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バンドリーダーからシンガーとして、ライオンのヴォーカル実力発揮盤 サウスサイド・ジョニー(Southside Johnny、本名ジョン・ライオン)初のソロ・アルバムという触れ込みで1988年に発表されたのが本盤『スロウ・ダンス(Slow Dance)』である。サウスサイド・ジョニーは、ニュージャージー出身で、ブルース・スプリングスティーンの盟友として知られ、70年代からジュークス/アズベリー・ジュークスとともに活動してきた。大ヒットはないものの玄人向けの評価が高く、ジョン・ボン・ジョヴィが傾倒しているのは有名。そんなサウスサイド・ジョニーが40歳代を迎え、バンドマンではなく一人のシンガーとして新たな挑戦そして飛躍をしたのがこの『スロウ・ダンス』であった。 アルバム表題(タイトル曲6.から採られたもの)が示唆しているように、本盤はスローおよびミディアム・テンポの曲を集めた1枚。何より1曲1曲の完成度が高い。通して聴くと各曲の個性が強く出てこないようにも聞こえるのだが、その原因はいま述べた二つのことによる。つまり、アップ・テンポのメリハリが大きくつく曲がないことと、捨て曲がない出来映えのために、通して聴いた時に曲の個性がわかりにくいのであって、それは全曲が素晴らしい出来であることの裏返しでもあるという皮肉な仕上がりとなっている。 そんな中で注目曲を個人的な好みでピックアップしてみると、まずは3.「エイント・ザット・ペキュリアー」。マーヴィン・ゲイのカヴァーだが、ホーン・セクションが効果的でソウルフルなヴォーカルを聴かせてくれる。表題曲の6.「スロウ・ダンス」はいかにもサウスサイド・ジョニー得意のアメリカン・ロック・バラード調。少し変わったところでは、7.「ユア・プレシャス・ラヴ」が面白い。50年代のヒット・ソウル・バラードを原曲の雰囲気を壊すことはしないでおきながらも、完全に“サウスサイド節”になっている。10.「ウォーキング・スルー・ミッドナイト」は地味ながらも盟友ブルース・スプリングスティーンとの共作で、スプリングスティーン的な詩的世界(ただし作詞はサウスサイド・ジョニー)がいい。 繰り返しになるが、他の曲も素晴らしくて捨て曲がないので、以上はあくまで個人的な好みでいくつかピックアップしたものに過ぎない。いずれにも共通して言えるのは、汗がほとばしるようなアズベリー・ジュークスとのバンドでのイメージとは異なり、抑制を聴かせながらもサウスサイド・ジョニーがこんなにソウルフルであったり、大らかであったり、また時には繊細なヴォーカルを聴かせることができるという点である。ヴォーカリストとしての力量がいかんなく発揮されたこの1枚は、アメリカン・ロック系のファンのみならず、ソウル・ヴォーカル系やAOR系が好きな人にも向く好盤だと思う。アメリカン・ロックという意味では、ドン・ヘンリーのバラードのようにさらりとはならず、ソウルという意味では、マーヴィン・ゲイのコピーに陥るわけでもなく、AORという意味ではボズ・スキャッグスのように甘々になっているわけでもない、サウスサイド・ジョニーにしかできない独自の世界が見事に展開されている。80年代男性ヴォーカルものとしては、五指に入る陰の名盤である。[収録曲]1. On The Air2. Siren Of The Night3. Ain't That Peculiar4. Little Calcutta5. Act Of Love6. Slow Dance7. Your Precious Love8. No Secret9. When The Moment Is Right10. Walking Through The Midnight1988年リリース。関連過去記事:サウスサイド・ジョニー&ジ・アズベリー・ジュークス・フィーチャリング・リトル・スティーヴン「破れた心(ブローク・ダウン・ピース・オブ・マン)」サウスサイド・ジョニー&ジ・アズベリー・ジュークス 『ベター・デイズ』サウスサイド・ジョニー&ジ・アズベリー・ジュークス with リトル・スティーヴン&ブルース・スプリングスティーン 「イッツ・ビン・ア・ロング・タイム」 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓
2010年10月21日
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ケニー・バレルの諸作の中でも個人的に特別な愛聴盤 ケニー・バレル(Kenny Burrell)の最良の盤はと問われると、丸3日間(否、せめて1週間?)は頭を抱えることができそうだが、間違いなくその1枚の候補にするかどうか迷うだろうと思うのが、本盤『ブルージー・バレル(Bluesy Burrell)』である。1962年に録音されたもので、まだまだ伸び盛りの当時30歳過ぎのバレルが、既に大御所だったコールマン・ホーキンス(Coleman Hawkins)と全7曲中4曲で共演しているという作品である。 本盤の特徴と言えそうな点を順に見ていくが、結論から述べてしまうと、全体を通じてダンディでシャレている。それはいろんな要素が交わりつつも、最後は独自色に染まっているというところにあるからと言っていい。まず、一点目の特徴としては、上述の通りの共演盤であるということ。ホーキンスのテナーが聴けるのは4曲だが、それらはいずれもどこか自制的である。バレルはこの録音以前にも優れた共演盤(例えばこちらやこちらやこちら)をいくつも残しているが、相手の良さを消さずに自分の良さも消さない演奏は見事というほかない。このことは本盤にも当てはまり、上の“自制的”というのは決して悪い意味ではなく、ホーキンスもバレルもいい意味で互いを意識しあった結果だったということなのだろう。 二つめに、演奏の精度の高さが挙げられる。ホーキンスとバレルの演奏だけでなく、ピアノのトミー・フラナガン(当時はホーキンスのグループのレギュラー・メンバーだった)をはじめとする面々がとにかく安定している。そして、三つめは、“中途半端な”ラテン風味。コンガのレイ・バレットが4曲に加わっていて、冒頭の1.「トレス・パラブラス」(「キサス・キサス・キサス」でも知られるキューバ人作曲家オスバルド・ファレスの作)も、そういう意味では、典型的な選曲である。ところが、実際に演奏を聴いてみると、“これがボサ・ノヴァ?”という声が聞こえてきそうなぐらいジャジーでブルージーさが温存されている。つまりは、“中途半端な”ラテンのフレーバーというのも、決して悪い意味ではなく、ラテンに化けてしまうことなく、あくまで“ご飯の上のふりかけ”的なちょっとしたフレーバーに止めているところがミソなのだと思う。 それでもなお、この肩の力の抜け具合は真剣なジャズとは言えん!という、至極まっとうな意見もあるかもしれない。けれども、演奏がシャレているというだけでなく、それが一貫したダンディズムに結びつているのは、やっぱり本盤のよさで、何度繰り返して聴いても筆者が心打たれる部分であったりする。[収録曲]1. Tres Palabras2. No More3. Guilty4. Montono Blues5. I Thought About You6. Out of This World7. It's Getting Dark[パーソネル、録音]Kenny Burrell (g), Coleman Hawkins (ts, 1., 4., 5., 7.), Tommy Flanagan (p), Major Holley (b), Eddie Locke (ds), Ray Barretto (conga, 1., 4., 6., 7.)1962年9月14日録音。 デサフィナード+ブルージー・バレル [ コールマン・ホーキンス ] 【輸入盤CD】【ネコポス100円】Kenny Burrell & Coleman Hawkins / Bluesy Burrell (ケニー・バレル) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2020年01月11日
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90万アクセス記念~いま聴きたいあのナンバー(その5) 5回目の今回は、エルトン・ジョン(Elton John)の2枚組大作にして超名作の『黄昏のレンガ路(Goodbye Yellow Brick Road)』から、オープニング・ナンバーをお聴きください。メドレー形式になった「葬送~血まみれの恋はおしまい(Funeral for a Friend/Love Lies Bleeding)」です。1973年リリースの作品ですが、エルトンの才能開花が真っ盛りの頃のナンバーで、曲も演奏も文句の付けどころのない出来です。 前半の「葬送」は、そのタイトルからうかがえるように、荘厳な雰囲気で始まり、演奏は次第に盛り上がり、やがて後半の「血まみれの恋はおしまい」へとつながっていきます。この後半部分がまた、実にエルトンらしさの発揮されたメロディとノリのナンバーに仕上がっています。 今回は、後年のライヴでの、このメドレーの演奏シーンもご覧ください。ライヴでの再現性が難しそうな楽曲だと想像するのですが、そんなことはみじんも感じさせません。これもまた、エルトン・ジョンの才能ということなのでしょうか。 [収録アルバム]Elton John / Goodbye Yellow Brick Road(黄昏のレンガ路)(1973年) 黄昏のレンガ路/エルトン・ジョン[SHM-CD]【返品種別A】 下記のランキングに参加しています。 お時間のある方は、“ぽちっと”応援よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2015年12月01日
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ナチュラルなスウィングを楽しむ、白人バッパーによる快盤 『ライヴ・アット・カフェ・ボヘミア』(1955年)、『ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード』(1956年)のさらに翌年、つまりは1957年に吹き込まれた、ジョージ・ウォーリントン(George Wallington)のリーダー作(ザ・ジョージ・ウォーリントン・クインテット)がこの『ジャズ・アット・ホッチキス(Jazz At Hotchkiss)』である。 ドナルド・バード(トランペット)にフィル・ウッズ(アルト・サックス)という二管は前年の『~キャリッジ・トレード』と同一。その意味では、ベースとドラムが入れ替わってはいる(本盤ではそれぞれノビー・トータとニック・スタビュラス)ものの、『~キャリッジ・トレード』からの延長線上にある作品とも言える。 21世紀の今時、白人・黒人といった区別が相応しくないのは確かだし、別に差別的な(もしくは人種主義的な)意味ではないことをお断りするものの、ドナルド・バードを除き全員が白人系ミュージシャンというのは、本盤のメンバーの一つの特徴と言えるだろう。けれども、イースト・コーストのジャズのエッセンスを、クールに(といっても、無論クール・ジャズという意味ではない)、かつバランスよく示しているというのは、ウォーリントンの個性と湖のメンバーの組み合わせのなせる業なのだろう。エモーショナルで緊張感があるのに、暑苦しくないというのは、ウォーリントンがビバップ時代からジャズ界に身を投じて活動を続けつつも、どこかに彼独自の感性が生き続け、しかもそれがリーダーとしてうまく発揮され続けたということを示している。 さて、本盤の演奏は、ビ・バップ色の強いテーマが印象的な、バド・パウエル作の1.「異教人の踊り」で幕を開ける。2.「ストレンジ・ミュージック」は一転してクラシカルな曲のピアノ・トリオでの演奏。このあたりは聴き手によって好みの分かれるところかもしれないが、ウォーリントンの知性がさらりと披露されるこのタイプの演奏は、個人的には好みだったりする。バラード曲の3.「ビフォー・ドーン」を挟んで、4.「オウ」はふたたびビ・バップ的なD・ガレスピーの曲だが、この演奏こそが本盤の色をよく表しているように感じる。原曲に忠実ないかにもな演奏というのではなく、アレンジも全体の構成についても、上で述べたような“エモーショナルながらも暑苦しくならない”演奏の典型と言えそう。最後はいかにもハードバップな感じの5.「スメイクト」で締めくくりとなるが、冒頭から絶好調な作曲者ドナルド・バードのトランペットが聴きどころ。 以前に別項でも書いたことだけれど、“マクリーン抜きのウォーリントンは面白くない”という声も確かにある。でも、筆者はサックス奏者がフィル・ウッズに替わった後の『~キャリッジ・トレード』も、そして本盤も、結構気に入っているのだ。緊張感や“ハード”バップな部分をクールに知性で包み込んだ演奏と、その結果としての、ナチュラルなスウィング具合。聴き手が吸い込まれて演奏の只中に置かれるというよりは、少し離れた場所からその包み込まれた演奏を鑑賞するという楽しみ方ができそうな雰囲気。好き嫌いはあるかもしれないが、筆者はこちらの方も案外好きだったりする。[収録曲]1. Dance of the Infidels2. Strange Music3. Before Dawn4. Ow5. ’S Make ’T[パーソネル、録音]George Wallington (p)Donald Byrd (tp)Knobby Totah (b)Phil Woods (as)Nick Stabulas (ds)1957年11月14日録音。 【送料無料選択可!】【試聴できます!】ジャズ・アット・ホッチキス / ジョージ・ウォーリントン下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2013年06月21日
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シカゴの隠れ名曲選(其の5) 前回記事の「ぼくらの世界をバラ色に」によって、頭の中の考えがすっかりテリー・キャスの方に向いてしまいました。そんなわけで、一区切りのこの5回目も、テリー・キャスの楽曲で締めたいと思います。 1969年のデビューから1980年に至るまで、シカゴは概ね毎年1作品(ただし2枚組作品も多数)のハイペースでアルバムを出し続けました。そんな真っただ中の1976年のアルバム『シカゴX(カリブの旋風)』に収録されたのが今回のナンバーです。 上記アルバムからは「愛ある別れ」がという有名なヒット曲がありますが、今回は“隠れ名曲”がテーマです。アルバムの最後に収録されている「愛の終りに(ホープ・フォー・ラヴ)」をお聴きください。 この映像もまたジャケット写真のようなもの(実は諸作のアルバムジャケットを並べてデザインしたもの)だけで動きませんが、曲だけでも十分堪能できる好曲です。ちなみに、この曲が収録された盤のジャケットは、いちばん右の下から2つめ、そして最上段中央部のものです。 前項でも少し触れましたが、シカゴの当初から中心的なメンバーとして活動してきたテリー・キャスは、この後、1978年初頭に拳銃の暴発事故で亡くなりました。ロシアン・ルーレットのごとく冗談で“弾の入っていない”はずの(しかし実際には銃弾の入っていた)拳銃を頭部に撃って即死してしまいました。こうしたテリー・キャスの名曲を聴くにつけ、このような事件がなければまだまだいろんな曲が聴けたかもしれないのに…などとつい考えてしまいます。 ともあれ、今回のシカゴ曲選、ひとまずはこれで一区切りです。[収録アルバム]Chicago / Chicago X(カリブの旋風)(1976年リリース) シカゴX(カリブの旋風) [ シカゴ ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年11月25日
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人生迷走(?)はたまた瞑想(?)の地味な好盤 70年代に『明日なき暴走(ボーン・トゥ・ラン)』でブレークし、80年代に『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』でスターダムにのし上がったブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)。アメリカン・ロック界の寵児から全米音楽シーンの顔と言えるまでになったところで、普通なら、前作を超えるスーパースターらしき作品が出てきそうなものである。わかりやすい例を挙げると、マイケル・ジャクソンが『スリラー』で大人気を博した後には、この流れを進化させたさらなる快作『BAD』という作品をリリースしたように。 けれども、スプリングスティーンの場合は少し違っていた。“アメリカン・ヒーロー”としての存在が政治的(レーガンの選挙キャンペーン)にも利用され(参考過去記事)、本人に迷いが生じた。単純に行ってしまえば、彼は創りだされたヒーロー像を演じることはできず、等身大のアーティストに戻ろうとする。『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』のヒットの後、5枚組の集大成ライブ盤を挟んで、1987年に急きょリリースされたのが、バンド演奏というよりは、バンド・メンバーがゲスト的に演奏参加するというスタイルの本作『トンネル・オブ・ラヴ(Tunnel of Love)』だった。 全編通じて大人の男の恋物語(?)風で、1.「エイント・ゴット・ユー」や2.「タファー・ザン・ザ・レスト」のような相手女性へのメッセージ的な曲もあれば、男女の愛の破綻や人生の山(苦難)をテーマにしたような、8.「トゥー・フェイセズ」、10.「ワン・ステップ・アップ」、11.「ホエン・ユー・アー・アローン」もある。途中には、4.「スペア・パーツ」や7.「トンネル・オブ・ラヴ」といった様々な男女の関係を描き出した詞の楽曲が並ぶ。 アーティスト本人の人生の事情と、作品として描き出された楽曲や楽曲群の内容を重ね合わせるというのは、そういう聴き方が好きな人とそうじゃない人がいるだろう。とはいえ、実際のところ、本盤については、スプリングスティーンの人生の迷い具合(迷走&瞑想)がそのまんまに反映されたアルバムになっている。その意味では、アメリカン・ロック界の“ボス”と呼ばれる人の作品だという先入観で安易に手を伸ばすと肩透かしを食らうに違いない。 でも筆者は本盤が好きなのである。全米のヒーローとなり、地位も名声も手に入れた彼が、いま一度、一人の男に戻り、人生の苦悩をそのままストーリーに仕立てた作品。『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』でセレブの地位を獲得し、トップ・モデルと結婚し、ちょうど離婚へと向かっていく時期の心情がそのまま反映された作品というわけである。ストーリーテラーとしての原点に返るとともに、その時の人生の苦悩をそのまま作品に反映させるというのは、スプリングスティーンがヒーローを演じ続けられるタイプではない人間だったということの証明だったと言える。 そのようなわけで、スプリングスティーンを初めて聴いてみるには「絶対に」向かない盤。だけれども、彼が曲に描き出す人間的な部分をいいと感じ始めた人には、何が何でも試してもらいたい(その結果、きっと繰り返し聴ける盤になるであろうこと間違いなし)という、ある種特殊な盤である。ちなみに、こんなに特別な思い入れのあるアルバムになった事情を紹介しておこう。リリース当時、筆者が骨折して自宅で動けなかったおかげで繰り返し聴いたというもの。おかげでリリース早々にこの盤の価値がよくわかった。ギプスで動けなかったのはつらかったけど(笑)。 [収録曲]1. Ain't Got You2. Tougher Than the Rest3. All That Heaven Will Allow4. Spare Parts5. Cautious Man6. Walk Like a Man7. Tunnel of Love8. Two Faces9. Brilliant Disguise10. One Step Up11. When You're Alone12. Valentine's Day1987年リリース。 【Aポイント+メール便送料無料】ブルース・スプリングスティーン Bruce Springsteen / Tunnel Of Love (輸入盤CD)【YDKG-u】 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2013年04月06日
