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しばらくこの日記を書いていなかったので、 「inatoraは死んだんじゃないか?」という噂がちょこちょこ出ていますが、このとおり生きております。(笑)もちろん、この相場ですから、全くの無傷というとそういうわけでもなく、小型株を中心に触っている私も幾分やられているのですが・・・。(累計パフォーマンスは、下に記載しています。)さて、タイトルにありますように、このサイトでの日記記入は今日が最後となります。まあ、もともと書く頻度が落ちていたので、あまり気にしている方は殆どいないかと思いますが・・・。日記の記入は2004年9月からでしたので、1年9ヶ月という長いようで短い期間でしたがありがとうございました。日記は削除せず保存コンテンツとします。最後となりますので、いくつかお知らせをしたいと思います。1.5月までのパフォーマンス推移(2005年12月末=10,000)5月までのパフォーマンス推移です。2005年1月: 9,983(▲0.17%)2005年2月: 9,943(▲0.40%)2005年3月:10,033(+0.90%)2005年4月: 9,722(▲3.10%)2005年5月: 8,992(▲7.50%)←5月30日時点累計で▲10.1%となっておりますことをご報告いたします。(ただし、5月30日時点)(1)この間、いろいろと売買をやっており、かつて保有していた銘柄のうちのいくつかは利食いをしたり損切りをしたりして保有していないものもありますが、それでも主力銘柄と位置づけている「7548 サンクスジャパン」と「4653 ダイオーズ」の2銘柄は、いまもがっちりと保有しております。(2)4ヶ月間の検証作業を経て、4月からシステムトレードを開始しました。4月は逆張りがかなりワークしてすこぶる良い成果でした。5月は若干のマイナスです。なお、上記のパフォーマンスにはシステムトレードの成果を含めておりません。(3)基準価格の更新は定期的に行いたいと思いますが、ポートフォリオは非公開とさせていただきます。私にとっても、今年は厳しい相場ですが、長期にわたって生き残ることを最優先課題としたいと思います。2.ブログ移転のお知らせ現在、私自身のコンテンツがかなり散逸しております。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ここでまとめてお知らせしておきたいと思います。よろしければ、「お気に入り」に追加していただければと思います。(1)inacchiのトレード日記http://plaza.rakuten.co.jp/inacchi/システムトレードの日記です。システムトレードを始めた経緯、システムトレードの基礎などを記載しております。手法は「短期の逆張り」です。(2005年12月執筆開始。)(2)エンジュク「割安・成長株投資研究会」http://value.enjyuku-ri.com/投資教育会社「エンジュク」でファンダメンタルズ投資に関するブログを執筆しております。(2005年11月執筆開始。)(3)投資の世界を極める!投資情報会社経営陣inatoraの日記http://iitech-inatora.seesaa.net/6月より新たに投資情報会社(および、投資会社)を設立しました。今後はこちらで経営者としてのブログを執筆します。私の場合、経営者というよりは、投資ヲタですが。(2006年5月執筆開始。)(4)他にも「会計日記」があるのですが、自らが勉強した内容のメモとして使用しているだけなので、こちらは非公開とさせていただきます。(投資の話題一切なしです。)3.会社設立のお知らせ上記のブログにもありますように、投資の世界を極めるべく、パートナーと共に、投資情報会社の経営に乗り出しました。会社名は、 「インターネット・インベストメント・テクノロジー」(略称IIT)です。個人投資家のために真に必要な投資情報を提供する会社を目指します。将来的には、アセットマネジメント事業の展開も考えております。会社概要の詳細につきましては、以下のサイトをご覧いただければと思います。http://www.analyst-report.jp私自身、それなりの「投資ヲタ」であるという自負がありまして、投資に関しては単なる「資産形成のための手段」という以上の関心があります。もともとは「自分が如何にして投資で収益を上げるか?」ということから始めた投資研究であり投資分析ですが、それを少しでも多くの方にフィードバックできればと考えております。これは過去のブログにも書いたのですが、会社経営に乗り出したもう一つの理由として、将来的に自らがファンドを持ちたいという想いもありました。最初は、銘柄分析レポートなどのコンテンツを販売する投資情報会社ですが、将来的に目指す投資会社のための基礎という位置づけで考えております。私と同様の想いがあるパートナー保田望氏のブログもここで併せて掲載しておきます。http://www.superfund1.com/4.最後に最後のほうは更新が滞りがちではあったものの、いま思えばよくここまで日記が続いたと自分でも関心しております。私は、もともと文章を書くのが苦手でして、学生時代の作文や論文、あるいは、社会人時代の報告書作成などを書くのは億劫でしょうがなかったのです。日記などはほぼ確実に3日坊主でした。また、ホームページ作成においても、かつて「ホームページ製作王」というソフトウエアを購入して作成しようとしておりますが、これも挫折しました。そんなわけで、ブログという存在は私にとっては自らの情報発信をするにあたっては非常に有効なものであったと思います。さらに、このブログを始めてからしばらくのうちは、会社から帰ってきてから家のパソコンで長文をつらつらと書いておりました。あの時は、何かを書きたい衝動に駆られていたのだと思います。(笑)「投資を極めたい」「投資でなんとしても高い収益を上げたい」「投資の理論・実践を体系的にまとめたい」そんな思いからいろいろと書いてみました。どちらかというと理屈っぽかったので、うまく伝わらなかったこと、分析力が未熟ゆえにタッチできなかった領域、などもありましたが、投資全般に関する基礎については、それなりに書けたのではないかと考えております。少しでも多くの方にそれを読んでいただいたということで、私も意味のあるブログがかけたのではないかと思っております。本当にありがとうございました。P.S.このブログは今日で最後ですが、新しいブログもあってそちらでは相変わらずしぶとく書いておりますので、引き続きよろしくお願いします。なお、新会社のサイトに保存版としてのinatora日記もあります。こちらは当サイトと違いカテゴリー分類がきちんとなされておりますので、もし過去の日記を振り返りたいという方がいらっしゃいましたら、以下をご覧ください。http://www.analyst-report.jp/inatora/inatoratop.html
2006年05月31日
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今回は、会計のお話です。 トレードの世界であればいざ知らず、ファンダメンタルズ投資の世界であれば、会計の知識はある程度は必須だと思います。 ファンダメンタルズ投資を実施するのであれば、企業の実態を知っておく必要があります。その企業の実態を知るにあたって、ビジネスモデルはもちろんのこと、会計の知識も不可欠になってきます。 「高度な専門知識がどのくらい必要であるか?」 については程度問題ではあるものの、やはり、財産状態や経営成績がある程度は把握できるための必要最低限というくらいは必要です。 そんな会計ですが、私も最初はとっつきにくかったものです。投資の世界とは無関係に簿記の勉強を手がけたときの話ですが、 (借方)と(貸方) がどのようになっているかが分からなかったものです。 投資の世界を知るためには会計の知識は不可欠ですし、そのための基礎となる簿記は知っておいて損はないと思うのですが、かといって、いきなり簿記(例えば、日商の3級)から始めると、仕訳の形を暗記することはできても、それが何を表すのかが理解できなかったものです。 幸いにも、ファンダメンタルズ投資を始めるようになって、「企業を見る」という視点に立ったとき、何かが見えてきたといったというのが正直なところです。 これは余談ですが、私が会計(および、複式簿記)の本質が飛躍的に分かるようになったきっかけは、 「資産と費用は借方仲間」「負債と資本と収益は貸方仲間」 ということが分かったことでしょうか?これは、「資産には財産的裏づけという側面がある一方で、将来の費用という側面もある」ということです。負債と資本と収益についても同様です。はあ? 何のことかよく分からない?まあ、これは徐々に慣れてくるものだと思いますので・・・。ここで一例を挙げると、*貸借対照表の棚卸資産(資産)と損益計算書の売上原価(費用)の関係*貸借対照表の有形固定資産(資産)と損益計算書の減価償却費(費用)の関係*貸借対照表の前受金(負債)と損益計算書の売上高(収益)の関係などでしょうか?棚卸資産の場合、「会計方針の変更などの事由によって、棚卸資産の計上方法が変わると、売上原価の計上方法も変わる。」というようなことが見えてくれば、財務諸表を見るスキルがアップするのではないかと思います。
2006年04月18日
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今回の日記の内容は、とある昔の相場関連本のレビューとして掲載されていたものなのですが、これが非常に良かったので、ご紹介したいと思います。以下、引用開始です。 *************************** 相場の世界に入ったばかりの人は「魚(儲かる銘柄)」を欲しがる。 相場がわかってきた人たちは「釣り方(儲けるノウハウ)」を知りたがる。 そして、相場の達人の領域にまでたどり着いた人たちは「釣りをするときの心構え(心のコントロール)」を手に入れたいと思うようになる、ようだ。 達人の領域に近づけば近づくほど「心構え→ノウハウ→銘柄」の優先順位になる。 初心者の優先順位が「銘柄→ノウハウ→心構え」であるのとは対照的だ。 *************************** これには、思わず 「そのとおり!!」 と自分の膝を叩いてしまいました。 いろいろな投資手法が世の中にはありますが、最も大事なのは、 「自分に合った投資手法を探せるか?」 という点に尽きるのではないかと思います。 しかしながら、投資の世界では、「上がる銘柄を教えて」とか「どの投資手法が勝てるの?」という類の話を聞きたがるようです。 「銘柄」や「ノウハウ」というのが「心構え」に比べて見えやすいゆえにそちらに目が行きやすいということなのかもしれません。また、達人とはいえ「銘柄」や「ノウハウ」をある程度知ったからこそ、それを有効に活用するための「心構え」が重要であることが分かったのかもしれません。 私の場合、投資暦7年半なのですが、最初の3年半くらいはいろいろと回り道をしていました。その回り道をしていたころには、今回のレビューみたく「銘柄」や「ノウハウ」ばかりを追求していたような気がします。要するに、ある銘柄やノウハウで失敗する ⇒ 新しい銘柄やノウハウを求める ⇒ 肝心な心構えがなっていない ⇒ また失敗するというサイクルに陥っていたということです。それだけに、これから投資を始める人に対してはぜひ「心構えから」と思ったりもするのですが、見えにくいものだけになかなか難しいのかなと感じている次第です。P.S.最近は全然売買をしていませんし、別のこと(トレードの検証とか会計の勉強とか)で時間を費やしていることもあり、この日記もやや滞りがちです。一部では、「信用取引の賭け過ぎで退場させられたのではないか?」という邪推もあるようですが、そのようなことにはなっておりませんので、残念でした。もっとも、パフォーマンスは年初来ほぼ±0%ということでしょぼい状況でありますが・・・。
2006年03月29日
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親愛なる投資家の一人である「CMB研究所」の内田さんが運営されている「CMB投資研究会」にて、以下のような株主提案を実施されますので、こちらでもお知らせをしておきたいと思います。上場企業におけるコーポレートガバナンスに関する話題であり、「株式投資の何たるか?」「上場の何たるか?」「資本コストの何たるか?」などを知るためのきっかけの一つになるのではないかと思います。*****************************CMB株式研究会におきましては、会の活動内容の1つとして、「共同で株主提案をして株主価値を高めてもらうように企業に働きかける。」事を掲げております。インターネットの普及により、個人投資家相互のネットワークが拡大し、個人投資家も共同して企業に対してアクションを起こす事が出来るようになりました。株主提案の活用は、企業統治(コーポレートガバナンス)を向上させる事で企業価値(=株主価値)を向上させ、共同で株主価値向上の果実を得ることを趣旨としております。本年は、共同株主提案の初の事例として、サンテック(1960)に対して、株主提案を行う事を予定しております。同社は、2005年9月期末ベースで現預金 90億72百万円、有価証券3億99百万円、投資有価証券75億61百万円を保有しております。これら現金等価物(キャッシュ)の合計は171億32百万円です。更に、事業に用いていない賃貸用の不動産を、投資不動産という勘定で36億58百万円保有しております。これも合わせると、総合計は207億90百万円になります。(連結ベース)これに対して、有利子負債は、短期借入金1億12百万円、長期借入金75百万円の合計1億87百万円に過ぎず、ネットキャッシュ(現預金+有価証券+投資有価証券-有利子負債)は、169億45百万円、ネットキャッシュに投資不動産を足すと、206億3百万円になります。なお、この投資不動産は、いずれも東京都千代田区内に所在するもので、公示地価等から、貸借対照表計上額<時価である事は明らかです。これに対して、時価総額は、自己株式80万1000株を除いた発行済株式2300万4000株ベースで、204億97百万円(2006年3月24日終値891円に基づく)です。つまり、保有資産のうち換金性の高いものの価値だけでも時価総額を上回っているということです。なお、当然ですが、本社の土地・建物など、事業に用いている不動産は固定資産に計上されていますが、それらは、上記計算に際して一切考慮に入れていません。この他、2005年3月期末時点では、「投資その他の資産」の中に保険積立金が9億79百万ありました。中間期末ではディスクロージャーのレベルがそこまで詳しくないので、「その他」に含まれているのでしょうが、これは養老保険等ですから、キャッシュ同等物という認識で構わないと思われます。これも含めると、広義の「ネットキャッシュ」は216億9百万円となり1株当たりでは、939円となります。これはあくまで、キャッシュ性の資産から有利子負債を差し引いただけの極めて狭義の企業価値です。中間期末のBPSは1356円であり、会社の清算価値は、キャッシュ性資産以外の資産の売却価値に応じて、939円と1356円の間のどこかということになると思います。何故、企業の保有資産価値に比べて、株価がこれ程までに低い評価でなっているかといえば、コーポレートガバナンスが働いていないからだと思われます。当社は、創業家の八幡一族が支配しており、上場企業でありながら、株主の利益を考えた経営が行われているとは思われない状況です。元来、当社の属する電気工事業界は、事業の運営に多大な資本を必要としません。これは、同業にキャッシュリッチな会社が多い(きんでん、関電工、中電工等)事からも明らかです。余剰なキャッシュを用いても、資本コストを上回るリターンが見込めるような事業を新規に行えるとは到底思われず、企業価値を毀損しない為には、株主への利益配分を高める以外に方策はありません。株主としての最低限の要求として、現在の10円配当を20円配当に増配するべく、株主提案を行いたいと考えています。提案理由としては、1 会社が資本コストを満たす利益を上げられておらず、将来も上げられる見込みが無いこと、2 10円の増配に必要な年額は2億30百万円に過ぎず、会社の保有キャッシュに比べて僅少であること、従って、このような増配を行っても、会社の事業継続に何らの不都合も無いこと、更に、会社はコミットメントライン契約を締結・更新し、現状でも平成19年2月末までを期間とする57億円の契約を継続しており、資金繰りには過剰な配慮がなされているなど、増配には何らの支障もない事は明らかであること、3 平成16年度の役員報酬の総額(使用人兼務役員の使用人分を除く)は1億33百万円であり、これと比較して総額2億30百万円の株主配当は非常に低額であること、4 株価が1株当たり純資産(BPS)を大幅に下回っており、現在の経営状況は株主に大きな不利益を与えていること5 電気工事業の特性上、設備投資等の多額の資金需要は発生しえず、余剰資金を溜め込む必要は無いこと、現に投資不動産を購入するなどしていることからもこれは明らかであること等を記載する予定です。 また、現在、社長の八幡欣也氏、同氏の長男の八幡信孝氏、同氏の弟の八幡卓士氏と、7名の取締役のうち3名が八幡家出身者であり、八幡家が創業家であることを考慮してもこれは明らかに異常です。コーポレートガバナンスの観点からこれは問題であり、是正が必要だと考えております。上場企業でありながら株主利益を考慮しているとは思えない経営が行われているのも、サンテックが八幡家のものである、といった誤った意識が背景にあるからではないかと考えざるを得ません。 従って、定款に新たに「取締役には、同一の親族(3親等以内)が3名以上は就任できない」という条項を追加する株主提案も提出する事を検討しています。株主提案に必要な株数は、発行済株式数(自己株式を除く)が2,300万4000株ですので、この1%である23万1,000株です。自己株式を売却されると困るので、発行済株式数をベースに考えると、23万9000株あればより安心です。本年6月の株主総会に株主提案を提出するには、商法232条ノ2の規定により、総会日の8週間前までに書面で、提案内容を会社側に伝える必要があります。その際、上記の株数を6ヶ月以上継続して保有している必要があります。6月末の株主総会に間に合うように、4月末に株主提案を提出するとすれば、前年の10月下旬から株式を継続して保有していればいい訳ですが、実際には証券保管振替機構(保振)を使う実質株主の場合は、株主名簿への登載が半期末毎になるので、前年の9月末までには買っておく必要があります。なお、9月末と3月末だけ保有していれば良いかと言うと、そうではありません。その間、継続して保有し続けていたかどうかは、会社側が調べようと思えば調べることが可能です。従って、昨年の9月末から継続して保有している株、が株主提案の権利を持つ株ということになります。当会の主要メンバー等が保有する「株主提案可能な保有株数」は、約20万株弱ですので、株主提案を行うには若干足りません。従いまして、共同で株主提案を行って頂く方を募集します。なお、当会の主要メンバーに対して、株主提案を行う事についてのみ有効な委任状を出して頂く事により、提案者としてお名前が総会招集通知に記載される事は避けられますので、ご安心ください。逆に共同提案者として名前を載せたい方は、もちろんそれも可能です。繰り返しますが共同株主提案をするには2005年9月末より東証2部 1960 サンテックの株式を保有している事が条件です。株主提案に賛同していただける方はCMB株式研究会までメールにてご連絡をください。 詳しくご説明のうえ、こちらから委任状の雛形をお送りいたしますので署名・捺印の上返送してください。CMB株式投資研究会 代表者 金子 好之東京都墨田区吾妻橋1-14-8 2FTel 090-6496-8218 investment@cmb-fund.comまた2006年3月27日時点で株式を保有されている方は、我々の提案する議案に賛成票を投じることができます。以上ご注意1 現在、株主提案が可能になる株数が39000株ほど不足しております。よって、株主提案を出す予定の4月末までに株主提案に必要な株数が集まらない場合には株主提案を中止することがあります。2 株主提案を出した後に会社側が自発的に20円の増配を決定した場合には今回の議案はとりさげます。3 この議案を提出する方は株主として株主価値向上を考えてこのような議案を出しております。 以前、個人投資家の株主提案の呼びかけで短期間に値上がりした、ある建設会社の株式がありましたが、それを連想して短期的な値上がり期待(つまり投機目的)で株式を購入するのは絶対にやめてください。流動性の低い株ですので流動性リスクが非常に高く投機にはむいていません。4 この議案を提出したからといって、この議案が株主総会で可決される保障はありません。*******************************私は残念ながらホルダーではありませんが、事の成行を見守りたいと考えております。
2006年03月25日
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相場がじわじわと軟調な展開が続きながらも、全般的には小動きで膠着状態が続いているのではないでしょうか?私のポートフォリオもそれほど動いていないというのが現状です。企業の実態を把握とした投資を中心に行っている投資家であるならば、 「企業の実態がそう動くものではない」と考えて、膠着状態でも「まあ、いいか」と考えられるのではないかと思います。株式市場というのは、企業実態と株価のリンケージが非常にか細い世界であり、企業実態と株価というのはわずかに「ゴムひも」のようなもので繋がれていると考えれば分かりやすいかと思います。すなわち、普段は(特に、短期の価格変動は)、企業実態と株価は関係がなく動くことが多い。したがって、それをうまく利用してテクニカルで儲けることもできる。ゴムひもの伸び縮みをふんだんに利用して回転売買で儲けるという方法です。しかしながら、企業実態と株価のゴムひもが完全に切れていて100%無関係というわけではなく、どこかのタイミングでそれは一致する局面が出てくる(特に、長期ではファンダメンタルズが株価を決める)というのが、グレアム式のバリュー投資を実施する際には重要なのではないかと思います。以上のことから、テクニカルでもファンダメンタルズでも儲けることはできるとは思いますが、「自分が、値動きにかけた投機をやっているのか?企業実態にかけた投資をやっているのか?」を理解していない市場参加者は、どんな投資手法を使っても株式市場という魔物に翻弄されて失敗するのだということだけは言えるかと思います。典型的には、「値動きにかけた投機をやっているはずなのに、損切りができない」とか「企業実態にかけた投資をやっているはずなのに、株価の変動に一喜一憂している」というものです。皆様、心当たりはありませんか?---私も、あります。P.S.「ポートフォリオ状況」は、また後日報告します。
2006年03月08日
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相場が落ち着いてきております。ここ2週間ほどの暴落局面で買い増しした銘柄、外した銘柄がありました。後から振り返ると「ここでこの銘柄を買っとけば良かった」というような後悔もなくはありませんが、そこはリアルタイム上の意思決定なので、今さら考えてもしょうがないと諦めております。さて、信用取引を使っている場合、「銘柄選択」と「リスク管理」のどちらを優先させればよいかについて書いてみたいと思います。結論から言うと、「リスク管理」を優先させるべきだと思います。これは、「バリューと考えられる銘柄が下落局面に入ったとき、信用取引を活用していると、正当だと考えられる価値に戻る前に、株価下落に伴う含み損によって、強制的に(あるいは、心理的に)ポジションを処理せざるを得ない可能性がある」という理由からです。バフェットが「借金をして株を買うのは、鋭利な刃物をハンドルの前におきながら運転するようなものだ」「そのうち、でこぼこの道に遭遇するでしょう」(「自分を信じるものが勝つ」より)と例えているように、「たとえバリュー投資でもミスター・マーケットの不機嫌を侮ってはいけない」ことを示唆しております。ミスター・マーケットが異常にご機嫌になったり不機嫌になったりすることを繰り返しているので、ものすごく長期で見るとバリュー投資が有効であるということが言えます。信用取引を使うと「レバレッジ分だけ利益を得られる可能性」がある代わりに、「フェアバリューへの収束という長期的要素が幾分危うくなる可能性」があることだけは肝に銘じておかなければなりません。私自身は、「レバレッジ分だけ利益を得られる可能性」と「フェアバリューへの収束という長期的要素が幾分危うくなる可能性」とを天秤にかけたときに、前者のメリットのほうが大きいと感じているので信用取引を活用しているのですが、後者のリスクは十分に気をつけなければならないと考えております。したがって、信用取引を活用している場合は、「安い銘柄が出てきたから信用枠を目一杯使いたい」(銘柄選択)ということと、「万が一、もう一押しの下げがきたら退場させられかねない」(リスク管理)ということがあれば、これは絶対に後者を重視すべきだと思います。私も今回を含めて信用取引の維持率が低下したことが何度かありましたが、このようなときは常にリスク管理を優先してきました。もし、「キャッシュポジションが殆どない」「信用の含み損が多い」「維持率がぎりぎり」という状態で、もう一押しすると追証がかかるというポジションであるならば、結果的に戻りが鈍くなってもそのポジションは一旦整理しておいたほうがよいかと思います。それが生き残るための戦略だと思います。もちろん、「信用取引をしない」という選択肢も当然ありますので、そこはよく考えてください。
