく知りませんでした。わりと最近になって、昔の彼女が「おバカキャラ」で通っていたことを知った。YouTube などで過去の動画を探してみると、見てる側が不安になるほどのバカっぷりを炸裂させてて、いま現在の川栄李奈とはまるで別人です…。逆に、AKB時代をよく知ってる人たちは、いまの彼女の名女優ぶりが信じられないかもしれません。この変貌の謎は、なかなか容易には解けないけれど、本人の話によると、2014年のドラマ「ごめんね青春」が大きな転機だったらしい。クドカンの脚本と、錦戸亮&満島ひかりの主演。そして黒島結菜や斉藤由貴らがキャストに名を連ねていました。本人にとっては、憧れの満島ひかりと共演できた意味が大きかったようですが、わたしから見れば、やはり「クドカンの先見性」とか「クドカンの俳優育成力」とか、そういうものを感じてしまいます。たとえば長瀬智也なんかの場合も、クドカンのドラマに出演する以前はかなりポンコツでしたからね。1.川栄李奈と黒島結菜と上白石萌歌2014年の「ごめんね青春」の後も、川栄李奈は、黒島結菜との共演を重ねてます。わたし自身、17年の「アシガール」で、この2人の女優に関心をもつようになりました。最近では朝ドラのヒロイン交代式もあった。もともと黒島結菜は、日大芸術学部で写真を専攻していた人なので、同じく日芸出身のクドカンにとって後輩にあたるのね。黒島結菜は、2016年の「さよならドビュッシー」以降、上白石萌歌との共演機会もあり、さらには「時かけ」つながりなどもあって、それが現在の「ちむどんどん」にまで結びついてます。萌歌は「自分の写真の師匠は黒島結菜」と言ってますが、それは、もしかしたら川栄李奈も同じかもしれません。2019年に、A-Studioのアシスタントが川栄李奈から萌歌へ引き継がれ、さらに、この2人が「3年A組」で共演することになったので、いわば結菜・李奈・萌歌の3つ巴の関係が成立し、クドカンの「いだてん」では3人ともが出演するに至りました。そして「西郷どん」「カムカム」では川栄李奈と萌音が共演する。走るドラマの系譜!!黒島結菜「時をかける少女」2016黒島結菜×川栄李奈×伊藤健太郎「アシガール」2017上白石萌歌×戸塚純貴×伊藤健太郎「続・時をかける少女」2018黒島結菜×上白石萌歌×川栄李奈「いだてん」2019黒島結菜は「ちむどんどん」でも走ってる…。2.川栄李奈と斉藤由貴一方、川栄李奈と斉藤由貴の結びつきにも見逃せないものがある。2014年「ごめんね青春」での共演から1年後、川栄李奈はAKBを卒業すると、WOWOWの映画番組にレギュラー出演し、※番組名は「私を映画に連れてって」という原田知世パロディ。クリス松村とともに80年代の日本映画を観まくったのですが、そのラインナップの中心になったのが斉藤由貴の作品でした。これはたぶんクリス松村の趣味が反映されたからですね。番組のアフタートークでは、クリス松村の「もし自分が出演するとしたら?」という問いに、川栄李奈が「トットチャンネル」と答えてましたが、これは、満島ひかりが「トットてれび」を演じたことと、斉藤由貴が「トットチャンネル」を演じたことと、黒柳徹子が活躍した時代への関心があるからでしょうね。3.川栄李奈と浜辺美波川栄李奈は、浜辺美波との共演が多いことでも知られています。わたし自身、18年の「崖っぷちホテル」を見たことも、川栄李奈と浜辺美波を女優として意識するきっかけでした。ドラマそのものは、とくに傑出した作品ともいえないけれど、戸田恵梨香や川栄李奈や浜辺美波の演技には光るものがあり、その後の活躍に影響があったのではないかと見ています。個人的にもけっこう好きなドラマだったし、由貴ちゃんが次女と一緒にフランクシナトラを聴き始めたというのも、このドラマの影響じゃないかと睨んでる。◇川栄李奈は、ついに「カムカム」で国民的女優と呼ばれるまでになりました。大島優子、松井玲奈、深川麻衣、西野七瀬、島崎遥香など、女優の才能を開花させたAKB出身者はほかにもいるけれど、そのなかでも川栄李奈は抜きん出てるように見えます。とはいえ、これが彼女のピークだともまだ思えない。ほんとうの代表作が生まれるのは、これからではないかしら?