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マニアックで渋いカバー盤 1968年、『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』でデビューし、1976年に解散(ただし、後にR・ロバートソンを除いて再結成)したザ・バンド(The Band)。彼らが全盛時代の1973年に発表した第5作(ライブ盤も含むと6作目)が、この『ムーンドッグ・マチネー(Moondog Matinee)』というアルバムである。 本盤『ムーンドッグ・マチネー』の特徴は、まずもって、全編オリジナルではなくカバー曲から成るアルバムという点にある。確かに、この当時、オールディーズの再評価(リヴァイヴァル)の動きがあった。ところが、ザ・バンドが世間の流れにそう簡単に乗っかるなんてことはなかった。そもそもデビュー時から“アメリカのルーツを探る音楽的探究”みたいなことをやっている時点で、世間の流行には乗りそびれたとも言える(?)バンドである。実際、この盤が面白いのは、ザ・バンドがオールディーズ回帰みたいな風潮に安易に同調するわけでもなく、実にオリジナルなカバー・アルバムに仕上げているというところにある。 ちょうどこの時期、ザ・バンドにはいくらかの“余裕”があったようだ。1972年丸々を含めて18ヶ月間行ったツアーから解放され、各メンバーは自由な時間を過ごせた。例えば、ドラムのリヴォン・ヘルムなどはウッドストックを離れてバークリー音楽院へ“ドラム留学”をしている。そうして、本盤のレコーディングは、1973年の2月~6月にかけて断続的に行われた。そこで演奏された曲目は、ほとんどがマイナーあるいはマニアックな過去の曲である。おそらくはR・ロバートソンが望んで収録された5.「第三の男」(同名の有名映画の主題歌)はともかくとして、他は渋めのR&Bナンバーが並ぶ。 ザ・バンドのデビュー前のレパートリーをやったものかと見る向きもあるが、どうやらその当時のセットリストなんかと比較すると、実際のところはそうでもないらしい。つまるところ、ザ・バンドは世の中の流れに乗せられて昔の曲をやってみたのではなく、敢えて“ひねくれた”選曲をし、これらの曲を世に送り出したということのように見える。“ザ・バンドらしい盤は?”と尋ねられたら本盤を挙げることはしないけれど、ザ・バンドの代表盤を既に知る人にはぜひこれも聴いてもらいたい一枚。[収録曲]1. Ain't Got No Home2. Holy Cow3. Share Your Love (With Me)4. Mystery Train5. Third Man Theme6. The Promised Land7. The Great Pretender8. I'm Ready9. Saved10. A Change Is Gonna Come~以下、2001年リマスター時の追加曲~11. Didn't It Rain (Outtake)12. Crying Heart Blues (Outtake)13. Shakin' (Outtake)14. What Am I Living For (Outtake)15. Going Back To Memphis (Outtake)16. Endless Highway (Studio Version)1973年リリース。 【送料無料】ムーンドッグ・マチネー [ ザ・バンド ] ブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2014年03月17日
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70年代ロック&ポップス名曲選~Part 8(その7) 一転して、ヒット・シングルとは一線を画す選曲です。ニール・ヤング(Neil Young)の1975年作『今宵その夜』は、筆者のお気に入りの盤の一つですが、今回はその表題曲「今宵その夜(Tonight’s the Night)」を取り上げようと思います。 アルバムを取り上げたところにも書いたように、ドラッグが原因で命を失ってしまった仲間たちに捧げた、ニール・ヤング渾身の演奏です。発売は1975年ですが、実際の録音は1973年時点になされたものです。テキーラをしこたま飲んで臨んだ演奏だったこともよく知られた事実です。 ちなみに、アルバムはこの曲で始まる(A面1曲目)のですが、アルバムの末尾(B面6曲目)もこの同じ曲名になっていて、“第2部(パートII)”とされています。こちらの演奏もお聴きください。 このままだと動く映像なしになりそうなので、ライヴでの演奏もご覧いただきたいと思います。2000年のライヴの模様です。 今回はもう一つ。ジャケ写だけで映像は動きませんが、お気に入りのライヴ演奏のテイクがあります。2018年にリリースされた『ロキシー:トゥナイツ・ザ・ナイト(今宵その夜)・ライヴ』に収められているもので、1973年のツアーの模様です。 [収録アルバム]Neil Young / Tonight’s the Night (今宵その夜)(1975年)Neil Young / Roxy: Tonight's the Night Live(2018年) 【輸入盤CD】Neil Young / Tonights The Night (ニール・ヤング) 【国内盤CD】ニール・ヤング / ロキシー:トゥナイツ・ザ・ナイト(今宵その夜)・ライヴ ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2023年09月18日
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シカゴの隠れ名曲選(其の2) さて、時代はもう少し進んで、1980年発表のアルバム『シカゴ14』に収録されたナンバーです。このアルバムは、シカゴがコロンビア所属だった時代の最後の作品となりました。今回取り上げるのは、同盤に収められた「ソング・フォー・ユー(Song for You)」というナンバーです。 この盤から2年ほど後、レーベルがワーナーに変わってリリースされた次作からは、「素直になれなくて(ハード・トゥ・セイ・アイム・ソーリー)」という大ヒットが出たわけですが、それに比べると、「ソング・フォー・ユー」の方は、一応シングル化されたようなのですが、特にチャートアクションもなく、一般聴衆にはマイナーな曲にとどまってしまったようです。 ともあれ、その曲をお聴きください。ちなみに、動かない画像として表示されているのは、収録アルバムのジャケットで、指紋がシカゴの文字になっているデザインは、個人的には案外気に入っています。 今回のこの曲もピーター・セテラの楽曲・ヴォーカルですが、彼の声によるシカゴのバラードの魅力が既によく表れている1曲ではないかという気がします。シングルとしてヒットするには、曲の展開が少しあっさりし過ぎていたのかもしれませんが、なかなかの好曲だと個人的には思っています。[収録アルバム]Chicago / Chicago XIV(1980年リリース) シカゴ14/シカゴ[CD]【返品種別A】 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年11月20日
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いわくつきのデビュー盤 1949年生まれのビリー・ジョエル(Billy Joel)は、ザ・ハッスルズやアッティラというバンドでの活動後、ソロ・デビューを果たす。1971年の本盤『コールド・スプリング・ハーバー~ピアノの詩人(Cold Spring Harbor)』は、そんな彼のデビュー盤だったが、成功したと言えず、セールスも振るわなかった。 何よりも、本盤は“いわくつき”の出来となった。有名な話なのではあるが、本盤は、テープの回転数が速いままマスタリングされ、レコードになってしまった。つまりは、本人の“生声”とは明らかに違う、“テープ早回し”による実際よりも高い声なのである。今の時代の感覚からすると、こんなお粗末な事態はあり得ないだろう。でもって、どうなったかというと、実際に完成したレコードを聴いたビリー・ジョエル本人は、怒ってレコードを地面に投げつけたとか。 確かに、全体を通して聴くと、いくぶんパンチが足りない気がする。才能は感じるのだけれど、個々の楽曲は悪くないのだけれど、どこか作品としての洗練度や完成度が足りないようにも思う。とはいえ、注目すべき楽曲もある。とりわけ、1.「シーズ・ガット・ア・ウェイ」は、1981年のライヴ作『ソングズ・イン・ジ・アティック』からシングル・カットされて全米23位となり、あらためて世に知られるようになった。他の楽曲も、違うタイミングで、違うアレンジで、(そしてもちろん回転速度を変えずに、)世に出ていたらどうなっていたのだろう、と想像しながら聴くのも面白いのではないだろうか。[収録曲]1. She's Got a Way2. You Can Make Me Free3. Everybody Loves You Now4. Why Judy Why5. Falling of the Rain6. Turn Around7. You Look So Good to Me8. Tomorrow Is Today9. Nocturne10. Got to Begin Again1971年リリース。 コールド・スプリング・ハーバー 〜ピアノの詩人/ビリー・ジョエル[CD]【返品種別A】 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2020年05月30日
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成熟の域に達したアコースティック・ライヴの好盤 ハート(Heart)は、1976年にデビューしたバンドで、1980年代にはポップな方向性を盛り込んだりして人気を博した。1995年に発表した『ザ・ロード・ホーム(The Road Home)』は、このバンドの成熟をよく示すライヴ盤だと思う。 1990年代、MTVの“アンプラグド”という企画が一世を風靡した。本ライヴ盤は、その流れの中で出来上がったものだったが、当時の流行とは関係なく、後から聴いても実によくできたライヴ作品になった。 その理由というか背景としては、いくつかのことが指摘できると思うのだけれど、一つは、ハートというバンドのバックグラウンド。周知の通り、レッド・ツェッペリンの影響を強く受けており、アコースティックな演奏というのは、ハートにとって付け焼刃ではなく、体内に消化されたものだと言える。次に、アン・ウィルソンのヴォーカリストとしての成熟も挙げられる。当時のアンはちょうど40歳代半ば辺りで、ヴォーカリストとしての味(それはさらに年齢を重ねて深みを増していった)が成熟の域に達していった頃だった。さらに、彼らが敬愛するレッド・ツェッペリンの元メンバー、ジョン・ポール・ジョーンズが演奏とプロデュースで参加している。これらの要素が組み合わさってのこのライヴ盤の出来栄えという結果になったのだろう。 そのようなわけで、アコースティックな演奏とアンのヴォーカルのよさが存分に楽しめる盤と言えるように思う。本盤所収のお気に入りの演奏を挙げ始めるときりがなくなりそうなのだけれど、いくつか触れておきたい。冒頭の1.「夢見るアニー」、2.「ドッグ・アンド・バタフライ」は、70年代のハートらしくアコースティック向きの好曲。これらの曲の間のMCで“私たちのリヴィング・ルームへようこそ”と聴衆に話しかけているのもいい。80年代のヒット曲である5.「アローン」や6.「ジーズ・ドリームズ」もアコースティック向けのアレンジで、特に前者のヴォーカルはアンの実力発揮のナンバーで、ジョニ・ミッチェルのカバーである12.「リヴァー」と合わせて、ヴォーカルの聴きどころとなっている。 さらに、ロック調のヒット曲である10.「クレイジー・オン・ユー」や13.「バラクーダ」は、元の曲のイメージを保ちながら、アコースティック・ギターでの盛り上がりの演奏を披露している。なお、カバー曲としては、上記12.(ジョニ・ミッチェル)以外に、7.(エヴリブラザーズ)や11.(エルトン・ジョン)も含まれており、“リヴィング・ルーム”感がある。さらに、シークレット・トラックとして、アルバム表題になっている15.「ザ・ロード・ホーム」が収められている。[収録曲]1. Dreamboat Annie (Fantasy Child) 2. Dog and Butterfly 3. (Up on) Cherry Blossom Road4. Back to Avalon5. Alone 6. These Dreams 7. Love Hurts 8. Straight On9. All I Wanna Do Is Make Love to You10. Crazy on You11. Seasons12. River13. Barracuda 14. Dream of the Archer15. The Road Home1995年リリース。 Heart ハート / Road Home(Live) 【CD】 【輸入盤CD】Heart / Road Home (ハート) 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2022年04月05日
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2000年代の新クラシックスの1枚 ニール・ヤング(Neil Young)の活動歴は、優に50年を超える。ソロのファーストのリリースは1969年、バッファロー・スプリングフィールドのデビューまでさかのぼると1966年から音楽業界での活動をしていることになる。コンスタントにアルバム制作を重ねているため、リリースされた作品は何十枚もあるが、長い年月を経ながら、いわば連作のようになっている作品もある。 彼の名盤かつ個人的にお気に入りの一枚に、1972年の『ハーヴェスト』がある。アコースティック・サウンドに独特のヴォーカルがピタリとはまった名盤である。そして、その続編とも言える作品は、20年後の1992年に、『ハーヴェスト・ムーン』というタイトルでリリースされている。それからさらに十数年、2005年に発表されたのが、この『プレーリー・ウィンド(Prairie Wind)』で、同じ志向性を継承した作品となった。 オープニング曲の1.「ザ・ペインター」は、シンプルで柔らかい曲調とヴォーカルが印象的。2.「ノー・ワンダー」は、ヤング独特の頼りなさげな調子のヴォーカル(もちろんいい意味で)がピタリとはまった名曲で、筆者的には本盤の中で一推しである。5.「イッツ・ア・ドリーム」も淡々とした弾き語り調の中に同様のヴォーカルの特色が生かされている。 後半では、アルバム表題曲の6.「プレーリー・ウィンド」の切なさがいい。アレンジ・演奏は工夫されている一方、独特の迫ってくるようなヤングのヴォーカルがうまく組み合わされていて、7分超えの長尺だが、これもお勧めのナンバー。9.「ヒー・ワズ・ザ・キング」はややアップテンポの曲で、演奏面でのホーンやハーモニカが効果的にきまっている。アルバム最後の曲である10.「ホエン・ゴッド・メイド・ミー」は、淡々としたピアノ弾き語り調のナンバーで、穏やかにアルバムを締めくくる。 この手の演奏とヴォーカルが現代の感性にマッチしているかというと、必ずしもそうではないかもしれない。けれども、この何十年も前の1970年代の『ハーヴェスト』と同様、落ち着いて噛みしめるリスナーは一定数(むろん、筆者もその一人だが)存在するのだと思う。21世紀に入ってから出されたこの一枚も、過去の名作と同様、名作として何十年も聴き継がれていくことを願いたい。[収録曲]1. The Painter2. No Wonder3. Falling off the Face of the Earth4. Far from Home5. It's a Dream6. Prairie Wind7. Here for You8. This Old Guitar9. He Was the King10. When God Made Me2005年リリース。 プレーリー・ウィンド[CD] [輸入盤] / ニール・ヤング 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年10月17日
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シカゴの隠れ名曲選(其の4) 今回はぐっと時代をさかのぼり、1970年の第2作(『シカゴII(シカゴと23の誓い)』)に収められたナンバーです。 1969年のデビュー盤に続いて2枚組の大作となったこのアルバムには、組曲になったものがいくつも収められています。個人的にはこういう大作志向というか、壮大な作りになっているのはなかなか好きだったりします。 さて、そうした組曲の一つがアナログ盤B面の大部部を占める「バレエ・フォー・ア・ガール・イン・ブキャノン」です。今回は、その中に含まれる「ぼくらの世界をバラ色に(カラー・マイ・ワールド)」をお聴きください(アルバムのジャケットの画像しか映りませんが、音は2002年のリマスターのものです)。 テリー・キャスによる曲で、彼がヴォーカルも務めています。1978年に急逝するまで、デビュー以来シカゴの中核メンバーとして活躍した人物です。 そんな彼の雄姿もご覧いただきたく、1970年当時のライヴ映像も今回はご覧ください。このライヴ映像では、同じ組曲「バレエ・フォー・ア・ガール・イン・ブキャノン」に含まれている「ぼくらに微笑みを(メイク・ミー・スマイル)」とのメドレー形式で演奏されています。 [収録アルバム]Chicago / Chicago(シカゴと23の誓い)(1970年リリース) シカゴII(シカゴと23の誓い)-スティーヴン・ウィルソン・リミックス/シカゴ[CD]【返品種別A】 シカゴII(シカゴと23の誓い) [ シカゴ ] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年11月24日
