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2021年1月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さん没落令嬢の郁子は、吉原へ売り渡されそうなところを紡績会社御曹司・敏正に助けられる。事業拡大を狙う敏正は政略結婚を持ちかけ、郁子はそれをやむなく受け入れることに…。愛のなき結婚のはずが、敏正は郁子を溺愛し、二人は互いを深く求めあうようになりーーそしてある夜「愛し尽くすから覚悟しろ」ーー閨で独占欲を全身に刻まれてしまい…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 三谷郁子=子爵家の長女。父が作った借金を清算するため吉原に行く決意をして いたが、寸前で敏正に救われる。 津田敏正=日本最大の紡績会社の御曹司。 接待帰りに悲壮な覚悟をした郁子と出会う。三谷子爵家の長女・郁子は、その日、女衒に連れられ吉原の門を潜ろうとしていた。第一次世界大戦が終わり、戦場となっていた欧州の国々の品が出回るようになると日本はあっという間に輸出不振となった。戦後恐慌により輸出業で荒稼ぎしていた家業はあっという間に傾き、何とか立て直そうと奔走していた父は借金を重ね多額の負債を抱えるように。借金の取り立てが毎日屋敷を訪れ、少しでも家計を助けたくて郁子は女学校を辞め、解雇した使用人たちの代わりに率先して家事を担った。妹の康子と弟の寛一には心配しなくていいからと言い含めつつ、自らもこの家の先行きに不安を感じていた時、三谷家に女衒が訪れたのだった。子爵家は借金で首が回らない。そんな噂をどこかで聞きつけたのだろう。女衒は金が欲しいなら娘さんを売るしかないと唆し、父の了承を得るとまんまと郁子を連れ出した。あんたほどの上玉ならすぐに留袖新造になれると言う。たんまり稼いで年季が明ければ家にも帰れると聞き、希望も湧いた。10年はかかるそうだが家族のためだと覚悟を決めた。そんな彼女の腕を取ろうとした女衒の腕を気安く触るなと跳ねのけた時、一人の青年に声を掛けられた。彼から君は吉原に入るのかい?と問われ、そうですと毅然と答えれば、考え込んだ青年に名を尋ねられた。三谷郁子だと答えれば、すぐに子爵家と判ったらしい。彼は津田敏正と名乗り、女衒に彼女の値段を尋ねた。五千圓と聞くと、敏正はでは私が払うと背後にいた助手らしき男性に用意するよう話している。五千圓なんて、大卒の男子の10年分の給与に匹敵する。そんな大金を見ず知らずの女のためにと郁子は衝撃を受けた。君は私が買ったというと、敏正は待たせていた車に彼女を乗せると自宅へと連れ帰ったのだった。津田邸に着くと、君は吉原の過酷さを分かっていないと窘められた。彼から聞いた遊女たちの悲劇は想像を絶するもので、10年我慢すればと甘い考えをしていた自分を恥じた。年季明けの前に体を壊し亡くなる者も少なくないと言うし、運良く出られても元遊女では結婚も難しい。青い顔をする彼女に怖がらせ過ぎたと思ったのか、幾分口調を柔らかくした敏正は、三谷家のことは俺が何とかすると励ました。どうして見ず知らずの娘の為にそこまで?と尋ねれば、女衒への毅然とした態度に見惚れたからかな、と笑っていた。この屋敷の使用人の春江に聞くと、彼は日本最大の紡績業・津田紡績の御曹司なのだそうだ。しかし、そんな敏正でも五千圓は大金。後に彼の父親である社長から大目玉を食らったそうだが、よくやったと褒められもしたと彼は言っていた。実は敏正が慕う副社長・一ノ瀬氏の夫人が郁子の亡き母に大恩があるとのこと。それで社長から褒められたと言うことか。話自体は初耳ではあるが、母らしいとも思った。それにしたってあんな大金用立ててもらうなんて心苦しい。敏正の住む別邸で家事手伝いをしながら過ごして一ヶ月ほど経ったある日のこと。彼から心苦しそうに告げられたのは郁子との政略結婚。今回の援助で三谷商店と提携し総合商社にして輸出業に力を入れたいと言う案は賛成者多数だったが、反対者もそれなりにいた。この時代、紡績業だけではいずれ頭打ちになる。三谷商店という基盤があるのだからと社長も副社長も乗り気なのだが反対派を黙らせるにはもう一つメリットが欲しいそうで、それが郁子との結婚だと言う。没落しても華族、箔も付くし妻の実家家業をテコ入れするという名目ならということらしい。一緒に暮らすうちに、敏正に好意を抱いていた郁子は逆に申し訳なくなったが、少なくとも彼の計画の力にはなれる。