ミステリの部屋

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2005年05月17日
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テーマ: お勧めの本(7417)
僕の飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。
家にたくさんあるドアのどれかが夏に通じていると信じているのだ。
1970年12月3日、このぼくもまた夏への扉を探していた。
最愛の恋人には裏切られ、仕事は取りあげられ、生命から二番めに大切な発明さえ騙しとられてしまったぼくの心は、12月の空同様に凍てついていたのだ!
そんなぼくの心を冷凍睡眠保険がとらえたのだが……。


SFはあまり得意ではありません。けれども、そんなことを感じる前にこの作品のテンポにすっかりはまっていました。
だから、作者がSFの巨匠であることも最近まで知りませんでした。

主人公はお手伝いロボットなど最先端のものを発明する優秀さを持っていますが、うかつに人を信じたためにひどい目にあってしまいます。
仕事も恋も軌道にのって、これからというところですべてを失って放り出されてしまうなんてひどすぎるしうちです。

けれども、そのままやられっぱなしではありません。
思いもかけない手段を使って実行する巻き返しは痛快そのものです。

手痛い裏切りにあっても、人を信用しなければなにもできないと言い切る主人公に涙し、読み終えたあとは不思議な幸福感に満たされました。

忘れてはならないのが飼い猫ピートの存在。
雪の季節が嫌いで、夏へ通じる扉がきっとあると信じて家にある11の扉を一つ一つ開けさせないと気がすまないというピートは、わがままでたくましくて頼りになる相棒です。
彼なしではこの物語はありえません。

この作品はだいぶ前に書かれたので現実が年を追い越していますが、気になりません。
うまくいかないことがあったり、自分が嫌になったりしたとき、今でも私たちは夏への扉をさがしています。

そんなときにこの本は世代を超えて、信じてみようと呼びかけてきます。
あきらめず何としてもやりとげようと行動を起こせば、きっと夏への扉がみつかることを。

☆本を読んでしあわせな気持ちになりたい人におすすめ。


夏への扉( 著者: ロバート・A.ハインライン / 福島正実 | 出版社: 早川書房 )
夏への扉( 著者: ロバート・A.ハインライン / 福島正実 | 出版社: 早川書房 )







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最終更新日  2008年11月20日 21時20分18秒
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