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10月中旬 ノーチェブックス ハズレ令嬢の私を腹黒貴公子が毎夜求めて離さない 扇レンナさん11月1日 角川ビーンズ文庫 悪役令嬢、ブラコンにジョブチェンジします 浜千鳥さん 落ちこぼれ回復魔法使いですが、訳アリ王子の毒見役になりました。 糀野アオさん11月5日 フロースコミックス お兄ちゃんたちに気をつけて! 2 悪女を殺して 111月20日 一迅社文庫アイリス 孤高の悪評令嬢(仮) 藍川竜樹さん 黒狼辺境伯と番人公女 結婚できなかった二人のお見合事情 星霙華さん11月20日 カラフルハピネスコミックス お父さん、私この結婚イヤです! 8 もう一度、光の中へ 411月25日頃 ロイヤルキス文庫more 貴女にかまう暇はないと言われた侯爵令嬢の幸せすぎる末路 日車メレさん12月26日頃 ヴァニラ文庫Miel わたしたち、契約夫婦ですが毎晩愛し合ってます!? 西條六花さん ~御曹司の甘い策略婚~ 今回分はラノベとコミックスが多目。もう一度~は思ったより刊行ペースが速くて1巻以降買い忘れてたんですが、4巻が出る前に揃えておかなきゃ(^_^;)
2024.09.22
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2023年8月刊ベリーズ文庫著者:葉月りゅうさん空港で働く莉真は、結婚に憧れているが失恋のせいで新たな恋ができずにいた。そんな中、仕事で出会った敏腕パイロット・暁月に事情を知られ、突然求婚されて!? 結婚に対して冷めた考えを持つ彼は、なぜか“恋愛前提”の夫婦になることを提案! 色気たっぷりに迫られて、意を決し妻になった莉真。「俺なしでは生きられなくしてやる」--暁月は狡猾に莉真を翻弄し、容赦なく溺愛し始めて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 降籏莉真=運航情報官。結婚に強い憧れがあり、失恋を吹っ切るために暁月の提 案でスピード婚した。 相良暁月=社内最年少で機長に昇進したエリートパイロット。 莉真に興味を持ち結婚を申し込む。 城戸拓郎=莉真の先輩情報官で初恋の人。 倉科望=暁月と拓郎の幼馴染のCA松本空港で運航情報官として働く莉真は、2年前の失恋を引き摺っていた。両親が営む居酒屋の常連で、当時この管制塔に勤務していた城戸拓郎は、垢抜けてカッコイイ人だった。8歳上の彼に一目惚れして同じ運行情報官を目指して猛勉強の末、無事資格を取った彼女はその足で城戸に告白。晴れて付き合うことになったのだが、彼が既婚者だと知ったのは数か月ほど経った後のこと。知らずに不倫の片棒を担がされていたことがショックだったのと、城戸の奥さんに申し訳なくてすぐに別れを切り出し破局。すぐに移動願を出して故郷であるこの松本に帰って来た。仕事の都合上、中々休みが合わず交際期間の割にはデートしたのも数回だけなのと、肉体関係まで至らなかったのが救いだった。今思えば彼の方も妻に対して罪悪感があったのかもしれない。友人の茜からは、いい加減忘れて新しい恋を見つけなよと言われているものの、なかなか踏み切れないのは未だ彼を嫌いになれないせいか。志望動機は城戸だったけれど、この仕事はやりがいもあるし元より空に憧れがあった莉真にとっては天職だ。暫くは仕事に打ち込もう。そう心に決めていた。そんな彼女にある出会いが。7月の初めに、ヒノモト航空の期待株・コーパイの相良暁月が、莉真の尊敬する情報官・ゴンさんの知り合いだとかで飲み会に参加したのだ。なるほど、城戸とは違うタイプだが優等生っぽいイケメンだ。これはCA達にもモテモテだろうなと思いきや、機長の昇進試験にどうしても受かりたいので、恋愛にうつつを抜かしている暇はないと言っていた。辛辣な物言いに性格そのものはちょっとクセがありそうだけど、きっと正直なんだろうとは思う。最年少機長を狙ってるらしいので、願い事も思い浮かばなかったから七夕の短冊には彼の試験が成功するよう書いておこうと決めた。それから1ヶ月ほど経った頃、移動の辞令が出て羽田に戻った莉真はそこにまだ城戸が勤務していてげんなり。意識しない様努めたが気疲れで3日目に既にグロッキー状態だ。ゴンさんは新千歳に行ってしまったし、茜は松本に残っている。愚痴を聞いてもらえる者も無くストレスMAXの中、暁月と再会。彼はあの後無事に試験を突破して機長に昇進していた。暁月は、彼女を見つけると駆け寄って来て、これを書いてくれたのは君だろ?とあの短冊を撮影したスマホ画面を見せた。ありがとうと礼を言う彼に、願い事が思い浮かばなかっただけだからと言い訳していると、丁度城戸が通りかかって暁月に砕けた様子で話しかけている。聞けば二人は幼馴染なのだそうだ、それとあと一人年下の子の3人で良く吊るんでいたと聞いて世間は狭いものだなと思った。話の流れで城戸が離婚していたことを知って、驚いたがもう自分には関係のないことだ。城戸は本当に通りかかっただけの様ですぐその場を離れると、暁月からあいつと何かあった?と尋ねられた。実はあの飲み会の日、飲み過ぎてベラベラと自らの失恋の痛手とサイテー野郎の愚痴を暁月に話していた。そのサイテー野郎が彼なんですと白状すると、成程と納得していた。幼馴染のことを悪し様に言ってしまったから気分を害したかと思いきや、まぁ、妻がいる時に君と交際するのはどうかと思うから言われて当然と特に気にしてないようでホッとした。その後、彼に誘われ飲みに出かけた莉真はストレスもあって酒が進み、徐に「私、結婚に憧れがあるんです!」と暁月に話しだした。莉真の両親は仲睦まじく、子供心にこんな夫婦になりたいと思っていた。それも相俟って城戸とのことは相当ショックだったこと、おかげで次に進めないんですと溢す彼女に、暁月は逆に両親が不仲だったそうで全くと言っていいほど結婚願望がないらしい。一生独身かもなと自嘲する彼に、いや、結婚はいいものですよ、絶対に幸せになれますからと引かない莉真。すると暁月はじゃあ俺にその幸せってやつを教えてほしいといきなりのプロポーズ。君も拓郎を忘れるチャンスじゃないか?と言われ、彼女の心も揺れた。実のところ、独身になったせいか、悪びれもせず城戸に誘いを掛けられて困っている。でも結婚してしまえば彼も弁えるのでは。渡りに船とはまさにこのこと。しかし、契約婚という形にはしたくない。結婚するからには仲良くやっていきたいしいずれ子供もが欲しい。そう意見を言えば、同意を得られたので交際期間ゼロながら結婚することにした。そうと決まればとなんとか休日が合う日に松本に帰って両親に結婚報告すれば、暁月がパイロットと知って飛行機好きの父は歓喜。一発OKを貰ったが問題は彼の父。お堅い公務員と聞いていたが、航空局のお偉いさんと聞いて驚愕した。義父は結婚したら妻は家庭に入るべきという持論らしく、仕事は続けますと言う莉真に少し不満があったようだが、暁月の口添えで一応納得してくれたようだ。双方の許可も得たので、早々に二人は入籍し暁月のマンションでの同居が始まった。あんなことを言っておきながら、彼は莉真に対してマメ男ぶりを発揮。フライトで外国に行けばSNSで写真を送って来て土産も欠かさない。二人の結婚は彼を狙うCA達にとっては大ショックだったようで一時期騒ぎとなり、城戸はアイツの性格上一生独身だと思ったのにと首を捻っていた。しかし、入籍後はちょっかいもかけられなくなったので助かった。そんな最中、偶然暁月がCA姿の女性と親し気にしている姿を見て以来、モヤモヤした気持ちが収まらない莉真。後にそのCAが倉科望という例の幼馴染と知ってホッとした。彼女を女として見たことはないと彼は言っていたが、望の方は長らく暁月に想いを寄せていたらしい。でも、望の家もまたお堅い家で親の決めた婚約者がおり、結婚も間近なのだと言う。今となっては暁月を夫として愛し始めていた莉真も彼女の事情に同情していた頃、城戸も親の決めた相手と望まぬ結婚をし、上手くいかずに離婚間近だった時に莉真から告白されてつい応じてしまったのだと知った。それでも付き合うなら全てにケリをつけてからだろうと暁月も言っていた。彼もまた莉真を大事に思うだけに城戸の弱さに腹を立てていたのだ。彼女と両想いになり、暁月が夫婦生活に幸せを感じ始めていた頃、航空局に匿名のクレームが。内容は城戸と莉真との不倫を匂わせるような写真で、二人を処分しないとマスコミにリークすると言う文章が添付されていた。事態を重く受け止めた暁月の父は莉真に新千歳空港への転属を命じ・・・。この写真、実は結婚祝いの飲み会の時のもので傍にはゴンさんたちもいました。が、絶妙な角度で撮られたせいで、たまたまひそひそ話で耳を寄せていた場面が妙に艶っぽい構図に。莉真もそこは誤解だと義父に訴えるも、一先ず城戸と距離を置けと言われ、泣く泣く辞令を受け入れざるを得なくなります。さすがに城戸も焦り、暁月に真摯に詫びると二人で協力し合い、このふざけた密告をした犯人の割り出しに奔走。騒ぎを聞きつけた望は心当たりがあったようで、その人物に詰め寄ると素直に白状したので、暁月の父の前に突き出します。犯人は望の元婚約者で航空局職員でした。彼は望と城戸との仲を誤解し、こいつは幼馴染の妻にも手を出している、情報官がこんなことでいいのかとクレームを入れていたのです。でも元婚約者の思惑は外れ、実際、転属という名の左遷になりかけたのは城戸ではなく莉真だったことから暁月は激怒。元婚約者は先日望から婚約解消されて腹が立ったのだと詫び、相応の処分も甘んじて受け入れるのでした。義父が莉真を飛ばそうとしたのは偏に息子のため、彼も漸く厳しい父の内心を知って蟠りも少しだけ解けたのだけど、素直じゃない父子の歩み寄りはまだまだ遠そう。それにしてもこの幼馴染3人、実家に問題あり過ぎじゃ(^_^;)騒動後、身内だけのささやかな式を挙げ、莉真が暁月に妊娠報告をして本編は幕。書き下ろしの番外編は本編ラストから3年半後のお話。城戸と望もそれぞれ良い相手を見つけて結婚したこと、相良家の日常の一コマが描かれています。今作は、同じくパイロットもののスピンオフだそうで、そちらのヒーロー&ヒロインもちょっとだけ登場してます。そちらはまだ未読なため、近いうちに購入して読んでみようと思います。評価:★★★★☆
2024.09.21
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2024年6月刊夢中文庫アレッタ著者:永野水貴さん“相続した多額の遺産金で夫を買おうとしている成金悪女”と噂のリリアン。実際は、とある過去からお金の力を痛いほどわからされた孤独の令嬢。幸せな結婚を目指すリリアンは、自分を裏切らない人を伴侶にしたいと、たびたび孤児を引き取っては理想の夫に育てようとしていたのだ。しかし最終的に、何不自由なく育てられた彼らはみな華々しく巣立ち、リリアンはそれを見送っていたのだった。そんなリリアンに仕える執事のアルフレッドもまた孤児の一人。彼だけは離れずにずっと側にいてくれるけれど、夫候補育成には非協力的。ある日、どうしても伴侶がほしいリリアンは夜会への参加を決めるも、なぜかアルフレッドに付き添われることになって? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リリアン=失恋後に莫大な遺産を受け取ったことで大金持ちになった女性。 理想の夫を自ら育てるという野望を持っている。アルフレッド=リリアンの養い子の一人。成長して執事役を務める。 ポーリーン=リリアンの友人で行き遅れ仲間。 ビーター=リリアンの元カレ。貧乏育ちのリリアンは、婚約者が金持ち女を選んだことで大失恋。そのショックが冷めやらないうちに両親が相次いで亡くなると言う不幸に見舞われた。父も母も金があれば死なずに済んだし、元カレのピーターも豪商の娘に走らなかっただろう。悔しさをこらえ孤独に生きていた彼女は、ある時父方の親戚が遺した莫大な遺産を受け取ることに。以降、リリアンの生活は180度変わり、人生最大のモテ期がやって来た。が、箱を開けてみれば誰もが彼女の金目当てで、早々に虚しくなってしまった。そんなことが続いて、ふと思った。そうだ、理想の夫を自分で育てればいいのではと。聊か不純な動機ではあるものの、孤児院で引き取り手が無い男児を屋敷に呼び寄せ、高度な教育を施し、才能があるならそれを伸ばす手伝いを惜しまなかった。しかしながら、誰も彼女との結婚を望む者はおらず、ある程度の年齢になるとリリアンの元を巣立って行く。残ったのは養い子の中でも古株のアルフレッドのみ。引き取った当初は、何かしでかしそうな危険な雰囲気の少年だったが、衣食住が保証され勉強していくうちにすっかりまともになって今では屋敷の執事を務められるまで成長した。その優雅で洗練された物腰に憧れる令嬢も多いと聞く。今日は絵の才能があり、早くもパトロンが付いた新人画家のボブが巣立って行った。それを笑顔で見送った後、リリアンはソファに突っ伏して悔し泣き。どうして誰もが残って私との結婚を望まないの!?理想の夫を自分の手で育てると言う野望は、今のところ全く叶っていないではないか。皆、彼女に感謝こそすれ、異性としては見てくれなかった。これではただの慈善事業家だ。でも、理想の夫という割に女の子も多数引き取ってたよね?と、アルに突っ込まれれば、あの子たちの場合は可哀そうな子猫を引き取った感覚だったと言う。やっぱりただの慈善事業家じゃないかと辛辣に言われ言葉に詰まるリリアン。これほどの金額を使っても、まだまだ財産は有り余るほどある。それを妬み、リリアンを成金悪女と揶揄する貴族令嬢も多いが、アルからしてみれば彼女は女神さまのような人だ。巣立った者たちもリリアンを敬愛し、慕っている。それに彼らが出て行ったのは偏にアルの本懐を遂げさせるため。とはいえ、まだ時ではない。嘆くリリアンを宥めながらアルフレッドはその機会を窺がっていた。そんな最中、行き遅れ仲間であるポーリーンから、結婚が決まったと報告を受けてリリアンは愕然。そんな、彼女まで私を置いて行くの?のんびりおっとりした友人は、焦るリリアンが責める言葉を並べようが意に介さず、ぽつりと案外あなたの近くに理想の人が居るのではなくて?と宣った。はぁ?そんなのがいるなら苦労はしないのよ、と帰って行った。数日後、悪いと思ったのかポーリーンからパーティーの招待状が送られて来たので、たまには社交の場でお相手を探そうと決意した。エスコートは不本意ながらアルフレッドに頼んだ。スーツを誂え、髪型を変えるとあらビックリ。なかなか様になってる。せっかくの友人の好意、無にするのも悪いかと思い参加したが、リリアンに声をかけて来る猛者は嫌味三昧の令嬢達ばかり。男性陣には遠巻きにされてて、やはり来なければ良かったかと後悔。やたらと人気があったのはアルフレッドの方で、虫の居所の悪い彼女は帰りの馬車の中でつい彼に当たってしまった。気不味い中、気晴らしに一人で買い物に出掛けた彼女は、偶然ピーターと再会。5歳上だったからまだ31歳のはずだが随分老け込んだように思う。よせばいいのに近況を尋ねれば、妻の実家家業が傾き苦労しているらしい。元々、リリアンを捨てることになったのは当時借金苦だった家業を救うため。両親を相次いで亡くしたリリアンのことを気遣い長らく差し入れをして助けてくたのは罪悪感からだったのかもしれない。前のように贅沢は出来ないけれど、何とか生活はできているからと苦笑いする彼に、つい援助を申し出そうになったが何とか飲み込み、妻の誕生日プレゼントの下見に来たんだという彼に、そういう時は花束でいいのよ、とアドバイス。この一件で、彼女は色々吹っ切れた気がした。アルに謝ろう、そう決意して屋敷に帰ると、彼は暇を貰いたいと言い出し・・・。女版光源氏みたいなモットーで理想の夫を育てようと躍起になっていたヒロイン・リリアン。でも、皆感謝しつつも私の元を去っていく、失意に暮れる彼女を見守り、愛していたアルフレッド。ポーリーンも、彼の気持ちには気が付いていてさらっと身近におるやん、と教えてたのにリリアンはなんのこっちゃ状態。でも彼から出て行くと言われた時は激しく動揺して、引き留めるも意志が固いと知るや寂しい気持ちを押し殺して送り出します。そしてようやく自分の気持ちに気付くのでした。でも、数日後、アルフレッドが訪ねて来て友人達と起業したと報告。それに合わせてリリアンにプロポーズ。あなたのお金には興味がありません、欲しいのはあなた自身です。それはまさしく望んでいた言葉。リリアンはアルフレッドの求婚を受け結婚。成金と謗られつつも、養い子たちは皆彼女の味方。それぞれ大成していたので、いつか恩を返そうと考えていました。それでも、結婚してからは成金悪女という揶揄は消え始めていました。どうやらアルフレッドが名誉棄損だと悪評を立てた令嬢達を訴えたらしいと聞き、彼らは爆笑。昔からあいつはリリアン一筋だったしと盛り上がり、俺らも彼女のおかげで一廉の者になれたんだから、今後は彼女の慧眼ぶりを世間に知らせようと決意を固める場面で物語は幕。聊か不純な動機で始めた行動がとんでもない善行で、後にリリアンの評判は覆されるんだろうな、っていう余韻を持たせた終わり方が本当に良いです。唐突なラブシーンがないのも好印象。良作だと思います。評価:★★★★★
2024.09.20
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2024年8月刊ヴァニラ文庫著者:蒼磨奏さん大国アロンドラの新王ヘンドリックに嫁ぐことになったセレスティア。ヘンドリックは良王ながらも少し気難しいのだが、似た気質の兄を持つセレスティアは動じず彼を癒やせるよう心を尽くしていく。「君のような女性は初めてだ」口は重いものの時に甘く身体と心を重ねてくる彼に、想いはますます募るばかり。だがヘンドリックが外地で突然刺され!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 セレスティア=サンモニカ王国王女。 初恋の人であるヘンドリックに嫁いだ。 ヘンドリック=アロンドラ王国国王。ツンデレで気難しい性格。 イアン=サンモニカ王国国王でセレスティアの兄。隣国ダウールが宣戦布告も無しにサンモニカ王国に侵攻して来たのはセレスティアが7歳の時だった。突如始まった戦闘に国境の砦は落とされ、王子イアンが兵を率いて出陣したがダウール軍の勢いは凄まじく、兄は負傷。王都迄攻め込まれるのも時間の問題となった時、父王は二人に離宮へ避難するよう命じた。そして自分は友好国アロンドラからの援軍を待ちそれまで城に留まり持ちこたえると。兄妹は父を心配し不安になりながらも離宮へ。そこには戦火を逃れた避難民たちも収容され、セレスティアも兄と共に支給品の分配を手伝い、一刻も早い戦闘の終息を願っていた。数日後、アロンドラ軍の到着によりダウール兵は撤退。報せを受け二人は城に戻ったが、父は戦死していた。母を病気で亡くして以来、その分愛情深く育ててくれた父は多勢のダウール兵相手に最後まで勇敢に戦ったという。悲しみに暮れるセレスティアを励ましたのはアロンドラ軍を率いて来た王子・ヘンドリック。年回りはイアンと同じくらいか。不器用な物言いながら、幼い彼女にもその優しさが判る。焼野原となった王都の情景を見て彼はこれからも力になると約束してくれた。復興にはかなりの時間を要するだろう。兄を支えて自分も強くならなければ。そうセレスティアは決意したのだった。あれから15年。イアンは王位に就いて以降何より復興のために尽力していた。好戦的な王のせいで始まったダウールの蛮行は周辺諸国の批判を受けたばかりか、反戦派との対立が深刻化し治安が悪化。難民たちはこのサンモニカ王国にまでやって来ていると聞く。しかし、国民達は未だにダウールに恨みを持つ者も多い。兄も蟠りを捨て門戸を開くべきか迷っている様だ。そして更に彼の頭を悩ませているのは22歳になったセレスティアの嫁ぎ先だ。苦労させた分、一番幸せになれる相手の元へ行かせたい。そんな最中、セレスティアはパーティーでアロンドラ王国の宰相・キーランにこれまでの支援に感謝の意を伝えていると、彼から突然、絵に書いたようなツンデレな性格の男性についてどう思うか?と尋ねられた。兄がそういうタイプなので嫌いではないですよ、と答えれば是非ヘンドリック王との結婚を考えてくれないかと打診され、胸が高鳴った。私があの方の妃に。後日、イアンもキーランから正式に申し込まれたと前置き、お前の自由にしていいと言われた彼女はヘンドリックとの結婚を受けると答えた。その後、トントン拍子に話は進み、半年後セレスティアはヘンドリックの元へ嫁いだ。優秀だが気難しいと聞いてはいるが、まるでデジャブのように兄と言動が似通っているため、知らない者が聞けば誤解されがちな物言いもちっとも気にならない。イアンも妃のカロリーナを溺愛しているくせに素直じゃない態度を取っていた。照れもあってどう接していいのか判らないらしい。結婚して10年近く経ち、娘もいるのにだ。ヘンドリックも怒っているような表情でも、会話の端々から妻への気遣いが伺い知れる。それなら私から近付いて親睦を深めればいい。努力の甲斐あって徐々にセレスティアに対してのみ隙を見せるようになったヘンドリックの姿を見て、仕事の虫だった陛下がお妃さまの側ではリラックスしてらっしゃると彼の補佐をしている宰相の息子・ユージーンも感動するほど。ただ、ヘンドリックの母である王太后とは少し微妙な関係だ。高圧的で嫌味な性格のため、どう接して良いやら。顔を合わせる度に世継ぎはまだかと催促され、それがあなたの役目ですよと締めくくる。ヘンドリックも実母の言動にほとほと困り果てているらしい。二人いる妹姫も母親そっくりな性格だそうで嫁に行ってくれて清々したと苦笑していた。輿入れしてから数か月経った頃、サンモニカ王国との会談が決まり、ヘンドリックが赴くことに。彼から聞いた話では年々増え続けているダウールからの難民受け入れについても話し合われるらしい。アロンドラ王国にもかなりの人数が押し寄せて来ており悩みの種と言っていた。ダウール国民には何の罪もないだけに故郷を追われて気の毒とは思うものの、セレスティアも正直かの国に対して良い印象が無い。それでも、どこかで折り合いは付けなければならない。先日、城下でダウールの子供達が親に捨てられ困窮している姿を見てからというもの、考えも変わり始めてきていた。しかし、会談のためにヘンドリックがサンモニカ入りした数日後のこと、イアンと視察に訪れていた下町で彼がダウールの少年に刺されると言う事件が起きて・・・。間近でツンデレな兄の言動を見て来たセレスティアが嫁いだのは同じくツンデレの初恋の人・ヘンドリック。傍から見ればあんな態度で腹立たない?と言われがちな彼の表情と素っ気なさも、セレスティアには判っているので無問題。その間、不穏な難民問題がちらちら描写されていたので、何か起こるんだろうなと思いつつ平穏にストーリー進行していた終盤にこの事件ですよ。犯人の少年はダウールの傭兵の息子でした。彼らは戦争がなければお払い箱。結局難民となってサンモニカまで流れて来たはいいが、アロンドラとは違い、流石にこの国の民には受け入れられていませんでした。まぁこれは仕方ない気も。あの優しいセレスティアでさえダウールには蟠りがあるんですから。そんな扱いを受け続けた傭兵たちの不満は溜まり、その愚痴を聞いていた少年は強行に走り、ターゲットになったのがたまたまヘンドリックだったのです。重傷でしたが、幸いにも彼は一命をとりとめ、急ぎ里帰りしたセレスティアは無事を知って号泣。そんな彼女の姿にヘンドリックは今までの自分の素っ気ない態度を詫び、君を心から愛していると告げるのでした。その直後、体調を崩し気味だった彼女の妊娠が判明。ダウールも新国王即位により漸く国内が安定し、難民問題も徐々に解決していく中、世継ぎを産んだセレスティアを溺愛する彼の姿が描かれて物語は幕。おまけのイラストカードSSは、二人の寝起きの一コマでした。序盤の悲劇ぶりからどうなってくんだろうとハラハラしたものの、それも杞憂に終わり、以降は新婚夫婦の蜜月がクローズアップ。しかし、現代でも続く戦争によって難民問題が取りざたされていることもあって色々考えさせられるお話でもありました。評価:★★★★☆
2024.09.19
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今日(18日)までの購入タイトルです。小学館文庫キャラブン!9月刊発売日に購入。感想記事もUP済です。内容的にまだもう少し続きそうですね。ソーニャ文庫9月刊あさぎ千代春さんの最新作。マーマレード文庫9月刊3点ベリーズ文庫9月刊3点ビーズログ文庫9月刊シリーズ3作目ヴァニラ文庫9月刊購入したばかりなので立ち読み防止のビニールすら破っておらず。どっさり買ったのはいいものの、新刊ばかりでは早々にネタも尽きそうなので、合間に既刊も入れつつ追々感想記事をUP予定です。明日は割と新しめの本の記事を、とは考えてますが予定は未定。いい加減先月のヴァニラ文庫を読まないと(^_^;)
2024.09.18
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2024年8月刊ビーズログ文庫著者:もよりやさん義姉たちから虐げられているひきこもり令嬢リリーベルは、辺境伯エリアスが花嫁を選ぶパーティーに侍女として同行することに。ところがこっそり育てているゴランちゃんが会場に飛び込んでしまい、慌てて追いかけるとー「これが『花嫁候補』です」冷たく不愛想なエリアスから適当に指名され、『1カ月のお試し婚(強制)』をすることになり…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リリーベル=継母と義姉たちに虐げられていた子爵令嬢。 エリアス=辺境伯家当主。花嫁候補としてリリーベルを領地に連れ帰る。 ゴラン=リリーベルが育てた伝説の魔草・マンドラゴラシャルロッテ=エリアスの花嫁の座を狙う侯爵令嬢。魔獣を従え、国境を守護するスターリング辺境伯家。現当主であるエリアスは王族ながら人嫌いで滅多に社交の場に出ない事で有名だった。しかし、魔獣を扱えるのは代々スターリング家の者のみ。厭世家とはいえ、跡継ぎを残してもらわねば困ると国王がエリアスのためにと花嫁候補を決めるためのパーティーを開くことに。その日、王宮には貴族令嬢がひしめいていた。義姉二人の世話係として一緒に王宮へとやって来たリリーベルは、無理矢理くっついて来たマンドラゴラのゴランちゃんが人に姿が見えないのをいいことに会場を走り回ったり悪戯しているのを見て冷や汗を掻いていた。いい加減止めないと怪異現象と勘違いされて大騒動になりそう。会場に潜り込みビチビチと跳ね回るゴランちゃんの捕獲に漸く成功した彼女は、突然腕を掴まれて引き起こされていた。見ると礼装姿の頗る美形の青年。彼はリリーベルを真横に立たせると、私の花嫁候補はこの方ですと高らかに宣言。周囲の令嬢達は口々にあれってメイドですわよね?と声を上げている。居た堪れない気分を味わっているとその中で憎々し気に睨んでいる継母と義姉たちの姿が。自分でもどういうことなのか訳が分からないんですけど~。そんな彼女の腕をガッシリを掴み、じゃあ帰るかとエリアスは馬車にリリーベルを押し込み自らも乗り込むと遠い辺境の地へと連れ帰ったのだった。王都から馬車で三日ほどかかってようやくたどり着いたスターリング領は、自然豊かな美しい地であった。事情も分からないままこんな遠い所まで、魔草たちのお世話もあるのに。リリーベルは子爵邸の離れの納屋を住処とし、そこで様々な魔草を育てていた。ゴランちゃんもそのうちの一つ。まさか小鳥が落として行った不思議な種が伝説のマンドラゴラになるとは思いもよらなかったが。ゴランは意思を持ち自在に動き回ったり魔法まで使える特別な存在で、父まで亡くなって継母たちに虐げられるリリーベルのたった一人の友人となった。ゴランのおかげで絶滅危惧種の魔草の種を入手できたし、元々土いじりが好きな彼女にとってその時間は究極の癒しだった。だが、暫くは帰れそうもない。エリアスは屋敷に着くなり彼女に詫びた。国王が自分を心配してくれているのは嬉しいけれど、正直人となりも知らない令嬢たちを並べてこの中から花嫁を選べと言われても、と困り果てていたらしい。そこで彼はゴランを追いかけていたメイド姿のリリーベルに目を止め、使用人なら後で主人に事情を話して1ヶ月借り受ければいい。そう考えたのだそうだ。花嫁候補とは互いの相性を知るために1ヶ月間お試し婚として共に過ごさねばならない。だから、期間が過ぎれば合わなかったとして解消するからその間付き合って欲しい。報酬は払うからと頭を下げられ、その切実な様子にリリーベルはその頼みを引き受けたのだった。その間、魔草の世話はゴランがハヤブサを魔法で操って子爵邸まで飛ぶというので、一先ずは安心だ。スターリング邸は規模の割に使用人の数は少なかったが、皆気の好い者ばかり。メイド姿の彼女のこともエリアスの花嫁候補として丁重に扱ってくれた。寧ろ、タダ飯食って服まで誂えてもらい恐縮しきり。せめて何か手伝いをと散策していると魔獣の厩舎が見えて来た。卵から生まれるが、見かけは狼に似ており額に一本角を持つ魔獣は気性が荒い。どういうシステムなのかスターリング家の血筋の者にしか懐かず、その命で国境を守る生き物。興味が湧いて厩舎に近づけば一頭の魔獣が苦しそうに息を吐いて寝そべっている。一緒にいたゴランが、リリーベルが先日収穫してそのままポッケに入れっぱなしだった魔草の実を与えろと指示するので、半信半疑で与えてみると魔獣が大量の毛の塊を吐き出した。毛づくろいをする動物は球毛症になりやすい。見れば年寄りの個体の様でうまく吐き出せずに苦しんでいたようだ。お礼のつもりかさっきまで唸っていた魔獣に舐められていると、エリアスが慌てたように寄って来てリリーベルを𠮟りつけた。どうやら、現状エリアス以外に懐かない魔獣は危険だからと言いたかったらしい。その場は素直に謝り、部屋に戻った彼女の後姿を見送った彼はその後、書斎でリリーベルの身上調査書を読んでいた。報告書を読んで彼女が子爵家の正当な娘と知って驚愕。しかも、幼少時に実母を亡くし彼女の為と後妻を受け入れた父は数年後に事故死していた。継母とその連れ子二人はリリーベルを虐げ成長した彼女をメイドのようにこき使っていたと聞いて怒りが湧いた。そしてメイドなら仕事として引き受けてくれるだろうと考えていた自分の考えを恥じた。しかも、あの魔獣・ジエラはリリーベルが何らかの方法で手玉を吐き出させてくれたと知った。エリアスは球毛症とも気づかなかったのにだ。彼女には借りが出来た。せめてここにいる間は快適に過ごしてほしい。その後、エリアスに謝罪され、ジエラに懐かれたのを切欠に魔獣の世話を買って出たリリーベルは充実した日々を送っていた。楽しい時は過ぎるのが早い。ここに来てもう20日ほど経っていた。エリアスとも大分親しくなったのに後10日で去らねばならないのだ。一方、エリアスもまた彼女を返したくないと思い、正式に婚約者として迎える決意を固めていた。そんなある日のこと、隣接する領地の主・クラウディア侯爵家の令嬢シャルロッテからお茶会に招待されたリリーベル。子爵令嬢として呼ばれたことに不信感を抱きながらもこれも花嫁候補のお務めと恐々参加すれば、シャルロッテを始め令嬢達から非難の嵐。エリアスが買ってくれた訪問着まで嫌がらせで汚されてついにリリーベルがキレた時、ゴランちゃんから子爵家の納屋が火事だと報告を受け・・・。リリーベルの継母に唆されたシャルロッテは、彼女を徹底的に虐めるため、納屋の中を荒らすよう手の者に命じていました。しかし、魔草の中には扱いを間違うと火花を出す危険なものもあってそれが元で火事に。薬草効果で加速したジエナの背に乗り、実家に着いた彼女は何とか魔草を火から救いますが、自らも危機に陥りかけた時、追いかけて来たエリアスに助けられます。この一件で彼は激怒し、悪びれないシャルロッテの証言に侯爵夫妻も真っ青。王族の花嫁候補へのやらかしに国王も厳罰を下すのでした。まさかシャルロッテは投獄、侯爵家もお取り潰しになるとまでは思いませんでしたが、それだけエリアスとその子を産む予定のリリーベルに害をなしたと言うのは重罪なんですね。勿論、継母たちも厳罰にと予想していたんですけど、アリバイがあったので罪には問えず。でも、あの火を出す魔草が残っており、それが飛んで屋敷はまる焼け。継母たちはリリーベルから奪った財産全てを失うのでした。最後に最後でとんでもないザマァ展開来たなーって感じでスッキリ。エリアスからのプロポーズを受け、二人の婚約が決まって物語は幕。お話自体は結構シンプルな展開なんですが、魔獣やゴランちゃんなど不思議な存在が二人の恋を後押しした感じで良いです。評価:★★★★☆
2024.09.17
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2021年1月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さん没落令嬢の郁子は、吉原へ売り渡されそうなところを紡績会社御曹司・敏正に助けられる。事業拡大を狙う敏正は政略結婚を持ちかけ、郁子はそれをやむなく受け入れることに…。愛のなき結婚のはずが、敏正は郁子を溺愛し、二人は互いを深く求めあうようになりーーそしてある夜「愛し尽くすから覚悟しろ」ーー閨で独占欲を全身に刻まれてしまい…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 三谷郁子=子爵家の長女。父が作った借金を清算するため吉原に行く決意をして いたが、寸前で敏正に救われる。 津田敏正=日本最大の紡績会社の御曹司。 接待帰りに悲壮な覚悟をした郁子と出会う。三谷子爵家の長女・郁子は、その日、女衒に連れられ吉原の門を潜ろうとしていた。第一次世界大戦が終わり、戦場となっていた欧州の国々の品が出回るようになると日本はあっという間に輸出不振となった。戦後恐慌により輸出業で荒稼ぎしていた家業はあっという間に傾き、何とか立て直そうと奔走していた父は借金を重ね多額の負債を抱えるように。借金の取り立てが毎日屋敷を訪れ、少しでも家計を助けたくて郁子は女学校を辞め、解雇した使用人たちの代わりに率先して家事を担った。妹の康子と弟の寛一には心配しなくていいからと言い含めつつ、自らもこの家の先行きに不安を感じていた時、三谷家に女衒が訪れたのだった。子爵家は借金で首が回らない。そんな噂をどこかで聞きつけたのだろう。女衒は金が欲しいなら娘さんを売るしかないと唆し、父の了承を得るとまんまと郁子を連れ出した。あんたほどの上玉ならすぐに留袖新造になれると言う。たんまり稼いで年季が明ければ家にも帰れると聞き、希望も湧いた。10年はかかるそうだが家族のためだと覚悟を決めた。そんな彼女の腕を取ろうとした女衒の腕を気安く触るなと跳ねのけた時、一人の青年に声を掛けられた。彼から君は吉原に入るのかい?と問われ、そうですと毅然と答えれば、考え込んだ青年に名を尋ねられた。三谷郁子だと答えれば、すぐに子爵家と判ったらしい。彼は津田敏正と名乗り、女衒に彼女の値段を尋ねた。五千圓と聞くと、敏正はでは私が払うと背後にいた助手らしき男性に用意するよう話している。五千圓なんて、大卒の男子の10年分の給与に匹敵する。そんな大金を見ず知らずの女のためにと郁子は衝撃を受けた。君は私が買ったというと、敏正は待たせていた車に彼女を乗せると自宅へと連れ帰ったのだった。津田邸に着くと、君は吉原の過酷さを分かっていないと窘められた。彼から聞いた遊女たちの悲劇は想像を絶するもので、10年我慢すればと甘い考えをしていた自分を恥じた。年季明けの前に体を壊し亡くなる者も少なくないと言うし、運良く出られても元遊女では結婚も難しい。青い顔をする彼女に怖がらせ過ぎたと思ったのか、幾分口調を柔らかくした敏正は、三谷家のことは俺が何とかすると励ました。どうして見ず知らずの娘の為にそこまで?と尋ねれば、女衒への毅然とした態度に見惚れたからかな、と笑っていた。この屋敷の使用人の春江に聞くと、彼は日本最大の紡績業・津田紡績の御曹司なのだそうだ。しかし、そんな敏正でも五千圓は大金。後に彼の父親である社長から大目玉を食らったそうだが、よくやったと褒められもしたと彼は言っていた。実は敏正が慕う副社長・一ノ瀬氏の夫人が郁子の亡き母に大恩があるとのこと。それで社長から褒められたと言うことか。話自体は初耳ではあるが、母らしいとも思った。それにしたってあんな大金用立ててもらうなんて心苦しい。敏正の住む別邸で家事手伝いをしながら過ごして一ヶ月ほど経ったある日のこと。彼から心苦しそうに告げられたのは郁子との政略結婚。今回の援助で三谷商店と提携し総合商社にして輸出業に力を入れたいと言う案は賛成者多数だったが、反対者もそれなりにいた。この時代、紡績業だけではいずれ頭打ちになる。三谷商店という基盤があるのだからと社長も副社長も乗り気なのだが反対派を黙らせるにはもう一つメリットが欲しいそうで、それが郁子との結婚だと言う。没落しても華族、箔も付くし妻の実家家業をテコ入れするという名目ならということらしい。一緒に暮らすうちに、敏正に好意を抱いていた郁子は逆に申し訳なくなったが、少なくとも彼の計画の力にはなれる。決意した彼女はその申し出を受け入れたのであった。その際、三谷家に挨拶に来た敏正は彼女の父を𠮟りつけた。会社が傾いているのにビル建設まで強行しようとして詐欺に遭い、娘を売るなど以ての外だと。でもこの結婚で家族になる以上、援助は続けると言われ、傲慢な父も義息子に頭を下げていた。一方、津田家への挨拶で郁子は歓迎された。苦労人だと言う彼の母は優しく気配りの人で、未だに義父と仲睦まじく自分もそうなれたらと思う。暫くして式を挙げた二人。どうしてか同衾はしても手を出してこない敏正にヤキモキし、ある時、敏正には馴染みの娼妓がいると聞き嫉妬で体調を崩しかけた郁子。その件については春江が奥様を悲しませるなんて言語道断と彼を叱ったことで、敏正に誤解させてしまってすまないと謝られた。人気の遊女・菊乃とはそんな仲ではなく、接待等で世話になっている礼として彼女とその間夫との手紙を敏正が預かり橋渡しをしていたのだそうだ。この浮気騒動後、誤解が解け気持ちを打ち明けたおかげで無事に二人は結ばれた。しかし、郁子の父が敏正に騙されたと怒り狂い実家で暴れているという康子からの連絡を受け・・・。郁子の父・茂は、娘婿に叱られた上、実権が津田紡績に移ったことから不満が募り、その隙をつかれまた詐欺に騙されていました。当然、敏正は無実。まぁ、商才の無い茂に任せるのは泥船に乗るようなものなので、一ノ瀬氏に社長に就いてもらい、茂には名誉職にはなるが会長にと考えていました。それが乗っ取りだというならまぁ似たようなものでしょうけど、だってあんたじゃまた借金重ねて会社潰すでしょうよ。この点に関しては郁子も同じ考えで、後に真相を聞いた彼女も納得します。この件ですったもんだ揉め、事件に発展したりもするんですが、茂を唆した詐欺師も逮捕され、また敏正からキツイお叱りを受けた茂は、漸く自らの愚かさを思い知って娘夫婦に土下座して詫びるのでした。その後、津田紡績製の絹糸を使った布を始め、江戸切子等、日本の品質の良い品々を海外に輸出した三谷商事は大当たり。現代でも大企業として更なる発展を続けるわけですが、それはまた別の話。ラストに郁子の妊娠が判明して大歓喜する敏正と春江の様子が描かれて物語は幕。この作家さんのベリーズシリーズは皆繋がってるのが定説なんですけど、流石に大正時代じゃなぁと思ったら、そういうことねと。三谷商店から三谷商事に社名が変わったことで、漸く気付きました。そういえば、「君を愛で満たしたい」のヒーローも三谷商事の御曹司で一ノ瀬姓だった。年齢的に今作の一ノ瀬副社長は彼のひいおじいさん?あと「身ごもり政略結婚」のヒロイン・結衣の実家の和菓子屋「千歳」も明治創業というだけに、今作でも登場。名前だけなら結衣の夫・大雅の会社「アルカンシエル」と同じく結構な登場率かも。こういう仕掛けも気付くと何だか楽しいですね。評価:★★★★★