2006年02月23日
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みなさまがあまりにも元気がないようですので、ここは私が。最近、ブログを徘徊して改めて感じるのは、「下げ相場でこそ投資家としての実力が試される」ということです。これは私も昔からさんざん言ってはいたのですが、つい最近までは圧倒的な上げ相場の熱狂ぶりにかき消されることしばしばでした。このような相場ですから、値動きの緩やかな優良銘柄(例えば、トヨタ)やディフェンシブ銘柄(例えば、東京電力)でもない限り、下がるのだと思います。そもそも、「株価は常に上がるものだ」ということなど有り得ないわけですから、こうした局面に対してどのように対処するかが重要になってくるかと思います。パーシャル・オーナーを運営している角山さんの「逆ブログ相場」という言葉に象徴されるように、同じバリューとされる銘柄に手を出している人の中でも、「値下がりに耐えられない人とそうでない人」「信用取引で破産の危機を迎えている人と上手くコントロールしている人」というように、保有銘柄だけでは絶対に測れない投資家としての実力を試される場が来ているかと思います。「初心者ほど銘柄選択にばかり目が行き過ぎている」というのが私の考え方でして、「○○を買った(売った)」だけしか書いていないサイトはあまり参考にならないし、そういうサイトのオーナーはこの下げ相場では相当に参っているんだなというのが手にとるように分かったりもします。私も昨日時点で-9.5%というパフォーマンスとなっておりますが、保有銘柄とウエイトとポートフォリオ全体のリスクを自分なりに把握して、基本的にはホールドしているだけです。投資というのは長丁場ですから、一時的なマイナスは致し方ないとして、退場させられるかどうかというところに焦点を当てたとき、果たしてどのくらいの人が生き残れるのかというのは興味深きところです。
2006年02月18日
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今回は、2月9日(木)のYAHOOのニュースから 「ちょっとこれは尋常ではない」 と思ったものがありましたので、それを書いてみたいと思います。元ネタはコチラです。[焦点]個人の株信用買い膨張で証券の銀行借り入れが急増、目立つ地銀の貸出 以下、抜粋です。*****************************[焦点]個人の株信用買い膨張で証券の銀行借り入れが急増、目立つ地銀の貸出 証券会社の銀行借り入れが急増している。 膨張している個人投資家の株式信用買いの資金ニーズに充当しているためで、特に地銀の貸出が目立つ。 (中略) <ネット証券の借り入れが急増> このところ銀行借り入れを特に増やしているのがネット証券だ。顧客の個人投資家の信用買いが急増していることが背景にある。 (中略) ネット証券以外でも、自己資本の厚くない中堅・中小証券でも、信用買いの増加に伴って、借り入れを増やす傾向にある。 (中略) 東証によると、個人投資家の信用取引は昨年後半から急増。買い残高は昨年9月以降、今年1月末までに2兆5000億円も増加している。 証券会社は信用貸し付けの調達先として短期金融市場からの調達も増やしている。 (中略) それで足りない分を、証券会社は銀行から直接借り入れることになる。 信用取引の増加分に対してコール市場での借り入れでは全く追いつかない状況だ。 証券会社にとって信用買いの増加は収益への寄与度が高い。 (中略) このため、信用買いでの手数料を通常よりも安く設定するなど、証券会社としても信用取引の拡大に力を入れている。 ***************************** (抜粋終了) 簡単にまとめると、 (1)個人投資家を中心とした信用取引の急増から、証券会社の資金調達が追いつかない (2)信用取引の急増は証券会社にとって収益拡大のチャンスであり、力を入れている ということになります。 多くの人が、 「証券会社は儲かってるんだなあ」 という側面で見がちですが、私の場合、もう一つ思うところがあって、それは、 「訓練を受けていない投資家が安易に信用取引に手を出しすぎているのではないか」 という側面です。 信用取引は儲けられるチャンスを広げるためのツールだとは思いますが、使い方を誤ると致命傷を繋がるツールであるとも思います。 ライブドアショックなどでそれを実感した人がいたかもしれません。 私も含めて、リスク管理の重要性を感じる今日この頃です。
2006年02月13日
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ポートフォリオ状況を報告します。(パフォーマンスは1月31日まで、ポートフォリオは2月10日現在)1.運用パフォーマンス*昨年末を10000とした形式で基準価格を表示しています。基準価格:998312月末比 約 -0.2%昨年末比 約 -0.2%2.ポートフォリオ*今後は証券コード順に銘柄だけを記載し、ウエイトや現物・信用の区分は省略します。3595 ヤギコーポレーション4298 プロトコーポレーション4653 ダイオーズ4683 堀内カラー7548 サンクスジャパン9318 ジェイ・ブリッジ*その他、裁定取引目的でロングとショートのペアで保有している銘柄あり(銘柄は秘密)3.売買アクション*短期売買目的のトレード銘柄は記載していません。*仕込み中の秘密銘柄は記載していません。*購入3595 ヤギコーポレーション4653 ダイオーズ4683 堀内カラー*売却3766 システムズデザイン4.コメント(1)1月の運用パフォーマンスは、前月末比約-0.2%、年初比約-0.2%でした。(2)今月は売却した銘柄が1銘柄、購入した銘柄が3銘柄です、3595 ヤギコーポレーション資産面での割安度がまだあるということで購入しました。4653 ダイオーズ調査中だったという銘柄です。久しぶりのフォーカス投資となりました。4683 堀内カラー資産面での割安度がまだあるということで購入しました。3766 システムズデザインダイオーズの買い付けに際して膨らんだポジションを調整するために売却しました。*あと、これ以外に最低取引目的でロングとショートのペアで保有してる銘柄があり、ポジションサイズとしては大きめです。(どんな銘柄を仕掛けているかは秘密です。)(3)保有銘柄でパフォーマンスに重大な影響を与えるイベントは以下のとおりです。*4653 ダイオーズ第三四半期の決算発表。通期の見通しを上回るという内容でした。1月はライブドアショックがあって、下落した銘柄をウオッチして収益を獲得する機会がなくもなかったのですが、それは上手く利用できませんでした。1月もまたパフォーマンスはいまいちでしたが、割安な銘柄が少なくなっていた投資環境の中、ダイオーズという、久しぶりにフォーカス投資で行けると感じた銘柄を見つけることができたので、ここから今後の巻き返しを図りたいと考えております。これまで2番目のウエイトであったシステムズデザインを売却、かなり空いていた信用枠も使って買い付けました。その他、資産面での割安な銘柄へも投資先を分散させました。現状の相場環境だと、特段のカタリストがなくても見直されるのではないかと考えてのことです。資産バリュー銘柄についても引き続き物色していく予定です。***********************システムトレードですが、バックテストと運用面でのギャップがあり、現状ではすぐに運用開始できる状況にないという問題に直面しておりますので、保留しております。トレードインフラの整備、運用ルールの詳細の検討、メンタル面のコントロールなど、参入障壁が高いと感じている今日この頃です。2月中の本格導入は難しいと考えており、3月からの本格導入となりそうですので、パフォーマンスの分離化もそれに合わせて行いたいと思います。(ただ、テスト売買はすると思います。)ちなみに、とらぬ狸の皮算用ですが、システムどおりに売買していれば1月は相当なプラスが出ていました。(涙;)
2006年02月10日
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ご無沙汰です。最近、システムトレード関連の検証ばかりが忙しくてファンダメンタルズの銘柄調査が疎かになりがちだったのですが、久しぶりに「コレは!」と思う銘柄が見当たったので、それについては徹底的に調べていこうと思います。落とし穴がないかどうかを確認後、問題がなさそうなら今のポジションを多少カットしてでもその銘柄に大きくシフトさせるかもしれません。よく調査した結果、「なんだ!ぜんぜん大したことなかった!」というお決まりのパターンである可能性も現状では否定は出来ませんが、良い報告ができるかどうかに関する結論づけはまだ早計なので、今のところはこのあたりでご勘弁ください。なお、この週末はまた出かけてしまうので、1月のポートフォリオ状況報告は早くても週明けになりそうです。(ほぼ、ゼロラインというところに落ち着きそうです。)
2006年02月04日
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久しぶりに会計ネタを。と、言いましても、株式投資に直結するネタで今回は攻めてみたいと思います。「有価証券報告書を見るための良書」を紹介したいと思います。バリュー投資を実践する際には、企業の実態を知る必要があるということで、そのための手段の一つとして「有価証券報告書」があると思います。したがって、幾つかのしっかりとしたバリュー投資系サイトでも「有価証券報告書を見ることの重要性」をかなり主張しているのを見かけますが、そのための良書がなかなか紹介されていないということに今さらながら気づきました。そんなわけで、せっかくなので私が紹介したいと思います。いまさら人に聞けない「有価証券報告書」の読み解き方 (佐藤敏昭 著、セルバ出版、1500円)やっぱりコレでしょう。圧倒的に分かりやすいと思います。2005年6月に出たので、最新の有価証券報告書のフォーマットに対応しています。著者の佐藤敏昭さんは、横浜国立大学の教授でかつては日本監査役協会というところに務めていたそうです。専攻は「企業法会計論」「監査役監査論」ということです。大学の教授が書いた本だから堅苦しそうだろうと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、さにあらず。すごく分かりやすく書いています。企業名こそ伏せられていますが、有価証券報告書の実サンプルを使ったチェックポイントなどが事細かにかかれています。評価できるポイントですが、「重要なポイントはこの部分である」「この部分はやや専門的過ぎるので深入りはしなくても良い」という点を著者自身がはっきりとさせていることです。もちろん、専攻が会計学や監査論の大学教授だけあって、会計学上の論点もしっかりとしており、「分かりやすさ」をウリにした本にありがちな「物足りなさ」もありません。一部の項目で突っ込んだ会計学に関する知識を要する部分はありますが、大部分の項目は決算書関連の入門書を一通り読んだ後ならばすっと頭に入るような内容です。皆様もぜひ。えっ?株価が下がっていて、それどころじゃない?いえいえ。こういうときこそ、割安な企業や優良な企業(あるいは、その両方)を買うチャンスだと思いますが・・・。
2006年01月18日
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久しぶりにいろいろなサイトを徘徊してみましたが、バリュー投資家と自認している人たちがノイズトレーダー化しているのは気のせいでしょうか?ノイズトレーディングが悪いというわけではありませんし、今の私はシステムトレードの検証をかなり一生懸命やっているので、それはまたノイズトレーディングの一種ではあるのですが、バリュー投資家のポートフォリオの回転率が異常に早いというのがやや気になるところです。利益が出ていれば勝てば官軍とはいえ、株価変動で人はこうも感情的になるのかと感じた今日この頃でした。
2006年01月13日
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恩義多き投資家であるマネーマスターの「しん」さんにご協力ができればと思い、質問に答えてみました。**************************1. まずはお名前(H.N)を教えてください*inatoraです。2.差し支えなければ、年齢を教えてください*30台前半ということで。3.バリュー投資を始めたのはいつ頃ですか?*2002年9月ごろです。4.バリュー投資をはじめたきっかけを教えてください*それ以前にやっていた投資が、あまりにも無方針で大損ばかりしており、「このままではまずい」と思い、いろいろ投資方針を模索した結果です。5.最初に買ったバリュー銘柄を教えてください*4312 サイバネットシステム (今では信じられないですが、当時はPER5倍でした。)6.尊敬している投資家っています?(国内海外問わず)*ベンジャミン・グレアム(バリュー投資の元祖)*ジョン・メイナード・ケインズ(経済学者)*日本国内だったら、自分が尊敬される投資家になれるよう頑張りたいです。7.今まで読んだ投資本は何冊くらいですか?*250冊くらいかな?(ただし、無駄な投資本も多し)8.昨年読んだ本は全部で何冊くらいか教えてください。(投資本を含む全ジャンルOK)*50冊くらいかな?9.人から変わり者だといわれたことがある?*あります。10.団体行動は苦手だと感じる?*「群集」という言葉が嫌いなものでして。11.投資本の中で特に好きな愛読書・教科書はありますか?それは、何ですか?*「賢明なる投資家」*「バリュー投資入門」*「雇用・利子および貨幣の一般理論」(「投資誘因」の章のみ)12.年間平均どれくらいのパフォーマンスが目標ですか?*長期目標としては年率30%ほどですが、資産規模が小さいうちはより高いところを目指します。13.資産をどれくらいまで増やしたいですか?*4兆円。←まだまだ遠し。がんばろう。14.株っておもしろいとおもいますか?*面白いですね。15.今まで買った中で、印象深いバリュー銘柄を教えてください。*9651 日本プロセス(バリュー投資のベースとなる考え方を身につけました。)16.株式投資してることでモテたってことあります?*特にありません。17.差し支えなかったら運用資産額を教えてください?*○千万円ということで。18.株関連のサイトかブログを運営していますか?*しています。19.投資家のオフ会にいったことがありますか?*あります。20.タバコは吸いますか?*吸いません。21.これから株を始める人に、一言アドバイスをお願いします。*信じることと疑うことのバランスがキチンと取れていることが大事だと思います。22.あなたにとって「株」とは?*人生の縮図でしょうか?*少なくとも、資産形成の手段という以上の位置づけですし、楽しい研究対象でもあります。23.競馬・競艇・パチンコ・宝くじ、やる?*競馬・競艇はやりません。*パチンコを昔少しだけやっていました。*麻雀は今でもときどきやっていますが、株式投資で成果が上がるようになってからは、昔のような情熱はなくなりました。*宝くじはたまに買います。24.デイトレードしたことはありますか?*何度かあります。25.携帯電話で株の取引をしたことありますか?*ありません。26.おすすめの証券会社があれば教えてください。 *kabu.com証券(資産管理画面が見やすい)*ライブドア証券(定額制の手数料ということで)27.海外旅行で行きたい国はどこですか?*南極28.好きな株関係のインターネットサイトorブログは?(複数可)*自分なりに投資哲学を持っているサイトやブログならばどこでも。29.エマージングで気になる国を教えてください?*タイ*ベトナム30.好きな業種は何ですか?*システム開発、ソフトウエア・・・資本的支出が少ない*小売業・・・分析が比較的やりやすい*ちなみに、資産株ならば業種は一切問いません31.ついでに好きな食べ物は何ですか *スイカ32.これまでの痛い失敗談があったら、教えてください。*長銀。国有化で紙くずに。(あっ。ここ、笑うところですよ。)33.嬉しかった株主優待ってありますか?*もらったことがありません。34.株主総会に出席したことはありますか?*残念ながらありません。フリーの投資家になれたらどこかの機会で行きたいです。35.お酒飲む方、好きなお酒は何ですか?*ビールです。36.信用取引していますか?*バリバリやっています。37.オプション取引していますか?*バリュー投資を始める前にやっていましたが、大失敗につき撤退しています。復活する目処は今のところたっていません。38.ファンドマネージャーってやってみたい?*元経験者として、以下の3つの条件が満たされればまたやってみたいと思います。(1)ヘッジ・ファンドのようなインセンティブ・フィーがあること(2)ファンド運営の権限が全て自分にあること(3)資金の委託者が、四半期のような短期パフォーマンスにうるさくない顧客であること39.外貨FX取引をしていますか?*今まではありません。ただ、株がどれも割高で買うものがなくて、そのときに大きく円高(1ドル=100円くらい)になっていれば検討します。40.彼女や配偶者の理解を得られていますか?*幸いにも得ています。そのような人でなければ結婚できなかったと思います。41.株で得た利益で買った高価な物があったら教えてください。*特にありません。株で得た利益を放出できるほど大きな資産規模ではないので。ただ、たまに美味いものを食べに行きます。42.専業投資家ですか?*今は違いますが、そのうちそうなりたいです。43.42で「いいえ」と答えた方セミリタイアってしてみたいですか?*したいです。44.43で「はい」と答えた方。セミリタイアのための目標資産はいくらですか?*○億円くらいでしょうか。そこまでいかなくても可能だとは思っていますが。45. 好きな芸能人は誰ですか?*芸能人というジャンルでは特にいないかもしれません。46.日本株だけでなく外国株をやっていますか?*今のところなしですが、日本株が割高で買うものがなくて、外国株が目に見えて割安で買うものだらけならば、情報収集の障壁を乗り越えられるのではないかと思います。47.銀河英雄伝説全10巻読んだことがある。*ありません。48.マネー誌はよく買うほうですか?*殆ど買わないですが、たまに買います。49.マネー誌で好きな雑誌があれば教えてください。*たまに、ダイヤモンドZAI とかSPAとかを。(SPAは最近、マネー特集が多いですね)50.日経新聞を取ってますか?*とっていません。51.あなたの投資ルールがあれば、教えてください。*ブログ全体を読んでいただければと思います。52. あまり人目を気にしないほうですか?*しないほうかもしれません。53. あまり流行とか気にしないほうですか?*しないほうかもしれません。54.四季報CD-ROMは使っていますか?*使っています。55.自分はちょっとオタクが入っている部分があるとおもう。 *多少はあります。56. 集中投資派・分散投資派どちらですか?*どちらかと言うと、集中投資派ということで。57.資産バリュー株・割安成長株だったらどちらが好きですか?*大きな損をしないという観点からは、資産バリュー株がおススメですが、市場全体が停滞しているなどの理由で大きな安全域がある局面では成長株投資も取り込みたいと思っています。58.会社四季報・会社情報どちら派ですか?*CD-ROMは会社四季報ですが、紙ベースならば会社四季報です。59.格闘技系番組って好きですか?*たまに見るくらいで、好きというほどではありません。60.株だけでなく買い物もバリューだ。*普段はそうですが、使うべきところにお金を使うことは大事だと思っています。
2006年01月06日
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今年も終了です。今年最後のポートフォリオ状況を報告します。1.運用パフォーマンス*昨年末を10000とした形式で基準価格を表示しています。基準価格:2398511月末比 約 +7.4%昨年末比 約 +139.9%2.ポートフォリオ*今後は証券コード順に銘柄だけを記載し、ウエイトや現物・信用の区分は省略します。3766 システムズデザイン4298 プロトコーポレーション7548 サンクスジャパン9318 ジェイ・ブリッジ*その他、裁定取引目的でロングとショートのペアで保有している銘柄あり(銘柄は秘密)3.売買アクション*短期売買目的のトレード銘柄は記載していません。*仕込み中の秘密銘柄は記載していません。*購入9318 ジェイ・ブリッジ*売却8191 光製作所(全売却)9627 アインファーマシーズ(全売却)4.コメント(1)12月の運用パフォーマンスは、前月末比約+7.4%、年初比約+139.9%でした。惜しくも+140には届きませんでしたが、まあいいと思います。(2)今月は売却した銘柄が2銘柄、購入した銘柄が1銘柄です、8191 光製作所意外と戻りが早かったので、これを機会に全売却しました。9627 アインファーマシーズ下方修正。思惑と明らかに違う決算が出たので、翌日の寄り付きで即売りしました。9318 ジェイブリッジとりあえず程度の打診買い。いまいちだと思ったら、撤退します。*あと、これ以外に最低取引目的でロングとショートのペアで保有してる銘柄があり、ポジションサイズとしては大きめです。(どんな銘柄を仕掛けているかは秘密です。)(3)保有銘柄でパフォーマンスに重大な影響を与えるイベントは以下のとおりです。*9627 アインファーマシーズ下方修正でした。思惑と明らかに違う決算が出たので、売却することにしました。12月も相場全体が堅調だったですね。なんかバブルなんじゃないかというくらいに。他の投資家さんのページをいろいろと見ていると、保有銘柄やポジションサイズなどでパフォーマンスに大きな差がでた1ヶ月だったような気がします。私は、決してその恩恵を授かったとはいい難い展開でしたが、まあ市場平均並だったのはほっとしております。年間を通じてみてみれば、前半に大きく稼げたことは良かったことだと思いました。後半に失速したのが残念です。しかしながら、この1年を振り返ると、銘柄選択の巧さではなく、ポジション取りの巧さで稼げたような気がします。まあ、その両方があって良いパフォーマンスなのだと思うのですが、もう少し巧い銘柄選択が出来ればもっと稼げたことは間違いありません。この点に関しては、それだけヘタレだったということです。さらに精進が必要だと感じました。今年のパフォーマンスが良かった方もそれほどでもなかった方も、良いお年をお迎えくださいませ。**********************さて、バリュー投資とは無関係な話題になりますが、来年からシステムトレードを本格的に開始します。割安な銘柄が減っているという現実と収益機会の拡大を勘案してのことです。したがって、公表しているポートフォリオとパフォーマンスが従来以上にずれる可能性があり、したがって、以下のようにポートフォリオ状況のやり方を変更します。(1)ポートフォリオは中長期保有目的で購入している銘柄を除いては原則非公開で、保有ウエイトも非公開(2)月間パフォーマンスは、バリュー投資部門とシステムトレード部門に分けて公開、累積パフォーマンスは両者の合算として公開相場がどのようになろうとも収益を追求できる投資家兼トレーダーになるべく、より一層の精進をしたいと考えていますので、よろしくお願いします。
2005年12月30日
