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★『 共喰い 』 田中慎弥★『 道化師の蝶 』 円城 塔芥川賞作品を読む為に「文藝春秋」を買った。2003年の 『 蹴りたい背中 』(綿矢りさ)と『 蛇とピアス 』(金原ひとみ)の「超若」女子ダブル受賞で話題になった時以来だ、…「文藝春秋」なんか買うのは。この時は、若い女の子たちの作品に余り魅力を感じず、落胆した覚えがある。今回もダブル受賞だが、受賞直後にやたらとテレビ報道で目立ったのは、片方の田中氏ばかりで、しかも、作品の内容云々よりも、「石原都知事批判発言」ばかりが取り上げられた。ヒドい番組だと、もう一人受賞者がいるってことすら、ろくに伝えていなかった。はっきり言って受賞者が田中氏だけだったら、わざわざ「文藝春秋」なんか買わないのだが、NHKの情報番組で、もう一人の受賞者である円城氏がゲスト出演していて(至って温厚そうな人)、物理学者から小説家に転向、という経歴が興味深かったので、買ってみる気になった。一読した印象とすれば、両作品とも、文章(文体)自体は割と好きなタイプ。冒頭に名前を出したついでに引き合いにすると、綿矢りさ(『 蹴りたい背中 』)の、やたらと比喩表現で飾り立てた文章が私的には嫌いだったので、そういう意味では比較的、読みやすく、情景が目に浮かびやすかった。ただ、内容的に言うと、田中氏の『 共喰い 』は、私の最も苦手な「暴力的な性衝動」がテーマとなっているので、余り共感は出来ず。こればかりは、ど~にも、生理的に好きになれないので、どうしようもない。純文学において、「性衝動」がやたらとテーマにされるの自体がゲンナリする。いっそ、ポルノなら、まだ目的は理解できるが、個人的な異常性愛など、わざわざ文章にしなくても、各人が心の中に秘密にしておけばヨロシいのでは?…と、思ってしまう。以前、花村萬月の小説が好きだという方が、代表作を何冊か貸して下さり読んだことがあるが、まあ、読み慣れれば内容的には結構、面白いのだが、どうにも暴力的な性描写が多くて、イマイチ引いてしまう場面が幾つもあった。円城氏の『 道化師の蝶 』の方は、「難解」という評判に、少々、構えて読み進めたが、文章自体が読みにくいわけではなく、読んでいる最中は結構面白いし、不思議とワクワクさせられる。ただ、終盤になって混沌としてきて、結局は、よく分からなかった、というのが正直なところ。どこかに辿り着けそうで辿り着けなかった「残念」感…。総合的に「文藝春秋」価格848円分の価値があったかと言えば、ビミョー。何しろ、こういう月刊誌の中の記事は、良くても「暇つぶし」程度にしかならない(読む気にすらならない記事の方が多い)。「所詮、人生の全ては暇つぶし(仕事も含めて)なんじゃないか」…と考えれば、哲学的だけれども。ま、「文藝春秋」からすると、話題を振りまいてくれた「田中慎弥 様々」だろうな。滅多に雑誌買わない私が買っちゃった位だし。【送料無料】共喰い価格:1,050円(税込、送料別)【送料無料】道化師の蝶価格:1,365円(税込、送料別)
2012年02月21日
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前回の日記に書いた『 プリズナー No.6 』や、過去にNHK BSで放送された『 ダメージ 』シリーズ(米2007年~)などは、トリックや犯人探しよりも、独特な映像表現で「ミステリー感」を増幅させ、成功しているサスペンスドラマだった。ストーリーだけでなく、視覚や聴覚から人を驚かせたり怖がらせたりできる点で、一見、映像媒体は優位にあるように見える。イギリスでは、名探偵ホームズや、クリスティー(ポワロやマープル)の推理小説が多くドラマ化や映画化されていて、私も、それなりに楽しく観ているが、私的には、「犯人探しの推理もの」は小説で読むのが、一番楽しめるような気がする。ドラマや映画だと、2時間程度の間に事件が展開してしまい、次々場面転換してしまうので、自分の推理が追いつかない。別に、何としても犯人を当てたいわけではないが、ヘンに振り返って考えていると、次のセリフや大事な情報を聞き逃してしまったりする。それに、映像作品だと、どうしても、俳優の「格」とか「扱い」とか「演技」が、犯人推定のヒントになりかねないのが実情だ。