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>>>人は苦境に陥ったときこそ真価が問われる 大塚初重
『弱き者の生き方』
p257~p258
八十歳を過ぎた二〇〇七年の二月、編集のかたから五木寛之さんとの対談の話が舞い込んだ。文壇で大活躍中の著名な作家である五木さんと、カビが生え出したような老考古学者との対談は、むしろ五木さんの足を引っ張り、その名声を損なうような結果になることが明らかなので、私は困惑し二の足を踏んだ。「えっ、何で私が」と問いただすと、一昨年の八月にNHKのラジオ番組で二日間にわたり放送した私の遭難の話を、五木さんが偶然聴いてくださったそうだ。
暗夜、アメリカ潜水艦に撃沈された船が燃えながら沈むとき、船中から脱出しようとした私の脚にすがる人を、燃える船底へ蹴り落としてしまった。そして私は助かったのである。
その重たい、忘れようにも忘れられない罪悪感を背負って、十八歳から今日まで生きてきた思いをラジオで語ったのだが、五木さんの胸に私の言葉が重たくのしかかったようだ。五木さんはかねがね、こうした体験者と死や人生について話をしたかったということだった。
五木さんについて私が知っていることは、『青春の門』やエッセイ集『風に吹かれて』以来、いくつかの著書を通じて、十二歳の五木少年が幾多の苦労を重ね、敗戦と日本への引き揚げという生き地獄のような苦難の末に、著名な大作家になられたということだった。それは凄い波瀾万丈の人生であったに違いないと思い、共感するところがあったので、私は恐るおそる承諾したのだった。
いま連日にわたる長時間の対談を終えて、五木さんに対する尊敬の念から、五木先生と一言うほうがよかった、と反省をしている。とにかく対談を終わると、私の心は満足感でいっぱいになった。あふれるばかりの温かい心の泉が湧いてくる感じなのである。
『弱き者の生き方』
大塚初重 五木寛之 p136~137
大塚
で、ヘルメット部隊と対決するでしょう、学校行って、どこで拉致されて、監禁されるかわからない。そうしたら、早稲田大学で考古学をやっていた滝口宏っていう、学生部長までやった先生から電話がかかってきたんです。
「大塚さん、あんたは明治の副学生部長やってるんだってね。たいへんだろう。家出るときにポケットに鰹節を入れていきなさいよ。学生にとっつかまって、一晩や二晩糾弾されて、どっかの教室に軟禁されても、水飲んで、鰹節しゃぶってりや、学生がへたばっても絶対残るから」って。
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大塚初重:
大塚 初重(おおつか はつしげ、1926年(大正15年)11月22日 - )は、日本の考古学者。明治大学名誉教授。主として弥生時代と古墳時代を研究領域としている。
海軍一等兵曹として,米軍潜水艦に二度も撃沈されながらも九死に一生を得る。復員後、特許庁で働きながら明治大学文学部考古学専攻卒業。明治大学大学院文学研究科考古学専攻修士課程修了、1957年(昭和32年)、明治大学大学院文学研究科考古学専攻博士課程を修了、文学博士号を取得する。 長く明治大学教授をつとめ、文学部長や体育会硬式庭球部長にも就いた。
五木 寛之:
五木 寛之(いつき ひろゆき、1932年9月30日 - )は、日本の小説家・随筆家。福岡県出身、旧姓は松延(まつのぶ)。作詞や仏教・浄土思想に関する著作も多い。
1932年、福岡県八女郡に生まれる。生後まもなく朝鮮半島に渡る。第二次世界大戦終戦時は平壌にいたが、ソ連軍進駐の混乱の中では母死去、父とともに幼い弟、妹を連れて38度線を越えて開城に脱出し、1947年に福岡県に引き揚げる。
引き揚げ後は父方の祖父のいる三潴郡、八女郡などを転々とし、行商などのアルバイトで生活を支えた。1952年に早稲田大学第一文学部露文学科に入学。住み込みでの業界紙の配達など様々なアルバイトや売血をして暮らした。
1966年、モスクワで出会ったジャズ好きの少年を題材にした『さらばモスクワ愚連隊』により、第6回小説現代新人賞を受賞。1967年にソ連作家の小説出版を巡る陰謀劇『蒼ざめた馬を見よ』で、第56回直木賞を受賞。1967年には『青年は荒野をめざす』を『平凡パンチ』に連載し、同名の曲を自身の作詞でザ・フォーク・クルセダーズが歌ってヒットした。1969年には雑誌『週刊現代』で『青春の門』掲載を開始。
2002年には菊池寛賞を受賞した。同年、英語版『TARIKI』が2002年度ブック・オブ・ザ・イヤースピリチュアル部門を受賞した。2004年には仏教伝道文化賞を受賞した。2009年にはNHK放送文化賞を受賞した。2010年には『親鸞』上・下により、第64回毎日出版文化賞特別賞を受賞した。
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