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今回は、動態論と静態論、および、継続企業の前提について考えたいと思います。「継続企業の前提」とは「ゴーイング・コンサーン」とも呼ばれ、企業などが将来にわたって無期限に事業を継続し、廃業や財産整理などをしないことを前提とする考え方のことを指します。企業価値の算出に当たって、「今すぐに事業を清算する」という考え方と「今後も事業を継続する」という考え方とでは、価値算出の考え方が異なります。前者は「清算価値」などを基にした企業価値評価となりますし、後者は「収益還元法」などを基にした企業価値評価となります。現在の企業会計は、「継続企業」を前提とした諸会計基準が適用されることになっており、財務諸表における資産価値評価についても、将来キャッシュフロー獲得能力の他に、収支計算の期間認識のズレの調整などが勘案されたものになっています。この観点から見れば、貸借対照表は「継続企業を前提としたもの」であり、「事業の清算時における財産的裏づけ」であるとは必ずしも言えないことを、暗に示しております。このように、貸借対照表の作成に当たって「継続企業の前提」を置き、貸借対照表の基本機能を「期間損益の計算」の手段として位置づけるという考えを「動態論(どうたいろん)」と呼びます。これに対して、貸借対照表の作成に当たって「事業の清算」を前提とし、貸借対照表の基本機能を「財産状態の把握」の手段として位置づけるという考えを「静態論(せいたいろん)」と呼びます。決算書の入門書などでは「貸借対照表は企業の財産状態を表す」という表現がありますが、現在の企業会計基準が動態論に基づいている以上、これは厳密には正しくないことになります。動態論によると、貸借対照表の資産の中には、直接的な換金価値は存在しないが、事業の継続を前提とするならば将来キャッシュフローの獲得の裏づけとなりうるという性質を有するものまでもが資産項目に含まれていることになります。現在の企業会計は、貸借対照表と損益計算書はこのようなことを前提としているため、しばしば、資産や利益の質に問題があるものまでが含まれていることが存在します。バリュー投資の世界だと、ベンジャミン・グレアムが考案した「清算価値」という概念が存在しますが、これはまさに静態論に基づいたものとなります。少なくとも、将来キャッシュフロー獲得能力に乏しい企業については、概ね妥当な企業価値を示す指標であると考えられます。もちろん、将来キャッシュフロー獲得能力が十分にある企業については、これよりも高く評価されて然るべきなのは言うまでもありません。ところで、有価証券報告書の中にある「監査報告書」を見ていると、たまにですが、「継続企業の前提に疑義」という表記を見かけます。ここで言う「継続企業の前提に疑義」とは、動態論の否定に他ならず、継続企業を前提とした財務諸表だと情報開示の質に問題があるということを監査法人が警告していることを意味します。その後に、様々な「継続企業の前提に疑義を抱かせる事象」などもつらつらと書かれているのですが、投資家はこのような表記がある企業を見かけたら、「監査法人が『その企業はやばいから投資するな』ということを難しい言いまわしで伝えているんだな」ということを把握できればよいかと思います。もちろん、「このような表記がないからやばい企業ではない」ということはなく、動態論的な観点で見た貸借対照表や損益計算書の質に著しく問題がある企業も存在することは認識しておくべきことだと思います。困ったことに、「継続企業の前提に疑義」という表記がある企業は、素人が見ても「この企業はヤバイ」とすぐに分かる企業が殆どなので、「何のための会計監査なのか?」といつも疑問を覚えています。
2005年12月26日
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随分と間が空いてしまいましたが、公認会計士の論文試験の経営学の後半部分についてです。問4の問題についてです。*********************企業の最適資本構成については、1958年にミラーとモジリアーニ(MM)によって、摩擦のない市場である(1)を仮定した議論が展開され学界で論議を呼び起こした。摩擦のない市場では、企業レベルの借り入れが、個人レベルでも同じ条件で出来るので、資本構成は(2)に影響を与えないということであった。この結論を導くために用いられたのが合理的投資家による裁定取引である。その後、この非現実的仮定に対して批判が出され、1963年には摩擦の中で(3)を考慮に入れた論文をMMは発表している。(3)を考慮すると、(4)の節税効果により、資本構成は(2)に大きな影響を与える。その後、ミラーは、1977年に(5)も考慮したモデルを提案し、最初の結論に戻っている。ただし、資本構成に影響を与えているのは税制だけではない。借り入れが増えれば倒産の可能性が高まり、それに伴うコストが発生する。このコストは(6)と(7)に分けられる。(7)は、倒産に伴う事務処理を行う会計士や弁護士への支払いがあげられる。一方、(8)は、倒産によって生じる機会損失に伴う企業価値の減少である。ロス(Ross)は、資本構成の変化を企業業績のシグナルとして考え、(8)の増加が企業経営者の将来の業績に対する自信を示しているとして、資本構成の変化が企業価値に影響を与えると主張した。この考え方の裏側には、経営者と一般投資家の間には(9)が存在していることがあげられる。資金調達においては、ミスプライシングの少ない証券を優先して発行すべきで、株式発行による調達はなるべく控えるべきというマイヤーズ(Myers)の(10)理論も同じ前提である。配当政策についてもMMの議論があり、(1)を仮定すると、企業が配当を支払わないとしても、投資家は自身で株式の一部を売却することにより配当を作り出すことが出来るため、配当政策の違いは(2)に影響を与えない。これを(11)と読んでいる。しかしながら、近年、注目を集めている行動ファイナンスの立場に立てば、MMのいう(11)をつくりだすのは簡単ではない。売った直後に株価が暴騰したら嫌だといった(12)の気持ちがあるから、いつどのタイミングで売って、配当を作り出すのかは心理的に負担のかかる問題となる。企業がその額を決めてくれる配当は、投資家にとって心理的負担がなく(11)より好まれるのである。また、税金の効果を考慮すれば、税率の違う投資家によって配当に対する嗜好が異なるという(13)が存在する。一方、ジェンセン(Jensen)は、(14)理論を唱え、配当政策によって、企業内の余剰資金を減らし、経営者による無駄遣い、安易な拡大路線を防止すべきだと主張している。*********************この問題に対するTACの回答を再掲載して、私の見解と異なるものについては併記します。1:完全市場、2:企業価値3:法人税、4:所得税(支払利息)5:支払利息(所得税)、6:直接的コスト7:間接的コスト、8:負債水準9:情報の非対称性、10:ペッキング・オーダー11:自家製配当、12:後悔回避13:顧客効果、14:フリー・キャッシュ・フローさすがに穴埋め問題ということで、おかしな回答はなかったです。4番と5番の回答が入れ替わっているのは単なる印刷ミスだと思います。それでは、簡単にフォローしたいと思います。マートン・ミラーとフランコ・モジリアーニ(以下、MMとする)は、ファイナンスの世界では有名な「資本構成と企業価値に関する論文」を書いています。そこでは、完全市場においては市場の効率性を前提とし、摩擦のない市場を仮定します。このとき、資本構成(負債と資本の比率)は企業価値に影響を及ぼさないとしています。MMが提唱している理論は「市場の効率性」を前提にしていることがコアになっています。細かい結論よりも何よりも、これがコアだとさえ思います。ところが、行動ファイナンス派の反論からも明らかなように、市場の効率性そのものが怪しいということから、MMが提唱した理論についてもメスが入ったというのが、後半部分の記述の中心的課題となっています。特に、同じ経済的効果がある複数の現象でも、人はフレーミング、すなわち、見せられ方によって違う反応を起こすというところに着目しています。これらについては、行動ファイナンス関連の本を一通り見てみることをおススメします。
2005年12月11日
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今月の運用報告とコメントです。1.運用パフォーマンス*昨年末を10000とした形式で基準価格を表示しています。基準価格:223349月末比 約 -5.7%昨年末比 約 +123.3%2.ポートフォリオ*現物と信用を分けて記載することにしました。*ウエイト順です。重要な影響を与える銘柄のみ記載しています。*短期売買目的のトレード銘柄は記載していません。*仕込み中の秘密銘柄は記載していません。*ウエイトの詳細は、フリーページをご覧下さい。*現物ポジション(1)7548 サンクスジャパン(2)3766 システムズデザイン(3)9627 アインファーマシーズ(4)4298 プロトコーポレーション(5)8191 光製作所*信用ポジションなし3.売買アクション*短期売買目的のトレード銘柄は記載していません。*仕込み中の秘密銘柄は記載していません。*購入7548 サンクスジャパン(追加購入)3766 システムズデザイン(追加購入)*売却7902 ソノコム8191 光製作所(部分売却)9651 日本プロセス4.コメント(1)11月の運用パフォーマンスは、前月末比約-5.7%、年初比約+123.3%でした。相場が強かったにも関わらず、その恩恵を受けることが出来ませんでした。バリュー投資を開始してから3年ですが、11月はいずれもマイナスのパフォーマンスです。(2)今月は、ポジションを大幅に圧縮しています。レバレッジのポジションを一切なくし、逆にキャッシュポジションを25%くらいにしました。*9651 日本プロセスバリュー投資を始めてからずっと保有していたのですが、ついに全売却です。*7902 ソノコム全売却。株価が急騰したところでうまく利益確定ができました。*8191 光製作所先月末の下方修正につき、リスク管理のためにかなり売りました。ただし、大きく下がったら買い戻しをとも考えています。*3766 システムズデザイン上方修正の後の下方修正で株価が最初の購入価格に戻ってきたところを買い増ししました。下方修正の原因が「本社移転のための費用計上」という特に問題視するほどの内容でないことが買い増しの理由です。*7548 サンクスジャパン買い増ししました。(3)保有銘柄でパフォーマンスに重大な影響を与えるイベントは以下のとおりです。*3766 システムズデザイン上方修正の後の下方修正です。ただ、下方修正の要因が「本社移転のための費用計上」というもので、数字的に見ても大した要因ではないと判断しています。11月も相場全体が堅調だったにもかかわらず、私のポートフォリオは全くといってよいほど恩恵を受けませんでした。私に限らず、小型のバリューを中心に手掛けている投資家は苦労したのではないかと思います。やられの要因は「8191 光製作所」に他なりません。これまでのパフォーマンスがそれなりに良かっただけに贅沢は言えませんが、不測の事態に備えたリスク管理は不可欠だと感じた一件でした。あと、ポートフォリオ全体を大幅に圧縮しました。これまではレバレッジをかけてアクセルを踏みっぱなしでポートフォリオの運用をしていたのですが、割安な銘柄がだいぶん減ったという感じがしていて、これからは「これは」という銘柄がない限りはレバレッジを大きく賭ける運用は控えていきたいと思います。調整局面が来たときにそのチャンスを残しておこうと思います。
2005年12月04日
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先日、公認会計士の論文試験の経営学に関する話題を取り上げた矢先に、とある筋から経営学の問題を入手しました。今回は、問1~問3までを簡単に確認したいと思います。最後の問4は次回にします。***************************問題1株式の価格は、ファイナンスにおいてもっとも信頼できる価格として考えられてきた。それを支えてきたのが効率的市場仮説である。 問1 市場の効率性が成立するためのメカニズムとして、合理的投資家による裁定取引がある。合理的投資家の存在を所与として、裁定取引が機能するための条件を述べなさい。 以下の2つの文は、それぞれ市場の非効率性を意味しているかどうか簡単に説明しなさい。問2 3年連続で市場よりも高いリターンをあげている投資信託があった。問3 決算短信によってソニーの増益が報告されたが、ソニーの株価に変化はなかった。***************************従来型ファイナンスにおいて最も重要な概念である効率的市場仮説に関する問題ということで、私が模範解答から想定していた問題であったことが確認できましたが、若干違った部分もありました。TACが用意した模範解答は前回に示したとおりですが、「その模範解答は違うと思う」という部分があったので、その点について考えてみたいと思います。*問1について問1に対するTACの模範解答は完璧だと思います。税金・売買コスト・代替証券の調達コストといった「制度面における制約」のほかに、ファンダメンタルズからの乖離がさらに大きくなる可能性があるという「ノイズ・トレーダー・リスク」が、市場の効率性をならしめるための裁定取引を阻害する要因になりうることを示せば良いと思います。ちなみに、ノイズ・トレーダー・リスクは、ノイズ・トレーダーのマネーパワーがアービトラージャーによるそれを上回るときに発生し、現実の市場ではこのリスクを考えなければならないというのが行動ファイナンス派の考え方です。この観点から見た効率的市場仮説の問題は、ノイズ・トレーダーの存在をハナから無視したり、たとえその存在を認めたとしても、アービトラージャーのマネーパワーが強いのでノイズ・トレーダーによる脅威はないと決め付けている点にあると結論付けることができます。したがって、従来型のファイナンス学者にしてみれば、裁定取引が阻害される可能性がある要因は、(税制や取引コストなどの)証券制度上の問題に過ぎないという解答にもなり得ます。(従来型のファイナンス学者は、ノイズ・トレーダー・リスクをとるに足らないものであると考えているから。)*問2について問2に対するTACの模範解答は、半分しか合っていないと私は思います。ある投資家が3年連続で市場平均を上回ることが、市場が非効率であることを示すかどうかについてですが、これは完全にそうであると言い切ることはできません。従来型のファイナンスは「高いリターンには高いリスクが伴う」という世界観があります。したがって、「市場が効率的であるならば市場より高いリターンを上げることができない」という表現は厳密には正しくありません。市場平均を上回るリターンを上げる投資家が存在したとしても、効率的市場仮説を信じる学者にはまだ逃げ道が2つ用意されています。(1)リスク調整後のリターンが市場平均を上回ることが出来ない。すなわち、市場平均よりも高いリスクをとったから市場平均を上回ることが出来た可能性がある。(2)市場が効率的であるかどうかを検証するに足るだけの十分な期間ではない。すなわち、スキルではなく単に運の良さで市場平均を上回ることが出来た可能性がある。このような論理を持ち出すと、ウオーレン・バフェットのパフォーマンスでさえもファイナンス学者達は否定することができます。だからと言って、当のウオーレン・バフェットはそんな貧乏学者の戯言は気にも留めていないと思いますが。*問3について問3に対するTACの模範解答は、おかしなものであると私は思います。「決算短信で増益と報告されたが株価は反応しなかった」ことを「織り込み済み」と解釈するためには、いくつかの条件があります。まず、ストロング・フォームの効率性が支持される場合を考えます。この場合、決算短信よりもはるかに前の段階、すなわち、インサイダー情報などによって株価は既に織り込まれていたと考えることができます。次に、セミ・ストロング・フォームの効率性が支持される場合を考えます。この場合、決算短信における増益発表が投資家にとって本当に予想外の数字であったかどうかにかかっています。もし予想外の数字であれば、決算短信の発表後にその増益分を株価に織り込みに行きますので、本文とは合わないものとなります。もし予想できた数字であれば、すなわち、決算短信における増益発表がなんらかの形で事前に読み取ることが出来たならば(たとえば、月次売上の推移やその前に発表した業績修正など)、それは織り込み済みであると解釈することが出来ます。最後に、市場の効率性が支持されていない場合を考えます。この場合、行動ファイナンスの実証研究にもありますように、「投資家による保守的バイアス」の可能性を考えなければなりません。すなわち、業績の上方修正に対して、現実の投資家は効率的市場仮説が想定するほどにはすぐに反応することが出来ないというものです。そんなわけで、投資という正解が一つではない世界で試験委員の先生の意向を反映させた上でこの問題を解かなければならないということを考えると、(公認会計士の)受験生にとっては甚だ迷惑な話だと思います。今回の場合は、試験委員である加藤教授がどちらかと言うと日本では珍しい「非効率的市場派」であることを考えると、問2と問3についてはどちらも「非効率的である」ということをベースとした解答でも差し支えないような気もします。しかし、一番無難なのは、考えられるいくつかの可能性に場合分けをして「市場が効率的であると考えて良い場合も、そうでない場合もある」というスタンスだと思います。「市場が効率的であると考えるのは単なる学者の戯言だ」というのはここでは言いっこなしにしましょう。勝つための投資家になるための心構えとしては正しいかもしれませんが、それだと公認会計士の試験には受かりそうにないからです。(笑)
2005年11月27日
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資格試験の予備校である「TAC」のホームページを見ていると、つい最近実施された各種資格試験の模範解答が載っていました。TACのホームページ解答速報今年の8月に実施された公認会計士の論文試験の模範解答も載っており、中でも興味深かったのが「経営学」でした。公認会計士の論文試験は大問が2つという形式ですが、そのうちの一つがファイナンス関連でした。当然ながら私は試験を受けていないのですが、この模範解答からどのような問題であったのかを推測することは非常に容易でした。経営学の模範解答**************************<経営学試験 第十二問>:PDFファイルの2ページ目問1裁定取引が機能する条件は、まず、合理的投資家の資金量が非合理的投資家のそれを上回ることである。非合理的投資家の資金量が上回ると、彼らのバイアスのかかったどう方向への行動が裁定取引を阻害しかねないからである。また、市場の完全性も必要である。空売りなどの取引に制約がある、取引に多額のコストがかかる、完全に代替的証券が存在しない、などの制限があると、裁定取引が阻害されるからである。問2本文のケースは市場の非効率性を意味している。市場が効率的であれば、プロの投資家でも、いかなる情報分析をしようとも、市場より高いリターンを継続的に獲得することができない。ところが、当該ケースでは3年という期間に渡り継続的に市場を超えるリターンをあげており、このことは市場が非効率的であることを示すと考えられる。問3本文のケースは市場の効率性を意味している。市場が非効率的であれば、決算短信等の公開情報は瞬時には株価に繁栄されず、情報開会後の一定期間、株価が上昇ないし下落し続けることが起こる。ところが、当該ケースでは、決算短信による増益報告という情報は株価に既に織り込まれており、このことは市場が効率的であることを示すと考えられる。問4(1)完全市場、(2)企業価値(3)法人税、(4)所得税(5)支払利息、(6)直接的コスト(7)間接的コスト、(8)負債(9)情報の非対称性、(10)ペッキングオーダー(11)自家製配当、(12)後悔回避(13)顧客効果、(14)フリーキャッシュフロー**************************問1はおそらく、「裁定取引の限界について合理的投資家と非合理的投資家を関連付けて論述せよ」という類の問題だと推測されます。いわゆる「ノイズ・トレーダー・リスク」の話です。問2はおそらく、「市場を継続してアウトパフォームしたことを市場の効率性と関連付けて論述せよ」という類の問題だと推測されます。問3はおそらく、「決算情報が株価に織り込まれたことを市場の効率性と関連付けて論述せよ」という類の問題だと推測されます。問4は今流行りの「行動ファイナンスの基本的な話題」に関する言葉の穴埋め問題だと推測されます。公認会計士試験の問題は試験委員の影響が大きく、経営学についてはその試験委員の一人が神戸大学の加藤英明教授という行動ファイナンスの研究者であるとことからすぐに納得がいきました。それにしても、「経営学は公認会計士の中で一番簡単な科目である」という定評があるとはいえ、仮にも司法試験の次に難しい国家試験とされている公認会計士の論文問題の一つがこんなに簡単でいいのかと思った次第です。だからと言って、他の科目(特に、会計系の科目)はそれ相応にやらないと駄目なので簡単に受かるという話にはならないのですが・・・。
2005年11月26日
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マーケット様の活況にはご縁がなく、沈みがちなパフォーマンスで推移しそうな今月です。日記が遅れ気味なことが反省です。さて、今回は「会計主体論」について書いてみたいと思います。***********************<会計主体論>「会計主体論」とは、企業とその利害関係者との係わり合いをどのように位置づけるかを考えるものです。これには、「資本主理論」と「企業主体理論」という2つがあります。(1)資本主理論*会計の主体を資本主とみなし、会計を資本主の立場から考える*資産は資本主の所有財産であり、負債は資本主の負担義務である。そして資産と負債の差額が資本主に帰属する持分である。すなわち、(資本等式):資産-負債=資本(2)企業主体理論*会計の主体を企業それ自体とみなし、会計を企業それ自体の立場から考えるもの*資産は企業の財産であり、負債と資本は企業活動に運用される資本の調達源泉である。すなわち、(貸借対照表等式):資産=負債+資本そして、資本主義の歴史的過程から、会計主体論は資本主理論から企業主体理論に発展してきたということになります。これは、近代資本主義においては、所有と経営の分離、利害関係者の多様化、企業の社会的責任の重大性、などの背景から、資本主理論よりも企業主体理論のほうが適合しているという理由からです。***********************要するに、貸借対照表をどのような観点で見ているのかということに関する学者様の哲学です。私なんぞも含めて、多くの投資家からしてみれば、「資産-負債=資本」でも「資産=負債+資本」でもどっちでもいいじゃんと思うのですが、会計の学者様から言わせればそこは明確に区別すべきであるという話になっています。したがって、投資で利益が上がることとは全く無関係なものですが、お手持ちの決算書関連の入門書について「どちらの視点で書いているのか?」見てみるのは知的興味としては面白いかもしれません。「資産-負債=資本」(資本主理論)の立場で書かれている本もあれば、「資産=負債+資本」(企業主体理論)の立場で書かれている本もあると思います。恐らく、決算書の入門書を書いている著者の方々もこのあたりはあまり意識していないのではないのかもしれません。やはり、本格的に会計の勉強をする以上は、学者様が書いた本でこのあたりのことを詳しく書いているものを一冊くらいは購入すべきなのかもしれません。しかしながら、あまりにも学者様のような感覚で考えることに慣れてしまってしまい、本来の趣旨である「投資で利益を上げる」ということを忘れないようにしなければならないのは言うまでもありません。「会計学者で個人的投資にも強い人が知り合いにいれば」と思う今日この頃です。
2005年11月20日
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前回は、「企業会計の目的と機能」について説明しました。今回は、「企業会計の理論構造と目的指向性」についてです。************************<企業会計の理論構造と目的志向性>企業会計の目的が十分に達成されるためには、それが一般に認められた原則に基づいていなければなりません。そのためには、いくつかの基本的前提が社会的に広く認められた仮定として存在しなければなりません。その「企業会計の理論構造」ですが、一番の土台となるのが「会計公準」です。これは社会に広く認められた仮定として会計が行われるための基本的前提を示しています。この「会計公準」という土台の上に「会計原則」または「会計基準」が存在し、企業会計の具体的な行為規範を示しています。さらに、その上に「会計手続」が存在し、具体的な処理手続を示すという構造をとっています。すなわち、以下のようなピラミッド構造をしていることになります。(上部構造)「会計手続」――企業会計における具体的な会計処理(中部構造)「会計原則」または「会計基準」――企業会計の具体的な行為規範(下部構造)「会計公準」――企業会計の基本的な枠組み「会計公準」にはどのようなものがあるのか?「会計原則」または「会計基準」にはどのようなものがあるのか?「会計手続」にはどのようなものがあるのか?については、次回以降の日記で必要に応じて示していきたいと思います。さて、下部構造である「会計公準」、中部構造である「会計原則または会計公準」、上部構造である「会計手続」というのは、単に三段重ねのピラミッド構造になっているのではありません。これらは、ある一定の方向に向かって積み上げられています。それが「企業会計の目的」に他なりません。すなわち、企業会計というのはある特定の目的に向かって理論構築されている「目的指向性」があるものだと解釈できます。この「企業会計の目的」は利害関係者の要請により変化します。例えば、債権者保護を目的とする商法会計と投資家保護を目的とする証取法会計では、それぞれ異なった理論構造となるということです。************************実例がないと分かりにくいかと思いますので、ここでは「減価償却」という概念を例に考えます。日商簿記の資格取得のために勉強をして減価償却の概念を知った人、あるいは、決算書の入門書で減価償却の概念を知った人は、減価償却の方法として「定額法」や「定率法」などを学んだはずです。そして「資産の減価とは、定額法や定率法を基にして計算するものである」ということを暗黙の前提として学びますが、これとて本来は「本当にそれでいいのか?」を考えなければならない疑問となります。「会計の理論構造」によると、減価償却における定額法や定率法は、上部構造に当たる「会計手続」に他なりません。それを支える中部構造である「会計原則」または「会計基準」、そして下部構造の「会計公準」はどうなっているのでしょうか?まず、中部構造である「会計原則」または「会計基準」ですが、資産の取得原価は資産の種類に応じて各事業年度に費用として配分しなければならないという、「費用配分の原則」に基づいていることになります。さらに、下部構造である「会計公準」ですが、企業は解散や倒産などの事態を予定することなく、事業を継続的に行っていくという「継続企業の公準」に基づいているということになります。こう考えると、減価償却ひとつをとっても、さまざまな問題が発生します。*資産の減価額の計算において、定額法や定率法を使うことの妥当性*資産を費用配分するという考え方の妥当性*事業の継続性という仮定の妥当性減価償却に限らず、会計の理論的構造に立てばこうした疑問がたくさん出てきます。それを突き詰めると会計学者同士が行っている議論というところにまで行き着くのでしょうけど、私自身がまだまだそんなレベルに達していないということで、今日はこのへんでやめておきます。