だから、クリスティー原作のテレビドラマは、極力、先に小説の方を読んでから観るようにしている。幸か不幸か、余程印象に残る作品でなければ、何年か経過していれば、あらすじも犯人も忘れてることが多いし(さすがに観ている途中でうっすら思い出すが)、犯人が分かっていても、演出方法含めて、それなりに興味深く観られる。内容を忘れてしまうのに、何の為に推理小説を読むのかと言うと、まあ、単なる暇つぶしだ。推理小説ほど、何も考えずに集中して読めて、読んでしまえば後腐れのない読み物は他に無い。特に外国(翻訳)の古いやつが良い。日本の現代物だと、細かい設定や捜査方法の粗探しをしてしまったり、文章の良し悪しが気になったりしてしまうので。ただ、気に入った作家のばかり読んでいると、傾向が段々分かってきて、トリック以前に犯人が薄々読めてしまうという問題も逆にあるが。それにしても、ホームズやポワロら、英国産の探偵は、散々映像化されるのに、エラリー・クイーン(米国)の映画化が少ないのは何故だろう。1970年代に、シリーズドラマ化はされたりしたらしいが(『エラリー・クイーン・ミステリー』 全24回)、『刑事コロンボ』ほど有名にはならなかったし、私自身、残念ながら観ていない。ひょっとして、著作権の問題だろうか?(クイーンは知っての通り、従兄弟2人の共同執筆なので、それぞれの遺族の意向が合わないとか…?)勿論、英国の方が、古い街並みや習慣含めて、映像がサマになるってこともありそうだが…。クイーンは探偵としては、ホームズやポワロやマープルと比べて個性に欠けるかもしれないが(割とフツ~の青年)、連鎖的に起こる殺人事件など、かなり最初から最後までスリリングな展開の作品が多いので、映像化にはもってこいのような気がするのだが…。時代的に古いということを除けば、推理ものとしても追跡ものとしても、『 ダ・ヴィンチ・コード 』なんかよりは、はるかに面白いと思うよ。ダメージ シーズン1 DVD BOX価格:5,399円(税込、送料別)DVD/国内TVドラマ/Yの悲劇/PCBC-61886価格:8,033円(税込、送料別)
2012年01月23日
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★『 海 』 小川洋子 (新潮文庫)脳の老化防止の為に、ブログを書いている。平日は毎日2時間、曜日によっては4時間近く電車に乗る必要があるので、乗車中に携帯で下書きを打つ。身を入れて書くなら、初めからPCで打つ方がずっと早いだろうが、携帯の方が、長い語彙候補が出やすく、楽な面もある。何より、電車の中では余り眠れない上に、気が散るので、毎回本を読むのも疲れる。色々思い出しながら、メール打ったり文章を書くのが、一番、時間の経過も早く感じるのだ。匿名ブログなら、知り合いに読まれる心配は無いし、思想信条には触れないようにし、どーでもいいテレビの感想文とか書いていれば攻撃されることもない(その代わり、まともに読んでくれる人も殆どいないが)。それでいて、ただ、日記帳やワープロに書き込むよりは、何となく、「宿題を提出したような達成感」が得られるので、生来、飽きっぽい私には都合が良いのだ。さて、冒頭で紹介した小川洋子の短編集の中の一編、『ガイド』。この小説の中の登場人物に「題名屋」を職業だと自称する老人が出てくる。他人の人生や、その人の「大切な一日」の為に、題名を付けてあげるだけの職業。小川さんの小説では、度々、突飛な職業が描かれるが、この短編を読むと、「題名屋とは、なんて素敵な職業だろう」と思えてくる。他人の思い出を聞き、最適な「題名」をつけてあげる。客にとっては、思い出を誰かに真剣に聞いてもらうこと自体が喜びであろうし、そのことを含めて、短い「題名」が心に残り続ける。ダラダラとした日記など書かなくても、その方が記憶として残るというのは本当かもしれない。<関連日記>2011.10.28. どうして本を読んで泣くのは嫌じゃないのだろう。・・・『 物語の役割 』小川洋子【送料無料】海価格:380円(税込、送料別)
2012年01月20日