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80万アクセス記念~いま聴きたい曲(その9) ここらで元気よくかつ懐かしいナンバーをいってみたいと思います。リック・スプリングフィールド(Rick Springfield)の「リヴィング・イン・OZ(Living in OZ)」(OZ=オーストラリアの意味)です。1983年リリースの同名アルバムに収録されており、シングルカットはされませんでしたが、好みの曲です。 当初デビューするも売れずに俳優として活躍してから再び音楽活動で注目されたというキャリアからもわかるように、当時からとにかくハンサムでカッコよかったのですが、その点はいまも変わらぬようですね。以下は2013年のスウェーデン・ロック・フェスティヴァルの1コマです。 相変わらずカッコよくてハンサムなのは相変わらずなのですが、よくよく考えてみると彼は1949年生まれ。このライヴの時点で既に60歳代前半(今年で66歳!)です。そう思うと、恐ろしいほどの“若さ”をいますね。[収録アルバム]Rick Springfield / Living in OZ(1983年) 【メール便送料無料】リック・スプリングフィールドRick Springfield / Living In Oz (輸入盤CD)(リック・スプリングフィールド) 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2015年09月14日
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パクリ疑惑はあれども、カッコいいので許される? “スーパースター”ロッド・スチュワート(Rod Stewart)は、とくに米国進出以降、何かとお騒がせなスキャンダルを振りまいてきたアーティストである。4人の女性との間に7人の子がいて、ブロンド女性好きを公言。さらについ先頃(今年2月)には、8人めの子となる男児が誕生し、66歳にしてパパとなった。身長は実は低いという疑惑(?)があり、一説では154cmとか157cmとか。そんなゴシップネタが多い中、ロッドに関してもっとも話題に上がりやすいのが“盗作疑惑”である。特によく挙げられる例は70年代後半のヒット曲「アイム・セクシー」で、ロッドがこれに似た曲(ブラジルのアーティスト、ジョルジ・ベンジョールの「タジ・マハール」)をパクリだと訴えたが、結局、制作年代からロッドの方が後であることがわかり、もと訴えたはずのロッドが盗作を認めるというマヌケな結果に終わっている。 それ以外にも、パクリがささやかれる曲は多い。この「フォーエヴァー・ヤング」もその一つで、パクリ元とされるのは、ボブ・ディランの「いつまでも若く」(『プラネット・ウェイヴズ』に収録)という曲。ディランの方の原題はずばり同じタイトルの「フォーエヴァー・ヤング」で、素人が1回聴いただけでもすぐ気付くぐらいサビがそっくりなのである。 このロッド版「フォーエヴァー・ヤング」が発表されたのは1988年のアルバム『アウト・オブ・オーダー』(およびこの当時のシングル盤)。さらに、1996年のベストアルバム『ベスト・バラード・コレクション(原題:イフ・ウィー・フォール・イン・ラヴ・トゥナイト』)では、この曲のバラード風バージョンも新録している(こっちのバージョンは個人的にはあまり好きではない)。 おそらくこのロッドという人は聴いたことのあるメロディを思わず写し取ってしまう(無意識に切り取って使ってしまう)人なのだろう。悪気や後ろめたさがあれば、ふつうもっと巧妙にやるだろう。つまり、確信犯のパクリにしては手口が稚拙だと言える。要するに、ロッドがついやってしまうのは、悪気のない盗作なのではないか。そんなわけで、個人的にはどこか微笑ましく見えてついつい許してやりたい気分にさせられる。 そんな前提の上でこの「フォーエヴァー・ヤング」である。過去記事でも書いたように、80年代末~90年代初頭のロッド・スチュワートのいくつかの楽曲は、渡米頃までの諸作と並んで個人的に結構好きなのである。この曲を含むアルバム『アウト・オブ・オーダー』ではデュラン・デュランのアンディ・テイラーがギターおよびプロデュースで参加し、さらに、この曲に関しては、スタジオ・ミュージシャンとして密かに実力抜群のマイケル・ランドウもギターでサポートに入っている。サウンドがカッコよく、この頃のロッドのボーカルは生気に溢れている。円熟の、しかし枯れてしまってはいない、微妙なバランスの勢いがある。 “スーパースター”と呼ばれるようになってからのロッドはつまらないと言われたりするが、その下馬評だけでスルーするのはもったいない。ぜひこの「フォーエヴァー・ヤング」や、「ダウンタウン・トレイン」といったヒット・ナンバーを聴き返してもらいたい。この頃の彼の円熟期のよさももっと広く再認識される価値があるように思う。[収録アルバム]Rod Stewart / Out Of Order (1988年)←とにかくカッコいい、元バージョン収録(スタジオ・オリジナル盤)Rod Stewart / If We Fall In Love Tonight (1996年)←個人的にはあまりおすすめではない、バラード・バージョン収録(コンピ盤) 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2011年05月09日
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70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その1~ シカゴの名バラードと言えば、最初にこの曲が思い浮かぶ人も多いであろうほどの有名曲が、この「愛ある別れ(If You Leave Me)」である。デビュー以来、政治志向を取り込むなど硬派なブラス・ロックを展開してきたシカゴにとって、この方向性はある種の転機で、80年代以降の甘口バラード路線の布石ともなった。1969年にデビューしてから21世紀の今まで、シカゴというバンドが実に40年以上のキャリアを誇るわけだが、シカゴの大きな転機はいつだったかと問われれば、明らかにそれは80年代にあったと思う。けれども、今になってから時系列で見ていくと、その転機を迎えるきっかけは70年代にあった。今回取り上げるバラードたちはちょうどその時期の作品ということである。 デビュー当初のシカゴは政治的なテーマも積極的に取り上げ、サウンド面では“これこそブラス・ロックだ”と誇示するかのような豪快なサウンドを展開した。その意味では、確かに70年代後半に入って、バラード調の曲をシングルとして出してきたのはある種の変化だった。けれども、80年代に入ってさらに変化していった彼らの音や趣向を考えると、この時期のシカゴのバラードは、良くも悪くもデビュー以来このバンドが築き上げてきた遺産を脱しきれていなかった。 印象の問題でうまく言葉にはできないのだけれど、バラードなのに“甘くない”、あるいは“甘さが過ぎない”というのが特徴と言ってもいいのかもしれない。どこかにブラス・ロック然とした垢ぬけない部分がある。こんな言い方をすると“貶しているのか”とファンの方からは叱られそうだが、決して悪い意味で言っているのではない。甘々になり過ぎないところでとどまり、どこか垢ぬけていない部分を残しているこの雰囲気こそが、実に味わい深いと言いたいのである。 いずれにしても、この方向転換はセールス的には大成功を収めた。全米チャートで2週連続1位を獲得し、バンド初のナンバー・ワン・ヒットとなったばかりか、グラミーも受賞した。 この曲が収められているのは、1976年発表のアルバム『シカゴX(カリブの旋風)』。また、後々のコンピレーション盤でも繰り返し収録されている。ちなみに、大ヒットだけあって、後々さまざまなカヴァー・ヴァージョンが生まれた。そうしたカヴァーの中には、ピーター・セテラ自身がカヴァーしたもの(1997年『愛ある別れ~ピーター・セテラ・ベスト・コレクション(You’re The Inspiration: A Collection)』に収録)もある。[収録アルバム]Chicago / Chicago X (1976年)その他、ベスト盤類にも収録。[関連記事リンク]70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その2~ へ70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その3~ へ 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2011年08月09日
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爆発力のあるブルース・ロック/ハード・ロック 1960年代後半から1970年代前半は“スーパーグループ”なるものがもてはやされた。そのネーミングには、3人程の構成メンバーの姓をくっつけて“○○、××アンド△△”みたいなのが多かった。現在の感覚からすると、あまり響きがいいとは言えないグループ名が多かったような気もするが、それはそれで分かりやすかったのかもしれない(何と言っても元のグループなどで成功を収めて名の知れたミュージシャンたちだったわけだから)。 ウェスト、ブルース&レイング(West, Bruce & Laing)もそうしたグループの一つであった。元クリームのジャック・ブルース(ベース)と元マウンテンのレズリー・ウェスト(ギター)とコーキー・レイング(ドラムス)が組んだもので、1972~74年にかけて2枚のスタジオ作と1枚のライヴ作を残している。 1972年作の本盤『ホワイ・ドンチャ(Why Dontcha)』は、そんな彼らにとって最初の作品であった。マウンテンやクリームがそうであったように、ブルースがロックに取り込まれてブルース・ロックが形成され、さらにそれはハード・ロックなど複数の方向へと展開していくという流れの中に本作も位置付けられるだろう。本盤を一聴すれば、随所のフレーズは“ブルース・ロック”感が漂うのだが、音は重くインパクトのある“ハード・ロック”感が強い。 実際、本盤のいちばんの特徴は“爆発力”や“インパクト”にあると思う。そして、そうした“爆発力”の源泉はあくまで3人の楽器演奏にある。ヴォーカルは3人がかわるがわる担当していて、ところどころ別の楽器(例えばジャック・ブルースがオルガンやシンセを担当するなど)も取り入れられている。 筆者が気に入っているのは、表題曲の1.「ホワイ・ドンチャ」。とにかく勢いがあって、“重い”サウンドが疾走する感じがいい。これと同様な感覚は、3.「ザ・ドクター」や8.「プレジャー」なんかでも味わうことができる。あと、注目したいのは、5.「サード・ディグリー」や10.「ポリューション・ウーマン」。駄作と評されることの多い盤だけれど、とにかく演奏レベルが高い。もう少し楽曲が粒ぞろいであったなら、どれも“最高の演奏”とか言われたかもしれないようにすら思う。そして、何よりも、聴き手の側がマウンテンとクリームの幻影を取っ払って聴くならば、決して駄盤などではないような気がするのだけれど。[収録曲]1. Why Dontcha2. Out into the Fields3. The Doctor4. Turn Me Over5. Third Degree6. Shake Ma Thing (Rollin’ Jack)7. While You Sleep8. Pleasure9. Love Is Worth the Blues10. Pollution Woman1972年リリース。 【輸入盤CD】【ネコポス100円】West, Bruce & Laing / Why Dontcha ウェスト、ブルース&レイング / ホワイ・ドンチャ [CD] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2020年01月17日
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900万アクセス記念~いま聴きたいあのナンバー(その17) 気がつくと12月も1週間ほどが過ぎました。今年もあとわずか。クリスマスも近づき、街中ではクリスマス・ソングをよく耳にするようになりました。そのようなわけで、ここからは、クリスマス関係の“いま聴きたい曲”をお届けしたいと思います。 でもって、最初は景気のいい曲調のものをと考え、いろいろ思い起こしてみました。そうしていると、この曲の存在を思い出しました。プリンセス プリンセス(PRINCESS PRINCESS)の人気絶頂期のアルバム『LOVERS』に収録された楽曲です。 プリプリのことは知っていても、少しマイナーなこの曲は知らなかったという人も中にはいらっしゃるかもしれません。CMソングとして使われていたような気もするのですが、シングルとして発売はされなかったナンバーです。このグループにとっては珍しい(唯一の?)クリスマス・シーズン曲ということになります。 もう一つの映像は、往時のステージでの様子をご覧いただこうと思います。1990年、横浜アリーナでのツアーのステージの模様です。 [収録アルバム]PRINCESS PRINCESS / LOVERS(1989年) 【中古】 Lovers/プリンセス プリンセス 【中古】 LOVERS/CD/CSCL-1044 / PRINCESS PRINCESS / ソニー・ミュージックレコーズ [CD]【メール便送料無料】【あす楽対応】 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2023年12月08日
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レスポールを使用した異色作 テレキャスターの名手として知られるロイ・ブキャナン(Roy Buchanan)が、あろうことかレスポールを演奏してしまったというのが、1978年発表の『レスポールとの遭遇(You’re Not Alone)』というアルバムである。この邦題、もう少し何とかならなかったものだろうかとも思うが、原題は『ユーア・ノット・アローン』である。ロイ・ブキャナンのアルバムの中では、特に評価が低く、商業的にも失敗作だったとされるアルバムである。 ジャケットは宇宙服の顔(窓にあたる部分)に、地球外惑星の大地に屹立するレスポールが写っているという、なんともビミョーなデザイン。このジャケット・イメージは演奏内容ともリンクしていて、シンセを取り混ぜながらスぺーシーな雰囲気のギター・プレイが披露されている。もちろん、そのギターの音そのものは、いつものテレキャスとは大きく異なる、レスポール特有の太い音である。 いちばんの聴きどころは、3.「フライ…ナイト・バード」。彼特有の“泣きのギター”の演奏が、レスポール・サウンドで聴けるというもの。他のナンバーとしては、2.「ターン・トゥ・ストーン」がいい。ジョー・ウォルシュのソロ・プロジェクト(過去記事)作に収録のナンバーであるが、ロイのファンなら同時にテレキャスでこの演奏を聴きたい、と思うような内容でもある。もう一つ、5.「ダウン・バイ・ザ・リヴァー」も挙げておきたい。ニール・ヤングの曲で、本盤では例外的にヴォーカリスト(ゲイリー・セント・クレア)を入れてのナンバーとなっているが、この曲のロイのギターが個人的にはなかなか気に入っている。 といったわけで、内容は悪くなく、決して低く評価されるようなものではないと思うのだけれど、トレードマークの愛用の楽器を持ち替えてやる内容だったかというと、やはり疑問符がつく。どうせなら、2枚組にしてテレキャス・ヴァージョンとレスポール・ヴァージョンが収録なんて企画だと楽しめたのかもしれないと思ってみたりするのだけれど。[収録曲]1. The Opening...Miles from Earth2. Turn to Stone3. Fly... Night Bird4. 1841 Shuffle5. Down by the River6. Supernova7. You're Not Alone1978年リリース。 【輸入盤CD】Roy Buchanan / Loading Zone/You're Not Alone 【K2017/2/24発売】 (ロイ・ブキャナン) 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年01月13日
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勢いに乗る第4作 ロッド・スチュワート(Rod Stewart)は、ジェフ・ベック・グループに参加したのち、フェイセズおよびソロで成功を重ねていった。1970年代前半は、フェイセズというバンドでの活動とソロ・アーティストとしての活動が並走していた。本盤『ネヴァー・ア・ダル・モーメント(Never A Dull Moment)』はそんな時期の1枚である。ソロ作としては、前作の『エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー』に続いて英国チャートで1位を記録し、全米チャートでも2位となった。 フェイセズと並行しての活動期ということから、フェイセズのメンバー、例えば、ロン・ウッド(ギター)、イアン・マクレガン(ピアノ、オルガン)が演奏に加わっている。特に1.「トゥルー・ブルー」では、ロニー・レーン(ベース)、ケニー・ジョーンズ(ドラム)も加わり、メンバーが勢ぞろいしている。他に注目すべきミュージシャンとしては、ピート・シアーズが、ピアノで4.「イタリアン・ガールズ」、ベースで8.「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」に参加している(さらに後述の5.のシングルのB面でもピアノ演奏をしている)。 注目したい曲をいくつか見ておきたい。個人的には、冒頭の1.「トゥルー・ブルー」が最も推したいナンバー。演奏の安定感、曲調、さらにはこの手のロッドのヴォーカルは筆者のツボにはまる。なお、同様の指向性のナンバーとしては、4.「イタリアン・ガールズ」もお勧めである。 収録曲のうち、有名な曲としては、いかにも売れ筋という感じではあるものの、7.「ユー・ウェア・イット・ウェル」がある。この曲は、シングルとしてヒットし、全英1位、全米13位となった。他に本盤収録の中で外せないナンバーと思うのは、ジミ・ヘンドリクス曲の5.「エンジェル」。1970年のジミヘンの死後、1971年に発表された盤に収録された(さらにシングルとしても発売された)ナンバーである。ロッド・スチュワートには他のアーティストのカバー曲を多く残してきたが、この曲もなかなかの仕上がりだと思う。[収録曲]1. True Blue 2. Lost Paraguayos 3. Mama You Been on My Mind4. Italian Girls 5. Angel 6. Interludings7. You Wear It Well 8. I'd Rather Go Blind 9. Twisting the Night Away1972年リリース。 ネヴァー・ア・ダル・モーメント +1 [ ロッド・スチュワート ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年02月03日