決意した彼女はその申し出を受け入れたのであった。その際、三谷家に挨拶に来た敏正は彼女の父を𠮟りつけた。会社が傾いているのにビル建設まで強行しようとして詐欺に遭い、娘を売るなど以ての外だと。でもこの結婚で家族になる以上、援助は続けると言われ、傲慢な父も義息子に頭を下げていた。一方、津田家への挨拶で郁子は歓迎された。苦労人だと言う彼の母は優しく気配りの人で、未だに義父と仲睦まじく自分もそうなれたらと思う。暫くして式を挙げた二人。どうしてか同衾はしても手を出してこない敏正にヤキモキし、ある時、敏正には馴染みの娼妓がいると聞き嫉妬で体調を崩しかけた郁子。その件については春江が奥様を悲しませるなんて言語道断と彼を叱ったことで、敏正に誤解させてしまってすまないと謝られた。人気の遊女・菊乃とはそんな仲ではなく、接待等で世話になっている礼として彼女とその間夫との手紙を敏正が預かり橋渡しをしていたのだそうだ。この浮気騒動後、誤解が解け気持ちを打ち明けたおかげで無事に二人は結ばれた。しかし、郁子の父が敏正に騙されたと怒り狂い実家で暴れているという康子からの連絡を受け・・・。郁子の父・茂は、娘婿に叱られた上、実権が津田紡績に移ったことから不満が募り、その隙をつかれまた詐欺に騙されていました。当然、敏正は無実。まぁ、商才の無い茂に任せるのは泥船に乗るようなものなので、一ノ瀬氏に社長に就いてもらい、茂には名誉職にはなるが会長にと考えていました。それが乗っ取りだというならまぁ似たようなものでしょうけど、だってあんたじゃまた借金重ねて会社潰すでしょうよ。この点に関しては郁子も同じ考えで、後に真相を聞いた彼女も納得します。この件ですったもんだ揉め、事件に発展したりもするんですが、茂を唆した詐欺師も逮捕され、また敏正からキツイお叱りを受けた茂は、漸く自らの愚かさを思い知って娘夫婦に土下座して詫びるのでした。その後、津田紡績製の絹糸を使った布を始め、江戸切子等、日本の品質の良い品々を海外に輸出した三谷商事は大当たり。現代でも大企業として更なる発展を続けるわけですが、それはまた別の話。ラストに郁子の妊娠が判明して大歓喜する敏正と春江の様子が描かれて物語は幕。この作家さんのベリーズシリーズは皆繋がってるのが定説なんですけど、流石に大正時代じゃなぁと思ったら、そういうことねと。三谷商店から三谷商事に社名が変わったことで、漸く気付きました。そういえば、「君を愛で満たしたい」のヒーローも三谷商事の御曹司で一ノ瀬姓だった。年齢的に今作の一ノ瀬副社長は彼のひいおじいさん?あと「身ごもり政略結婚」のヒロイン・結衣の実家の和菓子屋「千歳」も明治創業というだけに、今作でも登場。名前だけなら結衣の夫・大雅の会社「アルカンシエル」と同じく結構な登場率かも。こういう仕掛けも気付くと何だか楽しいですね。評価:★★★★★
2024.09.16
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2024年8月刊蜜猫文庫著者:茜たまさん王女クラウディアは、婚約者のシグルドに対し素直になれず苦悩していた。だが春の夜シグルドを庇って死んだはずの彼女は、何故か冬の終わりに戻って目覚め、今度こそツンデレを止めると決心する。シグルドに対する好意を露わにする彼女に、彼は控えめな態度を止め、強気で迫ってくる。「可愛いですね。そんなに真っ赤になって」大好きな彼に甘く愛されて幸せなクラウディア。だが前回シグルドを狙った敵の正体は謎のままで!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 クラウディア=フェスキート王国王女。 大好きな婚約者のシグルドに素直になれず悩んでいた。 シグルド=公爵家当主で星の聖獣・ヴァリーの聖獣主。 クラウディアに執着している シャミーラ=ラセルガ帝国皇女。 エミール=王太子。クラウディアの兄。 イネス=クラウディア付きの筆頭侍女。聖獣と人間が親交し続けている世界。始祖聖獣の降誕祭で湧くフェスキート王国で王女・クラウディアが婚約者を庇い亡くなった。だが、死んだはずの彼女は何故か自室のベッドで目覚め、2ヶ月ほど時間が巻き戻っていることに気付いた。確かに私はシグルドを庇って凶刃に倒れたはず。でも、あの日は始祖聖獣を称える祭りの夜だった。もしかして始祖聖獣が私を憐れに思い助けてくれたのかもしれない。思えば、恥ずかしさが先立って婚約者であるシグルドにはいつも思っている言葉とは逆のことを言っては困らせていたように思う。