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★『 源氏物語 』 紫式部(1001年頃)http://www.genji-nazo.jp/index.html『 源氏物語 』が映画化されて話題になっているようだが、生田斗真の光源氏ってどうなの?子役の頃から見ているせいか、ちょっと、スケール感ちっちゃいと言うか、色男を演じるのには違和感が。じゃあ、誰なら適役かと聞かれると困るけど。『 源氏物語 』は、高校時代に課題で「要約版」を読んだ位なので、全く語る資格はないのだが、当時は私もまだ「純情な乙女」だったので、光源氏の余りの「女たらし」っぷりに辟易してしまって、文学的な良さとか風流とか感じ取る余裕は全くなかった。特に、「紫の上」のエピソードなんか、完全にロリコンの児童監禁、性的虐待事件じゃん…とか思ったり。にしても、千年以上前の、一介の女房(使用人)の小説が、読み継がれ、後世に残るって、考えてみたらすごいことだ。紫式部が著者というのには異説もあるようだが、少なくとも宮中では、女性が文学に親しむだけの素養と慣習があった証拠とは言えるだろう。明治期の「家制度」の印象で、日本は男尊女卑思想が強いイメージが、内外であるかもしれないが、貴族や武家など上層階級の古い歴史をみると、女性の立場が存外、尊重されていた節が見て取れる。『 源氏物語 』でも著されているように、古代の天皇家や貴族は、一夫多妻だが通い婚だったので、「妻の姻戚」単位での権力闘争が盛んだった。武家では、鎌倉時代当初は、女子も財産相続権を持っていたという記録(現在の遺書にあたる「譲状」)が残っている。庶子(次男以下の男子)や女子にも所領を分割して与えていくうち、所領の細分化により財政が疲弊し、一族としての力が弱体化していくことに気付く。特に女子は、夫の家に入る婚姻により相続財産が嫁ぎ先に移ってしまうことが、より問題視された。それでも、南北朝時代前後までは、女子の存命中だけは一時的に所領を相続させ、死亡したら本家に返上するという「悔返(くいかえし)」制度などで女性の経済的地位は尊重されていた。中世の戦乱続きもあって、権力の一族本家への集中化が進み、段々と長子単独相続制度へと変化していったのだ。世の中の思想や慣習は、全てとは言わないが、経済的要因に左右されることが多い。【送料無料】パタリロ源氏物語!(第1巻)価格:410円(税込、送料別)
2011年12月06日
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★『 物語の役割 』 小川洋子著(ちくまプリマー新書)漫画以外で唯一、出版されたら必ず買うと決めている書籍(文庫版だが)が、小川洋子さんの著作だ。ベストセラー『博士の愛した数式』の映画化で、一躍、超有名作家となったが、私の場合、18年前位に偶然、入院先の病室に置いてあって暇つぶしに読んだ『妊娠カレンダー』(芥川賞受賞作)でファンになった。小川さんの小説の良いところは、変に小難しい言葉を遣わず、文章そのものが読みやすいこと。平凡な人物の日常の中に潜む、「悪意」や「切なさ」を平易かつ心に残る言葉と優しい語り口で描くのが上手い。今回読んだ『 物語の役割 』は、彼女が講演会などで語った「物語創作」に関する話をまとめたもの。随分前に買っておきながら、バタバタして読まずにいた。作家としての、小説を創り出す方法論自体も勿論、興味深いが、「物語は現実の中にある」という彼女の持論を導く為に、他の作家(素人含む)の著作をいくつか紹介しているのだが、その紹介の仕方が上手くて、とても読書欲を掻き立てられた。大体いつも、本は外出先や電車内で読むことが多いのだが、「小説創りについての本」という軽い気持ちで読み始めたら、中で紹介される著作やエピソードの一文一文が、いちいち感動的で、電車の中で涙が出そうになって困った。この本の中で紹介されている著作刊行物は、全て巻末に列記されているので、何冊かは、いずれ読んでみたいと思う。さて、タイトルで紹介した一文は、本文中の彼女自身の言葉。子供の頃、『きかんしゃやえもん』や『ごんぎつね』を繰り返し読んでは、その度に泣いた経験から気付いたことだそうだ。<引用>…弟と喧嘩したり、母親に叱られたり、転んで痛い思いをしたりして泣くのは全部嫌なことなのに、どうして本を読んで泣くのは嫌じゃないのだろう。嫌などころか、泣くと分かっていながら進んでページを開く。…(86頁)やはり、小説家になる人は子供の頃から、本に対する愛情や感受性が違うのだ。***************************<内容(「BOOK」データベースより)>私たちは日々受け入れられない現実を、自分の心の形に合うように転換している。誰もが作り出し、必要としている物語を、言葉で表現していくことの喜びを伝える。***************************【送料無料】物語の役割価格:714円(税込、送料別)【送料無料】妊娠カレンダー価格:440円(税込、送料別)【送料無料】博士の愛した数式価格:460円(税込、送料別)