2022.04.27
ふたを開けてみれば、医療ドラマというよりも、通常診療もせずにブラブラしてる勤務医たちのコントを交えた、ごく古典的なクローン人間のSF作品でしたね。美波的にいえば、「無痛」の特殊体質と、「アリバイ崩し」の推理力と、「約ネバ」の人身売買設定と、「シン仮面ライダー」の人造人間展開を、ぜんぶ合体させたような内容でした。途中までは、たんなる眠たそうな可愛い子ちゃんだったのに、最終回で、これほど美波の演技に引き込まれるとは思わなかったし、いちおう主役らしい説得力を見せつけてくれたのは良かったです。◇…まあ、ほんとうのことをいえば、彼女はべつに演技が下手な女優ではないのだし、それでも「浜辺美波を暖かく見守りましょう」的な雰囲気にもちこんだのは、あくまで "下手っぽく見せる" という制作側の策略なのですが(笑)。しかし、そういう戦略が功を奏したとしても、ひたすらツッコミどころを笑うだけのドラマを、十週にもわたって見続けるような温かい視聴者が、どう頑張ったって10%に満たないのは当然のことだし、夕方4時ぐらいに放送する子供向け作品ならともかく、さすがに夜10時台の内容とは言いがたいのだから、これで企画の方向性が正しかったとはお世辞にも言えない。◇ちなみに、終盤は、ほぼ人造人間の話になりましたが、危惧したほどの仮面ライダー的な展開にはならずに済みました。ただし、高森勇気は、秘密組織Doctor Blackとの戦いを続けるらしいので、続編があれば、まちがいなく仮面ライダー化していくでしょう。キスマイ宮田はなかなかの新境地を見せたと思う。けれども、すでに柄本佑と浜辺美波の『シン仮面ライダー』は、来年の劇場公開が決まってるのだから、あえてこのドラマの続編を期待する人は少ないだろうし、幼稚な作品ばかりを連発したあげく、低次元なスタッフばかりが結集するようになっても困るし、まともな脚本家が寄りつかなくなるようでも困るので、フジテレビと東宝は、また別の方向性の企画と脚本家で出直して、日テレの「ウチカレ」を超えるような作品に挑戦してください。
2022.03.29
このドラマを見はじめた当初は、てっきり「恋愛を介在させない共生の可能性を探る物語」になると予測したのですが…実際は、もうすこし高い次元にまで行った感じですね。◇ふたりは「共生しない」という選択をします。けれど、それはけっして関係を解消するということではなく、むしろ共生せずとも繋がりあえるような「絆」をつくる、ということ。そこで重要な意味をもったのが、なんと高橋の「お祖母ちゃんの家」でした。これは、なかなか予想外の着地点◇たんに共生ということではなく、自分たちが帰属する「家」というものを共有する。それさえあれば、たとえ遠距離であっても繋がっていられる。そういう安心感、一体感。もちろん、これだけが唯一無二の結論ではないだろうし、多くの視聴者にとって意外な結末でもあったのだけど、かなり広い視野を与えてくれる結論ではあったと思います。◇これって、じつは、アロマアセクの人だけに特有の問題ではない。性愛欲求をもった人々でさえ、恋愛が思うように成就しないまま、家族もできないままに孤独に陥ることはあるのだし、あるいは、加齢によって性愛欲求を失ってしまって、家族をもたないまま孤独になる人だって沢山いる。そういう人々が、いかにして孤独から脱して、何がしかの「共生」の形をつくっていけばいいのか。何がしかの「絆」や「帰属」の形をつくっていけばいいのか。これって、とても普遍的な問題なのだと思います。▼NHK考証チームブログ 第1回NHK考証チームブログ 第2回NHK考証チームブログ 第3回NHK考証チームブログ 第4回NHK考証チームブログ 第5回NHK考証チームブログ 第6回NHK考証チームブログ 第7回NHK考証チームブログ 第8回 ▽ノベライズの予約はこちら。
2022.03.28
浜辺美波の「ドクターホワイト」。医療ものなので、7年前の「無痛~診える眼~」みたいに、患者の病気を一目で言い当てる天才医師の話にしたいんでしょ?そこに名探偵コナンくんみたいな推理要素も加えて、一昨年の「アリバイ崩し」や「タリオ」みたいにしたいんでしょ?…などと予想していましたが、ここに来て、急に「約ネバ」っぽくなってきた(笑)。人身売買。血液ビジネス。2000万人に1人の希少血液:ゴールデンブラッド。…とかなんとか。すべての血液型に輸血できる特殊な血液。世界に50人ほど、日本には5、6人しかいないと言われてる。該当者のリストは国が厳重に管理してるはずだから簡単には入手できない。…私はずっと何もない部屋にいました。たぶんどこかの施設。何もない白い空間で、幼い頃からずっと監禁されていた。外に出た記憶はほとんどありません。接していたのは、係の人が何人か。名前はわかりません。私には医療の情報だけが与えられました。文献や映像やあらゆるもの。それが私の日常でした。それは勉強で、娯楽で、世界を知る方法でした。次の誕生日を迎えられない…そう言われてきました。勇気さんは「このままじゃ君は殺される」と言いました。勇気さんの連絡先も知っていた…「番号を覚えておいてくれ」と言われてて。高森勇気は、ミネルヴァさんですか?これはサスペンスというより、SFなのね。ほんとに「シン仮面ライダー」っぽくなってきました(笑)。