2005年11月13日
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今回から会計関連の話題をブログとして取り上げたいと思います。といっても、私はその道のプロではなく、少なくとも、投資全般ほど深く切り込んだ話題はできないと思います。内容についても標準的な教科書どおりのもの以上のことをできるかどうかについて一抹の不安も覚えておりますが、「ズブの素人がどのように会計の勉強をしているか」をウリにしたいと思いますので、その点をご了承いただければと思います。もともとは、バリューをベースとした株式投資を実践するにあたって、さらなる意思決定の助けになるのではないかということで本格的に勉強を始めたのですが、ここまで来たら乗りかかった船ということで、日々勉強して然るべき知識体系を身につけるレベルにまでなりたいと思うようになりました。基本的には、勉強になったと思われるサイトや教科書などを引用して、それに対して思うことがあればコメントするという形式にしたいと思います。とりわけ、実際の投資の世界と照らし合わせてみて感じる理論と現実のギャップについては折に触れて取り上げたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。初回は、「企業会計の目的と機能」についてです。*****************************<企業会計の目的と機能>企業にはそれを取り巻く様々な「利害関係者」や「会計情報利用者」が存在します。株主、債権者、投資家、税務当局、経営者、消費者、地域住民、従業員、求職者などがそれにあたります。<例>*債権者・・・貸しているお金が約束どおりに返済されているか?*株主・・・拠出した資本がどのように管理・運用されているか?*投資家・・・企業の将来性や収益性はどの程度のものか?*税務当局・・・企業がどのくらいの所得を稼ぎ、どのような資産を持っているか?etc..企業は将来の経営活動を維持・発展のために、これら利害関係者と有効な関係を構築しておかなければならないので、企業の「経営成績」や「財政状況」に関する情報を提供する必要があります。ちなみに、利害関係者への情報提供は企業が作成する「財務諸表」を通じて行われます。すなわち、財務諸表を作成することを含めた会計情報の提供し、それによって利害関係者が適切に意思決定を行うことができるようにすることが企業会計の役割と言えます。ところで、利害関係者は相互に利害が対立することがしばしばです。例えば、株主と債権者の利害関係が挙げられます。ある株主は利益から配当をより多く出して欲しいと感じている一方で、ある債権者は多くの利益が配当として社外に処分されると会社の財務的基盤が弱くなると感じている、といったものです。企業会計は、こうした利害関係者相互間の利害を調整する公正なルールとしての機能をも担っており、これは「企業会計の利害調整機能」と呼ばれています。こうした企業会計の利害調整がしっかりと機能するためには、「企業会計原則」や「商法の会計規定」といった、「一般に認められた公正な会計基準」を遵守する必要があり、それが守られて初めて企業が作成する財務諸表の公正妥当性が担保されていると言えます。*****************************ときおり見られる企業不祥事の事例(最近では、カネボウなど)を取り上げるまでもなく、現実には、上記に述べた「企業会計の目的と機能」がきっちりと守られているとは言い難いと思えることもしばしば見かけます。また、ウオーレン・バフェットが「会計学は事業活動の言語であるが、最近はこの言語が不明瞭な水準にまで歪められてきた。」(「投資家のための企業会計革命」へ贈られた言葉)と指摘しているように、現在の会計制度が本来目指すべきところから大きくずれているという危惧さえあります。これは、われわれ投資家として非常に由々しき問題であるのですが、その議論を正しくするためにも、まずは会計関連の基礎知識の習得は不可欠であると考えています。次回以降も、このような形で日記を取り上げたいと思いますので、よろしくお願いします。
2005年11月06日
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今月の運用報告とコメントです。1.運用パフォーマンス*昨年末を10000とした形式で基準価格を表示しています。基準価格:236879月末比 約 +19.5%昨年末比 約 +136.9%2.ポートフォリオ*現物と信用を分けて記載することにしました。*ウエイト順です。重要な影響を与える銘柄のみ記載しています。*短期売買目的のトレード銘柄は記載していません。*仕込み中の秘密銘柄は記載していません。*ウエイトの詳細は、フリーページをご覧下さい。*現物ポジション(1)8191 光製作所(2)7548 サンクスジャパン(3)9627 アインファーマシーズ(4)9651 日本プロセス*信用ポジション(1)7902 ソノコム(2)3766 システムズデザイン(3)4298 プロトコーポレーション(4)7548 サンクスジャパン(5)8191 光製作所3.売買アクション*短期売買目的のトレード銘柄は記載していません。*仕込み中の秘密銘柄は記載していません。*購入8191 光製作所(追加購入):注)下方修正のため、月初に部分売却3766 システムズデザイン(新規購入)4298 プロトコーポレーション(新規購入)*売却9651 日本プロセス(部分売却)4.コメント(1)10月の運用パフォーマンスは、前月末比約+19.5%、年初比約+136.9%でした。今月も市場全体が堅調で、その恩恵を受けた形でのパフォーマンスとなりました。特に、ポートフォリオウエイトが大きい光製作所とソノコムがパフォーマンスに寄与したことが大きかったと言えます。(2)今月は、久しぶりに新規で2銘柄購入しましたが、日本プロセスを売却することで全体的なポジションが過大にならないように調整しています。*9651 日本プロセスポジション圧縮のために一部売却を実施しました。*8191 光製作所少し買い増ししました。*3766 システムズデザイン財務会計ソフトの開発を手掛けているピー・シー・エー(9629)の創業者が会長を務めている会社で、データ入力やシステム開発を行っています。財務が健全であることに加えて、キャッシュリッチな指標をベースにした指標(キャップレートなど)で見て魅力的だと感じたことから購入しました。スクリーニングでヒットした機械的投資銘柄です。買い付けのタイミングは、業績の上方修正をして株価が急騰・急落をした直後です。やはり小型株の上方修正には市場参加者の反応も鈍いようです。*4298 プロトコーポレーション言わずと知れた「カーと言えばGOO」の雑誌でお馴染みの会社で、中古車販売のための雑誌等を主力事業としている会社です。減損の影響で株価が下がっていたところを狙いました。大きな成長性は見込めないものの、中古車販売業者からの安定した需要による収益とそれに対する株価の比較から購入をしました。(3)保有銘柄でパフォーマンスに重大な影響を与えるイベントは以下のとおりです。*4298 プロトコーポレーション業績の上方修正をしました。第一四半期の決算から中間決算の数値が上ぶれる可能性が高いということは見えていたので、これは想定の範囲内です。*7902 ソノコム業績の上方修正をしました。これにより、株価が急上昇し、パフォーマンスに寄与しています。*8191 光製作所業績の下方修正をしました。経常利益は為替評価益などでプラスに寄与したものの、取引先の事業の清算により、売掛金のうちの一部に回収の支障が出るかもしれないというものです。月中に追加購入をしていただけに、予想外の展開となりました。10月も相場全体が堅調でした。私のポートフォリオに関しては、9月と違ってその恩恵を素直に受けた形になりました。そんな相場つきから、他の投資家さんも相応のパフォーマンスを上げており、自分だけが特別ではないということだけは言えると思います。さて、業績の発表もありポートフォリオの調整をする必要に迫られています。とりわけ、月末に業績の下方修正をした光製作所の処遇についてですが、リスク管理の面からポジションの一部を清算しています。バリューではなく、資本政策面での判断からポジションを圧縮せざるを得ない事態になったのは3月のウエスコ(9648)以来です。これは、光製作所が発表した業績が私が事前に期待していたものと比べると低い水準であったということであり、私にとっては完全な敗北宣言です。そこそこ利益が出ただけでも良しとして、次の有望銘柄を発掘したいと思います。とはいえ、相場全体が大きく上昇していることから、魅力的な銘柄(事業内容だけでなく割安度も合わせてです)を発掘すること自体が困難を伴うだろうと判断しています。これまではアクティブにレバレッジをかけていましたが、ここからはよほど魅力的であると判断するに足る銘柄が見つからない限りは、基本的には全体的なポジションを落としていこうと考えています。「稼げるときには稼ぐ」ということについては、今年は十分にその目標を達成したと考えています。私がバリュー投資に転向してから今までの3年間についてもそう言えます。長期にわたって安定したパフォーマンスを達成するためには、逆風が来たときに凌ぐ術を持っていなければならないと思います。悪い相場というものは必ず来ると思います。もちろん、そんな中で良いパフォーマンスを出せる銘柄や投資手法を見出すことが真のプロであるといえるのですが、それと同時に、ファンダメンタルと無関係に株価が下がるという局面の恐ろしさも知っておかなければならないと思います。ちなみに、11月の私のパフォーマンスは、11月2日の終値基準でマイナス4.5%です。(涙)今日の言葉:「うまく行きそうに見えるときは、うまくいかない。」(ラリー・ウイリアムズが掲げた「相場の原理原則」のひとつ)**************************さて、ここからはお知らせです。(1)会計系のブログへの路線変更既に「トップページ」でもお知らせしましたが、目下会計の勉強中ということで、今後のブログはそのフィードバックとして、会計関係の内容が大きなウエイトを占めることになります。「ズブの素人がどのように会計を勉強しているか」をメインテーマとしたいと思います。もちろん、投資の話題を完全になくすというわけではありません。バリューをベースとした投資であれば、会計と投資は不可分な関係ですので、それに対応する形で投資の話題を出すこともあります。更新頻度ですが、定期更新は週1日(毎週日曜日)として、あとは気が向いたときに不定期に書くという形にしようと思っています。ポートフォリオ状況報告については、従来どおり月初に行いたいと思います。したがって、*基本は週1日、会計の話題が中心*上記の週1日の他、月初にポートフォリオ状況*あとは気が向いたときに不定期に更新となります。(2)割安・成長株投資研究会への投稿以前のご縁もあって、エンジュクさんで行っている「割安・成長株投資研究会」の執筆陣に名を連ねることになりました。属人ベースでお付き合いがあったとは言え、他にも実績のある投資家さんが多数いる中、私ごときがそのような大役をとも思いましたが、さらなる情報発信をと思い、引き受けることにしました。定期的にブログを執筆することと、月間レポートを執筆することが主な活動となります。内容としては、過去に私が書いた日記などをまとめることで、投資全般に関して全くの初学者が基礎から体系的に学べるようにするのはもちろんのこと、私の日記にありがちだった「理屈っぽいところ」を実際の投資アイデアに落とすための具体論についても書いていきたいと思います。それによって、「魚」ではなく「魚を釣る方法」を知るための一助となればと思います。トップページにリンクを貼っておきますので、ご興味が沸きましたらよろしくお願いします。**************************
2005年11月02日
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セミ・ストロングフォームの効率的市場仮説が主張するところとは裏腹に、株式市場に参加している人たちの多くが企業の財務諸表を見たことがないというのは周知の事実です。この事実が、企業の本源的価値から大きく逸脱した価格が生まれ、それを利用して超過収益を生み出すバリュー投資の有効性の源泉となっています。ただ、バリュー投資家と自認している人達でさえ、会計学の原理はおろか、簿記の原理もあまり勉強したことがないという人がかなりの割合でいることを知ったので、思うところがあって今回の話題とさせて頂きました。もっとも、私自身が目下勉強中である部分もあって、人様にそれを教えられるほどの身分でないことだけは、最初に告白しておかなければなりませんが・・・。サイトの紹介のその前に、以下の点だけは留意して頂きたいと思います。(1)偉大な投資家やトレーダーが既に述べているように、株式投資で成功するために必要な素養はいくつかあり、投資手法にもよるが、財務諸表を読む能力はそれほど大きなウエイトを占めていないことが分かる。(どんな投資手法にも共通しているのは、「感情的規律のコントロール」くらいではないだろうか?)(2)成功している個人投資家の多くが、会計や投資とは異なる仕事を本業としており、必ずしも高度な専門的会計の知識がなくても成功できることを物語っている。(3)財務諸表を読む能力だけが投資リターンの大部分を決定するのであれば、公認会計士集団のスーパー投資ファンドがあっても良さそうだが、そうしたものが生まれてくる気配は今なお見られない。これらを踏まえた上で、「簿記や会計は企業実態を知るための言語だから、その基礎となる原理原則は勉強しておいたほうが良い。」と判断するのも、「最終的には株式投資から利益を上げることが目的で、財務諸表を読む能力は成功するために必要な素養のほんの一部に過ぎないから、そこに時間をかけすぎるのは効率が良くない。」と判断するのも自由だと思います。横道にそれましたが、私が勉強になったと思うサイトを紹介します。今回は以下の2つのサイトの紹介に留めておきますが、将来的には「リンク集」としてまとめられたらと思います。***********************1.複式簿記東京大学工学部電子工学科の教授という、畑違いの人が複式簿記の初学者向けに書いたサイト。著者自身が仕事柄、会計知識の習得に迫られて、その基礎となる複式簿記の勉強をした際に従来の教科書が分かりにくいという経験を踏まえて書いています。とはいえ、やはり工学部の大学教授ということもあり、言い回しが堅苦しいことと記号の使い方などが理科系的である感は否めません。著書として、「素人が書いた複式簿記」というベストセラーがありますので、こちらのほうが参考になるかもしれません。「素人が書いた複式簿記」2.会計学を学ぼう 税理士を目指している方が書いたサイト。サイト主は「自身の会計に関する知識体系をまとめたもの」という位置づけで書いていますが、某会計士補バリュー投資家さん曰く「税理士試験の財務諸表論の理論(100点中50点)に合格できるくらいの内容」と評していますので、体系としてはきっちりしていると思います。メインコンテンツである以下の2つ会計学の概説企業会計原則がそれに当たります。会計関連のリンク集やおススメ書籍もあり、それも非常に充実しています。メインコンテンツについては、私もプリントアウトして(理解できない箇所が多々ありながらも)一通り読んでみました。***********************以前の日記でも書きましたが、いきなりPERやPBRから入るよりも、簿記や会計の原理原則を知って、仕訳からB/SやP/Lがどのように作られるかを把握した上でバリューの概念をつかむというようになるとかなり財務諸表の見え方も違ってくるのではないかと思います。もちろん、投資家である以上、「株式投資で利益を得るために何が必要か?」という視点だけは外さないようにしなければなりません。株式投資を意識している職業的会計家(税理士や公認会計士や会計学が専門の大学教授など職業で会計に携わっている人のことを指して言っています)は少ないでしょうから、その点は自分自身が意識を持った上で勉強をしなければならないと思います。今日の言葉:「『利益』という言葉には、正確なものという語感があります。(中略)未熟な読者は、それが小数点以下数十桁まで表示されたパイ記号(円周率)のように確かなものであるように思われるかもしれません。(中略)アメリカのサクセス・ストーリーの中には、会計上の蜃気楼によって作られたものもあります。」(バフェットの手紙から)
2005年10月30日
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前回はEVについて説明しましたので、今回はEBITDAを説明します。念のため、これらの定義を再掲載しておきます。*****************************(1)EV英語:Enterprise Value日本語:企業価値算出式:EV=株式時価総額+有利子負債-現預金(2)EBITDA英語:Earnings before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization日本語:利払い税引き前減価償却償却前利益算出式:EBITDA=営業利益+減価償却費*****************************EBITDAの定義はそれほど難しいものではありません。日本語では、「税金」「借入金利払い」「(有形固定資産の)減価償却」「(無形固定資産の)償却」を差し引く前の利益となります。さらに、EBITDAを「営業利益基準+減価償却費」で定義するならば、そこには「営業外損益項目」や「特別損益項目」も排除することになります。こうした定義から、EBITDAは当期純利益と比較して、諸々の「特殊項目」や「一時的項目」を排除した「その企業が行っている中核事業から得られる収益力の指標(米国会計でいうところのプロ・フォーマ)」と解釈できなくもありませんが、その一方で「株主が得られる真の利益(バフェットがいうところのオーナー利益)」とは程遠いという問題点があります。EBITDAの有効性を擁護する立場に立つと、以下のメリットを強調することになるでしょう。(1)減価償却は現金支出を伴わない費用なので、EBITDAはその企業が持つ中核事業におけるキャッシュフロー獲得能力を表すのに有効である。(2)税制・金利水準・減価償却基準などは各国によって異なるので、それらの影響を除いた収益であるEBITDAは企業の国際間比較をするのに有効である。しかし、これらの主張も企業分析面として問題がなくはありません。この2つの有効性を必ずしも額面どおり受け取れない理由について考えてみたいと思います。(1)減価償却は現金支出を伴わない費用なので、EBITDAはその企業が持つ中核事業におけるキャッシュフロー獲得能力を表すのに有効である。これについてですが、「EBITDAが利益の経済的実質を語るにあたってどの程度信頼が出来るか?」にかかっているかと思います。以前の日記「利益の経済的実質に関する考察」シリーズ利益の経済的実質に関する考察(その1:PERの前段階)利益の経済的実質に関する考察(その2:発生主義と現金主義)利益の経済的実質に関する考察(その3:企業間信用の場合)利益の経済的実質に関する考察(その4:資本的支出と収益的支出)利益の経済的実質に関する考察(その5:特別損益の取り扱い)利益の経済的実質に関する考察(その6:会計方針の変更)を見ていただければ分かるかと思いますが、「営業利益+減価償却」が利益の経済的実質を満たす基準であるとは言えません。そこには、「企業の競争力を維持するための支出だが、即座に費用として計上されない項目」が抜けているからです。これは、アパートのオーナーを想定すると分かりやすいでしょう。確かに、減価償却は費用を伴わない支出であるという一面はありますが、実際に年月を経るごとに建物は老朽化するため、それによる家賃低下は不可避ですし、それを食い止めるためのリフォーム費用なども当然かかります。したがって、典型的には、有形固定資産の稼働率が収益力を決定する事業を行っていて、それを維持するために常に設備投資を必要としている重厚長大型企業などが当てはまりますが、実際にはもっと広い企業に適用されるはずです。また、「営業外項目」や「特別項目」を無視することが出来るかどうかについても考慮しなければならず、企業によっては、これらを考慮した収益こそが真の収益力であるということにもなります。(2)税制・金利水準・減価償却基準などは各国によって異なるので、それらの影響を除いた収益であるEBITDAは企業の国際間比較をするのに有効である。この視点でEBITDAを使用するのはグローバルな事業展開をしている企業に多く、具体的な業種で言うと、医薬品産業・通信産業・自動車産業・ハイテク産業などが当てはまるのではないかと思います。例えば、ファイザー製薬(アメリカ)と武田薬品(日本)を比較する場合、アメリカと日本では法人税率・金利水準・減価償却基準が異なるので、これらの影響を除外することで両社の医薬品産業としてどれだけ収益力を発揮しているかについての比較をEBITDAで考えようというものです。さらに、バリュエーションの国際比較として、EBITDAを使用してどちらが割安であるかという判断もアナリストは通常行っています。しかし、常識的視点でみれば誰にでも分かるような問題点がここにはあります。それは、「ファイザーは日本の会社ではないし、武田はアメリカの会社ではない。」ということからくる問題点です。*税制の影響の排除に対する問題税制の影響を排除することに対する問題ですが、現実にはそれぞれの企業はその国の税制に基づいた法人税率で税金を納めなければなりませんし、それを払って初めて株主利益となります。したがって、例えば、「日本は税率が高いから純利益が少なくなっているが、それを除くと実は収益率が高い」という論理は現実的ではありません。*金利水準の影響の排除に対する問題金利水準の違いについてですが、金利水準が異なるからその影響を排除するというのもずれた論点です。なぜならば、現実には金利情勢を考慮した資本政策(財務レバレッジをどの程度かけるかなど)を実施しなければ企業は立ち行かないからです。例えば、アメリカの借入金利が4%、日本の借入金利が1%であるならば、アメリカで事業を行っている企業のほうが、資本利益率に対するプレッシャーが高いのは当然の話です。*減価償却費の影響の排除に対する問題減価償却の問題については、個々の企業によって事情が異なるので、それを考慮すべきだということに尽きます。会計制度の違いというよりは、利益の経済的実質に焦点を当てるべきだと思います。そんなわけで、EBITDAは利益の経済的実質を語るに当たって非常に怪しい部分があることが分かります。そして、皮肉な話ですが、EBITDAをしきりに主張している企業ほど、それを適用するための前提条件を満たしていないものであることがよく分かります。ITバブルとその崩壊を経て倒産したワールド・コムやエンロン、その他のハイテク産業など枚挙にいとまがありません。今日の言葉:「からっぽの袋はまっすぐ立つのは難しい」(ウオーレン・バフェット)P.S.私見ですが、EV/EBITDA倍率の適用は「キャッシュリッチで、有形固定資産が少ない企業」に限定するのが保守的ではないかと思います。あるいは、有形固定資産が多い企業については「その維持コストがどの程度か」をよく勘案してそれを差し引いて使用すべきだと思います。
2005年10月26日
