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「おい!!こんな時に、何をボケッとしてる!」いつしか、すっかり思いに耽っていたリノの脇腹を、シモンの肘が鋭く小突いた。「いてっ…!あっ――」瞬時に意識を現実に引き戻されたリノの視界に、腰の銃を引き抜いて草むらの奥へと捨て去っているシモンの姿が映る。一方、シモンはリノの全身に敏捷な視線を走らせると、「武器を持っていれば捨てていけ」と、早口で低く言う。「いえ、俺は、何も…」「よし。では、行くぞ!」そう言い終わるか否かという間に草陰から飛び出したシモンの後を、リノも慌てて追いかけた。他方、突如、門前に姿を現した見知らぬ二人の白人に、強度に張り詰めた空気の中にいたインカ兵たちの険しい眼光が射るように注がれる。二人は、たちまち鈍器や銃器で武装した厳つい多数の衛兵たちに、グルリと取り囲まれた。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪シモン≫植民地生まれの白人(クリオーリョ)の革命分子を束ねるリーダー。ただし、一般的に貧しいクリオーリョたちとは異なり、当地生まれでありながらも富裕層に属するらしきスペイン人。トゥパク・アマルの反乱に乗じて、スペイン本国による植民地支配を瓦解させる機会を狙っている。≪リノ≫かつてトゥパク・アマルが囚われていた地下牢の番兵の一人。脱獄をはかるトゥパク・アマルの説得(手管)によって、結果的にトゥパク・アマルの脱獄を援護することとなった。植民地生まれの貧しいスペイン人。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.31
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あの時、脱獄に必要な品々を受け取ったトゥパク・アマルは、リノに深く礼を述べ、それから、鉄格子ごしに、リノの手の平に、この純金のビラコチャ神像を乗せたのだった。繊細な彫刻が施された神像の眼部には、緑色の神秘的な光を放つ大粒のエメラルドがはめ込まれ、獄中の仄かなランプの灯りの下にもかかわらず、目に痛いほど眩く輝いていた。そして、そのエメラルドの煌きさえも圧倒するほどに、神像そのものが燦然たる閃光を放ち、それが、いかに良質の黄金から成るものかを雄弁に物語っていた。今、神像を見つめるリノの脳裏に、あの夜、トゥパク・アマルと交わした言葉が走馬灯のように蘇る。『こ…これは…?』『ビラコチャ神の黄金像。ビラコチャは、我々インカの民が、森羅万象、あらゆるものを生み出した創造神として崇拝する神』『ビラコチャ…神……』あまりの眩さに目を細めながら息を呑むリノの前で、トゥパク・アマルは僅かに俯き、ビラコチャ神像に礼を払うように瞼を閉じた。やがて、彼は、金色の光を反射する目元を見開くと、真摯な瞳でリノを見つめ、静かに微笑む。『それは、インカ皇帝の一族のみに受け継がれている秘宝のひとつ。わたしとの縁ある者であることの証。そして、それを持つ者は、わたしの元へ自然と誘(いざな)われ、両者が生きてさえいれば、やがて再会も果たせよう。そなたと、再び外界で見(まみ)えることの叶おう日がくることを願っている。リノ…――本当に、ありがとう』【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪リノ≫かつてトゥパク・アマルが囚われていた地下牢の番兵の一人。脱獄をはかるトゥパク・アマルの説得(手管)によって、結果的にトゥパク・アマルの脱獄を援護することとなった。植民地生まれの貧しいスペイン人。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.29
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見るからに臆病そうなリノだが、今は驚くほど落ち着いた態度に、シモンは目を丸めながら相手の取り出したものを見やった。そして、息を詰める。それはリノの手の平に乗るほどの小型にもかかわらず、陣営から漏れくる松明の灯りを反射して、目に痛いほど燦然と光り輝いていた。「それは…なんだ?」上擦った声を漏らすシモンの脇で、リノは瞳に黄金色の光を反射させながら呟いた。「もらったんです。脱獄を助けた時に」「もらった?なるほど、脱獄幇助の返礼品ってわけか」皮相交じりのシモンの声音に、だが、まだリノは恍惚としたまま、黙って頷く。まさしく、それは、かつてトゥパク・アマルから渡された純金のビラコチャ神像――脱獄に必要な品々をトゥパク・アマルに依頼され、それらを外界から牢に持ち込んだ夜、その返礼の一部としてリノが受け取ったインカの秘宝であった。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪シモン≫植民地生まれの白人(クリオーリョ)の革命分子を束ねるリーダー。ただし、一般的に貧しいクリオーリョたちとは異なり、当地生まれでありながらも富裕層に属するらしきスペイン人。トゥパク・アマルの反乱に乗じて、スペイン本国による植民地支配を瓦解させる機会を狙っている。≪リノ≫かつてトゥパク・アマルが囚われていた地下牢の番兵の一人。脱獄をはかるトゥパク・アマルの説得(手管)によって、結果的にトゥパク・アマルの脱獄を援護することとなった。植民地生まれの貧しいスペイン人。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.25