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シカゴの隠れ名曲選(其の3) さらに時代は下り、今回は2008年に発表された『シカゴ32 ストーン・オブ・シシファス』に収録された「ビガー・ザン・エルヴィス(Bigger than Elvis)」という曲です。 実は上記のアルバムは、リリースの際に“32枚目”ということで“XXXII”という名前がつきましたが、本来は、1990年代前半に発表されるはずだったものでした。つまりは、“XXII”となるアルバムになるはずだったというわけです。 さらに、この「ビガー・ザン・エルヴィス(Bigger than Elvis)」という曲に関しては、日本国内向けに編まれたベスト盤に収録されたレア・ナンバーだったのですが、お蔵入りになったアルバムは、上の通り2008年に正式にリリースされました。こうして、正式なアルバムの収録曲として日の目を浴びることになったいうわけです。 シカゴを脱退したピーター・セテラの後釜として1985年に加入したジェイソン・シェフがヴォーカルを務めている楽曲です。“シカゴの声”としてのセテラの印象が強かっただけに、その当時、この人のヴォーカルについては賛否両論いろいろ言われました。けれども、その美声はシカゴのバラード曲などには向いていたのではないかと思います。このナンバーも存分に彼の実力が発揮された美曲だと言えるのではないでしょうか。[収録アルバム]Chicago / Chicago XXXII: Stone of Sisyphus(2008年リリース) シカゴ32 ストーン・オブ・シシファス/シカゴ[CD]【返品種別A】 【中古】 【輸入盤】Stone of Sisyphus (XXXII)/シカゴ ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年11月22日
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愛しの名曲たち(7・最終回) カーペンターズ(Carpenters)の名曲を振り返る不定期企画、ほぼ2カ月がかりでようやくひとまずの最終回に辿りついいた。とか何とか言って、実のところ、最初から締めくくりにしたい曲が筆者の頭の中にはあって、半ばそれは最初から決まっていた。それがこの「オンリー・イエスタデイ(Only Yesterday)」である。客観的なことを何も考えず、個人的な好みと感性でとにかく1曲選べ、と言われたら、おそらくは「イエスタデイ・ワンス・モア」とこの「オンリー・イエスタデイ」の間で悩むこととなるだろう。そのくらい、筆者はこの歌の虜になってしまている。 カレン・カーペンターのヴォーカルの魅力には、“憂い”の感覚がある。その部分は、既に紹介した「スーパースター」のところで述べた通りなのだけれど、その“憂い”の感覚を醸し出すにはヴォーカリストとしての重要な要素があった。“低音の魅力”である。カレンの歌は低音域が実にしっかりしている(カレンいわく、この低音域は彼女の“basement”だった)。この「オンリー・イエスタデイ」においても、それは存分に発揮されていて、サビにいたるまでの低音の部分が実にいい味を出している。並のシンガーならばここまで引っ張れないだろうと思うほど、低音部の多い歌でも聴かせることができる。実際、カレンは3オクターブの音域を持っていながらも、高音部を特に強調しようとは考えなかったという。この曲の歌声を聴けば、それもなるほどと納得がいく。 詞の内容の微妙な感じもいい。ただハッピーというわけでもなければ、ただ憂鬱な内容でもない。“悲しい昨日と明日への希望”とでもいったモチーフである。「悲しくて孤独だったのはもう昨日のこと/あなたのおかげで過去と涙から離れることができる/明日はきっと今日よりずっと明るくなる/悲しみは昨日に置いてきたのだから/それはもう昨日のこと・・・」というのがサビの内容。 さらに注目なのは、ギター・ソロの部分。エレクトリック・ギターがソロ・パートをとっているが、これもまたさらりといい味を出している。実は1972年のシングル「愛にさよならを(グッバイ・トゥ・ラヴ)」でファズなギター・ソロを起用してカーペンターズは一部のリスナーから批判を浴びたことがあった。結果的に、その後はギター・ソロの使い方がうまくなったのではないかと思う。本曲でもこのソロ部分でギターサウンドが効果的に使われて功を奏している。 1975年のアルバム『緑の地平線~ホライゾン』からの先行シングルとして発売され、全米チャートでは4位、同イージーリスニング・チャートでは1位を記録した。1970年の「遥かなる影」以降、数々のヒット曲を世に送り出したが、全米TOP10入りはこの曲が最後となっている。アルバムのヴァージョン(アルバムとシングルでミックスが若干異なるそう)を映像つきでどうぞ。 ちょっと意訳し過ぎ?な感じもしますが、日本語(字幕)で大意を知りたい向きはこちら。 *リンク切れにつき、以下、オフィシャルビデオ映像を追加しておきます。 [収録アルバム]Carpenters / Horizon (1975年)Carpenters / Yesterday Once More(1984年)など各種ベスト盤類に収録。1975年シングル・リリース。[関連過去記事] カーペンターズ~愛しの名曲たち(1):「涙の乗車券」 カーペンターズ~愛しの名曲たち(2):「遥かなる影」 カーペンターズ~愛しの名曲たち(3):「雨の日と月曜日は」 カーペンターズ~愛しの名曲たち(4):「スーパースター」 カーペンターズ~愛しの名曲たち(5):「シング」 カーペンターズ~愛しの名曲たち(6):「トップ・オブ・ザ・ワールド」 【Joshin webはネット通販1位(アフターサービスランキング)/日経ビジネス誌2012】【送料無料】緑の地平線(ホライゾン)/カーペンターズ[SHM-CD]【返品種別A】 【送料無料】ポップス定番ベストセレクション::カーペンターズ 20/20ベスト・オブ・ベスト・セレクション [ カーペンターズ ] 下記ランキングに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2012年08月05日
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ブームのおかげで奥深い盤が残った プリテンダーズ(Pretenders, The Pretendersとも)は、姐御クリッシー・ハインド率いるイギリスのロック・グループ。プリテンダーズのアルバムの中でも特に“奥深さ”という点で傑出しているのが、1995年のロンドンで収録のライヴ盤『アイル・オブ・ヴュー(Isle of View)』である。 1989年にMTVが仕掛けた“アンプラグド(Unplugged)”なる企画は、文字どおり“プラグを抜いた”演奏、つまりはアコースティック演奏によるライヴ企画だった。これが瞬く間にブームとなり、90年代、“猫も杓子もアコースティック”みたいな状況になった。その結果、アコースティック・ライヴという形態がある程度定着したとはいえ、一時の流行りみたいな雰囲気だった部分も否めない。いまいちな盤も多く出たけれど、おかげで好盤もいくつも残されることになった。そうした好盤、それも実に“奥深い”盤の一つがプリテンダーズのこのアルバムで、しかもこうしたブームのおかげで初のライヴ盤を出したことに感謝したくなる、そんな一枚である。 クリッシー・ハインドという人は、艶めかしいがいやらし過ぎず、ロッカーだが雑ではない。何が言いたいかというと、アコースティックでのライヴは、演奏者や歌い手の実力がどちらかというと素直に反映される。普段のノリのある演奏と曲ではあまり目立たないクリッシーの艶っぽさと繊細さがアコースティックという場で浮き彫りになっている。プリテンダーズは元々定評のあるとはいえ、あらためてその繊細さに驚かされる。 とか何とか言って、筆者も90年代当時は、既存の曲をアコースティックで聴くことばかりに集中していて、“あの名曲がアコースティックで美しく変身”みたいに思っていた節がある。ブームが過ぎ、いつしかこのアルバムをもう少し冷静に違う角度で聴くようになって、“やっぱりクリッシーは凄い!”という真価に本当の意味で気付くようになったという次第である。 収録曲を見ての通り、9. 「2000マイルズ」や10. 「ヒム・トゥ・ハー」のような、そもそもアコースティック向きの曲に加えて、4. 「チェイン・ギャング」や5. 「愛しのキッズ」といった元は軽快だった曲もアコースティック向きのアレンジで披露されている。バックにはバイオリン、チェロ、ビオラから成る弦楽四重奏(ザ・デューク・カルテットという名称らしい)が入っている。個人的な好みで何曲か挙げておくとすれば、クリッシーのヴォーカルが文句なしにカッコいい1. 「センス・オブ・パーパス」、繊細さが抜群の2.「チル・ファクター」、アコースティック演奏のお手本といってもよさそうな11.「涙のラバーズ」、歌のうまさが光るキンクス・ナンバーの13.「アイ・ゴー・トゥ・スリープ」。あと、ありがちだけれど、初期の名曲を歌いあげる5. 「愛しのキッズ」、9.「2000マイルズ」、10.「ヒム・トゥ・ハー」もやはり外せない。 とまあ、聴くに値する曲ばかりで、プリテンダーズをあまり知らないというひとにもぜひお勧めの好盤。ちなみに、余談ながら、クレジット上は14曲だが、実際のCDではなぜか最後に後奏(?)みたいなのがTrack 15に入っている。[収録曲]1. Sense of Purpose2. Chill Factor3. Private Life4. Back on the Chain Gang5. Kid6. I Hurt You7. Criminal8. Brass in Pocket9. 2000 Miles10. Hymn to Her11. Lovers of Today12. Phone Call13. I Go to Sleep14. Revolution1995年リリース。 【送料無料】【輸入盤】 Isle Of View [ Pretenders ] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2012年11月10日
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“これぞロック”な原点的名盤 “ロック”というものを聴いたことがない、知らない、という人がもし自分の目の前いるとすれば、どう説明すべきだろうか。“百聞は一見にしかず”ということで、実例を聴かせるのが手っ取り早い方法の一つだろう。では、どのアルバムやどの曲を最初に聴かせればいいか。そんなことを考えると、最初に聴かせるアルバム候補の上位に確実に食い込みそうなのが、このザ・フー(The Who)のファースト作、『マイ・ジェネレーション(米:The Who Sings My Generation/英:My Generation)』だと思う。 ザ・フーは1960年代半ばに登場した英国のバンド。ビートルズやストーンズと並べて“英国3大ロックバンド”とか、キンクスを加えて“4大バンド”などと数えられたりする。日本ではなぜかぱっとしない人気だが、英米では絶対的な評価を得ている。彼らのデビューには多少ややこしいきさつがあったものの、1965年初頭にシングル「アイ・キャント・エクスプレイン」、同年11月にシングル「マイ・ジェネレーション」をリリースし、後者が大ヒット。同年末に出された最初のアルバムがこの『マイ・ジェネレーション』だった。 全体を見ると、当時のデビュー盤にしてはオリジナル曲が多く(2.、8.がジェイムス・ブラウンのR&Bな影響が見えてそれはそれで面白い)、自信のほどが窺える。音の面では冒頭の1.「アウト・イン・ザ・ストリート」からファズの聴いた勢いのあるサウンドで、なるほど後々のパンクの芽生えはここにあると言うのも一理ある。内容面でも表題曲の6.にあるように、“オレの世代(マイ・ジェネレーション)”をテーマにし、自分たちは“老いる前に死ねたら本望”、年より世代は“お前らみんな消えちまいなよ”という挑発的な態度も衝撃的。 さて、冒頭の話に戻って、それじゃあ曲単位でどれを聴かせるかというと、やっぱりいちばんは表題曲の6.「マイ・ジェネレーション」、次いで7.「キッズ・アー・オールライト」となってしまうだろうか。とはいえ、これら以外では、10.「オックス」(英盤では12.)が絶対に聴き逃せない。インスト曲だが、このドラム、このギター、要はこの演奏全部こそがロックなのだ、とロックを知らない人がいるならぜひとも聴かせたい。ちなみに、英盤タイトルはそのまんま『My Generation』で、収録曲もほんの少し異なる(下の曲目は米盤に基づいたもので、英盤は12.が別の曲になって収録順が違っている)。同じく英盤と米盤の大きな違いはジャケットで、前者はメンバー4人が立った姿を上から移したジャケ写、後者はビッグベンがバックの冴えない写真(笑)。ジャケット・デザインとしては、明らかに前者に軍配が上がる。[収録曲]1. Out in the Street2. I Don't Mind 3. The Good's Gone4. La-La-La Lies5. Much Too Much6. My Generation7. The Kids are Alright8. Please, Please, Please9. It's Not True10. The Ox 11. A Legal Matter12. Instant Party (Circles)1965年リリース。↓“+12”のデラックス盤↓ 【楽天ブックスならいつでも送料無料】マイ・ジェネレイション +12 [ ザ・フー ]↓“冴えない方”(笑)のジャケット↓ The Who フー / Sings My Generation 輸入盤 【CD】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2014年09月16日
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再評価を切に望む1枚 ジョージ・ラッセル(George Russell, 1923-2009)は、米国オハイオ州出身のジャズ・ピアニストおよび作曲・編曲家。1950年代以降に様々な作品を残しているが、今回取り上げるのはその中でもわりと初期に当たる1959年の『ニューヨークN.Y.(New York, N. Y.)』という盤である。 本盤を酷評する人もいるようなのだけれど、ニューヨークの断片を切り取った、という意味では見事な仕上がりだし、もっと注目されていい盤ではないかと個人的に思ったりもする。ナレーション(ナビゲーター役)を担当しているのは、ジョン・ヘンドリクスで、ヴォーカリーズの創始者と言われたりする人物。この人の存在がメインというわけではないものの、小気味よいテンポで曲を導入しているのは個人的にはいい感じだと思う。もちろん、メインコンテンツはあくまでも演奏それ自体であり、ニューヨークの情景を切り取ったかのような聴き手の想像をかき立てる演奏がテンポよく繰り広げられていく。 確かに、不測の展開というよりは、ある意味で計算ずくの“アレンジ・ジャズ”的であることは否定しがたい。つまるところ、本盤の評価は、この部分を肯定するか否定するかで大きく変わるような気がしてならない。そして、ここまでの文章を読んでいただいた方はきっとご推察のように、筆者はどちらかというと肯定派なわけである。 メンバー一覧(下記参照)を少し見ると気づくように、錚々たる顔ぶれが参加しているのも凄い。アート・ファーマー(トランペット)、ジョン・コルトレーン(テナー・サックス)、ビル・エヴァンス(ピアノ)と、ジャズ愛好者じゃなくても耳にしたことがあるほどのビッグネームが並んでいる。そんな個性豊かな演奏者群をものの見事にまとめているのが、アレンジャーのジョージ・ラッセルというわけである。 そんなわけで、ストーリー性も重要な要素になっているように思える(無論、それを先導するのが上記のジョン・ヘンドリクス)。1.「マンハッタン」で“さあ、ニューヨークへ行こう”みたいなワクワク感が出され、続く2.「ビッグ・シティ・ブルース」では、実際にニューヨークに着いてで会った光景を想起させる。3.「マンハッタン・リコ」は、少々間延びした感じがなくはないのだけれども、この町の華やかさと成功せずに消えていく人々の対比が描き出される。そして、メドレーになった4.「イーストサイド・メドレー」では、そういう喧騒とは少しかけ離れたイメージのニューヨークが演出される。でもって、最後の5.「ア・ヘルヴァ・タウン」では、冒頭のモチーフに戻り、“さあニューヨークへ”のイメージが繰り返される。少々長文になってしまったけれど、何ともよく出来たストーリー性ではないだろうか。[収録曲]1. Manhattan2. Big City Blues3. Manhattan Rico4. East Side Medley: Autumn in New York/How About You?5. A Helluva Town[パーソネル、録音]George Russell (arr, conductor)Art Farmer (tp)Doc Severinson, Ernie Royal, Joe Wilder, Joe Ferrante, Bob Brookmeyer (tb)Frank Rehak, Tom Mitchell, Jimmy Cleveland, Hal McKusick, Phil Woods (as)John Coltrane, Al Cohn, Benny Golson (ts)Sol Schlinger, Gene Allen (bs)Bill Evans (p)Barry Galbraith (g)George Duvivier, Milt Hinton (b)Charlie Persip, Max Roach, Don Lamond (ds)Al Epstein (bongos)Jon Hendricks (vo, narration)1958年9月12日~1959年3月25日録音。 ニューヨーク、N.Y./ジョージ・ラッセル[SHM-CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2017年12月16日