2022.03.11
NHK「恋せぬふたり」の第5話は、非常につらい内容。このドラマは、もともと「恋せぬ人間」の苦しみを描く内容なのだけど、第5話では、逆に「恋する人間」の苦しみが描かれました。◇たまたま、浜辺美波の「ドクターホワイト」に、「like」と「love」のちがいの話が出てきていたのだけど、そこでは漠然と「like<love」のように捉えられています。実際、世間では「like<love」という抽象的な認識のほうが一般的です。しかし、このドラマのなかでは、「like」と「love」が、とてもシビアに区別されている。「like<love」ではなく、「like≠love」なのですね。すなわち、「love」(性愛)は、「like」(親愛)とはまったく違う感情で、ときに支配欲や暴力性をもはらんでしまう欲求だし、あげく嫉妬や憎悪や呪いにさえ転じるものだから、like しあうことができても、love しあえない場合がある。love(性愛)においては、求める側も、求められる側も、たがいに傷つく惧れがある。だから、一方は、自分の欲求を抑えなければならない苦しみを背負い、もう一方は、相手の欲求に応えてあげられない苦しみを背負います。◇このように、たがいに love しあえない苦しみというのは、かならずしもアロマアセクにかぎった話ではなく、一般的な片思いにも通じる普遍的な苦しみですよね。つまり、自分は「恋人になりたい」と思ってるのに、相手は「友達のままでいたい」ってシチュエーション。そこでも、自分の欲求を抑えなければならない苦しみと、相手の欲求に応えてあげられない苦しみがあります。そういう構造が、非常にクリアに描かれたのが、今回の第5話でした。▷ NHK考証チームブログ 第1回▷ NHK考証チームブログ 第2回▷ NHK考証チームブログ 第3回▷ NHK考証チームブログ 第4回▷ NHK考証チームブログ 第5回▷ NHK考証チームブログ 第6回 ▽ノベライズの予約はこちら。
2022.02.28
浜辺美波の「ドクターホワイト」。けっして出来の良いドラマとは思わないけど、そのわりに、けっこう楽しんで見れてたりもする。放送当初から、ツッコミどころが多いのは周知の事実でしたが、思ったほどハチャメチャな展開にはなっていない。◇ツッコミどころを挙げたら、色々あってキリがないのだけど、・看過できない誤診が日常茶飯的に起きている。・人間の感情が理解できないのに、心因や精神症状の医療知識はある。・次期院長の座を狙っている外科医が、現院長の娘と敵対している。・通常診療をやっているように見えない。 etc…それをいまさら批判するのも野暮かなぁ…って気分がすでにあるし、 制作者側がそれをあえて狙ってるようにも見える。当初はツッコミどころと思われていた部分が、物語のなかでそれなりに回収されてる面もある。ベタベタなコミカルシーンも、見ているうちにだんだん慣れてきました(笑)。◇ネットの反応を見ると、みんなツッコミどころが多いのを承知のうえで、もっぱら「美波を愛でるドラマ」と割り切ってる様子。そういう視聴者が何割ほどを占めるか分かりませんが、そういう消費のしかたが、もし一般の視聴者のあいだで共有されてるなら、それはそれで、番組コンテンツとしては成功なのかもしれません。…実際、ここで美波が演じてるのは、世間のことを「何も知らない」という設定の美少女で、たぶん原作自体が主人公への《萌え》に重点を置いているのですね。そう考えれば、この役に美波をキャスティングするのは必然性があるし、それがうまくいってるなら、彼女の知名度を高めるゴールデン枠の作品としても、このドラマの選択は正しかったかもしれない。◇同じフジテレビの「朝顔」には遠く及びませんが、1.コミカルな会話パート2.シリアスな医療パート3.謎めいたサスペンスパート…の配合みたいなスタイルは「朝顔」に共通していて、脚本の精度さえ高めれば、このフォーマットと座組みのままで、上野樹里の「朝顔」の水準に引き上げることも、けっして不可能ではないだろうと思います。お茶の間の視聴者が、CDTのメンバーや狩岡家への愛着を抱けば、「彼らのワチャワチャをずっと見ていたい」という需要に応えてシリーズ化もありえなくはない。浜辺美波と柄本佑の関係をいじくりつつ、映画「シン仮面ライダー」の公開へ繋げていく手もあるかとは思います。
2022.02.22
女子の「アセ」と「ニオイ」を、恋愛のアドバンテージにしてるMBSの深夜ドラマ。基本的には、おバカお色気コメディですけど、ホラー要素などのネタをまぶしてあったり、調子がいいときのテレ東なみに演出が秀逸です。原作は2018年に描かれてますが、なんとなく有働アナの脇汗ネタに触発されてる気もする。ちなみに、大原優乃も、有働アナと同じ鹿児島出身だよね。大原優乃は、自分のアタリ役を見つけるのがなかなか上手いかも。佐藤寛太のキレッキレな変態演技も見どころです。コクられて水をガブ飲みw社内逢引きマップwお馴染みの「シャイニング」ネタw秘密の踊り場。いつも汗だくw結局、毎回おなじベッドシーンで終わるのも笑えますw
