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2006.01.20
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カテゴリ: ビジネス
情報の罠    2006.1.20.

新年号で様々な価値観が衝突する混乱の年になるだろうと書いたが、年が明けて2週間ほどで大きな事件が起きた。1月16日ライブドアに対し東京地検特捜による家宅捜索、そして18日には株価が急落し東京証券取引所の売買停止措置が講じられた。新年号においても書いたが二宮尊徳の「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」と。こうした事件の背景には2000年前後に様々な法律の改定が行われ、その盲点から生まれてきたと言っても過言ではない。耐震偽造事件については1999年の建築基準法の改正による建築審査の民間委託から始まり、今回のライブドア事件の背景ともなっている一つに時価会計基準の導入を始めとした商法の改正がある。私は金融や建築のプロでもないのでそれらの「法律」や「法解釈」についてコメントできないが、両事件に共通しているのが「情報の操作」であり、その情報が経営を大きくもし、またダメージを与える社会にいるという事実である。
「情報」の本質はあらゆる「壁」を超えて変化を与える、ということに極まると思う。国境、人種、性別、年齢、勿論企業間という壁もである。そして、情報はIT技術の進化により驚異的なスピードをもって個人を直撃する、そうした社会のただ中に私達はいる。耐震偽装事件、ライブドア事件に共通していることは、この「情報操作」によるものと私は考えている。そして、問題は情報にあるのではなく、情報の本質を踏まえた情報発信者のモラルと情報操作を許さない仕組みにある。私はこの2つの事件に接し真っ先に思い起こしたのが米国のエンロン事件であった。思い起こして欲しい、エンロン社は1985年に石油や天然ガスのパイプラインを運営する企業として発足。規制緩和の流れに乗って電力、天然ガスなどエネルギー関連製品をインターネットで取引する企業として急成長し、2000年には売上高を1000億ドル台に乗せ、全米7位の大企業に成長した。しかし、財務担当副社長が作った二つの投資組合(ファンド)での資産運用に失敗したうえ、巨額の簿外債務があることが発覚し、市場の信認が失墜。2001年12月、簿外債務を含めて債務総額が400億ドルを超える米史上最大の倒産劇を演じた。当時東大教授の田中直毅さんは次のように指摘していた。
「資本主義制度は政府から離れて「公」の秩序を持ったことによって経済を新しい段階に引き上げた。株式の公開は英語ではコーイング・パブリック(公となる)と表記する。広く投資家から資金の調達することは「公」の秩序に入ることなのである。投資家の目線でのみ、証券発行者、会計監査人、そして金融仲介業者に臨む監視機関が不可欠となるのはこのためである。米国のSEC(証券取引委員会)は3300名近い人員でこの監視業務にあたってきたが、「エンロン」から明らかなようにインフラストラクチャの整備に関して欠陥があったということになろう。処分とともに、どのような新しい基準が注入されるのかに注目せざるをえない。」
田中直毅さんは明確に株式公開とは”「公」の秩序に入ること”であると指摘してくれていた。ライブドア株は地検の家宅捜索翌日急落し1日で時価総額1500億円を失ったとメディアは報じた。株式分割を繰り返し個人株主が60%を占めていたライブドアにとって個人株主が大きく売りに走ったことはある意味で致命的である。ほりえもんキャラクターはまさに個人を狙った一種のブランド戦略で私が「小泉ブランド戦略」で指摘したことと同じである。まだまだ日本の資本主義、株式市場は未成熟で投資ではなく、預金に代わる投機的な意味合い程度でしかない単なる「自己責任ご都合主義市場」の世界となっている。そこに見えるのは偽計、風説、偽装、粉飾、といった情報操作によって右往左往する個人である。法は常に「現実」の後追いとなる。当然であるが「グレーゾーン」はあらゆるところで生まれてくる。しかし、法の裏には確固たる倫理がある。「公」の秩序とはそうした世界だと私は考える。





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Last updated  2006.01.22 10:17:32
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くーる31 @ 相互リンク 突然のコメント、失礼いたします。 私は…
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