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賛否両論のヒット作、賛成に1票 リッチー・ブラックモア率いるレインボー(Rainbow)は、時代とともにコロコロと(?)方向性や音楽性を変え、ファンの間で各作品の評価に実にばらつきが生じるバンドである。ヴォーカリストを取り上げても、ロニー・ジェームス・ディオからグラハム・ボネットへ、さらにはジョー・リン・ターナーへと移り変わっていくわけだが(詳しくはこちらの過去記事を参照)、そのジョー・リン・ターナーが加入した最初の作品で、なおかつ論争の対象になりそうなのが、この『アイ・サレンダー(Difficult to Cure)』という1981年発表のアルバムである。 アルバム名の邦題からして何とも怪しい。日本語では『アイ・サレンダー』(つまりは1曲目の曲名)だが、元は9.の曲名(「ディフィカルト・トゥ・キュアー」、日本語訳として「治療不可」という何ともな直訳、これでは邦盤タイトルになり得ないか…)がアルバム・タイトルになっている。意図したかどうかはともかく、この邦訳の食い違い具合がこのアルバムの性質をある意味ではよく表している。 何が言いたいかというと、要するに“売れ筋路線”なのである。アルバム全編を通じてポップな趣向、キャッチーな楽曲が目立つ。80年代初頭の雰囲気から言うと、これはHRなどではなく、それこそTOTOやフォリナーの商業ロック路線にリッチー・ブラックモアものみ込まれてしまったと言われても仕方ない部分もある。また自作曲以外を積極的に取り入れているあたりも、ブラックモアらしからぬ、というか、やっぱり売れ筋路線と思わせる部分だ。 けれども、レインボーの(あるいはR・ブラックモアの)コアなファンの一部が否定するほど本作は駄作なのか? 案外そうでもないような気がする。考えるにこの盤の収穫は主に2つある。 一つは、新メンバーとして参加したヴォーカリストのジョー・リン・ターナー。当時は無名の(しかも既に30歳手前という年齢の)ヴォーカリストで、プロとしての活動歴はあるものの、“誰それ?”と言われそうな人選だった。レコーディング中にグラハム・ボネットが突然脱退し、急な起用での加入だった。ところがこの人選は大当たりだったと思う(この辺がファンの間では意見の分かれる所なんだろうけれど)。筆者はすっかりジョー・リン・ターナーの虜で、後の彼のソロ作もたまに聴けば、イングヴェイ・マルムスティーンのバンドでヴォーカルを務めた『オデッセイ』なんかはロック史に名を残す傑作だと思っている。 もう一つの成果は、HRのリスナー層を新たに開拓したことではないだろうか。それは、80年代~90年代にかけて進行した“HRの大衆化”という流れに位置づけられる。この流れは、MR. BIGあたりで完成されると筆者は睨んでいるのだが、その先駆的な役割を後期レインボーは担ったのだと思う。[収録曲]1. I Surrender2. Spotlight Kid3. No Release4. Magic5. Vielleicht Das Nachste Mal (Maybe Next Time)6. Can't Happen Here7. Freedom Fighter8. Midtown Tunnel Vision9. Difficult To Cure1981年リリース 【CD】アイ・サレンダー/レインボー [UICY-75495] 下記ランキングに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2012年03月17日
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『ミスフィッツ』と双璧を成すアリスタ時代の秀逸盤 ザ・キンクス(The Kinks)は、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フーと並ぶ英ロックの4大バンド。とはいえ、ザ・キンクスとザ・フーはどうも日本での受容度が低く、「キンクスと言えば、ユー・リアリー・ガット・ミー」、「ザ・フーと言えば、マイ・ジェネレーション」みたいな安直な図式のイメージが強い(それはそれで一つの典型を表してはいるが、これがすべてかと言うと実際にはまったく違う)。その一方で、少数のコアなファンによってキンクスのコンセプト・アルバム群(過去記事(1) 、過去記事(2))が高く評価されている。結果、コンセプト作群以降の諸作は、なおのこと忘れ去られがちになる。 キンクス(というかレイ・デイヴィス)は、1960年代後半から10年ほどコンセプト・アルバム群を作り続けたが、それらは1975年の『不良少年のメロディ~愛の鞭への傾向と対策(原題:Schoolboys in Disgrace)』によって終わるとされる。同作品のリリース後、キンクスはRCAレーベルからアリスタへと移籍し、アリスタで最初にリリースしたのが本作『スリープウォーカー(Sleepwalker)』(1977年)である。こうした経緯から、本盤とこれに続く『ミスフィッツ(歪んだ映像)』(1978年)は、“キンクスのロックン・ロールへの回帰のアルバム”という位置付けが一般的になされる。 確かに、アルバムとしての明確なコンセプトというかストーリー性は、それまでの諸作のようではない。けれども、それは以前のコンセプト・アルバム群を支配していた“音の色彩”がなくなったという意味ではない。“ロック・サウンドに回帰”と言われると、何か初期(「ユー・リアリー・ガット・ミー」に代表される)の音に戻ったかのようなイメージを与えてしまうが、実際のところはまったくそうではない。むしろ、サウンド的にはコンセプト・アルバム群の時代の流れを引き継ぎ、その時代に熟成された抒情性がそのまま継承されていると筆者は感じている。 例えば、1.「ライフ・オン・ザ・ロード」からもそのことはよくわかる。ギター・サウンドが小気味よく、ノリのいいナンバーではあるが、イントロ部分(曲の終盤にも同じような箇所がある)の抒情的な雰囲気を醸し出す盛り上げ方は、やっぱり“真っ直ぐにはロックしていない”ことを示している。つまりは、コンセプト・アルバム時代の上に成立した“発展型キンクス”の音がこのアルバムにはある。その音の核となっているのは、憂いを湛えたギター・フレーズと表情豊かなヴォーカルだと思う。 他に表題曲の3.「スリープウォーカー」や4.「ブラザー」など、いずれかのコンセプト・アルバムのストーリーの中に組み込まれていたとしても違和感のない曲が多い。『ミスフィッツ』の項でも書いたように、この時期のキンクスはぱっとしないイメージで捉えられてしまっているけれども、個人的には結構好きで、特に本作『スリープウォーカー』と次作に当たる『ミスフィッツ』はもっと広く聴かれてしかるべきキンクス作品だと思う。[収録曲]1. Life on the Road2. Mr. Big Man3. Sleepwalker4. Brother5. Juke Box Music6. Sleepless Night7. Stormy Sky8. Full Moon9. Life Goes On~以下、現行CD(『スリープウォーカー +5』所収のボーナス・トラック)10. Artificial Light11. Prince of the Punks12. The Poseur13. On the Outside -1977 mix-14. On the Outside -1994 mix-1977年リリース。 スリープウォーカー +5/ザ・キンクス[SHM-CD]【返品種別A】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年10月30日
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『クール・ストラッティン』だけではもったいない、ハード・バップの粋 1931年ペンシルヴァニア出身のソニー・クラークは、20歳の頃から西海岸で音楽活動を開始する。西海岸での活動で一定の成果を残したあと、彼がニューヨークに出てくるのは1957年4月、25歳の頃だ。1963年1月に急死してしまったため、ニューヨークに出てきてからの活動期間はわずか5年足らず。とはいえ、ニューヨーク到着直後、25歳の彼には勢いがあった。 ニューヨークに来てわずか数ヶ月、ブルーノートに『ダイアル・S・フォー・ソニー』を吹き込む。その1ヵ月半ほどが経過した9月には本作『ソニーズ・クリブ』を録音。さらには続けて『ソニー・クラーク・トリオ』が録音され、翌58年1月には、かの有名盤『クール・ストラッティン』が制作される。この1年弱の期間の彼はまさに破竹の勢いでレコーディングを重ねた。 そうした中の一枚が『ソニーズ・クリブ(Sonny's Crib)』である。1.「ウィズ・ア・ソング・イン・マイ・ハート」や4.「ソニーズ・クリブ」(つまりはA面・B面の1曲目)が秀逸である。1.はアルバム1曲目には聴こえない。何が言いたいのかというと、前の曲があってその流れで続いてくるような曲(厳密には曲のイントロ)なのだ。これを1曲目にもってきたインパクトはなかなか大きいと思う。1曲目を聴いていながらも、聴き手は既に数曲聴いているような気分にさせられ、結果、演奏にのめりこんでしまう。他方、4.の表題曲は、『クール・ストラッティン』の表題曲に比肩する雰囲気を持っている。逆説的だが、これを1曲目(A面1曲目)に持ってきて、『クール・ストラッティン』並みの洒落たジャケットをつけたなら、本盤の方が最大の代表作に化けていたかもしれない。他の曲も質が高く、個人的には2.「スピーク・ロウ」が特におすすめである。 さて、このアルバムをいい作品に仕上げているのは、間違いなく参加メンバーである。とりわけ三管の力による比重がとても高い。ドナルド・バード(トランペット)は、当時25歳で、ジャズ・メッセンジャーズの一員として注目を浴び始めたばかりであった。カーティス・フラー(トロンボーン)は当時まだ22歳。しかも、ソニー・クラークと同様、ニューヨークに来てまだ半年ばかりだった。ジョン・コルトレーンは既に31歳で、マイルスの・デイヴィスのグループのメンバーとして有名にはなっていたが、独自の音楽を求めてセロニアス・モンクとの共演やバンド・リーダーとしてのプレスティッジでのデビューといった模索を行なっていたのがちょうどこの1957年だ。さらに付け加えるならば、当時、ポール・チェンバース(ベース)は22歳、アート・テイラー(ドラム)は28歳だった。個人的な好みも付け加えておくならば、1.や3.のバード、2.や4.のコルトレーン、3.のフラーが耳に心地よい。 要するに、若い血潮がみなぎっているのである。ところが、若さが変に暴発すれば、単なるブロウ合戦に終わってしまっていたかもしれない。本盤の素晴らしいところは、管楽器の三者が「抑え気味にベストをつくした」ところにあるといっていい。ハード・バップ・ムーブメントを牽引する上り調子の若者たちの、考え抜かれたプレイ。これがリーダーであるソニー・クラークの手腕なのか、はたまた彼の録音を立て続けに行なったブルーノート・レーベルのオーナー、アルフレッド・ライオンの功績なのかはよくわからない。けれど、アレンジの妙や全体の統一感を求めた結果として完成した音楽が素晴らしいことに間違いはない。 「ソニー・クラーク」イコール『クール・ストラッティン』。ジャケットのよさも手伝い、同アルバムばかりが聴かれる傾向にある。しかしながら、この有名盤一枚だけで他を聴かないというのはあまりにもったいない、というのが筆者の感想である。[収録曲]1. With A Song In My Heart2. Speak Low3. Come Rain Or Come Shine4. Sonny's Crib5. New For LuluDonald Byrd (tp), Curtis Fuller (tb), John Coltrane (ts), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)録音:1957.9.1Blue Note 1576 【2500円以上お買い上げで送料無料】【CD】[UCCQ-9107]ソニーズ・クリブ [ ソニー・クラーク ] 【送料無料】【輸入盤】 Sonny's Crib [ Sonny Clark ]
2009年08月10日
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ブルース・ロック好きの必聴・愛聴盤 ~後編~ 1966年に出された本オムニバス盤『ホワッツ・シェイキン』。前編では、ザ・ラヴィン・スプーンフルやティム・ラッシュといったフォーク、フォーク・ロック系のアーティスト(しかもそのバックグラウンドにはR&Bも見え隠れする)が、米国におけるブルース・ロックもしくはホワイト・ブルースの背景としてあり、それが反映されているというところを述べた。この後編では、よりブルース・ロック然とした部分に注目して、残りのアーティストと参加曲を見て行きたい。 まず、ネーム・ヴァリューからしてまず目を引くであろうは、エリック・クラプトン率いるパワーハウス(Eric Clapton & The Powerhouse)である。編成は、ギターのクラプトンのほか、ヴォーカルのスティーヴ・ウィンウッド、ウィンウッドと同じくスペンサー・デイヴィス・グループで一緒だったピート・ヨーク(ドラム)、さらには、マンフレッド・マンのポール・ジョーンズ(ハープ)、ピアノのベン・パルマーといった顔ぶれ。録音は66年3月ということだから、クラプトンがジョン・メイオールのグループ(ブルース・ブレイカーズ)で行った、“神”と呼ばれることになる演奏と、クリームの結成の狭間の時期にあたる。もう少し深読みすれば、スティーヴ・ウィンウッドとの組み合わせなんかは、後のブラインド・フェイスの布石という感じもして面白い。 周知のように、クラプトンは英国出身だが、活動の場や聴衆からの受け入れ度を考えると、こうしたアメリカでの動きの中でも十分意味を持ってブルース・ロックなりホワイト・ブルースなりの普及・成立に関わってきた。その様子が本録音に反映されている。収録されているのは全3曲で、もっとも目を引くのは、7.「クロスローズ(Crossroads)」だろう。ロバート・ジョンソン作のナンバーで、この同じ年にクラプトンが参加・結成したクリームの代表曲の一つとして定着していく曲である。クリームのライヴでの迫力のヴァージョンのイメージとはだいぶ違うと感じる方も多いかもしれないが、スティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルとポール・ジョーンズのハープ(ハーモニカ)が印象的でこれはこれでなかなかいいヴァージョンと思う。他の収録曲は6.「アイ・ウォント・トゥ・ノウ」と10.「ステッピン・アウト」。前者は、上記のジョン・メイオール盤でも演奏されていたもので、本盤以降にクリームでも演奏している。後者は、インストルメンタルのブルース・ナンバーで、これもまた後にクリームで演奏もしている。余談ながら、この時のエリック・クラプトン&ザ・パワーハウスの吹き込みはもう1曲あったそうで、いまだ未発表音源として残っているとのこと。 次に、というか本盤でもっとも出色の出来を披露しているのが、ポール・バターフィールド・ブルース・バンド(The Paul Butterfield Blues Band)である。このバンドは前年の65年にデビュー盤を発表し、同じ66年(マイク・ブルームフィールド在籍期)には、名盤『イースト・ウェスト』を発表している。米国ブルース・ロックの主流を作った、今となっては伝説のバンドである。参加アーティスト中で最多の5曲が収録されているが、いちばん目を引くのが、3.「スプーンフル」だろう。ウィリー・ディクソン作のブルースのスタンダード・ナンバーであるが、上記クラプトンがクリームのデビュー作で取り上げる前にバターフィールドがここで取り上げていて、スリリング極まりない好演を披露している。他の曲も触れておくと、4.「オフ・ザ・ウォール」は、リズムのキレとハープの流暢さで聴かせるインストのブルース曲。8.「ラヴィン・カップ」はポール・バターフィールドのオリジナル曲で、これまたスリリングでとにかくカッコいいブルース・ロックに仕上がっている。9.「グッド・モーニング・リトル・スクールガール」は、ソニー・ボーイ・ウィリアムソンIの曲で、勢いのある演奏。逆に14.「ワン・モア・スマイル」は、まったり感を含めギターとヴォーカルの掛け合いがいい味を出している演奏である。 もう一組の参加アーティストは、アル・クーパー。5.「泣かずにいられない(Can’t Keep From Crying Sometimes)」1曲のみの参加だが、この時期のロック界の様々な動きの陰にしょっちゅういた仕掛け人がこのアル・クーパーであった。ブルース・プロジェクトの別ヴァージョンだが、オリジナル曲でさらりとこんなブルース系ナンバーを披露してしまうあたりは、その才能を再認識させられる。 すっかり長くなってしまったが、1966年という、既に半世紀近く前のオムニバス盤を2回にわたって取り上げてみた。「今、何が熱いのか」を世に問う盤として登場し、その中にはブルース・ロックという当時の新しい潮流の背景と将来が同居していた。この手のコンピレーションは1~2年たてば使い捨てられる傾向にあることが多いが、この盤は例外的に、現在に至るまでずっと熱いままの好コンピレーションであり続けているように思う。[収録曲]1. Good Time Music / The Lovin' Spoonful2. Almost Grown / The Lovin' Spoonful3. Spoonful / The Paul Butterfield Blues Band4. Off the Wall / The Paul Butterfield Blues Band5. Can't Keep From Crying Sometimes / Al Kooper6. I Want to Know / Eric Clapton and the Powerhouse7. Crossroads / Eric Clapton and the Powerhouse8. Lovin' Cup / The Paul Butterfield Blues Band9. Good Morning Little Schoolgirl / The Paul Butterfield Blues Band10. Steppin' Out / Eric Clapton and the Powerhouse11. I'm In Love Again / Tom Rush12. Don't Bank on it Baby / The Lovin' Spoonful13. Searchin’ / The Lovin' Spoonful14. One More Mile / The Paul Butterfield Blues Band1966年リリース。関連記事リンク: ブルース・ロック好きの必聴・愛聴盤 ~前編~ へ 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2012年02月04日