2022.02.15
鎌倉殿の13人。あいかわらず面白い。戦国時代のドラマだと、用意周到で緻密な合戦に見慣れてしまうけど、平安時代の、しかも東国の田舎の、マヌケでデタラメで行きあたりばったりな合戦に、かえって妙なリアリティを感じてしまいます。源平の合戦というと、ついつい瀬戸内海の舞台を想像するけれど、東国の田舎からそれが始まったというのは意外です。◇ガッキーが弓を引くシーンも、ファンタジックでカッコよかったなァ。(#^^#)女性が弓を引く力で、はたして川向うまで矢を飛ばせるのか分からないけど、東国の武家の娘なら、ああやって弓を引くぐらいのことをしたんでしょうか?そして、北条の後妻に入った宮沢りえ。義理の娘の政子に気後れすることもなく、合戦がはじまるからと怖気づく様子もなく、したたかに飄々と振る舞っているのが魅力的です。女性たちは、みんな肝が据わっていますね。
2022.02.06
フジテレビのドクターホワイト。医療ドラマの体裁ではあるものの、実際には「恋つづ」や「わたどう」と同じく若年層向けの作品。原作者は「金田一少年の事件簿」を書いた樹林伸です。主人公の浜辺美波は、天才的な推理で問題を解決していく役どころなので、一昨年の「アリバイ崩し」や「タリオ」などと変わらない。要するに、名探偵コナンくんみたいな話なのです。こういう荒唐無稽な勧善懲悪ストーリーは、子供向けであると同時に、じつは高齢者向けでもある。たとえば、「仮面ライダー」と「水戸黄門」は、正義の味方が悪者をやっつける点で同じ構造をしてるし、たとえば「名探偵コナン」くんは、テレ朝の「科捜研」や「ドクターX」と同じように、天才的な主人公が社会の難問を解決していく物語だからです。今回の「ドクターホワイト」が、若年層にも高齢層にも受け入れられるドラマになるのか、それともターゲットを絞りきれないまま失速することになるか、そこが今後の注目点になるのでしょう。ちなみに、浜辺美波と柄本佑は、来年の映画「シン仮面ライダー」でも共演が決まっています。その一連の流れの中で、このドラマは作られている。 ◇TBS の「恋つづ」も、日テレの「わたどう」も、お世辞にも脚本のレベルが高かったとは言えないし、それはテレ朝の「科捜研」や「捜査一課」についても言える。今回は、フジの医療ドラマということで注目したものの、やはり結果は同じで、脚本はごくお粗末なものでしかない。そのことは、多くの視聴者に初回から見抜かれていて、企画の薄さと浅はかさが誰の目にも見え透いています。これは、たぶん制作局の問題というより、東宝の問題なのでしょうね。東宝が関わるドラマは、テレビであれ、映画であれ、総じて脚本の水準が低い。これは構造的な問題だといえる。もちろん、それでも、一定の視聴率や興収が確保できれば結果オーライなのだけど(笑)、せっかくの機会なので、ここで東宝が抱える構造的な問題を考えておきたいと思います。 ◇ ◇◇東宝映画のなかでも、きわめて高い評価を得ている作品があります。たとえば宮崎駿、庵野秀明、新海誠、是枝裕和などの作品です。これらの多くは、演出家が脚本を兼任した、ごく作家主義的な作品であり、もっと言えば、ジブリや ufotable のような外部プロダクションに委託した作品です。その場合、東宝は資金面と配給面で協力しているにすぎず、コンテンツの中身にはほとんど関与していない。実際、優秀な作家やプロダクションに委ねる場合は、とことん丸投げした方がいいし、余計な介入はしない方がいいのですね。◇しかし、自社によるプログラムピクチャーや、ごく一般の制作会社との連携の場合は、そうではありません。凡庸な作家に脚本を丸投げしてしまったら、低次元な作品にしかならないのは目に見えています。その場合は、むしろ東宝側のチームで脚本制作をサポートすべきですが、残念ながら、そのような仕組みや能力は見当たりません。したがって、東宝のプログラムピクチャーには、ほとんど見るべきものがありません。本来なら、若くて優秀なライターの卵を自社で募って、脚本制作のサポートチームを作るべきだし、それができれば、プログラムピクチャーの質も全体的に底上げされるだろうし、連携する制作会社との関係にも良い影響を与えるだろうし、いずれは、チームの中から、優秀な次世代の脚本家が独り立ちするかもしれないのですが、そうした意欲もあまり見えてこない。◇優れた脚本を書ける人はごく一握りです。たんにシナリオが作れるというだけでなく、広範な知識と経験、取材能力と考証能力が必要だからです。それらを個人で出来る人はごく限られているし、ほとんどの職業ライターは、そうした能力をもっていません。しかし、そうはいっても、脚本は作品の根幹なのだし、どんなに優れた演出家や素晴らしい俳優たちを揃えても、脚本が悪ければ、絶対に優れた作品にはなりえない。なぜ東宝は、低次元な脚本で駄作を量産し続ける悪循環に自足していられるのか。この状況を断ち切らなければ、とても国際市場を視野に入れることなど出来ないはずです。各局と連携できるテレビドラマは、さまざまな可能性を試みることのできる機会なのだから、そこでこそ、優れたコンテンツを作るノウハウを磨くべきだし、それが、ひいては映画制作にも活かされるはずです。この機会に、もうちょっとマシなコンテンツ産業を目指してもらいたいと思います。