2024.09.16
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2024年9月刊こはく文庫著者:小日向江麻さん陽キャで肉食系な彼に浮気され捨てられてから、恋愛から遠ざかっている保田美澄。そんな彼女には最近、気になる異性がいた。それは同期の高橋颯真。控えめで穏やかな性格をした颯真との交流は、元カレによって傷つけられた美澄の心を癒やしてくれる。しかも普段無口で他人に無関心な颯真は、美澄に対してだけ親し気な様子を見せてくれるのだ。絵に描いたように完璧な草食系男子である颯真となら、また幸せな恋愛をできるかもしれない。そう思った美澄は一念発起して颯真に告白をする。すると颯真はあっさりOKをくれ、二人は晴れて付き合うことに。しかし、いざ恋人になってみると颯真の印象がすこし違う。メッセージは情熱的だし、二人きりになると積極的にスキンシップを取ってくる。今までの草食系っぽさが薄れているのだ。「こんな人だと思わなかった……」 颯真の変化に戸惑う美澄だったが、肉食系っぽい颯真にもなぜかときめき始めてしまい……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 保田美澄=IT会社に勤める会社員。 過去の失恋から肉食系より草食系が好みに。 高橋颯真=美澄の同期。物静かな草食系男子。IT会社に勤める美澄は、同期入社の高橋に片思いしていた。そんな彼とは同期のよしみで社食でたまにランチをする仲ではあるのだが、実際には知り合い以上友達未満な関係だと思っている。何せ無口な彼は話しかけても相槌を打つ程度で一方的に話すのは美澄の方ばかり。これは脈無しかなぁと内心がっかりしかけた所、彼女の趣味でもある映画鑑賞の話題には食いついて来た。その話題のついでに美澄のことを友だちだと思ってくれていたのも判り、嬉しくなったが何とも複雑な心境だ。その話を人事部の同僚で友人の古都花にすると、私の見立てでは高橋君は絶対に美澄に惚れてると思うけどねぇと言い、今は交際してる人もいないみたいだし、アタックするなら今でしょと発破をかけられた。励まされた美澄本人も、言われてみればそうかも一念発起。土曜日に行ってみたい店があると高橋にメールを入れるとOKの答えが。休日に会う彼は髪型も服装もいつもと違って彼女もドキドキ、お洒落なカフェバーでランチを食べ、カクテルを飲んだ美澄は思い切って、今日はどうして来てくれたの?と尋ねた。すると保田さんと話すのは楽しいからという返事に、私、高橋君のことが好きなの!と告白をかました彼女に高橋も驚いていたが、俺も好きだよと言われ、内心でガッツポーズ。古都花の言ったとおりだった。よくよく聞けば、彼も長らく美澄に想いを寄せてくれていたらしい。だが、中々告白するチャンスが無かったと。女の子の方から言わせるなんて、と謝られたが両想いだと判ったのだし、彼に任せてたらいつになるやら。やっぱり草食系なんだなぁとうっとり。それならば、明日も休みな事だし交際記念でとことん飲もうと店を変え23時近くまで飲んだ後、ベンチで酔い覚まししていた二人。帰りたくないなぁと溢すと、高橋からいきなりキスをされ、美澄と呼び捨てにされたのでビックリ。連れて行かれたのは彼の部屋。なんだか豪華なマンションでもしかしてお坊ちゃま?と腰が引けているとベッドに押し倒されあれよあれよという間に一線を越えてしまった。まぁ、初日とはいえ交際しているのだからいいんだけれど、さっきから彼が強引で戸惑ってしまう。言葉遣いと言い、無口の割に歯の浮くようなことベラベラ喋るので、美澄は過去の苦い記憶を呼び起こされていた。その夜、夢に見たのは大学生時代に付き合っていた恋人のこと。イケメンで優しい彼は何かといえば美澄を褒め称えていた。でも、それが嘘っぱちと知ったのは彼の浮気が発覚した日。誘われれば恋人がいようと浮気に走る、とんだ陽キャに良いように遊ばれた挙句、開き直って責める美澄を嘲り棄てた男。初カレでこれはキツイ。おかげで暫く恋とは遠ざかっていたのだが、入社式で彼女は運命の人と出会った。しかし、交際に発展してからの高橋の言葉がどうにも元カレを連想される。陰キャだと思ったら実は陽キャだったせい?翌朝、高橋から社内で物静かにしていた理由を打ち明けられた。何と彼は社長の一人息子でいずれ跡を継ぐらしい。一応、上層部は彼が御曹司だと知っているようだが、数多い社員の中で高橋なんてありふれた名字から、社長の関係者とは思わないだろう。かく言う美澄もその一人だった。だが、気を許して多くの同僚と接すればいずれボロが出て、取り入ろうとする者も出るかもしれない。高橋は無口無関心を装うことを決め、真面目に仕事に打ち込んでいた。だが、美澄だけはどれだけ反応が薄くてもめげずに話しかけて来る。そのうち気になる子から好意に変わって事情含めいつ告白するか迷っていたのだと。要は会社では寡黙に装っていたが、実際の彼は陽キャという程ではないが普通に好きな人が出来れば調子い言葉も吐く人だったというわけね。幻滅するなんてことは無かったものの、やはり戸惑いがあるのは贅沢な悩みなのか。それでも、好きな気持ちは変わりなく、交際は順調。会社では相変わらず物静かで無口、真面目に仕事をこなす彼は周囲には陰キャに見られてるんだろうな。しかし、高橋は顔が良い。中途採用で入って来たアラサー美人・糠谷に執拗なアプローチをされている姿を見て美澄は大ショック。彼も塩対応で接していたが、美人に迫られれば浮気して当然と言う元カレの言葉を思い出してモヤモヤが止まらない。ついデート中のレストランで彼に嫌な事を言ってしまった美澄は店を飛び出し・・・。元カレが浮気を正当化するような物言いをしたせいで、高橋君もとばっちり。だけど、元カレと高橋くんは違うので、すぐに美澄を追いかけ誤解を解きます。糠谷には俺には大事な人が居るので、ときっぱり断ったと聞き、疑ってごめんなさいと美澄も謝罪。そしてどうして浮気を疑ってしまったのか、元カレのことを語るのでした。高橋は元カレの言動に憤慨しつつ、でもその別れがあったから自分達は会えたんだと思えない?と言われ、妙に納得した美澄それから数か月が経ち、古都花に交際の進捗を聞かれ、順調だと答える美澄。じゃあ結婚も間近かねぇと古都花に揶揄われ、だと良いけどね、と希望を持たせる感じで物語は幕。婚約が決まった、とか入籍した、ではなかったですが、これはこれでアリかと。こちらも割と淡々系のお話かな。評価:★★★★☆
2024.09.15
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2018年12月刊ベリーズ文庫著者:真彩-mahya-さん貴族の娘・鳴鈴は、賊に襲われたところを助けてくれた容姿端麗で屈強な武人に恋をする。しかし父の強引な勧めで、皇帝の子息に嫁ぐことが決定。彼への想いを封印して迎えた当日、謁見の場にはあの武人ー夫となる皇子・飛龍が!結婚を喜ぶも、堅物な彼は素っ気なくて…。しかしある日、何者かに命を狙われた鳴鈴を救った飛龍は、これまでと違い、甘く情熱的に鳴鈴を求めてきて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 徐鳴鈴=崔国の貴族の娘。 愛する飛龍の妻になるが相手にされず思い悩む。 向飛龍=数々の武功を立てた崔国の第二皇子。その日、鳴鈴は遠縁に当たる皇帝の寵妃・翠蝶徳妃からの招待で後宮に遊びに行っていた。話も弾み、帰る頃には夜も更け帰りを急いだが、彼女の乗る馬車は運悪く夜盗の襲撃を受けた。主を守るため、護衛代わりの侍従・緑礼も奮闘したが、隙をつかれ鳴鈴は賊により馬車から引き摺り下ろされてしまった。しかし、間一髪のところ加勢に入ってくれた武人が。ガタイの良い青年は武将だろうか。幾人か部下を連れていたけれど、それでも賊のほとんどは彼が倒していてその強さとカッコ良さに鳴鈴は青年に一目惚れ。惜しくも首領格らしき賊には逃げられてしまったが、彼女達に目立った怪我がないのを見届けると青年はさっさとその場を去り、碌にお礼も出来なかったと鳴鈴はガックリ。以降、名も知らぬ命の恩人に想いを馳せていた鳴鈴だったが、ある日、父から縁談を命じられ悲しみに暮れた。お嫁に行くならあの方の元が良い。泣き暮らす彼女に緑礼も手を焼いていたが、よくよく話を聞くに、お相手は第二皇子とのこと。貴族にしては珍しく野心もなく実直な父もそんな方に娘が、と大興奮。そして、これは翠蝶徳妃の推薦であることを話した。そもそも皇族との結婚をこちらから断ることはできない。泣く泣く嫁ぐのを了承した鳴鈴は、顔合わせの際、夫となる人があの武将だと知ってビックリ。向飛龍、それが第二皇子で命の恩人の名であった。29歳の彼は、理由あって長らく妃を娶らなかったと言う。飛龍の実母と親しかった翠蝶徳妃はじきに三十路となる皇子がいつまでも独り身では立場も悪くなりかねないと、お気に入りの娘である鳴鈴との結婚を皇帝に推し、承諾させたという経緯であった。随分年上だと思っていたが、まさかの11歳上。加えて、鳴鈴は身体も小さく18歳にしてはかなり幼く見えた。アンバランスな夫婦の誕生に失笑する者もいたけれど、鳴鈴はめげなかった。だって恋焦がれたあの方の妻になれたんだもの。結婚してすぐに彼が治める北の地・星稜で暮らすことになった鳴鈴。丁度冬の時期だったので温暖な王都育ちの彼女は早々に体調を崩してしまった。薬も飲めず、喘鳴する主に緑礼もオロオロしていた所、見かねた飛龍が口移しで無理矢理薬を嚥下させるという出来事が。初めての口づけがまさかの口移しとは。そう、鳴鈴は初夜すら迎えていなかったのだ。この結婚自体、母代わりの徳妃からのゴリ押しで彼も断れなかったのかもしれない。不本意な結婚だったせいか同じ寝台で眠っても彼からは一切手を出されず、鳴鈴は枕を濡らす日々。でも無理矢理でも薬をしっかり飲んだおかげで彼女は数日もすれば復調し緑礼相手に楽しくおしゃべりしている姿が見受けられた。飛龍とて、鳴鈴を嫌いなわけではない。外見も性格も可愛いし、貴族令嬢ながら気取った所も無いので、すぐに好意を持つようになっていた。だが、思い出すのは10年前の悲劇。自分が鳴鈴を寵愛していると知れれば、また同じ事が起こるかもしれない。だから我慢だ我慢。だが、そんな飛龍の心遣いが思いもよらぬ結果に。夫に相手にされない童顔の妃と、鳴鈴の立場が日増しに悪くなっていったのだ。ある日のこと、毎年の行事で久方ぶりに王宮に帰った二人。鳴鈴は懇意にしている第三王子の妃・宇春と、飛龍は気の合う兄弟たちと夫々過ごしていた。その折、皇太子妃に飛龍との仲を揶揄され、落ち込んだ彼女は一人庭園にある池でぼんやりしていた所、何者かに襲撃され腹を刺された挙句池に落ちると言う事件が起きた。幸い、飛龍が慰めにと送った鏡を懐に忍ばせていたため、怪我は無かったもののこの件は暫く王宮を騒がせた。数日後、気晴らしにと出掛けた市でも彼女が襲撃され、飛龍はまた繰り返されるのかと苦悩。なのに、不安だろうにそれをおくびにも出さず、逆に夫を慰める鳴鈴に、彼は自らの過去を語ったのだった。10年前、雪花という貴族の娘と恋仲になった飛龍は彼女との結婚を決めた。同時期、優秀だった彼は二人の兄を差し置いて皇太子に決まっており、特に長兄・宿鵬は雪花に惚れていたこともあって弟を恨んでいた。それでも兄の申し出での決闘にも勝ち、結婚も立太子することもケリは付いたと思っていた矢先、ある事件が起きた。雪花を諦めきれない宿鵬が彼女を襲い殴り殺してしまったのだ。お前なんかを選ぶから、抵抗したからだと嘲笑う兄に罰を下したのは雪花の父だった。だが、当然皇子を手に掛けたものはいくら貴族でも重罰は免れない。雪花の実家・梁家は取り潰しになり親族は地方へ送られることに。その際、飛龍は何の罪もない梁一族がなんとか暮らしていけるよう地方で便宜を図ったが、それでも一族の滅亡は飛龍のせいと恨んでいる輩もいるはず。この事件後、飛龍は皇太子の座から降り、二番目の兄・浩然が皇太子となった。以来、彼はもう武勲を立てるのは止めよう、自分が目立って皇太子になんてなったから妬まれた。もし後に妃が出来たとしてもまた雪花のように殺されてしまうかもしれない。だから寵愛はしない。そう心に誓ったのだった。話を聞いた鳴鈴はその重い過去に絶句。でも、私は死にませんよ、と彼を励ました。案外逞しい彼女を見て、大人しくしていても妬まれ付け狙われるなら、素直に寵愛を見せつけてやると飛龍は開き直り、鳴鈴がたじたじになるほど彼女を溺愛し始めた。漸く初夜を迎え、幸せを体感していた二人。しかし、そんな生活を邪魔するように飛龍に進軍してくる隣国の迎撃を命じられ・・・。外見は幼妻なヒロインが愛を貫きヒーローと幸せになると言うお話。なまじ皇子が多いためにそりの合わない者とは兄弟と言えど、しょっちゅう争っていました。優秀な弟に嫉妬し、想い人を奪われた長兄さんの悔しい気持ちも判らないでもないですが、それが後に多くの人々を巻き込む悲劇を産むことに。雪花さんの死後、彼女の父は恨みを晴らすために宿鵬を殺害。飛龍が便宜を図ったものの梁一族の多くは辛酸を舐めることに。逆恨みした彼らは飛龍の幸せを許せず、鳴鈴を狙いますが、星稜ならともかく王宮に侵入できたのはおかしい。もしや手引きした者がいるのでは?一方、飛龍は出征先で何故か味方に襲われ重傷を負い危機に陥っていました。それを助けたのは第三皇子に頼み込み無理矢理ついて来た鳴鈴。危機を脱した彼は王宮に乗り込み、真犯人を問い詰めます。犯人についてはばらしてもアレなので伏せますが、結局この事件でを機にまた飛龍が皇太子になることが決定。鳴鈴も徐皇太子妃になるのでした。本編はここで終わっていますが、書き下ろしの番外編はその後日談。いつまでも妊娠の兆候が無い鳴鈴に業を煮やし、側妃を迎えるよう責める高官たち。そんな最中、鳴鈴の妊娠が判明して、っていう内容です。結局飛龍は彼女以外の妃を持たなかったが、最終的に7人の子宝に恵まれたと記載されてたので、確かに側妃は不要よね、と思いました。なんちゃって中華ファンタジーであった今作。苦手に思う方にも読み易いんじゃないかな、と。とにかく鳴鈴が可愛い。評価:★★★★★
2024.09.14
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9月下旬 レジーナブックス 最凶公爵閣下のお気に入り 白乃いちじくさん 乙女ゲーム攻略対象者の母になりました 緋田鞠さん10月中旬 アルファポリス文庫 鬼の頭領様の花嫁ごはん! おうぎまちこさん11月5日 ベリーズファンタジースイート 家出聖女は天使な弟と全てを奪い返します 斎木リコさん11月8日頃 マーマレード文庫 後妻ですが、バツイチ旦那様の容赦ない激甘愛でとろとろに溶かされています ~きまじめ教授と初心な教え子の両片想い即日婚~(仮) 有允ひろみさん11月9日 モンスターコミックスf 宝石の娘と異能の王子 1 村上私さん/万衣花さん11月10日頃 ベリーズ文庫 一夜の恋に溺れる 愛なき政略結婚は幸せの始まり 佐倉伊織さん タイトル未定 田崎くるみさん ベリーズ文庫溺愛アンソロジー 砂川雨路さん他 このたび、夫婦になりました。ただし、お仕事として! 一ノ瀬千景さん相変わらずマーマレード文庫のタイトルがとんでもなく長い。ベリーズは他にも気になるタイトルがあったんですけど、kindle unlimitedの読み放題対象になるまで待つか悩み中です。宝石の娘のコミックス化は漸くか~って感じ。
2024.09.13
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2023年11月刊こはく文庫著者:田崎くるみさんデザイナーとして働く門沢詩音は、社内コンペで大きな仕事を勝ち取った。それはイベント企画・運営を行っているスタートアップ企業のロゴデザイン。初顔合わせは順調に進んだが、事件は打合せ後に起きた。なんと、イベント企画会社の社長・高石恵から「一目惚れしました。俺と付き合ってくれませんか?」と告白されてしまったのだ。相手は若きイケメン経営者。そんな相手が自分に一目ぼれ? 困惑する詩音に、「まずは食事だけでも付き合ってほしい」と懸命に食い下がる恵。クライアントの誘いを強く断ることもできず、詩音は渋々ながら恵と二人で食事に行くことに。ただ食事をするだけと思いきや、恵のエスコートで向かった先はハイブランドの旗艦店に高級ディナー。出逢ったばかりのハイスペック社長から贈られる過ぎたる愛に、詩音はただただ困惑する。しかしどうやら恵には、詩音に対して「一目惚れ」以上の何かしらの感情があるようで……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 門沢詩音=入社3年目のグラフィックデザイナー。 高石恵=イベント企画会社社長。詩音を見初め交際を申し込む。中土井絹香=詩音の同期で友人。 折谷洋太=詩音の同期でライバル。学生時代から憧れていたデザイナーが社長を務めるwebデザイン会社に入社して3年目の詩音。指名の仕事も徐々に入るようにはなったが、未だにコンペは緊張する。今回提出したのは最近業績を上げていると言うイベント企画会社のロゴ。緊張しきりではあったが、採用されたのは詩音のデザイン案だった。思わずガッツポーズしそうになったのを何とか堪え、先輩や同僚達のお祝いの言葉に素直に礼を言っていた彼女に突っかかる人物が一人。詩音をライバル視している同期の折谷洋太だ。この男、そこそこ優秀なのだが如何せん性格が悪い。同期入社ながら指名も入るようになった詩音を妬み何かと嫌味を言ってくる。今回のコンペもどうせまぐれだからいい気になるなと釘を刺して来るので適当にあしらっておいた。マジになって言い返せば相手を喜ばせるだけ。流石にあの言い様はムカついたので友人の絹香に愚痴ってしまったが、彼女もあいつ本当に負けず嫌いで粘着系だよねーと自分のことのように憤慨していた。実は、折谷は長年絹香に片思いしており、自分が彼女に毛嫌いされているのはあることないこと詩音が吹き込んでいるせいだと思い込んでいる節がある。単に愚痴を言われるような言動をしなければいいだけなのに本当に小さい男だ。数日後、打ち合わせのために件の会社を訪れた詩音。担当は君田と川俣という同年代の男女。この会社自体、まだ設立して5年程だそう。節目の年に合わせて企業ロゴとマークをという話が出て依頼したらしい。詩音はコンペ案以外にも少し手を加えたデザインを3つほど追加。希望も取り入れるのでと言うと二人ともやっぱりどれもいいねと大絶賛。仕事の話も終わり、話好きの川俣から雑談中に恋人はいますか?と聞かれた詩音はタジタジ。今は仕事一辺倒でと無難に答えれば、ならうちの社長がお薦めです!と熱烈なプレゼンが始まった。いや、会った事も無いのに。困り顔の詩音に助け舟を出したのは、川俣激推しの高石社長その人だった。なるほど、川俣が推すのも判る。俳優ばりのイケメン。背も高いし優しそうな雰囲気の青年だった。それにしても黒目勝ちの瞳にどこか見覚えがあるような。思い出そうとガン見していた彼女に脈ありと思ったのか川俣は大興奮。我に返った詩音がしどろもどろになっていると「あなたに一目惚れしました。結婚を前提にお付き合いしてください」と高石からいきなり告白されてビックリ。川俣は目の前の光景に打ち震えているが、どう考えても一目惚れされるような容姿ではないと詩音も自覚している。冗談かもしれないしで判断に困る。すると、先ずは僕を知ってほしいのでお返事はそれからで、と言われるがまま連絡先を交換することに。彼のフルネームは高石恵。若いと思ったが、やはり詩音の2歳上の27歳だと言う。大学卒業後に起業した会社が当たって、その容姿から若き事業家としてビジネス誌でも話題の人物。というのは川俣からの受け売りだ。高石は随分マメな性格らしく、SNSのアカウントでつながると毎日「おはよう」から始まり、昼食や仕事先でこんなことがあったなど報告してくる。そのうち食事にも誘われるようになり、高石おススメの店に感動し、お礼に詩音も家族でお気に入りの和食店にも連れて行ったりもした。一緒にいて楽しいし話も合う。ここまで来ると詩音も彼に心惹かれてると自覚も出て来た。絹香からはもう付き合っちゃいなよと言われているが、彼と自分の好き度合いに温度差がある気がしてどうにも踏み切れないでいた。そんな折、部屋でアルバムを眺めていた詩音は子供の頃一緒に遊んでいた近所のめぐちゃんを思い出していた。黒目勝ちの可愛い子だったなぁ。あんなに仲良かったのにめぐちゃんの父親の海外赴任が決まって引っ越して行った。高石の瞳を懐かしく思ったのはめぐちゃんに似てたからだ。めぐちゃん元気かなぁ。ロゴデザインの方は検討を重ね、今度詩音を交えての会議で決定するらしい。社長に報告すると、高石の方はほぼ終了となるので急で悪いがと仕事を回して来た。見れば初期に担当した会社のwebサイトのリニューアル。先方が詩音を指名して来たと聞いて俄然やる気に。だがその翌日、出社した彼女は同僚達からの冷たい視線に気が付いた。変わらず挨拶し会話してくれる者もいるにはいたものの、どうも居心地が悪い。昼休憩に絹香が誘いに来てランチしていると彼女から思いがけない話を聞いた。門沢の仕事が途切れないのは身体で担当者に取り入ってるからだ、と。当然、絹香はこんなの嘘っぱちだと怒っていた。噂を鵜呑みにしていない者たちも多い。しかし、君のことは信じているが真偽がはっきりするまで現状の仕事の担当を外れて欲しいと社長から打診され・・・。噂を流したのはこの人しかいないでしょう、で当然折谷です。彼は偶然街中で親し気に高石と歩く詩音を見かけ、あの仕事も色仕掛けで取ったに違いないと勝手に妄想。それを社内に広めたのです。でも突然担当から外れた彼女を心配して高石が社長に直談判しに訪れ、大勢の社員がいる中、あのデザイン案はデザイナーの名を伏せて送られて来たもので、一番良いと思ったデザインを選んだだけと告げます。そもそも詩音がコンペに出していたのも知り得なかったという証言にそれもそうかと皆も納得。それでもじゃあなんで個人的に彼女と会ってたんだと折谷が高石を責めたので、詩音もハラハラ。そんな時、彼が語ったのは予想外の話。しーちゃん、俺のこと本当に覚えてない?と。もしかしてめぐちゃん!?高石が一緒に遊んだあの子だと思い出しはしたものの、ずっと女の子だと思っていたことに申し訳なさ一杯。無事彼女に思い出してもらった高石は、幼馴染と再会を機に食事に出掛けたり交際に発展したら咎められることなんですか?と問われ、社長も信じると言いながら詩音を担当から外したことを謝罪。社員達からも謝られ、騒動は幕を閉じるのでした。その後、高石から昔は女の子みたいでよく間違われていた事、詩音もその一人で同性だと思われていたからこそ仲良くしてくれていると思い打ち明けられなかったと語ります。一目惚れ云々は高石=めぐちゃんだと気付いてなさそうだったから。そして、詩音がよく理想の旦那様について熱く語っていた内容を目標に仕事を頑張っていたと告げられ、高収入とか社長とか、3LDKの高級マンションに住むとか、今思えば相当恥ずかしい希望だった気がして恥ずかしい。でもそれを全部叶えた高石には恐れ入る。私は恵君より熱烈じゃないかもしれないけど、と本心を打ち明けた詩音。その後二人は正式に交際に至り、暫くして入籍。エピローグでは3年後、長男を交えた高石家の賑やかな様子が描かれて幕。おまけの番外編は高石目線の家族の話。めぐちゃん関連や噂の出どころなど、割とすぐ展開予想もついた内容でしたが、モヤモヤ度も少な目だし、ほんわかする内容だったと思います。ページ数も少なめなので軽めのストーリーが読みたいと言う方におススメ。評価:★★★★☆
2024.09.12
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2021年8月刊マーマレード文庫著者:あさぎ千代春さん輸入菓子会社に勤める美都は、社長の高虎から突然「お前と結婚する」と迫られて!?美都の祖父が作るアップルパイのレシピ提供の条件として、政略結婚を勝手に決められていたのだ。訳がわからないまま、不愛想アンドロイドと噂される冷徹で強引な高虎と同居することになったが、自宅での彼は極甘に豹変。既成事実を作ろうと甘い毒牙を向けてきて…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 岡村美都=輸入菓子メーカーに勤める会社員。 旗江高虎=美都の勤め先の社長。 柴田光輝=美都の元カレ。 旗江万里=高虎の異父弟。輸入菓子会社の庶務課に勤める美都は、ある日突然社長室に呼び出され戦々恐々としていた。役職に就いているわけでもない平社員の自分に旗江社長が直々に話があるなんて。気付かないうちに何かやらかしてたんだろうか。おっかなびっくりで入室すると、突然手を引かれ熱烈なキスをされて美都はビックリ。パニくって思わずフルスイングで平手打ちをかますと、殴られた本人は婚約者に対してその態度はないだろと苦笑い。私がいつ社長と婚約したんですか、付き合ってすらいないでしょと詰め寄れば、君の家族には了承を取ったと悪びれない旗江の様子に意味が分からず唖然。どういうことかと尋ねれば、祖父母が営む洋菓子店「OKAMURA」の名物アップルパイを今度この会社で取り扱うことになったらしい。輸入物だけでなく今後は日本全国の名物菓子も販売して行く、という話自体は営業部にいる友人からも聞いていた。祖父の作るアップルパイは本当に美味しくてファンも多い。それだけを買いに地方からも客が訪れる程だ。旗江の説得に祖父は彼を気に入って意気投合。門外不出のはずのレシピも快く提供してくれたそうだ。でもそれと婚約者云々っていう話にどうつながるんだ?不思議がっていると、よりにもよって祖父が、あんたが独身ならうちの孫娘もついでに貰ってやってくれと頼まれたのだそうだ。理由を知って美都は憤慨。大事な孫をレシピのおまけにするなっ。20年前に両親を相次いで亡くした彼女を父方の祖父母が引き取り、大事に育ててくれた。二人には感謝してもしきれない。それにしたって本人に断りもなく勝手に人生の一大事を決めてしまうなんて。しかも、問題なのは旗江がこの結婚にかなり乗り気なことだ。ここで押し倒して早々に既成事実を作ろうとするくらいには。そんな彼を、私には初耳でしたので、と何とか説得すれば渋々引き下がってくれたが、その代わりにと渡されたのはマンションのものらしい電子キー。就業後は俺の部屋で待っててと、マンションの住所と地図が後にメールで送られて来た。まぁ、会社でする話でもないしゆっくり話そうってことかな。一応、休憩時間中に祖父に連絡すれば概ね旗江の言った通りだった。祖母も喜んでいたし外堀を埋められているようで眩暈がした。いざ、マンションに着けば生活感の無さ過ぎる部屋。食事はほぼコンビニ弁当と耳にしたことがあるけれど、全く料理をしないようで冷蔵庫にはミネラルウォーターとビールのみ。他人事ながら旗江の健康状態が気になって、頼まれもしていないのに夕食まで作ってしまった。わざわざスーパーにまで行って何してるんだか。丁度良いタイミングで帰宅した彼はテーブルに並べられた家庭料理に目を丸くしており、美味いと絶賛してくれた。待ってる間ヒマだったんでと苦しい言い訳をしていた美都は、食事を終えた旗江からこれから一緒に暮らそうと言われ絶句した。おばあさんたちからもくれぐれもよろしくと言われていると悪魔の微笑み。ここまで来たらもう観念するしかないのか。そこで美都は合意を得ずに、無理矢理性的接触はしないことを条件に同居に同意。それに、完璧に見えて実は生活能力ゼロの彼を放っておけなかった。あれ以来、キスもしてこないし約束を守ってくれている旗江に安堵しつつ、夜中目覚めると抱き枕のように抱きしめられててビックリすること数回。お人好しな美都は手間は変わらないからと食事の支度を引き受け、弁当まで作って手渡すと彼は感動していた。仕草やマナーなどを見るに育ちが良さそうだけど、お母さんが家事をしない系の人だったのかも。そんな最中、東京支社に美都の元カレの柴田が出向先の神戸から帰って来た。彼とは大学時代に3年程交際していたが、柴田の浮気が発覚して破局した。3歳年上の彼は外資系の銀行に勤めていたがトラブルがあったとかで退職。中途採用で全く系統の違うこの会社に入社して来た時は驚いたものだ。浮気しておいてまだ美都に未練がある風なのが癪に障りつい冷たい対応をしてしまうけれど、相変わらず底抜けに明るい奴でうんざり。この頃になると旗江を意識している自覚があった美都は馴れ馴れしい柴田の態度に冷や冷やしていた。しかし、後日柴田から破局の原因となった浮気疑惑の真相を聞いた。彼が当時ストーカー被害に遭ってたなんて知る由も無かった。上司の娘が犯人だったそうで揉めた結果、銀行を辞める判断をしたらしい。復縁を迫られたが、今の自分は旗江と結婚して家族になりたいと思っている。素直にもう好きな人が居るんだと申し出を断った美都はある決意を固めていた。旗江は美都が元カレとよりを戻したいのではと勘違いしていたが、彼女がきっぱり否定。結婚も真剣に考えたいと思うという美都の言葉を受け、正式に交際することになった二人。何もかも順風満帆に進んでいる、そう思っていた。だが、バイトが病欠してしまい土日に店のヘルプを頼まれた美都は、自分を尋ねて来たスーツ姿の男性から旗江と別れるよう手切れ金を渡され・・・。実は旗江はとある大企業の跡取りでした。が、父親と折り合いが悪く家を飛び出し、全く関係ない洋菓子を扱う会社を起ち上げ成功を収めます。彼は常々「お菓子の王様になる」と公言しており、面接の際、彼のこの言葉に美都も感銘を受けていました。店に現れたスーツの男性は旗江の父親の秘書。息子には然るべき家の娘と結婚させるから、という彼の父親の意向に従うつもりはなく、やり取りを見ていた祖父が追い出します。当然、手切れ金は突っ返したものの、折り合いが悪いとは言え病に倒れた父を見舞いもしない旗江につい美都は意見してしまいます。後悔しないよう、お互い納得がいくまで話し合うべきだと。家族なんだからと言う美都にお前に何が判ると旗江はブチキレ。意見の相違で二人は喧嘩になるも、彼を一人にしておけないと結局マンションに戻って来た美都。そこに現れたのは旗江に雰囲気が似ているランドセル姿の少年。歳の離れた異父弟だと関係を明かした少年は万里と名乗り、現状の旗江家で起こっている騒動を明かします。会長である父親が倒れて入院したのは聞いていた。だが、ここにきて気弱になったのか旗江を家に呼び戻そうとしているそう。家なら自分が継ぐ、兄は自由に生きて欲しい。万里は異母兄を慕い、家庭的な雰囲気の美都のことも兄の嫁として歓迎。この弟君、小学生とは思えない程聡い子で、しり込みしていた美都のことも後押ししてくれます。もう一度話し合った二人は彼の父に会うことを決め、入院している病院へ。真摯な言葉で高虎さんのことは任せて安心して欲しいと伝える美都に、漸く義父は息子が自由に生きることを認めるのでした。その後、旗江の口から昔荒れていた時代のこと、その時食べたあのアップルパイの味と店番をしていた可愛い女の子の思い出が語られ、二人のファーストコンタクトが大分昔だったと知る美都。おませな彼女がカッコイイ旗江に「お菓子の王子様になって私と結婚して」とプロポーズをしていました。お菓子の王様になるってそんな意味合いだったのね。それを実現した彼を微笑ましく思うのでした。おまけの番外編は柴田目線の美都と旗江のお話。全編通して明るくコメディ調ではありましたが、旗江の抱える闇が露見したあたりで暗雲が。美都の明るさと万里くんの登場で盛り返しが早くて良かった。温度差に風邪ひきそうだったもん(^_^;)評価:★★★★★
2024.09.11
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2024年7月刊夢中文庫クリスタル著者:玉紀直さん男の人は苦手、なんなら恐い──幼少期のトラウマを抱える男性恐怖症の保育士・紫苑。そんな彼女がお見合いで出逢ったのは、10歳年上のイケメンドクターの大悟。しかし彼は“超”強面。なんとかお断りの言葉を残してその場から逃走した……はずなのに、お見合いは続行!? どうして? と不思議に思うけれど、本当の彼は柔らかで頼もしい小児科医だと知って信頼感が高まり、なにより紫苑への思いやりが溢れていて……。俺とつきあって、男性への恐怖心を克服しませんか?──大悟から提案に紫苑は勇気を出して交際スタートさせれば、彼に惹かれていく気持ちが止まらない! しかし、トラウマを思い起こさせる事態が発生して!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 望月紫苑=過去のトラウマから男性恐怖症になった保育士。 麻倉大悟=紫苑の見合い相手の小児科医。大人の男性が苦手で、恐怖心がある紫苑は勤続2年目の保育士。そんな娘を見守っていた両親だったが、このままでは一生独身なのではと心配になったらしい。父が懇意にしている病院長の息子と会うだけでもいいからとお見合いをセッティングされてしまった。しかし、16年に及ぶ恐怖症。両親が思っている以上に根は深い。いくら大好きな父の頼みでも受け入れられないことだってあるのだ。お相手には悪いけど、この話は無かったことに、と謝って帰ろう。目を合わすことも苦痛なので、ちらっと見た程度ではあるが、お相手の男性は結構なハンサムだったように思う。そんな彼は開口一番に紫苑から断られたので流石に癪に障ったのか「はぁ!?」と不機嫌そうな声を発したので、紫苑はかなりビビっていた。なまじ造形が整っているからか、怒った顔は超怖い。ごめんなさいっ平謝りしながら料亭を後にした紫苑は、すぐに捕まったタクシーに感謝した。逃げるように帰宅した娘に、両親は色々察したらしい。父にも謝罪されて本当に申し訳ないが、こればっかりはどうしようもない。翌日、同期の保育士・一葉からもどうだった?と聞かれたが、怖くてダメだったと言えば、予想はしていたようで、まぁまだ22だから焦らず行こうと慰められた。紫苑は幼稚園の頃、そっち趣味の男にストーカーされた挙句、襲われた。幸い未遂であったものの、その経験から父以外の大人の男性に恐怖心を抱くように。保育士になったのも、子供なら男でも大丈夫だったし、素直に可愛いと思えるから。とはいえ、送迎をするのは母親だけではない。当然父兄もいるので、その時は一葉が対応してくれている。だが、彼女のいない隙を狙って紫苑にアプローチしてくる猛者もいた。甥だと言う2歳児を送り迎えしている糸田はしつこく紫苑を誘いべたべた触って来る。保育士を底辺とバカにしてくる態度も腹が立つし、今日は誘いを断れば暴言を吐かれた。一葉が慌ててやって来て間に入ってくれたので事なきを得たが、糸田はあまりにも悪質。園長に相談した結果、夕方には保育士への個人的接近はご遠慮くださいと保護者に向けてメールが一斉送信されていた。そんなある日のこと、紫苑の受け持ちクラスの年長者が親切心から飛ばされた帽子を取ろうと木に登り、降りられなくなると言う事件が起きた。思ったより高い位置にいて消防に連絡する?と焦っていると耐え切れずにその子が落ちてしまい肝を冷やした。が、間一髪白衣姿の男性が受け止めてくれて、怪我も無く済んだ。お礼を言おうと男性を見ると、何と彼は先日お断りした見合い相手ではないか。確か麻倉大悟さん。往診の帰りだったと言う大悟は近道でこの公園を突っ切ろうとしたら騒ぎに遭遇したらしい。間に合って良かったとほっとした顔をしていた。お礼を言うと、実は話があるんだと大悟に頼まれ、流石に断れずに就業後に会う約束をした。病院に立ち寄った紫苑にココアを出し、あの日のことを話す彼は事前に男性恐怖症のことは聞き及んでいたのだそうだ。でも、会話する前にお断りされた挙句速攻帰られたので実は結構ショックだったと語られ、本当に悪いことをしてしまったと紫苑は猛省。本人も本当はこんなんじゃいけない事は判っていた。できれば克服したいと思う。そう話すと、なら俺を練習台にして苦手意識を払拭しようと彼が提案。実は緊張すると怒ったような表情になってしまうんだと言う大悟は、お見合いの日も相当緊張していたらしい。そのせいで余計に怖がらせてしまったのでは、と気にしていたようだ。父同士も友人関係でもあるし、協力するよと言われた紫苑は克服したい気持ちも大きく、大悟の手を借りることにした。小児科医をしている彼は話してみると穏やかな人だった。でも、緊張すると強面になるのでたまに子供をビビらせ難儀しているんだと笑っていた。大悟の先輩が経営しているというバーでカクテルを飲み、気持ちが大きくなったのかあの事件のことを語る紫苑。富裕層御用達の幼稚園に通っていた彼女は、制服の可愛さも相俟って悪質なストーカー被害に遭っていた。送迎は両親のどちらかが行っていたので無事ではあったのだが、病欠していた友人の見舞いに行った帰り、閑静な住宅街だったことが災いしてストーカーに襲われてしまったのだ。幸いそばを通りがかった高校生らしき少年に救われたのだが、その少年は所謂ヤンキーだった。ストーカーを変態と罵りぼこぼこにする彼の強面が怖くて、実は暴行されかかったことよりその少年の言動が怖かった。話を聞いていた大悟は何とも言えない顔をしていたのが気になったが、他人に事件の話をしたのは初めてだ。一葉も詳しくは知らないので、自分でも進歩したと思う。それだけ彼に気を許しているのかと自分でも驚いたけど、きっとこれは良い変化だ。素直に受け入れよう。そんな最中、お達しのせいで紫苑に声を掛けられなくなった糸田が、帰宅地中に彼女を待ち伏せ。どこかに連れ込もうとしたので必死に抵抗していると大悟に助けられた。が、糸田と彼は顔見知りの様で、お前麻倉か?と驚いていた。糸田から、こいつは地元で手の付けられないヤンキーだったんだぜと言われ、紫苑はビックリ。でも高1の時に外交官の娘を変態から助けて表彰されたら急に真面目になって、今は医者やってるんだって?とベラベラ喋る糸田を大悟は一喝。彼女は俺の婚約者だと脅すと糸田は逃げて行った。バーで紫苑の話を聞いて何とも言えない顔をしていた意味が分かった。彼があの時私を助けてくれた人。そして、根深い恐怖心を植え付けた人でもある。混乱した紫苑は、今後のお付き合いは考えさせてほしい、そう告げるとその場を逃げ出し・・・。まぁ、あの過去バナで強面というワードから本文を読んだ人はすぐに恩人が大悟だと気付いたと思います。それにしても変態より助けてくれた不良少年の方が怖くてトラウマだったって、そりゃあ大悟もショックですよね。でも、彼にとっては人生の転機でもありました。紫苑の両親は事件後すぐに彼にお礼に行っていて、父親の方とは以降コンタクトを取っていました。男性恐怖症のことも聞き及んでいて、事件の被害者だもんなと気にかけていました。時が経って紫苑も大人になり、一度彼女と会って話したいと望月氏に頼むとなぜかお見合いにされていて、大悟は緊張。おかげで強面になって紫苑をビビらせ早々に逃げられてしまったのでした。しかし、当時も可愛かったけど今は物凄く美人だ。紫苑に一目惚れした彼は、恐怖症克服を持ち掛け、警戒心も解けた頃に衝撃の真相を知ったわけです。そういえば、女の子を守らねばとあの時ガラにもなく緊張していつもより強面になっていたかもしれない。俺のせいだったのかと大悟は思い悩むも、結局、紫苑の方も彼への気持ちが恋だと気付きその思いを語ります。避け続けたせいで男性に対して無神経すぎたと話す彼女の言葉を受け、大悟も自分の気持ちを語り、結婚を前提に二人が交際をスタートして物語は幕。保育園の子供たちが可愛くて作中の癒しでもありました。評価:★★★★★130ページほどの短い内容ですが面白かったです。
