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さて今日は久々に株式投資本オールタイムベストシリーズをお送りします。第10位は、まぐれ(原題Fooled by Randomness ニコラス・ナシーム・タレブ著、ダイヤモンド社)です。
始めに言っておくと、この本は著者が前書きで書いている通り「私事のエッセイ」です。幾多の癖ある登場人物の内の誰かタレブなのか、それは最後の最後で明らかになるわけですが、それがまたこの本を本来あるよりも更に一次元上の「超・神レベルの名作」に押し上げています。
ところで名著「バブルの物語」の中で
著者で世界的な経済学者だったジョン・K・ガルブレイスは、どうして金融市場が熱狂をそしてバブルを繰り返すのかについて、 「金融に関する記憶は極度に短い」 からだと述べました。そして「人間の仕事の諸分野のうちでも金融の世界くらい、歴史と言うものがひどく無視されるものはほとんどない。」、「実際問題としては、金融上の記憶と言うものは、せいぜいのところ20年しか続かない。」と嘆きました。
このガルブレイスの金言はまさに至言であり、バブル崩壊から20年余を経て今再びアベノミクス下の相場で一山当てようとここ日本株市場で元気に戦う「お猿さん系優待族」の私が常に心に留めている名言でもあるわけですが、ガルブレイスは「じゃあ、どうして、世界中でも最もインテリジェンスが高い人達が集結しているはずの金融市場での記憶がそんなに、痴呆症患者みたいに短いのか?」という私の根本的な疑問には答えてくれませんでした。
タレブはその理由を、 「歴史から学ぶと言うのは人間の本性に反しているからだ。」 と喝破します。そして「人間は文化的な方法で経験をやりとりするようにはできていない。 大人になっても自分で痛い目にあわないと学ばない。 」と述べました。このタレブの人間というものに対する深い考察は本文中に様々に形を変えながら、「私達は確率論を理解できるようには出来ていない。」、「私達の脳は非線形性を扱うようには出来ていない。」と何度も登場します。そして私はこの本を読んで初めて、どうしてバブルが何度も起こるのかの説明がストンと腹に落ちたのでした。
また、最近多くの「中長期投資を標榜」している個人投資家の間で何故か 「週間パフォーマンス」を発表することが流行 のようになっていますが、この本を読むとそれがいかに 「有害な行動」 であるかが良く分かります。例えば短期国債を毎年15%上回ることが確実に出来る投資家がいるとしても、彼の1週間でのパフォーマンスがプラスとなる可能性は50%を少し超える程度です。つまり週間パフォーマンスと言うのはポートフォリオのリターンではなくリスク≒ばらつきを観察しているに過ぎないということです。
これの何がいけないかというと、
苦しみ続け、メンタルがやられて燃え尽きてしまう危険性を高める
からです。最近のような地獄過ぎる相場だと尚更ですね。(笑)
平均的に言って
損失で人が感じる苦しみは同じ利益で人が感じる喜びの2.5倍の衝撃力を持つ
と言われています。
つまり毎週毎週自分のパフォーマンスを偏狂に細かく観察していると、 半分近くはマイナスとなり苦しみを感じることになる わけなので、
タレブ曰く 「情緒面で赤字が出る」
のです。週間パフォーマンスを発表している投資家の方達の多くがブログで 「ほとんどぼやきっぱなし」 なのがそれを如実に証明していますね。(笑) ちなみに世界一の投資家ウォーレン・バフェットの成績報告は年にたったの1回です。
また逆に、 何故損切りが良い投資行動であるか も同時に分かります。損切り100円に対して250円分の精神的マネーが貰えるのでこちらは、
「情緒面で黒字が出る」
んですね。
他にもこの本を読むと、 インデックス投資というのは「美意識に欠ける宗教」のようなもの であり、だからこそ多くのアクティブ投資家がそれに対して「本能的にムズムズ」した感覚を持つんだなあ、などと言うことも良く分かります。とにかくこの本の素晴らしさは突出しています。まぐれを読まずに株式市場で戦うのは、
「自分が猿であると知らず、鏡を見ずに市場に留まっている。」
のと完全に同義ですね。未読の方は是非。
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