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2021.03.01
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​​​​​​​​​​ ​​  高橋源一郎「読むって、どんなこと?(その2)」(NHK出版)


高橋源一郎「読むって、どんなこと?」 (その2) 「つづき」 ですので、裏表紙を貼ってみました。時間割と「テーマ」が読み取れるでしょうか。​
 それぞれの授業で、学校の教室の勉強では「読めない」テキストが使用されています。
​​ ​  1時間目 「簡単な文章を読む」 というテーマの授業ですが、テキストは オノ・ヨーコ「グレープフルーツ・ジュース」(講談社文庫) です。​​​
​​ ぼくがこれまでに燃やした本の中でこれが一番偉大な本だ。
ジョン・レノン 1970年 ​​
​ ​という言葉で始まる本だそうですが、 オノ・ヨーコさん 「簡単な文章」 の例はこうです。​​
​「地下水の流れる音を聞きなさい。」​​​
​​ ​これに対して、学校でならう詩の中で、ある時期、まあ、今でもかもしれませんが、代表的な人気を誇った 黒田三郎さん のこの詩が対比されます。​​
紙風船    黒田三郎

 落ちて来たら

 今度は
 もっと高く
 もっともっと高く
 何度でも
 打ち上げよう

 美しい
 願いごとのように
二つの詩、あるいは詩(のような文章)と詩が比較されて論じられますが、興味が湧いた人はこの本を探して読んでみてください。学校の先生は、​​何故、 オノ・ヨーコ の文章を教室では扱われないのでしょう。
 そういう問い方を 高橋先生 はするのですが、おわかりでしょうか。​​


​  2時間目 「もうひとつ簡単な文章を読む」 時間です。​
​​テキストは哲学者の 鶴見俊輔 「もうろく帖(後編)」(編集グループSURE) からの引用です。​​
​ お読みになる前に (その1) で引用した 「そのときの人ぶつのようすや気もちを思いうかべながら読みましょう」 という、小学生2年生に対する読み方の指針を思い出してみてください。​
2005年11月4日
 友は少なく。これを今後の指針にしたい。
 これからは、人の世話になることはあっても、人の世話をすることはできないのだから。

2011年5月20日

 自分が遠い。

​2011年10月21日​

 わたしの生死の境に立つとき、私の意見をたずねてもいいが、わたしは、わたしの生死を妻の決断にまかせたい。
 ​​​​最後の 10月21日 の文章が、 鶴見俊輔 の絶筆だそうです。この文章を書いた6日後、脳梗塞を発症し、 「ことばの機能」 を失い、 「書く」 ことや、 「話す」 ことができなくなった老哲学者は ​「読む」​ ことだけはできたそうです。最後の数年間、 2015年7月20日 93歳 でなくなるまで、ただ 「読書の人」 であったようです。​​​
​​​​  高橋先生 はそんな 鶴見俊輔 の姿を思いうかべながら 「読む」 ことについて問いかけています。この 「文章」 「そのときの人物」 になって 「読む」 とはどうすることでしょう。​​​​最後まで本を手放さなかった哲学者を思いうかべて考えてみてください。
 またしても長くなっていますね。ここからは、できるだけテキストだけ紹介します。
​ 
3時間目 「(絶対に)学校では教えない文章を読む。」 というテーマです。​
​​​テキストは 永沢光雄「AV女優」(文春文庫) から、 刹奈紫之(せつなしの) さんという人のインタビュー。
 はい、間違いなく学校では教えません。初めてお読みになる方は「アゼン」となさるんじゃないかと思います。しかし、なぜ、学校では読まないのでしょう。
 ぼくは読んだことがありますが、そこには 「本当のこと」 が書かれていて、きちんとお読みになれば、実はすごいインタビューだということはわかるのですが、教室で読もうという発想にはなりませんでした。なぜでしょう。​​​

​​​
 4時間目 「(たぶん)学校では教えない文章を読む。」 というテーマですが、テキストの 坂口安吾「天皇陛下にささぐる言葉」(景文館書店) は、授業で扱うには、かなり度胸がいることがすぐにわかります。同じ作家の 「堕落論」 を教室で読むことはあっても、この文章を​​教室に持っていくことはためらわれます。なぜでしょう。
 ぼくは、もし、 ​高橋先生​ が​​この話をテレビかラジオであっても、実際に話したことをNHKが放送したのであれば、NHKを見直します。
​  3時間目 の文章と 4時間目 の文章には、 「私たち」の社会 が隠そうとしている 「なにか」 について、本当のことを書いているという共通点があります。そのことを思いうかべてながら 5時間目 のテキストを読むと 高橋先生 が語ろうとしている 「なにか」 が見えてくる気がします。
 ​

​​​  5時間目 のテーマは 「学校で教えてくれる(はずの)文章を読む」 です。テキストの 武田泰淳「審判」(小学館) は、手紙形式の告白小説ですが、 「そのときの人ぶつの気持ち」 になることがまず可能な作品であるかどうかと考え込んでしまいました。 
夏目漱石 「こころ」 の第三部も同じ形式の告白小説ですが、あの 「先生」 の気持になることは可能なのかどうか、と考えられればおわかりだと思いますが、実は、限りなく難しいわけです。
 その上、この作品は戦場で人を殺すことが平気になった男の告白なのです。戦後文学には、他にも同じような「告白」がありますが、本当に 「読む」 ことができているのでしょうか。​​​

​ この辺りから 高橋先生 「考えていること、語ろうとしていること」 が見え始めたような気がしました。とりあえず、今日はここまでで、 (その3) につづきます。
 ​ (その1) ・​ (その3) にはここをクリックしレ下さい。


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最終更新日  2021.09.05 22:58:36
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