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聴き手の心を鎮めて癒す超名盤 ケニー・ドーハム(Kenny Dorham, 1924年生まれ1972年死去)という人は、不遇なジャズ奏者だと思う。いろんな録音に参加しつつも脇役としてしか認知されず、自分のグループ(ジャズ・プロフェッツ)を形成するも長持ちせず、50歳手前で亡くなったせいもあって、“往年のジャイアンツ”的な存在となることもなかった。ところが、そんな中、わが国のジャズ・ファンは彼に熱い眼差しを向けてきたため、日本では比較的認知された存在である。米国での評価と日本での評価(と一面的に言いきれない部分もあろうが)の違いは、どこから来るのであろうか。よく言われるように、ドーハムはとりたてて革新的なプレーヤーではなかった。その点で評価が高くならないのはわからないでもない。しからば、何が日本人に受けてきたのか。このアルバムを聴けば、納得する人は多いはずだと感じる。 『静かなるケニー(原題:Quiet Kenny)』は、タイトルからわかるように、“静かな”演奏を集めたものである。別の有名盤『アフロ・キューバン』が熱く明るい方の彼であるとすれば、本盤は静かで物悲しい方の彼である。メンバーは、トミー・フラナガン(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、アート・テイラー(ドラム)の3人に、ケニー・ドーハムのワン・ホーンという編成。つまりは、安定した最高のリズムセクションの上にケニー・ドーハムの存在が際立っている。そのプレイは平凡と言えば平凡なのだが、“ありきたり”というわけではない。静かにめらめらと揺れる炎、内に秘めた情念みたいなものが演奏の向こう側に透けて見える。そして、普通に吹いているようでいて、人の心を鎮め落ち着かせるようなトーンが聴き手に投げかけられる。 1.「蓮の花(ロータス・ブロッサム)」の音色に癒しを感じられるかどうか。2.「マイ・アイディール」が醸し出す雰囲気にリラックスして入り込めるか。3.「ブルー・フライデイ」で思わず中空を見つめぼーっとしてしまえるか…。延々書いても仕方ないので、以下は省略するが、要するに、この雰囲気自体に入り込めるか(あるいはそのフィーリングを塊として受け入れられるか)が、本盤をいいと感じるか否かの最初の境目なのだと思う。その際に、ジャズの“進歩”や“進化”、演奏内容の“革新度”を真剣に考えすぎる聴き手は、先に述べたような決して高くはない評価を与えることになるのだろう。また、米国での注目度の低さは、単に米国人の中にこのフィーリング自体に馴染まない人が多いということなのかもしれない。この陰気くさい雰囲気もまたジャズであると筆者は思うのだが、それをまず認めてからでなければ好きになれない、ある意味では厄介な盤とも言える。 いずれにしても、そのフィーリングをいち早く嗅ぎとった日本のファンは、目ざとかった。米国ではメジャーにならない盤を、本邦では名盤に仕立て上げた。『静かなる~』という巧みな邦題も人気に寄与したのだろう。日本での評価に間違いはなかったと思う。いったんはまってしまえば、目を閉じて、ゆっくりと癒されるしかない。そうなれば、一気に最後の8.「マック・ザ・ナイフ」(別名を「モリタート」と言い、ソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』に収められた演奏が有名)まで、時間の流れの止まったかのような一時を過ごすことができる。目を閉じて静かに癒されたい人にお勧めしたい一枚。[収録曲]1. Lotus Blossom2. My Ideal3. Blue Friday4. Alone Together5. Blue Spring Shuffle6. If I Had The Craziest Dream7. Old Folks8. Mack The KnifeKenny Dorham (tp)Tommy Flanagan (p)Paul Chambers (b)Art Taylor (ds)録音: 1959年11月13日New Jazz 8255 【楽天ブックスならいつでも送料無料】静かなるケニー [ ケニー・ドーハム ] 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓
2010年03月25日
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いかにもハードバップ好きにはお薦め盤の一つ ホレス・シルヴァーのクインテットからリーダーの抜けた盤、というと、“船頭のいない船”のようでいかにも間抜けに聞こえるかもしれない。けれども、その“船頭”色が影を潜め、異なる色彩を放つこともあるというと、少々大げさだろうか。ジュニア・クック(Junior Cook)がリーダーとなったクインテットで、ジャケットの表示に従えば、“フィーチャリング・ブルー・ミッチェル(Blue Mitchell)”というメンバーで録音されたのが、本盤『ジュニアズ・クッキン(Junior's Cookin')』ということになる。 録音は、半分が西海岸(1.~3.および7.がカリフォルニアのロング・ビーチ)で、もう半分が東海岸(4.~6.がニューヨーク)で半年強の間をあけて行われた。上述の通り、全体的には“船頭”がいないことで急速にラテン色が薄まり、典型的ハードバップ色が強くなったと言えると思う。 筆者の個人的好みは、どこかべったりとした“垢抜けない”感じのジュニア・クックのテナーにある。一方で、そこに絡むのは、どちらかというと“垢抜けた”感じのするブルー・ミッチェルのトランペットというのが、ツボにはまる組み合わせなのかもしれない。ドロ・コッカーのピアノが好みであるとか、他の理由もあるのだけれど、ともかくでき上った演奏は、いかにもハードバップな演奏と言える。 初めから終わりまでどの演奏も、上記のようなべったりハードバップ好みの向きにはお薦めなのだけれど、少しだけ個人的好みを書いておこうと思う。1.「マイザー」は、ある種ベタベタに典型的なジュニア・クックのテナーが特によい。ブルー・ミッチェルによる4.「ブルー・ファローク」は、こちらの盤を想起させるような演奏。6.「フィールド・デイ」は作曲者ドロ・コッカーの短いイントロが印象的に始まり、その後の展開でも彼のピアノがいい味を出している。ある種、お決まりの展開や演奏を含め、ハードバップ中毒症の向きにはお薦めの盤と言えると思う。そうでない場合は、ジュニア・クックという人の演奏を気に入るかどうかで評価が分かれそうな気はする。無論、上で述べたように、個人的にはお気に入りの一枚である。[収録曲]1. Myzar2. Turbo Village3. Easy Living4. Blue Farouq5. Sweet Cakes6. Field Day7. Pleasure Bent[パーソネル、録音]Junior Cook (ts), Blue Mitchell (tp), Dolo Coker (p), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)1961年4月10日(4.~6.)、12月4日(1.~3.、7.)録音。 Junior Cook / Junior's Cookin 輸入盤 【CD】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2018年06月30日
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It’s Christmas Time 2019(その5) 前回のラウラ・パウジーニの「ホワイト・クリスマス」に続き、イタリア人が歌うクリスマス・ソングが連続することになってしまいますが、第5回は、盲目の大物テナー歌手、アンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli)が歌う有名クリスマス曲です。 トリノ五輪の閉会式でも登場したイタリアを代表する歌手の彼は、様々なクリスマス・ソングを歌っていて、2009年にはクリスマス曲集を発表しています。今回は、その中にも収録されている「もみの木(O Tannenbaum)」を、ライヴで披露しているシーンをどうぞ。 ご存知の方も多いでしょうが、この曲はドイツの有名なクリスマス曲で、英語では「オー・タンネンバウム」ではなく「オー・クリスマス・ツリー」の表題になっていたりします。今回のものは、ドイツ由来ということで、歌詞の一部もボチェッリはドイツ語で歌っています。 今年のクリスマス曲集、目標の5回目まで達することができました。明日はイブ、明後日はクリスマスです。どうぞ楽しいクリスマスをお過ごしください。[収録アルバム]Andrea Bocelli / My Christmas(2009年) 【輸入盤CD】【ネコポス送料無料】Andrea Bocelli / My Christmas (アンドレア・ボチェッリ)【お部屋で】 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年12月23日
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グラミー受賞につながったソロ作 記憶に間違いがなければ、筆者がカルロス・サンタナ(Carlos Santana)のソロ作で最初に聴いたのが、本盤『サルバドールにブルースを(Blues for Salvador)』だった。詳しい方にはいまさらな話だけれど、念のため、アーティスト名について触れておきたい。少々紛らわしくて、よく誤解されがちだが、カルロス・サンタナは個人名。一方、サンタナ(Santana)は、彼が率いるバンド名である。バンドの方は1960年代末から様々なアルバムを発表しているが、カルロス・サンタナ個人名義でのアルバム作品が発表されたのは、1979年の『ワンネス』以降のことである。同作から数えて、『サルバドールにブルースを』は、4作目のソロ名義盤ということになる。 前作の『ハバナ・ムーン』もそうなのだけれど、一時の宗教色は薄く、音楽的なルーツやバックグラウンドを意識し、バンドの方では盛り込みにくい要素を自由に取り込んでアルバム作品にしているという印象が強い。結果、この頃のソロ作は、カルロス・サンタナの人となりを掴むには好適といった感想を筆者としては抱いている。本作はグラミー賞(ベスト・ロック・インストルメンタル・パフォーマンス部門)に輝き、彼にとってのグラミー初受賞となった。 様々な参加メンバーの中では、バディ・マイルスやトニー・ウィリアムスの名が目を引く。実際、本盤の内容は、ロック、ラテン・ロックといった範疇に収まることなく、ジャズやブルースなどカルロスが育った音楽的背景を踏まえて、彼のギターを中心にしっかり聴かせるという作りになっている。 1.「舞踏 アクアティック・パーク(バイランド/アクアティック・パーク)」はラテン調のアルバム冒頭に相応しい、インパクトのある曲で、カルロスのソロが光る。ギターのプレイ内容は、アルバム全体を見渡すと結構多様であるが、筆者が気に入っているものとして、4.「トレーン」、5.「ディーパー・ディグ・ディーパー」、7.「ナウ・ザット・ユー・ノウ」あたりを挙げておきたい。アルバムを締めくくる表題曲の9.「サルバドールにブルースを」は、息子(その名がサルバドール)に捧げたナンバーである。この曲で繰り広げられるのは、これぞカルロス・サンタナというギター演奏。この曲をはじめ、とにかく彼のギターを全編にわたって堪能できるなかなかエキサイティングな一枚だと思う。[収録曲]1. Bailando/Aquatic Park2. Bella3. I'm Gone4. 'Trane5. Deeper, Dig Deeper6. Mingus7. Now That You Know8. Hannibal9. Blues for Salvador1987年リリース。 カルロスサンタナ Carlos Santana - Blues for Salvador CD アルバム 【輸入盤】 【輸入盤CD】Carlos Santana / Blues For Salvador 【K2019/5/10発売】(カルロス・サンタナ) 【中古】 サルバドールにブルースを/サンタナ 【中古】afb 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2023年03月07日
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シカゴの隠れ名曲選(其の1) シカゴ(Chicago)といえば、1960年代の末から現在まで長いキャリアを持つバンドですが、これまで本ブログでは、複数のアルバムを取り上げてきたほか、70年代のバラード選をやってみたり、80年代のポップ寄りなバラードを取り上げたりもしました。今回は、少し趣向を変え、“隠れ名曲選”と題して、このバンドによる少々マイナーなナンバーを中心に5曲ほどピックアップしてみたいと思います。 でもって、第1回目はこのシリーズを思い立ったきっかけのナンバーです。第7作となった2枚組の『シカゴVII(市俄古への長い道)』に収められた「ハッピー・マン(Happy Man)」です。 ヴォーカルはピーター・セテラ、この曲を書いたのも彼です(そういえば、この人のヴォーカルは“100万ドルの歌声”なんて言われたりもしましたね)。「長い夜」、「愛ある別れ(イフ・ユー・リーヴ・ミー)」などシカゴの有名曲の多くでヴォーカルを担当した彼ですが、そうした目立つところに出るわけではなかった今回のような曲においても、その実力を発揮しています。 ちなみに詞の内容は、“あなたに恋をしたハッピーな男”という何とも純真でストレートな内容。とはいっても、陳腐な感じにならないのは、やはり曲のよさ、演奏のよさ、そしてヴォーカルのよさといったところだと思います。[収録アルバム]Chicago / Chicago VII(市俄古への長い道))(1974年リリース) シカゴVII(市俄古への長い道) [ シカゴ ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年11月18日
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60年代末、ヨーロッパでの“一期一会” スライド・ハンプトン(Slide Hampton,本名ロクスレイ・ウェリントン・ハンプトン)は、1932年ペンシルヴァニア生まれのトロンボーン奏者。音楽一家に育ち、幼い頃に家族とともにインディアナに移住した。そこで1950年代には、ライオネル・ハンプトン、バディ・ジョンソン、メイナード・ファーガソンのバンドで演奏した。その後、1960年代にはブッカー・リトルやフレディ・ハバートらとオクテットを形成したほか、多くの有名ジャズ奏者と共演している。 そんな彼は、1968年にウディ・ハーマンのバンドの一員として渡欧したが、そのままヨーロッパに10年ほど住み着くことになった。当時のアメリカにはもうジャズを真っ当に演奏できる場がない、という限界を感じてのヨーロッパ移住だったと言われる。その翌年初頭に録音されたのが本盤『ザ・ファビュラス・スライド・ハンプトン・カルテット(The Fabulous Slide Hampton Quartet)』ということになる。 スライド・ハンプトン自身の技巧も凄いのだが、何より4人の演奏者の顔ぶれが凄い。当時ロンドンにいたフィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)がパリに来て参加している。残る2人はヨーロッパ出身者である。ヨアヒム・キューンは東ドイツ出身で西ドイツに亡命したピアノ奏者、ニールス・ペデルセンはデンマーク出身のベース奏者で、それぞれ当時25歳と23歳と若い(録音時の年齢は、フィリー・ジョーが46歳、スライド・ハンプトンが37歳)。この4人の不思議な取り合わせが生んだのは、何とも強烈な音の塊と激しさに溢れた演奏であった。 冒頭の1.「イン・ケース・オブ・エマージェンシー」は、曲名(“非常事態”)そのままに突っ走るタイプの演奏で、スピード感のあるトロンボーンも凄いのだけれど、それを支えるリズムセクション(特にベースがいい)の精度の高さが目立つ。以降も勢いと迫力に飛んだ演奏が続くが、若干落ち着いた雰囲気を垣間見せるのが4.「ラメント」で、このナンバーのみスライド・ハンプトンの自作ではなく、J・J・ジョンソン曲。5.「インポッシブル・ワルツ」も曲名(“あり得ないワルツ”)そのままに、激しい演奏(特にヨアキム・キューンのピアノが絶好調)を繰り広げている。ハイテンションで激しい演奏が展開される中で、個々の演奏がばらばらにならず統一感が保たれたのは見事。その理由は何だったのかを考えてみると、最後はスライド・ハンプトンの冷静さ(それは本盤の随所で演奏に現れている)にあったんじゃないかと思う。[収録曲]1. In Case Of Emergency 2. Last Minute Blues 3. Chop Suey4. Lament 5. Impossible Waltz [パーソネル、録音]Slide Hampton (tb)Joachim Kuhn (p)Neils Henning Orsted Pedersen (b)Philly Joe Jones (ds)1969年1月6日録音。 [枚数限定][限定盤]ザ・ファビュラス・スライド・ハンプトン・カルテット/スライド・ハンプトン[SHM-CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2016年09月05日
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メラニー名唱選(その1) “誰それ?”という声も聞こえてきそうな気もするけれども、メラニー(Melanie)という歌手をご存知でしょうか(スパイス・ガールズのメラニーCではありませんので、念のため…)。かくいう筆者もあと聴きで、さしてよく知るわけでもないのですが、なかなか印象的で、爽やかな声の女性シンガーです。部屋の片隅からひょっこり出てきたベスト盤を見かけ、ふと思い立ったので、数回に分けて彼女の曲を取り上げてみようと思います。 一般には単にメラニーとして知られる彼女のフルネームは、メラニー・アン・ソフィカ(Melanie Anne Safka)で、1947年ニューヨーク州生まれの女性シンガーソングライターです。1960年代後半に活動を開始し、コロンビアやブッダ・レコードから作品を発表しました。1969年のウッドストックに参加経験があり、1970年代初頭にかけていくつかのヒットを生み出し、その後も現在まで、細々と(いや、着々と)30枚を超えるアルバムをリリースしています。 まず1曲目の今回は、筆者がその昔に買ったベスト盤(上記の通り先日ひょっこり見つけたもの)の冒頭に収められていて、印象に残った「ルビー・チューズデイ(Ruby Tuesday)」です。 ご存知の方も多いでしょうが、この曲は1967年にローリング・ストーンズがリリースし、全米1位(全英では3位)を記録したナンバーです。そのようなわけなので、ストーンズの演奏もお聴きいただこうと思います こうしてメラニーのヴァージョンとストーンズのヴァージョンを比較して聴くと、メラニーの方は原曲のイメージを豪快に捨てて、うまくストレートな感じにアレンジ(脱アレンジ?)したなという印象も受けます。[収録アルバム]Melanie / Candles In The Rain(1970年)The Rolling Stones / Flowers(1967年) ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・メラニー [ メラニー ] 【メール便送料無料】Melanie / Greatest Hits (輸入盤CD)(メラニー) 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2016年08月03日