2024.09.10
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2024年9月刊小学館文庫キャラブン!著者:朝比奈希夜さん陰陽師に騙され、天狗を殺すための生きた毒餌にされた紫乃。一時は死の淵にあった紫乃だが、高尾山の白天狗・左京に助けられ、彼の屋敷で看病を受けることで少しずつ元気を取り戻していく。お前はあやかしを魅了する斎賀一族の者ではないか、と左京に指摘された紫乃だが、貧しい農村で育った自分にはまったくその心当たりがない。だが、左京の言葉通り、紫乃は魅了の力によってあやかしを引き寄せ、黒天狗と対峙するという危機も乗り越える。しかし、あやかしの壊滅を目論む陰陽師にとって、魅了の力を持つ斎賀一族は邪魔でしかない。紫乃の身に危険が及ぶと考えた左京は、紫乃をかりそめの妻として屋敷に留め置くことにした。自分の未来を自分で切り開くためには斎賀一族のことを知る必要がある。紫乃は左京を伴い、実の家族と信じてきた中村家の人々が暮らす農村を訪ねようと決意。そこで紫乃は、これまで隠されてきた出自にまつわる真実を知ることになるがーー。話題の帝都かりそめ婚姻譚、第二弾登場! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 斎賀紫乃=かりそめ婚で左京の妻になった娘。 左京=高尾山一帯のあやかしを統べる白天狗。 颯=左京の侍従で火の鳥のあやかし。 阿久津=陰陽師。政府から天狗討伐を命じられている。陰陽師の竹野内に騙され、姉の時子を失い、自らも毒の後遺症に苦しんだ紫乃。左京とその侍従・颯の尽力により入手した解毒の実で一命をとりとめた彼女は、暫く養生することにはなったが、今ではすっかり回復した。高尾山にある左京の屋敷では、現在座敷童の手毬と幼い妖狐・蘭丸も暮らしており、紫乃も賑やかな日々を過ごしている。前回の騒動で、自分があやかしを魅了する斎賀家の者だと判った彼女は、その身の安全のために左京の庇護下に置かれ、名目上は彼の妻ということになっていた。かりそめ婚という関係は、左京に密かに想いを寄せている彼女を複雑な気持ちにさせていたけれど、自らの出自について詳しく知りたいと切実に思う。故郷の村にいる両親に聞けばもっと詳しい事情も判るはず。同時に時子の死も伝えなければと思えば気も重いが、いつまでも先延ばしにしているわけにもいかない。そう決意しながらも気落ちした様子の紫乃を左京が気晴らしにと連れ出したのは、あやかしが運営する市であった。近辺の長である左京はもとより、斎賀の血を引き、仲間を救ってくれたとあやかしたちは紫乃のことも歓迎。元農民の血が騒ぐのか、彼らの畑仕事を率先して手伝う彼女の姿を左京は微笑ましく見ていた。久しぶりの農作業は思いの外気晴らしになったようで、彼女も元気を取り戻し左京も胸を撫で下ろしていると、颯からの報告が。彼には竹野内によって殺害された時子の遺体の行方を探るよう命じていた。紫乃に会った時には既に片付けられていて、無縁仏になっているなら、何とかこちらで弔ってやりたいと思っていた。しかし、祟りを恐れたのか、竹野内は部下に命じてあの時死んだ女たちをきちんと寺に運び埋葬及び石碑も立てていたらしい。颯から場所を聞いた左京は紫乃を連れ、件の寺へ。あの日から三カ月経って漸く彼女は姉に会うことが出来たのだった。無事墓参りを終えた紫乃は、一度中村家に立ち寄り姉の死の報告と斎賀家について話を聞きに行きたいのだと左京に頼んだ。快く応じた彼は数日後、群馬にまで飛び紫乃を中村家に送った。痩せ細っていた家族は皆、左京の援助によって元気になって血色も良い。父は娘たちを吉原に売る羽目になったことを詫びていたが、あの時は時子と二人良かれと思って自ら女衒に着いて行ったのだ。左京の外見から父はあやかしだと一目で気付いたらしい。最初は警戒していたが、吉原に行く前に彼に助けてもらったのだと言えば、態度を改めた。そして、時子の死を伝えると両親は泣き崩れていたが、死因については流行り病だと伝えた。実はあの女衒に騙された挙句、毒を飲まされたなんて家族は知らない方がいい。そうでなければ彼らは一層自分達を責めるだろうから。二人が落ち着くのを待ち、紫乃は自分の本当の両親は誰なのかと尋ねた。観念したのか、父が語ったのは十数年前のこと。陰陽師五家の一つであり由緒正しい斎賀家の当主は代々女性が務めていたのだそうだ。類まれな力を持ちあやかしを魅了する。だが、女性であるために五家の中での序列は最下位だった。そんな境遇の中、斎賀の当主はあやかしと争うのではなく共存しようと唱え始めた。お互い不可侵とすればいいと。だがその意見は帝や他の四家から反対され、斎賀は五家から外された。以降、当主は無慈悲に狩られるあやかしを助け始めた。だが、それが徒となり斎賀は他の四家から疎まれ、やがて命を狙われるように。中村家は斎賀の忠実な臣下であったが、父の代になると斎賀家の者は姿を隠しており、その行方を知る術はなかった。そんなある時、農民に身をやつしていた父の元に斎賀の当主夫妻が訪れ、5年後に自分達が迎えに来なければ普通の子として育てて欲しいと抱いていた赤子を託した。養育費としてかなりの金額も一緒に渡され、忠義者の父は快く引き受けたが、約束の5年が経っても当主夫妻は現れなかった。先代からも陰陽四家から命を狙われていたと聞いていたから殺されてしまったのかもしれない。約束通り、農民の娘として育てることを決めた。だが、時子が重病を患い、その治療費が嵩んで紫乃の金を使い込んでしまった。ひもじい思いをさせてしまったと父に詫びられたが、両親や姉弟には感謝しかない。時子が随分と気に病んでいたと聞き、自分の代わりに毒を煽った姉の心情が判った気がした。父の話によって、実の両親、それに斎賀のことも知ることが出来た。斎賀家はあやかしとの共存を願い、その強大な力を恐れられ厭われていた。恐らく両親は四家のうちの誰かに消されたのだろう。でも、斎賀の血と能力が受け継がれないのを承知で中村家に紫乃を託した。飽く迄娘の命を優先したのだ。颯からの報告では竹野内の失敗により、政府が新たに他の陰陽師に天狗の討伐を命じたらしい。四家のうち三家はしり込みしているそうだが、昔からやり口が悪辣な阿久津が名乗りを挙げたとのこと。手毬の母をだまし討ちしたり、左京に呪詛を掛けた男。斎賀家当主夫妻も奴の手によるものかもしれない。屋敷に戻り、暫く平穏な日が続いていたが、紫乃の元に一人のあやかしが助けを求めにやって来たことで事態は変わり・・・。シリーズ2作目です。紫乃の実の両親の謎が明かされたわけですが、不可侵を貫きあやかしとも上手く共存していくべき、という斎賀家のモットーの方が正しいのに、受け入れない政府と他の陰陽師四家。五家から外されたし、じゃあ独自に動くねと、理不尽に攻撃される罪のないあやかしたちを救っていたら、危険視された上に命を狙われる当主。その追撃に姿を隠していた斎賀家は紫乃の両親の代で途絶えるはずでした。何の運命か、下っ端陰陽師が欲をかき白天狗(左京)の討伐を目論み、毒餌に選んだのが紫乃だったと言う。結局事件を切欠に彼女が自らの力に目覚めたのが前巻のお話。今作では復調して育ての父から事情を聞いて斎賀の者として生きることを選ぶ、という内容でした。実はこの斎賀家の代々の当主は皆強者揃いで、印を結ばずとも術を使い、得意技は呪詛返しというとんでもない人達でした。当然、紫乃も同等の力があり、両親の仇でもある阿久津と対峙した際も見事に返り討ちにしていました。敵討ちを果たし、新たな一歩を踏み出した彼女と左京の恋も最後の方で漸く進展。彼の宿敵でもある法印との決着もまだなことを思うと、最低でもあと1冊は続きそうですね。評価:★★★★★
2024.09.09
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9月中旬 アルファポリス 自宅アパート一棟と共に異世界へ 2 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました 如月雪名さん10月17日 ティアラ文庫 ヴォルフ公の結婚 一角獣の乙女は旦那様に過保護な愛をそそがれる 蒼磨奏さん10月19日 一迅社アイリス文庫 男爵家の嫌われ令嬢 -聖女のための学園に入学したら、忌み神様の花嫁に選ばれました- 梨沙さん10月25日頃 角川文庫 Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ 2 桜井光さん/TIPE-MOON11月1日 ヴァニラ文庫 亡国の姫は剣客皇子に激愛される(仮) 小出みきさん ヴァニラ文庫Miel 溺愛新婚生活 ~元陰キャのスパダリ旦那様に囲い込まれました~(仮) 西條六花さん11月8日頃 マーマレード文庫 世継ぎの寵花 孤高の皇太子は宮女に愛を注ぐ(仮) 西條六花さん11月18日 ヴァニラ文庫 虐げられた聖女は氷の王太子に熱く愛し尽くされる(仮) 釘宮つかささん12月10日 ムーンドロップス文庫 俺様竜王と花嫁様 ドアマットヒロインと入れ替わりましたが、 ブラック勤務に比べれば天国です!(仮) 葉月クロルさん12月23日 蜜猫文庫 完璧なる卒業計画!? 女嫌いの次期大公が「お前で(DT)卒業してやろうか」 と求婚してきました(仮) あさぎ千夜春さんついに12月下旬の予定まで出てきました。1年って本当に早い。
2024.09.08
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2024年8月刊ベリーズ文庫著者:三沢ケイさん15歳の時に政治の駒として大国王太子のハーレムに送られたアリス。大勢いる妃の中で最下位の扱いを受けて7年。夫である王太子が失脚&ハーレム解散!バツイチ出戻り王女だと陰口を叩かれるアリスに2度目の結婚の打診がー!?相手は氷の国の“冷酷王”と噂されるウィルフリッド。「愛も子も望むな」と言われたはずが、彼の瞳から甘さが滲み出す…!?予想外の溺愛展開に戸惑いまくりのジレきゅんラブ。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アリス=アーヴィ国の王女。 7年間大国のハーレムで最下位の妃として暮らしていた。ウィルフリッド=システィス国国王。水と氷を操る力を持つ。 ヴィクター=ウィルフリッドの叔父。大国・ビクルスのクリス王太子の元に嫁いだアリスは、41番目の妃としてハーレムに入れられた。当時の彼女は15歳。しかし、これだけの数の妃を集めながらも実際に彼が入れ上げていたのは最年長(37歳)のルシア妃一人。大の年上好きのクリスはルシアだけを寵愛し、贅沢三昧をさせていた。当然、他の妃たちは放ったらかし。輿入れした最初の頃は強力な媚薬を用意するなど躍起になっている者もいたのだが、渡りが無ければ使い様が無い。先ず年上好きという時点でクリスより年下のアリスは好みの範疇外。夫に会う機会も舞踏会くらいで、何年経っても結婚したと言う実感は湧かなかった。それでも、ライバルにすら成り得ないと、アリスはルシア以外の妃たちから随分と可愛がられた。給金制のハーレムで最下位の彼女の生活費は少ない。そこでアリスは好意的な妃たちの御用聞きや身の回りの世話などをして小遣いを稼ぎ逞しく過ごしていた。輿入れして7年目のある日。広間に集められた妃たちは、第二王子のエルゴからクリスの廃太子が決定したと知らされた。どうやら、ルシアに入れ込み過ぎて散財しまくったのが問題視されたらしい。新しくエルゴが王太子になるそうなのだが、彼はハーレムの解体を宣言。早々に妃たちは国に帰るよう命じた。クリスとルシアの間には子供も生まれていたが、彼らはビクルス王家が引き取り、ルシアは追い出されると言う。とはいえ、クリスの散財原因が彼女なのだから当然の結果なのだが。国に戻ったアリスを両親と兄夫婦は歓迎してくれたが、7年もハーレムに居て子を授かれなかった王女なんて外聞が悪いことは自分でも承知している。お気に入り以外は論外とばかりにガン無視されてたなんて話、誰も信じてくれないだろう。いっそ、ビクルスでの生活を生かして外交官みたいな仕事をするのも良いかもしれない。ハーレムでは自国の自慢をしたがる妃の多いこと。親身になって聞いているうちに他国の事情や特異な分野なども覚えてしまった。嫁には行けずともこういう形でなら力になれる。アリスはそう思っていた。そんな彼女に縁談が齎されたのは暫く経ってからのこと。北方にあるシスティス国王が是非アリスと結婚したいと打診して来たらしい。願っても無い申し入れだが、両親は浮かぬ顔。訳を尋ねれば結婚相手のウィルフリッドは冷酷王という呼び名があり、先の国王と王太子を暗殺し王に登り詰めた人物だと言う。せっかく帰って来た娘をそんな男の元にやりたくはない。気持ちは嬉しいけれど、渋る父に心配いらないと説き伏せ、アリスはこの縁談を進めて欲しいと頼んだ。話し合いを重ねて半年後、システィス国にやって来た彼女は翌日にはウィルフリッドと式を挙げ、正式に王妃となった。彼は随分と多忙らしく、初夜もすっぽかされて思わず茫然。まさか2番目の夫からもそんな扱いを受けるとは。気を取り直してベッドサイドにあった飲み物を煽ったが、それが酒だと気付いたのは一気飲みした後だった。目覚めると隣に半裸のウィルフリッドがいてビックリ。結婚したのを忘れて悲鳴を上げたことで城内は大騒ぎに。飛んできた侍女や護衛達に謝り倒し騒ぎが収まったあと、ウィルフリッドから今回の結婚に至った理由を聞かされた。彼は、以前ビクルスの王宮舞踏会でちょこまか動き回っては客人の要望を聞き、対応している彼女を見かけ、その気配りと博識さに驚いたのだそうだ。小国の風習にまで通じて何か国語もの言語も理解する頭脳。これは得難い人材だと思い、かの国のハーレムが解体され彼女が国に戻ったと聞いてすぐ、結婚の打診をしたのだと言う。そういうわけで、君を見初めたとかではない。それにこの結婚で愛も子供も望まないでほしい。きっぱりと言われてアリスも内心ショックを受けた。ああ、それで私が選ばれたのね。それに、能力は買ってくれていると言ってたじゃない。黒い噂のある国王とバツイチの王妃。訳ありなのはお互い様。凹んなんていられない。期待されているのだから頑張らないと。以来、アリスはあちこち視察に出掛けては、彼女なりの着眼点で細々とした問題点に着目。ウィルフリッドの補佐をしているヴィクターに資料を見せてもらい、意見をまとめたものをウィルフリッドに提出し目を通してもらっていた。ここに来て一ヶ月、これまでにいくつかの案が採用され、彼女のモチベーションも上がっている。アリスがハーレム時代に懇意にしていた妃の祖国が丁度思案中の技術が得意だったと思い出したのも功を奏した。今ではウィルフリッドだけでなく上層部も彼女の手腕を認めてくれている。ただ、国の将来の為に識字率を上げるべきと貧しい者たちも通える無料の学校案を出した時にはヴィクターに猛反対されてしまったが、貴族にも色々な考えを持つ者がいる。ましてや彼はウィルフリッドの叔父に当たる人物だ。ウィルフリッドに意見を聞いてからもう一度提案してみよう。一方、ウィルフリッドは優秀とは思っていたものの、予想以上の成果を上げ続けているアリスに驚いていた。地頭が良いのはさることながら彼女は性格も良いし愛嬌もある。小柄で可憐な容姿も好ましい。彼女に歩み寄りたい気持ちはあるけれど、思い出すのはあの日亡くなった父と兄のこと。自分の能力が暴走した結果二人を死に追いやってしまった。未だに罪悪感に苛まれていた彼は、アリスが視察からの帰り道で突然の吹雪に襲われたと聞き、部屋を飛び出した。能力で吹雪を消したウィルフリッドはこの事故が元で寝込んだ彼女を心配しつつ、状況があの日と同じであることに疑問を抱いていた。水と氷を操る能力を持つのが自分以外にもいたとしたら。数日後、回復したアリスと話し合い、当時の事件のことを打ち明けたウィルフリッド。彼女も彼の力の暴走とは思っていなかった。それにしても晴天だったのにいきなり吹雪とか不自然すぎるそしてウィルフリッドはふと、ヴィクターが救貧院の地下に水道工事をというアリスの案に難色を示していたのを思い出した。他国の技術を取り入れることが我慢ならないらしい。費用は掛かるが一度作れば便利になし他にも適応するからと説得しても取り合わないので国王権限で案を通したが、当初は使用人に全てを任せているから不便さに実感が湧かないのだと思っていた。だが、叔父もウィルフリッドと同じ能力を持っているとすれば合点がいく。そして叔父の家に招待されたアリスがハーレムで見た媚薬が叔父の部屋にあったのを目撃していた。あの薬は飲むと意識が朦朧とするらしい。あの日の父は正にそんな様子だった。彼はヴィクターが国王と王太子殺害の犯人だと確信し・・・。まぁ、犯人はこの人しかいないでしょうってことでヴィクターが真犯人です。彼は稀有な能力を持ちながら先に生まれたと言うだけで王位に就いた兄を恨んでました。その恨みは消えることなく、ある日、妻の姉経由でビクルスの媚薬を入手。視察先でこっそりお茶に仕込んで兄に飲ませ、意識を失った頃、自らの能力で吹雪を起こし馬車を横転させたのでした。その時、ウィルフリッドが能力に目覚めたことで彼一人生き残ってしまいヴィクターの計画は失敗。幼い王を支えるという名目で国を牛耳る方にシフトチェンジすることに。でも優秀な彼はそう長い事はヴィクターに実権を握らせていませんでした。歯がゆく思った頃、アリスを嫁にしたいと相談され、これは使えると新たな作戦を練ったものの、選民意識が徒になってウィルフリッドに疑いを持たれ罠にかかって御用。ヴィクターの妻の姉があのルシアだったのも負けた原因かな。アリスがいたから芋づる式にあの媚薬のことまでバレてしまったという。結局、やらかしがやらかしなので、ヴィクターは後に処刑。この頃にはお互い両想いだった二人は本物の夫婦になり、アリスの妊娠が判明して本編は幕。書き下ろしの番外編は、妊娠前、ウィルフリッドと夫婦仲よく舞踏会に参加するお話でした。聡明で可愛らしいヒロインに段々惚れて行くヒーローの図がオーソドックスながら良かったです。評価:★★★★☆
2024.09.07
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2024年7月刊夢中文庫クリスタル著者:田崎くるみさん強烈シスコンの兄によって恋愛フラグが立つ前にへし折られ続け、今まで彼氏どころか男友達もいない果歩。唯一、兄の親友である剣心だけが家族以外で交流のある男性。「……私だって誰かと恋して、結婚もしたい」そんな本音を剣心に零したら──「それなら俺と恋愛をしないか?」と疑似彼氏になるのを提案され、果歩は受け入れる。まさに理想の王子様でハイスぺ社長の剣心と一緒の時間はときめきばかりで、本気の恋に落ちるしかなくて……。けれど、完璧に見える彼にもとある秘密が!? おためし恋愛からはじまる、執着系スパダリとの甘々溺愛生活! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 塚本果歩=シスコンな兄のせいで恋と無縁になってしまったOL 雲母剣心=イベント会社社長。長らく絵美に片思いしている。 塚本大和=消防士。シスコンを拗らせ、妹の恋路を悉く邪魔していた。 岩原絵美=果歩の同期で友人。大和に想いを寄せている。果歩は、25歳になった今でも一度も恋愛をしたことが無いのが悩み。それというのも、2歳上の兄・大和が度を越したシスコンで、彼女の恋愛フラグをバキバキにへし折っていたからだった。今日も会社の同僚(男)に映画に誘われただけだと言うのに、大和が先回りしてその同僚を取っつ構えて「妹に気安く近づくな」と恫喝したらしい。消防士をしている兄は長身で筋肉質。威圧感マシマシな大和にすっかりビビった同僚は、待ち合わせ場所に現れた果歩に、開口一番絶縁宣言をして逃げるように帰って行った。もしやと思い、周りを見回すと案の定物陰でこちらを伺う兄の姿が。同僚に関しては本当にただの友人関係だったのに、大和のせいで絶縁までされてしまった。一体どんな脅し方をしたのやら。妹を溺愛する大和はとにかく果歩に彼氏や男友達ができることを嫌った。子供時代からそんな感じなので、おかげで彼氏いない歴=年齢という、由々しき事態になっている。毎度のことながら果歩にお説教されている大和の姿を見て、近くを通りかかったという雲母剣心が腹を抱えて笑っていた。彼は大和の高校時代からの友人で、その縁で果歩も親しくしてもらっている。兄も黙っていればイケメンなのだが、剣心はそれに輪をかけてカッコイイ。しかも国立大学に進んで在学中に企業。今はイベント会社社長をしているエリートだ。未だにどうして変人の大和と気が合うのか不思議でならないが、彼にはよく勉強も見てもらったので、そこだけは兄に感謝している。剣心から、大和はいつも妹の恋路を邪魔ばかりしているくせに、自分はそこそこ女遊びしてるんだぜ。と聞かされた果歩は怒り心頭。機嫌直しに飲みに行こうと誘われ、追いすがる兄を置いて剣心おススメのバーへ。ほろ酔いになって、つい今日の話を愚痴り、私だって恋したいのに、溢す果歩。すると、剣心から「それなら俺と恋愛しよう」と真顔で告げられ、思わず一瞬で酔いが醒めた。お試しというか疑似恋愛かな、と彼は言い、果歩もそこまで重く考える必要はないのかもと思い直した。それに剣心なら安心できる。現在、彼には恋人はいないと言う。それならお願いしてもいいか。「私に恋を教えてください」そう言って果歩は頭を下げた。お試し恋愛が始まって、早くも彼女は剣心のスパダリぶりに目を回していた。彼は外見だけでなく頭も良い、加えて会社の経営者。おまけに料理上手なんて、果歩が一時期思い描いていた理想の旦那様像そのもの。大和に想いを寄せる友人の絵美まで、彼にキャーキャー言っていて、聊か複雑に。これってまさか嫉妬ってやつ?疑似恋愛というのは伏せて剣心と交際すると報告した果歩に、大和は怒り狂っていたが、後に彼と二人で何やら話し合っていた兄はコロりと態度を変えた。どうやら、果歩に悪い虫が付かないよう、虫除けで彼氏のフリをするだけだと言ったら単純な兄はあっさり信じたらしい。それでも「らしく」見えるよう手を繋いでいたら射殺しそうな目で剣心を睨んでいたので呆れてしまう。そうこうしているうちに、果歩は剣心を意識するように。とにかく彼の言動一つ一つにドキドキして、ある時、そうかこれが恋かと納得。その日、自分の気持ちを打ち明け、お試しではなく本当の恋人同士になった二人。雰囲気が変わった果歩を見て、大和にも虫除けどころか本気恋愛だとバレてしまった。しかし、妹が変な男に引っかかって失恋して泣くより、剣心に嫁に行く方が、と思い直したらしい。それなら善は急げと、早々に一線を越えて来いと発破をかけて来た。いや、流石に気が早いからと兄を宥めつつ、結婚についても夢を馳せ始めた果歩。たまには私が料理を作ると休日、彼の部屋を訪れ得意のカレーを振舞った。残念なことにトラブルがあったと、剣心が会社に呼び出され数時間留守番をすることになった果歩は、間違えて足を踏み入れたことのない部屋を開け彼女は絶句。6畳ほどの部屋の一角には所狭しと果歩の写真が飾られていて・・・。彼の秘密部屋を見て果歩は思わず家に逃げ帰ってしまうんですが、帰宅してコレクションがバレたと知った剣心も、これは絶対に嫌われたと落ち込んでいました。昔からモテモテだった彼は、色目を使う女が大嫌い。そんな最中に大和と出会い、家に招待された際に果歩を紹介されます。しかし、彼女は他の女性達とは違い、兄が重度のシスコンで変人なこと。本当に友人関係を続ける気ですか?と聞いて来たのでビックリ。こんな反応が初めてだと、果歩に興味を持ちます。そのうち、頼まれて勉強を教えているうちにこれが恋だと気付き、兄には言わないが、剣心にならと誰それに告白されただの男の子たちを含めて遊びに行く等、果歩は報告していました。情報を強いれた彼は、大和を焚き付けてフラグをへし折っていたのです。果歩の恋愛を邪魔していた指示役は剣心だったんですね。そして、彼女の悩みに乗っかり、疑似彼氏に立候補。そのうち本物の恋人にと目論んでいました。今回のヒーロー、腹黒過ぎる。でも、起業したのも料理上手になったのも、果歩の理想の旦那様の条件を聞いたから。写真コレクションは大和に頼んで焼きまして貰ったもので、古くは赤ちゃんの頃のものまで網羅。幼児期、パンツ一枚のものもあったので、果歩も恥ずかしくなって部屋を飛び出してしまったわけですが、どん引きはしていませんでした。裸の写真ははがして欲しいけど、なんだかうれしい。話を聞いた絵美の方が引いていて、やっぱりそういう所は兄のシスコンによる言動に慣れ切っていたのかも。結局、その後剣心と話し、裸の写真は外すという約束で秘密部屋については不問にする果歩。ずっと君のことだけが好きだったんだと告白した彼は、後日結婚を前提に交際していると果歩の両親にも挨拶。やはり妹を渡したくないと、しょっちゅう大和に邪魔されながら、順調にデートを重ねる二人の様子が描かれて物語は幕。ラストにちらっとお兄さんの幸せについても触れられていたけど、絵美ちゃんとのお話もあるんでしょうかね?終始コメディ調で面白かったです。クールに見えて執着系のヒーローって良いですね評価:★★★★★
2024.09.06
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2024年8月刊蜜猫文庫著者:茜たまさん王女クラウディアは、婚約者のシグルドに対し素直になれず苦悩していた。だが春の夜シグルドを庇って死んだはずの彼女は、何故か冬の終わりに戻って目覚め、今度こそツンデレを止めると決心する。シグルドに対する好意を露わにする彼女に、彼は控えめな態度を止め、強気で迫ってくる。「可愛いですね。そんなに真っ赤になって」大好きな彼に甘く愛されて幸せなクラウディア。だが前回シグルドを狙った敵の正体は謎のままで!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 クラウディア=フェスキート王国王女。 大好きな婚約者のシグルドに素直になれず悩んでいた。 シグルド=公爵家当主で星の聖獣・ヴァリーの聖獣主。 クラウディアに執着している シャミーラ=ラセルガ帝国皇女。 エミール=王太子。クラウディアの兄。 イネス=クラウディア付きの筆頭侍女。聖獣と人間が親交し続けている世界。始祖聖獣の降誕祭で湧くフェスキート王国で王女・クラウディアが婚約者を庇い亡くなった。だが、死んだはずの彼女は何故か自室のベッドで目覚め、2ヶ月ほど時間が巻き戻っていることに気付いた。確かに私はシグルドを庇って凶刃に倒れたはず。でも、あの日は始祖聖獣を称える祭りの夜だった。もしかして始祖聖獣が私を憐れに思い助けてくれたのかもしれない。思えば、恥ずかしさが先立って婚約者であるシグルドにはいつも思っている言葉とは逆のことを言っては困らせていたように思う。兄のエミールが言うには、クラウディアのように好きな人に素直になれない言動をツンデレと呼ぶらしい。シグルドに会う度に治さなければと決意するのに、上手くいかないのは彼がカッコ良すぎるからに他ならない。天候を操る星の聖獣・ヴァリーの聖獣主であるシグルドは、何に対しても才能溢れる人物だった。王女でなければ彼との婚約は叶わなかっただろう。しかし、こうして始祖聖獣のおかげで死に戻ったのだ。ツンデレは封印して素直な気持ちを口にしよう。そして降誕祭でシグルドを狙った犯人を捕まえる。そう決意した束の間、心の準備が整う前に彼と会うことになったクラウディアは、いつもなら口が裂けても言わない彼への賛辞と好きなのっ!と盛大に告白。居合わせたエミールは唖然としていたが、シグルドは感動していた。動揺する彼女を部屋に連れ込み、熱烈なキスを仕掛けて来たのでクラウディアは卒倒寸前。しかも胸まで触られて一体どうしちゃったの?とパニックに。それでも、素直を心がけたクラウディアは、以降彼にベッタリ。元々、シグルドは何事にもクールでストイックな割にクラウディアのことに関してだけは狭量で嫉妬深かった。出会いの経緯も理由なのだろうけど、その執着ぶりはある意味異常に見えた。クラウディアのツンデレにも内心喜んでたようだし、何を思ってかいきなり素直になった彼女に好きだと言われたのだ。そりゃあ遠慮もしないだろう。エミールは目の前の二人の様子に辟易しつつ、納得していた。シグルドとの関係はあの告白以来、急激に進展した。彼が望むので婚前交渉まで許してしまったけれど、気持ちも満たされ幸せだ。クラウディアがロマンス小説を読むだけで眉をしかめる侍女のイネスには絶対に知られないようにしないと。両親に告げ口でもされたらことだ。だが、うつつを抜かしてばかりもいられない。暗殺犯を見つけなければ。そんな最中、最近勢力を伸ばしているラセルガ王国からシャミーラ皇女が来訪。以前、皇女は横暴な皇太子を抑制するため、星の聖獣主であるシグルドを婿に迎えようと求婚して来たことがある。その際は、私には婚約者がいますのでと彼から辛辣に断られて縁談は無しになったのだが、まさかまだ諦めていないのでは。クラウディアは不安に駆られていた。しかし、シャミーラは男勝りでサバサバした性格の人で、一度断られたのだからもうそんな気は無いと宣言。クラウディアのことを気に入り、二人は友人関係になった。自由奔放なシャミーラは滞在中に少々いざこざを起こしたりもしたが、クラウディアに協力もしてくれた。シャミーラが言うには好戦的な皇太子のせいで帝国が揺れていると言う。そういえばあの皇太子、私に求婚してきたっけ。ラセルガの国力からお父様が少し乗り気になってシグルドとの婚約を解消されやしないかびくびくしたものだ。結局、この時は彼が国王を説得し、星の聖獣主の機嫌を損ねる訳にはいかないと縁談を断ってくれたのだが、つくづく破談になって良かった。まぁ、この一件のせいでシャミーラにシグルドが目を付けられたわけだが。それに平和なフェスキート王国とは言え、穏健派と革新派の対立により内情は穏やかではない。一度死んだ経験から考えを改めて勉強を始めたクラウディアもこの対立には頭を悩ませていた。そんな最中、彼女は情報通の伯爵令嬢・ノーラのお茶会に参加し、規律違反をして降格処分にされた副隊長のラダンがシグルドを恨んでいるという情報を入手。これまでの調査の結果、一番彼が動機がありそう。しかし、ラダンはシグルドを恨んで等おらず、むしろ不器用な性格の彼のことを心配してもいた。ラダンの実家がバリバリの革新派なこともあって怪しいと思ってたんだけどなぁ。本命と思っていただけに、シロと判って犯人探しは振り出しに戻ってしまった。しかも、彼女がラダンと親しげに話していたとシグルドの嫉妬が爆発。もうすぐ降誕祭だと言うのに、公爵家所有のタウンハウスにクラウディアは監禁されてしまい・・・。意図せず、ループものが続いてしまいました(^_^;)ツンデレ王女が死に戻って愛しい婚約者を救い幸せになるために奮闘するお話です。先ず、自分が死んでは話にならないし、彼が死ぬのはもっと論外。侍女のイネスに渋い顔をされながらも行動していたクラウディアは、ある時一つの真実に気付きます。それは、自分が死に戻った原因。最初は始祖聖獣の思し召しかと思っていた。でも違う、これは星の聖獣の力。ヴァリーは天候だけでなく時をも操れる力も持っておりクラウディアを死なせまいとシグルドが無理をして2ヶ月の時を巻き戻していたのでした。結果、ヴァリーは暴走し、その力を抑え込んでいたシグルドは段々黒い力に侵食されて行くのですが、それを救ったのはクラウディアの聖獣・ルルでした。このルル、小鳥形態で微風を起こす程度のか弱い聖獣かと思われていたものの、ルルこそ始祖聖獣だったというオチ。恐らく、時を戻したのはシグルドだろうなと本文を読んでれば大抵の人はピンとくると思うんですが、始祖の正体の方は意外。ぶっちゃけ、そこまで活躍してなかったから。そして、暗殺犯に関しても見事に騙されたーって感じ。ちょっと言動が「ん?」と思わないでもなかったんですが、成程そういうことだったのねと、動機についても納得。犯人については敢えて書かないでおきます。気になる方は是非読んでみてください。諸々片付いて、シグルド目線で語られたクラウディアへの想いがなんかもう重い、重すぎる。でもまぁ、彼女はそれも嬉しいようですからね。エミールがシャミーラと意気投合の末にラセルガに婿に行き、3年後、二人の子宝に恵まれたフェスキート王国国王一家の様子が描かれて物語は幕。評価:★★★★☆ループものがお好きな方は楽しめると思います。
2024.09.05
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2024年2月刊ロイヤルキス著者:すずね凛さん処刑されたはずの王妃ティナが目覚めると、二年前に時間が巻き戻っていた。嫁ぎ先の王国で処刑されたため、今世では結婚せずに生涯独身のまま過ごすと決意する。しかし国王陛下との婚約式の場で、なぜか麗しの王弟殿下・アントワーヌから、ティナを「娶りたい」と強引に婚約を決定されて!?「あなたが私をおかしくさせる」官能の悦びを与えられ、灼熱の塊でティナは純潔を散らされるーー。政略結婚でしかないはずが、こんなにも愛されている理由が分からなくて……。残酷な運命を回避したい乙女と怜悧な王弟殿下の極上溺愛! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 コンスタンティナ=嫁ぎ先で謀反の疑いを掛けられ処刑された皇女。 アントワーヌ=バルデン国王の異母弟。 ベニート=ティナの護衛兵。 ジュリアナ=ダヤン国の女帝。ティナの継母 バルデン国王=ティナの夫。 ソフィ=バルデン国王の愛妾。和平のために元敵国であるバルデン王国国王に嫁いだ皇女・コンスタンティナ。しかし、国王は愛妾の子爵令嬢・ソフィに入れ上げ、ティナに見向きもしなかった。夫から指一本触れられず、王宮で寂しく暮らして2年。建国祭に沸く王城を突如、隣国スペニア国の軍勢が襲った。国王とソフィは秘密通路で我先に逃げ出したものの、途中で見つかり敵兵に討たれ、王の異母弟・アントワーヌの指揮で何とか持ちこたえていた城は、彼の死によって瓦解。ティアも捕虜となった。密かにアントワーヌに想いを寄せていた彼女は精神的ショックにより牢内で臥せっていたが、その間に欠席裁判でティアの死刑判決が下されていた。罪名はスペニアへの内通。身に覚えのないことに否認したが無実を証明する術はなく、数日後王国民の罵倒を受けながらティアの処刑が執行されたのであった。しかし、首に縄が食い込んだと感じた瞬間、ティアは寝台で目を覚ました。傍に控えていたのは護衛兵・ベニートとその飼い犬で番犬のロイ。彼らは自分が嫁ぐときに任を解かれたはず。それに、ここは18年間過ごしていたダヤン皇宮内のティアの部屋ではないか。。まさか長い夢を見ていたと言うの?そんなはずはない、確かに私は嫁いだしそこで冷遇された日々を覚えている。ベニートに今が何年かと尋ねれば2年前の年。20歳で死んだ自分はどういうわけか18歳の頃に戻って来てしまったらしい。ベニートによれば明日、バルテン王国との和平のためにこの国で国王とティアの婚約式が執り行われるという。これはきっと神様の思し召しで悲運の死を遂げた私にチャンスを与えてくれたに違いない。この結婚に乗り気でなかったバルテン国王は仮病を装い婚約式には出席せず、代理で王弟・アントワーヌが使節団と共にやって来る。ティアはその時に彼に一目惚れし、以降ずっと想い続けていた。清廉潔白な性格のアントワーヌは王宮で居場所のない彼女を気遣い優しく接してくれた。あの時も彼はティアを守って死んだのだ。だから今度こそはアントワーヌを死なせない。どうにか破談にする方法はないか。考え抜いた結果、彼女は背中にある古傷が原因で自分は子供が出来にくい体であるという虚偽の診断書を主治医に頼み込み書いてもらった。当日、その話をアントワーヌ達にすると広間は大騒ぎ。随行していた大臣は由々しき事態だとこの婚姻は無しだと喚き始めた。目論見通りに事は運び、胸を撫で下ろしていると、アントワーヌがならば私が皇女と結婚すると申し出た。この婚姻は長らく敵対していた両国の和平のために結ばれるもの。世継ぎが望めないのであれば王妃にはなれないが、自分も王族、充分結婚相手に成り得るはずと。この発言に娘を叱責していた女帝ジュリアナもバルテンの大臣も納得。要は政略結婚がなされればいいいのだから。国王との結婚を回避すればそれでよかった。破談にして静養目的で田舎に引き籠ろうと思っていたのにまさか想い人の妃になれるなんて。しかも、二人きりで改めて挨拶した際、熱烈にキスされて嬉しさに卒倒しそうになった。輿入れの準備が整い次第、バルテンに行くことが決まったティアの心は晴れやかだった。王城に着いて国王に謁見した二人は結婚を報告。愛妾に入れ上げている彼は異母弟の結婚になど興味がないよではあったが、母親が平民のアントワーヌを蔑み、だからこそ挙式は目立たぬよう地味にせよと命じた。兄の態度と命令について謝るアントワーヌに、気にしていないからと慰め、数日後、彼の母の生まれ故郷だと言う小さな町の教会で二人は式を挙げた。民から絶大な人気を誇るアントワーヌの妃としてティアも大層な歓迎を受け、夫を誇らしく思った。彼との夫婦生活は穏やかで幸せな日々であったが、前の人生の時とは色々勝手が変わっていた。先ず、護衛としてベニートとロイも着いて来たし、アントワーヌのおかげかティアを冷遇する者もいない。ソフィの人となりを知ったのも大きい。国王も褒められた性格ではないのだが、ソフィは輪をかけて酷い。たかだか子爵家の娘が王城で大きい顔をできるのは偏に国王からの寵愛のおかげだ。そんな彼女に臆せず意見するティアはさぞかし目障りだったろう。そんなある日のこと、親睦の為、バルテンにジュリアナが訪れた。血縁としては叔母にあたる彼女はティアの実母の妹で、早くに亡くなった姉の代わりに後妻として父に嫁いだ。実の子でないのに父が早逝してからも自らの子・皇子フランソワ共々可愛がってもらったが、今日は何だか様子がおかしい。やたらと土産だと持って来た故郷の菓子を薦められ、いざ口を付けようとすればロイに吠えかかられて落としてしまった。ブルブル震える義母は取り繕ったような笑みを浮かべそそくさと出て行ったが、帰ったかと思っていた義母は国王やソフィを交えて密談を交わしている場面に遭遇。軍事大国スペニアの幾度目かになる国境侵入の対処をしに、先月アントワーヌが兵を率いて出征したばかり。3人はアントワーヌにはそこで戦死してもらうと楽しそうに話していた。恐ろしい話を聞いてしまった。しかも義母を交えて談笑しているなんて。心配した彼女はベニートに彼を守るよう命じ向かわせた、ヤキモキする中、アントワーヌが勝利を収めて帰還。建国祭も間近で喜びに沸く国民達に応える彼の姿にホッとした。しかし、建国祭の夜に城は攻め込まれるのだ。あともう数日。訳は言えないがくれぐれも気を付けて欲しいとアントワーヌに伝えると、今度は万全を期していると不敵な笑みを浮かべている。彼の手腕を疑うわけではないけれど、不安感は拭えない。義母からの手土産に猛毒が仕込まれていたのも判り、ティアは深く傷ついた。ジュリアナの真意が判らないまま建国祭を迎え、夜半になった頃、スぺニアの軍が王城に突撃してきて・・・。死に戻りものです。でも、回帰していたのがヒロインだけではなかったら?そんな展開。皇帝に愛されず、鬱憤をつのらせていたジュリアナは、姉の子であるティアのことも憎んでいました。皇位を継ぐのは皇子・フランソワ。ティアはその妨げになるかもしれない。可愛がるふりをしながらもティアの暗殺を何度か指示。彼女の背中の傷も暗殺者の攻撃で負ったもので、ティアを救ったのは当時15歳のアントワーヌでした。その活躍で戦争回避に漕ぎ着けたアントワーヌは諸々片付けた日に、自らが経験した不思議な出来事を語ります。彼はソフィに命を狙われ幾度も死んでいたティアを守るため、その度に彼女を救うべく一人奮闘。暗殺者に襲われた彼女を救い、生き延びろと言う言葉を残し、それはティアの深層心理に深く刻まれることに。繰り返すこと10回目、死に戻った彼女が自らの時間を巻き戻し行動を変えたことでかなり好転していたんですが、ソフィがスペニアとジュリアナと手を汲んだことから二人は窮地に追い込まれます。しかし、伊達に10回も繰り返してません、騙されたふりを押し通してアントワーヌはスペニア国王の捕縛に成功。永久的な講和を望むとして話し合いに臨んだ彼はスペニアとも和平を結びます。その後、ジュリアナは自らの心の弱さを恥じて退位。フランソワが皇位を継いでティアが後見人となります。ソフィは罪に問われ、彼女を信じていた国王は裏切られていたという精神的ショックで体調を崩したのを理由にアントワーヌに王位を譲ると宣言。アントワーヌが王位を継ぎ、ティアも王妃となって物語は幕。ラスト間際に彼に子供が出来にくいと偽っていたことを詫び、後に三男四女の子宝にも恵まれたと記載されていましたが、仲が良くて何より。相変わらずこの方のお話はラブシーンが多いなぁと思わないでもないですが、ストーリー自体は至ってシンプルで面白かったです。おかげで先の展開だったり色々察しはついてしまうものの犬が犠牲になることなく大団円に終わって良かった。評価:★★★★☆