2022.01.20
北条のお父さん、「命に代えても頼朝を守ってみせるッ!」って…、ついつい口を滑らせてしまうマヌケ展開からのスタート大泉洋と小池栄子の逢引のシーンも、これといってフザケているわけじゃないのだけど、そこはかとない笑いがこみ上げてきます…w源頼朝と北条政子でしょ!日本史を大きく変える超重要な人物が、こんなに面白キャラでいいの??…と思ったら、ラストシーンで頼朝の表情が一変しました その瞬間、頼朝が、ほんとは喰えない奴だと分かってくる。なんとも底の見えない人物だってことが見えてくる。たんなる好色漢に見えていた頼朝は、じつは自分と共闘できる一族を品定めしていて、そのために、その家の娘をたぶらかして、子供を作って結婚しようとしていたわけですね。つまり、東国の田舎女のことなど、自分の野望を果たすための政略結婚の駒としか見ていない。…大泉洋の頼朝が、とたんにリアルに見えてきました。三谷幸喜は、たびたび大泉を自分の作品に起用しているけど、じつは、ただの面白要員ではなくて、けっこう複雑な役で起用しているんですよねえ。今回も、そのパターン。おかげで、スケベ顔の大泉洋が、なにやら底知れぬ存在に見えてきたし、頼朝の肖像画にもそっくりに見えてきました(笑)。そんな頼朝の動向は、神戸の平清盛にも伝えられているけれど、どうやら、清盛はまったく気に留めていない。あの様子だと、平泉の義経のことも気にしちゃいないんだろうな…。
2022.01.19
アロマ/アセクという新概念を提示してるNHKドラマ。異性愛もなければ同性愛もない、誰にも恋愛感情や性的欲求を抱かない人々を、アロマンティック/アセクシュアルというのだそうです。とりあえず、「女子スパ」に的確なレビューが載っていたので、↓こちらを紹介しておきます。https://joshi-spa.jp/1135886※いつもながらリアルサウンドの感傷過多気味なレビューは読む気にならない。要するに、恋愛を介在させない共生の可能性を探る物語のようです。第1話の終盤には、岸井ゆきのと高橋一生の、重要なやりとりがありました。岸井ゆきの「恋愛しないってことは多分、一人で生きてかなきゃいけないってことじゃないですか。親と一緒にいられればいいけど、期待に応えられないのも、理解されないのも辛くて…。自分の居場所、自分の城は自分で作るしかない。でも、私は一人は好きじゃなくて…。これから先ずっと一人で生きていくのかと思うと、たまらなく寂しいんですよね。…わがままですよね、仕方のないことなのに」高橋一生「そんなことはないと思います。どんなセクシャリティあれ、誰かと一緒にいたい、一人は寂しいっていう思いはわがままじゃないと思います。半年前、育ての親である祖母を亡くしました。その別れは覚悟してたことでしたが、今、寂しいです…すごく。まだ自分でもどうすればいいかわからない。でも、この気持ちをわがままだなんて思うつもりはないです」このドラマを見ていて、何より驚いたのは、高橋一生の異様なリアリティ。現実のアロマアセクというのが、どんな人たちなのかは知らないけど、もしや高橋一生こそが本物のアロマアセクじゃないかしら?と思わせる説得力がある。そのセリフにも、その声と表情にも、スリッパをひきずって歩く足音などの一挙手一投足にまで、何ともいえない"アロマアセクっぽさ"が漲ってる気がする。しかも、役名が「高橋」だし…。もしかしたら、このドラマの企画自体、高橋一生が持ち込んだんじゃないの?…とまで勘繰ってしまいました。とにかく、今シーズンの最注目の作品です。▼NHK考証チームブログ 第1回NHK考証チームブログ 第2回NHK考証チームブログ 第3回NHK考証チームブログ 第4回NHK考証チームブログ 第5回NHK考証チームブログ 第6回 ▽ノベライズの予約はこちら。
2022.01.18