兄のエミールが言うには、クラウディアのように好きな人に素直になれない言動をツンデレと呼ぶらしい。シグルドに会う度に治さなければと決意するのに、上手くいかないのは彼がカッコ良すぎるからに他ならない。天候を操る星の聖獣・ヴァリーの聖獣主であるシグルドは、何に対しても才能溢れる人物だった。王女でなければ彼との婚約は叶わなかっただろう。しかし、こうして始祖聖獣のおかげで死に戻ったのだ。ツンデレは封印して素直な気持ちを口にしよう。そして降誕祭でシグルドを狙った犯人を捕まえる。そう決意した束の間、心の準備が整う前に彼と会うことになったクラウディアは、いつもなら口が裂けても言わない彼への賛辞と好きなのっ!と盛大に告白。居合わせたエミールは唖然としていたが、シグルドは感動していた。動揺する彼女を部屋に連れ込み、熱烈なキスを仕掛けて来たのでクラウディアは卒倒寸前。しかも胸まで触られて一体どうしちゃったの?とパニックに。それでも、素直を心がけたクラウディアは、以降彼にベッタリ。元々、シグルドは何事にもクールでストイックな割にクラウディアのことに関してだけは狭量で嫉妬深かった。出会いの経緯も理由なのだろうけど、その執着ぶりはある意味異常に見えた。クラウディアのツンデレにも内心喜んでたようだし、何を思ってかいきなり素直になった彼女に好きだと言われたのだ。そりゃあ遠慮もしないだろう。エミールは目の前の二人の様子に辟易しつつ、納得していた。シグルドとの関係はあの告白以来、急激に進展した。彼が望むので婚前交渉まで許してしまったけれど、気持ちも満たされ幸せだ。クラウディアがロマンス小説を読むだけで眉をしかめる侍女のイネスには絶対に知られないようにしないと。両親に告げ口でもされたらことだ。だが、うつつを抜かしてばかりもいられない。暗殺犯を見つけなければ。そんな最中、最近勢力を伸ばしているラセルガ王国からシャミーラ皇女が来訪。以前、皇女は横暴な皇太子を抑制するため、星の聖獣主であるシグルドを婿に迎えようと求婚して来たことがある。その際は、私には婚約者がいますのでと彼から辛辣に断られて縁談は無しになったのだが、まさかまだ諦めていないのでは。クラウディアは不安に駆られていた。しかし、シャミーラは男勝りでサバサバした性格の人で、一度断られたのだからもうそんな気は無いと宣言。クラウディアのことを気に入り、二人は友人関係になった。自由奔放なシャミーラは滞在中に少々いざこざを起こしたりもしたが、クラウディアに協力もしてくれた。シャミーラが言うには好戦的な皇太子のせいで帝国が揺れていると言う。そういえばあの皇太子、私に求婚してきたっけ。ラセルガの国力からお父様が少し乗り気になってシグルドとの婚約を解消されやしないかびくびくしたものだ。結局、この時は彼が国王を説得し、星の聖獣主の機嫌を損ねる訳にはいかないと縁談を断ってくれたのだが、つくづく破談になって良かった。まぁ、この一件のせいでシャミーラにシグルドが目を付けられたわけだが。それに平和なフェスキート王国とは言え、穏健派と革新派の対立により内情は穏やかではない。一度死んだ経験から考えを改めて勉強を始めたクラウディアもこの対立には頭を悩ませていた。そんな最中、彼女は情報通の伯爵令嬢・ノーラのお茶会に参加し、規律違反をして降格処分にされた副隊長のラダンがシグルドを恨んでいるという情報を入手。これまでの調査の結果、一番彼が動機がありそう。しかし、ラダンはシグルドを恨んで等おらず、むしろ不器用な性格の彼のことを心配してもいた。ラダンの実家がバリバリの革新派なこともあって怪しいと思ってたんだけどなぁ。本命と思っていただけに、シロと判って犯人探しは振り出しに戻ってしまった。しかも、彼女がラダンと親しげに話していたとシグルドの嫉妬が爆発。もうすぐ降誕祭だと言うのに、公爵家所有のタウンハウスにクラウディアは監禁されてしまい・・・。意図せず、ループものが続いてしまいました(^_^;)ツンデレ王女が死に戻って愛しい婚約者を救い幸せになるために奮闘するお話です。先ず、自分が死んでは話にならないし、彼が死ぬのはもっと論外。侍女のイネスに渋い顔をされながらも行動していたクラウディアは、ある時一つの真実に気付きます。それは、自分が死に戻った原因。最初は始祖聖獣の思し召しかと思っていた。でも違う、これは星の聖獣の力。ヴァリーは天候だけでなく時をも操れる力も持っておりクラウディアを死なせまいとシグルドが無理をして2ヶ月の時を巻き戻していたのでした。