2024.09.04
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2024年8月刊こはく文庫著者:にしのムラサキさん柚奈は祖母から受け継いだ小さなカフェを営んでいたが、疎遠となっていた祖母の弟が土地の半分の権利を主張してきたことにより、土地を手放さなくてはならなくなった。そんな時、柚奈に手を差し伸べてくれたのはお隣さんの4つ年上の幼なじみ、俊。老舗製薬会社の御曹司である俊は、こともなげに「柚奈のためなら、いくらでも出してやる」と言ってくれるが、幼なじみの厚意に甘えていい金額ではないと、柚奈は首を振る。すると俊は提案してきた。「だったら俺たち、結婚しようぜ」 聞けば俊は最近、周囲から結婚をせっつかれて辟易としていたらしい。まだ結婚する気はなかったが、相手が柚奈ならしてもよい。そんなことを言う俊に、柚奈は驚きつつも同意する。幼いころから仲の良い二人は、すでに家族のような間柄だ。兄妹が夫婦になっても変わりはないだろう。そんな軽い気持ちだった。しかし、いざ新婚生活がスタートしてみると、柚奈の俊に向けた感情は変化し始めて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 平松柚奈=洋風喫茶店の店主。俊から契約結婚を打診される。 浜宮俊=製薬会社の御曹司で副社長。柚奈に想いを寄せている。大好きだった祖母の喫茶店を受け継いだ柚奈。小さな店だが、常連客も多くなんとか黒字経営を維持していた。しかし、祖母が亡くなって数年経つと言うのにここに来て祖母の兄が遺産について言及し出したのだ。元々放蕩息子だったという大伯父は、つい最近親戚から妹の死を聞いたのだと言う。大伯父にも祖母の実家の遺産である土地を何割か相続する権利がある。書類も見せられ、両親共々、柚奈は青くなった。高級住宅地に立つこの喫茶店は、調べてもらうと数億円の価値があるらしい。大伯父としては喫茶店など潰して土地を売り、自分の権利分の金を寄越せと言うわけだ。フランス様式のこの喫茶店。潰すのは忍びない。売るにしても後にかかる税金が厄介だし、どうするのが正解なのか。思い悩む柚奈に手を差し伸べたのは、実家のお隣さんの息子・浜宮俊だった。お隣と言えど俊の家は代々製薬会社を営む大金持ちで、暮らし向きは相当違うのだけれど、彼とは大人になった今でも仲良くしている。店の常連客でもある俊は、柚奈の母からでも聞いたのか、店の危機を知って駆け付けてくれたようだ。最初から俺に相談してくれれば、と不満そうな彼に、言えばポンと大伯父さん分の金額出してくれちゃうでしょ?それが申し訳ないから。いくら幼馴染でも返す当てのない額を借りることはできない。俊は毎月5千円ずつの返済でいいよと笑うけど、それじゃ一生かかっても返済しきれないではないか。本気で億超えの金を用意してくれそうな俊を慌てて止めると、申し訳ないと思うなら俺と結婚してくれと言われて唖然。大伯父とやらへの金は俺が払う、返済も不要。結納金代わりと思えばいい。この喫茶店を潰したくないんだろう?そう囁かれ、柚奈の気持ちは揺れた。俊は私と契約婚をしようと言っている。でも、考えてみればまたとない申し出だ。彼は母親からの縁談攻撃に辟易としており、どうせなら自分をよく知る柚奈と結婚したいというのも判る。契約婚とは言え、ちゃんと妻として大事にするし、喫茶店のオーナーも続けてもらって構わないと告げられ、柚奈は思わず彼の手を取ってしまった。今回のことで付け焼刃で色々勉強していた柚奈だったが、今後は俊が対応してくれると聞いて肩の荷が下りたように思う。我ながら現金だなと思いつつ、彼との結婚生活について考え始めていた。婚約の報告をすると、俊の母は泣いて喜んでいた。逆に、これまでの見合いのセッティング等、柚奈には悪いことをしたと彼の母に謝られ罪悪感で一杯だ。あの後、早々に大伯父にコンタクトを取った俊は、土地の分け前分の金額を渡して手を引かせたと聞いている。大伯父も貰うものさえもらえれば今後関わってくることはないだろう。なので、約束通り両家の親に挨拶に行ったわけだけど、騙している感が否めず胸が痛む。それに、これまでとは俊との関係がガラリと変わったと思う。俊は多忙の身ながら、休日になれば柚奈をあちこちに連れ出しデートを楽しみ、部屋に戻れば彼女を抱きしめて眠る。いきなりの半同棲ラブラブカップルみたいな扱いに柚奈は戸惑いながらも、自らの俊への気持ちが変化していくのを感じていた。そんなある日のこと、店に大塩と名乗る女性が訪れた。俊の会社の取引先の専務秘書をしているらしい大塩は、柚奈を値踏みし、たっぷり嫌味を言うと注文したお茶も飲まずに帰って行った。一体何なの?何となく俊に報告するのはためらわれ黙っていたのだが、大塩は定期的に嫌味を言うだけの為に店を訪れる。その言動に常連客も、間女が喧嘩売りに来てるんじゃないの?と俊に対しても憤っていたので慌てて弁明をしておいた。様子のおかしい彼女を気にかけていた俊は、また何か悩み事が出来たのかと心配していた。最近、彼に対してハニトラ紛いのことを仕掛けて来る取引先の秘書に困り果てていた俊は、こんなことに時間を割いていられないと、大塩へ罠をかけ・・・。産業スパイに目を付けられていた俊。その正体は大塩なんですけど、あまりにも彼が靡かないからかその婚約者である柚奈をいびっていました。俊がモテるのは判っていたので嫌味もスルーしていた柚奈は、気持ちの変化により大潮の攻撃に段々ダメージを受けて行きます。大塩のことを探っていた俊は、このことを知って大激怒。取引先にチクるだけで後はお好きに処分してくれと手を打つつもりだったけど、柚奈を虐めたあいつは万死に値する、とばかりにパーティーの席で大潮の悪事を暴露。警察にも通報していたので、彼女は御用となるのでした。柚奈も色々話が分かって、自らの想いを俊に打ち明けます。彼も契約と言いつつ日々好き好き言いまくっておきながら改めて告白。少しでも俊の力になりたい、そう決意した柚奈はマナーと外国語等を学び始め、2年後に結婚。憧れの地での新婚旅行での様子が描かれて物語は幕。割と淡々とした内容でしたが、ヒーローの一途さやその執着ぶりがやっぱりこの作者さんのキャラだなって感じ。最初は実感の湧かないヒロインがどんどん絆されて行く様が判り易く良かったです。評価:★★★★☆
2024.09.03
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2024年8月刊レジーナ文庫著者:今川幸乃さん小さなころから我が儘な妹に振り回され、虐げられていた公爵令嬢のエリサ。十四歳になったある日、王太子の婚約者であることを妹に妬まれ、根も葉もない噂を流されてしまう。噂を信じた父親に王太子との婚約を解消され、エリサは遠く離れた辺境伯レリクスの元へと嫁ぐことになった。嫁いだ初日から、レリクスはエリサを冷遇し、新しい家にも居場所がない。せめて得意な料理だけでも手伝おうと、エリサが厨房で腕を振るい始めたところ……!? 文庫だけの書き下ろし番外編も収録! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エリサ=公爵家の長女。 妹の策略により王太子との婚約を破棄され辺境に嫁がされる。 レリクス=辺境伯当主で書類上のエリサの夫。 シシリー=公爵家の次女。姉を妬み様々な嫌がらせを繰り返していた。 ケビン=王太子。ナルシストで自分以外に興味が無い。 マルク=辺境伯家の執事。オルロンド公爵家の長女・エリサは食べることが大好き。好きが高じて料理までするようになった娘を両親は腹立たしく思っていた。だが、令嬢らしからぬ趣味を持つとはいえ、彼女は頭も良く優秀であった。気に入らない面もあるが、エリサは王太子・ケビンの婚約者。未来の王妃の実家となれば王宮での発言力は今よりもっと高くなる。公爵はそう考え、そりの悪い娘の行動には目を瞑ることに。そんなある日のこと、何かとエリサと張り合い嫌がらせを仕掛けて来ていた妹のシシリーが、婚約者を譲れと言い出した。そもそも、これは政略結婚であり個人でどうこうできる話ではない。唖然としながらもきっぱり断るが、今回はいつになくしつこい。しかし、ドレスやアクセサリーを強請られるのとはわけが違う。エリサをよく思っていない父でさえ、シシリーの我儘は許さないだろう。短絡的な妹にも判るよう説明し、この話はもうお終いと切り上げた。これだけ言えばさすがに理解したはず。そう思っていたエリサは自分が世界の中心でないと気が済まないと言うシシリーの性格を侮っていた。数日後、怒り心頭の父から部屋に呼び出されたエリサはケビンとの婚約を解消すると告げられたのだ。おまけにどうしても公爵家から王太子妃を出したい父はシシリーを新たに婚約者にすると言い、既に国王に許可を貰ったらしい。いきなり何でそんな話に。納得がいかず問い詰めると、父はエリサを我が家の恥さらしと罵った。何と、この数日の間にエリサが複数の男性と遊びまわっているという悪評が広がっているらしく、元々娘を疎んじていた両親は鵜呑みにして激怒。噂を耳にしたケビンからも事の真偽を問い苦情が来たと言う。やられた。どう考えても根も葉もない噂を流したのはシシリーだ。だとしてもここまでする?両親と折り合いが悪いことも徒になり、いくら潔白だと説明しても聞く耳持たずで万事休す。こんな娘を公爵家には置いておけないと、父が命じたのは王都から遠く離れたロンドバルド辺境伯との結婚。エリサも噂で聞いたことがある。魔物討伐や異民族と戦い国境を守っている当主は戦いには優秀だが、偏屈で人嫌いだと言う。しかも、軍事費がかかり枯れた土地故に作物の出来が悪いせいで、貧しい領地だと。正直、不安もあるが状況は覆せそうもない。少ない荷物を纏めると、ご機嫌なシシリーと厄介者を追い出せたと大喜びの両親に見送られ、エリサはロンドバルド領へ。王都から馬車に揺られて七日。舗装もされていない道なので何度も揺れで酔いそうになりながら、道中立ち寄った町でエリサは水の精霊を助けた。精霊が言うには、ロンドバルド領を流れる河の上流にあるラーザン子爵領が勝手に貯水池を作ってしまい、水源が半減してしまったのがこの領地が枯れている原因らしい。人工の貯水池は精霊の力も弱まらせ、雨を降らすことも出来ないと嘆いていたが、エリサのおかげで多少の回復が見込めたと言う。精霊はいつか借りを返すと彼女に鈴を渡し、困ったことがあれば読んで欲しいと告げて姿を消した。そしてようやくたどり着いた屋敷は、貧しい土地故かまだ教会や施設の方が立派に見えるほど寂れていた。当然使用人も少ない様子。一応、夫となった当主のレリクスが出迎えてくれたが、例の噂のせいか冷たい態度。エリサのことも執事のマルクに丸投げして早々に執務に戻って行った。輿入れする前に色々レリクスの評判も耳にしていたのだが、これは中々に手強そう。30歳になる彼には当然ながら縁談も多数来て、幾人もの令嬢たちがこの地に訪れていた。しかし、贅沢な暮らしをしていた令嬢は皆一ヶ月もしないうちにこの屋敷を出て行ったと言う。心なしかマルクの態度もそんな感じがするし、悪評もあるから余計に良い印象が無いんだろう。とはいえ、もう自分には行き場が無い。何とかここでやっていくしかないのだ。公爵令嬢ながら質素で堅実な彼女にとって、別段ここでの暮らしは苦ではない。使用人が少ないなら何か手伝おう。料理ならできると厨房に行くと、マルクと数名の男たちが不器用な手つきで包丁を握っていたので驚いた。執事自ら料理?事情を聞けば、先日料理人が辞めてしまい、今は慣れないながら彼らが食事作りをしているのだそうだ。そんなわけで味はイマイチ以下。これでも上手くなった方だと言われても基本が成ってない。これからは私も食べるのだし、それなら美味しいものがいい。エリサが率先して料理作りに加わり、具材の切り方などを指南。出来上がった料理はレリクスにも褒められたとマルクも喜んでいた。一方、レリクスは悪名高いエリサを警戒し、いつ彼女が根を上げて出ていくか様子を伺っていた。だが、一ヶ月以上経ってもエリサは出て行くどころか、使用人たちと仲良くなり、マルクまでも味方に付けている。以前、マルクから歯切れ悪く実は料理の腕が上がったのは奥様のおかげなのですと白状された時は驚いたものだ。その後、彼女は辺境伯夫人らしく、この土地のことを考えて、痩せた土地でも栽培できるサツマイモを主食、及び名物にすることを提案。小麦が育ちにくいなら別の物に力を入れればいい。サツマイモは仕入れ値も安く、苗も安価だった。馴染みのない食べ物に抵抗もあったが、蒸しただけでも美味で甘味にもなることが判ると、領民たちも率先して育て始めた。その際、やはり多少の湿り気は欲しいと水の精霊に頼んで雨を降らせてもらっていたエリサの姿を偶然目撃したレリクスは、この頃にはすっかり彼女のことを見直し、エリサと本当の夫婦になることを望むように。自ら、徐々にコミュニケーションを取り始めた彼は、後にエリサにこれまでの態度を詫び、筋を通したいと結婚式と披露宴をしようと提案。蓄えを大放出した宴は領民たちも大喜びだった。その頃、念願の王太子の婚約者となったシシリーは現実に打ちのめされていた。見目麗しいだけでなく文武両道に優れたケビンは、ナルシストで自分にしか興味のない男だったのだ。美人ともてはやされたシシリーすら、彼にとっては自分以下の他愛ない娘。それどころか教養の欠片も無い彼女が王太子妃だなんて何の冗談だ。実は、他人に興味のないケビンでもエリサの奥ゆかしさと聡明さは気に入っていた。王太子妃としても及第点。何の文句も無かったのに、いきなり不自然な悪評が出回った。不快だったのでこんな噂、公爵家の方で上手くもみ消しておけと注意したはずが、オルロンド公爵は不評を買ったものと思い込み、エリサとの婚約解消を申し出て、あれあれよという間に婚約者がこの気の利かない女に取って代わっていた。エリサのことは本当に惜しいことをした。辺境伯領で幸せにやっているようだが、その辺境伯と以前から貯水池問題で揉めているラーザン子爵とシシリーが何やら共謀していると耳にした。領地間でのもめ事は正直迷惑なんだが、そう独り言ちるケビンの嫌な予感は的中。貧乏貴族に嫁いで不幸せなはずの姉から盛大な式と披露宴を開いてもらい幸せだという手紙を貰い、シシリーの妬みが爆発。ケビンに蔑まれた彼女は姉とその嫁ぎ先であるロンドバルド領が困るよう、子爵と密会。援助するからと貯水池の拡張を提案し・・・。頭が悪い上に我儘な妹の嫌がらせもここまで来ると犯罪。シシリーはレリクスに謀反の疑いがあると言う噂まで広め、姉が困る姿を妄想して悦に浸っていました。でも、エリサは早々にこれが妹の仕業と看破。実家に戻って父にも妹のしでかしを見ないフリし続けるつもりかと責めます。が、父は相変わらずエリサの言うことなど聞かず、逆にシシリーの罪を隠ぺいするよう命じてきたので、彼女は断固拒否。妹の部屋に乗り込み、子爵との手紙を見つけたエリサはケビンの協力を仰ぐのでした。彼もシシリーの行動が目に余るとし、捜査の権限をエリサに与えます。証拠の手紙と権限の行使で追い詰められたシシリーは逮捕されるとあっさり悪事を白状。しらを切り、河のせき止めなど悪辣なことまでしていた子爵はケビンの命により軍を動かしたレリクスに敗れ領地を失う羽目に。シシリーはその後修道院送りとなるも、オルロンド公爵家はエリサの活躍でおとがめなし。でも、次女の不始末の責任を取る形で公爵は長男に家督を譲るという結果に。兄とは仲が良いのでエリサにとっても良い状況になった5年後、水源も潤沢となりすっかり豊かになったロンドバルド領を仲良く切り盛りする夫婦の姿が描かれて本編は幕。書き下ろしの短編は、エリサが嫁いできて間もない頃、レリクスが彼女を見直す一因となった出来事のお話でした。妹の身勝手のせいで、公爵家だけでなく嫁ぎ先とその周辺まで騒動に巻き込まれるという内容の今作。ナルシーなだけかと思っていた王子が実は聡明で人を見る目も兼ね備えてたと言うのが意外で、よくある婚約破棄もののザマァポジとは一味違うと思いました。ぶっちゃけ、レリクスよりキャラが立ってる(笑)面白く読ませてもらいましたが、絵がちょっと残念。女の子は可愛いんですけどねぇ(^_^;)評価:★★★★☆
2024.09.02
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毎月恒例のコンテンツ記事です。イツメンではありますが、順位の方は少し変わって来てます。1位 →最早言うことなし。2位 →先月、最新刊(3巻)が発売されたばかり。閲覧数がまた増えて来たのはその兼ね合いですかね?3位 →先月コミカライズ版が発売されました。4位 →貴族TL+シークレットベビーシリーズ1作目です。5位 →さすがに落ち着いて来ました。6位 →順位こそ変わっていませんが閲覧数自体は相変わらず驚異の伸び。アニメ2期ラストの続きのお話なので気になる方が多いのかも。とにかく、10巻を早く・・・。7位 ↑コミカライズ版がクライマックスなのかな?記事の閲覧数にびっくり。もう少しで6位を抜く勢いでした。もしかして来月は順位が変わっているかも。8位 ↓シリーズ1作目。コミカライズ版のおかげで安定してます。9位 →忘れた頃に閲覧数を重ね、順位をキープ。色々難しいんでしょうけどマジで紙媒体で発売してください。10位 ↑シリーズ1作目。急に閲覧数が増えて1ランクアップ。11位 ↓転生というよりは死に戻りものですかね。閲覧数は定期的に増やしていたものの10位に一歩及ばず。12位 ↑シリーズ1作目。2巻の発売とコミカライズ版の影響が大きかったのか1ランクUPでした。13位 ↑こちらも驚きの伸び。2ランクUPとなりました。14位 ↓シリーズ4作目。2ランクダウン。閲覧数自体は伸びているもののその上が強かった(^_^;)15位 ↑シリーズ2作目。1ランクUPこちらはバリバリにコミカライズ版のおかげですね。16位 ↓シリーズ2作目。 2ランクダウン。さすがに上記のタイトルたちが強すぎました。17位 ↑シリーズ3作目。1ランクUPヒロインの前世が判明するお話。18位 ↓1ランクダウン。結構古いお話なこともあり、いきなり閲覧数が激増したのが謎です。19位 →シリーズ3作目。星奈の里の過去が判るお話でした。20位 →定期的に閲覧数を重ね、順位をキープ。確か60ページ弱の内容なので読み易いお話です。8月期の結果はこんな感じでした。いつもありがとうございます。
2024.09.01
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2024年8月刊スターツ出版文庫著者:クレハさん名家・華宮の当主であり、伝説のあやかし・天狐を宿す青葉の花嫁となった真白。幸せな毎日を過ごしていた二人の前に、青葉と同じくあやかしを宿す鬼神の宿主・浅葱が現れる。真白と親し気に話す浅葱に嫉妬する青葉だが、浅葱にはある秘密と企みがあった。二人に不穏な影が迫るが、青葉の真白への愛は何があっても揺るがずーー。特別であるがゆえに孤高の青葉、そして花嫁である真白。唯一無二の二人の物語がついに完結! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 華宮真白=青葉の妻になった令嬢。 華宮青葉=伝説のあやかし・天狐の宿主。 久宝浅黄=鬼神の宿主で青葉の昔馴染み。 七宮莉々=真白の義妹。天狐の宿主である青葉との挙式を無事に終えた真白。娘を溺愛する藍一郎は、真白も他の花嫁候補達のように島から追い出されるものと期待していただけに最後までこの結婚に文句を言っていたが後の祭り。二人の留守中、七宮家で後妻が好き勝手しているとの報告があり、泣く泣く東京へ帰って行った。父の泣き落としに少々うんざりしていた真白が、ホッとしたのも束の間、この後に控える初夜のことで緊張の最高潮にいた。が、青葉は一人ドキドキしている真白を他所にさっさと寝てしまったので目が点。流石の天狐の宿主も不仲な母親との再会や挙式で気疲れしたのかもしれないが、何もしないの?早々に寝息を立てている彼に、まぁ、今夜はしょうがないかと彼女も眠りに就いたのだが、その後、幾日経っても彼から求められることは無かった。これはどう考えてもおかしい。真白がそれとなく将来、子供は何人くらいほしいですか?と話を振ってみると、授かりものだからなぁと言いつつお前との子なら何人でもとの答え。何だ、子供は欲しいのねと胸を撫で下ろしていると、その後に続いた青葉の言葉に彼女は眩暈を覚えた。「早くコウノトリが連れて来てくれると良いな」真面目な顔の青葉に、なんでコウノトリ?と尋ねれば、情操教育にと渡された絵本に書いてあったと言うのだ。しかし、いくらここが孤島とは言え、当主に不便が無いようにと最新設備が整っているし、都会に勝るとも劣らないほどの品揃えのショッピングモールもある。当然Wi-Fiも通っているのでネットで幾らでも情報は得られるはずなのだが。ふと気になってそれを尋ねると、スマホやタブレットは与えられなかったと言う。以前から物凄い知識量なのに、変に世間知らずだったりと気にはなっていた。これは問い質す必要がある、翌日、青葉の補佐兼教育係の千茅に疑問をぶつけた。青葉に意図的に偏った教育をしていないかと。答えは予想通りのものだった。代々の当主は次代が決まるまでこの島で暮らし、出ることはない。だからこそ、無駄に外界での楽しみや、男女の知識を身に付けさせた結果、出奔でもされた日には目も当てられない。ある程度年齢が行ってから代替わりするなら常識も判っているが、青葉が宿主になったのは異例にも5歳だった。さぞかし操作しやすかったろう。千茅の話を聞いて真白は怒りを覚えたが、代々の世話役がそうして来たのだし、彼だけを責めるわけにはいかない。彼女は言い分は判るけれどそれは青葉の為にはならないと彼に世俗や愉しみを教えてあげたいと宣言。反対するかと思っていた千茅も是非お願いしたいと頭を下げた。きっと長年、彼も疑問に思っていたのだろう。そうとなれば、使用人たちの力を借りて買い物に出掛けた真白は青葉の年代なら興味を持ちそうな本やゲームを買い込み、スマホも契約。皆とわいわい愉しむ彼の姿を見て真白は微笑んだ。そんな最中、真白は青葉の昔馴染み・浅葱と知り合った。鬼神の宿主である浅葱は種族は違うものの、同じ立場の者として子供時代の青葉の良き話相手で相談相手だったらしい。とはいえ、彼も似たような境遇のため自由な外出は禁じられている。だからいつもここに来る彼は霊体の姿だった。この島で彼が見えるのは青葉と母方の血を濃く受け継ぐ真白のみ。話し上手な浅葱とは会話も弾んだが、青葉はそんな二人の姿を見て一人モヤモヤ。ある日のこと、突然屋敷に義妹の莉々が訪ねて来た。後妻とその連れ子の莉々を虫のように嫌う藍一郎は、先日ホストに入れ上げた挙句不倫していた後妻をあちらの有責で離婚できたと喜び真白に報告して来ていた。その際、莉々が家出して行方不明だと聞いて無責任過ぎると父を叱ったのだが、まさか私を頼って来るとは。親戚のゴリ押しで嫌々後妻と結婚した父は彼女達を毛嫌いしていたけれど、家族になるのだから真白は二人と仲良くしたいと思っていた。まぁ儚い望みではあったが。莉々には散々嫌がらせされたので、意地でも真白の元には来ないと思っていたのだが、相当追い詰められているのかもしれない。でもどういう理由があろうとタダ飯食って部屋に泊まるのは論外と、相応の労働を求めた。提示した条件にすぐに憤慨して出て行くかと思いきや、莉々は素直に従い使用人に混じって働き始めたので真白もビックリ。どちらにせよ、彼女とはじっくり会話する時間を取らなければ。数日後、屋敷で会合が開かれることになり、真白は部屋から出ずに待機していた。新参の莉々も今日ばかりは手伝いできることもないと、珍しく彼女とトランプに興じていたのだが、部屋の外に護衛がいるはずの真白の部屋に見知らぬ男が入って来て固まる二人。男の姿を見て「お父さん」と呟く莉々の姿を見て、継母の前夫だと理解したが、硬直する娘になんと男は金を無心して来たのだ。七宮家にいた頃、莉々はよく外泊していた。藍一郎はふしだらだと怒っていたけれどどうやら家と学校を突き止められ、莉々は父親から逃げ回っていたらしい。事情を知った真白は義妹を守るべく奮闘、彼女の気を察知して青葉が駆け付け男は捕らえられたのだが、不思議なのはセキュリティ完備であちこちに警備や護衛がいるこの屋敷に男はどうやって侵入したのか。難しい顔をしていた青葉は翌日何食わぬ顔でやって来た浅葱の霊体に向け、昨夜の騒ぎはお前の仕業だなと問いかけ・・・。真白の継母はクズでしたけど、その娘の莉々は思っていたよりも素直で良い子だったことが今回判明。実の両親が揃って毒親とか本当に子供がかわいそう。七宮家で多少は良い暮らしが出来ても、そのせいで父親から金を無心され、拒否すると暴力を振るわれていた莉々。妬んでいた義姉を頼ってでも逃げたかった気持ちは判るというもの。事情を知った青葉と藍一郎が父親が二度と彼女に近づかない様手を打ち、莉々は後に屋敷の古参のメイド・葵子との養子縁組が決まってこの島に暮らすことに。良かったねぇ、莉々。今作で一番印象が変わったのはこの子かもしれない。一方、莉々の父親を連れて来て屋敷に侵入する手を貸したのは浅葱でした。彼は孤独だった過去の青葉を見て自分と同じと境遇だと留飲を下げていました。でも、久方ぶりに訪れたら彼は妻を娶り使用人たちとも仲良くやっている。無性に妬ましくなり、今回の騒動を思いついたのだと白状。宿主は崇め奉られてはいても自由はない。浅葱は青葉以上に過酷な環境に置かれていて、力の尽きかけていた彼はいずれ死を迎える。やるせなくなった浅葱が嫌がらせしたくなったのもなんか判る。真白はそんな浅葱の救済を望み、同じ気持ちだった青葉が行動に移し・・・っていう展開です。あらすじではこの浅葱について言及されてますけど、実際のエピソードは少な目。割とこの問題もあっさり決着がついたし。実際は青葉の為に色々奮闘する真白と使用人たちの話が主だったと思います。書き下ろしの短編は浅葱について。彼の解放後はこんなやり取りがあったんだよと補完的な内容でした。元がアンソロジーの短編なので、ぶっちゃけこの2巻は蛇足感が否めなかったけど、主人公たちの幸せと共に周囲も幸せにという展開は嫌いじゃないかも。評価:★★★★★
2024.08.31
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9月6日頃 レジーナ文庫 望まれない王女の白い結婚 ・・・のはずが途中から王子の溺愛が始まりました。 屋月トムさん 9月13日 富士見L文庫 みにくい小鳥の婚約 水守糸子さん9月下旬 レジーナブックス 子持ち主婦がメイドイビリ好きの悪役令嬢に転生して 育児スキルをフル活用したら、乙女ゲームの世界が変わりました あさひなさん いつまで私を『子豚令嬢』だと思ってるんですか? ~前世を思い出したので、 私を虐めた家族を捨てて公爵様と幸せになります~ ヒツキノドカさん10月15日 ビーズログ文庫 敵国で冷遇された皇女様は夫の愛に気づかない 路地裏乃さん10月27日頃 スターツ出版文庫 死に戻りの生贄花嫁は、10回目の人生で鬼に溺愛される 編乃肌さん 初めてお目にかかります 離婚してください 朝比奈希夜さん10月30日 KCx 傷モノ花嫁 ~虐げられた私が、皇國の鬼神に見初められた理由~ 5 友麻碧さん/藤丸豆ノ介さんラノベが多目ですが、まだまだ油断はできません
2024.08.30
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2020年8月刊エタニティ文庫著者:栢野すばるさん周囲に正体を隠しながら「官能小説家」として活躍している詩織。実はお嬢様でもある彼女は、子供の頃からの許婚と、この度めでたく結婚することになった。密かに憧れていた彼との生活は嬉しいけれど、家族にも内緒にしている自分の職業がバレたら、きっと婚約破棄されてしまう! 焦った詩織は、なんとか秘密を隠し通そうと奮闘するが……!? 彼女の全てを知りたい彼×隠したい彼女の恋愛攻防戦スタート! 文庫だけの書き下ろし番外編も収録! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 古河詩織=女性向け官能作品をメインに書いている小説家。 孝弘には職業を隠している。 小早川孝弘=金融系企業の御曹司で後継者。女性向けエロ作品を読むのも書くのも大好きな詩織。やがて書く方に重きを置き始めた彼女の作品が出版社の目に留まってデビューしたのは5年前のこと。ありがたいことにその界隈ではちょっとは名も知られるようになっていた。著作は20作にも昇る。エッチだけどほんわかと優しい作風が受けているようで、ありがたいことに仕事の依頼も途切れず、今年はあと5作発売される予定だ。大手ゼネコン企業の創業者を祖父に持つ詩織は、実はかなりのお嬢様。産まれた時から親同士の約束で決まった婚約者の小早川孝弘とは本来5年前に入籍寸前だったのだが、当時はまだ短大生で中退したくも無かったし作家デビューが決まった頃であった。孝弘のことは好きだけどまだ結婚という実感も無く、修行のために数年海外赴任するという彼に付いて行く度胸も無かった。それに新人作家が海外在中とか、担当さんにも色々迷惑だろう。だが、一番の理由は孝弘に仕事と趣味のことを隠していたから。両親ですら詩織の職業を聞いたら卒倒しそうなのに、いくら孝弘が優しい人でも受け入れてくれるか甚だ疑問だ。故に隠しておくのが無難、と結婚を熱望する孝弘に苦しい言い訳をして延期にして欲しいと頼んだ際の悲しそうな表情が忘れられない。渋々了承してくれた彼が海外赴任に旅立って5年。帰国した後は暫く父親の元で働くと言う。高級レストランで久しぶりに再会した彼は男前に磨きがかかり、向こうでもさぞかしモテたんだろうなと思う。正直、婚約解消されても仕方ないほどの不義理をしてしまったのだ。今日は何を言われるののかとドキドキしていると、赴任先で購入したらしい小豆大のピンクダイヤをあしらった見事な婚約指輪を渡されてビックリ。育ちはお嬢様でも金銭感覚は一般人並みの彼女は、落としたらどうしようと戦々恐々で、改めて結婚の話を切り出されても上の空だった。孝弘にしてみれば5年も待ったのだから、流石にもう応じて欲しいと言う考えのようで、君の部屋でゆっくり今後のことを話したいと言われて慌てて散らかってるから別の日にして欲しいと頼み込んだ。なにせ、プロットを書き散らしたノートやら、献本。購入したTL小説の数々があちこちに散らばっている部屋になんて招待できるわけがない。間取りだけは父の名義で借りている高級マンションのそれなのだが、あの有様を見たらきっとドン引きされる。指輪を受け取ってもらえたからか、今日の所は引き下がってくれたけど、原稿の合間に献本と購入した本にはカバーを付けてどこかに仕舞わないと。あれ以来、デートを重ねてはいるものの、孝弘の王子様っぷりにドキドキしっぱなし。だから余計にこんな私でいいんだろうかと不安になる。それを結婚したくないと取られたのか、孝弘に詰め寄られ強引に体を奪われてしまった。以降、彼に遠慮は無くなり、自宅ではなく詩織の暮らす部屋に帰って来るように。毎日7時には出勤して0時過ぎに帰宅する彼の身体を心配しながら、孝弘の為に少しでも役に立てるよう勉強する決意をした詩織。それにしても、最近の彼はエッチの時にやたらと特殊プレイを強要してくる。結局流されて気持ちい思いをしているから良いのだけれど、このシチュエーション、見覚えがあるような。ネクタイを使ったり、鏡プレイとか、全部自分で書いたものばかり。まさかね?孝弘は詩織のペンネームすら知らないはずだ。でも、BLにも偏見無いようだし、それどころか趣味嗜好のエンタメはかなり需要があるのだと力説もしていた。それも義父から今度出版会社を任されるからだろうか。孝弘からの溺愛は留まるところを知らず、しびれを切らしたのか詩織の両親を焚き付け入まんまと二人から入籍の許可を得ていた。この頃になると自分も彼に惚れていると言う自覚もあったし、結婚に何の文句も無いのだが、本業のことは結局話せていない。転寝してPC点けっぱなしにしてたり多々あるから実はバレてるんじゃと思わないでもないが、そうでなかった場合打ち明けるのに勇気がいる。そんなある日、力試しに応募した一般作が奨励賞を受賞。そのお祝いに兄の友人で、ベストセラー作家のヒカルがお祝いしてくれた。しかし、偶然二人の様子を見かけた孝弘が詩織の浮気を疑い・・・。ちょっと変わった思考のヒロインと彼女を溺愛し一筋のヒーロー。終始コメディ調でクスリとするシーンが多数。ヒカルさんは実はゲイで、詩織の兄にホの字なんですけど、孝弘に誤解されやれやれと言った様子。彼の機転で疑い自体はすぐに晴れることになり、孝弘は詩織の著書を全部読破したことを告げます。ペンネーム自体、留守電で呼ばれていた名前から推察されていたようで、入手できる本全て読破。詩織らしい優しい話ばかりだったと褒めるのでした。彼は妻がエロ小説を書いてようが気にしておらず、結局詩織の杞憂に終わったわけですが、彼の言葉を受け自らも孝弘のことがどんなに好きか打ち明けます。ようやく念願の入籍を果たし、ラブラブな夫婦の様子が描かれて本編は幕。文庫版用の書下ろしは本編ラストから約4年後、長女・沙織を交えた小早川家の日常でした。評価:★★★★★
2024.08.29
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昨日(8月27日)までの購入タイトルです。フロースコミックス7月刊と8月刊です。どちらも感想記事UP済み。1000円超えの本なので、メイド~の方の購入は後回しになってました。が、刷数が少ないのか品切れしてる店舗が多く、探すのに若干苦労しました(^_^;)やはり無理しても発売日に買っておいた方が無難ですね。マーマレード文庫8月刊。購入予定に入れてたのに、すっかり忘れててこちらも漸く購入。9月刊が出る前には感想記事を書けるかと。ビーズログ文庫8月刊。不遇ヒロインもの。店舗によっては表紙絵のしおりが貰えるようです。しおりコレクターとしては嬉しい。ヴァニラ文庫8月刊。周年記念でSS付きイラストカードが封入されています。どちらも大好きな作家さんなのでなるべく早く読みたいとは思ってます。レジーナ文庫8月刊。スターツ出版文庫8月刊。シリーズ2作目にして完結巻になるそうです。まぁ、元々アンソロの短編を膨らませたお話でしたからね。メディアワークス文庫8月刊。あらすじを読むにベリーズ文庫っぽい感じ。
2024.08.28