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ギターの神様、“ジミヘン”のマスターピース ジミ・ヘンドリクス(Jimi Hendrix)は、1970年に27歳の若さで不可解な死を遂げた。一般に、死因は睡眠中の窒息死とされるものの、救急隊が病院へ搬送した際に居合わせた人たちの証言に食い違いがあったり、マネージャー(マイケル・ジェフリー)が彼の殺害を告白し、その上、飛行機事故で死んだはずのこのマネージャーがその後も生きていたという証言があったり、何かと不審な点があると言われたりもする。 死の真相はともあれ、彼の存命中にリリースされた3つのスタジオ作のうち、最後の作品となったのが、本盤『エレクトリック・レディランド(Electric Ladyland)』であった(なお、ライヴ盤も含めると、翌年、急死の前に『バンド・オブ・ジプシーズ』という作品がリリースされている)。本盤は、今でこそ1枚のCDにすべて収まっているが、LP時代には2枚組の大作で、これまでのチャンス・チャンドラーに代わってジミ自身がプロデュースを担当したアルバムとなった。 ザ・ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスは、ジミのほか、ノエル・レディング(ベース)、ミッチ・ミッチェル(ドラムス)の3人から成るが、本盤には様々なゲスト・ミュージシャンも参加している。例えば、4.「ヴードゥー・チャイル」には、スティーヴ・ウィンウッド(ハモンドオルガン)やジャック・キャサディ(ベース)、6.「長く暑い夏の夜」にはアル・クーパー(ピアノ)が参加している。他にも、デイヴ・メイスン(3.と15.、12弦ギターおよびコーラス)、ブライアン・ジョーンズ(15.、パーカッション)、マイク・フィニガン(10.と13.、オルガン、参考過去記事)らが演奏に加わっている。 全体がコンセプト・アルバムになっているというわけではないのだけれど、ジミ・ヘンドリックスの頭の中に鳴り響いていた音を実際の音に表現した演奏として、本盤はその集大成的仕事である。否、生き続けていれば集大成作はその後にも生み出されたのだろうから、その死によって集大成作になったという方が正確なのかもしれない。ともあれ、“ジミヘンを聴いてみたいんだけど”なんて人がいるとすれば、筆者はまずこの盤を勧めることは間違いない。 ちなみに、本盤はUS盤とUK盤とでジャケット・デザインが異なっていた。英盤は19人の裸の女性が収められた写真が2枚組仕様で折りたたまれたジャケットの表面と裏面をあわせた形でデザインされていたが、ジミ・ヘンドリクス自身はこのジャケットを気に入っていなかったという(個人的には、最初に本盤を知ったのがUKジャケだったので、こちらの方がしっくりくるのだけれど)。現在では遺族の意向で、ジミの顔写真をあしらった米盤ジャケット・デザインの方が使用されている。 [収録曲](LPのA面)1. And the Gods Made Love2. Have You Ever Been (to Electric Ladyland)3. Crosstown Traffic4. Voodoo Chile(LPのB面)5. Little Miss Strange6. Long Hot Summer Night7. Come On (Let the Good Times Roll)8. Gypsy Eyes9. Burning of the Midnight Lamp(LPのC面)10. Rainy Day, Dream Away11. 1983... (A Merman I Should Turn to Be)12. Moon, Turn the Tides...Gently Gently Away(LPのD面)13. Still Raining, Still Dreaming14. House Burning Down15. All Along the Watchtower16. Voodoo Child (Slight Return)1968年リリース。 エレクトリック・レディランド [ ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2022年07月24日
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マンサネーロ名曲集(その2) メキシコの作曲家アルマンド・マンサネーロの名曲選(不定期更新)をお届けしていますが、第2となる今回も超有名どころの選曲です。「ソモス・ノビオス(Somos novios)」というナンバーですが、エルヴィス・プレスリーら英語圏のシンガーたちが吹き込んだ「イッツ・インポッシブル(It’s Impossible)」の原曲としても有名です。 マンサネーロがこの曲を発表したのは1968年のことなのですが、すぐさま英語に訳され、プレスリーはじめ様々なシンガーに歌い継がれたということのようです。まずは若き日のマンサネーロの歌唱をどうぞ。 せっかくですので、E・プレスリーのヴァージョンもお聴きいただきましょう。英語でのタイトルは、上述の通り「イッツ・インポッシブル(It’s Impossible)」ですが、この曲名では先にペリー・コモが1971年にヒットさせ、その後、プレスリーが取り上げたという経緯だったそうです。 有名曲ということで、とりわけメキシコではいろんな歌手が取り上げていますが、その中でも超有名どころ、ルイス・ミゲルによる歌唱です。マンサネーロ自身との共演映像をどうぞ。 今回はビデオの数が多くて恐縮ですが、最後にもう一つ、もう少し新しいこの曲のカバーも見ておきましょう。イタリアのテノール歌手、アンドレア・ボチェッリもこの曲を取り上げているのですが、彼はこの曲で日本人女性シンガーとも共演しています。そのようなわけで、最後に、A・ボチェッリ&夏川りみ(「涙そうそう」のあの人です)の「ソモス・ノビオス」(ちなみに「愛の夢」なる邦語タイトルがついています)もどうぞ。 【中古】貴方に贈る愛の歌/ボチェッリCDアルバム/クラッシック 【メール便送料無料】Armando Manzanero / 20 Exitos Originales (輸入盤CD) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2017年05月23日
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CCR名曲選・第2弾(その3) CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル)名曲選の第3回です。今回は、よき時代のよきナンバーをCCRが巧妙にカバーした、とでも言えそうな曲を取り上げたいと思います。彼らにとって第4作となった『ウィリー・アンド・ザ・プアボーイズ』(1969年)に収められた「コットン・フィールズ(Cotton Fields)」という曲です。 この曲は、レッドベリー(Lead BellyもしくはLeadbelly,1888年生まれで1949年死去のフォーク/ブルース・シンガー)のナンバーです。ちなみに、これとほぼ同時期にビーチ・ボーイズもこの曲を吹き込んでいて、1970年にシングルとしてリリースされています。 そんなわけで、レッドベリーの「コットン・フィールズ」、そしてビーチ・ボーイズによる「コットンフィールズ」(こちらの方はCottonfieldsと一語で表記されています)をそれぞれお聴きください。 [収録アルバム]Creedence Clearwater Revival / Willy and the Poor Boys(1969年)The Beach Boys / 20/20(1969年) 【メール便送料無料】クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル / ウィリー・アンド・ザ・プアボーイズ(40周年記念盤)[CD][初回出荷限定盤] Beach Boys ビーチボーイズ / 20 / 20 + 2 【SHM-CD】HMV&BOOKS online 2号店 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2018年03月30日
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ツェッペリンを消化し、血肉としたアン・ナンシー姉妹 ~その1~ ハート(Heart)というバンドは女性姉妹のフロントマン(アン・ウィルソンとナンシー・ウィルソン)ということから、「女性的」なイメージが強い。つまり、「女だてらに」や「男まさりの」、はたまた「女性のくせに」とか「女性だからこそ」とか、そんな形容をされて、「(フロントが)女である」ことが付きまとってしまっている。けれども、その「女」という要素を外して、冷静に考えれば、このバンドほどレッド・ツェッペリンを自己の血肉の一部として見事に消化したアーティストはいないのではないか。 1980年代半ばのハート(典型的には1985年のアルバム『HEART』)は確かにややポップで売れ筋な路線に走った。とはいえ、それ以前の70年代後半(厳密に言えば76年のデビューから80年代初頭まで)の彼らの作品を聴けば、ツェッペリンの音楽に憧れ、それを見事に消化し、自分たちの音楽作りにつなげていることがよくわかる。 その頂点というか、原点に立ち返った演奏がこの「ロックンロール」だ。デビュー以来コンスタントに積み上げてきたヒット曲にライヴ収録曲を合わせて編集した1980年のアルバム『ザ・グレイテスト・ストーリー(LIVE & BEST))』(原題は『Greatest Hits/Live』)に収録されている。「ロックンロール」は、まさにライヴのハイライトといった場面での演奏で、アルバムの最後の曲として収められた。この演奏は、ツェッペリンを超える/超えないという次元で聴くものではなく、ツェッペリンを消化して自己の音楽を創造していった次の世代の名演として、聴き継がれていいと思う。 ちなみに、アンとナンシーは、このような「正統派ハードロック」としてのツェッペリンだけを継承したのではなかった。これには別の推薦曲があるので、次項でその話を続けたい。[収録アルバム]Heart / Greatest Hits/Live (1980年、初のベスト盤)Heart / The Essential Heart (2002年、Essentialシリーズの2枚組ベスト盤)
2009年08月08日
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キャリア30余年での初ソロ作 クリッシー・ハインド(Chrissie Hynde)は1951年アメリカ出身の女性ロック・シンガー。1979年にプリテンダーズのフロントとしてデビューした。同バンドはメンバー・チェンジを経ながらも彼女のバンドとして存続してきており、2005年にはロックの殿堂入りを果たしている。 そんな“ロック界の姉御”クリッシーが2014年に発表したキャリア初のソロ・アルバムが、この『ストックホルム(Stockholm)』である。“姉御”初のソロ作ということもあり、リリース時にはその情報に心躍った。それまでバンド活動にこだわっていたクリッシーが初ソロ作に傾いた背景には、以下に見るような状況があったようだ。 プリテンダーズ作品は2008年からしばしブランクがあった。その間、J・P・ジョーンズとの共作に取り組むなど変化があり、ビヨーン・イットリング(ピーター・ビヨーン・アンド・ジョン)との共作話が持ち上がる。何曲か共作のつもりがそのままアルバムに発展したという(実際、収録曲はすべてビヨーンとの共作で、制作場所もビヨーンの母国スウェーデンの首都ストックホルムでこれがアルバム表題に反映されている)。つまりは、クリッシーはまだ健在という意識と、共作から始まった純ソロというよりは様々なメンバーとの出会い(それはメンバーを入れ替えてきたプリテンダーズとまったく別の環境というわけではなかったのかもしれない)が続き、アルバムとしてまとまるまでに至ったようである。 そのようなわけで、文字通りのソロといった印象よりは、プリテンダーズでやってきた活動同様、クリッシーを中心にしたバンドでの作品という意味では、確かに劇的に“ソロ”という感じではない。以下、いくつかの曲をピックアップしてみたい。 1.「ユー・オア・ノー・ワン」は、アルバムからシングルカットされた曲(なお、その前には2.「ダーク・サングラス」が先行シングルとなっている)で、一歩引いたリラックス感がいい。4.「ダウン・ザ・ロング・ウェイ」は、制作段階で“ニール・ヤングの曲”と呼ばれていたそうで、実際にニール・ヤングがゲスト参加してギターを演奏している。5.「ユア・ザ・ワン」は、クリッシーらしさが発揮されたシンプルな好曲。6.「ア・プラン・トゥー・ファー」では、テニス選手のジョン・マッケンローが何とギターで参加している。9.「スウィート・ナッシン」は、クリッシーの肩の力の抜け具合が1.と並んで心地よい。かと思うと、ラストの11.「アッディング・ザ・ブルース」のような感情が重くのしかかるような曲も含まれていて、アルバム全体の起伏もメリハリがついている。 既に60歳を超えたクリッシー・ハインドだけれども、本作の内容を聴いていると、この5年、10年でまだひと活躍もふた活躍もしてくれるんじゃないかと思いたくなる。実際にそうなることを願いたい。[収録曲]1. You or No One2. Dark Sunglasses3. Like in the Movies4. Down the Wrong Way5. You're the One6. A Plan Too Far7. In a Miracle8. House of Cards9. Tourniquet (Cynthia Anne)10. Sweet Nuthin'11. Adding the Blue2014年リリース。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ストックホルム [ クリッシー・ハインド ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2015年06月27日
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ピアノ演奏と“声”に徹した異色盤 チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)は、1922年、米国アリゾナ州出身のジャズ・ベース奏者(1979年没)。単にベーシストとしてだけではなく、作曲家、バンド・リーダーとしての才能を発揮していたものの、そんな彼が1962年に発表(録音はその前年)した本盤『オー・ヤー(Oh Yeah)』では、ベースを弾かずにアルバムの吹き込みを行うという、思い切った行動に出た。 本盤でミンガスが担当しているのはピアノとヴォーカル。したがってミンガスの作品としては、本職(ベース)の代表作というよりも、“異色作”という方が適当だろう。収められた7曲は、いずれもミンガス自身の作で、基本的にブルース曲である。 アルバム全体として、演奏は奥行きや厚みがあるもので、ミンガスの作曲能力の高さと、曲によっては彼のヴォーカルの妙なドスの効いた勢い(?)が妙に耳につく。そう、“ヴォーカル”というより“声”と呼んだ方が適切なような気すらする。そして、この“声”というのが、本盤を“ねちっこい”ものにしていると表現してもいいように思う。 とはいえ、その“ねちっこさ”の理由は、ミンガスの声と同時に、もう一つにあるように思う。それは、ブッカー・アーヴィンのサックスである。アーヴィンは筆者お気に入りのテナー奏者でこれまでもリーダー作(参考過去記事(1) ・(2) ・(3) )を取り上げているが、彼の存在がその“ねちっこさ”に拍車をかけているのである。 聴きどころはと言われると、全体を通して聴くのがよいと思うのだけれど、敢えてこれはという収録曲を挙げるなら、1.「ホッグ・コーリン・ブルース」と2.「デヴィル・ウーマン」。後半になるとさらにハチャメチャな部分を含むが、個人的には5.「神よ原子爆弾を降らせ給うな」が気に入っている。[収録曲]1. Hog Callin' Blues2. Devil Woman3. Wham Bam Thank You Ma'am4. Ecclusiastics5. Oh Lord Don't Let Them Drop That Atomic Bomb on Me6. Eat That Chicken7. Passions of a Man[パーソネル、録音]Charles Mingus (p, vo)Rahsaan Roland Kirk (fl, siren, ts, manzello, strich)Booker Ervin (ts)Jimmy Knepper (tb)Doug Watkins (b)Dannie Richmond (ds)1961年11月6日録音。 【輸入盤CD】CHARLES MINGUS / OH YEAH (チャールズ・ミンガス) 下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、 バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2021年11月19日
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没後6年目のアウトテイク集 1980年、今風に言えば“育休”からの復帰を果たし、『ダブル・ファンタジー』を発表したばかりのジョン・レノン(John Lennon)は、凶弾に倒れて帰らぬ人となった。それから3年と少しが経った後、同作の未発表音源を含む『ミルク・アンド・ハニー』がリリースされたが、さらに1986年になって、別の未発表音源集がアルバムとして発表された。それがこの『メンローヴ・アヴェニュー(Menlove Ave.)』という盤で、前作と同様にオノ・ヨーコが監修したものである。 本作は、未発表とはいっても、死の直前のものではなく、時を遡って1973~74年の音源である。アナログのA面(1.~5.)は、1973年、ロサンゼルスでのアルバム『ロックン・ロール』のレコーディング・セッションからのもの(ただし、2.のみ『マインド・ゲームス』のレコーディング・セッションの音源)。他方、B面(6.~10.)は、1974年の音源で、アルバム『心の壁、愛の橋』のリハーサル・セッションに由来する。 まずはA面から注目の曲を見ていきたい。1.「ヒア・ウィ・ゴー・アゲイン」は、カバー・アルバムである『ロックン・ロール』のレコーディングで唯一録音された自作曲。実にジョンらしい曲で、彼が亡くなった後となってはないものねだりなのだが、これが煮詰まっていつか公表されるようになったかもしれないヴァージョンを聴いてみたかった。2.「ロック・アンド・ロール・ピープル」は、上述のように、別のセッションの音源のものだが、キレのある好曲でアレンジと演奏の完成度も高い。3.~5.のカバー曲はどれも出来がよいのだけれど、筆者の個人的好みで一つ挙げると、R&Bナンバーの4.「マイ・ベイビー・レフト・ミー」ということになるだろうか。 B面に移って、こちらは『心の壁、愛の橋』のリハ音源ということもあってややマニア向けかもしれない。6.~10.の楽曲はどれもアルバムとして一度発表されている楽曲であるが、いずれの曲もジョンの“生の声”に近いヴォーカルと言える。個人的好みからすれば、7.「心のしとねは何処」や8.「枯れた道」がおすすめと言える。[収録曲]1. Here We Go Again2. Rock 'n' Roll People3. Angel Baby4. Since My Baby Left Me5. To Know Her Is To Love Her6. Steel and Glass7. Scared8. Old Dirt Road9. Nobody Loves You (When You're Down and Out)10. Bless You1986年リリース。 【中古】 メンローヴ・アヴェニュー/ジョン・レノン 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2024年11月11日