結果、ヴァリーは暴走し、その力を抑え込んでいたシグルドは段々黒い力に侵食されて行くのですが、それを救ったのはクラウディアの聖獣・ルルでした。このルル、小鳥形態で微風を起こす程度のか弱い聖獣かと思われていたものの、ルルこそ始祖聖獣だったというオチ。恐らく、時を戻したのはシグルドだろうなと本文を読んでれば大抵の人はピンとくると思うんですが、始祖の正体の方は意外。ぶっちゃけ、そこまで活躍してなかったから。そして、暗殺犯に関しても見事に騙されたーって感じ。ちょっと言動が「ん?」と思わないでもなかったんですが、成程そういうことだったのねと、動機についても納得。犯人については敢えて書かないでおきます。気になる方は是非読んでみてください。諸々片付いて、シグルド目線で語られたクラウディアへの想いがなんかもう重い、重すぎる。でもまぁ、彼女はそれも嬉しいようですからね。エミールがシャミーラと意気投合の末にラセルガに婿に行き、3年後、二人の子宝に恵まれたフェスキート王国国王一家の様子が描かれて物語は幕。評価:★★★★☆ループものがお好きな方は楽しめると思います。
2024.09.05
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2024年8月刊ベリーズ文庫著者:一ノ瀬千景さん甘えベタで仕事人間な美月。ある日火事に巻き込まれたところを、幼馴染の御曹司・晴馬に救われる。20年ぶりに再会した彼は、エリート消防士になっていた。お礼をしようとしたら「3か月限定の妻になってほしい」とまさかの依頼をされて!? 「素直に俺に甘えろよ」--偽りの結婚生活なのに、独占欲滲む晴馬の眼差しは美月をとらえて離さない。時に甘く時に強引な彼の一途愛が溢れ出し…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 羽山美月=ホテルコンシェルジュ。恋人と職を失い途方に暮れていた。 過去のトラウマで火が苦手。 北原晴馬=エアハイパーレスキュー隊員。美月の昔馴染み。北原善次郎=晴馬の祖父。ホテルでコンシェルジュとして働く美月は、俗にいう仕事人間。同じ職場で働く恋人・只野省吾からは結婚したら家庭に入ってほしいと言われているけれど、ホテルで働くのが夢だった彼女にとってそれは到底受け入れられない提案だった。俺との結婚より仕事の方が大事なのかよ、と省吾は不貞腐れて最近はデートにも誘ってくれない。そろそろご機嫌取りしておくかなと思っていたら、なんと彼は朝のミーティング終りに自らの結婚を発表。しかもお相手は美月ではなくフロントの新人・本間由奈と聞いて茫然。おまけに由奈は妊娠中らしい。美月と省吾が交際していることは同僚は皆知っているので、大体の事情は察したようだった。二人が退室した後質問攻めに遭い、実は只野さんとは大分前に別れてたのと苦しい嘘を吐く羽目に。しかし、話はこれで終わっていなかった。由奈が美月からマタハラを受けたと上司に訴えたのだ。当然、そんなことはやっていないと抗議したものの、上は聞く耳持たず。鉄道事業の重役のお嬢様の由奈になんてことを、と逆にカンカンだった。内定していた神奈川支店への転勤とチーフの昇進の話も取り消され、挙句に退職まで促された美月は一流ホテルでも長い物には巻かれろ精神なことに心底腹を立て、じゃあ辞めますと宣言。業務引き継ぎもあるので辞めるのは来月末になるが、マタハラ疑惑のせいですっかり彼女の味方はいなくなり腫物扱いの日々。流石に腹に据えかねて由奈にどうして嘘を吐いたのかと尋ねれば、婚約者の元カノが同じフロント業務とか鬱陶しくて~、早く消えて欲しかったんですよねと宣ったので、開いた口が塞がらない。由奈の言葉に少なからずショックを受けた美月は、飲みたくなって最寄り駅近くのビルにあるバーへ。口当たりの良いカクテルでほろ酔いになっていると火災報知器の音が響き渡ってビックリ。見ると通路向かいの焼き肉店の調理場から炎が吹き上がっていた。避難する人々を横目に、炎を見てしまった美月は腰が抜けて動けない。母を飲み込んだ火。トラウマでガスコンロさえ点けられない彼女には刺激が強すぎた。意識を失いかけた美月を率先して避難誘導していた青年が気付いて支えてくれて思わず見上げるとそこには懐かしい顔が。晴馬、と呟くと彼女は意識を失った。目を覚ますと既に朝で、見覚えのない部屋。晴馬との再会は夢ではなく、意識を失った彼女を自宅で介抱してくれていたらしい。会うのは母が亡くなって以来だから20年ぶりか。母子家庭だった美月はカナダに住む母方の伯母に引き取られ長らくそちらに住んでいた。