Serendipity

2019.12.26
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テーマ: 海外旅行(7523)
カテゴリ: 思い出
みなさま、お元気ですか?

8月にブログを更新してから4ヶ月……その間、緑内障を患っている目のことを中心にいろいろと悩み多き日々を過ごしてきましたが、この年末はなんとかこうして元気に過ごしています。

さて、4ヶ月もブログを書いていないと、何を書けばいいのやら……文章を書く勘もやや鈍っておりますが、お付き合いいただければ幸いです。



・・・・・・



今日は「別れ」をテーマに書きたいと思います。

私は今月41歳になったのですが、この年になると、振り返ればたくさんの出会いと別れがありました。転職も多かったので、なおさらかな……。

なかでも一番心に残っているお別れは、ニュージーランドのホストファミリーとのお別れです。



・・・・・・



大学卒業前の2月、私は3週間、ホームステイをしながらニュージーランドの語学学校に通いました。

ホストファミリーは、Cさんという50代の女性でした。旦那さんとは離婚されたそうで、一人暮らしをしている人でした。



Cさんはとても面倒見の良い人で、暇を見つけては私の話し相手になってくれました。ほとんど毎日、私たちは夜遅くまで、リビングルームでいろいろな話をして過ごしました。

Cさんは教養があり、物知りなインテリ……なのに毒舌でジョーク好き。
本当に魅力的な女性でした。

今振り返ると、よくそんなに話すことがあったなあ……と思うのですが、Cさんの人生について、仕事について、ニュージーランドと日本の違い、音楽や映画のこと、語学学校での出来事など……手当たりしだいなんでも話題にして話し合っていたような記憶があります。

そんなふうにたくさんお話をして、ひとつ屋根の下に一緒に暮らして3週間。
Cさんと私は、すっかり気心の知れた仲になっていました。



・・・・・・



日本への帰国の日が近づいてくると、私はなんとなく後ろめたいような気持ちになってきました。

3週間という短い間とはいえ、Cさんが離婚を経験して心に傷を負っていることはわかりました。50代で独りぼっちだという寂しさを抱えていることも……。

それなのに、せっかく仲良くなってきた日本人の大学生である私も、もうじき帰国してしまうのですから……。



帰国の前日、私は通学路沿いにある花屋さんで花束を作ってもらいました。お花が好きなCさんへの感謝のしるし……とはいっても大学生の予算ですから、それは本当に小さなブーケでした。

帰宅するとすぐに、私はCさんにそのブーケを渡しました。けれども、喜んでもらえるかと思ったら、Cさんはなんだか寂しそうに「私の好きな花よ」と言って、そのブーケをぼんやりと見つめていました。

そんなCさんのなんだか気のない反応を見て「うーん、やっぱりちょっとショボすぎたかな……」と、私はそんなことを思いました。



さて、いつものように夕食を終え、そろそろ荷造りを始めなければならない時間が近づいてきました。

「そろそろ部屋で、帰国の準備をしますね」と私が言うと、Cさんはこっちを向いていきなりこう言いました。

「戻ってくるわよね?」

一瞬意味がわからずぼんやりしていると、Cさんはもう一度、「戻ってくるでしょう?」と言いました。

「はい、きっと……!」と、思わずそんな返事をしていました。



・・・・・・



翌朝まだあたりが暗い中、Cさんは車で空港まで送ってくれました。いつもはおしゃべりな私たちなのに、その朝、車内はしーんと静まりかえっていました。



空港に着くと、いよいよお別れの瞬間が訪れました。

なんと言ってお別れをしよう……?と私が考えていると……

Cさんは何も言わずに私を抱き寄せ、ギュッとハグをすると、すぐに背を向けて行ってしまいました。一度もこちらを振り返ることはありませんでした。



……あれ、こんなにあっさり、なんの言葉も交わさずに?

私はきょとんとしてしまいました。

よくアメリカのファミリードラマで見かけるようなおおげさなお別れではないにしても、あれだけ仲良くなったことを考えれば、もっとドラマチックなお別れであってもいいような?

……なんて、当時の私はそんなふうに思ったんです。



・・・・・・



あれから18年。

実はCさんとは、今でも交流が続いています。

その間、ニュージーランドに行ってCさんに再会できたのは、結局一度きりでした。



・・・・・・



さて、あの頃はわからなかったけど。

お別れするときの感情表現の大きさと、想いの深さは、必ずしも比例するわけではないのかもしれません。

つらくて悲しいからこそ、あっさりになっちゃう――そんな人もいて、実は最近の私もそんな人のひとりです。

だから今は、当時のCさんの気持ちも、なんとなくわかるような気がするのです。



・・・・・・



というわけで、私の昔話はこれで終わりです。

……そうそう、今年はCさんにクリスマスカードを出し損ねてしまったので、これからCさん宛てにニューイヤーカードを書こうと思いますスマイル



2001年春‐‐ウェリントンのB&Bにいた猫さんとの一枚


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最終更新日  2019.12.27 20:59:45
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こんにちは!bonaと申します。

これまで翻訳業界を中心に、英語を用いていろいろな職業を経験してきました。

このブログには、それらの職業から学んだこと、好きな音楽や読んだ本などの紹介、そして日々の暮らしの中で気づいたこと・考えたことなどをつづっています。闘病中の緑内障のことも……。

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