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ところで、怒涛の勢いで馬を飛ばし続けてきたシモンたちが、このトゥパク・アマル陣営に到着したのは、既に深夜1時を回る頃だった。迫りくる激しい決戦を前にして――さらに、奇襲にも備えて、戦闘服のままではあったが――多くのインカ兵たちは、束の間の休眠に入っている。しかし、当直や見張りの兵たちが間断なく任務に奔走しており、無数の松明に照らし出された陣営は昼間のように明るかった。陣営から少し離れたところで馬を降り、門前まで近づいて、草陰から陣営内を見渡しながら、シモンが小声で囁く。「くそ…!この状況では、とても俺たちのような見知らぬスペイン人が近づける雰囲気じゃない。かといって、こんな場所に隠れているのを見られては、それこそ、確実にスペイン軍の斥候と見間違われる」しかし、リノは小さく首を振り、「大丈夫です。ここは俺に任せて…!」と呟くと、恍惚の滲む表情で、懐から何かを大事そうに取り出した。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪シモン≫植民地生まれの白人(クリオーリョ)の革命分子を束ねるリーダー。ただし、一般的に貧しいクリオーリョたちとは異なり、当地生まれでありながらも富裕層に属するらしきスペイン人。トゥパク・アマルの反乱に乗じて、スペイン本国による植民地支配を瓦解させる機会を狙っている。≪リノ≫かつてトゥパク・アマルが囚われていた地下牢の番兵の一人。脱獄をはかるトゥパク・アマルの説得(手管)によって、結果的にトゥパク・アマルの脱獄を援護することとなった。植民地生まれの貧しいスペイン人。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.23
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心の中で彼女の名前を呼んだ瞬間、ハッと思い出したように、アンドレスは自分の胸に手を置いた。そして、素早く己の胸元に衣服の間から指を差し入れると、首からさげていた何物かを、ぐっと、引っ張り出した。そして、それをコイユールの方に、大きく振って見せる。(コイユール、ほら、これ!!)(え…?!)驚いて見開いた目を凝らすコイユールの視線の先では、アンドレスの手の中で、何かが月光を浴びてキラキラと煌いている。あ…――!!と、コイユールの顔もパッと大きく輝いた。それは、かつてソラータの陣営で、彼女がアンドレスに贈った手作りのグランデーロのお守りだった。(アンドレス、持っていてくれたのね!!)嬉しそうに溢れんばかりの笑顔を見せている彼女の方へ、アンドレスも、はにかんで力強く頷いた。その小さなガラス瓶は透明なオイルで満たされ、その中に、アカシアの実やヒマワリの種など彩り美しい種子類や、桃色に光るインカローズや黄色い鉱石の欠片などが全部で9種類ほど、ぎっりしと詰められている。9種類のそれぞれが特別な守護の力を持つと信じられており、古来より、インカの人々にお守りとして愛用されてきたものばかりである。彼の耳元に、あの時のコイユールの言葉が、今もはっきりと聞こえてくる。『アンドレスに…これを…――。9種類のお守りの力を瓶の中で1つに纏めてあるから、これを持っていれば、槍で刺されても死なないって言い伝えられているほどなの。だから、きっと、戦場でもアンドレスのことを守ってくれると思って…!』そして、今、少し離れたところにいる現実のコイユールもまた、己の方へと両手を組んで、深く祈るように瞼を伏せている。(アンドレス、必ず戻ってきて……!!)アンドレスは、光るグランデーロをギュッと握り締めた。そして、彼もまた、彼女の方へと誓いを立てるように瞼を伏せ、そっと小瓶に口づける。――戻ってくる、必ず、君の元に…――!!【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、インカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。英国艦隊及びスペイン軍との大決戦に向けて、ラ・プラタ副王領への遠征から、ペルー副王領のインカ軍本隊へと帰還を果たした。≪コイユール≫インカ族の貧しくも清らかな農民の少女(18歳)。義勇兵として参戦。代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.21