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前回取り上げた代替指標のうち、EV/EBITDA倍率について考えてみたいと思います。様々な投資サイトにEV/EBITDA倍率の解説がなされており、それをおさらいするだけであれば、いまさら私が取り上げる必要はないとも思いましたが、「強気相場に伴う代替指標の登場」という事態を想定して、ここで整理しておくのも悪くないと思いました。EV/EBITDAには、「イーブイ・イービットディーエー」とか「イーブイ・イービットダー」などの呼び方があり、どちらの呼び方がポピュラーであるかというのは本質的な話ではありません。ちなみに、EVとEBITDAの定義等は以下のとおりです。*****************************(1)EV英語:Enterprise Value日本語:企業価値算出式:EV=株式時価総額+有利子負債-現預金(2)EBITDA英語:Earnings before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization日本語:利払い税引き前減価償却償却前利益算出式:EBITDA=営業利益+減価償却費注)教科書によっては、EBITDAを「経常利益+支払利息-受取利息+減価償却費」と定義しているものもあります。「営業利益=経常利益+支払利息-受取利息」という関係式が概ね成立している企業であれば、どちらを使っても支障はありませんが、会計項目(営業項目と営業外項目)の振り分けの都合から、この関係式がくずれている企業については適宜修正が必要です。なお、アメリカの会計では「経常利益」という項目がありませんので、それとの比較ということであれば、「営業利益+減価償却費」という定義のほうが扱いやすいでしょう。*****************************で、このEV/EBITDA倍率は近年盛んに行われている企業買収の際によく出てくる指標で、「(買収時に投下した実質的な資金である)EVが(買収先の簡易的なキャッシュフローを表す)EBIDTAの何倍であるか?」という点に注目しています。この数字が小さければ、買収資金の回収年数が短くて済むということからPERと同様、バリュー系の指標として利用されることもありますが、いくつかの違いがあります。やや話が長くなるので、今回はEVのみに留めておいて、次回にEBITDAについて考えます。(1)EVについてまず、EVについて考えます。本質的な話ではありませんが、日本語で「企業価値」となっていることにはいつも違和感を覚えます(「価値と価格は違う」というバリュー投資の立場から考えれば、EVは「企業価値」では「企業価格」と言うべきだと思うのです。)それはさておき、標準的なコーポレート・ファイナンスの教科書ではEVを「買収時に必要な実質的な資金」と解説していることが多く、これは「部分的な事業の清算」を意味します。すなわち、「買収者が買収先の事業改革に乗り出し、本業とは無関係な財務活動資産を清算し、その資金は一旦買収者(株主)に還元され、残った営業活動資産だけで本業を継続することで、従来よりも高い資本効率を目指す」ことを前提としています。EVはその財務活動資産の代表として「現預金」と「有利子負債」に焦点を当てているということに他なりません。したがって、本業を継続することに支障がない財務活動に相当する資産が他にあれば、EV(実質的な買収資金)の定義を再考して、その減算項目とすることが出来ます。このことから、簡単に言えば、EVとは主にキャッシュリッチな企業を買収する際に考慮する補足的指標であることになります。ただし、現実にはそうしたキャッシュリッチな企業でさえ、通常営業における「資金繰り」の問題は発生し、「保有している全ての現預金と有利子負債が本業の継続に不要である」と言い切ることは出来ませんので、この点は注意が必要です。さらに、金融業のように、現預金と有利子負債の管理・運用能力こそが本業の収益力の源泉となっている企業については、現預金も有利子負債も(財務活動資産でなく)営業活動資産となりますので、EVを買収時に必要な実質的な資金であると定義することの妥当性に欠けます。したがって、EVを「実質買収資金」と定義するためには*キャッシュリッチな企業であること*現預金と有利子負債の管理・運用能力が本業の収益力の源泉である企業ではないことが重要な前提条件となっています。次回は、EBITDAのほうです。こちらはEV以上に多くの前提条件や問題点がありますので、そのあたりに触れてみたいと思います。今日の言葉:「いらぬ物を買えば、いるものを売るに至る。」ベンジャミン・フランクリン
2005年10月23日
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昨今の強気相場のせいか、バリュー系の定量的指標を重視している投資家の中には、伝統的なスクリーニング条件である「PER10倍以下」「PBR1倍以下」といった条件だけでは良質な銘柄がなかなか引っ掛からないという理由から、スクリーニング基準を緩めたり、考慮する指標を多角化するという工夫をしているようです。「全ての銘柄を定量スクリーニングだけでふるいにかけられるものでない」という自明な事実を勘案すると、調査対象を広げるという意味でこのような試行錯誤をすることは誰もが通る道であると思いますが、その分、リスク管理についてガードが甘くなりがちであることは常に認識しておかなければならないと思います。相場の常ですが、伝統的な指標であるPERやPBRで株価の水準を説明することが難しくなると、必ずといって良いほど「代替指標」が現れるものです。いくつか事例を挙げると、以下のようなものがあります。*********************(1)Qレシオ80年代後半のバブル期はまだ土地神話が根強く、企業が保有している土地にはかなり含み益があるから、簿価ベースのPBRではなくて、それらの「土地の含み益」も考慮した実質的なPBRで測るべきだという考え方。東京大学の若杉敬明氏が「トービンのQ理論」(経済学の用語です)をベースに作り出した指標。バブル崩壊後は、当然のごとく批判にさらされた。(2)PSR(株価売上倍率)株式時価総額を売上高で割って算出される倍率。企業活動の源泉が売上であり、その売上が利益に繋がるということがその根拠。90年代後半のITバブル時において、「新興のIT系企業は現時点では利益を出していないが、インターネット市場の潜在的成長性は凄まじく、それらに属する企業の売上の伸び率も著しい。そして、売上はいずれ利益に結びつくであろうから、PERで正当化できなくてもPSRで見て割安と判断できるのであれば問題ない。」という類の論理が罷り通っていた。PSRについては、どこかのタイミングで取り上げたいと思います。(3)EV/EBITDA倍率*EV(企業価値)「Enterprise Value」*EBITDA(利払い税引き前減価償却償却前利益)「Earnings before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization」これについては、次回取り上げたいと思います。*********************こうした「代替指標」が登場する背景は一体何でしょう?まず、バリュエーションモデル自体に恣意性が含まれているという点は指摘しておかなければなりません。(これは、どのようなモデルでもそう言えます。)(現実の株価にフィットするかどうかは別として)理論上は、そこに含まれるパラメタを恣意的に調整することで、どんな株価水準でも正当化しようと思えばできるという「危険性」があります。例えば、PERについてですが、簡易バリュエーションモデルである「定率成長モデル」に含まれる「割引率」と「成長率」のパラメタの根拠をもっともらしく説明することで、表面的なの数字では割高に見える企業でも、その気になれば買いの理由を正当化することが理論上可能です。そうはいっても、PERの場合、指標がポピュラーであることもあり、歴史的水準についての多くの研究や賢明な投資家による常識的感覚がありますから、その水準から著しく乖離しているとやはり説明に窮する部分がある点は否めません。そこで、代替指標が登場し、「確かに杓子定規のようにPERで見ると、割高のように見えるかも知れないけど、この指標で見るとそうでもないし、むしろお買い得でしょ!」と説得する材料になり得ることが登場の背景であると私は考えています。もちろん、あらゆる代替指標が悪いというつもりはなく、これらを使う場合には、その背後にある「前提条件の妥当性」を確認した上で使うことが大事であるということです。もし、こうした代替指標を考慮すべき前提条件を勘案すると明らかに的外れな使い方をしていたり、それを超えて、あらゆる企業に代替指標を適用しようとする風潮が出てくれば、それは危険なシグナルであると判断できるかもしれません。今日の言葉:「議論が かみ合わないのは、前提条件が異なるからである。」
2005年10月19日
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今回は、景気回復期においてメディアに必ずといって良いほど出てくるフレーズである「企業収益の力強い回復基調」に付きまとう「収益のトレンド予想に関する危険性」について考えたいと思います。バリュエーションの議論をするまでもなく、企業収益は企業の本源的価値を決定する重要な要素の一つですから、(成長株投資であれ、サプライズ投資であれ)将来の収益の伸びを期待した投資であれば、その伸びがどのような形で実現するかを考えなければなりません。同じ収益の伸びでも、その企業が持つビジネスモデルの強さを源泉とした収益の伸びであるのか、それとも、景気回復の恩恵を受けた収益の伸びであるのか、では意味合いが違ってきます。個別企業の本源的価値と価格の差を収益の源泉とするバリュー投資の場合、マクロ的な景気動向がどうなるということについて過剰に気にする必要はないのですが、企業収益を決める要因の一つに景気動向の良し悪しが多少なりとも含まれている側面があることは頭の隅に入れておかなければなりません。典型的には、俗に「景気循環株」と呼ばれている企業がその代表格ですし、景気循環株とは呼ばない企業であっても、それは真実だと思います。これは「ごく一部の例外的な真の成長企業」や「真に安定需要が期待できる産業に属する企業」でもない限り、避けられないことかと思います。さらに、企業収益の実績値のみならず、その予想についても同様の傾向があると考えられます。まず、多くの企業が行う投資活動には、古典派経済学が教える合理性とは裏腹に、景気が良くなれば新規の投資に対して積極的になるという傾向があります。さらに、それまで消極的であった新規の投資に対して積極的になるということは、(実際にそれが実現するかどうかは別として)経営者自身が将来の企業収益に対して楽観的な見方をしていること他なりません。当然ながら、収益予想にそうした新規の投資から得られると期待できる分も上乗せされるからです。したがって、全体的傾向として、好景気の際に楽観的な収益予想がなされるのはごく自然なことであり、そこに投資家が注意すべきである「トレンド予想の危険性」が生まれます。で、何が言いたいのかといいますと、四季報の予想にせよ会社側の予想にせよ、予想収益を見るにあたっては、景気が良いときとそうでないときで見方を少し変えるべきだということです。マクロ的に見て足元の現状が好景気であると判断するに足る場合、企業収益の予想に際して、そうした好景気が持続しその恩恵を多少なりとも受けることを前提とした予想が罷り通っている可能性があるということです。すなわち、その予想は楽観的過ぎるかもしれないということです。こうした「トレンド予想」による収益をベースに良い銘柄を探したとしても、好景気が持続するに足ると判断するならともかく、景気が失速した際には悲惨な間違いを犯しかねないことになります。たとえ予想収益ベースで低PERであったとしても、その基となる「増益トレンド」自体が裏切られるかもしれないリスクがあることを考えなければなりません。それでなくとも、四季報やアナリストや会社が作り出す予想収益というものは楽観的な傾向があります。とりわけ、気をつけなければならないのは、以下のようなケースです。(1)景気循環株言わずもがなです。(2)業界下位の銘柄への投資同じ業界内でどちらかと言うと不利な立場に立たされている企業であっても、好景気であればその恩恵を受けて企業収益を伸ばすことが出来ます。こうした業界下位銘柄への投資は、(倒産リスクを避けることさえ出来れば)景気のボトムから復活する段階に行うことで大きな投資成果を発揮します。逆に、景気のピークで、かつ、それほど割安でもない時期にそれらの銘柄に投資すると大きな落とし穴が待っています。上記のケースに限らず、景気が良くなった際に需要が多く発生するという類の財やサービスを取り扱っている企業に対する収益予想については十分すぎるほどの注意が必要だと思います。「過度に楽観的過ぎた予想収益に対する下方修正」「景気下降懸念による株価下落」「割高な株価の水準訂正」という「トリプルパンチ」を喰らいかねません。特に、ここ2~3年の上昇相場しか経験したことがないという投資家はこのリスクを実感できる機会がなかっただけに注意が必要だと思います。今日の言葉:「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観と共に成熟し、幸福のうちに消えて行く。」
2005年10月16日
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今月の10日に今年のノーベル経済学賞の受賞者が決定し、私が以前ボロクソに書いた「ゲーム理論」の大家へ贈られることになったようです。**********************ノーベル経済学賞にゲーム理論のシェリング、オーマン両氏スウェーデン王立科学アカデミーは10日、2005年のノーベル経済学賞を米国人のトーマス・シェリング・メリーランド大教授(84)と米・イスラエル国籍のロバート・オーマン・ヘブライ大教授(75)に授与すると発表した。両氏とも理論経済学の大家として知られ、「ゲーム理論」の発展・応用に貢献した業績が評価された。ゲーム理論は、相手の戦略を想定し、それに対して自分がどういう戦略を採用した場合に、利得が1番大きくなるのかを割り出す。シェリング氏は1960年の著書「対立の戦略」の中で、国際紛争にあたっては、実際に報復に踏み切るよりも、「脅し」をちらつかせ続けるほうが相手側に対して最終的に優位に立てるとの分析を示し、冷戦下で武力行使を回避する学術的な説明となった。その後はゲーム理論を国家間紛争にとどまらず、現代の企業間競争にも応用した。オーマン氏はゲーム理論を元に、戦争や貿易などの紛争に際して当事者による相互理解を通じた共通認識の醸成による紛争回避が、結果的に双方の利益になることを数学的に証明した。**********************私が以前書いた「ゲーム理論の問題点」を基にこの記事を見ると、「ゲーム理論で紛争を解決する」という論点自体が非常に噴飯モノであると私は思うのですが、ノーベル経済学賞の審査員から見ればどうやら「社会貢献度大」という判断のようです。ゲーム理論批判(前編:仮定の問題)ゲーム理論批判(後編:最後通牒ゲームでの事例)もとより、他のノーベル賞(「医学・生理学」「文学」「平和」「物理学」「化学」)と比較して、経済学賞にはそれほど権威がなく、ノーベルの末裔も「経済学賞はやめたほうが良い」と訴えているくらいであるとはいえ、こういうのが受賞してしまうのですから、経済学の世界が一向に視界良好とならないわけです。もちろん、こうした机上の経済学が文字通り「黒板の中だけで」いるうちは、それが実社会で試されることがないので、単なる「理論好きの戯言」と片付けることが出来るのですが、実社会に入り込んだときの「有害さ」をもう少し考えて欲しいと思います。実社会に入り込んだときの有害さと言えば、証券投資の世界でいうと、オプション理論で確立して1997年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・マートンとマイロン・ショールズだと思います。これはノーベル経済学賞という権威に大きなキズをつけた受賞であるとも言えます。この2人はLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)というファンドに深く関わることで、実社会においてモノの見事に金融工学の脆さを露呈した上に、LTCMの破綻に際して金融界に混乱を招いたことでも有名です。その後、合理的経済学を批判した1998年のアマルティア・センや、情報の非対称性に関する研究をした2001年のジョージ・アカロフ、行動経済学に関する研究をした2002年のダニエル・カーネマンなどがノーベル経済学賞に受賞し、そうした路線から逸したように見えたのですが、今年のノーベル賞を見ていると、また「逆戻りした」という感じですね。アマルティア・センジョージ・アカロフダニエル・カーネマン経済学者に対して「もう少し、実社会を観察したほうがいいのでは」と改めて感じさせた今回のノーベル経済学賞受賞でした。今日の言葉:「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ。」(踊る大捜査線:青島俊作の名言)P.S.ファイナンス学者も同様で、大学の教室(合理的経済人を仮定した場合の数式上の論理展開)に閉じこもるではなく、証券会社の店頭(株価ボードを見て一喜一憂している御仁たちの行動)を観察することがまともな研究に繋がるのではないかと思います。まあ、期待薄ですけど。
2005年10月12日
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いよいよ、「3月決算の企業による中間決算発表」の時期が近づいてきました。そこで、またまた「投機的な」お話です。定量的な基準から、業績の上方修正を事前に察知する方法についていくつかのアイデアを出したいと思います。(逆から考えると、下方修正を事前に察知する方法にもなります。)以下は、「3月決算の企業が中間決算発表をする直前」というケースを想定しています。それ以外の決算期や通期決算へ適用する場合については、適宜修正してください。**********************1.直近の決算実績の数値から察知する最初に紹介する方法は、直近の決算実績の数値を利用したものです。この方法を適用するためには、売上・利益の両方とも季節性が殆どない企業であることが大前提です。季節性のある企業にこれを適用する場合、季節性を適切に調整する必要がありますし、その調整が困難を伴う場合があります。*四半期決算と中間見通しとの比較四半期決算(実績)と中間見通し(四季報予想)の数字を比較して、業績の「進捗率」を計算して、最低でも進捗率が50%以上の企業を探します。もちろん、理想は進捗率が100%に近い企業です。さらに、進捗率が100%以上の企業があれば「確実に上方修正をします」というメッセージになります。・[四半期決算の売上]÷[中間見通しの売上(四季報予想)]・[四半期決算の利益]÷[中間見通しの利益(四季報予想)]この方法は、「四半期決算の実績値は8月には分かっていて、秋号の四季報(9月発売)で最新の中間見通しと共にそれを確認できる」という、「タイムラグ」がポイントです。*ちなみに、中間決算の数値と通期見通しの比較だと以下のとおりです。・[中間期決算の売上]÷[通期見通しの売上(四季報予想)]・[中間期決算の利益]÷[通期見通しの利益(四季報予想)]2.月次売上の累積から察知するこの方法を適用するためには、月次売上がタイムリーに公表されていて、かつ、売上と利益がリンケージしやすい企業であることが大前提です。特に、小売業で有効であり、小売業のリサーチを得意とする個人投資家は、少なからずこれを利用しているはずです。やり方は簡単で、「4月から9月までの売上実績」と「中間見通しの売上(四季報予想)」の比較になります。・[4月から9月までの売上実績]÷[中間見通しの売上(四季報予想)]で売上の進捗度を確認し、100%を超えているものを探します。コスト構造などに大きな変化がなく、売上高利益率に大きな変化が(もしくは改善されている)ことを別の材料から確認できれば理想的です。この方法は、「4月から9月までの売上実績が10月には分かっていて、中間決算の発表が11月中旬である」という、「タイムラグ」がポイントです。3.為替レートの変動から営業外損益を事前に加減するこの方法を適用するためには、国内のみならず海外でも財やサービスのやり取りをしていて、かつ、為替レートの変動が業績に影響を与える企業であることが大前提です。この方法は輸入/輸出の区別は問いませんが、本業に大きなブレがないことを事前に確認しなければならないのは言うまでもありません。まず、基本的な話ですが、為替リスクをヘッジしていない(もしくは、ヘッジが完全でない)企業の場合は以下のようになります。輸入企業:円高はプラス材料、円安はマイナス材料輸出企業:円高はマイナス材料、円安はプラス材料一方、為替予約や通貨オプションなどのデリバティブで原材料購入(もしくは販売)に伴う為替リスクをヘッジしている企業の場合、実質的な経済効果は為替変動に関わらず中立ですが、デリバティブの収益認識と売上(もしくは売上原価)の計上の認識時期がずれるために、会計上の見かけの利益が変化する可能性があります。デリバティブは時価会計であり、売上(もしくは売上原価)の認識はその後ということが多いですから、そのような場合、以下のようになります。*輸入企業円高:デリバティブ評価損が計上、当期の営業外費用に反映円安:デリバティブ評価益が計上、当期の営業外利益に反映*輸出企業:円高:デリバティブ評価益が計上、当期の営業外利益に反映円安:デリバティブ評価損が計上、当期の営業外費用に反映これらを踏まえた上で、3月末・6月末・9月末時点の為替レートを確認します。期中の為替レートの変動が大きく、かつ、業績見通しが3月末時点の為替レートを前提としているならば、営業外損益項目による業績修正が行われる可能性大です。**********************最初にお断りしているように、あくまでも「投機ネタ」です。したがって、利用するにしても過信は禁物です。特に、急激な株価上昇(もしくは下落)でそうした上方修正(もしくは下方修正)が織り込まれている場合も有りますので、バリューによる判断は忘れないでください。明らかに割高な銘柄は基本的に避けるべきです。あと、大型株のように多数のアナリストや市場参加者がカバーしている銘柄はこの手のリサーチが行き届いていると考えたほうが無難だと思います。今日の言葉:「我々は常に自分自身に問わなければならない。もしみんながそうしたら、どんなことになるだろうと。」(サルトル:フランスの哲学者)
2005年10月09日
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今回はスクリーニングにおける「or条件」の活用について述べたいと思います。使用するツールは「CD-ROM版四季報」です。個人投資家がスクリーニングだけで銘柄選択を済ませようとすればそこには自ずと限界があることを前回述べました。資金力の問題、および、個々のスクリーニング条件が完璧でないこと、がその主な理由でした。また、前回には述べなかったですが、「スクリーニングで抽出される銘柄はいつも同じ銘柄ばかりだ」という「ボヤキ」の根本的な要因も、「and条件」だけでしかスクリーニングをしていないことにあるのではないかと思います。以上のことからも、(完璧とは程遠い)複数のスクリーニング条件を並べるだけ並べて「それらを全て満たす銘柄を探す」という「記号論理上だけの完璧」を追求するとに固執する必要は全くないのではないかと思います。それよりも、「妥協できるところは『or条件』、妥協しがたいところは『and条件』」と捕らえて、これらをうまく組み合わせた上で効果的な銘柄調査のきっかけにするほうがいいと思います。それでは、条件の組み合わせ方の話をする前に、論理記号の基礎的な話をしたいと思います。記号論理の基礎を知っている人には当たり前すぎると感じる話ですが、まず「or条件=足し算」「and条件=掛け算」だと覚えてください。カッコのない四則演算において、乗除(掛け算と割り算)は加減(足し算と引き算)に優先します。例えば、「3+4×5」という演算を考えた場合、「3と4を足してから5を掛ける=60」のではなく「4と5を掛けてから3を足す=23」ことが正しいということは小学校の頃に習っています。もちろん、カッコがある場合はそれを優先させるのは言うまでもありません。上記と似たような数値例、すなわち、「(3+4)×5」という演算を考えた場合、「3と4を足してから5を掛ける=60」が正しいことになります。記号論理における「and条件」「or条件」もこれと同様です。条件式がいくつあっても同じですが、イメージをつかみやすくするために具体的な条件でやってみます。以下のような3つの条件、条件A:PER<=10(収益で見て割安)条件B:PBR<=1(資産で見て割安)条件C:株主資本比率>=50(財務が健全)を考えます。(今回は、PER・PBR・株主資本比率が正しく機能するための前提条件についてはあえて考えません。それは、個別に検討すべき項目だと思います。また、話を分かりやすくするため、赤字でないことを暗黙に仮定しておきます。)サンプル銘柄として、以下の8銘柄があったとします。(勝手に数字を作っただけであり、ある特定の銘柄を指しているわけではありません。したがって、これは何の銘柄だと質問されても返答に困りますので、ご了承ください。)銘柄1:PER=5、PBR=0.7、株主資本比率=80銘柄2:PER=25、PBR=0.9、株主資本比率=70銘柄3:PER=8、PBR=2.3、株主資本比率=60銘柄4:PER=9、PBR=0.3、株主資本比率=10銘柄5:PER=10、PBR=1.6、株主資本比率=30銘柄6:PER=20、PBR=0.5、株主資本比率=20銘柄7:PER=50、PBR=4.5、株主資本比率=90銘柄8:PER=30、PBR=3.3、株主資本比率=40このとき、条件の組み合わせ方として以下のようなパターンがあります。(ただし、3つを全て使用する場合。)(1)「A or B or C」該当する銘柄:1、2、3、4、5、6、7(2)「A and B or C」該当する銘柄:1、2、3、4、7(3)「A or B and C」該当する銘柄:1、2、3、4、5(4)「A and C or B」該当する銘柄:1、2、3、4、6(5)「(A or B)and C」該当する銘柄:1、2、3(6)「A and (B or C)」該当する銘柄:1、3、4(7)「(A or C) and B」該当する銘柄:1、2、4(8)「A and B and C」該当する銘柄:1このように、たった3つの条件の組み合わせでさえ、スクリーニング条件は8パターンあるです。従来どおりのスクリーニング条件、すなわち「A and B and C」に限界があることは何となく分かって頂けたかと思います。例えば、「財務が健全であることは必須条件として、収益面か資産面のどちらかで割安であれば調査対象としたい」という人であれば、(5)「(A or B)and C」をスクリーニング条件として設定することが考えられます。今回あえて考えなかったスクリーニング式の意味(PER・PBR・株主資本比率の意味)を実際には考えながら、妥協できる点とそうでない点を自分なりに整理した上で、効果的に銘柄を探すことが出来ることを祈ります。最後に一つ。気をつけなければいけないのは、そもそも完璧でないスクリーニング条件やその組み合わせに凝りすぎて肝心な投資調査が疎かになってしまうことだけは避けましょう。今日の言葉:「重要なのは、どれだけ作業をするかではなく、どれだけ儲ける事ができるかである」(ラリー・ウイリアムズ)