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INDEXページ(ジャンル別、アーティストのアルファベット順)を更新しました。ここ最近の記事を追加しています。INDEXページへは、下のリンク、もしくは本ブログのトップページ(フリーページ欄)からお入りください。アーティスト別INDEX~ジャズ編(A-G)へ → つづき(H-M)・つづき(N-Z)アーティスト別INDEX~ロック・ポップス編(A)へ → つづき(B)・つづき(C-D)・つづき(E-I)・つづき(J-K)・つづき(L-N)・つづき(O-S)・つづき(T-Z)アーティスト別INDEX~ラテン系ロック・ポップス編(A-I)へ → つづき(J-N)・つづき(O-Z)アーティスト別INDEX~邦ロック・ポップス編へ下記ランキングに参加しています。応援くださる方は、いずれかのバナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2024年11月17日
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これぞロックなプロトタイプ(その1) 先日取り上げたザ・フーのデビュー盤から2曲、さらに映像で取り上げてみたいと思います。 同盤のリリースが1965年なわけですから、ロック史上、2010年代の今から見れば半世紀も前の“大昔”ということになりますが、これぞプロトタイプ(原型)といった演奏をお聴きください。 まずは、初期の代表曲「マイ・ジェネレーション」ですが、暴力的と思われる部分も含め、ロックの体現する激しさがよく出た曲です。先の記事にも書きましたが、“ロックとは何か”と訊かれたら、百聞は一見にしかずということで“こういうものですよ”と見せたくなります。 とはいっても、当時のザ・フーの本領はこの「マイ・ジェネレーション」だけでは不十分かもしれません。キース・ムーンの激しいドラミングをはじめ、彼らの演奏の凄さは、次の「オックス(The Ox)」の演奏に一層如実に表れています。 もちろん、彼らの演奏はずっとこのままだったのではなく、進化していきます。ちなみに、私自身は『トミー』や『フーズ・ネクスト』辺りの彼らのサウンドの方が好みです。とはいえ、上記2曲にはロックの原型がぎっしり詰まっているという点で実に魅力的だし、進化した(し過ぎた?)後のロックしか頭の中のイメージが浮かばないという人にも、一度立ち止まって見ていただきたいものです。[収録アルバム]The Who / My Generation (The Who Sings My Generation)(1965年) 【楽天ブックスならいつでも送料無料】マイ・ジェネレイション +12 [ ザ・フー ] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2014年09月29日
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前年のライブ盤とは違った魅力を見せるクインテット 本作『ジャズ・フォーザ・キャリッジ・トレード(Jazz For The Carriage Trade)』は、ジョージ・ウォーリントン(George Wallington)率いるクインテットが1956年初頭に吹き込んだもの。ジョージ・ウォーリントンその人については、『ライヴ・アット・カフェ・ボヘミア』の項で簡単に触れたので割愛するが、同ライブ録音盤の翌年、時間にしてわずか数ヵ月後の録音ということになる。 この間にはクインテット(五重奏団)のうちのメンバー二人の交代があった。一人はマイルス・デイヴィスのグループのレギュラーとなったポール・チェンバース(ベース)で、本盤ではテディ・コティックに交代している。もう一人は、アルトサックスのジャッキー・マクリーンで、後任者は白人アルト奏者のフィル・ウッズに替わっている。 上述のメンバーの変化から、“マクリーンのいないジョージ・ウォーリントン・クインテットは面白くない”という評価も一方にある。けれども、『ライヴ・アット・カフェ・ボヘミア』とこの『ジャズ・フォーザ・キャリッジ・トレード』は、共通点もあるのだけれども、根本的に大きく趣が異なり、どうも比較しづらいように思う。 その根本的相違とは、『カフェ・ボヘミア』には“勢い”が非常に強く感じられるのに対し、『キャリッジ・トレード』はより洗練された“知性”が前面に出ている点である。あえて“知性”という言葉を使ったが、“より計算されている”と言い直してもよいかもしれない。つまり、ライヴ感溢れる勢いを求めるのか、もう少し落ち着いて耳を傾ける楽しみを優先させるのか。この2つの評価は観点がまったく異なるゆえ、これら2枚のどちらがよいかという選択は困難だと思われるわけである。 とはいえ、同じウォーリントンのグループの近い時期の録音ということで、共通点も存在する。何よりも、リーダーであるウォーリントンの“手綱の締め方”が両盤には共通する。各自に特徴あるプレイをさせつつも全体のまとまりをしっかりと決めるという、グループ全体のコントロールはやはり見事としか言いようがない。本盤『キャリッジ・トレード』に関して言えば、筆者は1.「アワ・デライト」の一体感が特に好きである。その上で、5.「ホワッツ・ニュー」のような知性溢れる演奏を見せられると、聴き手は一気にノックアウトされるしかない。もう一つ付け加えるならば、新加入のフィル・ウッズによる2曲(4.「トゥゲザー・ウィ・ウェイル」と6.「バット・ジョージ」)が意外にいいと思う。この2曲が含まれているおかげで、21世紀の現在という“未来”から聴くと、“古き良きジャズ時代”の雰囲気がより一層高められるという効果を生んでいる。 この“雰囲気”を楽しみながら聞き流すのもよし、1曲1曲の細部に散りばめられた“知性”(これがまた聴くたびに新たなところで感心させられる!)を捜しながら聴くのもよし。いずれの聴き方もできる優れた盤だと思う。 [収録曲]1. Our Delight2. Our Love Is Here To Stay3. Foster Dulles4. Together We Wail5. What's New6. But George George Wallington (p)Phil Woods (as)Donald Byrd (tp)Teddy Kotick (b)Arthur Taylor (ds) 録音: 1956年1月20日 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード [ ジョージ・ウォーリントン ]
2010年01月19日
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ネオ・クラシカル・メタルなインスト・ナンバーの衝撃 ~その2~ 「ブラック・スター」に続き、今回もまた同じイングヴェイ・マルムスティーン(Yngwie J. Malmsteen)のソロ・デビュー・アルバム『ライジング・フォース』からの曲、「ファー・ビヨンド・ザ・サン」である。この曲も前回の「ブラック・スター」同様、インスト曲で、アルバム中では1曲目と2曲目に並んで収録されている。「ブラック・スター」はゆっくりのテンポで抒情的なメロディを聴かせるタイプの曲であった。これに対し、同じアルバムで続く2曲目にあたる「ファー・ビヨンド・ザ・サン」は、のっけから硬派なロック的アタックで始まるナンバーだ。だからといって、HR/HMの世界から見て、必ずしもスタンダードな演奏のみというわけではない。随所で音階を一気に駆け昇ったり降りたりするイングヴェイ得意の早弾きフレーズも披露されていて、彼の特徴であるクラシカルな音階が上手く活かされている。 曲のメインとなるメロディは典型的ロック調である。あくまで基本はこれであって、そこにクラシカルな音階(各フレーズの終りに来ることが多い)が組み合わされている。ドラムは良くも悪くも単調で、シンセがかなりの部分バックで鳴り続けている。つまり、ロックの曲としてはどちらかと言えばシンプルな作りといっていいと思うのだけれど、最終的に曲全体としてこれだけ目新しいのは、イングヴェイのギター演奏ゆえということになる。つまり、究極的にはイングヴェイのギター・インストの“独り舞台”的な曲なわけだ。彼のギターを聴いたことがない、どんなものか知りたいという人がいるならば、個人的には、真っ先にこの曲を最初に聴くことをお勧めする。 こう言うと「ファー・ビヨンド・ザ・サン」はイングヴェイ入門者用の曲かと思われるかもしれないが、まったくそういうことはない。バンド演奏としての出来という点では、『オディッセイ』などの作品もいいのだけれど、ギター演奏に限り、1曲だけイングヴェイをよく表している演奏を選ぶのなら、間違いなくこの曲がいちばんだと思う。とにかくカッコいい。イングヴェイの演奏スタイルもっとも典型的に表していて、なおかつ、他作を聴いてもやっぱり彼のギター・プレイの代表作として聴き続けられる。つまり、(老若男女とは言わないまでも、)初めてイングヴェイを聴く人から、ずっと聴いている人までみんなが楽しめる(そしてきっと多くの人にとっていちばんのイングヴェイのお気に入りになるであろう)、そんな1曲がこの「ファー・ビヨンド・ザ・サン」だと言える。[収録アルバム]Yngwie J. Malmsteen's Rising Force (1984年)[関連記事リンク]ネオ・クラシカル・メタルなインスト・ナンバーの衝撃 ~その1~ へ 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓
2010年07月04日
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酔いどれ詩人、デビュー作 トム・ウェイツ(Tom Waits)は、1949年、ロサンゼルス郊外で生まれたシンガーソングライター。1970年代にロサンゼルスを拠点とし、その後、1980年代にはニューヨークに拠点を移して活動した。今も現役だが、2011年にロックの殿堂入りを果たしている。 そんなトム・ウェイツのデビュー盤となったのが、1973年発表の『クロージング・タイム(Closing Time)』である。当時はまだ新興のレーベルであったアサイラムと契約して制作されたデビュー盤であったが、ヒットはしなかった。とはいえ、聴きどころは多い。収録曲の大半は、アサイラムとの契約前の1971年にデモ録音をした楽曲の再録である。初作というせいかいくぶんきれいに収まっている感はあるものの、初期トム・ウェイツの魅力が満載の盤と言っていいように思う。 有名なナンバーとしては、冒頭の1.「オール'55」。これが彼のデビュー・シングルであったが、有名になったのは、翌1974年にイーグルスがカバーしたことによる。目立った感じはしないかもしれないが、アルバム前半では、3.「ヴァージニア・アヴェニュー」や6.「マーサ」が筆者としては好みであったりする。さらに、アルバム後半(アナログB面)では、密かな名曲の11.「グレープフルーツ・ムーン」(後にサウスサイド・ジョニーがトム・ウェイツのカバー・アルバムを制作しその表題にもなっている)、そして、表題曲の12.「クロージング・タイム」が特に聴き逃がせないナンバー。あともう一つぐらい挙げてよければ、10.「愛の翼(リトル・トリップ・トゥ・ヘヴンーオン・ザ・ウィングス・オブ・ユア・ラヴ)」もこれらと並ぶ好曲である。 本盤の後、1974年の『土曜の夜』を皮切りに、1970年代後半にかけて、『娼婦たちの夜』(ライヴ盤)、『スモール・チェンジ』、『ハートアタック・アンド・ヴァイン』など必聴の名作が目白押しのため、このデビュー作の影が薄いことは否めない。けれども、曲のよさという意味では上で挙げた何曲かのように突出したナンバーが含まれていて、トム・ウェイツの1970年代作を新たに聴き進む人には、ぜひ聴いてもらいたい一枚だと思う。[収録曲]1. Ol' 552. I Hope That I Don't Fall in Love with You3. Virginia Avenue4. Old Shoes (& Picture Postcards)5. Midnight Lullaby6. Martha7. Rosie8. Lonely9. Ice Cream Man10. Little Trip to Heaven (On the Wings of Your Love)11. Grapefruit Moon12. Closing Time1973年リリース。 【輸入盤CD】【ネコポス送料無料】Tom Waits / Closing Time 【K2018/3/9発売】(トム・ウェイツ) 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2020年07月06日
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いわくつきの“ライヴ盤” ザ・バンド(The Band)のライヴ盤と言えば、『ロック・オブ・エイジズ』あるいは『ラスト・ワルツ』。これらを差し置いて優先されるライヴ盤はない。けれども、今回は彼らのいわくつきの“ライヴ盤”に目を向けてみたいと思う。1995年に発売された『ライヴ・アット・ワトキンス・グレン(Live at Watkins Glen)』というのがその盤である。 アーティストの作品は、時に制作途中で頓挫したり、出来上がったとしても何らかの理由でお蔵入りになってしまうことがある。この盤は、1974年に『イズ・エヴリバディ・ウェット?(Is Everybody Wet?)』の表題でリリースが予定されていたらしいが、キャンセルされて“お蔵入り”となった。それから20年以上が経過した1995年、この『ライヴ・アット・ワトキンス・グレン』となってリリースされた。“お蔵入り”から“蔵出し”とういことになったわけである。 この“蔵出し”盤は、賛否両論(というか、否の声の方が圧倒的に大きい)となった。というのも、早い話が本当のワトキンス・グレン・サマー・ジャム(1973年夏の大規模ライヴ)の音源をそのまま収録した盤ではないからだ。どうやら2曲(5.「トゥー・ウェット・トゥ・ワーク」と9.「ジャム」)だけが、該当するライヴの音源で、残りはアウトテイクにライヴ風の音声加工を施した“作り物”であったり、別のライヴ音源だったりするのである(5.なんかは悪天候の雷鳴音なんかが妙に大袈裟に聞こえるので、その辺も加工されているのかもしれない)。1.「バック・トゥ・メンフィス」と2.「エンドレス・ハイウェイ」は、『ムーンドッグ・マチネー』のアウトテイクで、加工前の演奏はそちらの盤のリマスター(2001年)で聴くことができる。3.「アイ・シャル・ビー・リリースト」を含む何曲かは、ライヴ盤『ロック・オブ・エイジズ』のアウトテイクとのこと。さらに、出所がよくわからない音源の曲もいくつか含まれている。 このようなわけで、“フェイク盤”などと揶揄されるのだけれど、羊頭狗肉や疑似ライヴ加工は確かに非難されても仕方がない。だからと言って聴くに値しない演奏内容かと言えば、そういうわけでもない。つまるところ、もうちょっと違う形で作品化されればもっと違う評価を受けた可能性が高いと言えると思う。今の時代にこんな作品というか“商品を売り出す”なんてことをすれば、あっという間にネットで炎上ものである。それにしても、活動当時にリリースが中止になったとはいえ、ザ・バンドのメンバーがなぜこんな加工を是としたのか…。何ともすっきりせず、疑問が残り続ける盤だったりする。[収録曲]1. Back to Memphis2. Endless Highway3. I Shall Be Released4. Loving You Is Sweeter Than Ever5. Too Wet to Work6. Don't Ya Tell Henry7. The Rumor8. Time to Kill9. Jam10. Up on Cripple Creek1995年リリース。 【中古】 ライヴ・アット・ワトキンス・グレン /ザ・バンド 【中古】afb 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2021年07月07日
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ソロ名義の名盤 1989年の『フル・ムーン・フィーヴァー』に続き、ソロ名義としては2枚目のアルバムとして1994年にリリースされたのが、トム・ペティ(Tom Petty)の本作『ワイルドフラワーズ(Wildflowers)』である。MCAからワーナーへ移籍後の最初の作品となった。いつものバンド(ハートブレイカーズ)ではなく、ソロ作として制作したのは、リック・ルービン(プロデューサー)とトム・ペティの2人で自由にやりたかったからとのこと。ただし、実際の演奏には、ハートブレイカーズの全メンバー(ドラムスについてはこれ以降に後任ドラマーとなったスティーヴ・フェローン)が参加している。 アルバム全体を通してトム・ペティ節が全開で、ファンの中にはこれを最高作とする意見もある。確かに、1970年代の『破壊』が若き勢いを持った彼の傑作だとするならば、この『ワイルドフラワーズ』の方は、キャリアを重ね、40歳を手前にしていい意味で円熟味を帯び始めた時期の傑作と言ってもいいかもしれない。 いくつか好みの曲を挙げておこうと思う。表題曲の1.「ワイルドフラワーズ」のしっとりと聴かせるこの加減は、上記のとおり、いい意味での余裕と円熟を感じさせる。テンポのよいトム・ペティらしさが前面に出たナンバーとしては、4.「ユー・レック・ミー」と12.「ハイヤー・プレイス」が個人的な好み。とはいえ、全編が早めのテンポや重厚な演奏のナンバーが並ぶと、きっと本盤は名作と呼ばれることになっていなかったんじゃないかと感じる。肩の力が抜けたゆったりな曲、メランコリックなナンバー、ヴォーカルをしっかりと聴かせるミディアムやスロー・テンポの曲…。こうしたヴァリエーションがあってのこのアルバムというふうに筆者は思う。そんなことを考えるにつけ、5.「イッツ・グッド・トゥ・ビー・キング」や14.「クローリング・バック・トゥ・ユー」なんかも聴きどころと言っていいような気がする。 十分にヴォリュームがあって聴きごたえのある15曲というのが本盤ではあるのだけれど、当初2枚組でのリリース(全25曲)という案もあったのだという。実際、多くのアウトテイク音源があり、1枚のアルバムに収めるためにカットされた10曲の音源は、2020年に蔵出しリリースされた。筆者は未聴だけれども、この際の豪華なエディションは、レコード9枚組、CDでは5枚組というヴォリュームで、上記10曲に加え、アウトテイクやライヴ音源などが収められているとのこと。[収録曲]1. Wildflowers2. You Don't Know How It Feels3. Time to Move On4. You Wreck Me5. It's Good to Be King6. Only a Broken Heart7. Honey Bee8. Don't Fade on Me9. Hard on Me10. Cabin Down Below11. To Find a Friend12. A Higher Place13. House in the Woods14. Crawling Back to You15. Wake Up Time1994年リリース。 輸入盤 TOM PETTY / WILDFLOWERS [CD] 【送料無料】WILDFLOWERS & ALL THE REST [3LP VINYL] 【輸入盤】【アナログ盤】▼/TOM PETTY[ETC]【返品種別A】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2023年06月01日
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