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2024年8月刊ベリーズ文庫著者:花木きなさんOLの美月は彼氏に浮気された上、足を怪我して途方にくれていた。そんな時、警視正の巧と再会。彼は子供の頃からの憧れの人。そんな巧の提案で怪我が治るまで一緒に暮らすことに! しかも、しつこい縁談に困っているという理由で契約結婚を打診され!? 助けになりたいと承諾したら、クールな巧の瞳は熱を帯びていく。「俺のことだけ見てればいい」--溢れ出す激愛に美月の胸は高鳴るばかりで…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 飛島美月=真面目な会社員。失恋直後に憧れの人だった巧と再会した。 早戸巧=警視正。トラブル続きで途方に暮れる美月に契約婚を持ち掛ける。 矢沢=巧の同期で部下。 森麻美=美月の親友。 大塚陽平=美月の元カレ。大手雑貨&日用品販売会社に勤める美月はその日最悪の誕生日を経験した。交際して1年の恋人・大塚陽平が奮発しくれたホテルのディナー。シャンパンで乾杯した直後に、美月はいきなり背後から襟を引っ張られてビックリ。耳元で怒鳴る人物を横目で見るとなんと顔見知りの女性社員・内村双葉で、陽平を浮気者と罵っていた。その内容を聞くに、どうやら陽平は美月と交際しつつ裏で内村とも付き合い彼女の妊娠を機に入籍していたらしい。初めての恋人にとんでもない裏切りをされていたのもショックだが、知らずに不倫の片棒を担がされていたのはもっとダメージが大きい。内村は激怒して人の話を聞かないし、彼女にしてみればすっかり美月も悪者で間女扱いなのだろう。勢いよく突き飛ばされた挙句、シャンパンを頭からかけられた美月は茫然。店員も飛んできて止めても内村の怒りは収まらず、手が付けられない。突き飛ばされた拍子に足首を捻ったようで上手く立ち上がれない彼女に手を差し伸べる人物が。見上げるとスーツ姿の見知った顔。巧さん、と呟いた美月は数年ぶりに憧れの人と再会したのだった。早戸巧は15年前、高校3年生の時に事故で両親を亡くして天涯孤独になった。親権者がいなかったため、弁護士をしていた美月の父が後見人を務めることに。彼が高校を卒業するまでの数か月、父は精神的に不安定であった巧を心配し飛島家で預かっていたという経緯がある。ショックから立ち直った巧は、クラスに馴染めない美月にさり気なく寄り添い、彼なりの言葉で慰めてくれた。以来、巧は美月にとって憧れの人となっていた。そんな彼が大学入学を機に飛島家を出て行き、卒業後は警察学校に入学したと聞いた時は驚いたものだ。彼の両親はひき逃げで亡くなっているから、色々思う所があったのかもしれない。巧は無事に警察官になり、連絡を取り続けている父には警視になったと報告があったと言う。そんな彼にとんでもない愁嘆場を見られ、美月は恥ずかしくて仕方ない。彼は捜査の都合でこのホテルに泊まっていたらしい。同僚と慰労も兼ねてここで食事をしていた所、騒ぎが耳に入り、職業柄暴力沙汰になる前にと見に行くと美月が突き飛ばされシャンパンをぶっかけられていたので驚いたと言う。間に合わなくてすまないと詫びた彼は、美月から事情を聴いて内村を傷害で逮捕出来ると告げた。どう考えても美月は被害者だ。下ろしたてのワンピースは台無し、足首の腫れようを見るに捻挫かもしくは折れているかもしれない。しかし、美月はそれを望まず、内村の気持ちもわかるからと固辞。翌朝、病院に行くと足首の骨にヒビが入っていた。何故か付き添ってくれた巧は眉をひそめた。恋人の私物が大量に残っているので美月は部屋には帰りたくない。しかしこの足では引っ越しするのも困難だ。実家で暫く厄介になるのが一番ではあるけれど問題は母親だ。近々彼氏を紹介すると話していたのに、破局した上に怪我して帰って来たとなればどれだけ悲しむか。とある事情で熟年離婚して以来、精神的に不安定な母を心配させたくない。でも、部屋には戻りたくないしと悩む彼女に、なら足が治るまでうちに来いよと巧が提案。迷惑かけちゃうからと最初は断ったものの、実際の所、彼の申し出はありがたい。出勤ついでに会社近くまで送ってくれるというので、暫く厄介になることに。料理は嫌いじゃないからせめて居候する代わりに弁当を作り夕飯も美月が引き受けた。怪我で数日休んでいた美月が出社すると、同僚達の態度が余所余所しい。態度の変わらない者もいたが、視線の冷たさにかつてない疲労感を味わった。あの日すぐ起こったことを打ち明け、事情を知るる親友の麻美は、美月が休んでる間に内村が困ったことをしでかしてさと休憩中に教えてくれた。怒りが収まらない彼女は美月が夫と不倫していたと部長に訴えたらしい。部長は口が堅いので沈黙を貫いているが、内村が仲の良い社員に愚痴り、それに尾ひれがついて広まり、結果美月は略奪を仕掛けてフラれた性悪女というレッテルが貼られたと言うわけだ。勿論、鵜呑みにしてない人も多いけどねと麻美は言うが、かなり少数派だ。陽平もだんまりを通しているので美月だけが悪者扱い。これは正直堪える。不幸中の幸いだったのは、部長が少数派だったこと。陽平にも厳しく問い質し、独身と偽って交際していたことが判明。美月に非はないと判断されたのだ。但し、陽平は処罰され全く違う部署に飛ばされると言う。この件で後日美月は更に悪者扱いになったのだが、ストレスで高熱を出し寝込んだ彼女を甲斐甲斐しく世話してくれた巧の気遣いのおかげで吹っ切ることが出来た。足もテーピングだけで良くなり、礼をさせて欲しいと話す美月に巧が希望したのは結婚。唖然とする彼女に、彼なりに事情があるのだと言う。役職柄、見合い話が多く下手に受ければ上司の手前、断れずに結婚コース。流石にそれは回避したいのだそうだ。もう婚約者がいて近々結婚すると言えば話も来なくなる。美月も母親に恋人を紹介するはずだったなら俺と交際していたと言うことにすればいい。利害関係が一致するし、美月なら俺のことをよく知っているからと言われ、憧れだった人との結婚に美月の胸はときめいた。陽平のことはあの日幻滅して恋情も既に無い。母も巧のことを可愛がっていたからきっと喜ぶだろう。戸惑いもあったがつい、私と結婚しましょう。そう答えていた。父と別れて以来ふさぎ込みがちだった母・聡子は、美月が巧と結婚すると聞いて大喜びだった。父には巧から報告してもらった。数年前、被疑者の弁護をしていた父は被告人の身内から逆恨みされ2年にも及ぶ嫌がらせを受けた。聡子がうつ病になったのを機に家族にこれ以上害が及ばぬよう離婚という判断をした父に美月は腹を立てた。嫌がらせの方は示談で解決しても家族は元に戻らない。巧も疎遠にしているうちにそんなことになっていたのかとショックを受けていたが、美月が父親に対して蟠りがあるのも判る。入籍して暫く経った頃、社内での美月の扱いも漸く軟化。陽平の方に問題ありと皆も判って来たようだ。針のむしろのような日々を乗り越えられたのは麻美や部長、信じてくれた同僚のおかげでもあるが、やはり巧の存在が大きい。最初は契約婚でも、いずれ彼との子供が欲しい。そう思い始めていた頃、契約書が出来たと見せられた書面に夫婦の営みに付いて何ら書かれていない。「君を絶対に愛さないから安心してくれ」と巧に告げられた美月は愕然。後日紹介された巧の友人・矢沢から、彼が両親の死の影響で人とかかわりを持とうとしていないこと、捜査一課にいる手前命の危険もあることから一生結婚しない気でいるのかと思ったという矢沢は、美月はきっとあいつにとってよき理解者なんだと思うと言ってくれた。巧の絶対に愛さないと言った言葉の意味は分かったが、どうにもやりきれない。麻美に相談すればいざとなれば別れるという選択肢もあると発破をかけられ、決意した彼女は・・・。契約婚ものですが、例に漏れず両片想いです。人生どん底の経験をした巧は、もし結婚しても自分が死んだら残された家族に自分と同じ想いをさせてしまうと思い悩んでいました。しかし、偶然にも恩人の娘であり好意を寄せていた美月の修羅場に遭遇。世話を焼いているうちに彼女となら考えを変えることができるかもしれないと契約という形で結婚を申し込んだのでした。絶対に愛さないと言ったのは同意を得るまではベッドに誘わないと言う意味だったらしく、美月に問い詰められ白状した際、紛らわしいと怒られていましたw確かにこれは誤解されるわ。この間に、巧の両親をひき逃げした犯人も漸く見つかったり、彼の心にも転機が訪れたりしているんですけど、美月が離婚したがっていると思い込んで慌てている様が可笑しかったです。辛い過去がある分色々考えちゃうのは判るんですけどねぇ。二人はじっくり話し合い、契約は止め本当の夫婦になった頃、巧に説得された美月の父も聡子との復縁を決意。双方上手くいって物語は幕。陽平は相応の報いを受けてたけど、個人的に内村さんにも責任は取らせるべきだと思いました。不倫されて気の毒とは思うけど美月は騙されてたわけだし間女憎しと怪我迄負わされ、社内に噂を広める結果になったわけですから。流石にやり過ぎよね。せめてケガさせた謝罪はしなさいよ。評価:★★★★☆
2024.08.27
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2024年7月期スターツ出版文庫著者:皐月なおみさん貴族の娘でありながら、家族に虐げられ、毎夜馬小屋で眠る18歳の凛風。ある日、父より義妹の身代わりとして後宮入りするよう命じられる。それは鬼神皇帝の暗殺という重い使命を課せられた生贄としての後宮入りだった。そして100番目の最下級妃となるが、99人の妃たちから嘲笑われる日々。傷だらけの身体を隠すため、ひとり湯殿で湯あみしていると、馬を連れた鬼神・暁嵐帝が現れる。皇帝×刺客という関係でありながら、互いに惹かれあっていきーー「俺の妃はお前だけだ」と告げられて…!? 最下級妃の生贄シンデレラ後宮譚。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 凛風=地方貴族・郭家の長女。 継母に疎まれ使用人以下の生活を強いられていた。 暁嵐=炎華国の新皇帝。鬼神の血を引き強大な力を持つ。 秀宇=暁嵐の側近。 皇太后=暁嵐の義母。炎華国の北の外れにある高楊を治める郭家の長女・凛風は継母からの執拗な虐めと虐待に日々耐えていた。実母の存命時は継母は父の愛人として肩身の狭い思いをしていたと言う。その腹いせなのだろう。正妻が亡くなると継母は父に自分を後妻に迎えろと訴え、聞き届けられると娘の美莉と二人であっという間に郭家を掌握。凛風を屋敷の母屋から追い出し馬小屋に住まわせ使用人として扱い始めたのだ。幸い、弟の皓然はこの家の跡取りとして大事にされているようだが、彼は姉を心配して継母と異母妹の目を盗んでは会いにやって来る。そして差し入れを渡し、僕が家を継ぐ日まで何とか耐えて欲しいと凛風を励ました。弟はまだ14歳。頭が良く性格も良いのでいい領主になるとは思うが、彼がどう頑張っても家を継ぐまで最低でも6,7年はかかるだろう。この酷寒の地で継母の暴力を受けながら果たして自分はそこまで生きていられるであろうか。そんなある日のこと、新皇帝が即位して新たに後宮が開かれるとこの高楊の地にも報せが届いた。継母と美莉はいよいよこの時が来たと大喜びだったが、父・凱雲は我が家からは凛風を出すと宣言。猛反発する継母たちを他所に凛風を広間に呼びつけると、彼女に後宮行きと、ある役目を命じた。それは皇帝の暗殺。そんなことはできませんと彼女は拒否したが、郭家の遠縁である皇太后からの命なのだと言う。女官の子である新皇帝・暁嵐を暗殺し、自分の息子・輝嵐を皇位に付ける。そうすれば褒賞として郭家を取り立ててくれると。皓然の為でもあると言い含め、寝所に呼ばれたらその隙をついて呪詛のかかった簪で刺すだけだ。簡単に言うが、この国の皇帝は鬼の力で魑魅魍魎から国民を守る守り神のような方だ。こんな痩せ細った娘にそう易々と好きにさせてくれるとは思えない。父が言うには閨では鬼の力は弱まるとのことだが、失敗すれば皇太后から処罰される。皓然も死ぬんだぞと脅され、絶望を感じながら凛風は頷いた。それから暫く経っ凛風は炎華禁城にやって来た。さすがに貧相過ぎては怪しまれると出発までの間は母屋に住むことを許され、食事も日に三度与えられ、幾分肉も付いたが、長い虐待で付いた多数の傷跡は消せない。後宮が新しくなる度に召集される娘たちは100人。皇帝とは言え鬼の血を引く存在なので、生贄妃とも呼ばれていた。妃たちはそれぞれ1~100までの数字が振られ、当然若い数の方が召される可能性が高い。ただ、一桁代に選ばれるのは大抵重臣の娘や実家が太いお嬢様などだ。できれば作戦を実行したくない凛風は発表された100番という数字に内心で歓喜した。それでも、お気に入りが出来ない場合は1から順に呼ばれるらしいので、暫くは大丈夫だろうがいずれ自分の順が回って来ると思うと恐ろしくて仕方ない。作戦が成功してもしなくても自分が死ぬことに変わりはないし、殺すと思うと姿を現した暁嵐の顔も見れずにいた。後宮に部屋を貰い、暮らし始めてひと月ほどが経った。驚くべきことに皇帝は未だに誰も寝所に呼んでおらず、そのせいで妃たちはピリピリしている。おかげで大人しく100番目という一番下の凛風を虐めることで憂さを晴らすような者も現れ、毎日何かしら嫌がらせを受けるように。それでも継母に比べれば可愛いものだ。腕に残る火傷痕を弾みで見られ、気味悪がられてからというもの大浴場に行けず、部屋で行水していた彼女を見かねたのか、女官が離宮の裏にあるあまり使われていない温泉を使ってはどうかと薦めてくれた。やはりお湯、しかも温泉はありがたい。夜遅くに湯に浸かっていると人影が。すると向こうも気付いたようで、青年の誰何の声に妃の凛風だと答えた。温泉に来たのは体に古傷があり大浴場を使えないからだと伝えると彼も納得したようだ。青年はそれでも、こんな夜更けは危ないと言い、自分は馬の湯治に来たのだと話した。見ると見事な毛並みの黒馬。黒翔という名前も頷ける。馬小屋で暮らしていた凛風は郭家の馬蹄に聞いた手入れを試してよいかと尋ね、マッサージを始めると素直に体に触らせる愛馬の様子に青年は驚いていた。気性が荒く気難しいこの馬は自分にしか触らせないのに。すっかり凛風を気に入った風の黒馬を見て、流石に危ないから、こいつの湯治のついでに俺が毎夜見張りに立ってやると口に出していて自分でもびっくりしていた。勿論、覗いたりしないぞと付け足し、無理矢理約束を取り付けた青年は帰って行った。王宮の自分の部屋に戻った暁嵐は先程の邂逅を思い出していた。黒翔の目に狂いはない、凛風は心優しい娘だ。しかし、皇太后が皇帝暗殺を企み暗躍していると側近の秀宇からの報告も受けている。おそらく妃のうちの誰かがその命を受けているはずだろう。悔しいが、皇太后は暁嵐の弱点も知っている。弱く可哀想な境遇の者が放っておけないと言う弱みを。秀宇もそういう娘を使うはずだから気を付けるよう口を酸っぱくして言っていた。そう、今夜出会った凛風は正にそういうタイプで一番怪しい。黒翔があれだけ懐いたのを見るに恐らく無理矢理従わされている可能性が高い。なんとか思いとどまらせたいが。以降、温泉での密会は続き、字の読み書きができないという彼女に驚き、翌日には筆や紙、手習い書一式プレゼントしていた。何をやっているんだ、皇太后から見ればうまい事ハマってくれたとほくそ笑んでいるに違いない。そんな最中、凛風が他の妃たちから酷い虐めを受けていると聞きつけ、暁嵐は初めて閨に呼ぶ妃を指名。呼ばれたのが100の妃・凛風だったことに後宮は騒然とし、当の本人は絶望を味わった。ついに決行するしかないのか。いざ、皇帝の寝所に行くとそこにいたのはあの青年で・・・。恐ろしさと罪悪感もあって一度も皇帝の前で顔を上げられなかった凛風は、その正体にビックリ。それ以上に密かに想いを寄せていた彼を自分が殺さねばならない運命の皮肉を呪っていました。しかし、飽くまで彼女の立場を守るために寝所に呼んだ暁嵐は一緒に寝るだけで手は出さず。おかげで簪を突きたてずに済んでいるものの、心は苦しいばかり。一方、暁嵐は彼女の健気さに心惹かれていたのを認め、皇后にするなら凛風だと決めていました。でも、その前に彼女を思いとどまらせ、皇太后からの命令だと証言を取らなければならない。これを機に敵を排除する。そうすれば彼女の憂いも晴れるだろう。秀宇の調べで、凛風の実家と皇太后の繋がりは判明。この辺りからどう崩していくかと思案中、しびれを切らした皇太后から皓然の身柄を預かっている。弟を殺されたくなければ速やかに計画を実行せよとの命に凛風が下した決断は・・・。って感じの展開です。結局、凛風は暁嵐を殺すことは出来ず、自らの喉を刺して偽の合図を送り皇太后と輝嵐をおびき出します。彼女の悲痛な覚悟を見て暁嵐は激怒し、彼らを処罰。郭家も罪に問われ貴族責を剥奪。凱雲は死刑となり、継母も皇后への過去の虐待と暴言の罰を受け暁嵐から声を奪われる罰を受けるのでした。正直、継母の罰は軽すぎる気もしましたが、凛風も厳罰は望んでいなかったから落としどころとしてはこんなところなんですかね。凛風は暁嵐の力で一命をとりとめ、皓然は秀宇の弟子となって皇帝の補佐官を目指し勉強すると宣言。その後、回復した彼女と皇帝の仲睦まじい様子が描かれて物語は幕。割と終盤まで絶望的な状況だったので、大団円で終わって良かったです。ヒロインのドアマットぶりがヒーローの性癖に刺さりまくってたのも功を奏してたわけですが、皇太后も二人が出会うよう色々根回ししてたのが徒になりましたね。評価:★★★★★
2024.08.26
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2024年7月刊フロースコミックスどんな手を使っても、私は生き残ってみせる──!自宅でラーメンを作っていたはずが、気がつくと普通のOLから、小説のモブキャラに憑依していた!?しかも、宮廷のあらゆる男を虜にしてしまう魔性の美男子・ユルーゲルが登場するBL小説で虐げられている王妃のメイド・アスとして…。この異世界で生き抜くことを誓ったものの、アスを待ち受けていたのは、冷酷な国王からのある命令で──。ハードモードなメイドライフファンタジー、第1巻! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アス=王妃宮で働くメイド。 とある事件をきっかけに王子の乳母に任命される。ユルーゲル=エバンスが寵愛する青年。 エバンス=国王。 王妃=エバンスから蔑ろにされている。 ミオ=王子付きの護衛。ふと気が付くと出産真っ最中の王妃の部屋に控えるメイド・アスになっていた主人公。今の今まで私はインスタントラーメンを作っていたはず。産まれたのは王子で、後処理で忙しない王妃宮で彼女は右往左往。でも、気になるのは現在の自分の姿。同僚に頼んで少しの間だけ抜けさせてもらい化粧室に飛び込んだ。鏡に映るのはメイドの制服を着ている慣れ親しんだ自分の顔。子どもの頃からファンタジー小説に夢中になっていたアスは、その後、異世界ものにどっぷりハマった。いつか私も異世界転生して第二の人生を満喫するのだ。だが、そんな彼女もアラサーになり、憧れもいつか忘れかけていた。翌日目覚めてもアスのまま。私は本当に異世界転生してしまったのか。それから10日ほど経ったある日。世継ぎの王子を産んだというのに、男の愛人に現を抜かす国王から蔑ろにされている王妃の姿を見たアスは以前読んだBLファンタジー小説「脱出記」の一文を思い出した。国王エバンスにその愛人ユルーゲルとは「脱出記」のメインキャラではないか。しかも、この小説は登場人物の死亡率が異常に高い。アスなんて名前に覚えが無いのを思うとモブの一人だと推察できる。故に自分も死ぬ可能性があると言うことだ。憧れの異世界転生であっても早々に死んでは意味が無い。それに、元の世界に帰れる手立てがあるかもしれないし。アスはなんとしても生き残ると決意した。王妃宮では泥棒猫と陰で呼ばれ、虫のように嫌われているユルーゲルは、何を考えているのか毎日のように王子に会いに来る。日に3回、母乳を与えている王妃だったが、思う所があるのかそれ以外我が子を寄せ付けない。下手をするとユルーゲルの方が実の母親に見える程だ。暫くして王子付きの護衛騎士・ミオがやって来たが、王宮に比べればここは静かなもの。だが、そんな時に事件が。王子の乳母が黒魔術師と内通していた罪でエバンスに処刑されてしまい、宮は騒然。しかも、たまたまその場にいたアスが次の乳母に決まったのだ。子育て経験のない自分が乳母なんて無理ですとメイド長に訴えたものの、王命は絶対と取り合わない。そして、彼女は再び思い出したのだ。王子を育てた年若い乳母の存在を。作中で名前こそなかったが、それがアスだったのでは。幸い、その乳母が死んだと言う記載はなかった。ならば自分は最後まで無事なはず。そして、今後の展開では両親から無関心な扱いを受けているこの可哀想な王子は、いずれユルーゲルに心酔したミオから王妃の悪評を吹き込まれ母を憎むようになる。でも、そんなことはさせない。私が王子様を良い方に洗脳してやる。お父さんの方がクズ男だったのよ、と教えてあげるのだ。かくして、アスの乳母生活が始まって・・・。海外で3000万ビュー超えの人気作ですが、こちらも漸くコミックス化。現在141話まで更新されていています。展開的にそろそろクライマックスかな?まだ1巻なので登場人物も出揃っておらず、メインヒーローのクラインの登場も2巻から。あれ?こんなに遅かったっけ?そして、序盤はかなり淡々とした展開のため、退屈に感じる方もいるかも。ここを乗り越えたら本当に面白くなるので。原作では悪役側に付いてしまうミオもアスと交流を重ねて行くうちに良い友人、心強い味方になり、ヒーロー・その3ポジに。その2である魔法使い・シエルが出てくるのは3巻以降かなぁ。(この辺り、ピッコマで読んだのがかなり前だからうろ覚え)個人的にはメインヒーロー・クライン推しですが、結局アスは誰とくっつくのか。こちらも全16巻くらいになりそうだから、本当に年に2冊は確実に出してくれるよう祈ってます。
2024.08.25
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2024年8月刊マーマレード文庫著者:若菜モモさん一人息子の陽向を訳あって秘密で産み育ててきた涼香は、子供を産んでから“あやかし”の姿が視えるようになり、彼らから身を隠すように生きてきた。ある日、あやかしに襲われる涼香を救ったのは、美麗な陰陽師であり陽向の父親でもある尊成だった。子供の存在を知った尊成は涼香と陽向を家に迎え入れるが、転生の記憶を持つ彼には前世から待ち続ける想い人がいるという。一方、涼香はあやかしから「鬼姫」と呼ばれることに困惑。尊成の前世とも関わりがあるようで!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 山本涼香=弁当屋で働きながら一人息子を育てるシングルマザー。黒河内尊成=表向きは大手不動産会社のCEOで裏では陰陽師の棟梁を務める。 陽向の父親。 羅鬼=涼香を付け狙う鬼のあやかし。長らく封印されていた。 山本陽向=涼香と尊成の息子。高校3年生の時に事故で両親を亡くし、一人残された涼香が地元の商店街にある弁当屋で働き出してから3年経つ。常連客からの好意で福引券を譲られた彼女は見事に特賞を当て、宿泊プラン付きの京都への旅行券を当てた。休暇を貰って二泊三日の旅に出掛けた涼香は、そこでミステリアスな雰囲気の美青年と遭遇。時間としてはごく短い邂逅だったけれど、何故かその青年のことが気になって仕方ない。翌日、道に迷って人気のない路地に出てしまった彼女は、美しいけれど恐ろしいと言う印象の男に襲われた。その際、怪しげな液体を飲まされた涼香は動けなくなり、間一髪のところを昨日の青年によって助けられた。逃げた男の頭には角が生えていた。まさか鬼?しかし、そんなことより先程飲まされた液体のせいか、体が熱くて仕方ない。青年は媚薬を飲まされたか、と渋い顔。幽世聖の媚薬は抜けるまで地獄の苦しみを味わう、彼は涼香を救うため彼女に請われるまま、その身体を抱いたのだった。翌朝目覚めた彼女は自らに起こった出来事を思い返して茫然。でも、あんなに苦しかったのに今はスッキリしている。横で寝ている青年を起こさぬよう身支度を整えると世話になった礼と感謝を綴った手紙を置いてその場を去った。東京に戻り、普段と変わらない生活をして2ヶ月ほど経った頃、急な吐き気に襲われ早引けした。最初は胃炎かと思ったがもしかしてと産婦人科を受診。やはり妊娠していた。心当たりならある。父親はあの恩人の青年だ。しかし、天涯孤独だった彼女にとってこの子は新しい家族だ。産むことを決めた涼香は弁当屋の社長夫婦のサポートを受け、後に長男・陽向を出産。陽向は成長が早く手間もかからない子だった。1歳にもならないのに既に片言で言葉を話し、伝い歩きまでし始めたので社長夫婦も驚いていた。そして、涼香にもある変化が。陽向といるときは大丈夫なのだけど保育園に預けていたり離れた時には街中に潜むあやかしの姿が見えるのだ。あの鬼に襲われるまではそんな存在信じもしなかったろう。だが今なら判る。人間に紛れている彼らは大抵は無害だが悪さをする者もいる。大抵は見えているぞ、と視線を向ければすごすごと逃げて行くのに、今日のあやかしはいつもと違った。凄い力で腕を掴まれ「羅鬼様の元へ連れて行く」と言われ恐怖を覚えた。そこを助けてくれたのは20代後半に見えるスーツ姿の女性。そして女性の援護をするよう現れたのはあの青年ではないか。彼の放つ気であやかしは消え、二人は1年半ぶりの再会を果たしたのだった。陽向を見て、自分と同じ霊力を持つとして彼・黒河内尊成は自らの子だとすぐに判ったようだ。なら尚更羅鬼に狙われている涼香を放っておけないと黒河内邸に連れ帰った。彼の家は代々陰陽師の家系で、尊成は現当主だと言う。先程助けてくれた女性も分家の者だそうで、今後、涼香たちの護衛に付くと聞かされその情報量多さに頭はパニック。そもそもどうして羅鬼なんてのに狙われるのか。尊成の話では千年ほど前に彼の先祖が羅鬼を封じたそうなのだが2年ほど前にその封印が解けてしまったらしい。そう、まさしく涼香が京都で襲われた頃だ。彼女を狙う理由はまだ不明だが、その頃から若い女性の連続殺人事件が起こっている。力を貯めるために定期的に女を襲っているのだろう。この屋敷には結界があるから安全だとして暫く厄介になることに。だが、居候して数日経った頃、尊成からプロポーズされた涼香はビックリ。理由を尋ねれば、陽向は俺の子だからだと言い、親子はともにいるべきの言葉に内心がっかり。それでもその通りだとは思う。陽向の為にも父親は居た方が良い。モヤモヤとするもの抱えながらその頃から彼女は夢を見始めた。着物を着た見知らぬ女性と尊成によく似た狩衣姿の青年。二人はどう見ても恋人同士で仲睦まじいい会話を交わしている。何故か、涼香の意識は女性とシンクロしており彼女は混乱。夢は毎夜見る訳でなく、内容が繋がっているわけでもない。それでも、会話で判ることは二人はロミオとジュリエットのように決して結ばれぬ関係だと言うこと。こんなに好きなのに私は鬼族であなたは人間の陰陽師。許されぬ恋に涙する女性の気持ちがダイレクトに伝わって来て胸が痛い。もしかしてこれは前世の夢なのだろうか。この頃になると力が戻りつつあるのか、羅鬼からのコンタクトがあって彼女に決断を迫って来た。お前が俺の元に来るなら女を襲うのは止めてやると。悩んだ涼香はある決意を固めて、羅鬼の住処へと一人で出向き・・・。転生+シークレットベビー+陰陽師という色々な要素てんこ盛りの今作。ぶっちやけ、好みが別れそう。好きな人には刺さるけど、って感じのテイストです。ヒロインとヒーローは前世で恋人同士でしたが、前述の通り敵対する者同士で、周囲から反対される仲。ヒロインの前世である鬼姫・伽耶は元々羅鬼の許嫁だったものの、人間と事を荒立てたくないと言う彼女の父を羅鬼が殺害。人間界を蹂躙すべく準備を進めていましたそれを尊成の前世・周防に阻止され封じられていたと言う筋書き。伽耶はその際、周防を助けようと羅鬼に一矢報いるも反撃を食らって亡くなってしまいます。周防は嘆き悲しみ、彼女と再び会える日を何度も転生して待ち続けるも、鬼との恋を咎められ罰として伽耶に遭っても判らぬよう、陰陽守に呪いを掛けられた彼は千年後に涼香と出会います。心優しい彼女に心惹かれプロポーズしたのものの、あの言い方じゃ色々誤解されるよ、と思ったり。強キャラ感出してた割に、羅鬼があっさり負けたのはページ数の都合かな。陽向の護衛を務めていた狛犬兄弟(表紙のわんこたちです)風雅と雷雅が癒しでした。評価:★★★★☆
2024.08.24
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2024年8月刊フロースコミックスエルパーサ国の王女でありながら奴隷出身のベアトリーチェは夫の裏切りによって、帝国の捕虜となってしまう。なんとか生き残ろうともがく中、腹違いの王女が無残に殺される光景を目の当たりにしたことで、自身の正体を隠しながら、奴隷・クロエとして生きていくことを決意するが──!?正体を隠す王女と孤高な騎士のラブロマンス第1巻!! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 クロエ=エルパーサ国の王女・ベアトリーチェ。 国が滅ぼされ捕虜になった後に奴隷の身分に落とされた。アレクサンドロス=帝国の騎士団長。クロエの正体に気付かず興味を持つ ギルバート=エルパーサ国宰相でベアトリーチェの夫。エルパーサ国の王女・ベアトリーチェは、数奇な運命の持ち主だった。若くして亡くなった漢方医の記憶を持ったまま異世界転生を果たし、知識を生かして薬屋の奴隷として働いていた彼女は、ある日自分がエルパーサ王の庶子であると知らされ王宮へ。そんな最中、王の友人である宰相・ギルバートが王女との結婚を希望。しかし王は嫡子である王女二人を嫁に出すことを渋り、結果庶子のベアトリーチェに白羽の矢が立った。彼女は降嫁を命じられギルバートに嫁いだが夫はとんでもないサディストで、ベアトリーチェはその暴力に怯える日々。結婚して1年ほど経った頃、ギルバートはノステロス帝国に寝がえり、エルパーサ城は陥落。王は首を取られ、城に居た王族は皆惨殺された。ギルバートの屋敷にいたベアトリーチェは無用な殺生を止めさせるために自ら投稿。死を覚悟したが、指揮官であるアレクサンドロスは純血の王族でない上に黒目黒髪の彼女にはエルパーサ王族特有のプラチナブロンドの子どもは産めないと考え、戦争捕虜として帝国へ連れ帰えることに。国を裏切ったギルバートは褒賞として帝国から元エルパーサ国の地を領地として貰い、その領主に治まることになったのだが、妻の安否を全く気にもしないギルバートにアレクサンドロスは不快感を覚えていた。帝国に着いたベアトリーチェは、結局下級奴隷になることが決定。その際、加虐趣味のある騎士に目を付けられたことを機に、長くのばしていた髪を短く切ってイメージチェンジ。薬屋で働いていた頃の名・クロエと名乗るように。前世の記憶も相俟って彼女は配属された医局の薬草棚に興味津々。ついつい、雑多な棚を整理し片づけたことを看護課副院長のホルヘに怒られ罰を受けるが、薬草の知識と文字の読み書きができることが評価された。ホルヘの元で働き始めた彼女はある日、誤って毒草を食べ治る見込み無しと殺処分が決まったアレクサンドロスの愛馬・ハウルの治療を頼まれ・・・。海外で3800万ビューという人気作がついにコミックス化。この巻ではベアトリーチェ(クロエ)と、色々めんどくさい男・アレクサンドロスとの出会いが描かれています。今更新してる最新話(134話)では熱々な二人ですけど、今回改めて最初から読むとまー、その片鱗が全く見えないのが笑える。この頃はまだアレクサンドロスもベアトリーチェ=クロエとは気付いてないので、おもしれぇ女程度の興味しかない。大切な馬を本当に救えるというならやってみろ、と彼女の力量を試すのでした。1巻には0話から~13話までを収録。多分、14~15巻くらいまで行きそうなので出来れば年に2、3冊は発行して欲しいですね。
2024.08.23
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2024年2月刊蜜猫文庫著者:あさぎ千代春さん美貌の有能宰相リュシアンの侍女である男爵令嬢のビアンカは病気の父に死ぬまでに孫が見たい、と言われ悩んでいた。話を聞いたリュシアンが「僕がお母さんにしてあげましょうか」とまさかの求婚。すれ違いもあったが二人は結婚をし、甘く蕩けるような蜜月を堪能する。幸せの最中リュシアンが王命を受け他国へと旅立つ事に。しかし帰国の日になっても彼が帰ってこない。事件の可能性を考え、ビアンカは彼を捜しに行く事に!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ビアンカ=貧乏男爵の娘。困窮する家の為に王宮で働いている。 リュシアン=宰相。利害関係の一致でビアンカに求婚する ランベーズ=ネルキア国国王。事業の失敗により没落してしまったシエルラ男爵家。父は体を壊して、ほぼ寝たきりになってしまい、家計を支えるために一人娘のビアンカは3年ほど前から王宮で侍女として働いていた。働きが認められ、有能宰相として有名なリュシアン付きの侍女になってからは給金も上がって益々張り切る娘に、父はデビュタントもしてやれなかったと詫びた。そんな父から、「生きている間に孫の顔を見たい」と言われ、ビアンカは思い悩むように。なにせシエルラ家は生活するだけで精一杯。父の希望は叶えてあげたいけれど、結婚するには花嫁側も持参金という名の大金を用意しなければならない。社交界デビューもしていないので縁談の打診も無いし、運良く身一つでも良いと言う話が来ても親より年上の貴族の後添えだったりするので逆に父が心配しそうだ。仕事は完璧にこなしてはいても、いつもと様子の違う彼女に気付き、リュシアンが理由を尋ねると、病気ですっかり気落ちした父から孫の顔が見たいと頼まれまして、と正直に話すと彼は少し考えこんで、では僕と結婚しますか?と告げられビアンカはビックリ。20年前、前王の圧政で傾いていたこの国を、現国王・ランベーズと共に見事に立て直したリュシアンはその働きで伯爵位とガルシアの領地を賜った。侯爵家の次男でもある彼は引く手あまたで縁談の話も数えきれないほどあったそうだが、そんな暇があるなら、未だに残る前王の負の遺産を一つでも失くすべきと取り合わず、38歳になる今でも独り身だった。そんな彼がどうして貧乏貴族の娘と結婚を?聞けば、流石に40手前にもなって女の影も無いリュシアンのことをランベーズが心配し、結婚をせっついたのだと言う。いつもの調子で跳ね除けたら、言うことを聞かないならお前の花嫁候補を集めた舞踏会を毎週開催すると脅され、結婚に本腰を入れると約束せざるを得なかったと言う。その話が出たのが昨夜のこと。そして先程ビアンカの悩みを聞いてここに相手がいたっと思ったらしい。彼女は真面目で性格も良いし細やかな気遣いも出来る。少々歳の差はあるが貴族社会の結婚では別段珍しくも無い。「僕が君をお母さんにしてあげます」リュシアンはそう言って微笑んだ。何の冗談かと思ったが、よくよく思えば真面目一辺倒の彼がそんな冗談を言うはずもない。10日後、シエルラ領までやって来たリュシアンはビアンカと結婚したいと父に挨拶。父は宰相閣下がうちの娘を妻に望んでくださったと泣いて喜んでいて、ビアンカもリュシアンに感謝していた。多分、利害関係が一致しての契約婚みたいな関係になるんだろうけれど、それでも彼に精一杯尽くそうと決意。侍女の仕事は辞職し、王宮近くの邸で暮らすことになったビアンカ。急な事だったので、ガーデンパーティーを開き、それを披露宴代わりにした。気になっていたリュシアンの父・ファルケ侯爵からも歓迎されホッとしたのも束の間。いよいよ初夜を迎え心臓はバクバク。元々、父に孫の顔を見せたくて決めた結婚だ、夫婦の営みは避けて通れない。しかし、その容姿から百戦錬磨だと思われたリュシアンは妙に焦っていて、見かねて手を貸そうとしたビアンカに触られた瞬間に爆発。初夜は失敗に終わってしまった。以降、リュシアンは仕事を理由に帰ってくるのはいつも午前様。まさか、あの夜のことを気にして顔を合わせたくないのかと、彼と関係を深めようと疲労感を無くすためと称しオイルマッサージを少々強引に施したが、リュシアンは赤面するばかりでビアンカの顔をまともに見ない。これはまさか嫌われた?落ち込む彼女に僕は悪くないと意地を張っていたリュシアンは自らの過去を思い起こしていた。ファルケ侯爵の亡き妹・アニエスの子という体で侯爵家の養子になった彼は、実は教会で育った孤児だった。高級娼婦だった実母が彼を産んで姿を消し、3歳まで教会にいたが、実子を突然死で亡くしたアニエスが精神を病み衰弱して行くのを心配した侯爵が甥に似たリュシアンを引き取った。アニエスは彼を息子と思い込むことで一時持ち直し、その後眠るように息を引き取った。お役御免かと思われたリュシアンはその後ファルケ侯爵家の養子になり、その類まれな頭脳で今の地位まで登り詰めたのであった。アニエスの子であるリュシアンであれ。それは3歳の頃から自らの心に課していたこと。だから自らの行動はいつも正しいし失敗はあり得ない。初夜が上手くいかなかったのはビアンカが余計な事をしたからだ。だが、段々その考えが揺らぎ始めている。新婚旅行先で喧嘩し、離婚の危機と流石に慌てた彼は意を決して自分が童貞だとビアンカに打ち明けた。いかにもモテそうな彼が童貞?彼女も驚いていたけれど、ならお互い初めて同志、一緒に勉強しましょうというビアンカの言葉に納得。その夜、二人は漸く初夜に成功したのだった。蜜月を過ごす二人。だがいつも自分が先に終わってしまうこと、なのに毎日彼女を求めてしまうと言う相談にランベーズも困り顔。なら一旦距離を置いてみろ、とリンデ公国から依頼された講師の話を受けることに。期間は一ヶ月。それくらいあれば頭も冷えるのでは。たった一ヶ月、耐えられないはずがない。そう高をくくっていたのも束の間、2週間もすると屋敷に帰りたくて仕方ない。だがあともう少しの我慢。いよいよ明後日には帰国となった日、恩師でもあるエーリクからある話を聞いた。40年近く前、大公のお気に入りの愛人であった高級娼婦が身重のまま姿を消したこと、君が小指にしている指輪は彼女が大公から贈られた希少な鉱物で作られたものだと聞いた彼はここにきて自分の出自を知らされたのだ。やけにしつこく講師に来てくれと依頼があったはずだ。彼はその容姿と指輪から素性を調査されていたのだろう。大公も大病を患って退位が決まり、アルフォンスという公子が戴冠する予定だ。大公は優秀なリュシアンにその補佐をして貰いたいと希望しているそうで、彼をネルキアに返すつもりはないとのこと。思いもよらぬ事態に帰国できなくなった彼を心配したビアンカはランベーズの手を借りてリンデ公国に潜り込み・・・。頭は良くても色々不器用なヒーロー・リュシアンの方が主人公ポジかな?って印象の今作。38歳にて自らの出自を知っても、彼はどうあってもファルケ侯爵家の次男で、ネルキア国の宰相。本当の家族が見つかったのは嬉しい、異母弟のアルフォンスが自分を頼ってくれるのも。でも、自分の居場所はビアンカの隣。早く妻の元に帰りたい。悶々とする彼を救うためにビアンカは大公の城に潜入し、図らずも夫の出生の秘密を耳にしてしまいます。何が彼の幸せなのか。思い悩む彼女はそれでもその本心を聞きたいと、大公家主催の舞踏会に出席。そこで漸く会えたリュシアンは、持ち前の頭脳で大公の顔を潰すことなく国交間の関係にもひびが入らぬような策を実行するのでした。企みは上手く行き、ビアンカ共々帰国したリュシアンが、妻との新婚生活を満喫している様子が描かれて物語は幕。色々めんどくさい人でしたが、頭が良いからこそかなと思ったり。評価:★★★★☆