どうしても日本のホテルで働きたくて大学入学を機に帰国していたんだと話すと、道理で音沙汰が無かったわけだと彼も納得していた。晴馬とは小学3年生まで同級生で、母が家政婦をしていたお屋敷のお坊ちゃまであった。所謂昔馴染みという関係だが、疎遠になっていたのは母が亡くなったあの火事の時、母を助けに飛び込もうとしていた美月を彼とその兄に必死に止められたからだった。今思えば止めて当然なのだが、母一人子一人の彼女にとって母を亡くしたことがかなりの衝撃で誰かを責めずにはいられなかった。思わず大嫌いと叫んだことを後に死ぬほど後悔したものの、結局謝罪できぬままだった。昨夜、あんな状況で再会したのはなんという偶然だろう。晴馬の現状を尋ねると、彼はなんと消防官になっていた。主な活動内容はエアハイパーレスキューという、ヘリから降下して人命救助する隊員らしい。子供時代にはお父さんの会社を継ぐと言っていたのに、どういう心境の変化で?と何の気なしに聞くと消防官になりたいきっかけがあったんだと言う。それに家は長男が継ぐから問題ないのだそうだ。昨夜は、非番で食事をしにあのビルに行ったら火災が起きたので、避難誘導を手伝っていた所、倒れそうな女性を見つけそれが美月だと気付いて心底驚いたと言われ、今更ながらお礼を言った。案外近所なのが判ったので、今度何か奢るからと連絡先を交換しその日は別れた。相変わらず針の筵状態の中、淡々と仕事をこなし帰宅途中に省吾に呼び止められた。彼は由奈とは金目当ての結婚だから、良ければ内緒でこれからも会おうと不倫相手に誘って来たので、美月も激怒。もみ合っているといつから聞いていたのか晴馬が割り込んで来て俺の婚約者に何するんだと一喝。芝居と気付いて美月も話を合わせると省吾は不服そうに立ち去ったが、タイミングの良い晴馬の登場に感謝した。どうやら、晴馬は親族が集まる会合でこのホテルの会議室に来ていたようだ。彼も休暇だというので呼び出しが無ければ付き合えるとあの日のお礼に食事に行くことに。とんでもない高級店を指定されビビっていると、今日は俺が払うから頼みごとを聞いて欲しいと言う。何事かと思えば、俺の妻のフリをして欲しいとのこと。期間は3か月間。ドバイで悠々自適に隠居生活を送る晴馬の祖父・善次郎が久々に帰国するらしく、その際、彼に縁談をいくつも持ってくる予定らしい。だが、晴馬はまだ結婚するつもりはないのでほとほと困っていた。だからもう相手がいるから心配するなと婚約者を紹介すれば祖父も引くだろう。言いたいことは判るが、それでなんで私なの?彼が言うには自分に少しで好意を持っている女性だと気を持たせてしまう。それに多少なりとも自分を知ってくれている女性なら話も合わせやすいではないか。と言われ思わずそれもそうかと納得。協力してくれれば今のホテルよりグレードの高い外資系ホテルへ紹介してくれるらしい。省吾との会話であと2週間ほどで退職するのはバレているからこその報酬だが、正直喉から手が出るほど伝手が欲しい。少々悩んだが、飽くまで3ヵ月のみの婚約者ならと言う条件で引き受けることに。帰国した善次郎は孫の婚約に大喜び。早速婚姻届けを出しに行けと迫られた時には肝を冷やしたけれど、数か月後の美月の誕生日に入籍したいと言えば渋々引いてくれた。数日間、二人の暮らしぶりを見たいと晴馬のマンションに善次郎が泊まったりと想定外のハプニングは起こりつつも、晴れやかに彼を送り出すことが出来た。でも、まだドバイには帰っていないので油断はできない。ひょっこりやって来て偽装だとバレたらとんでもないことになる。取り敢えず3ヵ月はこのままでいてくれと頼まれ偽装の同棲生活を続行中。次の就職先も決まった。晴馬が紹介してくれたあのホテルでコンシェルジュとして働く彼女の生活は久しぶりに充実。そうこうしているうちに二人も急接近していき、美月は晴馬の一挙手一投足が気になって仕方ない。彼からのスキンシップも増えた気がする。キスされた時は舞い上がってしまったが、そのすぐ後にかかって来た電話から晴馬の様子がおかしい。しかも今のことは忘れてくれと言われて大ショック。一気に気落ちしてしまった美月は彼が同年代と思しき女性を抱き支えている場面に遭遇。まさか本命が出来たの?と更に衝撃を受けた彼女はそれでも彼に言われるまでは契約を果たそうと思っていた。そんな最中、美月の勤め先のホテルで爆破事故が起こり・・・。晴馬が消防官を目指したのは、美月の母が亡くなった火事がきっかけでした。あれ以来疎遠になってしまった彼女を彼はずっと想い続けていたのです。