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挙動不審のアンドレスの方に訝しげな視線を投げていたトゥパク・アマルだが、周囲の兵たちに何かを問いかけられて、そちらに向き直った。他方、トゥパク・アマルの一喝に冷や水を浴びたように我を取り戻したアンドレスが、コイユールに再び意識を戻した時には、彼女は薬草を抱き締めたまま、もう、すっかり離れたところに移っていた。(アンドレス!はやく、任務に戻って!!)彼女は心配そうな眼差しで、そう懸命に身振りで訴えている。アンドレスは、己への苛立ちと口惜しさから唇を噛んだ。(ああ…くそっ…!せっかく会えたってのに、俺は何やってんだ?!しかも、このまま、決戦に突入してしまうってのに――!!)恐らく、コイユールも同じ思いがあるのか、仕事の手を動かしながらも、今は半ば涙ぐんだ瞳を揺らしながら、チラチラと口惜しげにこちらに視線を馳せている。(コイユール――…!)【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、インカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。英国艦隊及びスペイン軍との大決戦に向けて、ラ・プラタ副王領への遠征から、ペルー副王領のインカ軍本隊へと帰還を果たした。≪コイユール≫インカ族の貧しくも清らかな農民の少女(18歳)。義勇兵として参戦。代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.19
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次第に周囲の目も忘れて、白熱した二人が声高になりだした頃、さすがに何かを感じ取ったのか、つっとトゥパク・アマルがこちらを振り向いた。そして、治療場の隅に突っ立っているアンドレスを見つけると、やや驚いたように目を見開いた。「アンドレス?そこで、何をしている?そなたのすべきことは済んだのか?!」「あっ…ト、トゥパク・アマル様…!!!いえ…ちょっと……!!」この最重要な時に何をしているのだ?!と、咎める色も宿して次第に厳しくなるトゥパク・アマルの表情に、口ごもっているアンドレスの傍から、コイユールも慌てて身を引いた。そして、困惑した小声で囁く。「アンドレス、はやく任務に戻って…!」「う…でも……!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、インカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。英国艦隊及びスペイン軍との大決戦に向けて、ラ・プラタ副王領への遠征から、ペルー副王領のインカ軍本隊へと帰還を果たした。≪コイユール≫インカ族の貧しくも清らかな農民の少女(18歳)。義勇兵として参戦。代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.17
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いよいよ顔から火を上げ出したアンドレスに、コイユールは思わず吹き出して、クスクス笑い出した。「コイユール……!!!」片やコイユールは、周囲の目を引かないように慌てて声を抑えると、「アンドレス!」と、真摯な目を上げる。「私が好きなのは、昔も、今も、アンドレスだけ!トゥパク・アマル様のことは、敬愛とか――そんな感じ」そう言ってしまってから、彼女は、自分がアンドレスを「好き」とはっきり口にしたことに気付いて、腕の中の薬草に顔を埋(うず)めながら、いっそう頬を染めた。だが、今のアンドレスには、そんなコイユールの様子も言葉も、素直に目耳に入ってくる余地はないらしい。「敬愛とかって…っ!それって、好きとは違うのか?!」「む…!今日は、絡むはね…!違うと思うわ。だって、アンドレスだって、トゥパク・アマル様のこと、敬愛してるでしょ?それと同じじゃない?」「そ、そんなの屁理屈だろっ!俺は同性だけど、少なくとも、コイユールは異性なんだし!!」「まっ…な!屁理屈は、アンドレスの方じゃない!!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、インカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。英国艦隊及びスペイン軍との大決戦に向けて、ラ・プラタ副王領への遠征から、ペルー副王領のインカ軍本隊へと帰還を果たした。≪コイユール≫インカ族の貧しくも清らかな農民の少女(18歳)。義勇兵として参戦。代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.15