おくればせながら、新しく始まった大河ドラマを見ました。…革命的に面白い(笑)。失礼な言い方だけど、いまの三谷幸喜に、こんなに面白いものが書けるとは思いませんでした。◇この小劇場風のコミカルな中世日本は、もちろん三谷流の現代的な脚色にちがいないのだけど、案外、教科書に書いてあるような日本史も、ただの田舎侍の親戚どうしの小競り合いにすぎなかった、…ってところには、妙なリアリティを感じます。家の娘と人質の男がデキちゃった…とかいう話も、いかにもマヌケでゆる~い時代の話だし、当時の東国の女にしてみれば、さぞかし都人の男がカッコよかったんでしょうか?そんなふうに、しょーもないイザコザとまぬけなドタバタで、日本の歴史が変わっていく。実際、そんなものなんだろうと思う。その反面、日常の軽いノリで子殺しをしたりするところには、これまた現代とは異なる価値尺度のリアリティを感じます。新垣結衣が演じる八重姫のことはよく知らないけど、好色な人質の男と通じて子をなしたうえに、その子を実父に殺されてしまうという、ドラマのヒロインとしては、かなり過激な経歴の女性。そんなヒロインとの恋愛劇にも興味が湧きます。◇言葉づかいにかんしては、格式ばって喋るときには時代劇風なのに、身内の仲間と喋るときには、まったくの現代語。これも、いままでにない新しいスタイルですね。主演は、いちおう小栗旬ですが、脇役陣のキャラ立ちのほうが強めなので、これはやはり「新選組」と同じような群像劇になるのでしょう。その部分でも楽しみです。かなりの役者が揃っている。ちなみに、わたしは、中世の日本というと、いまだに黒澤明の「羅生門」のイメージなのだけど(笑)、今回の大河は、それを刷新してくれそうな期待をもちました。
2022.01.16
CHEAT/チート 〜詐欺師の皆さん、ご注意ください〜2019年の日テレの隠れた名作。本放送のときは終盤しか見れなかったけど、Tverでようやく全話視聴できました。相当よく出来てるし、相当おもしろい。本来なら続編が作られるべき名作!◇詐欺師との騙しあいという内容なので、基本的なコンセプトとしては、フジの「コンフィデンスマン」に似てますが、たぶん、こちらのほうが通好み。コンフィデンスマンの場合は、もともと「スティング」を模範にしてて、享楽的な詐欺師側のお話を、おおむねハリウッドスタイルで描いてます。一方、こちらのチートは、全体が怪しげなアジアンテイストになっていて、詐欺の内容にもリアリティがあるし、脚本もかなり出来がよくて、映像もカッコいい。この点で、上杉柊平と福原遥がいい味だしてます。本田翼が演じる主人公は、詐欺師の娘で「サキ」という名前ですが、ちょっとスケバン刑事っぽい因果を感じさせる(笑)。風間俊介は、さしずめ「暗闇指令」ってところでしょうか。ちなみに、主題歌をももクロが歌ってるだけでなく、主人公自身が地下アイドルという謎設定なのですが、そのあたりのオタネタも楽しいし、…なんといっても!金子大地が演じる「カモっち」が最高に可愛い続編があったらいいのにねぇ。
2022.01.03
Tverの「東京ラブストーリー」。平成版&令和版が終了しました。最初はワクワクしながら見始めたけど、中盤以降は、かなり疲れた…。でも、令和版は、平成版を乗り越えたと思うし、それと同時に、「東京ラブストーリー」そのものが終わった、って気もします。坂元裕二も、そのことに満足してるんじゃないかしら?◇恋愛市場において「勝者」になれるのは誰か?それを競い合うのが、かつての都会の恋愛でした。そんな恋愛観が支配していた時代の東京のストーリー。結論からいうと、勝ったのはカンチとさとみで、リカは負け。三上も、勝ったようには見えない。たんに尚子に勝たせてもらっただけでしょう。◇当初は、リカも、三上も、たえず相手のマウントを取り続けようとする人物でした。つねに相手の期待をかわして裏切りながら、相手側の「誠実さ」だけを一方的に試しつづけ、ささいな不誠実さやタイミングの悪さをなじり、答えようのない禅問答をぶつけては追い詰め、たくみに相手の言動を否定しながら翻弄しつづける。ちょうどバブル期のお笑いと同じで、相手のボケをツッコむことで、自分の優位性を維持しつづける、そういうコミュニケーションのスタイルなのですね。上昇志向の強かったバブル期には、そんな支配的なキャラクターこそが理想とされて、多くの人が「リカや三上のような振る舞い」を模倣しました。とりわけ、男性社会から女性上位時代へ向かう転換期において、周囲を自在に翻弄しつづける奔放なリカの姿は称賛された。◇おりしも…80年代前半までは、「ぶりっ子」だの「あざといポッキー娘」だのと、同性からはげしく嫌われていたアイドル松田聖子が、郷ひろみとの破局や、神田正輝との結婚を経て、90年代になると、手のひらを返したようにその「奔放な生き方」が同性から称賛されはじめる…そういう時代と重なっています。80年代前半の松田聖子は"さとみ"だったけど、90年代以降の松田聖子は"リカ"に反転したのです。ちなみに、小倉千加子の「松田聖子論」が書かれたのは89年。ドラマ平成版の2年前でした。この時代のフェミニストたちも、おそらくリカの生き方を支持し、さとみのような女性像を糾弾していたのだと思う。◇それは、従来の「古典的な女性像」に対する反動の時代でした。だから、さとみは、あざとい「おでん女」だと糾弾された。現実に有森也実を脅迫する視聴者までいたそうです…(笑)当時は、まだネットも普及してなくて、メディアがそういう「世論」を一方的に流布した疑いもあります。さとみへの批判がいまでも有効だと思ってる評論家がいるなら、それは、おおむねバブルの生き残りでしょう。