祖父の縁談攻撃に辟易していたのも本当で、偽装結婚を頼んだのもその間に距離を近づけ告白するため。暫く一緒に暮らすうちに距離も縮まり我慢しきれずキスをして、いざ告白をと思ったのも束の間、電話で知らされたのは同期の殉職。防火服は水に塗れると耐火性が下がるせいか、消防官の殉職率は意外にも高く火事で母親を亡くした美月をまた一人にしてしまうのではと晴馬は思い悩むのでした。あの日、美月が目撃したシーンは殉職した同期の奥さんで、葬儀が済み、彼女の不安など話を聞いていたら眩暈を起こしたので支えていただけでした。後にそのことはきちんと説明されたので誤解も解けることになるのですが、この話の前に美月の勤め先のホテルが爆発物によって火事になり晴馬たちによって救出されると言うエピソードも。この一件で徐々に美月も火への恐怖を克服。お互いの気持ちを打ち明け、正式に結婚を前提とした交際を始めます。善次郎には偽装のことがすっかりバレていましたが、結局上手くいって良かったと祝福され手本編は幕。なんだ、省吾達に何か天罰は下らないのかと思ったら、最後の方で彼に多額の借金が発覚して婚約破棄になったことが語られていて、本当に顔だけの地雷男だったんだなぁと。こんな男と別れて正解でしたね。てか、それ以前によく結婚したら家庭に入れとか言えるわ。借金塗れでどうするつもりだったんだろう。まぁ、だから金持の令嬢に走ったんかな。おまけの番外編は本編の数か月後、無事入籍を果たした二人がドバイでハネムーンを満喫する話。評価:★★★★★
2024.08.19
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タイトル通り、現在楽天ブログで起きている不具合だそうです。この件については公式の方からもアナウンスが来ておりまして、現在対策中とのこと。いやぁ、昨日の投稿もあれ?編集できない上に、ちゃんと投稿出来てる?な感じでいつもの倍近くの時間がかかってたんでおかしいなと思っておりました。ので、今朝UPされた記事に誤字が多いのはそのせいです(^_^;)変換ミスに気付いて直そうにも編集できないので直しようもない状態でして。先程投稿しようと試したら画像リンクすら貼れなかったのもあり、多分、明日の朝9時の更新は出来ないと思います。もし、9時に上がってたら復旧間に合ったんだな、と思ってくだされば。こういう短い文章は問題なく投稿できるので、まさかまた長文は止めてばりの仕様になったとか?だったらヤバイ(苦笑)追記公式からのアナウンスで復旧したそうです。良かった。これでいつもの方法で投稿できる。しかし、これで1日押してしまったので、休日が続かないと朝9時の予約投稿が出来なさそうです。毎日投稿は変わりませんが、時間はまちまちになると思います。
2024.06.18
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2024年1月刊蜜猫F文庫著者:熊野まゆさん過激すぎてリタイアした18禁乙女ゲームの世界に転生したことに気づいた伯爵令嬢マリア。だが彼女はゲームの世界には居なかったただのモブだった。前世の経験を生かし魔法を使ったプリザーブドフラワーの開発にいそしむ彼女は最推しだった花好き公爵、トラヴィスに業務提携と婚約を申し込まれる。「きみが欲しくてたまらない」大好きだった人に望まれ嬉しいけれど、えっちなゲームの内容を思うと受けていいのかためらわれて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 マリア=前世の記憶を持つ伯爵令嬢。トラヴィス=ゲーム「ドキロマ」の攻略対象の一人。 マヌエル=ディラ国の王太子。チェルシー=王太子妃でゲームのヒロイン。 ジェナ=トラヴィスルートの悪役令嬢。ブリザードフラワーの研究開発に明け暮れている伯爵令嬢・マリアは前世の記憶を持っていた。ここが生前の彼女がプレイしていた18禁乙女ゲーム「ドキドキ☆ファンタジーロマンス」(通称「ドキロマ」)の世界だと気付いたのはマリアが15歳の時のこと。18禁と付くだけあって過激なイベントてんこ盛り、さすがに耐えかねてリタイアしたものの、国名に王太子とその妃となった人物の名前が、ゲームと同じなので疑うべくもなかった。でも、マリアなんてキャラは登場していなかったような。エンディング後の世界とはいえど、きっと自分はモブ中のモブに違いない。前世と同じく、今の人生でもブリザードフラワーを作りたい。当然薬品や機器などは無いのだが、この世界には魔法があった。