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「アンドレス、どうかしたの?」「え…いや…――」「もしかして、今度の決戦のことで何か?とても激戦になるって、私も聞いて……」すっかり案ずる眼差しになって、顔色も蒼ざめてきたコイユールに、アンドレスは半ば焦って、「いや、そういうことじゃなくって……!」と、首を振った。「じゃ、何なの?」「――って、いうか、今、トゥパク・アマル様に見蕩れてなかった?!」「え…っ!?」コイユールは、くっきりとした目を大きく見開くと、混乱気味に黒い瞳を揺らした。それから、先刻の自分の姿を思い出すかのように視線を漂わせ、やがてポツリと呟く。「確かに、トゥパク・アマル様の方を見てはいたけど、私…別に見蕩れてなんか…!アンドレスこそ、今日は、なんで、そんな言い方するの?」戸惑いがちに己の顔を覗き込んだコイユールに、アンドレスは、つぃっと横を向く。「だって、昔っから、コイユールは、トゥパク・アマル様には、いつもそんな目で……」そう言いかけたまま耳元を染めている相手に、コイユールも、パッと顔を上気させた。「やだ…!アンドレスったら、まさか…妬いてるの?」「ややややや妬いてなんかっ……!!!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、インカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。英国艦隊及びスペイン軍との大決戦に向けて、ラ・プラタ副王領への遠征から、ペルー副王領のインカ軍本隊へと帰還を果たした。≪コイユール≫インカ族の貧しくも清らかな農民の少女(18歳)。義勇兵として参戦。代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.13
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「む…っ」アンドレスは、いつしか頬を膨らませて、暫しコイユールとトゥパク・アマルを交互に見渡していたが、トゥパク・アマルに注がれる眩しげなコイユールの眼差しに突き動かされるようにして、無意識のうちに彼の足は彼女の傍に大股で歩み寄っていた。「あっ…!」長いおさげを揺らしながら振り向いたコイユールは、一瞬、驚き、それから、すぐに嬉しそうな表情になった。そして、薬草を手にしたまま、「アンドレス!」と、周囲に聞こえないよう小声で囁く。アンドレスと話しをしたのは、トゥパク・アマルの本隊に合流する以前のことだったし、あの時もアリスメンディの到来によって慌しく別れたのだ。久しぶりに接したアンドレスを前にして、彼女の顔からは自然に笑顔が零(こぼ)れ出す。他方、アンドレスは、コイユールから目をそらしたまま、軽く咳払いをした。「ト…トゥパク・アマル様が、来てるんだな!」その自分の声の硬く冷ややかなトーンに、アンドレス自身が驚いて、密かに自ら固唾を呑んだ。一方、いつもと様子の違うアンドレスに、コイユールも驚いて瞳を瞬かせる。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、インカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。英国艦隊及びスペイン軍との大決戦に向けて、ラ・プラタ副王領への遠征から、ペルー副王領のインカ軍本隊へと帰還を果たした。≪コイユール≫インカ族の貧しくも清らかな農民の少女(18歳)。義勇兵として参戦。代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.11
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まだ顔を紅潮させたまま、しかし、「まさか、トゥパク・アマル様が、何かお怪我を?!」と、にわかに真顔に戻りゆくアンドレスに、ジェロニモも真面目な面差しを向けた。「いえ、そういうわけじゃなくて、治療場の整備のためらしいです。治療場を数倍に広げて、もっと治療態勢を整えるとかって言ってました。それほどに、負傷者が多く出ることを見越しているってことでしょう。それって、やっぱり、かなりの激戦になるってことですよね?」 ジェロニモの話を聞いたアンドレスが急ぎ足で治療場へと向かうと、まだトゥパク・アマルはそこにいて、治療場の拡張作業に奔走している兵たちに間断なく指示を送っていた。