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2022.06.27
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カテゴリ: 浦添市

(アブチ川に架かる安波茶橋/北橋)

沖縄本島中南部の浦添市「経塚(きょうづか)」の最北端で、県立浦添工業高校の東側に「安波茶橋(あはちゃばし)」と呼ばれる石橋があります。南橋は小湾川に、北橋はアブチ川にそれぞれ架かっており、首里から読谷方面に抜ける「中頭方西海道(なかがみほうせいかいどう)」と呼ばれる、琉球王国時代に造られた幹線道路の宿道が通っています。「安波茶橋」周辺には現在も石畳道が当時のまま残されており、このアーチ型の石橋は昔から沢山の旅人や通行人で賑わいました。アブチ川に架かる北橋から川沿いを西側に下ると丘陵の森の麓に井泉があり、琉球王国時代から現在に至るまで変わる事なく水が湧き出ています。


(北橋から赤皿ガーに向かう道)

(赤皿ガー/アカザラガー)

(赤皿ガー/アカザラガーの拝所)

「安波茶橋/北橋」からアブチ川を伝って西側に進むと右手に「赤皿ガー」が現れます。琉球王朝最後の王様であった「尚寧王(1564-1620年)」が首里城から琉球ハ社の1つである普天満宮(宜野湾市)に参拝する途中、家来が琉球漆器の赤い皿(椀)で井泉の湧き水を汲んで国王に差し出していた事から、この井泉は「赤皿ガー/アカザラガー」と呼ばれるようになりました。ちなみに「ガー」とは沖縄の言葉で井泉や井戸を意味します。井泉の右脇の小さな洞穴にはビジュル(霊石)が鎮座しており、水の神様が祀られた拝所となっています。「赤皿ガー」は琉球王国時代から原型をとどめていると言われ「尚寧王」もこの「赤皿ガー」のほとりで暫し休憩を取っていたと考えられます。


(西の井/イリヌガー)

(西の井/イリヌガーの手押しポンプ)

「経塚の碑」が建立されている「うちょうもう公園」の西側に「西の井/イリヌガー」と呼ばれる拝井戸があります。浦添市社会福祉協議会「ひまわり学童クラブ」に隣接する契約駐車場に古井戸が残されており、古く錆びた手押しポンプが設置されています。井戸は円形に石垣で積まれており、上部はコンクリート製の蓋が被せられています。井戸の周囲は比較的広い敷地が設けられているため「西の井/イリヌガー」は水量が豊富で、周辺住民の飲料水の他にも井戸の水で衣類の洗濯や野菜などを洗っていたと考えられます。現在は手押しポンプのハンドルは折れて紛失していますが、水道が普及するまで「西の井/イリヌガー」は周辺住民の憩いの場として賑わっていたと思われます。


(古井/フルガー)

(古井/フルガーの石碑)

(古井/フルガーの手押しポンプ)

(古井/フルガーの拝所)

「経塚集落」を南北に通る「経塚通り/県道153号線」の近くで経塚1丁目6番地の住宅の庭先に「古井/フルガー」と呼ばれる拝井戸があります。その名前の通り「経塚集落」に古くからある井戸で、現在も比較的に保存状態が良い手押しポンプが現存しています。井戸の脇には「ふるがー」と彫られた石碑が建立されていてウコール(香炉)が設置されています。さらに2体のビジュル(霊石)が並んで鎮座しており、古くから水の神様を石に祀り水の恵みに感謝する拝所となっています。この「古井/フルガー」は現在もカーウガン(井戸の拝み)で祈りを捧げる、神聖な場所として周辺住民に崇められています。ちなみに、この手押しポンプは「川本式ポンプ」で、昔から品質の高い井戸ポンプとして広く知られています。


(御殿井/ウドゥンガー)

(御殿井/ウドゥンガーの手押しポンプ)

「古井/フルガー」の南側に「御殿井/ウドゥンガー」と呼ばれる拝井戸があります。琉球王国時代末期の王族である「本部朝勇」と、その弟で空手家(琉球唐手)として名高い「本部朝基」が生まれた「本部御殿」が首里赤平村にありました。かつて「本部御殿」の別邸が経塚のこの地にありましたが沖縄戦で屋敷は失われてしまいました。しかし、別邸の屋敷で使われていた井戸が現在も残っており「御殿井/ウドゥンガー」と呼ばれています。この別邸跡の近くには「本部御殿墓」があり、さらに首里から普天満宮に通じる「中頭方西海道」も近かったため「本部御殿」の人々が墓参りやお宮参りの休憩場として「経塚集落」に別邸が建てられたと考えられています。現在も「御殿井/ウドゥンガー」は王族が使用していた井戸として「経塚集落」では大切に崇められているのです。


(龍巻井/ルーマシガー)

(龍巻井/ルーマシガーの石碑)

経塚にあるショッピングモール「サンエー経塚シティ」の敷地北側に「龍巻井/ルーマシガー」という拝井戸があり、地元では「ドゥーマシガー」とも呼ばれています。井戸にはウコール(香炉)が設置され住民により拝されています。その昔、日照りの時に龍が天に立ち昇るのを見て、その地を掘ったところ水がこんこんと湧き出たことから「龍巻井/ルーマシガー」と呼ぶようになりました。それからこの場所は「龍巻/ルーマシ」と言われ、豊富な水資源に恵まれ稲作が多く営まれました。現在「龍巻井/ルーマシガー」は大型ショッピングモールの裏手にひっそりと佇んでおり、近くには「龍巻松の木公園」が整備されて地元住民の憩いの場となっています。


(夫婦河/ミートゥガー)

(夫婦河/ミートゥガーの石碑)

(夫婦河/ミートゥガー/夫井戸)

(夫婦河/ミートゥガー/婦井戸)

「経塚の碑」がある「うちょうもう公園」から「経塚通り/県道153号線」を渡った西側に「夫婦河(ミートゥガー)」の拝井戸があります。敷地には2基の井戸が並んで据えられ、それぞれにウコール(香炉)が設置されています。向かって左側の井戸蓋には「夫」と彫られており、右側の井戸蓋には「婦」と彫られています。沖縄の言葉で「夫婦」は「ミートゥ」と言い、2基の井戸にはそれぞれ丸い形の霊石が祀られています。浦添市「経塚集落」は澄んだ水が湧き出る井戸が豊富で、先人は昔から水への感謝を示す為、井戸に線香をあげて祈りを捧げてきました。琉球王国時代から残る拝井戸は「経塚集落」の歴史に欠かす事が出来ない神様からの恵みの象徴として、現在も住民により大切に守られているのです。






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最終更新日  2022.11.11 21:25:40
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