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ついに英国のスナック菓子メーカーのキャドバリー(デイリーミルクチョコレート、クロレッツが有名)が米国のクラフトフーズ(チーズもあればナビスコも傘下にある)の買収提案に合意した模様です。
「敵対的買収提案」が一気に「友好的買収提案」になったということです。
$196億ドル(約1.8兆円)のディールです。
最初、キャドバリーはクラフトの提案を「話にならないぐらいに安っぽい金額」であり、「クラフトのような低成長なコングロマリットの傘下に入るより、菓子専業メーカーとして成長する方が株主にメリットがある」といって、クラフトにひじ鉄を食らわしました。
その間、ネスレ(スイス)やハーシー(米国)他が、「ホワイトナイト」(白馬の騎士)としてキャドバリーの救済TOBをするのではないかとも憶測がありました。
一方、クラフトの筆頭株主である、あのバ-クシャー・ハザウエイ(ウォーレン・バフェット)は株式交換の比率の高いディールに反対の意を表しました。
「ホワイトナイト」の一角であったネスレに対し、クラフトは北米の冷凍ピザ事業を売却し、ネスレに対しキャドバリーに手出しさせない約束を得たと言われています。
結局、この事業売却代金でキャドバリーに対する金額提示を上乗せできたことと、ハーシーの筆頭株主である創業者財団がキャドバリー買収に当初難色を示していたために、正式提案に乗り遅れてしまい、キャドバリー側もクラフト側に折れた模様です。
バフェット氏は「株主価値を毀損させない提案なら賛成に回る可能性がある」と言っていましたので、これで筆頭株主のGOサインが出たと言えそうです(株式交換は持ち株の希薄化を招くためであり、現金を積み増しすると、レバレッジが効いて、希薄化懸念が小さく、EPSが上がりやすい)。
クラフト側は、得意の冷凍・チルド商品事業(チーズが最も有名)を縮小しても、チョコレート、ガムという常温商品にシフトすることになりました。さらにキャドバリーにはインドをはじめとした新興国の売り上げシェアが高く、長らく米国市場に閉じこもっていたクラフトにはグローバル展開の足掛かりを得たと言われています。
英国の「アイコン」といわれる名門企業は、その旧植民地(インド・香港・南アフリカなど多数)に根差した有望市場を持っているために、こうやって1社1社外国企業に買収されていきます。
しかし、残った英国の時価総額上位企業は世界のリーディングカンパニーが勢ぞろいするという弱肉強食の中におかれています。それでも英国経済は(今は大変ですが)ここ20年ほどは安定成長してきました。
それにしても、クラフト側は金融団がこれ以上金を貸せないという制約と株主の希薄化反対というガバナンスの中、主力事業の一つを売却して資金調達にこぎつけました。
日本だと成長戦略だ、と証券会社に吹聴されると、あっさり増資や新株発行を認めてしまいそうな(今回は現金と株式交換の合わせ技で日本では制度上出来ないと思いますが)イメージに流されて決着しそうですが、「市場原理」が働いたとも言えそうです。
まだハーシーがクラフトよりも高い金額でTOB提案をする道が残っているので、決着したわけではありません(その場合は買収合戦になってしまう)。
クラフトのCEOは菓子部門の出身者でパワフルな女性CEOです。彼女がこのディールをトップダウンで強くリードしたはずです。かつて女性CEOといえばヒューレット・パッカードのカーリー・フィオリーナ氏が有名でしたが、今や女性CEOはそんなに珍しくありませんね。
ざっと知っている範囲では、ペプシコのCEOはインド系の女性ですし、鉱山会社のアングロ・アメリカも事業とは全く似つかわしくない若い女性CEOですし、ヤフーのCEOも女性です。確かタバコ世界4位の英国のインペリアルタバコも女性CEOだったと思います。
業種国籍・肌の色に関係ありませんね。
日本でもぼちぼち出現しつつあるのでしょうが、国を代表する企業クラスで上り詰める例は見当たらなさそうです。
そもそも、役員全員が似たような年代の似たような学歴の人で固まっていることが世界的には珍しいのかもしれません。あちらでは役員(取締役ではなく)のうち複数は女性ですね(人事系が多い)。
久々の敵対的買収ネタでした。
そういえばバフェットさん、韓国の高炉メーカー、ポスコの株を買い増ししたいそうです。ポスコのCEOは「大変名誉なことだ」とコメントしたそうです。うらやましいなあ。
バフェットさん、日本にはあまりよい印象がないみたい(「スノー・ボール」では、ソニーの故盛田氏に接待されたものの、まったく興味がなかったようでした)。
応援よろしくお願いします。
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