2024.08.22
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2020年4月刊ロイヤルキス著者:泉野ジュールさん長く囚われの身だった王女リアを救い出したのは、侵略王と恐れられる大国カリアーノの国王オルガートだった。心に傷を負ったリアを慈しみ、優しくいたわる彼に、次第に惹かれていく思いが止まらない。愛されることでみるみる美しく輝いていくリア。惹かれ合う二人の思いはある日、ついに決壊し……「君を抱く夢を何度も見た。わたしは……君を愛し尽くす。誰にも渡さない」若き覇王の手で花開いたリアは、甘美な快楽を教えられ何度も彼の楔に貫かれて絶頂を味わう。「いつか、この床の上でも君を抱く。この安楽椅子の上でも。様々な場所で、あらゆる体位から」征服王に見初められて愛される、ドラマチックラブ! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リア=サバン王国王女。 異母兄に疎まれ長らく地下牢に閉じ込められていた。 オルガート=カリアーノ王国国王。リアを救い出し自国へ連れ帰った。 アルセン=サバン王国国王でリアの異母兄。 ライトン=サバン王国騎士団長。後にオルガートに仕える。その日、サバン王国はオルガート率いるカリアーノ軍に制圧された。無謀な戦を仕掛けて真っ先に逃げ出した国王・アルセンは、早々に囚われカリアーノの騎士が首を取ったと報告を受けている。オルガートは無用な殺生は望んでおらず、投降した騎士達に温情を掛け、今後忠誠を誓うなら、自国で雇うと宣言。だがその前に遺恨を残さぬよう他に王族は居るのかとサバンの騎士団長を務めていたライトンに聞けば、どうかリア様だけは助けてほしいと懇願して来た。どうやら国王から疎まれていたと言う王女が地下牢に長らく幽閉されているらしい。オルガートが一先ずリアを連れて来るよう自国の騎士に命じると、やがて現れたのはボロ布を纏う薄汚い少女だった。ライトンの証言で国王の異母妹のリア王女に間違いないと言う。家臣や使用人、騎士ならばいくらでも目溢してやれるが、王族となるとそうはいかない。しかし長い間、兄から不遇な扱いを受けていた様にも見えるしライトンから助命嘆願もされているので、オルガートは彼女に現状を説明して聞かせた。王族は戦争の責任を取らなければならない。幽閉生活で碌に喋れなくなった少女に自決を迫るのは気が引ける。そして長い前髪から除くその美しく青い瞳に彼は目を奪われた。重臣たちが煩そうだが、オルガートはどうにもリアが放っておけずに彼女を戦利品として自国へと連れ帰った。カリアーノ王国に戻ったオルガートは、侍女達に命じてリアを手厚くもてなすよう指示。世話を任された侍女のマーサは汚れを落としたリアの肌の白さとその美しさに驚き、身体中に残る鞭の痕に胸を痛めた。広間に現れたリアに皆驚愕していたが、やはり敗戦国の王女への視線は冷たい。アルセンから受け続けた虐待のせいで酷い吃音がある彼女は侮られ、内心では悔しい思いをしたが、そんな重臣たちを諫めたのはオルガートだった。そしてリアを賓客として扱うと宣言。今後、彼女に無礼を働く者がいれば厳重に処すとまで言われた臣下たちも渋々従った。オルガートが何故自分にここまで破格な扱いをしてくれるのか判らない。ただの同情?専属の侍女となったマーサはリアを未来の王妃とでも思っているのか、オルガートからの寵愛を自分のことのように喜んでいる。こんな醜くて頭の悪い私などがあの方の王妃になどなれるはずがない。アルセンからの暴言は彼女を自己否定の塊に変えてしまっていた。そんな彼女の卑屈な言葉を一つ一つ否定し、そうではない君は美しく賢明だとオルガートは諭す。気難しい荒れ馬のアスタロトに懐かれたおかげで、その話題から彼との距離も大分近付いた。オルガートはリアへの好意を隠しもしない。さすがにそこまで鈍感では無いので反応に困るが、ある日のこと、食堂で事故が起こり熱いスープを浴びそうになった使用人の子どもを身を挺して救ったリアの評判は爆上がり。未だ渋い顔をしている貴族もいたが、彼女こそ王妃に相応しいという声が上がり始めた。その頃にはオルガートからも俺の妃になってほしいと告げられていたけれど、自分など相応しくないとリアは思い悩むように。彼女自身、オルガートに心惹かれていたため、そう言ってくれるのは本当にうれしい。彼から根気よく説得されても中々頷けずにいた。余り追詰めてもと、案じた彼からの提案で気晴らしにアスタロトで遠乗りに出掛けた二人。美しい湖と森林に癒されたリアだったが、そこで彼女は死んだはずの兄・アルセンと再会。攫われかけた所を間一髪オルガートに救われた。首を取ったはずのアルセンが生きていた。以前、ライトンからアルセンは用意周到で臆病な性格だから影武者を用意しているかもしれないとは言われていた。なので、一応警戒はしていたのだが、リアに接触してくるとは。そもそも兄妹の父である先王はリアを後継にと考えていたらしい。寵愛していた第二王妃の娘というだけでなく何より聡明だった。もしや、先王は病死ではなくアルセンに殺害されたのでは?直後にリアを迫害し始めたのを思えば納得が行く。とにかく、異母妹のことが気に入らないアルセンが今後もリアを狙ってくる可能性が高い。彼女の身を案じたオルガートはライトンとカリアーノが誇る騎士・オーガストスにリアの護衛を命じ、彼女には火縄銃の扱いを教え込んだ。もしもの時はこれで身を守れと。兄との遭遇により、何か吹っ切れたのかリアはオルガートからの言葉もあって彼の求愛を受け入れ、客間から王妃の部屋へ居を変えた。まだ妃になる決心はつかないが兄と決着が付けば一歩を踏み出せるはず。火縄銃の練習に打ち込み、吃音の方も大分改善した。リアに不満がある貴族の嫌味にも対応した時はオルガートから称賛され自信もついたように思う。そんな最中、長雨により土砂崩れが頻発していた地域に視察に出掛けたオルガートが襲撃に遭い・・・。護衛の騎士が怪我を負った挙句人質に取られたオルガートは潔く投稿。襲撃して来たのはアルセンとその部下達でした。オルガートを捉え、それを餌にリアをおびき出そうとするアルセンにほとほと呆れた彼は、先王はリアを推していたんだろう?とかねてより思っていたことを聞くと、予想は大当たり。容姿も頭も良くないアルセンは妹にずっと劣等感を抱き疎んでいました。ある時、父が法律を変えてでもリアを王位につけるつもりだと言う意見を聞き、彼は父の暗殺を決意。薬を盛って先王を殺害し、聡明な妹に難癖付けて地下牢に幽閉したのでした。でも、王位を継いだ自分が無能で良かれと思った政策は空振りばかり。侵略戦争もライトンから散々止められたのにも耳を貸さず無理矢理決行して挙句カリアーノに返り討ちに遭ってしまった。何もかもうまくいかない。自分の無能を棚に上げ、アルセンの怒りは妹に向かう。オルガートはそんなことを言っていると返り討ちに遭うぞと彼を挑発。怒り狂い、オルガートに剣で切りつけようとしたアルセンはアスタロトに乗って駆け付けたリアの火縄銃で胸を打ち貫かれるのでした。アルセンは最後の最後まで妹への妬みと恨み言を言っていましたが、そんな兄をリアは静かに看取ります。この事件後、王妃になる決意をした彼女はオルガートの求婚を受け入れ、エピローグでは3人の子宝に恵まれ、幸せそうな家族の様子が描かれて幕。アルセンのひん曲がった性格、凡才なのにプライドだけは高い様子に先王は早々に見切りをつけてたんだろうなぁ。それが許せないとリアに酷い仕打ちをしていた兄は、結局その報いを受けることに。予想はついてたけど、らしい顛末でした。評価:★★★★★王道の貴族TLが好きな方におススメ。
2024.08.21
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2020年6月刊マカロン文庫著者:佐倉伊織さんスポーツメーカーで働く真尋。仕事に一生懸命で恋愛とは無縁の日々を送っていたが、ある日密かに思いを寄せていたエリート外科医の慶治と出会う。普段は大人な彼なのに、ふたりきりになると「お前のこと、ほかの医者に頼みたくなんかない」と独占欲を発揮。付き合っているかのごとく甘い言葉を重ね、そしてキスを仕掛けてくる。彼の激しい求愛攻撃に翻弄され、たじたじになる真尋。「お前じゃないと満たされないんだ」ーー一途な気持ちを露わにする慶治に、真尋も気持ちを抑えられなくて…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 青野真尋=元カレと思わぬ形で再会し復縁を迫られる。 日高慶治=優秀な外科医で真尋の元カレ。日高佐知子=慶治の継母。スポーツ用品メーカーの営業として働く真尋は、別れた恋人のことが忘れられなくて新しい恋に踏み出せずにいた。そんな彼女を見かねて同僚で友人の智花は、合コンをセッティングし無理矢理参加させた。気にかけてくれるのはありがたいけれど、こと恋に関しては彼以上に好きになれる人なんていない。合コンでは今村という感じの良さそうな人とそれなりに会話も弾んだが、さっきからどうも体調が悪い。数日前から微熱が続いていたし風邪でも引いたか。それに鳩尾も痛み出してついに吐き気まで。智花に具合が悪いから先に帰ると告げ、自宅への道を急いだが突然の腹部の激痛に真尋は意識を失って昏倒。目を覚ますと地元の総合病院だった。ストレッチャーに乗せられ運ばれていた真尋を驚いた顔をして見ている若い医師。慶治くん、と思わず彼の名を呼ぶと、俺が診ると言って処置室に入って来た。そうか、ちゃんと立派なお医者さんになったんだねと内心ほっとしたものの、あの別れの日を思い出す。一方的に別れを切り出した私を恨んでいるかもしれない。検査の結果、虫垂炎だと診断された。真尋の場合腹膜炎を起こしかけていて明日手術することに。執刀は慶治が担当すると聞いて驚いたが、俺は優秀だからと宣言する通り手術痕も最小限で治りも早かった。慶治は暇を見つけては真尋の病室を訪れ、軽口を言っては彼女を憤慨させ笑いながら去っていく。そんな態度にまるで以前の関係に戻ったかと勘違いしてしまいそうになる。そして退院の日、母が手続きを済ませてくれている間に慶治がやって来て、連絡先を教えろと言う。そういえば別れた後にすぐ電話番号もメアドも変えたんだっけ。でも、今回みたいな場合は不可抗力としてもう会わないとあの人と約束したのだ。いくらまだ好きでも私のせいで彼に迷惑を掛けたくない。どう思われようと頑なに連絡先は交換しなかったのだが、数日後仕事から帰宅するとアパートの部屋の前に慶治が立っていてビックリ。なんで?と尋ねると職権乱用と言っていたのでカルテに書いた住所を見たのだろう。梃子でも動かない彼を渋々部屋に通すと、この部屋は病院に近くて良いからちょくちょく泊まりに来ると言う。絶対にダメっ!と断ったが、翌々日に本当に来たので何を言っても無駄だと悟った。そういえば昔からこんな性格してたっけ。碌な食事もしていないと言うので夕飯まで用意している私は一体何をしてるんだか。もしあの人に知られたら約束が違うとあの時言われたことを実行するかもしれない。一緒にいちゃいけない。判っているのに慶治との時間が心地よくてもう来ないでと言えないでいる。一方、慶治はずっと忘れられなかった恋人・真尋との再会に浮かれていた。当時は父や異母弟の次晴にも心配される程ボロボロで、食事ものどを通らず引き籠っていた。なのに継母の佐知子はそんな長男を見て妙に機嫌が良く腹立だしく思ったのを覚えている。早くに母を亡くした息子を気遣い、昔からこの家の家政婦をしていた佐知子を妻に迎えた父。良かれと思っての再婚だったのだろうが佐知子とは折り合いが悪く、彼女もまた後に生まれた次晴だけを可愛がっていた。自分の態度も良くなかったとは思うものの、今思うと父が経営している病院をいずれ慶治に継がせたいと言い出してからだ、真尋に別れを切り出されたのは。まさかとは思うが、佐知子が何か真尋を脅すような真似をしたのだとしたら。迷惑がられても足繁く彼女の部屋に通い、それとなく尋ねてみたら案の定様子がおかしい。最近父の体調が思わしくなく慶治は職場を4日、実家の病院を1日と言った感じで掛け持ちしている。ある日、日高病院で最近佐知子が慶治の悪評を職員に言いふらしていると耳にし、いよいよ確信が持てた。やはり彼女に真実と本心を聞く必要がある。合コンで知り合ったと言う今村に先日傘を借りたからと出掛けた真尋のことが気になり、思わずその待ち合わせ場所に乗り込んだ慶治は、自らの想いを彼女に打ち明け・・・。今村から交際を申し込まれた真尋は勿論受け入れるはずがなく、ずっと忘れられない人が居るのでときっぱり断ります。今村も納得し、その場を去った後に慶治が乗り込んで来たので真尋もビックリ。でも、彼からずっとお前だけが好きだったと告げられ彼女も自らの想いを打ち明けます。その後、佐知子から何を言われたと聞かれ、ついに観念。交際していた時から慶治が父親を尊敬し、いずれ跡を継ぎたいと常々聞かされていた真尋。結婚の話も出始めた頃、佐知子に呼び出され慶治と別れないと彼に後は継がせないと脅されたのです。悩んだ末に、彼の努力を間近で見ていた真尋は身を引く決意をし、別れを告げたのでした。真相を聞いた慶治は激怒。継母と話しをつけると真尋を伴い日高家に帰った彼は、佐知子に事の真偽を言及。さすがにもう隠しておけないと白状した継母に、今までの自分の態度も良くなかったと謝罪。次晴の気持ちも伝えると漸く佐知子はどれだけ酷いことをしたのかと真尋に詫びるのでした。いくら出来の良い継子を邪魔に思ってたって、無理矢理恋人と別れさせるのはなぁ。いくら謝罪されて真尋はそれを受け入れたとて未来の姑がこんな人じゃ先が思いやられる(^_^;)私なら仲良く出来ないし、義実家と距離置くかも。その後、慶治から正式にプロポーズされ、数か月後真尋の誕生日に式を挙げた所で物語は幕。慶治の勤め先がこの作家さんのベリーズ、マカロンレーベルでおなじみの野上総合病院でした。それにしてもこの病院のドクターは皆さん結婚までに色々事情を抱えすぎな気も。評価:★★★★☆
2024.08.20
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2024年8月刊ベリーズ文庫著者:一ノ瀬千景さん甘えベタで仕事人間な美月。ある日火事に巻き込まれたところを、幼馴染の御曹司・晴馬に救われる。20年ぶりに再会した彼は、エリート消防士になっていた。お礼をしようとしたら「3か月限定の妻になってほしい」とまさかの依頼をされて!? 「素直に俺に甘えろよ」--偽りの結婚生活なのに、独占欲滲む晴馬の眼差しは美月をとらえて離さない。時に甘く時に強引な彼の一途愛が溢れ出し…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 羽山美月=ホテルコンシェルジュ。恋人と職を失い途方に暮れていた。 過去のトラウマで火が苦手。 北原晴馬=エアハイパーレスキュー隊員。美月の昔馴染み。北原善次郎=晴馬の祖父。ホテルでコンシェルジュとして働く美月は、俗にいう仕事人間。同じ職場で働く恋人・只野省吾からは結婚したら家庭に入ってほしいと言われているけれど、ホテルで働くのが夢だった彼女にとってそれは到底受け入れられない提案だった。俺との結婚より仕事の方が大事なのかよ、と省吾は不貞腐れて最近はデートにも誘ってくれない。そろそろご機嫌取りしておくかなと思っていたら、なんと彼は朝のミーティング終りに自らの結婚を発表。しかもお相手は美月ではなくフロントの新人・本間由奈と聞いて茫然。おまけに由奈は妊娠中らしい。美月と省吾が交際していることは同僚は皆知っているので、大体の事情は察したようだった。二人が退室した後質問攻めに遭い、実は只野さんとは大分前に別れてたのと苦しい嘘を吐く羽目に。しかし、話はこれで終わっていなかった。由奈が美月からマタハラを受けたと上司に訴えたのだ。当然、そんなことはやっていないと抗議したものの、上は聞く耳持たず。鉄道事業の重役のお嬢様の由奈になんてことを、と逆にカンカンだった。内定していた神奈川支店への転勤とチーフの昇進の話も取り消され、挙句に退職まで促された美月は一流ホテルでも長い物には巻かれろ精神なことに心底腹を立て、じゃあ辞めますと宣言。業務引き継ぎもあるので辞めるのは来月末になるが、マタハラ疑惑のせいですっかり彼女の味方はいなくなり腫物扱いの日々。流石に腹に据えかねて由奈にどうして嘘を吐いたのかと尋ねれば、婚約者の元カノが同じフロント業務とか鬱陶しくて~、早く消えて欲しかったんですよねと宣ったので、開いた口が塞がらない。由奈の言葉に少なからずショックを受けた美月は、飲みたくなって最寄り駅近くのビルにあるバーへ。口当たりの良いカクテルでほろ酔いになっていると火災報知器の音が響き渡ってビックリ。見ると通路向かいの焼き肉店の調理場から炎が吹き上がっていた。避難する人々を横目に、炎を見てしまった美月は腰が抜けて動けない。母を飲み込んだ火。トラウマでガスコンロさえ点けられない彼女には刺激が強すぎた。意識を失いかけた美月を率先して避難誘導していた青年が気付いて支えてくれて思わず見上げるとそこには懐かしい顔が。晴馬、と呟くと彼女は意識を失った。目を覚ますと既に朝で、見覚えのない部屋。晴馬との再会は夢ではなく、意識を失った彼女を自宅で介抱してくれていたらしい。会うのは母が亡くなって以来だから20年ぶりか。母子家庭だった美月はカナダに住む母方の伯母に引き取られ長らくそちらに住んでいた。どうしても日本のホテルで働きたくて大学入学を機に帰国していたんだと話すと、道理で音沙汰が無かったわけだと彼も納得していた。晴馬とは小学3年生まで同級生で、母が家政婦をしていたお屋敷のお坊ちゃまであった。所謂昔馴染みという関係だが、疎遠になっていたのは母が亡くなったあの火事の時、母を助けに飛び込もうとしていた美月を彼とその兄に必死に止められたからだった。今思えば止めて当然なのだが、母一人子一人の彼女にとって母を亡くしたことがかなりの衝撃で誰かを責めずにはいられなかった。思わず大嫌いと叫んだことを後に死ぬほど後悔したものの、結局謝罪できぬままだった。昨夜、あんな状況で再会したのはなんという偶然だろう。晴馬の現状を尋ねると、彼はなんと消防官になっていた。主な活動内容はエアハイパーレスキューという、ヘリから降下して人命救助する隊員らしい。子供時代にはお父さんの会社を継ぐと言っていたのに、どういう心境の変化で?と何の気なしに聞くと消防官になりたいきっかけがあったんだと言う。それに家は長男が継ぐから問題ないのだそうだ。昨夜は、非番で食事をしにあのビルに行ったら火災が起きたので、避難誘導を手伝っていた所、倒れそうな女性を見つけそれが美月だと気付いて心底驚いたと言われ、今更ながらお礼を言った。案外近所なのが判ったので、今度何か奢るからと連絡先を交換しその日は別れた。相変わらず針の筵状態の中、淡々と仕事をこなし帰宅途中に省吾に呼び止められた。彼は由奈とは金目当ての結婚だから、良ければ内緒でこれからも会おうと不倫相手に誘って来たので、美月も激怒。もみ合っているといつから聞いていたのか晴馬が割り込んで来て俺の婚約者に何するんだと一喝。芝居と気付いて美月も話を合わせると省吾は不服そうに立ち去ったが、タイミングの良い晴馬の登場に感謝した。どうやら、晴馬は親族が集まる会合でこのホテルの会議室に来ていたようだ。彼も休暇だというので呼び出しが無ければ付き合えるとあの日のお礼に食事に行くことに。とんでもない高級店を指定されビビっていると、今日は俺が払うから頼みごとを聞いて欲しいと言う。何事かと思えば、俺の妻のフリをして欲しいとのこと。期間は3か月間。ドバイで悠々自適に隠居生活を送る晴馬の祖父・善次郎が久々に帰国するらしく、その際、彼に縁談をいくつも持ってくる予定らしい。だが、晴馬はまだ結婚するつもりはないのでほとほと困っていた。だからもう相手がいるから心配するなと婚約者を紹介すれば祖父も引くだろう。言いたいことは判るが、それでなんで私なの?彼が言うには自分に少しで好意を持っている女性だと気を持たせてしまう。それに多少なりとも自分を知ってくれている女性なら話も合わせやすいではないか。と言われ思わずそれもそうかと納得。協力してくれれば今のホテルよりグレードの高い外資系ホテルへ紹介してくれるらしい。省吾との会話であと2週間ほどで退職するのはバレているからこその報酬だが、正直喉から手が出るほど伝手が欲しい。少々悩んだが、飽くまで3ヵ月のみの婚約者ならと言う条件で引き受けることに。帰国した善次郎は孫の婚約に大喜び。早速婚姻届けを出しに行けと迫られた時には肝を冷やしたけれど、数か月後の美月の誕生日に入籍したいと言えば渋々引いてくれた。数日間、二人の暮らしぶりを見たいと晴馬のマンションに善次郎が泊まったりと想定外のハプニングは起こりつつも、晴れやかに彼を送り出すことが出来た。でも、まだドバイには帰っていないので油断はできない。ひょっこりやって来て偽装だとバレたらとんでもないことになる。取り敢えず3ヵ月はこのままでいてくれと頼まれ偽装の同棲生活を続行中。次の就職先も決まった。晴馬が紹介してくれたあのホテルでコンシェルジュとして働く彼女の生活は久しぶりに充実。そうこうしているうちに二人も急接近していき、美月は晴馬の一挙手一投足が気になって仕方ない。彼からのスキンシップも増えた気がする。キスされた時は舞い上がってしまったが、そのすぐ後にかかって来た電話から晴馬の様子がおかしい。しかも今のことは忘れてくれと言われて大ショック。一気に気落ちしてしまった美月は彼が同年代と思しき女性を抱き支えている場面に遭遇。まさか本命が出来たの?と更に衝撃を受けた彼女はそれでも彼に言われるまでは契約を果たそうと思っていた。そんな最中、美月の勤め先のホテルで爆破事故が起こり・・・。晴馬が消防官を目指したのは、美月の母が亡くなった火事がきっかけでした。あれ以来疎遠になってしまった彼女を彼はずっと想い続けていたのです。祖父の縁談攻撃に辟易していたのも本当で、偽装結婚を頼んだのもその間に距離を近づけ告白するため。暫く一緒に暮らすうちに距離も縮まり我慢しきれずキスをして、いざ告白をと思ったのも束の間、電話で知らされたのは同期の殉職。防火服は水に塗れると耐火性が下がるせいか、消防官の殉職率は意外にも高く火事で母親を亡くした美月をまた一人にしてしまうのではと晴馬は思い悩むのでした。あの日、美月が目撃したシーンは殉職した同期の奥さんで、葬儀が済み、彼女の不安など話を聞いていたら眩暈を起こしたので支えていただけでした。後にそのことはきちんと説明されたので誤解も解けることになるのですが、この話の前に美月の勤め先のホテルが爆発物によって火事になり晴馬たちによって救出されると言うエピソードも。この一件で徐々に美月も火への恐怖を克服。お互いの気持ちを打ち明け、正式に結婚を前提とした交際を始めます。善次郎には偽装のことがすっかりバレていましたが、結局上手くいって良かったと祝福され手本編は幕。なんだ、省吾達に何か天罰は下らないのかと思ったら、最後の方で彼に多額の借金が発覚して婚約破棄になったことが語られていて、本当に顔だけの地雷男だったんだなぁと。こんな男と別れて正解でしたね。てか、それ以前によく結婚したら家庭に入れとか言えるわ。借金塗れでどうするつもりだったんだろう。まぁ、だから金持の令嬢に走ったんかな。おまけの番外編は本編の数か月後、無事入籍を果たした二人がドバイでハネムーンを満喫する話。評価:★★★★★
2024.08.19
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9月24日 角川文庫 Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ 1 桜井光さん/TOPE-MOON 帝都の鬼は桜を恋う 卯月みかさん10月1日 ビーンズ文庫 パズルアプリで異世界復興始めましたが、魔王様からの溺愛は予想外でした 和泉杏花さん10月3日 ヴァニラ文庫 政略結婚した地味子なのに、冷徹夫の溺愛にとろけています(仮) 森屋りのさん10月4日 フロースコミックス 今世は当主になります 4 公爵夫人の50のお茶レシピ 7 悪役のエンディングは死のみ 710月10日頃 ベリーズ文庫 美貌の御曹司は、薄幸の元令嬢を双子の天使ごと愛しぬく 蓮美ちまさん タイトル未定 にしのムラサキさん あなたがお探しの巫女姫、実は私です。 坂野真夢さん10月19日 一迅社文庫アイリス 漆黒の神は聖なる乙女を寵愛する(仮) 梨沙さん10月30日 フェアリーキス さよなら、旦那様 市井に隠れて生きることにしたので探さないでください 蒼磨奏さんこれまでの予定と合わせると10月もかなり多いですね(^_^;)
2024.08.18
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2023年3月刊ロイヤルキス著者:佐倉紫さん伯爵令嬢のレベッカは、婚約者の不貞から婚約破棄を言い渡したが、多額の援助を受けていた為、逆に謝罪にいかされそうになる。しかし突然、オーブロン公爵家当主パトリスから直々に求婚を受けることに!? 王族の一員でありながら、社交の場に顔を見せない謎めいた人物として有名なパトリスは『引き籠もり公爵』との別名を持つ。顔立ちも綺麗で優しい眼差しのパトリスとの身分違いに戸惑うレベッカ。なぜ自分なんかと、と自信を持てずにいると、オーブロン公爵家の使用人たちからは、公爵家の救いの女神と感動される。パトリスからは「わたしの愛を身体で感じてみるといい」と熱い愛撫で愉悦の波に溺れさせられて……。秘密の多い引き籠もり公爵と倹約家の伯爵令嬢の溺愛系人生好転ラブ! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 レベッカ=生真面目で勝気な性格の伯爵令嬢。 パトリス=公爵家当主。レベッカを見初め求婚する。ユージーン=新興貴族・エッカル男爵の息子でレベッカの元婚約者。アデライト=レベッカの友人の伯爵令嬢。イアーズ伯爵令嬢・レベッカは、その日、婚約者のユージーンの浮気現場に遭遇した。元々、横柄で偉そうな態度を取り続けていた人だったけど、よりにもよって王室主催の舞踏会で不貞行為に走るとは呆れてものも言えない。流石に彼も慌てて苦しい言い訳をしているが、この状況で何が誤解だと言うのか。しかも浮気相手はレベッカの友人の一人・アデライトではないか。開き直ったアデライトからあなたがユージーンを満足させてあげないからよ、と言われレベッカの堪忍袋の緒が切れた。水を得た魚のようにそうだ、やらせてくれないお前が悪いと宣う婚約者をにらみつけ、あなたとの婚約は破棄するからっ!と言い置いて、会場を後にした。翌朝、ユージーンが浮気をしていたので婚約解消したいと両親に話すと、彼らは浮気位許してやれと逆にレベッカを叱った。婚約破棄なんてしたらもう援助が受けられないだろう、と必死な両親の姿に彼女はほとほと呆れていた。先祖代々散財癖のあるイアーズ伯爵家は、父の代になっていよいよ財産が底をついた。レベッカのドレス代も出せず、婿探しも難儀していた頃、羽振りの良い新興貴族・エッカル男爵から縁談が申し込まれたのだ。どうやら、歴史だけはある伯爵家と姻戚関係を結びたいらしい。息子を婿入りさせてくれたら援助は惜しまないと言う条件に両親は飛びついた。レベッカも近々食うや食わずの生活になるかもと覚悟していただけにありがたい申し出だったのだが、前述の通り、ユージーンは褒められた人格ではなかった。あの性格と言動に振り回されても我慢していたけれど不誠実な男と結婚したって不幸になるだけ。両親が何と言おうと婚約破棄すると屋敷を飛び出すと、待ち構えていたのはユージーンだった。男爵に叱られたのか、考え直してくれと頼んで来る彼にもう決めたことなので、と立ち去ろうとするとしがみ付いてくる。そんなに男爵が怖いわけ?と困惑していると、一人の青年に助けられた。青年は丁度イアーズ伯爵家に用事があったと言う。ここで会えて良かったと持っていた小物入れをレベッカに手渡した。見ると確かに彼女の物で、昨夜のあのゴタゴタで落としてしまったようだ。青年は中に入っていたハンカチに刺繍された名前でイアーズ家の令嬢だと気付いたらしい。わざわざ届けに来てくれたのかとお礼を言うと、実はもう一つ用があるのですと神妙な顔。隣で横入りするなと喚くユージーンを従者に命じ、男爵家に送らせると、彼はパトリス・オーブロンと名乗ると徐に膝をつき、レベッカに求婚。いきなりの展開に唖然としていると追いかけて来た両親がその光景に驚いていた。改めて自己紹介する彼の名に父が目をむき、男爵家のことなど忘れたかのように媚びを売り始めた。屋敷に招くとこんな娘で宜しければとホクホク顔の両親に呆れながらも、ここにきて凄い方からの求婚にレベッカは慄いていた。王族の公爵様と私が結婚?パトリスはすぐにでも結婚したいと言い、その代わり妻になる人の実家なのだから援助も惜しまないと宣言。両親に否やは無く、親族のよしみで国王にも早々に結婚許可をもらうとと五日後という超スピードでの挙式が決まったのだった。一週間も経たないうちにレベッカの状況は目まぐるしく変わり、式も滞りなく終わるとオーブロン邸で公爵夫人としての暮らしが始まった。世間ではあの引きこもり公爵がついに結婚と暫く話題になっていたが、その異名に付いて彼に尋ねると社交の場が苦手で王室主催の催しくらいにか出席していなかったかららしい。ここ十年、舞踏会にも数回ほどしか出ていないと聞き、どうりで面識が無いわけだと納得した。世間では引きこもりと言われつつも彼はユーモアも持ち合わせているし、コミュ障というわけでもない。これは仕事が多忙過ぎて社交にまで手が回らないパターンか。そう理解したレベッカは、自分が社交面を担うことにした。舞踏会は夫婦で出席しないといけないけれど、お茶会やパーティーなら自分だけでも問題ない。執事からも頼まれたので、早速お茶会に出席すると、やはり今回の結婚について皆興味津々。質問攻めには参ったが何とかこなし、何もない日は夫に代わってオーブロン領の経営の仕事を手伝った。そうして領地経営のことも学んでいくと、パトリスに実家のことを相談。代々、散財癖にある家系なので請われるままに金を渡さないでほしいこと、出来れば小遣い制にして援助の大多数はイアーズ領の発展に回してほしいと頼むと、彼も賛同してくれた。両親は金のありがたみを知るべきだ。破産しかけても贅沢を辞めない両親が心配だったレベッカの頼みで彼は管財人を手配し、イアーズ伯爵夫妻の散財を止めさせると約束。あんな両親の元で育ちながらレベッカは質素で堅実だ。金で売られるようにあんなクズ男と婚約させられたと言うのに両親を見捨てず、その更生を願っている彼女にパトリスは益々惚れ直していた。それから2週間ほど経ったある夜。トゥベスイ侯爵家の舞踏会に夫婦で参加したレベッカはユージーンと再会。相変わらず復縁を迫る彼があまりにもしつこくて難儀しているとパトリスに助けられた。人妻、しかも公爵夫人を不貞行為に誘うなど以ての外。今回だけはと見逃したが、どうにも嫌な予感がする。そして数日後、母方の親戚である子爵家のお茶会に参加した彼女はアデライトとも再会。ユージーンと正式に婚約し、何でも買ってくれるのと自慢していたが興味も無いので無視していると、鼻白んだアデライトが、あんたなんてどうせ身代わりでしょ、と言う。何のことやらと漸く元友人に目を向けると、彼女はパトリスには事故で亡くなった婚約者がいたこと、その死がショックで十年も引き籠っていたことなどを話した。アデライトはパトロンから聞いたと自慢げに言うけれど、もう故人なら問題ないでしょうと言い置き子爵邸を後にした。そうは言いつつ、パトリスの元婚約者のことが気になってしょうがない。いつしかレベッカはパトリスを愛し始めていたから。いけないと思いつつ、彼の留守中に書斎を漁っていた彼女は、机の上に置かれたロケットに気付いた。恐る恐る開くと、そこには儚げな金髪の美少女の絵姿が入っていて・・・。急な結婚だったので、その為人を知らないうちにパトリスと結婚したレベッカだったけど、今では彼を愛しているので元婚約者に嫉妬。書斎を探ったことがパトリスにバレて万事休すと思いきや、彼は怒らずにかつての婚約者・エリーゼのことを語ります。親同士が決めた婚約。当の二人は未来の伴侶というより兄弟のような関係でした。でも、エリーゼの両親が事故で他界し、パトリスの両親も流行り病で倒れたことでエリーゼの喪が明けたら結婚することに。しかし、その間、エリーゼはオーブロン邸の庭師と恋仲になり、相談されたパトリスはそれを認め応援します。恋愛感情が無いからこそできたことですが、静かな所で恋人と暮らしたいと言うエリーゼの希望を叶えるため、隣国への逃亡に力を貸したのでした。だが、長雨で彼らが泊まる宿ががけ崩れに巻き込まれ二人とも死亡。自分が駆け落ちに手を貸さなければとパトリスは後悔と罪悪感に苛まれて引き籠ってしまったのでした。誓って、エリーゼのことは妹のようにしか思っていなかったと話す彼の言葉を信じたレベッカは、書斎を探ったことを謝罪。実はパトリスがレベッカを見初めたのもこの潔い性格と生真面目さが気に入ったからでした。エリーゼもまた当時まだ8歳だった君の正義感に憧れていたんだよと聞いて、自分の無鉄砲ぶりを見られていたことに赤面。取り敢えず、自分が身代わりなどではない事にホッとする彼女。その後、追い詰められたユージーンの暴走によりエッカル男爵家の悪事も露見。芋づる式にアデライトも捕まって漸く夫婦の周囲は平穏になるのでした。パトリスが送った管財人のスパルタのおかげで、レベッカの両親もお金の大切さに気付いて改心したのは良かった。この手のお話だと最後までクズ過ぎてザマァ対象になる肉親とか展開的に少なくないので、悪役以外は皆ハッピーエンドに収まったのが何より。評価:★★★★☆
2024.08.17
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2020年11月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さん彼氏にフラれたOLの里桜。やけ酒に付き合ってくれた御曹司の響と勢いで一夜を共にしてしまう。弱みを握られた里桜に響が持ち掛けたのは、形だけの契約結婚で…!?やけっぱちの里桜は離婚届を用意した夫婦関係を承諾。しかし、始まった新婚生活は想定外に溺甘で…!?「里桜が欲しくてたまらない」-唇を犯され、独占欲を刻まれてしまう里桜。離婚前提のはずが、高鳴る鼓動を隠せなくて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 七瀬里桜=大手不不動産会社に勤める会社員。恋人にフラれ落ち込んでいた所、 響から契約婚を持ち掛けられた。 相馬響=里桜の勤め先の御曹司で上司。切れ者でワンマンな面もあり、里桜と の契約婚も強引に進める。付き合って2年の恋人を親友に寝取られてしまった里桜は、失恋のショックもさることながら、つまらない見栄を張ったおかげで窮地に立たされていた。あなたにフラれたって、実はもっと条件の良い人から交際申し込まれているから、なんて。なんであんな嘘ついたんだろう。ムッとした元カレから、それなら俺たちの結婚式に連れて来いよと言われ、内心では冷や汗ダラダラだ。だって、いくら何でも酷いじゃないか、結婚も間近だと思ってたのに恋人の親友にあっさり鞍替えとか。しかも、出来ちゃった婚と聞いて気分が悪くなった。それでもやっぱり悔しくて、トイレで一人泣こうと思ったら企画部の上司・相馬響とぶつかり泣き顔を見られてしまった。仕事面では俺様でワンマンな彼だけど、さすがにギョッとして泣いている理由を尋ねて来た。でも頑なに理由を言わない里桜に、業を煮やしたのか。愚痴なら聞いてやると彼の行きつけだと言うバーへ。大して強くないのに口当たりの良い酒をガバガバ飲んだ里桜は漸く響に先程恋人・木内隆二に二股を掛けられた挙句フラれたこと、しかも相手は自分の親友で出来ちゃった婚するんですって、と吐露。木内と言えば住宅事業部の係長だったか。正直、2年も気を持たせておいて恋人の親友に手を出すとは男目線で見ても碌な奴じゃない。結婚してから浮気されるよりはマシだったと思うべきか。結局、その夜は気が済むまで彼女の愚痴を聞き、案の定悪酔いした里桜を介抱する羽目になった響は、後日、かねてより考えていたことを実行に移すことにした。休日、料亭に里桜を呼び出した響は彼女にある提案をした。俺と契約結婚をして欲しいと。話を聞いて唖然とした里桜は当然断って来たが、それで、木内の結婚式に同伴する相手探しは間に合うのか?と問えば彼女は返答に困っている。根が真面目な彼女が、ただ元カレと親友の鼻を明かすためだけに交際できるわけがない。それを見越しての提案だった。大手不動産会社の御曹司で次期社長の自分ならお相手としては打ってつけだろう。それでも渋る彼女に、響は実は自分も並みいる縁談に困り果てていること、だが、ビジネス婚ほど虚しいものはない。だから相手が見つかるまで時間が欲しい。お互い利害関係が一致してはいないか?そう諭され、里桜もそれもそうかと考え始めた。悩んだ末に、彼女は響の提案を受け入れたのだった。二人の結婚話はトントン拍子に進んだ。両家の両親から許可も得て入籍を済ませ、職場にも報告。現在、渋谷に建設予定のショッピングモールの企画で部署は大忙しだったが、契約婚とは言え、里桜は仕事もプライベートでも響をサポートするつもりでいた。次期社長としてアメリカで修業していた彼は良くも悪くもワンマンな面がある。響が赴任した当時はその性格とやり方で部署の空気が凍り付くこともしばしば。そんな雰囲気をいつも払拭していたのが里桜であった。響はそんなこまやかな心遣いができる彼女を気に入り契約婚を申し込んだわけだが、生活を共にすると人となりも一層判って好感度も増して来る。やはり彼女に頼んで正解だった。響も木内の結婚式ではしっかり役目を果たし、後日、奴が経費の横領をしていたこと、その金で女と遊び歩いていたことを人事にチクるという些細な仕返しを代わりにしておいた。しかし、彼女にもメリットだと思われていたこの契約婚は里桜を思いもよらないトラブルに巻き込む羽目に。響に恨みを持つライバル社の御曹司が響の女遊びの写真をでっちあげ、これをマスコミにリークされたくなければ、と里桜を脅し乱暴しようと目論んだのだ。幸い、彼女の異変に気付いた響が乱入して来たことによって事なきを得たが、彼は自分のせいで里桜を危険な目に遭わせたたと猛省。こんな時でもあなたのせいじゃないと健気な彼女に、響は自分の想いを漸く自覚した。ショッピングモールのテナントに響の高校時代の友人・三宅次郎が経営するエステサロンに出店を依頼することになり、里桜も懇意にさせてもらっていた。次郎から最近の響は妻自慢ばかりしているのよと言われ面映ゆくなっていた所、彼女の唇は柔らかいんだとか聞いてられないわ、という話に目が点。飽くまで契約婚なので、その手のスキンシップはしないと言う取り決めもしていた。ので、当然キスも彼とはしたことが無い。まさか、彼に好きな人が出来た?これまた契約でお互い本命が出来たら即離婚という文章が頭の中を巡り、里桜は大ショック。何故なら彼女は響に心惹かれ始めていたから。しかし、全て承知で契約を交わしたはず。里桜は彼のために離婚を決意し・・・。まぁ、これは完全に誤解なんですが。実は里桜への想いを自覚した響は寝ている彼女にキスしていました。当然これは違反なので秘密にしていたものの、ついつい次郎には惚気てしまい、そんなこと思いもよらない次郎がお熱くていいわねぇと茶化してたんですね。しかし、これが彼女に思いの外ダメージを与え、離婚を決意したはいいが、仕事に身が入らず大きなミスをしてしまいます。幸い響のフォローで何とかなったけれど、余所余所しい里桜を見かねて彼から一度距離を置こうと別居宣言されて茫然。次郎も心配し、彼から里桜に探りを入れて貰ったら離婚を考えてると聞いて次郎もびっくり。でも、彼に本命が出来たから辛いけど別れるのと泣く彼女の様子を響に伝えると慌ててすっ飛んできた彼から、キスの件も白状され本命が他でもない自分だったと漸く気付くのでした。その後、二人は契約書を破り、本当の夫婦として一緒に生きることを決め、それから暫くして響が指揮を執っていたショッピングモールも無事に開店に漕ぎ着けます。エピローグでは響の常務就任が内定し、里桜の妊娠報告で物語は幕。この作家さんのベリーズ作品は皆同じ世界線なので、ショッピングモールに出店する店舗やブランドは見たことがある所ばかり。読んでて思わずニヤニヤしてしまいます。評価:★★★★★