2005年10月05日
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今月の運用報告とコメントです。1.運用パフォーマンス*昨年末を10000とした形式で基準価格を表示しています。基準価格:198158月末比 約 +4.1%昨年末比 約 +98.2%2.ポートフォリオ*現物と信用を分けて記載することにしました。*ウエイト順です。重要な影響を与える銘柄のみ記載しています。*短期売買目的のトレード銘柄は記載していません。*仕込み中の秘密銘柄は記載していません。*ウエイトの詳細は、フリーページをご覧下さい。*現物ポジション(1)8191 光製作所(2)9651 日本プロセス(3)9627 アインファーマシーズ*信用ポジション(1)7902 ソノコム(2)7548 サンクスジャパン3.売買アクション*短期売買目的のトレード銘柄は記載していません。*仕込み中の秘密銘柄は記載していません。*購入7902 ソノコム(追加購入)9627 アインファーマシーズ(追加購入)*売却9702 アイエスビー9651 日本プロセス(部分売却)4.コメント(1)9月の運用パフォーマンスは、前月末比約+4.1%、年初比約+98.2%でした。今月も先月に引き続き大型株が堅調で、それに比べて新興市場は冴えない展開が続きました。それでも、先月は絶好調だったのですが、さすがに今月は大型株を組入れていない分だけパフォーマンスが大幅に劣後してしました。(2)今月も、全体的にはポジションの圧縮をしています。利益確定の売りを一部の銘柄で実施しながらも相対的魅力度のある銘柄の買い付けを実施しました。新規銘柄の購入はなく、既存銘柄の売買のみにとどまりました。*9702 アイエスビー利食いしました。もう少しいける可能性も少し考えましたが、当初の目標は十分に達成できたと考えています。*9651 日本プロセスポジション圧縮のために一部売却を実施して、現物&信用の二階建てという状態は解消しました。*7902 ソノコム先月発表された決算内容を再度精査した結果、買い増しを実施しました。*9627 アインファーマシーズ現物ポジションによる追加投資です。(3)保有銘柄でパフォーマンスに重大な影響を与えるイベントは以下のとおりです。*9627 アインファーマシーズ特に原因らしい原因が見当たらない状態で株価急落。取得価格近辺まで落ちてしまいました。状況を見つつ買い増し等を検討したいと考えています。9月は一応プラスだったものの、大型株を中心に高パフォーマンスとなっており、結果としてTOPIXに対しては大きく劣後したため、気分的には勝った感じがしませんでした。TOPIXとの相対パフォーマンスで優劣を比較する投資家からすれば、今月の私は下手糞であるということになります。とはいえ、自分の銘柄選択の拙さから財産を目減りさせたわけではなく、自分の物色対象の輪の外にあった銘柄群のパフォーマンスが良かったという話ですので、相対パフォーマンスを追及される機関投資家と違い、個人投資家はこれに悩む必要はないかと思います。それよりも気をつけなければならないのは、こうしたお祭りのような相場に心が揺れて、地に足着いた銘柄選択を怠って値動きの良さそうな銘柄に手を出して大怪我をすることだと思います。1999年のITバブルの頃、バリュー系の指標(低PER、低PBRなど)が全くといっていいほど機能しなかった時期が1年ほど続きました。最近バリュー投資を始めたという人が知っておくべき点の一つに、バリュー投資には挫折しやすい時期が2つあるということです。(1)割安だと判断するに十分であるにも関わらず、一時的な値下がりに耐えられなくなって投売りする(2)明らかにバリューとは言い難い銘柄が急騰しているサマを見て、そちらに目移りするもちろん、「バリューで判断をすることがあらゆる局面で正しい」ということではありませんし、「相場の勢いに乗る」という戦略もうまく立ち回れる方であれば利用しても良いかも知れません。しかし、仮にも貴方が「バリュー投資を実践している」と自認しているのであれば、こうした局面でこそグッと我慢することが大切だと思います。企業分析や相場観といった能力以上に「忍耐力」が大切だと思います。株式市場において、たいていの人は忍耐力がないわけですから。要は、自分の身の丈に合った範囲内で投資案件を探すことが大切であるということです。事実、大型株とは対照的に、新興市場では年初来安値銘柄が増えています。こうした銘柄の中からお買い得な銘柄を1つでも2つでも探し当てることが出来れば、長期のパフォーマンスは安泰だと思います。そんなわけで、いま続出中の年初来安値銘柄は要チェックだと思います。今日の言葉: 「最も重要なのは、 自分の能力の輪をどれだけ大きくするのかではなく、 その輪の境界をどこまで厳密に決められるか。 自分の輪がカバーする範囲を正確に把握していれば投資は成功する。」(ウオーレン・バフェット)
2005年10月02日
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最近は私自身が殆どやっていないのでなんなのですが、久しぶりにスクリーニングの話でも。銘柄選択のスタートとしてスクリーニングを利用する方は結構いらっしゃるかと思います。投資関連本でも銘柄スクリーニングのやり方が書かれている本をたまに見かけます。そして、それらの殆どは単一の条件でなく複数の条件を使ったスクリーニングを実施しています。これら複数の条件を結合する基礎となる論理記号には、「and条件(両方満たさなければならない)」と「or条件(どちらか一方を満たせばよい)」の2種類があります。「and条件」と「or条件」を別の言葉で言い換えると以下のようになります。*and条件――「より完璧なものだけを取り入れたい」*or条件――「何か傑出した良さがあれば取り入れたい」しかし、投資関連本にせよ投資家のウエブサイトにせよ、スクリーニングというとその殆どを「and条件」で構築していることが多いです。なぜ、スクリーニング条件を「and条件」ばかりで構成するのか?なぜ、「or条件」を活用しないのか?スクリーニング機能を作成する側と利用する側の双方に問題があると思います。1.作成する側私はカブドットコム証券とイートレード証券の2つを主に利用していますが、そのような証券会社が提供するスクリーニング機能には「and条件」しか用意されていません。(恐らく、他の証券会社でも事情は同じだと思います。)例えば、「PER<10」と「PBR<1」という2つの条件があったとします。証券会社が提供するスクリーニング機能だと、このような条件を結合する基礎となる論理記号として「and」しか用意されておらず、「PER10倍以下、かつ、PBR1倍以下の銘柄を探せ!」というスクリーニングしか出来ません。必然的に、「PER10倍以下、もしくは、PBR1倍以下の銘柄を探せ!」というスクリーニングが出来ないことになります。しかしながら、こうしたニーズは当然あります。特に、さまざまな指標をバランス良く見たいという人にとって、「or条件」が使えないということは不都合なことこの上ありません。上記のように、条件が2つであればせいぜいスクリーニングを2回行えば済む話ですが、条件が3つ以上だとさらに複雑になります。これについては、次回に詳細を話します。ちなみに、「CD-ROM版四季報」であれば、「or条件」を利用できるので、この問題を解消することが可能です。2.利用する側「and条件」しか利用しようとしないスクリーニングを利用する側にも問題があると思います。「and条件」は「より完璧を求めて」というスタンスであり、最も極端な話をすれば「銘柄選択をスクリーニングだけで完結させたい」という思惑があります。しかし、機関投資家が扱う「クオンツファンド(定量的指標を基に機械的投資を行うファンド)」でもない限り、スクリーニングだけで銘柄選択を完結させることにはどうしても無理があります。特に個人投資家の場合、資金力の制約を考えると、「スクリーニングはあくまでも銘柄調査を効率よく行うための一環として行うべきである」というスタンスにしたほうが良いと思います。スクリーニングにおいて「and条件」を多用すべきでないもう一つの理由は、投資において「完璧」はまず有り得ないという現実からです。「and条件」を多用するということは、その完璧さを追求することにも繋がりかねません。そもそも、個々のスクリーニング条件自体が完璧であるという保障がどこにもないのですから、愚かな経済学者みたく「記号論理学」の中だけで完璧を取り繕っても仕方がありません。どうしても譲れない部分だけは「and」で結合し、それ以外の部分は「or」で結合してみて、あとは個々の銘柄調査に乗り出して数字の裏を取るというのが現実的な判断だと思います。明日は「ポートフォリオ状況」報告をし、その次の回で今回の続きをしたいと思います。今日の言葉:「私にとっての完璧な投資先ですか?そもそも完璧は有り得ないと思っていますが、妄想でよろしければ。独占的事業を行っていて競争が全くなく、常に消費者からのニーズがある財やサービスを提供しており、その財やサービスの事実上の価格決定権が顧客側ではなく企業側にあることは事業素質上の最低条件です。それに加えて、経営者が誠実であることはもちろんのこと、経営者が自社株を大量に持っていて株主と利害を共にすることで株主利益追求のために働いてくれて、資本効率に対する意識が高く、その結果としてのROEが30%以上ある企業を、PBR1倍以下で買うことでしょうか。そして、マーケットの間違いでPBRが1倍割れになれば即座に自社株買いを行ってくれることや、万が一、成長鈍化となれば配当としてきっちりと株主に還元してくれることが条件であるのは言うまでもありません。そんな企業があれば、私はあらゆるところから借金をしてでもこの企業を買います。」(某バリュー投資家I氏の妄想)
2005年09月28日
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今回は、ラスベガスが発展した理由についての話題をとりあげたいと思います。これは裏を返せば、「平均的なカジノプレーヤーがなぜ損をするのか?」についての話題です。ラスベガスといえば言わずと知れた世界一のカジノの街です。一攫千金を夢見て世界中の人々をひきつけています。当然のことながら、一攫千金の夢を実現させることの出来る人はほんのわずかであり、その他大勢の人は負ける仕組みとなっています。そのラスベガスが発展した理由を考察することで、投資家としての心構えも勉強することが出来るのではないかと思います。1.大数の法則「大数の法則」とは確率論の用語で、「ある独立試行について、その試行回数を増やすほど、理論的確率が示唆する結果に限りなく近づく」というものです。電子百科事典「ウイキペディア」:大数の法則この大数の法則を「歪みがない1~6までのサイコロ」に適用した場合、1が出る頻度(ここで、「理論的確率」と区別していることに注意)は、サイコロを振る回数を多くすればするほど1/6に近くなるということを意味します。ラスベガスが用意している全てのギャンブルは、カジノ側に有利な理論的確率に基づいて設計されています。(カジノ側から見た確率論的な有利さを図る尺度が「控除率」です。)すなわち、カジノとは「1人のプレーヤーが行うギャンブルの試行回数は少ないので、理論的確率を越えて大勝ちする人も少なからず存在する。しかし、多数のプレーヤーが同様の試行を行えば、全体的に見た場合、理論的確率を破って大損をする可能性は少ない。」という考えの下で運営がなされています。そういう意味で、カジノは保険会社と同じような運営体系となっております。参考なまでに、リスク要因も挙げておきます。「大数の法則」に基づいた運営は、通常時において安定した収益をもたらしてくれますが、「大数の法則」が破られるアクシデント(カジノの場合はプロ集団に狙われるとか、保険会社の場合は大規模な地震やテロが発生するとか)に見舞われる可能性が常にあるということです。今回はカジノ側の運営上のリスクではないので、こちらについてはこれ以上は深入りしませんが、平均的なプレーヤーがなぜ損をするかについての話題ですので、その理由の一つが「大数の法則」という、カジノ側の確率論的な有利さにあるということをまず指摘しました。2.ハウスマネー効果しかし、カジノ側が儲かっている理由は、上記に示した「確率論上の問題」だけではありません。人間心理面から見た落とし穴も存在します。もし、人間心理面から見た落とし穴が頑健であれば、たとえ確率論的にカジノ側とプレーヤー側が五分五分であっても、それでもなおカジノ側が勝つことが出来るということが出来ます。人間心理面での落とし穴は、認知心理学の領域でさまざまな研究がなされていますが、今回はいわゆる「ハウスマネー効果」について取り上げたいと思います。************ある新婚夫婦の話。新婚旅行でラスベガスのホテルに泊まっていたところ、新郎がホテル内のタンスから偶然5ドルを見つけた。その近くに17という数字があったので、何かの暗示だと思って、それをもってカジノに向かった。ルーレット台に座り、「17」の目に5ドルのチップを置いたところそれが当たって、5ドルは36倍の180ドルになった。同じことを4回繰り返しているうちに、最初の5ドルは839万ドルに膨らんだ。これを見て、カジノのマネージャーが「これ以上賭けると破産するので止めてくれ」という話になったので、渋々別のカジノに行った。そこでも17に賭けた。当たると3億ドル以上だが、無情にも18に止まり全てを失った。すごすごとホテルに帰る新郎。ホテルで待っている新婦に「どうだった?」と尋ねられたところ、新郎は「ルーレットで5ドル損しただけだった。」といった。************これは、「賢いはずのあなたがなぜお金で失敗するのか?」(日本経済新聞社)の24ページから引用したもので、上記の例は「あぶく銭は本当のお金ではないと多くの人は考えがちである」ことを示唆したものです。本書では、これを「心の会計」として紹介されています。心の会計では「人間はお金に色を付けがちであり、必ずしも合理的でない形でお金を管理しがちである」ことを主張しています。我々にも思い当たる様々な事例が載っているので、詳細は実際に本を読んでみることをおススメします。株式投資を「半丁博打」と考えて、さらに、稼いだお金を「あぶく銭」と捕らえているうちは、多くのラスベガスプレーヤーと同様、「株式市場でのカモ」であり続けることは間違いありません。もしこうした傾向について、自分に思い当たるフシがあるならば、「投資手法の研究」云々よりもまずはそちらを直すことから始めるべきです。今日の言葉:「例えあぶく銭であっても、働いて稼いだお金と考えるようになれば、無駄遣いは大きく減るものである。」P.S.私はラスベガスには行ったことがないのですが、一攫千金ではなくアミューズメントとして一度は行ってみたいと考えています。あと、アメリカのネバダ大学には「カジノ学科」がありまして、そこでは確率論のほかに人間心理の勉強もできるそうです。面白そうー。
2005年09月25日
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日本の経営史に確実に残るであろうダイエーの創業者中内功さんがつい先日お亡くなりになりました。以下は、毎日新聞の記事の抜粋です。***************************(記事より抜粋)戦後、創業から15年でダイエーを日本一の小売業に育て上げ、カリスマ経営者と呼ばれた中内功さんが19日、波乱の生涯に幕を閉じた。過酷な戦争体験をバネに、安売り哲学による「流通革命」に挑戦し続け、日本の流通構造に風穴を開けた。しかし、バブル経済の崩壊と阪神大震災の直撃で迷走。さらに、消費者の嗜好の変化を見抜けず、中内さんは経営の一線から追われた。栄光と挫折の83年間だった。***************************私の生まれである関西(神戸)が創業の地であることや、東京に移り住んだ今でも近くに店舗があることから、昔も今も非常に身近な存在でした。いち消費者として「この品揃えの悪さなんとかならんのかなあ」と思うことはしばしばありましたが、時代に先駆けて「安くて便利」を作り出したのは他ならぬダイエーであったことは間違いないと思います。そんなダイエーですから、経営スタイルとしても、プラス面・マイナス面の両方から話題に事欠きませんでした。ここからは、後付け評論家的な話になってしまいますが、今にして思えば、ダイエーは高度成長時代の申し子だったように思います。すなわち、「右肩上がりの経済を前提とした経営」の典型だったと思います。「過大な借入金」「売上主義」「土地神話」「事業の多角化」・・・想定していたとおりに成長をしていればこれらはうまく回りますが、バブル崩壊後これらの戦略が裏目に出たことに加え、消費者の嗜好が変わってきたことに対して迅速な対応策を打つことが出来なかったことが、創業時の発展(そして、その後の凋落)の大きな要因だったと思います。そんなわけで、ここ10年程度はマイナス面ばかりでしたが、かつては流通構造を大きく変えて小売業全体の地位を高め、小売業に属する企業が優秀な人材を集められるようになったという功績は非常に大きいと思います。また、バブル崩壊後から今まで、全国区のスーパーではイトーヨーカドーやイオンがダイエーの凋落を尻目に業績を伸ばしていきましたが、それもダイエーという「経営の教科書」があり、その良い部分と悪い部分の両面を実践を通じて学習できたからこそではないかと思います。また、ダイエーの件では、経営者としての「意思決定の難しさ」や「引き際の難しさ」も学ぶことが出来ます。株式投資でも企業経営でもそうですが、「後付けであれば」誰にでも講釈ができるんです。問題は「そのとき何が最適であるか?」をリアルタイムで考えることです。これは評論家タイプの人間には絶対に出来ません。例えば、「過大な借り入れをすべきでなかった」という類の評論は後付けであればいくらでも言えるんです。その当時の経営者の判断として「借り入れをしてでも積極的に店舗展開をすることが最適な戦略であった」と判断したからそうしたはずです。結果は、裏目に出ましたが・・・。そんなわけで、控えめに見ても、ダイエー(そして、中内功さん)については、良い面も悪い面も両方がいっぺんに勉強できる「最良の経営学の教科書の一つ」になるのではないかというのが私の評価であり、晩年に見られた「ダメ経営者」としての烙印を押すだけでは、あまりにも不当な評価であると私は思います。最後に。中内さんのご冥福をお祈りいたします。今日の言葉:「消費者が見えなくなった」(晩年の中内功さんの言葉)P.S.ダイエーの変遷はプロ野球からも見ることが出来ます。今や「ソフトバンクホークス」ですから、「時代は変わるんだなあ」と感じることが出来ます。
2005年09月21日
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前回の基礎的な話を踏まえてPBRによるバリュエーションをどのように考えているかについて述べたいと思います。まずは、「事業の清算」という側面から見たPBRです。バリュエーションの側面から論じるまでもなく、事業を即座に清算する場合の理論的なPBRは1です。以前にも述べましたが、PBRが1倍割れとなる理由は以下の3つのいずれかです。(1)保有資産の質に問題がある場合(2)経営陣の質に問題がある場合(3)市場参加者の質に問題がある場合今回はバリュエーションに関する話なので、(1)と(2)だけを議論の対象としています。現行の会計制度下での貸借対照表は、勘定科目の各数値が必ずしもその企業の財産状態を正確に表しているとは限らないので、実質的な価値を別途見積もらなければなりません。さらに、その清算価値は事業の清算にかかる諸々のコストも勘案した保守的な値とすべきです。そのようにして算出された清算価値は「今すぐに事業を清算すれば」株主が得られると期待できる金額ですから、株式時価総額がそれを下回っていれば、一応お買い得であるという結論を出すことは出来ます。しかし、現実にはごく一部の例外を除けばどんな企業も事業を継続することを前提としております。となると、事業が清算されることを期待してこのような企業の株式を買うことは現実味が薄いという側面もまた存在します。実際のところ、「事業の清算」という概念をバリュエーションに反映させる場合、「将来の収益性が殆どゼロの企業」に限定してよいのではないかと思います。このような収益性のない企業は、株主利益的には事業を清算すべきだからです。しかし、実際にはこれらの企業でさえ株主利益的な側面以外の理由で事業を継続しています。この「事業を清算しない」という現実的な問題がPBR1倍割れの銘柄を出している一つの要因であるともいえます。こちらは、経営陣の質の問題となります。上記をまとめると、「事業の清算」という前提でPBRによるバリュエーションをする場合、以下がポイントになります。*その企業が保有している資産を実質的な財産価値に換算して実質的なPBRを算出して、計算上の「お買い得度」をチェックする*基本的に、清算価値は将来の収益性がほとんど期待できない企業にのみ適用し、将来の収益性が期待できる企業であれば、その収益も勘案したバリュエーションが行うべきである*「事業の清算」を前提とした清算価値を計算したとしても、現実には「事業の継続」と「経営陣の質」という問題が立ちはだかっており、清算価値と株価のギャップが簡単に埋まらないリスクもあるPBRのもう一つの極端なケースを考えたいと思います。すなわち、事業を「永久に」継続するというケースです。定率成長モデルを前提とした場合、PBR=ROE÷(R-G)となっており、「理論上のPBRは、ROE(株主資本利益率)と割引率と利益成長率で決まる」となります。やや厳密性に欠ける部分もありますが、上記の3つの変数は以下のように特徴づけることが出来ます。*ROE(株主資本利益率)・・・経営陣の資本政策の質*割引率・・・その企業が行っている事業リスクの高さ*利益成長率・・・その企業が行っている事業の潜在的な拡大余地事業を永久に継続することを前提する場合、PBRには「資産の価値」という概念がなくなり、その代わりに「将来の収益性」と「その不確実性」を決定する3つの変数が重要だということになります。ウオーレン・バフェットが行う投資手法において、良質な経営陣が不可欠であると認識し、不確実性の低い分かりやすい事業にだけ手を出して、消費者独占の体制が整っている企業を好むという条件がここには全て含まれています。これらは将来の収益性をベースとしたバリュエーションですから、定量的な分析が当てはまりにくいという側面は必ず存在するので、どうしても個別企業ベースでの分析が不可欠になります。競争相手や取引先に対して優位性を持っているかどうかの分析も不可欠になります。「事業の清算」と「事業の永続」という、2つの極端なケースからバリュエーションの本質に迫ってみましたが、現実の企業は殆どはその中間にあると言えます。*グレアムは言います「経営陣の質や将来の収益予測は当てにならないものである。ましてや、収益のトレンドをベースとした投資は危険である。」*バフェットは言います「極めて稀ではあるが、優れた経営陣・優れた事業素質・潜在的な市場拡大余地を持った企業を適正以下の価格で買うことで、大きな成果を得ることができる。」上記の2つの主張は必ずしも対立しているわけではありませんが、「将来予測に大きく依存しないこと」と「可能な場合に限り将来性に賭けること」という点に投資スタンスの違いが現れています。それぞれの投資家がどちらを支持するかという点に関してですが、これは「追求する投資リターン」と「熟練の度合い」に大きく依存するものであると思います。ただ、将来の収益性を予測するのはごく一部の例外的なケースを除けば非常に難しいというのは事実です。私のポートフォリオの大部分が「資産系」に寄っているのも、どちらかと言えば、グレアムの主張のほうが私にとっては分かりやすいと感じているからです。しかも、今の日本の株式市場であれば、年率20%程度であれば、資産系に特化しても十分に達成できる数字だと思います。成長系を目指すのであればそれ以上は欲しいところです。少なくとも、下手クソが出来もしない成長株を分析するよりは、リスク/リターンの特性に合っています。成長株投資を志しているものの、投資成果が今ひとつパッとしないならば、「事業の清算」という立場に限りなく近いPBRを利用した投資の意思決定をおススメします。「事業の永続」という立場に限りなく近いPBRを利用した意思決定をするのはその後だと思います。あのDAIBOUCHOUさんでさえ、最初は「低PBR投資」から入っています。その後、「低PER投資」に移行し、最終的には「事業内容を見る投資」に移行しているのですから、その段階を踏まないでいきなり成長株投資というのは無謀の一言に尽きると思います。今日の言葉:「物事には何でも段階というものがある。基礎を踏まえないでいきなり応用に行こうとしても、それは絶対にうまくいかないだろう」