2011年10月28日
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★ 『 ハーモニー 』 伊藤計劃 著(ハヤカワ文庫)早逝のSF作家、伊藤計劃氏の、第2作にして最後のオリジナル長編小説。以前評した『虐殺器官』で描かれた「虐殺の混沌の世界」後に続く、極端に市民の健康を管理された、一見平和な世界を描いている。『虐殺器官』に比べると、軍事技術などの細かい描写が減り、読みやすさは向上していると思う。内容と言うか、文章表現そのものがミステリアスで、工夫があり、ラストには色々な意味で感心させられた。ただ、私が読みながら感じていた短所(読み手によっては長所であるかもしれない)が、あとがきで著者のインタビューとして紹介されている通り、「ロジックを考えるのは好きだが、エモーションの部分が難しい」という点。つまり、キャラクターはロジックを語らせる為に捻出された感じがアリアリで、良い意味では無駄が無いが、キャラクターの魅力という点では、少し説得力不足で定型的。これは、『虐殺器官』でも少なからず感じられたことだった。また、話が核心に近づく度に、特定の事件の回想シーンに戻るという手法は両作品において頻繁に使われているが、これが、私には少々、まどろっこしい。勿論、それ相応の効果はあるとは思うが、時系列に沿ったストーリー運びにしていただいた方が、私的には気が散らなくて良いのだが。まあ、その分、余計な情景描写が少なくて、文章としては読みやすいとは思う。セリフや行動描写はそのまま、アニメ映画の脚本に使えそうなくらい、単純明快に目に浮かぶ。まさに、両作品の主人公とも、アクションアニメにしたら、「いかにも」なヒーロー(ヒロイン)が完成しただろう。最終的にロジックを理解、共感出来るかどうかは別だが…。正直、ストーリー(ロジック)に感銘したのか、文章表現的な「仕掛け」に虚を突かれたのか、自分でもよく分からない。もう一度読み返せば、もっと魅力が見いだせるかもしれないと思うのだが、イマイチ、2回読み返す程のモチベーションを持てないところが、私の感じてしまったキャラクターの薄さに起因するのかもしれない。ともかく、読後には、「やられた(なるほど)」感を味わえるとともに、若干の「鬱」感も残るストーリーだった。(この作品を書き終えて、じきに著者が亡くなったという事実も、こうした思いを増幅させる)総合的には『虐殺器官』より、私はこっちの方が面白かった。…ところで、物語全体の価値に影響するものではないが、「いいトシして」とバカにされそうだけれど、私は未だに、ストレート過ぎる性描写(性暴力シーン)が苦手だ。純文学とか衝撃作とか言われる小説には、しばしば、過激な性描写や暴力描写が見られるが、その辺を描かないと、「哲学性」って成り立たないもんなのだろうか?しかも、大抵の場合、そういうものは、映像的な描写よりも、文章で読まされる方が却ってショッキングなのだ。…私にとっては。この作品で描かれる、そうしたシーンは、私が言うほど酷い部類ではないかもしれないが、もしも、映像化(アニメ化)するとしたら、障壁になりうるだろうとは思う。まあ、実際は、映像化するにあたっては、そのこと以上に、もっと「大きな壁」があるのだが…(読めば分かる)。<関連日記>2011.10.7. SFって何ぞや?・・・『 虐殺器官 』伊藤計劃***************************<内容>21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰にただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。第30回日本SF大賞受賞、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門受賞作。***************************【送料無料】ハーモニー価格:756円(税込、送料別)