2024.08.16
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2024年8月刊講談社タイガ著者:友麻碧さん「猿臭い」と虐げられる日々から、夜行に救い出された菜々緒。皇都で夫婦としての生活が始まり、愛されることを少しずつ知り始めた菜々緒の耳に、夜行の元婚約者の噂が飛び込む。見目麗しく、世間も認める由緒正しき華族の令嬢、斎園寺しのぶ。しかも、まだ夜行に想いを寄せているらしい。それに比べて自分はーー傷モノは、夜行の妻にふさわしいのか。思い悩む菜々緒に、暗い影が忍び寄る。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 紅椿菜々緒=夜行の妻。額に猩猩から付けられた妖印がある。 紅椿夜行=紅椿家の当主で「皇國の鬼神」の二つ名を持つ。 紅椿朱鷺子=夜行の母親。吸血体質の息子を嫌っている。 紅椿鷹夜=紅椿家の長男。朱鷺子と別邸で暮らしている。斎園寺しのぶ=公爵家の令嬢で夜行の元婚約者。 武井=しのぶの世話係。皇都にある紅椿家で、当主・夜行の妻として暮らし始めた菜々緒。穏やかな日々を過ごしていた彼女は、白蓮寺一族の顛末を聞いた。菜々緒が妖印を刻まれるきっかけを作った従姉妹の暁美は、罪に問われ里を追放されることになったらしい。そして、麗人は猿面の呪いの返りを受け、菜々緒に執着していたものの当人に激しく拒絶され精神に異常をきたしてしまったと言う。とてもではないが当主の役目は引き継げそうにない。しかも、後に彼は乱心して暴れ、挙句当主の屋敷は火事になって焼失。今、麗人は座敷牢に監禁されているそうだ。一連の騒動の責を問われた白蓮寺家は陰陽五家から転落、代わりに藤堂家が繰り上がり今は皇國陰陽寮八番隊長・藤堂マリアが白蓮寺の地にある結界を守っている。暁美と麗人の娘・琴美はどうなるのだろう。一族を没落させた者たちの娘として迫害されてやしないか。聊か心配になったが。どうやらマリアが気にかけてくれていると聞きホッとした。そんなある日のこと、夜行の兄・鷹夜の婚約が報らされた。お相手は斎園寺公爵家の令嬢・しのぶ。なんと、夜行の元・婚約者だと言う。少々事情があって破談になったそうだが、元とはいえ夜行の婚約者と聞けば心穏やかではいられない。鷹夜はこの紅椿本邸ではなく、母親の朱鷺子と別邸に暮らしているそうで、実は会った事が無いのだが、庭の草むしりをしている時に屋敷に帰って来たらしい鷹夜と朱鷺子に遭遇。二人の冷たい視線に、自分は歓迎されていないと菜々緒はすぐに思い至った。夜行も駆けつけ、彼女を庇ったが、終いに朱鷺子は彼のことまで悪し様に言い出したので菜々緒の方がキレてしまった。大人しい彼女が激昂したことで夜行も驚いていたが、益々菜々緒に惚れ直してもいた。後に夜行の父・夜一郎から聞いたが先代の皇帝の姪という朱鷺子は嫁いで来た当初はおおらかな性格をしていた。だが。夜行が椿鬼だと知ってから段々息子を遠ざけるように。乳をやっている時に血まで吸われて恐ろしくなったんだろうと。やんごとない生まれの姫には耐えられなかったのか、夜行の後に娘二人を産んでも長男・鷹夜だけを傍に置くようになっていたそうだ。朱鷺子にとって鷹夜だけが自慢。なのに、椿鬼というだけで長男を差し置いて夜行が当主になったことで余計に彼を嫌うようになってしまった親子の確執の理由は判った。夜行の心情は如何ばかりかと。そして、菜々緒も鷹夜は公爵令嬢を娶るのに夜行は没落した一族の冴えない娘を正妻に迎えるなんてと馬鹿にされたことが殊の外堪えていたのだった。数日後、華族の催しで護衛に駆り出されていた夜行が大怪我をして戻って来た。新人隊員を庇ってのことだそうだが、護衛対象を守りながらの戦闘も無理があった。あやかしによる事件が頻発している昨今、この手の催しは自粛して欲しいと申し入れても聞き入れない馬鹿ばかり。いくら止めても買い物に行きたいからと押し切り、いざ襲われればその責任を護衛している隊員たちに押し付けるものだから堪ったものではない。夜行は働きすぎな事もあってこれを機に数日休暇となったが、動けるようになるとまたすぐ任務に戻って行った。そんな折、一人の令嬢が舞踏会の最中に襲われ、それを夜行が救った。だが、その令嬢がかつての婚約者・斎園寺しのぶで、夜行に惚れてしまった。鷹夜も麗しいけれど、夜行様の方が強くて素敵。娘に甘い公爵に泣きついて鷹夜との婚約を破談にすると、夜行に付き纏い出したのだ。その様子に菜々緒も唖然。新聞までしのぶと夜行が結婚間近と連日報じるので気が気でない。しかも、公爵家からの依頼で夜行がしのぶの護衛に付いて何日も帰ってこないものだから、菜々緒は不安に駆られ始めていた。そんな最中、額の妖印の治療で病院に訪れていた菜々緒は、綾小路家の夫人と知り合い懇意に。夫人の母親が白蓮寺一族だそうで会うのを楽しみにしていた。里の女が良く作るぼた餅を持って行くと嬉しそうで、別れ際、うちの縁者が迷惑をかけたと謝罪し、手を打つから安心して欲しいと微笑んでいた。今一つ意味が分からなかったが、その数日後、しのぶは綾小路香代から叱責を受けていた。世間知らずの上に何の覚悟も無い娘が、陰陽五家のトップ・紅椿家の嫁になれるはずがないと。夫人の孫・真澄にも諭されたしのぶはその場はしおらしくなったものの、その後へそを曲げて家出。しかし、この我儘から来る出奔が思いもかけない騒動を起こし・・・。このしのぶさん、夜行の吸血体質を興味本位で試し、噛まれた傷が痛い、怖かったと言って婚約破棄していました。そのうち家柄も容姿も申し分ないお相手が見つかるはず。そう高をくくっていたら見下していた令嬢達が次々嫁ぎ、自分は22歳になっても貰い手が無いまま。そんな時に朱鷺子からの申し出で鷹夜との婚約が決まったのでした。だけど、あの事件の夜、彼女は夜行に一目惚れ。というか、婚約当時は子どもだったし、そんなにタイプじゃなかったんでしょう。成長した夜行はカッコよく、同じ陰陽寮務めとはいえ研究職の鷹夜はひょろい男にしか見えず、またしても婚約破棄に。ふざけた態度に朱鷺子は激怒しますがそんなことはお構いなしで夜行に付き纏い始めます。金を払って新聞に良いように記事を書かせ、外堀を埋めようと目論みますが、当の夜行は菜々緒一筋なので靡くはずもなく。公爵も頭が上がらない親戚の綾小路夫人に叱責された挙句、真澄からもきつく言われたしのぶは、以前、世話係の武井から聞かされた作戦を実行に移します。家出した彼女が街中で菜々緒を待ち伏せ武井に渡されていた笛を吹くと、なんと多数のあやかしが出現。笛がどういう効果か知らされていなかったしのぶはパニくり、そんな彼女さえも守ろうとする菜々緒。鷹夜がもしもの時のためにとくれた籠目玉が作った結界の中で助けを待つ二人は、っていう展開です。武井さん、めっちゃ怪しいやんけ。それもそのはず、この人目線の短いエピソードが数本あって術者であり殺し屋という一面が描かれていました。朱鷺子さんからの依頼も受けてるし、裏で色々暗躍している様が描かれています。彼の言う「あの方」とは?そして、本当に菜々緒に妖印を付けたのは猩猩なのか。正直、あんな有象無象なあやかしによるものとは思えないんですよね。ので「あの方」=大物のあやかしって気がします。作中では予想も出ており、かなりの大物らしいから、最終的にそいつと夜行が戦うんでしょう。となると、まだまだ先は長そう。あと、朱鷺子さん共々嫌味な男に見えた鷹夜さんですが、母親が近くにいると同調してた彼も一人の時は気さくで根はそれなりに良い人でした。それに研究畑としては結構優秀。菜々緒にあげた籠目玉はかなりの効果でしのぶを守ることになるのですが、母親が相当な毒親なのでちょっと気の毒。しのぶは綾小路夫人の言うことに素直に従っていれば良かったのに、この騒動の責任を問われて失墜。父親の悪事も何故か暴露され没落の憂き目に遭うと言う相応の報いを受けるのでした。菜々緒と夜行の絆は揺ぎ無く、きっとその妖印を消してやると彼女に誓って、このエピソードは幕。今回も面白くて、一気に読んじゃいましたが、出来ればもう少し刊行ペースを早くしてくださると(^_^;)評価:★★★★★
2024.08.15
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7月下旬から昨日(8月13日)までの購入タイトルです。レジーナ文庫7月刊感想記事UP済です。祖父同士の約束事のせいでクズ男と結婚した公爵令嬢が夫の不貞に激怒。間女共々夫に復讐するお話ですが、表題タイトルのエピソードよりその後に初恋の人と再婚するまでの内容の方が濃くてメインだったような。スターツ出版文庫7月刊。「後宮の幸せな転生皇后」の方は感想記事UP済です。今月のファンタジー枠はどちらも後宮ものなんですねぇ。フェアリーキス7月刊感想記事UP済み。シリーズ3作目ですが、2作目からのエピソードと続いています。マーマレード文庫8月刊。若菜モモさんの最新作ですが、今回はファンタジーもの。講談社タイガ8月刊一昨日購入したばかりのため、まだ立ち読み防止のビニールすら破いてませんが、続きが気になってたのでなるべく早めに感想書きます。ベリーズ文庫8月刊3点こちらもなるべく早めには、と思ってます。今年の夏はエアコン入れててもまだ暑い気がしてなかなか読書が進まず(^_^;)
2024.08.14
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2021年9月刊マーマレード文庫著者:木登さん箱入り娘の東子は、大企業の御曹司・一成との政略結婚を渋々受け入れる。顔を合わせずに入籍が済み、そのまま愛のない結婚生活を過ごす…はずだったのに、いざ対面した彼は、溢れる色気と過保護な溺愛で翻弄してきて!? さらに「君のすべてを俺のものにする」と独占欲を加速させる一成。初めての恋心や悦びを教え込まれ、東子は甘く開花していき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 御堂東子=大手外食企業の令嬢。業務提携の縁で一成と政略結婚した。 御堂一成=テーマパーク開発事業会社の御曹司で副社長。父が社長を務める会社で働く東子は、ある日社長室に呼び出され、テーマパーク開発事業で有名なディヴェルティメントアトラクションズの副社長・御堂一成との結婚を言い渡された。一人娘の彼女は、いずれ然るべき時に婿を取り、自分か夫が会社を継ぐものと思っていた。勿論、それに見合うだけの努力もして来たつもりだ。だが、父の様子を見るにこれはもう決定事項なのだろう。一応尋ねてみれば肯定したので内心で東子はガッカリ。元々、一成の父親と東子の父は高校時代からの親友で今も凄く仲が良い。少し前にディヴェルティメントアトラクションズとの業務提携も決まったばかり。先日も御堂と飲むと出掛けて帰宅すると頗る機嫌が良かった。察するにその時に結婚話が出たのだろう。それにしたって前々からそんな話があったのならそれとなく本人にも打診しといて欲しかった。社長の娘に生まれた以上政略結婚だからと文句を言うつもりもない。ただ、突然すぎる。しかも、夫となる一成氏は、業務提携のきっかけとなった新しいテーマパークのことで多忙らしく、顔合わせの時間も取れないと言う。数日後、速達で記入済みの婚姻届けが届いた時は、腹も立ったし呆れたがどうせ結婚するのだし、と指示通り、自分の名前を記入後、一人で役所に届けに行った。こうして、顔も見たことのない夫と入籍を済ませた東子は御堂姓になったのだった。一成と会ったのはそれから暫く経った頃。テーマパークのオープン日の発表会に招かれた東子は、そこで結婚も発表すると言われてビックリ。会場に着くとスーツ姿の美形が。クォーターと聞いているがとにかくカッコイイ。会見に関しては場慣れしてそうな一成に任せ、何とか終えると、漸く彼と会話が出来た。食べ物の好き嫌いとか聞きたいことは山ほどある。だって、これからこの人と暮らすんだから。一応、この突然の結婚と延々お相手に会えない事に対して、文句を言わない代わりに仕事を続けたいと条件を出し、許可を貰っている。正式に公表されたので明日からは御堂東子として出社するから、明日は質問攻めだろうと思うと気が重い。一成との新居は駅近の高層マンション。同居が始まったものの、彼は相変わらず忙しく、ほとんど顔を合わせない。なにせ、生活サイクルが合わないのだ。一成からも無理に合わせなくてもいいし、君も働いているのだからと家事も気にしなくていいとハウスキーパーまで頼んでくれた。確かにテーマパークに出店予定のレストランや、フードコーナーのメニュー開発で東子もてんやわんやだけれど一成より早く帰宅できる分、ちゃんと休めているし食事の支度くらいできる。政略結婚とはいえ、家族なのだから仲良くやっていきたいし、正直、あんなに仕事している彼が心配だった。悶々としていると案の定無理がたたって秘書の鈴木に無理矢理帰宅させられたと一成が珍しく20時頃に帰って来た。見るとかなりやつれている。過労に眼精疲労で酷い頭痛があるようだ。これは薬を飲ませて早々に寝かせないと、胃に優しいうどんを作って出すと一成は完食。薬を飲んだら大分楽になったようだ。フード開発部にいるため、料理は作るのも食べるのも好きなんです。と言うと、彼は鈴木にも言われたし、週に何度か20時には帰宅するようにすると約束してくれた。以降、週に何度か一成にしては早く帰宅で来た日は二人で食卓を囲み、時には彼のなじみの店に連れて行ってもらった。一成のお薦めの店のメニューはテーマパークのレストランの参考にもなると感謝し、いくつか出した案も採用されて東子は大喜び。単純かもしれないが、彼女は一成に心惹かれ始めていた。出来ればもっと一緒にいたいし、もっといろいろ知りたいとも思う。しかし、モテ男の弊害か、悪気はないのかもしれないけれど、東子と過去の恋人とを比べる節があるが如何ともしがたい。大分仲良くなったのが嬉しかったのに、いきなり高価なプレゼントを連続で贈られ、もう要らないと突っぱねれば女の子は大抵喜んだのにと不満顔。流石に腹に据えかねて、怒りを爆発させてふて寝した東子が翌日、実家に帰るとメールした時は、慌てて迎えに来ていた彼を見て驚いたものだ。単に、まだ残っている私物を実家まで取りに行っただけなのに。東子が過去の女と比べられて激怒していたのを彼なりに危機感を抱いたのかもしれない。どうやら、昨夜のことを友人でもある鈴木に相談したら全面的にお前が悪い、と怒られ、仕事と顔しか取り柄が無いと散々な言いようだったらしい。本人も反省しているようなので仲直りに応じたが、元カノと比べるのだけはやめてほしいと頼むと一成も気を付けると約束してくれた。一方、一成は多忙ながら東子と結婚できたことで内心浮かれていた。実は彼はとあるイベントで彼女を見かけ一目惚れしていたのだった。東子が父の親友の娘と知った時は運命だと思ったし、彼女の父から娘と結婚する気はあるかと聞かれて二つ返事で了承した。なのに、時間が取れず会えたのは入籍してから大分経った頃。元有名女優と大企業の社長の娘ということで親の七光りやコネのおかげ、と実力を否定され続けた東子の悩みは一成も覚えがあるもので痛いほどその気持ちが判った。自分も忙しいだろうに健康を考えたメニューで労ってくれる彼女に更に惚れ直した一成だったが、同期だと言う彼女の同僚・岡田槇の存在が気になってしょうがない。実は恋愛下手なのは自覚している彼は思わず四宮フーズに彼女を迎えに行き、噂の岡田を見に行ってしまった。わざと目の前でいちゃついて牽制もしてみたが案の定、嫉妬丸出しの表情。あいつは東子に惚れている。そう確信した一成だったが、ある日、社用車の中で会話する東子と岡田の姿を目撃してしまい・・・。両片想いの政略結婚夫婦のお話です。この日、一成の牽制で闘志を煽られた岡田は東子に告白。でもあっさり彼女に夫のことを愛しているからとフラれていました。潔く諦め、明日からは普通の同僚に戻ると言われホッとした彼女。しかし、そこに一成が怒り心頭の表情で現れ修羅場に。誤解されるようなことはしてないのに聞く耳持たずの彼に、どうしてか真実を話すのを躊躇う東子は夜の町へ。彼女が心配で追いかけて来た一成から結婚に至った経緯を語ったことで、その気持ちを知った東子は自分の想いも語ります。おかげで漸く両想いになった二人は、その後に起きたトラブルも見事に乗り越え、無事にオープンの日を迎えるのでした。年代は違うけど、一成が着手していたテーマパークはおそらくディ〇ニー〇ンドがモデルなのかな? となると規模も凄そうなので、準備期間やら本当に多忙だったんだろうな。結婚式はオープン後にと決めていたのも判る。このプロジェクトも一成の過去に関わることで、その理由なんかも語られて入るんですが長くなるので敢えて割愛してますので、興味がある方は読んでみてください。仲睦まじい二人ですが特に妻にベタ惚れの一成は、本編ラストに判った東子の妊娠に大喜び。おまけの番外編は後日談ではなく、夫婦の危機の際も色々尽力してくれた一成の秘書・鈴木さんの意外な一面を描いたエピソードでした。評価:★★★★★
2024.08.13
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2023年12月刊ベリーズ文庫著者:あさぎ千代春さん家のために若くして政略結婚させられた莉央。相手は、容姿端麗だけど冷徹なIT界の帝王・高嶺。互いに顔も知らないまま十年が経ち、莉央はついに“夫”に離婚を突きつける。けれど高嶺は離婚を拒否し、まさかの溺愛モード全開に豹変!? 莉央を強引に自分のマンションに同居させ、「お前が欲しい」と熱っぽく愛を囁いてくる。愛のない結婚のはずなのに溺愛される毎日に戸惑う莉央だけど…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 結城莉央=公家の血筋のお嬢様。 契約婚をしたまま放っておかれた夫との離婚を決意する。 高嶺正智=IT企業のCEOで莉央の戸籍上の夫。 天宮翔平=正智の二十年来の親友で副社長。設楽桐史朗=莉央の師匠の日本画家。 税所羽澄=莉央の幼馴染。京都の名家、公家の血筋の結城家の一人娘・莉央は16歳の時にとある人物と入籍をした。事業に失敗した父が援助を持ち掛けられ、背に腹は代えられぬと娘を差し出したのだ。だが、夫の高嶺正智とは別居で実は会った事さえない。これが当初の条件らしいが、いくら別居とはいえ妻の様子が気にならないのだろうか。金食い虫の祖母と父が相次いで亡くなり、援助してもらう必要がなくなった頃には、莉央は26歳になっていた。その日、幼馴染の羽澄を伴い上京した莉央は夫が経営する会社までやって来た。名乗るとすぐに高嶺の部屋に通され、そこにいたのは背の高い30代半ばのハンサムな青年。この人が私の。彼も莉央を見て驚いていたが、それでも当初の予定通り、援助されていた金の一部の返却と離婚届を渡すことに成功。記入してくれたら明日また自分が取りに来るとだけ言うとさっさと部屋を後にした。一方、当の正智は初対面の妻から突然離婚を切り出されて唖然としていた。経緯はともかく、別居の上悠々自適でお嬢様生活を満喫できていたはずなのに一体何が不満なのか。CEOの妻が乗り込んで来たと社内で大騒ぎになっていると聞きつけ、副社長の天宮が飛び込んできたが、話を聞いて次の株主総会でこの離婚話が知れたら拙いと、それまで何とか莉央に思い留まらせろと忠告。明日また来るそうだから説得するとは言ってみたものの、初めて見た妻の美しさが目に焼き付いて離れない正智であった。母から、もうあの二人はいないのだし屋敷を売ればどうとでも生きていけるからあなたも自分の人生を生きなさい。そう言われて独り立ちを決意した莉央。昔から結城家に忠義を尽くしてくれている羽澄の実家・税所家が変わらず力を貸してくれるそうなので、母も一人で質素に暮らすと言う。屋敷は売却しても文化財として残るらしい。ただ名義が結城家でなくなるだけだ。莉央も正智と離婚したらこの東京で仕事を見つけるつもりだ。母は年齢的に無理できないけれど莉央まで税所家に世話になる訳にはいかないのだから。一先ず、東京にいる日本画の師匠・設楽に連絡を取り、今後の身の振り方を相談した彼女は、師匠から本格的に画家になることを薦められた。君には素晴らしい才能があるからと。そして、口約束ではあるが元々、設楽は莉央の婚約者だったと聞いてビックリ。でも、彼女の父が金に困り娘を売るように正智と入籍させてしまった。設楽は海外にファンが多く、今は絵を一枚書けば家一軒買えるほどの値が付く人気画家だ。いずれ、フランスに永住しようと考えてるそうで、離婚が成立したら一緒に来ないかとも言われ、莉央の心は揺れた。翌日、離婚届を預かるために再び正智の会社に行くと、あっさりサインするかと思った彼から離婚はしないと言われ大ショック。何度理由を尋ねてもダメだの一点張り。ここでは何だからと正智が暮らすタワマンに連れて行かれた莉央は困惑。そりゃあ、全額返せてはいないけれど、どうして引き留めるの?押し問答しているうちに何だか疲労感がどっと来て眩暈を起こした彼女は昏倒。慌てた彼が読んだ医師の診断では過労と栄養失調であった。色々気が張って食欲が無く、あまり丈夫ではない莉央は限界だったのだ。正智は莉央と結城家に関して調べるよう天宮に依頼。翌日、目を覚ました莉央は東京で一人暮らしをする部屋を探すからと出て行こうとするので、俺も付いて行くと強引に正智も付いて来た。また倒れられたら大変だ、と。スマホの使い方もおぼつかないので大丈夫かと思ったら、案の定、悪質な不動産屋のおとり広告に引っかかってぼったくられそうになっている。ため息を吐いた正智は部屋が見つかるまで俺の部屋で暮らそうと提案。代わりに食事の支度をしてくれれば良いからと頼まれた莉央は渋々了承。強引でぶっきらぼうなくせに、どこか優しい正智のことが早くも彼女は気になり始めていた。結婚十年目にして初めて一緒に暮らし始めた二人。やたらとスキンシップが多いし、俺に振り向かせてみせると愛を囁く正智の言動に莉央は毎日ドキドキしっぱなし。若い女は宝石や高い服が好きだろう?とどこぞの外商がどっさりプレゼントを持って来た時は帰宅した正智をこんなの要らないと叱った。すると翌日からは毎日花を買って帰宅する。おかげで部屋中花だらけだ。でも絵のモチーフになるから助かる。設楽の案で名を売るには個展が一番だと、彼のコネで三か月後に開催が決まってしまった。実家にある作品は全部出し、後は数点描き下ろすことになっている。実のところ、食事の支度だけでこの広いマンションに暮らせるのはありがたい。その頃、正智は天宮の報告で結城家の実情を知り項垂れていた。結婚を理由に援助さえすれば、さっさと持ち直して楽に暮らせていると思っていたのに。実際は、商才の無い義父と義祖母は贅沢を辞められず、体面を保つために金を使い、家計は火の車。やがて認知症になった義祖母を施設に入れることもできずにその介護のために莉央は大学進学も諦めていた。きっと義母一人に負担を負わせない為だろう。義父と義祖母は去年相次いで亡くなり、漸く生活も立て直せるようになったから、こんな結婚は止めたいと切り出したわけか。正智は、不誠実過ぎた自らの行いに罪悪感を抱いた。別れたいと希望する莉央の気持ちも痛いほど理解できる。だが、一緒に暮らし始めてからというもの、彼女を手放すことは出来なくなっている。株主たちの評判などどうでもいい、自分が彼女と別れたくないのだ。莉央の方もまた、正智と離れ難く思い始めていた。多分、自分は彼を愛しているんだ。今となっては素直にそう思える。いくつか作品を描き上げ、個展を開催する銀嶺堂のオーナーには少々厳しいことも言われたけれど、最終的にはあなたには才能があると太鼓判を押されたことで自信も付いたのも、理由かもしれない。一人の人間として認められる。ずっとそうなりたいと思っていたから。だが、そんなある日、正智と有名女優との熱愛がスクープされ・・・。当然ながら、このスクープは誤報です。この頃には正智は莉央一筋だったので、他に目をくれるはずもなく、写真を撮られたのが彼が以前住んでたマンションで男性が背格好が非常に正智に似ている事から間違われただけでした。でも女優は本命を隠しておきたいらしくだんまりを決め込んだことで、莉央の誤解は解けないまま。失意の彼女に羽澄から連絡があり京都に帰ってきてくださいと言われた彼女は素直に従います。でも、正智は後手に回ってしまった自らの対応に怒りを覚えつつも、天宮に発破をかけられ京都へ。再会した莉央に体を張って誠意を示した正智は何とか許しを貰い、せっかく京都に来たのだからと義母の南美子が一人暮らす結城家へ。そこで、十年前に契約婚を申し入れた経緯を二人に明かすのでした。この理由についてはあんまりばらしてもアレなので、興味のある方は読んでみてください。正智の複雑な身の上や、高嶺家の事情とか色々判ります。あと、姑に娘しか生まないといびられ続けた南美子さんの苦労とかね。いびり続けた姑の世話に、夫は馬鹿みたいに対面のために金を使う。鎌倉時代からの名家の人間がこんな調子じゃ聞いて呆れる。正智から真相を聞いて、どんな事情でもあなたに結城家を選んでもらって良かったという莉央に彼は益々惚れ直すのでした。その後、二人は東京に戻り、夫婦としてやり直すことを決めます。設楽には正智と生きていくことを告げ、外国に行く話を断るも、師弟関係は変わらず。設楽のコネでデビューする若い女性画家を酷評する気満々だった批評家は描き下された彼女の絵を見て考えを改め、好評のまま個展は幕を閉じ、新進気鋭の日本画家として莉央は認められます。当然、正智はそんな彼女を支え仲睦まじい二人の様子が描かれて本編は幕。実は3回書籍化され直している今作。それ毎に足された番外編は本編の後日談が3作でした。相変わらず妻にベタ惚れで、彼女の態度に一喜一憂している正智がなんとも笑えます。天宮さんも大変だなぁ。評価:★★★★★
2024.08.12
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2024年7月刊蜜夢文庫著者:西篠六花さん「俺は全部受け入れるし、支えてやりたい」外資系銀行の為替ディーラーの職を捨て、田舎町で暮らしをしている34歳のあかり。ある夏、隣家に染色作家の飴屋が引っ越してきたことから彼女の生活が変わっていく。飴屋のまっすぐな想いに惹かれたものの、過去の後悔から別れを告げたあかりだったが…。WEBで電子書籍で読み継がれてきた、長編ラブストーリー完結編。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 奈良原あかり=元為替ディーラー。 過去に不倫していたという罪悪感から悠介に別れを切り出す。 飴屋悠介=若手の染色作家であかりの恋人。 笹井英司=あかりの元上司で不倫相手だった人物。 井上希代=郵便局に勤める肉食系女子。悠介を狙っている。想い続けていた上司と不倫関係になるも、一ヶ月足らずで捨てられたあかりは深く傷つき、相手の家族に対しても罪悪感を持ち続けていた。あれから何人もの男性と付き合って来たけれど、結婚の話が出る度に別れたのは、未だに笹井とのことを自分の中で折り合いをつけられないからだ。悠介のことは好きだし愛している。でもこんな自分に愛される資格はあるのだろうか、と思うとどうしても二の足を踏んでしまう。考え抜いた結果、ただのお隣さん同士に戻りたいと切り出したあかりを彼は責めることなく受け入れ、今では付き合う前の二人に戻っている。悠介は最近、オーダーを受けて一つの作品にかかりきりなおかげで、会うのはトイレとシャワーを借りに来る時位。だが、そんなある日、青年会の飲み会で自宅を提供した悠介に纏わりつく若い女の子・井上希代の姿を見てそんな資格もう無いのに、あかりは胸を痛めた。青年会の中心人物の高畠健司の話では、悠介が希代にロックオンされてしまったと苦笑い。健司の妻・奈緒が希代と同級生だったそうで、先日貰った枝豆の礼に高畠家に訪れると色々教えてくれた。外見は地味なのに肉食系で、他人の彼氏であろうと気に入ればガツガツ行って横取りする嫌な女とのこと。健司も一回迫られたそうでその際、奈緒と大喧嘩になったのだそうだ。いきなり希代のことを聞かれて不審に思ったのか、奈緒には悠介と恋人関係だった話をした。彼女は数少ないあかりの女友達なので。すると、希代はいつもキープ君がいるので、二股掛けるつもりなら牽制できる。知り合いに頼んで調べてくれると言う。でも、嫉妬する権利なんてないのにと話せば、嫌いで別れたんじゃないんでしょ?と図星を突かれ、素直に好意に甘えることにした。何だかんだと理由を付けて自分から別れを切り出したのに、やっぱり私は悠介が好きなんだ。あかりはや蓋旅自覚したのだった。一方、悠介はどうして恋人関係を解消したいと請うあかりの希望を素直に受け入れはしたものの、実際は別れたつもりはなく、いつか彼女が心の裡に秘めていることを聞きたいと思っていた。オーダーの品の仕上がりはまだまだ時間がかかるが、何かに打ち込んでいる方が気を紛らわせることができていい。なのに、井上希代が何を思ったのか毎日工房を訪れては纏わりついて邪魔をしてくるので、彼女のメアド電話番号ををブロックし、勝手に仕事用のスケッチに触る希代の考えなしな態度に悠介はブチギレ。追い出したのでさすがにもう来ないだろう。自分にはあかりがいる。他に靡くわけがない。オーダーとクリエイター仲間たちと共同で開催する展示会用の作品も並行して作っているので忙しい彼には何の興味のない女にモテても嬉しくもない。悠介にけんもほろろに追い出された希代は、スーパーであかりを見つけ、女の勘で彼女がライバルと感じ取ったのかあかりに宣戦布告。面食らう彼女にあなたみたいなおばさんが彼と釣り合うとか思って無いですよね?と言われ、痛い所を突かれたあかりは何も言い返せなかった。暗い気分のまま帰宅すると、玄関前に1年ほど前に別れた元カレ・駒野洋平が。アポなしで来たのには呆れたが、どうしてこの住所が判ったのかと不審に思っていると、かつて世話になった人達には現住所を知らせていたので尤もらしい理由を付けて連絡が取りたいと聞き出したらしい。一先ず、応接間に通すと駒野はあかりと復縁したいと言う。そもそも自分より上のランクのヴァイアスプレジデントだった彼女に嫉妬し劣等感からモラハラ気質になった男だ。そのうち仕事もあかりの予想に頼り切りになり、言うことを聞かせるために結婚しようと言い出したのが嫌で別れることに。婚約もしていないのに駒沢は別れたくないとゴネにゴネ、漸く別れられた時は暫く恋愛は懲り懲りだと思ったそんな経緯もあってか、あかりが頷くわけがない。東京にいて未だバリバリ外貨ディーラーをしている女友達から、駒野がクビ同然で退職したと聞いて、以前の仕事ぶりを思い出しやはりかと気にはしていた。良い返事を貰えないと判るや、駒野はあかりを押し倒し無理矢理ことに及ぼうとしていた所、騒ぎに気付いた悠介が飛び込んで来て事なきを得た。悠介は駒野に激怒し、婦女暴行未遂で警察に突き出すと息巻いていたが、狭い集落のことあかりが心無い噂に晒されるのは忍びない。彼は駒野を引き摺り自宅に連れて行くと、どういうつもりで来たのか少々脅かして口を割らせることに成功。案の定、目的はあかりの金であった。実際、彼女は不労所得でかなりの額を稼いでいる。へまをやらかしてクビ同然で退社した駒野は、昔の女のことを思い出し上手く丸め込んで金を引き出そうとしていたのだそうだ。悠介に脅され二度と来ないとは思うが、彼が居なければ危なかった。そして、この騒動の数日後、友人から連絡が。笹井がどうしてもあかりの住所を知りたいというので、根負けして教えてしまった事、突然ながら今日そちらに向かっていると聞いてビックリ。バス停まで迎えに行くと、そこにはかなり痩せたが昔のままの笑顔の、かつての不倫相手が立っていて・・・。自分から切り捨てておいてどうして今更会いに来たのか。当然、笹井さんは駒野とは違うので、末期がんでこの世を去る前にずっと言えなかったことを伝えにやって来たのでした。笹井は、一生懸命なあかりに心惹かれていたこと、本当に君を愛していたと彼女に告げます。ここに来たのも洗いざらい白状した夫の不貞行為に激怒した妻に、お相手のお嬢さんに誠心誠意謝罪して来いと発破をかけられたのもきっかけだったようです。笹井の本心を聞いたあかりは、今まで心に抱え込んでいた罪悪感が消えていくのを感じ、ここまで会いに来てくれた笹井に礼を言い、見送ります。でも、笹井と再会している様子を悠介に見られ、彼は失恋を覚悟するも、数日後に心の整理を付けた彼女から漸く踏ん切りをつけることができたと聞かされます。ずっと笹井を思い続けていたように思い込んでいたけれど、もうずっと以前に心に決着を付けていたのに変に拘っていた事、悠介のことが好きなのにその拘りで傷付けたことを詫び、二人は再び恋人関係に戻るのでした。悠介たちの展示会、彼個人の個展も盛況に終わったあと、彼からプロポーズされて二人は入籍。書き下ろしの番外編では、本編の後日談で、二人の娘・陽葵の成長と彼女のことが好きな健司と奈緒の四男・爽輝くのお話でした。予想通り元カレキターーー、って展開でしたが駒野は小物だったし、あかりの意識を変えたのはやはり笹井さんでした。彼はこの再会の後、病状が悪化して亡くなっており、本当に死ぬ前に一目会いに来たんだなと思うと泣けました。正直、笹井さんには別れの経緯からあんまりよい印象無かったんですけど、いつまでも立ち止まったままのあかりの背を押してくれた人物でもありました。この再会もだけど、やっぱりあかりには悠介の存在も大きく、吹っ切った後は希代の嫌味にも対抗したりと逞しい一面も見れて良かった。評価:★★★★★
2024.08.11