いま見返すと、カンチに「行かないでくれ」と言わせようとしたり、別れ際にいつまでも同情や後ろ髪を引くリカのほうも、相当にあざといのですが…(笑)。でも、そのころは、まだ「女子力」を率直に肯定する価値観がなかったし、まして「あざとカワイイ」なんて概念もなかったから、さとみのような古典的なキャラクターこそが、上昇志向を強めていた当時の女性から見れば、自分の恋の勝利を妨害する「仮想敵」でしかなかった。上昇志向の強かったバブル期の若い男女は、異性にだけでなく、同性のライバルに対しても、いかにして優位に立てるのかをたくらんでいたのです。◇リカと三上は、最終的に恋愛ゲームに負けてしまいます。しかし、平成版のときには、その意味がまったく理解されなかったと思う。むしろ、リカこそが勝つべきであって、さとみのような女は断じて負けるべきだと思われていた。令和版でも、三上はいちおう勝たせてもらえているし、リカも一概に負けたとは見えないように作られている。…でも、ほんとうは負けています。◇この物語には、男女2対の組み合わせが出てくるのだけど、男のほうがマウントを取る「三上&さとみ」の関係と、女のほうがマウントを取る「リカ&カンチ」の関係が、たがいに逆転した形になっています。「三上&さとみ」が男性優位の古典的な関係だとすれば、「リカ&カンチ」は女性上位の新時代の関係を象徴していた。男たちが女を振り回してきたのとは逆に、リカは、カンチを、自在に振り回したのです。これは当時の女性にとって、さぞかし痛快に見えたはず。同時に、それは「マイフェアレディ」を逆転したような関係でもある。つまり、都会の女が、田舎の青年を成長させる話なのです。リカは、カンチを都会の男へと成長させます。ただし、(イライザはヒギンズ教授のもとへ帰ってきたけれど)カンチは、リカのもとへ帰ってきません。リカはカンチに捨てられる。もとはといえば、リカを育てたのは和賀部長だったかもしれませんが、リカも、和賀のもとには帰らなかったのです。和賀はリカに捨てられた。◇そもそも、リカがカンチを選ぶのも、三上がさとみを選ぶのも、相手が「マウントの取れそうな異性」だと思えばこそです。逆に、リカと三上がくっつこうとしないのは、たがいに「マウントの取れなそうな相手」だと見抜いているからです。カンチは優柔不断で頼りない田舎者だけど、そうであればこそ、リカは、カンチを選ぶのです。さとみも弱さゆえにあざとくて野暮ったいけれど、そうであればこそ、三上は、さとみを選ぶのです。どちらにしても、相手に弱さや従順さを期待しています。しかし、それはほとんど支配欲であって、ほんとに「愛」と呼べるものかどうかは疑わしい。◇たしかに、カンチとさとみは、リカや三上のような「主体的な生き方」に憧れたでしょう。なので、一見すると、カンチやさとみのように従属的な人間のほうが、リカや三上みたいな主体的な人間に依存してるのだと思ってしまう。でも、実際は、その逆です。リカと三上が最終的に負けるのは、じつは彼らのほうがその支配関係に依存しているからです。毒親と子供の関係や、パワハラ上司と部下の関係の場合もそうだけれど、じつは支配している側が、支配されている側に依存するのです。毒親やパワハラ上司は、「子供はいつでも自分の言うことを聞くはずだ」「部下はいつでも自分の言うことに従うはずだ」と思い込むからこそ、ある日、突然、彼らが自分の言うことに耳を貸さなくなったとき、それまで自分を成り立たせていた基盤がぐらつくのを知る。しばしば毒親やパワハラ上司は、子供や部下への執着を「愛情」であるかのように偽装するけれど、それこそが依存にほかなりません。支配的人間というのは、要するに「かまってちゃん」の別名なのです。他人に依存してるという点では本質的に何も変わらない。だから、最後には、支配している側が捨てられるのです。リカは、カンチに捨てられる。三上は、さとみに捨てられる。和賀は、リカに捨てられる。本来なら、ヒギンズ教授も、イライザに捨てられるべきですよね。その現実を受け入れられなければ、子供を支配し続ける毒親と同じです。◇恋愛が「勝ち負け」だというのは、否定しようにも否定しがたい、悲しい現実です。そして、それを極限的に突き詰めていくような「都会の恋愛」は、表向きはキラキラとして華やかに見えるけど、じつは、とてつもなく悲しくて、虚しい。いま見ると、このドラマは、恋愛で勝とうとする生き方そのものを否定してるように見える。かりにカンチとさとみが一時的な「勝者」だとしても、その勝利でさえ、けっして永続的なものではありえません。恋愛で勝とうとする生き方自体が、とてつもなく悲しくて、虚しくて、不毛なのだから、カンチとさとみの勝ちを誇るべきでもないし、リカと三上の負けを恨むべきでもない。異性に対してであれ、同性に対してであれ、恋愛で勝とうとするような生き方はやめたほうがいい。この「東京ラブストーリー」は、もっとも上昇志向の強かったバブル時代の遺物にほかならないし、令和版は、この物語を葬り去るためにこそ作られたのだ、とわたしは思います。…それはそうと、永田琴がこんなところで仕事してたとはっ!