2005年09月18日
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ポピュラーな投資指標としてPER(株価収益率)とPBR(株価簿価倍率)がありますが、私はPERよりもPBRのほうが好きです。そのせいもあって、どうも私の得意な投資手法が「資産バリュー投資(企業が現在保有している純資産に注目した投資)」ということになっているようですので、その点について(皆様がなされている誤解や私自身の反省も含めて)改めて考えてみたいと思います。そのためには、バリュエーション(企業評価)において資産と収益(もしくは、成長)がどのような形で加味されるべきなのかを復習しておかなければならないと思います。以前から散々述べていますが、ある投資案件の価値とは、その投資案件の全存続期間から得られる収益を現在の価値に引き直したものです。すなわち、価値をV、収益をE(i)、割引率をR、存続期間をN、事業の清算時に得られる純資産をB(N)としたとき、V=E(1)÷(1+R)+E(2)÷(1+R)^2+・・・+[E(N)+B(N)]÷(1+R)^Nとなります。そして、厄介なことに、上記におけるパラメータを正確に推定することは困難であるということです。ただ、正確に推定することが困難であっても、自分なりにいくつかの仮定を置くことで価値を算定し、その仮定の妥当性を検証することが重要であるのは言うまでもありません。まず、議論の出発点となる、極端であるがバリュエーションの本質に迫ることができる2つのケースを考えてみたいと思います。(1)今すぐに事業を清算する場合(N=0の場合)将来の収益性を全く加味しない場合の価値ですから、V=B(0)となります。(2)企業の存続期間が永久で利益成長率を一定と仮定した場合以前に述べた定率成長モデルですから、V=E(1)÷(R-G)となります。ただし、Gは利益成長率です。上記の2つのバリュエーションをPBRで基準化する(両辺を現在の株主資本簿価B(0)で割る)と以下のようになります。(1)今すぐに事業を清算する場合PBR=1(2)企業の存続期間が永久で利益成長率を一定と仮定した場合PBR=ROE÷(R-G)(1)が示唆すること今すぐに事業を清算すると仮定した場合、PBR1倍割れはお買い得である。問題となるのは貸借対照表内に記載されている資産の質である。(2)が示唆すること企業が永久に事業を継続する場合、PBRで見たバリュエーションの妥当性はROE(経営陣の質や資本政策の質)と割引率(事業リスクの高さや不確実性)と利益成長率(潜在的な市場の伸び率や企業の拡大余地)で決まる。したがって、これらを把握するためにはビジネスモデルを良く見ることで割安か否かを判断する必要がある。現実には、今すぐに事業を清算する(N=0)こともなければ、企業の存続期間が永久である(N=∞)こともありませんので、この点についてはよろしく修正した上でバリュエーションを考えなければなりません。私がPBRをベースにバリュエーションの一元管理する場合、まず(1)を出発点として価値を算定し、次に事業の継続性を勘案して(2)にどれだけ近づけるかを考えます。バリュー投資では安全域を考えなければならないので、分析対象としている企業の将来性に疑問があったり、あるいは、自分自身がその企業の将来性を見抜く素質がなければ、バリュエーションは限りなく(1)に近いものにすべきだと思いますし、逆の場合は(2)に近づけても良いということになります。しかし、殆どの株式投資本において「PBRは事業を清算することを前提とした指標である」という類の記述しか見かけません。初心者向けということで分かりやすさを優先している背景があるかもしれませんが、PERよりもPBRのほうが好きな私にとっては、これを非常に不満に思っております。また、誰がいつそう決めたのかは分かりませんが、バリュー投資において「資産バリュー派」と「収益バリュー派(成長株派含む)」を分ける風潮が出てきたようです。かくいう私も便宜上、そうした使い方をしていたことがあり、この点に関しては素直に反省しているのですが、上記におけるバリュエーションの論理を考えると、資産と収益(そして、成長)は価値算定において切っても切り離せないものであることがよく分かります。「資産バリュー派」と自負している人の中には、「PBR0.5倍割れを目安としている」とか「ネット・ネット株(グレアム流の清算価値を満たす銘柄)を探すことに血眼になっている」という人もいますが、私の場合、「全ての企業に対して一律のPBRやネット・ネット株の基準を適用する」というような「杓子定規的な投資判断」はしていません。そうした清算価値を算出するのは分析上の出発点であり、そこがゴールではないということをここでは述べておきたいと思います。それでは、「現実に私のポートフォリオが資産寄りになっているのは何故か?」についてですが、その理由は次回に述べたいと思います。ただ、決して「資産価値をベースにスクリーニングをした結果そうなった」という理由でないとだけは述べておきます。今日の言葉:「価値を算出する場合、将来の不確実性をよく判断できないならば、現在だけを見るべきである。それこそが保守的な投資である。」
2005年09月14日
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前回が「資本主義教育」についての話だったので、さらにジャンルを広げて「英才教育」全般について私が思うことを書いてみたいと思います。世の中には様々なジャンルですごい人がいて、各ジャンルのトップクラスに君臨している人を見ると、その能力や専門性の高さはさることながら、今まで行ってきた地道な努力にも驚かされます。特に、スポーツや芸術の分野はすごいですね。「3歳のときから始めました」とか「親がやっていたので、自分もそれをやるのが普通だと思っていました」とか、一部の例外はありますが、そのようなコメントが普通に出てきますからね。まあ、競争の激しいジャンルでは、このような小さい頃からの英才教育を経て初めてトップクラスに君臨することが出来るんだと言えなくもないですが、凡人出身の私なんぞは「親はともかく、それを強要される子供の本心はどうなんでしょう?」と考えてしまいます。前回の日記で述べた「お受験なんぞ馬鹿馬鹿しい」という個人的見解も、「つぎ込んだ資金や時間や労力の割に合わない」というのはさることながら、根本的にはそうした背景があるからです。すなわち、「単なる親のエゴではないか!」と。子供というのは小さい頃には自由にやらせて、ある程度の人生経験を経てから「(親が引いたレールではなく)自分自身で人生を決めさせる」というのがよろしいのではないかと思ったりします。仮に、何らかの英才教育をさせるとします。競争が激しいジャンルでの英才教育は「モノにならない」というリスクが高いことがまず挙げられますので、もしその手の英才教育をやらせるなら、競争の少ないマイナーなジャンルのほうがリスクも小さいと思います。あと、「そのジャンルを極めたとして、それでメシを食っていけるか?」という、大人になった際には否応なく考えなければならない問題もあります。そういう意味では、「競争が少なく、かつ、メシも食っていける」という類のジャンルがいいかもしれません。さらに、先天的な要素は不要で、後天的な要素だけで成功できるジャンルのほうが理想だと思います。つまり、「3歳から始めないと間に合わない」というようなジャンルはリスクが高いと思いますし、それを子供に強要するのは可愛そうな気もします。それらを勘案した場合、「どのジャンルがいいか?」ということを私なりに考えたときに、これはもう「株式投資以上のものはない」という結論になります。(1)競争標準教育課程においてまともな資本主義教育がなされていないので、競争相手が少ない。(2)報酬結果がお金の増減にダイレクトに跳ね返ってくるので、成功すれば間違いなく食っていける(3)能力*「生まれつきのセンス」「親の能力」「家庭の生活水準」といった先天的な要素は殆ど関係なく、「自ら勉強しようという心がまえ」と「それを邪魔する生活習慣の見直し」という後天的な要素だけで十分に対応できる*特に高い専門性や技術を要するものではなく、最低限必要な知識をある程度身につけた後は「如何に自分をコントロールすることができるか?」にかかっている(4)機会「(ずば抜けた金持ちでなくても)ある程度の資金さえあれば誰にでも始められる」「書店・図書館・インターネットという誰でもアクセス可能な情報ソースを利用することで勉強する機会がある」という意味では、機会平等であるし、成功するかどうかに肩書きなども一切関係ない(5)時間専業投資家を目指すということでもなければ、違うジャンルと同時並行が出来るだけの時間の余裕はあるので、自分の趣味や本業が株式投資でなくもトップクラスになるのは可能である最後の「時間」のところにも書いたように、「やりたいことを自由にやらせるための手段」(時間的余裕・資金的余裕の獲得手段)として、株式投資を教えるのもいいかもしれません。それだけでも高い効用があると思います。もっとも、そのためには、親自身も勉強しなければならないですが。今日の言葉:「株式投資は、競争相手が少なく普通に勉強することでトップクラスになれる可能性がある数少ないジャンルである」P.S.またまた子供がいない私が空想で書いてしまいました。「将来は大成する子供になって欲しい」という親の願いはあるのでしょうけど、「やりたいことを自由にやらせる」ということでいいのではないでしょうか?「やりたいことを自由にやらせる」に関しては、生まれてきたばかりの時には親はみなそう考えているはずなのに、子供が大きくなるにつれて、親自身が子供の可能性に制約をかけているような気がします。
2005年09月11日
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今日は、まず私事を取り上げて、その後で本題に入りたいと思います。今、「往復の通勤電車」と「家に帰ってから余裕があるとき」は会計の勉強をしています。当面の目標として想定している知識レベルは「会計士に受かるくらいのレベル」を考えています。もっとも、私としましては、「会計の勉強」と「株式投資で収益を上げること」をリンクさせることが肝心だと考えていますので、勉強するに当たってもその視点だけを常に意識した上でやっていきたいと考えています。そういう意味では、多くの会計士の卵が目指すであろういわゆる「監査業務(監査法人への就職)」には興味がないということになります。まあ、監査業務という「実務経験」を踏まえた上で企業を見る眼が養えるという効用があるのは間違いないのでしょうけど、株式投資で勝つためにはそれ以外にもやらなければならないことは山ほどありますので。そんなわけで目標だけは大きく掲げてはいるのですが、とりあえず基礎固めをしなければ何も始まらないということで、今は簿記1級からやっています。(簿記2級相当の勉強は既にやっていますので。)脱線気味ですが、そろそろ本題に移りたいと思います。会計の勉強は投資家のみならず、学校教育の場でも積極的に取り入れるべきだと私は思います。会計のみならず、法律・経営についても何かしらで勉強する機会が今の日本には少なすぎると感じます。私は、高校が普通科でしたし、大学・大学院も理科系でしたので、そのような勉強は殆ど無縁でした。唯一やったものといえば、大学2年のときに選択科目として選択した「簿記」「経営学」だけです。内容は3級と2級の間くらいのものでした。一方で、商業高校(あるいは、商業科)では簿記が授業としてありますから、卒業時に簿記2級や簿記1級を試験として受けるというのは普通のことです。実際に勉強するかどうかは本人の問題もあるかとは思いますが、商業高校(あるいは、商業科)の人間のほうが資本主義に近い勉強をしていることになります。株式投資をやることになったのが学校教育を受けた後だったので致し方ない部分はありますが、それにしても今にしてみれば勿体無いと感じています。金持ち父さんがいうところの右側のクワドラント、すなわち、資本主義の支配者になりたいということであれば、高校の選択に関しては商業高校(あるいは、商業科)のほうが良いことになると私は思います。それにしても、「資本主義教育を義務化する」という話は全くといっていいほど出てきませんね。「天然資源が少ない」「少子高齢化時代が到来する」「財政負担が重い」などの事情を勘案すると、日本は投資立国にならなければならないと思うのですが、やはり、お上としては「雇われ人」という「コントロールしやすい人たち」を量産したいのでしょう。ついでに「お受験」の話もするならば、親バカ(バカ親と言ったほうがいいかもしれない)が、子供に幼稚園(もしくは、小学校・中学校)から私立の進学校や付属学校に行かせて、いい大学に行かせて、いい会社に行かせて、そこで安定した給料を得ることが勝ち組だと考えているのが現状です。資本主義の世界で生きている以上、「雇われ人」が勝ち組だとは思えないですし、もうそんな安定が通用する時代でもないですから、「差別化」を図るのであれば、高校については下手な進学校よりも商業高校(商業科)に行かせたほうがいいんじゃないかと思います。「お受験路線」を突き進んだところで、つぎ込んだ金の割にモノになるかどうかも分からないし、仮に当初目論んでいた学歴を獲得したとしても、決められたレールしか歩けない「弱ちゃんな子供」になる可能性も考えると、そのほうがいいと思います。今日の言葉:「資本主義の世界で生きていける逞しい子供に育てるなら、商業学校へ」P.S.なんだか訳の分からない日記になってしまいました。子供がまだいないのにこんな日記を書くのもなんですが、まあ、私はお受験なんてバカらしいと思っているということです。ちなみに、私は「お受験」はしてませんよ。かといって、商業学校の回し者でもありませんが。うーん。「お受験ファミリー」からクレームが続出しそうです。一応、ここは「投資日記」ですから、それだけはご勘弁ください。(というより、そういうクレームは無条件で削除しますので。)
2005年09月07日
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私は去年の9月1日にこの日記を始めたので、1周年となります。時間の経過は早いなあというのが正直な感想です。これまでの(失敗や成功も含めての)投資の経験、および、投資に関連する本やサイトを見るにつれて「疑うことと信じることの大切さ」を感じるようになってきています。「疑うこと」と「信じること」は、正反対の概念のように映るかもしれませんが、ここで言いたいのは以下のことです。(この概念は、福沢諭吉著「学問のススメ」に基づいたものです。)*疑うこと「公表されている情報や公表されていない噂を何も考えずに鵜呑みにするのは危険である。どんな情報でも一度は疑ってみて自分で裏を取ってよく確認した上で行動することが大切である。」*信じること「かといって疑っているだけでは話にならない。全てを否定的に捕らえすぎて自らの可能性に制限を加えてしまい、最初の一歩すら踏み出せないからである。」このようなスタンスは投資の世界に限らず普通に生きていく上でも必要なものだとは思いますが、特に投資の世界ではそれがリターン(もしくは、資産額)という目に見える形で如実に現れますから、ごまかしが効かない世界だと思います。時事ネタや身近な事例などを挙げたいと思います。1.「疑うこと」に関する素養がない人*利殖商法長期金利が1.5%という今のご時勢、「確定利回り10%」という広告に踊らされて、「利回り10%を確保できるための方法は何か?」という裏を取らず、単なる「欲ボケ」でお金を預けてしまう人が後を絶ちません。有名人も引っ掛かることから、ワイドショーでも時折話題になります。*銘柄推奨雑誌・新聞・インターネットなどメディアで日常茶飯のように取り沙汰されている「この銘柄が買いだ」という類に情報に飛びついて衝動的に買ってしまうというのはありがちな話です。*投資理論単なる仮説に過ぎないものをあたかも実証的裏づけがあるかのように理論として紹介していることがままあります。社会科学には理論の背景となる前提条件が必ず存在します。また、自分にとって都合の良いデータだけを集めて説明していることもあります。*公開情報と噂企業自らが公表するファンダメンタル情報(財務データや事業展開に関する見通し)についても、本来であれば裏を取るべき対象だと思います。「悪質な会計操作をしていないか」「見通しが楽観的過ぎでないか」を確認した上で、企業を見る必要があります。ましてや、YAHOO掲示板などにある噂や希望的観測の域を出ないような書き込みを鵜呑みにすることは厳に慎むべきだと思います。2.「信じること」に関する素養がない人*宝くじサラリーマンの生涯賃金(1億円から3億円くらい)以上の金額を(定年後ではなく)現役時代に手にするためには、「宝くじで当たるしかない」と考えて、それ以外の可能性はないと自分で決め付けている人が私の周りにも驚くほど存在します。少しでも自分の可能性を信じてそれに向けて行動を起こせば、他力本願な人生にならずに済むのにと思うのは私だけでしょうか?*複利の力長期にわたる資産形成を成功させるために必要なのは「複利の力」だと思います。これは「継続の力」だとも思います。「30歳で貯蓄が一円もない人が来年から100万円ずつ貯めて年率20%で運用すると47歳で1億円になる」と話しても、「そんなことは出来るはずがない」と、大抵は頭ごなしに否定されてしまいます。複利の力を実践することの難しさは、能力の問題ではなく、むしろ、生活習慣の問題だと思います。*常識的な視点株式投資で成功するための秘訣が、実は常識的な視点にあることに気づいていない人が多いことも分かります。多くの人が「成功するためには何か特別なことをしなければならない」と考えてしまうのかもしれません。しかし、本当は「株式投資で成功するための可能性は本来誰にでもある。ただし、それをうまく活かせるかどうかは本人次第である。」というのが正しいと思います。あえて難点を挙げるとすれば、「株式投資で成功するための論理とは対極的な非常識がまかり通りすぎていて、常識的視点とは何かを知る機会が少ない」という点だと思います。今日の言葉:「もし、投資で思っていたほどに成果が出ていなかったり、投資の必要性を感じながらも最初の一歩を踏み出せていないならば、それは疑うことか信じることのどちらかの素養が欠けているのかもしれないと自問自答すべきである。お金を失い続けているならばなおさらである。」
2005年09月04日
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今月の運用報告とコメントです。1.運用パフォーマンス*昨年末を10000とした形式で基準価格を表示しています。基準価格:190297月末比 約 +18.0%昨年末比 約 +90.3%2.ポートフォリオ*現物と信用を分けて記載することにしました。*ウエイト順です。重要な影響を与える銘柄のみ記載しています。*短期売買目的のトレード銘柄は記載していません。*仕込み中の秘密銘柄は記載していません。*ウエイトの詳細は、フリーページをご覧下さい。*現物ポジション(1)8191 光製作所(2)9651 日本プロセス(3)9627 アインファーマシーズ*信用ポジション(1)7548 サンクスジャパン(2)9651 日本プロセス(3)9702 アイエスビー(4)7902 ソノコム3.売買アクション*短期売買目的のトレード銘柄は記載していません。*仕込み中の秘密銘柄は記載していません。*購入7548 サンクスジャパン(追加購入)*売却7839 SHOEI9702 アイエスビー(部分売却)4.コメント(1)8月の運用パフォーマンスは、前月末比約+18.0%、年初比約+90.3%でした。今月は大型株が堅調で、それに比べて新興市場は冴えない展開が続きましたが、私のポートフォリオは特段の影響を受けず、月初の軟調な相場展開のときも堅調に推移しました。(2)今月は、膨張気味だったポジションを圧縮するために、利益確定の売りを一部の銘柄で実施しました。とはいえ、圧縮するだけではなく相対的魅力度のある銘柄の買い付けも実施しました。新規銘柄の購入はなく、既存銘柄の売買のみにとどまりました。*7839 SHOEIポジション圧縮の為に売却しました。*9702 アイエスビー中間決算の翌日に急騰したところで一部を利食いしました。半分はまだ残しており、第3四半期の成り行きや株価状況を確認し、買い増しや利食いを検討します。*7548 サンクスジャパン相対的魅力度の判断から買い増ししました。*9627 アインファーマシーズポジション圧縮で確保した資金で全て現引き。長期保有体制を整えました。(3)保有銘柄でパフォーマンスに重大な影響を与えるイベントは以下のとおりです。*9651 日本プロセス株主総会が実施され、配当が届きました。株主総会に行きたかったのですが、仕事の都合上で行くことができませんでした。不明な点をIR宛にメールおよび電話で確認することになりそうです。なお、今回は配当を再投資しなかったため、パフォーマンスに含めておりません。*9702 アイエスビー中間決算の発表がありました。悪くはないのですが、来期の見通しが保守的であったために、株価上昇もいまひとつだったと思います。急騰したところで半分手放しましたが、引き続き今後の成り行きに注目です。*7902 ソノコム第1四半期の決算発表。内容は悪くないため、継続保有です。*8191 光製作所第1四半期の決算発表。内容は悪くないため、継続保有です。8月は、自分でも出来すぎだと思うくらいポートフォリオが堅調に推移してくれました。ここで有頂天にならないためにも、ポジション圧縮を少しだけ実施しました。その結果、レバレッジ度は190%から170%に低下し、少しだけ余裕が出来ました。保有銘柄数も1銘柄減って6銘柄となり、ガッチリと監視することが可能な数字になっています。9月には四季報(会社情報)が出ますので、またお宝を発見できるのでしょうか?今年も3分の2が過ぎて残り4ヶ月ですが、引き続き頑張っていきたいと思います。なお、勝手ながら、来月からブログの更新を現状の週3日から週2日(水・日に更新)に減らします。自分自身が会計の勉強を本格的にしたいと思っていることが最大の理由です。現状に甘んじることなく、企業を見る眼をさらに養いたいと思います。今日の言葉:「無理は禁物だが、『ここでもう十分だ』と思うようになれば成長は止まる。」
2005年08月31日