そして、平素からインカ軍に属する従軍医や看護の義勇兵はもとより、近隣から集められた有志の医師や看護を手伝う村人たちが、兵たちの間を縫って、拡張作業を慌しく手伝っている。かくして、アンドレスが鼓動を覚えながら見渡す視線の先に、案の定、コイユールの姿も飛び込んできた。彼の視界の中で、コイユールは山のような薬草の束を抱えながら、相変わらず、忙しそうに立ち働いている。だが、ふっと手を止めては、少し離れたところに立って兵たちに淀みなく指示を発しているトゥパク・アマルの後ろ姿に、吸い込まれるように見入っている――ように、アンドレスには見えた。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、インカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。英国艦隊及びスペイン軍との大決戦に向けて、ラ・プラタ副王領への遠征から、ペルー副王領のインカ軍本隊へと帰還を果たした。≪コイユール≫インカ族の貧しくも清らかな農民の少女(18歳)。義勇兵として参戦。代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。≪ジェロニモ≫インカ軍に義勇兵として参戦している黒人青年。スペイン人のもとから脱走して軍に加わった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.09
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言葉の出ないアンドレスに、ジェロニモは、今度は精悍な兵士の目に戻ると、木陰から道の方へと一歩踏み出した。「コイユールも、はじめっから俺と同じビルカパサ様の連隊に属しています。だから、もちろん、いますよ、この陣営に!」「コ…コイユールも、ここに…」「そう、いますよ。すぐ、そこに!」そう言って、ジェロニモは笑顔で軽く親指を立て、己の後方を指差した。「今回の決戦は、今までにも増して激しいものになるって、皆、分かってますからね。もちろん、コイユールも、それを知ってる。それで、負傷兵をしっかり看護できる態勢を整えておかないといけないって、これまで以上に気合いが入ってるみたいですよ。そうそう、負傷兵と言えば、さっき、治療場に、トゥパク・アマル様が来てたみたいですが」「え?!トゥパク・アマル様が?!どうして、治療場に?!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、インカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。英国艦隊及びスペイン軍との大決戦に向けて、ラ・プラタ副王領への遠征から、ペルー副王領のインカ軍本隊へと帰還を果たした。≪コイユール≫インカ族の貧しくも清らかな農民の少女(18歳)。義勇兵として参戦。代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。≪ジェロニモ≫インカ軍に義勇兵として参戦している黒人青年。スペイン人のもとから脱走して軍に加わった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.07
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たちまち耳元を赤らめたアンドレスに、ジェロニモは、ニッと悪戯っぽい笑顔を見せた。「やれやれ、その様子だと、相変わらず、あんまり進展なさそうですねぇ」「――!!」いよいよ顔を真っ赤にしたアンドレスは、「なっ、なっ…なっ…!!」と、言葉にならない声を発しながらワナワナとしている。「ははぁ、やっぱり図星ですか」ジェロニモは、今度は、少し真顔になって小さく溜息をついた。身分はずっと高いとはいえ、自分よりも年下のアンドレスは、ジェロニモの目には、まだ純な少年のように映ってしまう。やがて優しい眼差しになると、ジェロニモは、まだ頭から湯気を立てて赤くなったままのアンドレスに、真摯な声で言った。「アンドレス様、すいません。俺は、いつも差し出がましいことを言ってしまって。お二人には、お二人のペースがあるんだし、ね。それに、俺、本当に、嬉しく思っているんですよ!反乱がはじまった当初に比べれば、コイユールは、ずいぶん明るくなりましたからね」「えっ…!!」まだ顔を火照らせたまま、涙目になった瞳をハッと向けたアンドレスに、ジェロニモは、温かく微笑んで頷いた。「アンドレス様のお力ですよ!」「――…!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、インカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。英国艦隊及びスペイン軍との大決戦に向けて、ラ・プラタ副王領への遠征から、ペルー副王領のインカ軍本隊へと帰還を果たした。≪コイユール≫インカ族の貧しくも清らかな農民の少女(18歳)。義勇兵として参戦。代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。≪ジェロニモ≫インカ軍に義勇兵として参戦している黒人青年。スペイン人のもとから脱走して軍に加わった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.05