2011年10月26日
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★『 虐殺器官 』 伊藤計劃 著(ハヤカワ文庫)2009年、34歳の若さで早逝したSF作家、伊藤計劃氏の著作『ハーモニー』が、米国「フィリップ・K・ディック記念賞」の2010年特別賞を受賞した、というニュースを見て、まずは、著者のデビュー作である、この作品を読んでみた。Amazonでは、「評判通りの傑作」と大絶賛するレビューが多い反面、辛辣な評価も相当数、見られる。私は、「低い評価をする人の気持ちの方が、よく分かる」けれども、「傑作と言う人の気持ちも分からんではない」という、どっちつかずの卑怯な立場だ。「ゲーム的」「アニメ的」であり、「軍事オタクの知識披露」であり、「核心部分の説明放棄」であるのは否めず、評価の低いレビュアーの言う通り、些末な描写が多すぎて、読んでいて、少々、ゲンナリしてしまう部分が多々あった。また、これは致命的かもしれないが、話の展開も、さほど斬新とは言えず、SF小説に疎い私であっても、途中から先が読めてしまった。元々、SF「小説」は余り読まないのだが、そもそも、SFとは何ぞや…ということまで考えこんでしまった。瞬間移動やらタイムマシーンよりは、はるかに実現可能そうな近未来の軍事技術を事細かに詳述している割に、肝心な部分が抽象的とあっては、SFと思って読んだ読者からは、アンフェアという印象に終わるのも無理はない。(ただ、そもそも、SFとは全て科学的に説明をつけるべきものであるのか、と問われると、私は答えられないが)末期癌と闘いながらの短い執筆生活だったということなので、やはり、発表を急いでしまったところがあるのだろうか。ところどころに、文才の素晴らしさを感じ取れる部分があるだけに、素直に「惜しい」、と思う。正直言うと、400ページもあるこの作品を、100ページ位に削ぎ落とすことができたら、同じストーリーでも、ずっと、秀逸な「文学」になったのではないかと思ってしまうのだ。トラウマシーンの繰り返しが多いのは、アニメや映画といった映像コンテンツを意識した、著者の「狙い」だと思うのだが、読み手の「記憶力」「読解力」が軽んじられているような、過剰さ、クドさを感じてしまう。そもそも、最近の若い作家は、(芥川賞作家にもいるが、)どうも言葉が多すぎる。これは明らかに、ワープロの功罪だと思う。何でもかんでも比喩や、難解な表現や、モノローグで飾りたてればいいってものではないだろうに、推敲を重ねるうちに、後から後から言葉を継ぎ足したくなるのだろうか。私も大概、文章が冗長になってしまう方だが、読み手の殆どいないような個人の日記(ブログ)と文学とはワケが違う。ともかく、余りの早世ゆえ寡作である著者の最後の長編、『 ハーモニー 』の方に、期待したいと思う。それから、この際、「SF小説」とは何ぞやを理解する為に、『2001年宇宙の旅』を小説で読んでみようかなあ…。***************************<Amazonでの説明>http://www.amazon.co.jp/%E8%99%90%E6%AE%BA%E5%99%A8%E5%AE%98-%E3%83%8F%E3%83%A4%E3%82%AB%E3%83%AF%E6%96%87%E5%BA%ABJA-%E4%BC%8A%E8%97%A4-%E8%A8%88%E5%8A%83/dp/4150309841/ref=cm_cr_pr_product_top大量虐殺を誘発する、謎の器官とはいったい? 米国情報軍大尉はその鍵を握ると目される謎の男を追って、チェコへと飛ぶが……。現代における9・11における罪と罰を描破して大きな話題を読んだゼロ年代最高のフィクション。***************************【送料無料】虐殺器官価格:756円(税込、送料別)
2011年10月07日
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