2021.12.24
テレ東の「じゃない方の彼女」。なにげに第1話からずっと見ていました。秋元康の企画は相変わらずあざとくて、タイトルのセンスも良いとは思わないけれど、やはりテレ東のドラマ作りが上手い。とくに第11話は、描くべきものをしっかり描いた脚本。そこに「じゃない方」という概念もきっちり落とし込んでました。誰もが、誰かにとっての「じゃない方」かもしれない、…ってことですね。◇不倫相手の女子大生に翻弄され、大学の同僚にも翻弄され、妻と娘にも翻弄され、女子大生の友人にも翻弄され、実の母親にも翻弄され、…という、ここまでの展開はよく出来ていたし、あとは最終回をどう着地させるかですね。映像も綺麗でセンスがいいし、キャストもみんな魅力的だし、ここまではほぼパーフェクトな出来だと思う。◇とりわけ、このドラマは、濱田岳のエンターテイナーとしての魅力と可愛らしさを、遺憾なく魅せていました。いままで見た彼の仕事のなかでは最良だった。オープニングとエンディングの、ひとり語りと着ぐるみパンダとの掛け合いも可愛くておしゃれ。一方、山本美月は、「おじさんキラー」としての素質に期待されているのでしょうか?たしかに、なかなかの説得力です。そして、小山絵里奈の甘くて優雅でロマンティックな音楽も素敵でした。
2021.12.22
遅まきながら、Tverで「ゆるキャン△」第1期、ようやく全話視聴しました。くしくも、北川亜矢子の脚本作を同時に3本見ることになった。「ゆるキャン△」「東京ラブストーリー」「メルカリ」です。「東京ラブストーリー」はまだ視聴中。北川亜矢子は、技術的には申し分ない脚本家だなと思う。あとはオリジナル脚本で代表作が生まれるのを待つだけ。◇おりしも福原遥が、萌歌の次の朝ドラに決まりました。あまり予想してなかった人選だけど、もともとピチモ勢はNHKに強いし、まいんちゃん時代の貢献もあるとはいえ、それだけの理由で朝ドラ女優にはなれないだろうから、やはり「ゆるキャン△」はじめドラマの仕事が評価されたんだと思う。— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) November 25, 2021まいんちゃんが舞ちゃんを演じるらしい。#福原遥 pic.twitter.com/VOG4bt9Y5P— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) November 28, 2021◇それにしても「ゆるキャン△」はすぐれたコンテンツ。原作は2015年に描かれています。富士山が世界遺産になった2年後ですね。漫画版やアニメ版は観てないけど、ドラマ版は、テレ東ならではの技ありの出来でした。一話完結の面白さと気楽さだけでなく、仲間が増えていく通話ストーリーとしての面白さもあるし、小ネタやキャラ立ちも楽しいし、(鳥羽涼子が男には見えなかったけど)キャンプについての知的な関心も満たされるし、ご飯も美味しそうだし!さらにいえば、日本の女子高生の生態やファッションにかんする資料にもなっている。まさしく全方位的な魅力をもったドラマだと思う。これは国際的にも通用するコンテンツだなと思いました。
2021.12.01
新旧ふたつの「東京ラブストーリー」を見ました。91年の放送当時は、さほどブームに乗り切れてなかったし、ちゃんと見た記憶もないので、第1話を見るのは、たぶん今回が初めてだと思う。見た印象としては、「やっぱり坂元裕二は上手かったなあ」ってことです。最初からグイグイ引き込まれるような脚本でした。◇織田裕二の演じるカンチは、野暮ったい地方出身者。鈴木保奈美の演じる赤名リカは、やたらにポジティブな帰国子女。どちらも、東京という街からすこしズレている。そこが魅力だったと思います。当時、東京に住んでいた人の多くは、やっぱり地方出身者だったわけで、どこかしら東京とのズレを感じながら暮らしていたはずだし、そんな主人公への共感と、そこで繰り広げられるキラキラした恋愛への憧れが、社会的なブームになる理由だったのでしょう。とはいえ、視聴率的にみると、終盤こそ25~30%を記録しているものの、中盤までは20%前後をウロウロしてる程度で、そこまで突出した数字でもなかったんですね。◇今回の2020年版は、カンチ役に 不祥事前の 伊藤健太郎、赤名リカ役に石橋静河。伊藤健太郎は、わりと織田裕二の純朴なイメージに近い。でも、石橋静河のほうは、もとの鈴木保奈美のイメージとかなり違う。もともとタレントとしても、鈴木保奈美の華やかさにくらべて、石橋静河は地味な印象の人だし、91年版はファンタジックな印象が強いけど、20年版はリアリティを重視しているかもしれません。石橋静河は、「大豆田とわ子」のときもそうだったけど、今回も、ちょっと面倒くさそうな女に見えます。この違いこそが、今回のリメイク版の大きな特色になっていて、これを受け入れられるかどうかが、旧作ファンにとって踏み絵になるだろうと思う。さらに、今回は、カンチの幼馴染である関口と三上との関係に、より焦点が当てられていて、むしろそっちのほうに共感しやすくなってます。91年版では有森也実と江口洋介が演じてましたが、今回はこれを石井杏奈と清原翔が演じています。
2021.10.15
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