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2024年5月刊蜜夢文庫著者:西篠六花さんその愛に甘える資格が私にはないからーー。外資系銀行の為替ディーラーの職を捨て、田舎町で独り暮らしをしている34歳のあかり。ある夏、隣家に染色作家の飴屋が引っ越してきたことから彼女の静かな生活にさざ波が立つ。過去に囚われていたあかりは、飴屋にまっすぐな想いをぶつけられ、戸惑いながらも惹かれていくが…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 奈良原あかり=元為替ディーラー。一年前から片田舎で一人暮らしをしている。 飴屋悠介=あかりの家の隣に越して来た染色作家。今年34歳になるあかりがこの辺鄙な地に来て1年余りが経つ。外資系銀行の為替ディーラーをしていた彼女は、ここに来る前はロンドンに住んでいた。だが、師匠であり一時不倫相手であった笹井が末期がんと聞いて以来、言いようもない不安に駆られ続け、ついに仕事を退職。日本に帰国して終の棲家を探し始めた彼女は、築40年以上で廃屋状態だった物件を格安で購入し、徹底的なリノベーションで自分好みに仕立てた。庭は広いし、飲み水の条件をクリアしている井戸付き。交通の便は悪いが、家庭菜園の収穫とご近所さんからのおすそ分けもあるので、前職の知識を生かしたコラムや雑誌の連載の執筆だけでも充分食べていけている。そんなある日、あかりは自宅前の道路で路駐していた車の中でぐったり男性を助けた。この暑さの中、どうにもヤバそうなので自宅に運び入れ、水を飲ませたあと往診してもらうとやはり熱中症。医者が来る前に本人が風邪もひいてたと言っていたので、ダブルパンチで一気に具合が悪くなったらしい。幸い、ガタイもよく体力もありそうなので点滴を打ってもらうと2時間ほどですぐに回復。空腹だというので粥を出せば、物足りなそうな顔をされ結局、あかりが用意していた夕食を平らげるとすっかり元気になっていた。男性は飴屋悠介と名乗り、彼女に迷惑をかけたと頭を下げ、立て替えてもらった診察費諸々必ず返しに来ると言い、帰って行った。その際、連絡先も聞かれたのだが、関わり合いになりたくなくてやんわり拒否。礼も必要無いと言っておいた。飴屋は不服そうだったけれど、それでも近いうちに会いに来るつもりのようだ。それから一週間ほど経った頃、何だか表が騒がしい。庭先に立って見回すと、長い間空き家だったお隣さんに荷物を運び入れている数人の若者たちの姿が。その中に飴屋の姿を見てあかりは驚愕。すると、向こうも彼女に気付いたようで、今日から隣に越して来たと挨拶に来た飴屋の荷物は大量の物干し竿と樽、盥。染料がどうのと手伝いらしき女の子が大声で叫んでいる中、あかりの家より築年数が経ってて清掃もしていない荒れ果てた空き家はとにかく汚かった。掃除しないと仕事道具を入れられないと聞こえ、思わず手伝いを申し出てしまった。しかし、水道や電気は連絡済みですぐ使えるようだが、風呂場とトイレは汚いだけでなく大量の虫に悲鳴を挙げそうになったほど。これトイレやお風呂はどうするんだろう。恐らくリノベーションしないと使えないはずだ。人と関わりたくないくせにお人好しな真似をして軽く自己嫌悪状態にはなったが、その夜、飴屋が訪ねて来て引っ越しの挨拶と改めて礼を言われた。あの日、熱中症になったのはこの家の下見の帰りだったそうだ。話を聞いて納得しているとまだ言いたいことがありそうな雰囲気。何でしょう?と尋ねれば暫くの間、トイレと風呂を使わせてほしいと言う。結局リノベーションすることに決めたとのことだが、あの家の購入で貯金はすっからかん。工事の発注も少し先になるらしい。謝礼は出すのでと頭を下げられたものの、知り合ったばかりのお隣さんにトイレと風呂を貸すとか有り得ない。断ろうとしたが人の好さが災いし、家の出入りを許可した。金も要らないと言うと、では他の物で返すと言って聞かないのでその申し出を受けることに。翌朝、俺の家に来て欲しいと頼まれ、約束通り向かうと、元は野菜の仕分けに使われていた風な大きな土間に綺麗に染色された布が多数吊るされていた。聞けば、飴屋は染色作家なのだそうだ。着物や帯の染色や絵柄を付ける。独立してからまだ2年なので自ら売り込みもしなくてはならないと聞いて、大変なんだなと感心していると、趣味で色付けと絵柄を書いた作品が飾られた2階の部屋に通され、好きなものをプレゼントすると言われビックリ。どれも素晴らしいものばかりな上、これまでの礼と水場の使用だけでは申し訳ない。普通に売り物として結構な値段なのではと思うと受け取れないと断ったものの、俺の気が済まないからと言われ、一目で気に入ったタペストリーを貰うことにした。なんと飴屋は額装までしてくれるらしい。少々強引ではあるけれど、飴屋は何処か憎めない雰囲気なのと家を出入りするようになってから、二人は急接近。飴屋自身も年上ながら可愛らしい雰囲気のあるあかりに好意を寄せ始めていた。そんな二人の関係が変化したのは二週間ほど経ってからのこと。天気の悪い日は何となく落ち込みがちのあかりは、笹原のことを思い出していた。末期がんの彼はもうこの世を去ってしまっているだろうか?たった一か月で終わった不倫関係は、家族を裏切れないという笹原からの申し出で破綻した。そんな彼に未だに未練がある自分。珍しくボトルワインを1本空けて酔っぱらったあかりを見て飴屋は彼女の過去に何かあったに違いないと察知。そんな無防備だと襲うぞ、と切羽詰まった飴屋を見て、あかりは内心でそれでもいいのにと思っていた。翌日、昨夜のあかりを心配した彼は、彼女に告白。笹井のことを引き摺るあかりは飴屋に縋った。それに自分も彼に惹かれている。飴屋を受け入れ、付き合いだした二人。飴屋の仕事に興味を持ち、彼の工房に入り浸りながらも、ここが他の住人たちの家と離れているのにホッともしていた。こんな年増が20代の男性に惚れこんでるとか噂になったら、と思うとたまには街に出ようという彼の言葉にも頷けない。一方、飴屋は実家の母親と電話で話していたあかりが結婚を望んでいないと知ってショックを受けていた。6歳も年上だがそんなのは気にならない。交際がこのまま続けば結婚も視野にと考えていただけにやりきれない。彼女が未だに引き摺っているらしい過去と関係あるのだろうか。飴屋のことは好きだけど、たまにものすごい罪悪感に苛まれることがある。笹原のことを話せていないせいなのもあるし、飴屋が意外と子供好きなの見るにいずれは結婚したいと思っているのだろう。もしそうなら、本当に自分は彼に相応しくない。考え抜いた結果、あかりはただの隣人同士に戻ることを望み・・・。このヒロイン、めんどくさい性格してるなー。想い続けた人は18歳年上で既婚者だった。それでもアタックし続け付き合うことになったものの、それは世間で言う所の不倫関係。単身赴任でロンドンに来ているのだから、その間は好きにやればいいのに結局彼はあかりより家族を取って別れを告げられることに。それでも、その後3年は別の人と交際してたりしたものの、後に笹井ががんを患い退職。しかも末期だと聞いて、彼女はショックを受けます。それからはもう、仕事も身に入らなくなって彼女も退職し、実家ではなく格安で購入した片田舎の家でほぼ隠遁生活。人とか変わらない生活をしている中で会った飴屋は、彼女の心を救えるのか?っていう内容です。上下巻構成のため、ああやっぱりそこで終わるんだって感じ。ハッピーエンドでしょうけど、ちょっと不穏な前フリもあったので、元カレ(笹原じゃない方)が何かやらかすのかな?こういっちゃなんだけど、あかりみたいな人は一度、大きな事件に巻き込まれたり何かきっかけが無いと色々振り切れないと思う。下巻はこれから読みます。多分、明日の更新で続けて感想記事を上げられるかと。評価:★★★★★
2024.08.10
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9月5日 フロースコミックス バツ3の看取り夫人と呼ばれていますので捨て置いてくださいませ 1 雨乃家路さん ベリーズファンタジースイート 虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほど愛されるまで(仮) やきいもほくほくさん9月6日 小学館文庫キャラブン! 白天狗の贄嫁 芽生える絆は宿命の扉を開く 朝比奈希夜さん9月9日頃 マーマレード文庫 政略結婚に出された孤独な令嬢は、 冷酷なはずの年上社長に授かった子どもごと甘々に愛し尽くされています 沖田弥子さん9月13日 ビーズログ文庫 離婚するつもりだった私が顔も知らない旦那様に愛されるまで 有沢真尋さん9月24日 角川文庫 聖獣の花嫁2 癒しの乙女は優しき獅子と愛を紡ぐ 沙川りささん10月10日頃 マーマレード文庫 12年片想いしていた航空自衛官に再会したら、 妹の子どもごと愛で包み込まれました(仮) 木登さん 推し活中のオタク芋娘だったのに、 顔が良すぎる極上悪魔の御曹司の偏愛沼に堕ちました(仮) 真彩-mahya-さん10月18日 ヴァニラ文庫 攫われ溺愛婚 ~みなし子令嬢の旦那様は十年来のお兄様侯爵でした~(仮) 小桜けいさん9月は割と少な目で良かった~と思ってましたが、そんな甘い事はありませんでした。
2024.08.09
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2024年6月刊LUNA文庫著者:にしのムラサキさん『息は詰まるし一緒にいても詰まらない。お願いだからもう別れてくれ』十年付き合った彼に振られ、傷心旅行で訪れた京都のとあるバーで、美玲は二股をかけられ、いきりたっている女性とその女性を冷たく見つめるスーツ姿の男性の修羅場に居合わせてしまう。見るともなく眺めていた美玲だったが、女性が男性にかけようとしたカクテルが、彼が避けたことですぐ横にいた美玲にかかってしまう。潔癖気味な美玲には、他人が口をつけた液体を被っていることが我慢できない。一刻も早くシャワーを…と焦る美玲に、男性が謝罪しながらジャケットをかけてきた。ーーいや、他人のジャケット、普通に無理。と、ひっぺがして突き返すが、そうは思いつつ違和感があった。この人の香りだろう。香水とはまた違う、ここちよい匂いに飲み込まれそうになる美玲だったが……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 川上美玲=10年付き合った恋人にフラれ傷心していた。 樫原彰人=救命救急医。出張先で美玲と出会い惚れこむ。 山添英斗=新人救命医で美玲の元カレ。 櫻田愛菜=病院の総合受付係。英斗の浮気相手。 北山=美玲達の勤め先のベテラン看護師。総合病院で検査機器の洗浄の仕事をしている美玲は、職業柄かなりの潔癖症。加えて生真面目な性格をしているからか、高校時代から10年付き合っていた英斗に「お前といると息が詰まる」とフラれてしまった。その横には勤め先の病院でも可愛いともてはやされている新人受付嬢の櫻田愛菜が。人の彼氏を横取りしておきながら「身の程を知った方がいいですよ」と勝ち誇った愛菜の言葉は想像以上に美玲の心を傷つけ、こんなんじゃいけないと色々整理をつけるために一人で旅行をすることに。行先は京都。一人気ままに観光してホテルから少し離れてはいるが、ネットで見ていずれ行ってみたいと思っていたバーへ。つまみとカクテルを堪能していた美玲だったが、隣席のカップルの痴話げんかに巻き込まれ、女の飲んでいたカクテルを頭からかぶってしまうという被害に遭った。潔癖症の彼女にとって他人が口を付けた飲み物を被るなんて以ての外、内心死にそうなくらいパニくっていた美玲に、カップルの男の方が慌てて弁償しますのでと謝り倒して来た。そんなことよりシャワーを浴びさせてくれとイラつく彼女と男の押し問答は、押しの強さで男の勝ち。バーの近くのホテルに部屋を取っていると言うのでそこでシャワーを借りることに。結局服も弁償してもらうことにもなって恐縮していると、彼は樫原彰人と名乗り、改めて謝罪された。そして喧嘩になった経緯を聞くとセフレに結婚を迫られ、元々恋人じゃないだろと答えたらキレられたというのもだった。男性は忙し過ぎると性欲が増すと言うのは聞いたことがある。樫原もそのタイプで、適当に遊び相手を見つけて発散しているのだとか。医師だと言うから多忙なのも判る。とはいえ、不特定多数の異性とそういう関係を持つのは良くない、樫原さんには誠実さが足りないです。と思わず説教していた。いくらなんでも失礼だったかなと反応を伺うと、唖然としつつも樫原は何だか嬉しそう。従姉妹だという女性に調達してもらった服がブランド物で申し訳なくなったが、お礼を言って帰ろうとすると明日のモーニングに付き合ってくれと頼まれた。これもお詫びとか言ってくるのでもう充分ですのでと断ると、どうしてもと縋らんばかり。見かねた従姉妹からも付き合ってやって欲しいと言われ、そこまで言うならと頷けばモーニングの後は観光に付き合う約束までさせられてしまった。一方、樫原は彼女に運命を感じていた。あの説教も他の人間から言われれば余計なお世話だけれど、彼女の言葉は何故か妙に腑に落ちてその通りだと思った。確かに自分は誠実ではない。彼女の恋人になりたい、それも結婚を前提に付き合いたい。その後はもう妄想全開で将来や子供の数まで想像している樫原はすっかり美玲にメロメロだったのだ。翌日、一日一緒に過ごした結果、彼の人となりを信用した彼女は結婚を考えていた恋人に浮気された挙句フラれたこと。つまらない女だと罵られたことを話し、堅苦しくつまらない自分変えたいと願い、私を抱いて欲しいと頼んだ。彼にしてみれば願っても無い申し出だが、どうやら元カレに不感症だとも言われていたらしい。よくよく状況を聞くに元カレが自分本位な上に色々おざなりなタイプでそれを棚に上げて責められていたようだ。案の定、美玲は不感症ではなかったし、樫原にとっては幸せな一夜だったが、翌朝目覚めると彼女の姿はなく、美玲という名前しか判らない樫原は途方に暮れたのだった。しかし、それから暫く経ったある日。東京の総合病院に転院して来た樫原は院内で美玲とバッタリ。人探しの番組に本気で応募しようとまで思いつめていた彼は、本当にこれぞ運命だと歓喜した。美玲のフルネームも判ったし、同じ病院に勤めているのだからいくらでもチャンスはある。その日から樫原からの猛烈なアタックに戸惑う美玲だったが、付き合ってくれないと京都での夜のことを喧伝すると言われ渋々了承。でも、そんな卑怯なことを言う割にデートでは子供のようにはしゃぐ彼に随分癒された。そんな樫原も、院内きっての情報通・ベテラン看護師の北山から美玲の元カレと間女・愛菜の情報を仕入れていた。まさか、新人救命医の山添が美玲の元カレだったとは。元々モテない医学生が可愛い女の子に粉を掛けられ浮気に走り、尽くしてくれた美玲を棄てたという経緯らしいが、愛菜という女は相当の性悪らしい。計算高く、他人の物を欲しがる性分で同性からは最も嫌われるタイプ。美玲から奪ったはいいが、早々に飽きてきているようで今度は樫原に目を付けモーションを掛けて来ているので鬱陶しくてしょうがない。セフレとも全員関係を切ったし、今は美玲一筋の自分が靡くはずがないのだが、誤解されるのは避けたい。北山から色々リークを受けつつ、様子を伺っていると山添が美玲にコンタクトを取って来て・・・。本命を作らなかった男が、真面目な女性に惚れこみ猛アタックするというお話。まぁタイトル通りの内容となってます。どの面下げて復縁を迫る元カレを拒絶する美玲は、自分の言持ちが樫原に傾いていることに気付くも、愛菜の企みにより、疑心暗鬼に。樫原を信じてまた手酷い裏切りをされたら立ち直れない。それでも美玲には真摯で誠実な樫原を信じたい。中々樫原と離れない美玲に業を煮やした愛菜は彼女のコーヒーに一服盛るという暴挙に。でもそれは思いの外効果があって美玲が丸一日意識不明になるほど。ずっと付き添っていた樫原はこれはおかしいと検査した結果、盛られていたのは糖尿病の薬。元カレのことなどで睡眠不足で食欲も無かった彼女は極度の低血糖状態になって倒れたのでした。しかし、処方箋が無いと貰えないこの薬から足が付き、山添が用意し愛菜に渡していたことが発覚。悪質すぎると警察に通報案件となり、二人は罪に問われます。北山のネットワークで愛菜には本命の彼氏がいることも判るんですが、ホント、どうしようもない女だな。糖尿病の薬は健常者が飲んだら本当に危険なので、一歩間違えば死んでたのを思えばもっと重い処罰でもいいかも。けど、身の程、身の程と美玲を下に見ていた愛菜にあなたの方こそ身の程なんてないでしょ、と言い返された様が痛快。ほんとそれな。この騒動後、美玲の方から樫原に求婚。二人の交際が病院中に知れ渡るも愛菜とくっつくより全然いいと思いの他周囲からも祝福されて物語は幕。どんなだけ嫌われてるんだ、愛菜ちゃん(^_^;)美玲に惚れてからの樫原の言動と必死さが微笑ましかったのと、北山さんのネットワークが凄い。評価:★★★★★
2024.08.08
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2024年7月刊スターツ出版文庫著者:香久乃このみさんR-18の恋愛同人小説を書くのが生きがいのアラサーオタク女子・朱音。ある日、結婚を急かす母親と口論になり、階段から転落。気づけば、後宮で皇后・翠蘭に転生していた! 皇帝・勝峰からは見向きもされないお飾りの皇后。「これで衣食住の心配なし!結婚に悩まされることもない!」と、正体を隠し、趣味の恋愛小説を書きまくる日々。やがてその小説は、皇帝から愛されぬ妃たちの間で大評判に!ところが、ついに勝峰に小説を書いていることがバレてしまい…。しかも、翠蘭に興味を抱かれ、寵愛されそうになりーー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 翠蘭=輿帝国皇帝の皇后。不慮の事故で意識不明だった。 勝峰=輿帝国皇帝。目を覚ましてから別人のようになった翠蘭に興味を持つ。 香麗=勝峰の寵姫。 麗霞=妃嬪の一人で貴儀。翠蘭を敵視している。 雪花=妃嬪の一人で美人。外国生まれの姫という触れ込みで後宮入りした。高田朱音はアラサーの会社員。アニメやゲーム好きのオタクで、18禁の同人小説を書いてイベントにも参加している。現実の男性に苦手意識を持つ朱音は、結婚こそ女の幸せと言って憚らない母と気が合わない。だが、年末まであと数日の冬の祭典の日。イベント帰りの彼女は自分の部屋を見て唖然。兼ねてより娘の趣味を快く思っていなかった母が朱音のコレクション全てを勝手に捨ててしまっていたのだ。こんなものにうつつを抜かせていないで自活して良いお相手を探しなさいという母に、宝物を棄てられた朱音は激怒。激しい言い合いをしていると入稿の為に何日も徹夜し、挙句仕事も残業続きだった彼女は無理がたたって眩暈を起こした。運悪くそこは階段でてっぺんから転がり落ちた彼女は意識を失ったのだった。身体中の激痛で目覚めた朱音は見回すと中華料理店のような内装の部屋にある寝台に寝かされていた。全身は包帯だらけで彼女が目覚めたことに気付いたこれまた中華風の衣装を着た女たちは口々に朱音を翠蘭様と呼び、良かったと喜んでいる。状況が判らず思わず鏡が欲しいと頼み、覗き込むと誰??これ、と言わんばかりの美女。翠蘭という名のこの美女はなんと皇后らしい。だが、夫婦仲はあまり良くなくそのことに彼女は悩んでいたと言う。夫婦和合の願掛けに出掛けた翠蘭は不幸にも出先で足を滑らせ大怪我を負い、暫く意識不明だったのだそうだ。この一連の話は事故の後遺症で記憶障害を起こしていると診断された彼女の為に侍女の仙月が教えてくれたことだ。なるほど、どうやら私は異世界転生してしまったようだ。きっと高田朱音はあの時に亡くなり、この翠蘭も恐らく。皇后が目覚めたと連絡が行ったのか夫である皇帝・勝峰も見舞いに訪れたが、その美男子ぶりにこれまたビックリ。しかも、隣には現在寵愛しているという妃嬪の香麗までいる。しかし、やっぱり当然ながら彼が自分の夫という感慨も無いので、様子伺いをする勝峰にどう返答するか戸惑っているとそれが気に入らなかったのかものの数分で帰ってしまった。侍女たちはおいたわしいと言わんばかりの雰囲気だったが、翠蘭は違う。前世で母に罵られた言葉の数々が蘇り、もしかしてこれってお母さんいう女の幸せ全部クリアしている状況なのでは、と。まぁ、結婚はしているけれど夫が他の女にご執心の上、子供もできるかは謎だけど、そこは私の責任じゃない。衣食住に困ることなくのんびり暮らせるなんてラッキーではないか。異世界転生などというハプニングに見舞われたものの、彼女は前向きにこの状況を受け入れることにした。そうと決まれば、好きな生活をしよう。以前、何かの本で後宮の女たちは皇帝のお渡りが無い時は趣味に明け暮れていたと読んだ。部屋を見回すと翠蘭は読書が趣味だったらしい。まだ体も本調子でないし、本棚にある結構な量の本を読みふけった。この世界が昔の中国ではなく異世界だと思い当たったのは輿というこの国の名のせいだ。輿なんて国、歴史上には無かった。だからか、翠蘭の好む本の内容も所謂ラノベに近い。彼女が好んだのはその中でも大体恋愛が絡んでいて、もしやと思い家探しして見るとやっぱり隠し持ってたこの世界で言う所の艶本が。元の世界のTL小説ばりの描写に心躍ったが、読んでいるうちに自分でも書きたくて仕方ない。仙月に頼んで紙と筆を手に入れ、朱音が惚れこんでいたとあるキャラをヒーローにしたストーリーを書き上げた。何やら楽しそうに執筆している主人の姿を見て、若い侍女二人、紅花と若汐に出来立てほやほやの作品を渡すと案の定非常にウケた。もっと読みたいと請われ他にも書いたものを渡せばどれも好評で、暫くするとは若汐がその中の1作を写本したいと言う。友人にも読ませてあげたいのでと話す彼女の熱意に許可を出すとほんの数日で仕上げて来たので驚いた。そんなに入れ込んでくれるなんてと喜んでいると、何だか若汐の元気が無い。理由を聞けば、妃嬪に写本を取り上げられ、いくら言っても返してくれないと嘆いていた。可愛い侍女に何たる仕打ち、憤慨した翠蘭はその妃嬪の宮へ。貴儀というと高位の妃だ。ここは慎重にと思ったが、貴儀・麗霞は元々翠蘭をよく思ってないらしく、最初から喧嘩腰で一言いえば屁理屈で返され、流石に腹が立つ。揉めていると騒ぎを聞きつけ勝峰が現れ、言い合いは強制的に終了となったが、威勢の良い翠蘭の姿に勝峰は驚いたようで、皇后である彼女こそ後宮の主なのだからその言葉に従うよう宣言。おかげで写本は取り返せたけれど、麗霞には更に疎まれてしまったようだった。前々朝の皇帝と皇后も折り合いが悪く互いの愛人を重用した挙句、3つに分かれてしまったこの国は勝峰の父・前皇帝によって1つの国に統合された。翠蘭は前々王朝の血を引く娘でその縁で皇后に選ばれた。その経緯もあって彼女を認めない派閥もあるらしく麗霞の一族はその筆頭らしい。色々確執があるんだなぁと思いつつも、執筆をつづけていた翠蘭は仙月に大目玉を食らいペンネームを朱蘭にすることで何とか許しを得た。若汐の写本が目に留まり、妃嬪たちも朱蘭の話が読みたいと要望が殺到。後宮内の写本部門が大忙しになるほどの盛況ぶり。みんなTL好きなのねぇとかつての即売会を思い出していた。そうこうしているうちに、耳にしたある妃嬪のためにその境遇を元ネタにした本をこっそり差し入れたりしていた翠蘭はファンを増やし、リクエストも届き始めた。皆、TLは好きだがシチュエーションの好みも分かれている。参考にしつつ更に作品数を増やしていた彼女の元に香麗が現れ、因縁相手の登場に仙月たちもピリピリ。だが、香麗の来訪の目的は朱蘭へのリクエストのためだった。ペンネームだったのでバレないと高を括っていたけれど、窓口が翠蘭付きの宦官ではバレバレですわよ、と言われ素直に認め話を聞くと何と彼女は勝峰がヒーロー、ヒロインが香麗の夢小説を書いて欲しいと言うのだ。そんなことしなくてもあなた彼の寵姫でしょうに、と疑問を口にすれば、驚くことに勝峰は全く香麗に手を出していないのだそうだ。元々二人は幼馴染みたいなもので寂しがる彼女を傍に置いていただけ。だからせめて物語の中では愛されたいのだと言われ、なにやってんだよあいつは、と怒りが湧いた。それにこの香麗、話してみると結構いい人で、翠蘭が朱音だった時のトラウマで男が苦手なのだと話しても嘲笑ったりせず、気まぐれで訪れた勝峰に迫られた彼女のために助け舟まで出してくれた。だが、リクエストに応えて書いた夢小説が勝峰の目に留まり、それを読んだ彼は大激怒。しかし、内容は面白いので側近に命じてすべての写本を手に入れた彼は、これが妻の作品と知って驚愕するも、最近生き生きしている翠蘭に一目置き始め・・・。そもそも、勝峰は政略結婚とは言えども翠蘭を嫌ってはいませんでした。しかし、彼女の宮に行くと必ず体調不良で仮病を使う程嫌なのかと腹をたて疎遠に。そこに来て香麗を寵姫にしていると噂になり、思い悩んだ翠蘭は夫婦和合の祈願に。そして訪れた先で重傷を負ったのです。見舞いに訪れた彼は妻が自分のことを忘れてしまったと悲しみに襲われるも、次に会った時は妙に威勢が良くなっててビックリ。あの事故が何かのきっかけになったのかは判らないがその変化を好ましく思うのでした。そうこうしているうちに彼女の小説は後宮内で大ヒット。実は、元の世界でハマっていたゲームの二次創作が元ネタだったりするものの、真新しい設定にTLという題材がウケ、朱蘭に感化されて小説を書き出す者も現れます。同じTLでもメリバ系の題材の出現により、意識してしまった彼女はスランプに陥ったりしますが、そんな翠蘭を励ましたのは勝峰でした。彼の言葉は目から鱗で見事に復活を果たした彼女はまた執筆に励むも、後宮に新たな妃嬪・雪花が現れ新たな波紋を呼ぶことに。その頃には朱蘭=翠蘭だと皆にバレてしまい一騒動起きるんですが、麗霞が雪花を使い、翠蘭失脚を狙い罠を仕掛けて来て、みたいな展開です。このレーベルにしては厚めなので、読み応えありました。翠蘭が皇帝の渡の度に体調不良になったのも夫婦和合のお参りで重傷を負ったのもある人物の企みだと判明したりしますが、この辺は犯人はもう判り切ってたので消化試合な印象。勝峰との仲も進展してるようなしてないような。続編を視野に入れてるならそれも描かれそうな気もするけどどうだろう。コメディ寄りではありますが根底はシリアス。後宮の女たちの憂いも描かれていて面白かったです。取り敢えず、朱音のお母さん、いくら娘でも他人の私物を勝手に捨てるのはもめ事の原因ですよ。しかも、これが原因で娘を死なせたって言う事実は消えないんだろうなぁ。家にちゃんと生活費を入れて真面目に働いてるんだから多少は目を瞑ってあげてたら・・・。評価:★★★★★
2024.08.07
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2023年5月刊マカロン文庫著者:きたみまゆさん恋に臆病になっている会社員の優花。ある時、バーで上司に迫られ困っていたところを、偶然居合わせた外科医・史斗に助けられる。酔った勢いで史斗に悩みを打ち明けた優花は、そのまま彼と一夜を共にしてーー。その場限りの関係だと思っていたのに、ある事情が重なり“偽りの婚約者”として一緒に暮らすことに! 期間限定の関係のはずが、想定外の溺愛に翻弄されまくり。ウブな反応が史斗の欲情を煽ってしまい、理性を奪われるほどに蕩かされ…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 佐野優花=バーで知り合った史斗に頼まれ契約上の婚約者を演じる。 国見史斗=外科医。長らく思い続けていた優花に契約を持ち掛ける。 佐野翔太=優花の歳の離れた弟。サッカー特待生。 国見明斗=消防士で史斗の弟。車のディーラーの受付事務として働く優花は派手な顔立ちのせいで何かと誤解されがち。遊び慣れてると思われるのか、不倫の誘いやセフレになってくれなどクズ男に言い寄られることが多く断るのに一苦労。今夜も上司から仕事の相談があると食事に誘われ、何となく警戒していると連れて行かれた先は雰囲気の良いバー。仕事の話はどうした?とツッコミを入れたくなるほど、くだらない話は続き、案の定交際を申し込まれて内心でため息を吐いた。既婚者のくせにどういう神経をしているのか、きっぱり断ると弟さんに金がかかるんだろう?とやけにしつこい。前の職場も上司に迫られ断ったら曲解した噂が流れて辞めざるを得なかったのを思うと腹が立つ。だが、腐っても男性、力が強くて中々触って来る手を止められない。難儀していると一人の男性に僕の彼女に何の用ですか?と声を掛けられ、上司はバツが悪そうに漸く優花を解放。誰?と思うと彼は小声で俺に話を合わせてと囁いた。バーテンダーを見ると頷いていたので、さっきお手洗いに行ったときに電話して迎えに来てくれって頼んだんですと言うと、これは拙いと思ったのか上司は必死に謝罪。会社と奥さんにバラされたくなければ二度と彼女に関わるなと男性が釘をさすと上司は逃げ帰って行った。おかげで助かったと男性に礼を言うと、どうやらこれはヤバイ状況だとバーテンダーが常連客である男性に声をかけ一芝居打ってもらったらしい。改めて二人にお礼を言うと男性は国見史斗と名乗り、外科医だと言う。国見と聞いてあの大きな病院の?と尋ねると院長の次男なのだそうだ。酒も入り、上司との会話を聞かれていたのもあって隠しても仕方ないと聞き上手な史斗に家庭の事情をアレコレ話すと頑張って来たんだねと言われ思わず涙が。母子家庭で育ち、その母も七年前に事故死。10歳下の弟を必死に働いて育てて来た彼女にはなんだかとても刺さった言葉だった。でもこんなに頑張っていてもくだらない誘いで迷惑かけられたり本当に嫌になる。元カレには遊び慣れてると思ったら処女で不感症だったと周囲に言いふらされたこともあってすっかり男性不信だ。今夜も実は嫌な予感はしていたのに。話を聞いていた史斗は、じゃあ俺が君の男性不信を治してやると、酔いも手伝って近くだと言う彼のマンションへ。お堅い性格の自分が行きずりの男性とこんな関係になるとはこれぞ青天の霹靂であったが、不感症ではない事が判って取り敢えず安心した。翌朝、自宅に戻ろうとスマホを見ると弟の翔太から鬼電が。着信履歴にビックリしているとまたかかって来たので電話に出ると、無事を喜ばれどういうことかと尋ねると優花の住むアパートが火事になり、連絡が取れないと大家から寮に電話があったと言うのだ。史斗が送ってくれて、アパートに着くと火元だったらしい1階は黒焦げ。優花の部屋は2階だが火も上がっているだろうし放水のせいで家具家電は全滅だろう。ガックリ来ていると一人の消防士にここの住人かと尋ねられ、名乗ると無事を確認された。隣の史斗が気付いて親し気に話していた消防士は弟の明斗だと言う。翔太も駆けつて無事で良かったと喜ばれたが、この後どうしよう。翔太には言えないが如何せん彼に金がかかるので貯金も出来ておらず、部屋探しするにも先立つものがない。考えあぐねていると一旦俺の部屋に住まわせますのでと史斗に言われてビックリ。流石にそこまでしてもらうわけには、と断ろうとすると弟さんに心配を掛けちゃいけないと言い含められ、話を合わせることに。この人私の恋人だから厄介になるつもりだと言えば、翔太はほっとしていてやはり気を使わせていたのだなと反省。衣服や日用品まで購入してもらい、好意に甘えてばかりで申し訳ないと思いつつ、かかった費用は絶対にお返ししますので、と頭を下げるとなら代わりに俺と契約結婚して欲しいと頼まれた。彼が言うには、大病院の御曹司となると周囲からの縁談攻撃が凄まじいのだそうだ。流石に辟易していて、平穏に過ごすためにはいっそのこと結婚すればいい。なので、期間を決めて自分の妻役をしてくれないかと。力にはなりたいけれど結婚となると決断しかねる。優花が逡巡していると、なら一先ず半年間は契約婚約者を務めて欲しい妥協案を提示。その間、ここに暮らし、お金を貯めれば良いと。勿論生活費の一切を面倒見るし報酬も出すとまで言われて、報酬はいらないが恩返しとして婚約者の役なら引き受けると了承。こうして期間限定の同居生活が始まった。実は史斗はかなり優秀な外科医と知ったのは翔太の憧れのサッカープレイヤーの手術を担当したという話から。それでも救えない命は少なくないと溢す彼は、どうしようもないことで患者の家族に責められることも多いと言う。そんな彼の一面を見せられどんどん彼に心惹かれていく優花。そんなある日、明斗が車を見に優花の勤め先に現れた。家族で乗れる車が欲しいと聞き、おススメの車種を案内。その間、明斗の想い人の話を聞いた。無事に契約が決まって諸々の手続きをしていると彼から、史斗にも自分と同じく忘れられない人がいるんですよ、と言われ優花の頭は真っ白。万全を期して買ってもらった婚約指輪を見て、自分はここにいちゃいけないと考えた彼女は部屋を出て行く決意をし・・・。【極上三兄弟シリーズ】の2作目は次男・史斗さんのエピソード。派手な顔立ちのせいで男運がすこぶる悪いヒロイン・優花は一人で弟の翔太が好きなサッカーをできるよう頑張っていました。実は、そんな彼女のことを7年前から史斗は想い続けていたのです。明斗の言っていた史斗の忘れられない人とは自分のことだとは夢にも思わない優花は契約婚役を解消しようと決意しますが、その話を切り出された史斗は大慌て。理由を尋ねれば、私なんかが同居してたら本命が悲しみますよと言えば、それは君のことなんだと返され目が点。えっ、私たち出会ってまだ2カ月弱くらいですよね?疑問を口にすれば、状況が状況だから仕方ないと、七年前の出会いを語る史斗。それは優花の母が事故に遭い搬送先の病院でのこと。まだ研修医だった彼はそれでも研修先の病院の救急に居たのだと聞き、懸命に母の心肺蘇生をしてくれた若い医師だと思い出します。彼のおかげで一時意識を取り戻した母と最期の別れが出来たと当時はとても感謝したと。この辺りの思い出のシーンが読んでてもう泣けて泣けて。でも、母に自分の想いと感謝を告げ、史斗に礼を言った優花がずっと忘れなかったと語る彼は、偶然にも再会できた彼女との縁を繋ぎたくて契約婚を言い出したのです。真実を聞き、漸く自分が史斗の想い人であると彼女は悟るのでした。その後、二人は入籍して物語は幕。3作目のヒーロー・明斗の何気ない一言でとんでもないことになる所でしたが、彼も恵さんと復縁できるかの瀬戸際だったからなぁ。家族で出かけるために買った車は優花の勤め先で購入したんだなと判った一コマでもありました。評価:★★★★★個人的にこの2作目が一番好きなお話かも。
2024.08.06
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2024年7月刊アルファポリス文庫著者:硝子町玻璃さん多くの人々があやかしの血を引く時代。猫又族の東條家の長女、霞は妹の雅とともに平穏な日々を送っていた。そんなある日、雅に縁談が舞い込む。お相手は絶対的権力を持つ鬼族の次期当主、鬼灯蓮。逆らえない要求に両親は泣く泣く縁談を受け入れるが、「雅の代わりに私がお嫁に行くわ!」と霞は妹を守るために、自分が生贄として鬼灯家に嫁ぐことに。そんな彼女を待っていたのは、絶世の美青年でーー!? 政略結婚からはじまる、溺愛シンデレラストーリー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 東條霞=猫又族・東條家の長女。妹の代わりに鬼灯家に嫁ぐことを決める。 東條雅=霞の二歳下の妹。 鬼灯蓮=鬼の一族・鬼灯家の次期当主。鬼灯八千流=蓮の母。 鬼灯正嗣=蓮の父・蔵之介の従兄弟。多くの人々があやかしの血を引いている時代。猫又族・東條家の長女の霞は赤ん坊の頃に事情あってこの家に引き取られた養女だった。母の薫とは少々折り合いが良くないものの、妹の雅は霞を慕ってくれているし、父や亡き祖父は姉妹を分け隔てなく可愛がってくれた。そんな家族に囲まれ、平穏に過ごしていたある日のこと、東條家に縁談が持ち込まれた。お相手は鬼族の鬼灯家の次期当主・蓮。東條家の娘宛というので父は雅を嫁がせるつもりの様で、薫も霞も狼狽。なぜなら彼女はまだ16歳。いくら豪胆な性格をしていても鬼灯家の嫁になんて。一応、2年間は許嫁として鬼灯家に住み込み、行儀作法などを習い、正式に結婚するのは18歳になってからだというけれど、薫は娘の性格と気性を知っているだけにこの世の終わりだと嘆いていた。当の本人は全く動じておらず、家族だけがお通夜状態になった数日後、ついに鬼灯家から迎えが。でも、雅がどうにも心配で、思わず私が嫁ぎます!と霞は声を挙げた。薫も娘可愛さと早晩騒動を起こしそうな雅を行かせるのは忍びないのだろう。東條家の娘という条件なら霞でもいいはず、と後押しし、珍しく我を通した霞の意を汲み、彼女を行かせることに渋々父も納得。だが、そんな姉の姿を見て何を思ったのか雅も霞の世話係としてついて行くと言い出した。血は繋がっておらずとも姉妹はお互いの身を案じていたから。いくつもの会社を経営する鬼灯家の屋敷は大きく、当主の蔵之介に挨拶に行くと次女のはずが長女が嫁ぐことになったと聞いてもあっさり承諾。やはり東條家の娘、というのが重要な条件らしい。雅が一緒に付いて来たのも人質が二人の方が都合が良いだろう?と妹の明け透けな言葉も肯定し、二人を歓迎。夫となる蓮は二十二歳。その美麗さに霞は彼に一目惚れ。蔵之介の側仕えの黒田からは今は蓮が会社を継いだこと、くれぐれも彼の邪魔にならないよう言動を慎んでくれと釘を刺されてしまった。連を始め、許嫁は誰でも良かった的な雰囲気だし、この先が思いやられる。猫又族なんて下に見ているくせに、どうして縁談の打診をしたんだろう。しかし、蓮に一目惚れしてしまった霞はそんなことよりも彼が気になってしょうがない。雅に相談するとアタックあるのみ、と力強いアドバイスをくれたので、得意の料理で蓮の胃袋を掴む作戦に出た。東條家でも使用人に混ざって料理を作っていたのもあって少々自信がある。早速、翌朝の朝食作りから参加すると屋敷の使用人たちは困惑。当主夫人の八千流に報告が行き、調理場に来た彼女にどういうことかと尋ねられ食事を作ってます、と答えた霞は出来たばかりの味噌汁の味見を頼むと味付けが気に入られたらしい。明日の味噌汁の具のリクエストを貰い、料理をする許可も得たのだった。でも、蓮の反応がとっても薄い。元々食に興味が無いのかもしれないと内心がっかりしたが、食事作りは続行を決め、屋敷に来てから知り合ったネズミのあやかし・韋駄天ネズミが雅の傘下に入ったことでその協力を得て蓮の書斎にグッドタイミングでコーヒーを差し入れることに成功。一方、蓮の方も霞と会話するチャンスを狙っていた。が、そもそも朴念仁な性格も相俟って中々上手くいかない。そんなある日のこと、蔵之介の従兄弟で、一族の中でも高い発言力を持つと言う正嗣に目を付けられた霞。正嗣は彼女の外見からある人物を思い出していた。しかし、あの女は猫又族でもないし東條家の者でもなかったはず。霞に付いて調べると東條家の遠縁として引き取られた養女と判った。それにあの時の赤子なら年齢も合う。そこで霞が本当に猫又族なのか、手下に命じて飲食物に仕掛けを施すと二つ目で明らかに猫又族ではない確証を得た。間違いない、霞はあの神城家の生き残りだ。かの家の者が持っていたと言う異能を確かめるために、雅に毒を盛った正嗣の策に嵌り霞は妹を助けたい一心で癒しの力を発動。無事危機を脱した雅を見て嬉し泣く霞を横目に、正嗣は彼女を手中に収め、本家乗っ取る策を練り始めたのだった。そして自ら霞に歩み寄ろとしていた蓮は彼女に休日デートを申し込み、お互い充実した一日を満喫。段々距離も縮まった頃、体調を崩したり諸々の騒動で休校状態だった高校に久しぶりに登校。だが、昼休みに屋敷で一大事があったと黒田が彼女を迎えに。慌てて、車に乗り込むと見覚えのない道にどんどん入っていく。到着したのは山奥の別荘。霞は黒田によって別荘の一室に閉じ込められ・・・。屋敷では当然、霞が帰ってこないと大騒ぎ。幸い、かくれんぼをしていて霞のカバンに隠れていた子ネズミが別荘の位置と状況を知らせに屋敷へ帰ることに成功。報告を受けた雅がネズミたちを使い、姉の救出に向かうことになり、蓮も八千流に止められるも蔵之介の協力により独自にその足取りを追います。正嗣は雅と蓮の活躍により追い詰められ、自棄になったのか過去の悪事を自ら暴露。彼女の本当の家族を殺したのが正嗣と判り、怒りに任せた霞のもう一つの力の発現し、彼は片腕を失い捕縛されるのでした。黒田も鬼灯家を裏切ったとして処罰を受け、騒動後に蔵之介や東條家の両親が語る霞と神城家の真実とは?って感じの展開です。ラストの展開等含めあまりネタバレしてもアレなので、敢えて割愛。タイトル含め帯の煽りも微妙に内容に合っていないため、シンデレラストーリーを期待すると若干戸惑うかも。ぶっちゃけ、思ってたのと違う(^_^;) 溺愛されてた?っていうか。いや、内容的にこれはこれで面白いんですよ。ただ、イラストレーターさん繋がりで鬼の花嫁みたいな話を想像すると相当違うので、あまり煽り文とかは気にせず読むのが良いかと。評価:★★★★★お話自体は凄く面白かったです。
2024.08.05
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8月下旬 レジーナブックス 捨てられ妻ですが、ひねくれ伯爵と愛され家族を作ります リコピンさん 私が死んで満足ですか? 誰が殺した悪役令嬢 マチバリさん9月5日 フロースコミックス できるメイド様 29月13日 富士見L文庫 朧の花嫁 二 みちふむさん9月27日頃 スターツ出版文庫 半妖の花嫁 黒夜の鬼の運命の契り 小谷杏子さん 追放令嬢からの手紙 ~かつて愛していた皆様へ 私のことなどお忘れですか?~ マチバリさん10月11日 ハニー文庫 カタブツ公爵との愛しき新婚生活【完全版】 佐倉紫さん9月期はおそらくこれで終わりかな?ギリギリでアルファポリス系の追加はあるかもですが。カタブツ公爵は短編版と完全版、どちらも電子のみだったんですが、紙媒体になるみたいで。完全版の方は購入したら加筆修正分が多そうなので改めて感想記事を書く予定です。
2024.08.04
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