下北沢八郎の場合

下北沢八郎の場合

2006年03月18日
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カテゴリ: 半導体
SRHモデル

 SRHモデルを理解していたら、少しは展開が変わったかな。ちょっとは楽しくなったかもしれないな。当時は見るのもいやだったが。

1. 最初はサッパリわからず
 SRHモデルという名前を知ったのは、恥ずかしながらつい最近だ。このような考え方があるのは、半導体関係の本には前半の方に書いてあるので少しは読んでいたが、難しくてよくわからなかった。これを理解するには、結晶のバンド理論を理解していないとダメなんだろうなぁ。

 SRHと最初に聞いたときに、シート抵抗に関係あることなのかと思った。ただの名前と知って、なんだよという感じだった。意味がわかればほとんどのことは大したことはない。無知が恐怖を呼ぶとまではいわなくても、名前だけでいやになったり億劫になったりすることは多いな。

 SRHモデルは、Si単結晶の中に侵入した金属などの不純物の電子のエネルギーが、禁制帯の中に準位を作ったときにそれがどんな影響を及ぼすかについて考えられたモデルのようだ。Fe,Niなどは深い準位をもつが、こいつらがなぜいけないかを説明してくれる。

 最初深い準位と聞いたときには、価電子帯のすぐ上のエネルギーレベルかと思った。深い→エネルギーの底のあたりと解釈したからだった。今でもこの言葉に対する違和感はある。禁止帯の中心あたりのことをいうのだったら、もうちょっといい名前があったらいいなとは思う。センター準位とか。あまりよくないな。

2. まずそれぞれの状態の割合を考える
 一番詳しく書かれているのは、やっぱりグローブの本だろうか。

 それによると、電子や正孔のエネルギー遷移のパターンを、
・電子捕獲
・電子放出
・正孔捕獲
・正孔放出
の4つに分けてその割合を計算する。数式を書くのはくたびれるな。まだまだ今のシステムは分数を書くのはかなり大変だな。

 そのときに、 捕獲断面積σ 熱速度vth が出てくるのがいやだった。いやだというのは変だが、あまりに突然登場するので。今でもよくわからない。この二つと不純物濃度を掛けたものの逆数がライフタイムになる。うーむ、むずかしい。

 いろいろグローブ以外の本を見てみたが、どれも天下り的にこれらを登場させている。捕獲断面積は原子核の大きさと同等の次元のオーダーと書いてあったが。これくらいのところまで近づかないと捕獲されないということなのかなあ。熱速度もよくわからないし。まだまだやね。何を見ればわかるのかな。

 このあたりはどうしてもわからないのでブラックボックスにして、なんとか計算をすすめると、電子・正孔の結合割合Uをあらわす式が出てくる(すごい適当説明)。この式は書きたいけど、分数だから面倒くさいので書かない。いい加減な奴だ。一回やったんだけどな。一回やれば十分か。

3. この式はなにを示しているのか
 結合割合Uの分母の方を見ると、n + p + 2ni*cosh[(Et-Ei)/kT] となっている。不純物の電子の準位Etが深いところにあって真性フェルミ準位に近いときには、cosh[(Et-Ei)/kT]の値が小さくなって、分母が小さくなる。そのため全体の値は大きくなる。また、n + p の値が小さくなると全体は大きな値になる。

深い準位は、エネルギー遷移するときのステッピング・ストーンのような役割をするとグローブの本には書かれている。ステッピング・ストーン、また横文字そのまんまか。飛び石か。PやAsみたいに、浅い準位の時は、価電子帯上端から、その準位まで飛ぶ確率が低くなる。確率はエネルギーに対して指数関数的に変化するから、PやAsの準位まで飛ぶ確率は非常に低くなるわけか。

 だからPやAsは電子を放出してしまったら、禁制帯の中にある準位はなにも仕事をしないというふうに考えていいんだろうなあ。

 また、分子を見ると、pn-ni^2になっていてる。グローブの本には、これが再結合の“ドライビングフォース”ということができると書いてある。“ドライビングフォース”ってなんで日本語にしてくれないんだよと最初思ってしまったが。なんか強そうな雰囲気だが。

 熱平衡状態からのずれが大きいほど、pn-ni^2は大きくなって、全体の値は大きくなる。この符号によって現象の性質が変わる。

4. 結局なんの役に立つのかな?
 半導体に光があたるなどして、熱平衡状態よりも多くのキャリアが存在した場合には、
pn>ni^2
となるから、再結合割合の値は大きくなる。深い準位は、キャリアを減らそうという方向に働く。

 pn接合の接合面あたりにできる空乏層のように、キャリアが少ないときは、
 pn<ni^2
となるから、再結合割合の値はマイナスになる。つまり電子正孔対が発生する。このときはキャリアを増やす方向に働く。

 pn = ni^2のときは、再結合割合の式はゼロになる。だから、このときは、キャリアの増減はない。平衡状態だから当たり前といえば当たり前なのか。

CCDに関していえば、電荷が蓄積される深いところの空乏層の部分に金属などの不純物や結晶欠陥が発生した場合、その部分は空乏化していてるので、pn<ni^2となってキャリアがわき出すことになって、白キズが発生する。

 またCCDのセンサー構造は表面には濃いp+層が作られているが、それによって空乏層は表面まで伸びてこない。そのため、表面は熱平衡状態が保たれている。表面付近は、酸化膜との境界に界面準位がたくさん発生したり、プロセスのダメージを受けて結晶欠陥が多数発生していると考えられるが、それらの欠陥は、熱平衡状態なのでなにもせずに見かけ上“眠った状態”になり、そこではキャリアの増減はない。表面のp+層はかなり偉い。もうちょっと早く気づけばよかったかな。

 結局、全体のシステムはどうにかして一番エネルギーレベルの低い熱平衡の状態に移行しようとするわけね。深い準位はその低いエネルギー状態への移行を助ける役割をすると考えていいのかな。

 電荷がたまるところも熱平衡状態にできればいいが、それはムリか。結局白キズを減らすにはきれいにするしかないのか。 





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最終更新日  2006年03月18日 13時12分59秒
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