マリアも水属性の魔法が使えるためそれを応用し、おかげで予想よりも早く商品化できそうだ。せっかくなのでマリアンフラワーと名付けてみた。そんなある日、噂を聞きつけてカーライル公爵が是非協賛したいと伯爵家を訪れた。トラヴィス・カーライル、彼こそ前世での最推しキャラ。いざ対面するとあまりの格好良さにクラクラする。彼は随分とマリアンフラワーを買ってくれていて、公爵領の生花業も協力できるはずと話し、マリアと婚約したいとまで言い出した。王太子・マヌエルの友人で五大元素の魔法を使えると言うエリートからの申し入れに両親は大喜び。もう嫁に出す体で燥いでいた。事業提携するには実際に公爵領の花畑を見てもらいたいと少々強引に連れ出されたけれど、何か妙に好感度高くない?のっけから婚約話が出たので、それとなく本気ですかと尋ねれば、当然だとばかりに肯定されて困惑。リタイアしたので、彼のルートもクリアできていない。でも監禁とか結構物騒なエンディングだと聞き及んでいた。だが、SNSでの情報によればトラヴィスには溺愛エンドもあるらしい。当時も興味はあったものの結局そのままだったんだよなぁ。だから、先行き不明過ぎて不安しかない。公爵領では、トラヴィスの優秀さにひたすら感激し、一方マリア自身も自覚が無いながら非凡な才能を見せ彼に惚れ直されていた。後日、トラヴィスから正式に婚約を申し込まれ、ひと月後には婚約披露パーティーも開催されることに。マリアはその会場でトラヴィスルートの悪役令嬢・ジェナと遭遇。彼に憧れる令嬢は多く、妬まれるとは覚悟していたが、侯爵令嬢のジェナは身分もあってかマリアを見下しているようだ。相応しくないとかアレコレ言われたけれど、挨拶回りをしていたトラヴィスが隣に帰って来ると慌てて逃げて行った辺り、彼に嫌われたくないんだろう。暫く経って、二人は結婚。婚約時から理由を付けて公爵邸で同居させられてたので今更だが、やはり感慨深い。色々謎だけど、こうして結婚に行き着いたのはエンディング後の世界だからだろうか。結婚して一層マリアを溺愛し、どこへでも彼女を伴い出掛けていたトラヴィスだったが、そろそろ忙しくなると言う。そんな彼には、先日自分の前世のことと、ここが架空世界であることを明かしていた。一風変わった所も好ましく思われてはいたものの、やはり不思議に思う面もあったようで、問い詰められた結果だった。前世のことを明かしてもトラヴィスの態度は全く変わらず、愛してくれているのは本当にありがたい。彼はジェナが悪役だったと聞くや眉をひそめていて、どうしてか尋ねると、彼女の父・アトリー侯爵には謀反の嫌疑がかかっているのだとか。その対策の為に忙しくなると言う彼は、ジェナにマリアが妬まれているのも気にかかっているようで、危機に陥った際にトラヴィスがその場に転移できる魔力を込めた石をネックレスにして彼女に渡した。その日、トラヴィスに付き添い、王宮にやって来たマリアは王太子妃となったヒロイン・チェルシーと初対面。気さくな彼女とすぐに仲良くなり、マリアンフラワーを使った小物を今度プレゼントすると約束。話し合いを終えたマヌエルとトラヴィスとも合流し、迷路ゲームで遊んでいたマリアは、マリアンフラワーに不具合があったとアトリー侯爵家に呼び出され・・・。当然、これはジェナによる罠なんですが、潔白を示すためにチェルシーも付いてくることになり、断れない状況。屋敷に着くと何だかんだ理由を付けてチェルシーと引き離されたマリアは、ジェナの幼馴染の伯爵令息・ベンに襲われます。この国には、どんな理由があろうとも既婚者が配偶者以外と関係を持ったら即離婚という、性犯罪被害者に優しくない法律がありました。ジェナはそれを狙ってマリアを襲わせるも、例のペンダントのおかげでトラヴィスとマヌエルが駆け付け事なきを得ます。しかし、弱みを握られているのかベンは今回の件は飽く迄自分の独断だとしらを切り続けたせいで、侯爵親子を罪には問えず。ならば謀反の罪でしょっぴいてやるとトラヴィスが怒りに燃えていた頃、チェルシーのお茶会に出席していたマリアをジェナが氷魔法で周りを凍らせ誘拐するという暴挙に。魔法を無効化するという塔に立て籠もり、マリアを人質にする侯爵達でしたがまぁヒーローを怒らせる方がバカだよね、とあっさり御用。無事、救い出されたマリアは諸々の出来事を思い出し、これが噂の溺愛ルートだったんだなと気付いて幕。地味で何処にでもいるような自分はてっきりモブだと思いきや、実は幻のエンディングのヒロインでしたって言うオチ。最近割と出て来るパターンながら面白かったです。ヒロインが自覚なくとも前世含めハイスペックな所も良いし、全ルートクリアの猛者というわけでもない。過激すぎる内容に居た堪れなくなってリタイアしてるせいで、暗中模索の中、最推しのヒーローに溺愛されて幸せになるお話。評価:★★★★☆