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「あの黒人兵、手打ちか?」「まさか」と、傍のインカ兵が手をひらひらと振った。「確かに無礼な兵だが、あの程度のことじゃな。ましてや、あのアンドレス様だし」「じゃ、なんだ?」「さぁ?」そんな言葉を交わしながら兵たちが顔を見合わせている間にも、アンドレスはジェロニモの腕を引っ張りながら、人目を避けた月下の木陰へと寄っていく。「アンドレス様、俺、別に何も悪気は…!」「もちろん、分かってる。それより、ジェロニモ、君もここに来ていたなんて!」「その…本気で痛いですよぉ、力強すぎ…!」力(りき)んでにじり寄るアンドレスの手を己の腕からほどきながら、ジェロニモが本当に痛そうな声を上げた。そして、やっと相手の手から逃れると、「俺がここにいるのは、当然です。アンドレス様、何を今更?」と、軽く肩を竦める。「ビルカパサ様やマルセラ様も、今回は、トゥパク・アマル様やアンドレス様と一緒に沿岸部隊への参加ですよね?俺は、ずっと、ビルカパサ様の連隊に属して戦ってきたんです。ここにいるのは、ごく当然のことですよ。そんなことより、アンドレス様が本当に気にしているのは、もっと別の人でしょ?」「えっ…!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、インカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。英国艦隊及びスペイン軍との大決戦に向けて、ラ・プラタ副王領への遠征から、ペルー副王領のインカ軍本隊へと帰還を果たした。≪ジェロニモ≫インカ軍に義勇兵として参戦している黒人青年。スペイン人のもとから脱走して軍に加わった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.03
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驚きと歓喜のない混ぜになった声を発している相手の方へとジェロニモも振り向いて、「おっと!これは、アンドレス様!!」と、すぐに親しげな満面の笑顔になった。そして、頭から丁寧に火薬袋を下ろすと、ガッツポーズを取りながら、生き生きと力強く言う。「アンドレス様!!ついに今回は、トゥパク・アマル様の副官ですって?!」「なっ――おまえ…っ!アンドレス様に対して、その言い草は…!!」周囲のインカ兵たちは、あまりに馴れ馴れしい物言いの黒人兵に、一斉に色めき立った。一方、アンドレスは素早い足取りでジェロニモに走り寄ると、相手の腕をムズと掴み取る。「ジェロニモ!ちょっと、いいか?」そして、周囲の兵たちに、「少しだけ、はずす。その間、ここを頼む!」と告げると、その黒人兵を引き摺るようにして武器庫の外へと急ぎ足で去っていく。そんなアンドレスの後ろ姿と、そして、「え?え?!俺、何かしましたか?!」と呻きながらアタフタと引っ張られていく黒人兵を見送りながら、インカ兵たちも顔を見合わせた。【☆ごあいさつ☆】明けましておめでとうございます。昨年もご来訪くださいまして、本当にありがとうございました!!これからも一歩一歩進めて参りたく存じますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。全ての皆さまにとりまして、幸多き年となられますようお祈りいたします☆:゜*【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、インカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。英国艦隊及びスペイン軍との大決戦に向けて、ラ・プラタ副王領への遠征から、ペルー副王領のインカ軍本隊へと帰還を果たした。≪ジェロニモ≫インカ軍に義勇兵として参戦している黒人青年。スペイン人のもとから脱走して軍に加わった。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2009.01.01
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