2024.06.06
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仕事でちょっと読書の時間が取れないので雑談をば。昔から本好きなので、色々読んで来ましたが、続きが出ない&モチベが下がったなどの理由で続きが出ても買わないなー&続編出す気はあるの?なタイトルについてあれこれ。「ONEPIECE」言わずと知れた国民的少年漫画。それでも96巻くらいまでは買ってたんですけど、ワノ国の序盤の展開がどうにもダメで、結局挫折。もうアニメで見れば良いやってことで手放しました。でも、漫画の方は新章に入って盛り上がってるらしいですね。「ガラスの仮面」この巻が出たのが2012年。もう11年待ってるんですが、50巻はいつになるの?挫折というか、作者さんのコメントではあと5巻くらいで完結らしいのに、一向に新刊が出ない。最初の方のコミックスはもうページが変色してるんで、文庫版で買い直そうかと思ったりもしたけど、完結させるつもりがないなら、それもなぁ。あと、マヤと真澄がくっつかなかったらブチ切れる自信がある。「BRONZE」尾崎南さんのBL漫画です。ドラマCD&OVA化もされており、主人公役の声優さん目当てで原作にも手を出し、見事にハマりました。このお話を読むためにマーガレットも買ってたっけ(遠い目)んが、段々内容がとんでもない方向に行きまして、主人公が自らの腕を日本刀で〇断というショッキングなラストシーンエピソードから長らく休載。ど、どういうこと? 休載の原因は作者さんの体調不良とかで、再開も未定。その間にレーベルが変わって新しいドラマCDの発売が決まったんですけど、発売2ヶ月くらい前になって脇はそのままなのに主役二人だけキャスト変更の告知があってファンは大荒れ。当時の私もブチ切れた記憶が(苦笑)なんか急激に冷めて原作漫画の情報を追うのも止めてしまい、挫折。以降どうなったのか謎のまま。この記事を書くにあたり、検索してみたら電子書籍で完全版として発売されてるようです。が、終わってるわけでは無さそう。「奇談シリーズ」こちらから小説。ホワイトハート文庫の「奇談シリーズ」です。結構売れてた印象だったので、ご存じの方も多いかも。29巻まで発売されており、2011年にこのお話が出てから全く音沙汰無し。いや、完結と明言されていなくとも一応の決着が付いてれば、ああ実はあれで終わってたんだなとも思えるんですけど、真相は闇の中のまま。このレーベルさん自体もう無いのかな?と思ったら、今は電子オンリーらしい。続きは出ないのに30冊近い既刊に本棚を圧迫され、引っ越しを機に手放しました。当時は新刊出る度に最初から読み直してたほどだったのに、きちんと終わらせるのはホント重要。まぁでも、もしもまかり間違って完結巻が出たら読んでみたい気はします。「富士見二丁目交響楽団シリーズ」ルビー文庫の人気シリーズ。もう完結してるんですかね?1巻がとにかく面白いのと刊行ペースも早かったので読んでたんですけど、長いっ。一応、第4部までは買ってて購入した分は読了してたかと。一時期、BLにも片足突っ込んで好きな作家さんの本は新刊出る度に買ってたものの、ある時急にこのジャンルに冷めちゃって(たまにこの症状が出る)、ラノベ一辺倒に戻ってました。ので、内容や展開がどうこうというよりモチベが下がったからが挫折した理由かも。それに、既に出来上がってるカップルの話を読み続けるのがキツかったってのもある。今読みなおしても面白いだろうとは思うんですけどね。今、思い出したのは、この5作品何か懐かしい。
2023.09.04
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とは言っても、1週間はかからないかと。諸事情で数日更新が難しくなりそうでして。でも、本を読む程度なら出来そうなので、お休み中は積読本消化に励みます。新刊もちょこちょこ購入していますし。次の更新は26日を予定していますが予定は未定。遅くても27日の朝には。取り敢えず、再開一発目は「死神の初恋」の最新刊か、玉紀直さんの新作のどちらかになると思います。
2023.01.21
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