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一般的なギャンブリングの必勝法は、「サイコロの歪みを探す」か、「プレーヤーの確率判断の歪みを探す」か、のいずれかであると前回述べました。正確には、(1)サイコロの歪みがなくても、プレーヤーの確率判断の歪みがある(2)サイコロの歪みがあり、かつ、プレーヤーの確率判断にも歪みがあるのいずれかがなければ、ギャンブリングにおいて平均以上に勝つことは偶然の賜物だということになります。たとえサイコロに歪みがあったとしても、プレーヤーがそれを熟知しているならば、必勝法となり得ませんのでこれは当然です。前回紹介したロト6の場合は(1)であり、「当せん確率は同じでも期待できる受取金額に差が出る」というタイプのものでした。ロト6の確率計算が複雑すぎると感じるならば、文字通りサイコロの場合を考えてみてください。サイコロに歪みがなければ、1から6のどの目に賭けても当たる確率は等しく1/6です。しかし、プレーヤーの確率判断に歪みがあれば、1口100円に対して受け取れる金額が出目によって違うということです。控除率0%であれば理論上は600円でなければならないはずなのに実際にはそうはなっていない場合、そこにチャンスがあります。上記のサイコロの事例は単純すぎるとしても、ロト6のように確率が明確に与えられている場合でさえ、プレーヤーは確率判断に関して錯覚を起こしてしまいます。明確な確率が与えられていない株式投資であれば状況はもっと複雑になり、合理的な意思決定が出来ないのは目に見えています。「人気株には手を出さず、不人気株を買え」というのは株式投資で勝つための本質を簡単に表しています。これを実行することの難しさを一つ挙げるとするならば、「株式投資の場合、確率判断に関する理論的拠り所があまりにも貧弱ゆえに、つい人気株に手を出す人が多い」ということになるかと思います。バリュー投資も少なからずこのような側面を利用しています。お買い得銘柄をごく少数の人しか気づいていないうちに仕込むということです。インターネット上において有効な情報(?)が得られることもあるせいか、今でこそ、「○○さんが買ってるから私も買おう」というやり方が出てきていますが、買おうとしている銘柄に大きな安全域でもないかぎり、多くの人が乗っている銘柄を買うというのは、「当選確率もオッズも低い馬券を買うようなもの」です。新聞や雑誌に掲載されている人気銘柄・推奨銘柄を大した調査もせずに安易に買うというのは相変わらず存在し、そのような行為は、(当せん確率はともかく)自らオッズを低くしているようなものであると思います。人気株を買うというのは、「プレーヤーの確率判断の歪み」に関して不利な方向で賭けをしていると言えます。このような人気株に「サイコロの歪み」が存在し、もしそれが不利な方向に働くものであれば、財産をなくすことは確実です。逆に言うと、不人気株を買うことが出来ただけでも勝つ可能性は高くなっていると言えます。不人気株を買うというのは、「サイコロの歪み」が不利な方向に働いても、それをカバーする役割を果たしてくれます。もともと割安銘柄だから、悪い材料は当然で、良い材料が出ればポジティブサプライズと判断されます。もちろん、「不人気株はいつまでたっても不人気のままである」という可能性もありますが、それと同時に「人気株がいつまでも人気を保ち続けられるとは限らない」というのもまた事実です。さらに、株式投資の場合、プレーヤーの確率判断のみならず、サイコロそのものも歪んでいる可能性があります。両方が自分にとって有利な方向に歪んでいるならば、これは勝ちが約束されているようなものです。この「サイコロの歪み」を調査するのは、他ならぬ自分自身であり、これは事業内容や財務諸表の精査によってなし得るものだと思います。今日の言葉:「株式投資では、基本的には『赤信号、みんなで渡ればみんな死ぬ。』と考えたほうが無難のようである。」P.S.何が人気で何が不人気かを明確に定義しませんでした。明確に定義することが出来ないのでそうしたのですが、株式市場をある程度見てきた人にとってはそれを感覚で捕らえることができるのではないでしょうか?あと、最近、「バリュー投資ブーム」だとか「バリュー投資バブル」だとか騒ぐ人もいるようですが、巷の市場参加者を見渡している限りでは、必ずしもそうはなっていないことは一目瞭然だと私は考えています。
2005年08月28日
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株式投資ではありませんが、確率論に関する話をロト6を題材にしてやってみようと思います。「ロト6」とは、1から43までの数字の中から好きな数字を6つだけ選択して、それが抽せん数字(本数字とボーナス数字)といくつ一致しているかによって、1等から5等(もしくは、はずれ)が決まります。詳しいルールはこちら。(当サイトは「ロト6向上委員会」の類ではなく、あくまでもサイトの紹介だけであり、ロト6自体を推奨しているではありません。)宝くじドリームステーションちなみに、理論的な当せん確率は以下のとおりで、当せん時の期待金額は1口100円に対して、それぞれの当せん確率に対して、100÷当せん確率×(1-控除率)を計算すれば算出されます。ここで「控除率」とは胴元の儲けであり、ロト6の場合、0.55(55%が胴元の儲けになるという意味)です。*1等:申込数字が本数字6個と全て一致(当せん確率:1/6096454)*2等:申込数字が本数字5個と一致し、更にボーナス数字1個と一致(当せん確率:6/6096454)*3等:申込数字が本数字5個と一致(当せん確率:216/6096454)*4等:申込数字が本数字4個と一致(当せん確率:9990/6096454)*5等:申込数字が本数字3個と一致(当せん確率:155400/6096454)ロト6関連のサイトに行けば、理論上の当せん確率や期待金額について解説をしているサイトもあり、「確率ヲタ」もそこそこ興味を持つことができるようになっています。もっとも、こうした理論上の当選確率や期待金額はあくまでも、「ランダムな状態であればそう期待できる数字」に過ぎず、抽せん数字の選択のされ方かプレーヤー(ロト6で一攫千金を目指す御仁)の数字の選び方のいずれかがランダムでなければ、実際の当せん確率や受取金額は前述の数値計算上のそれとは大きく異なるはずです。ここでは分かりやすく、抽せん数字の選択のされ方がランダムでない状況を「サイコロの歪み」と称し、プレーヤーの数字の選び方がランダムでない状況を「プレーヤーの確率判断の歪み」と称することにします。(雑誌やインターネットなど)巷に出ているロト6必勝法はどちらかと言うと「サイコロの歪み」をベースとしたものであることが多いようです。すなわち、「過去における出目の研究を行うことで将来の出目を予測できる」というものです。しかし、抽せん数字の決定をコンピュータで行っていてそれを何者かが操作することがないということであれば、「サイコロの歪み」の必勝法は単なる「オカルト的な発想」に過ぎません。外部の人間にはサイコロが歪んでいるかどうかを客観的に検証できる材料がないからです。本来の純粋な確率論だけであれば、「どの数字を選んでも確率と期待金額は一緒。以上。」ということで、話はここで終わりです。しかし、そのような「確率論とは無関係なオカルト的な話を信じる者が少なからず存在する」という仮定を置くならば(これは、かなり頑健だと思います)、「プレーヤーの確率判断の歪み」を利用した必勝法が存在することになります。例えば、購読部数も多い人気雑誌(週刊誌など)でロト6の将来の出目を予想している特集があったとします。ここでは、その雑誌の影響力が比較的大きいと仮定します。その雑誌に「予想当せん数字」なるものが発表されており、その数字が3・8・12・24・26・39であったとします。週刊誌が主張する予想とは裏腹に、実際の出目は完全にランダムだとすれば、あなたはどうすれば良いでしょうか?答えは簡単で、「上記にある数字だけは外して6つの数字を選ぶこと」です。先ほど、確率論とは無関係なオカルト的な話を信じる人がいて、かつ、その雑誌の影響力は比較的大きいと述べました。そうすると、上記の数字を絡めて当せんを狙ってくる人が多くなるので、仮にその数字で当せんしたとしても、受け取り金額が理論上の期待金額よりも小さくなる可能性が高いからです。「上記の数字を絡めて数字を選んで当せんする確率」も「上記の数字を外して6つの数字を選んで当せんする確率」も同じであれば、絶対に上記の数字だけは外すべきです。もっとも、ロト6の場合、そもそもの控除率が55%と高すぎることから、上記に述べた「必勝法」も所詮、「少しだけ期待リターンが高くなるだけの気晴らし」の域を出ません。「遊び程度でやるならばどの数字を選んでもいいじゃないか」ということになります。しかし、これが「株式投資」の話になると、ややリアルな話になると思います。次回は、それについて述べたいと思います。今日の言葉:「サイコロに歪みがなくても、プレーヤーの確率判断に歪みがあれば、それを利用した必勝法が存在する。」
2005年08月27日
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今回は、「アーリー・リタイヤと老害」について思うことをつらつらと述べたいと思います。純粋な投資理論的な話とは少し離れますが、投資が経済的自由・時間的自由を獲得するための手段であると捕らえれば、投資日記として体をなす内容になるのではないかと勝手に考えております。厳密な意味はともかくとして、私は今回の日記において「アーリー・リタイヤ」と「老害」を対極的なフレーズとして捉えることにしています。「老害」という言葉自体はかなり昔から使われていますが、私的には今日の日本において「老害」という言葉を、多くの政治家や大企業のサラリーマン経営者などに当てはめるまさにピッタリなのではないかと思います。例えば、アメリカでは大統領がその任期が終えると一般市民として普通の生活を送っていることは珍しくないですが、日本では総理大臣が任期を終えるとまた政治家にしがみついていることが多いです。大企業のサラリーマン経営者にいたっては、「(平)取締役→常務→専務→副社長→社長→会長→相談役」などという経歴を歩む人をよく見かけます。相談役などは80代や90代のジジイということも普通にあって、「お前はいつまで会社にしがみついてるんだ!」と突っ込みたくなります。権力欲や名誉欲の賜物といえばそれまでかもしれませんが、それにしてもこういうのを「老害」と言わずして何と言うといった感じです。誤解のなきように付け加えておくと、その人が有能であり国や企業にとって欠かせない存在としてそこに君臨しているということであれば全然問題ないのですが、必ずしもそうではないというところに問題があると考えるし、それが世代間のいがみ合いが激しい原因ではないかとすら考えています。ライブドアのホリエモン氏が世間に向かって「老害」という言葉を使うようなことからもそれが伺えます。確かに、やっていることが滅茶苦茶だと思う部分はありますし、株式投資家としてはいただけないと思う部分も多々あるのですが、アーリー・リタイヤを目指す同世代を代表してくれた発言であると思う部分はあります。そのホリエモン氏自身も「40歳までには引退したい」と確か言ってます。「ビジネスの世界から完全に手を引く」という意味で言っているのか、「次の世代に引き継ぎたい」という意味で言っているのか、いろいろな可能性はありますが。私も株式投資でアーリー・リタイヤを目指している一人です。これは、サラリーマンを早く辞めたいという意味であり、株式投資は自分だけでも続けられるのでそれをも引退する気は毛頭ないのですが、それでも投資で十分すぎるくらいの成果を上げられたならば、「投資の成果を社会に還元したい」とか「投資の素晴らしさを世に伝える」ということをやっていきたいと考えています。今の段階ではスケールが違いすぎて恥ずかしいのですが、ゆくゆくはジョージ・ソロスやウオーレン・バフェットのように投資の成果を社会に還元するという次元の話を目指したいと考えています。もっとも、今の段階では自己資金の増加が最大の課題ではありますが。どのような形であれ、自分自身が「老害」と呼ぶにふさわしい老人でなく、次の世代に何かつなげられるものを持っている老人になりたいということです。そのためのアーリー・リタイヤかと。そして、アーリー・リタイヤをするもう一つの目的は、自分自身が経済的自由・時間的自由を楽しむためであり、そういう意味でも定年(死語ですか?)までサラリーマンで勤めようなんて、人生80年というにはあまりにも時間が勿体なすぎるかと。どこまで「アーリー・リタイヤ」に近づけて、どこまで「老害」から遠い存在になれるかは分かりませんが、私が株式投資で投資リターンを稼ぎ出したいと考えている理由がそこにあるということです。今日の言葉:「事業の進歩発達に最も害するものは、青年の過失ではなく、老人の跋扈である」伊庭貞剛(いば・ていごう:住友二代総理事)P.S.とりあえず、竹田和平さんのように「年金を受け取らない」というくらいのハードルはクリアしたいと思います。
2005年08月24日
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前回の「ケーススタディー」で挙げた事例は決して特殊な事例ではなく、年次よりも短い四半期という区切りで決算を実施することによって損益計算書の数字が実態とはかけ離れたものになる可能性を示しています。前々回は会計数値が歪む要因について大雑把に分類をしましたが、今回はありがちなケースを羅列していきたいと思います。************************(1)減損会計の適用時期*減損会計に基づいた有形固定資産の評価損を決算期(第4四半期)ではなく第1四半期に認識したために、第1四半期の純利益が大幅に減少した。(2)季節要因*春から夏は売上があまり伸びず、秋から冬にかけて売上を伸ばすという、季節性のある商品を取り扱っている企業について、第1四半期は売上が少なく、そのために大幅赤字という決算になった。*期初に設備投資や広告宣伝費などの先行投資を行っている企業について、第1四半期は業務拡大による先行投資負担が増大したために、第1四半期は前期比で大幅減益となった。(3)収益の持ち越し*商品の到着を以って収益と認識している輸出企業について、その商品の到着が予定よりも遅れ今回の四半期を超えたために、収益の認識が次の四半期に持ち越された。*予定していた大口のシステムの納期がずれ込んだために、収益の認識が次の四半期に持ち越された。(4)為替ヘッジ関連*商品の原材料を海外から輸入しているために、為替予約によって為替変動リスクをヘッジしている輸入企業について、第1四半期は円高になり為替予約に損失が出たが、商品購入代金は安くなるので全体的にはヘッジが効いている。しかし、為替予約での損失は時価評価であり商品の購入・販売に先行して計上する必要があり、そのため為替ヘッジ効果の認識にタイムラグが生じた。(5)会計基準の変更*会計基準の変更により、収益を以前より前倒しで計上することを可能としたために、今回の第1四半期は前回の第1四半期に比べて大幅に増収増益となった。************************上記の例のように、四半期決算の導入は必ずしもいいことばかりではなく、市場参加者の誤認を誘いやすい要因が以前よりも多くなると可能性が高くなるということをここでは指摘したいと思います。通期の決算内容からその企業の実態が分からない投資家が、四半期決算に目を向けると確実に誤認します。また、事業特性をよく把握しておかなければ会計の表面上の数字に騙されてしまいます。銘柄によっては、その誤認があまりにも激しいために、そのようなノイズを利用して投機的利益を上げるということも十分に考えられます。特に、注目度が低い小型株についてはこの傾向が顕著だと思います。大型株は多くの人が注目しており、そうした誤認が少ないと思いますので効果は期待できません。しかし、今一度認識しておかなければならないのは、そのような形で投機的利益を稼ごうとするにしても、市場が短期間でどのような反応を示すかを確実に予測するのは困難であり、そこにはイス取りゲーム的な側面があるということを忘れてはなりません。「利用するにしてもほどほど」にというのがいいと思います。今日の言葉:「ノイズはうまく利用すれば投資リターンを稼ぐための友達になるが、問題はそれを過度に当てにしすぎて投資リターンを妨げる敵としてしまうことに自らが気づかないことである。」P.S.追加的リターンの獲得のために四半期決算から生じるノイズを研究する価値はあると思いますが、「四半期決算の誤認ありき」で投資を考えるのはどうかと思います。自分が注目している銘柄について、たまたまこのような誤認があった場合に限り利用するという程度でいいのではないでしょうか?あとは、長期保有を志すのであれば、そんなものは一切気にしないとか。書いていて「ちょっと有害かもしれない」と思った次第です。とはいえ、投資リターンの追求は大事ですから、「こんなのもあるよ」という程度の位置づけでお願いします。
2005年08月21日
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四半期決算が定着することで事業の進捗度をモニタリングする機会が増える一方で、年次より短い四半期という区切りによって会計上の数字が歪められて実態を表さないという可能性があります。その一方で、市場参加者がそうした四半期決算の数字だけを表面的に解釈して誤った形で反応するということは不思議ではありません。特に3月決算企業が多いので、第一四半期の決算を発表する時期が集中しており、人間の情報処理能力の限界を考えるとそうなる可能性があります。7月から8月にかけて行われた第一四半期の決算においては、そうした誤認が見られるケースがいくつかありました。他のサイトの引用も含めて、いくつか紹介したいと思います。************************1.タナベ経営(9644) タナベ経営は第1四半期の決算を以下のように発表しました。(カッコ内は、前四半期)売上高:1147(1087)営業利益:90(73)経常利益:104(90)当期利益:3(42)タナベ経営の第1四半期の当期利益は大幅減でした。これは「湘南研修センター」という建物に対して減損会計を適用したことによる減損損失であり、流動資産が豊富で人材という無形資産が収益力の要であるタナベ経営にとって、特段の悪材料とは言えません。しかし、市場は「減益」という表面上の数字を嫌気して、一時的に大幅に株価が下落しました。その後は、一時的要因であると市場が冷静になったこともあり株価は持ち直し、数日後には年初来高値を更新しました。こちらは「Value Investment Since 2004」のvis2004さんの日記(8月4日)を引用しました。2.秀英予備校(4678)秀英予備校は第1四半期の決算を以下のように発表しました。(カッコ内は、前四半期)売上高:2467(2202)営業利益:▲356(▲122)経常利益:▲344(▲108)当期利益:▲217(▲79)表面上の数字だけを見ると「前期比で赤字幅拡大」です。これは、夏季講習から開校する新校舎のための投資によるものであり、夏期講習の募集自体は前期比で順調であり問題はないというものです。このように、第1四半期に先行投資を行うために費用配分が偏って四半期決算の数字が悪くなるという企業は多々あります。秀英予備校の場合、収益の柱の一つである「夏季講習」募集のための費用が第1四半期に計上されるという形で「季節性」があるので、この点を見誤ると「赤字幅拡大」という悪材料に見えてしまうかもしれません。そんなわけで、「秀英予備校の季節要因」とも言うべきもので株価が過剰反応して下落したので、その下げ局面で買うことができたならば、短期間でリターンを稼げたかもしれません。こちらの内容は「賢明なる投資家への道」のKENさんのコラム(8月3日)を引用しました。3.光製作所(8191)こちらは、タナベ経営の「減損損失」や秀英予備校の「季節要因」に比べてやや分かりにくいかもしれません。これはホルダーである私が詳細をフォローしてみたいと思います。光製作所は第1四半期の決算を以下のように発表しました。(カッコ内は、前四半期)売上高:2510(2610)営業利益:527(519)経常利益:924(604)当期利益:549(384)売上は微減、営業利益は横ばい、経常利益・当期利益は大幅増となっています。経常利益以下が大幅増となったのは、「営業外収益」の「その他」という項目によるものです。この数字をどう捉えるか?結論から言うと、「特段良くもなく悪くもなく、事前の予想の範囲内の決算内容」だという感想です。今回の四半期ベースの損益計算書だけを見ていると営業外収益の実態がよく分からないのですが、これは「通貨オプションの評価益」です。キャッシュフロー計算書の「営業キャッシュフロー」にそれに近い数字が掲載されていますので、そこから確認が出来ます。この「通貨オプション評価益」が、財テク目的のものであれば素直に増益要因と捕らえることが出来ます。(もっとも、そんな投機的な財テクしている企業に投資したいとは思わないのですが。)しかし、この「通貨オプション評価益」は「ヘッジ目的」であり、特段のプラス要因とはいえず、通期ベースの決算で見れば必ずどこかのタイミングで相殺されることが予想されます。具体的には以下のような話です。有価証券報告書にもありますが、光製作所は家具販売を事業としており、その家具または家具の材料を海外から輸入しています。当然ながら為替変動リスクが存在し、輸入企業の場合、為替変動リスクがノーヘッジであれば円安はマイナス要因です。光製作所はこの為替変動リスクを通貨オプションでヘッジをしており、為替変動に関わらず商品の購入代金を円ベースで固定させています。すなわち、通貨オプションは円安のときに含み益が出るようにポジションを取っているのです。ちなみに、第1四半期は為替が円安方向に触れました。そうすると、通貨オプションの評価益が発生します。それが第1四半期の営業外収益に計上されたのです。通貨オプションに評価益が発生したので第1四半期の数字が良くなったように見えますが、それとは逆に、円安によって商品の購入代金が高くなるはずなので、そこで相殺されます。商品の購入代金が高くなる影響が損益計算書ではどのタイミングで出てくるかというと、これは会計の原則から「(家具を仕入れた時点ではなく)家具を販売した時点」です。家具を販売すると棚卸資産が消えて、その代わりに売上原価が計上されます。時価会計の対象となっているデリバティブ(この場合、通貨オプション)の評価益は第一四半期に計上され、売上原価(この場合、割高になった商品の購入代金)はそれ以降に計上されるということで、収益と費用の認識にタイムラグが生じたということです。したがって、通期ベースでみれば「為替リスクをヘッジした」というだけの「中立」な材料にも関わらず、四半期で決算期を区切ったために大幅増益のように見えただけに過ぎません。しかし、こうした要因に気づかなければ「いい決算だと誤認して、買いにくる市場参加者もいるのかな?」とも思いました。決算発表が14時くらいで、最初の30分くらいは反応がなかっただけに、そこで素早く買いを入れていれば810円くらいで買うことができ、引けにかけて株価が839円まで上昇、そして3~4日くらいは株価の上昇が続いていただけに、投機的利益を手に入れられたことかと思います。そんなわけで、私自身もそうした市場参加者の誤認を利用した投機的行為(先回り買い)で利益を上げられなくはなかったのですが、既に大きなポジションをとっていることと、そんな材料がなくても今の株価水準は長期保有として魅力的であること、を勘案してそれはやりませんでした。今回の増益を当て込んで買ったという人に対しては、「残念でした」と申し上げておきます。************************似たような市場参加者の誤認は、探してみれば山のように出てくるかもしれません。次回は、可能性がありそうな材料をさらに列挙してみたいと思います。今日の言葉:「四半期という短い期間で区切られた決算内容の経済的実質を良く知るためには、事業内容を知る必要がある。」P.S.長期保有と決めてそんなものは気を留めないということもありかも知れませんが、ここまで誤認が激しいと、利用可能なノイズとして研究する価値があるかもしれません。
2005年08月20日
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おかげさまで、アクセス数が累計で100万を超えました。これもひとえにご訪問いただいた皆様のおかげでございます。まっとうなバリュー系のネタをとも思ったのですが、とりあえずその趣旨は次の機会として、今回は四半期決算を題材とした「投機ネタ」を書いてみたいと思います。四半期決算が日本にも定着してきました。これは、「情報開示の透明性」「グローバル化によるビジネスサイクルの短縮化」「お上からの要請」など、さまざまな事情があるでしょうけど、投資家が上場企業の実態を把握することが出来る機会を増やそうという試みであり、それなりに意義のある話ではないかと思います。四半期決算は年次決算と異なり、正式な会計監査を受けていないという問題点はありますが、そこは仮にも上場企業です。直近の年次決算との連続性は保たれているという信頼はあるでしょう。そんなわけで、四半期決算は株式投資を事業への投資とみなしている投資家にとっては直近の企業実態を速やかに把握する際の重要なツールとなり得るわけですが、その一方で、四半期決算に振り回される投資家が増える可能性が高いこともまた事実かと思います。すなわち、多くの近視眼的な投資家にとって、この四半期決算が「ノイズ」の役割を果たしかねないということですから、四半期決算の数値を間違った方向に解釈すると、そこでもまた大切な資金を失うことになりかねません。本来、長期投資家であれば、こうした四半期決算の数値に一喜一憂すべきではないのかもしれません。もし投機ポジションで勝負するのであれば、間違った方向にベットした人が作り出した過剰反応に対する逆張りや、過小反応気味で市場参加者の誤認が期待できそうな方向へポジションを張るというのがいいかもしれません。今回は、市場参加者が誤認しやすいと思われる「四半期決算の数字が歪む要因」をいくつか挙げたいと思います。********************(1)減損損失のうち、将来の収益力に影響を及ぼさないものこれは、何も四半期決算に限らないのですが、最近の会計のトレンドなので記載しておきます。固定資産などの減損対象資産のうち、収益力や市場価格を鑑みて評価を切り下げるのが妥当であると判断したものについて、それを強制的に実施するというものです。減損会計のうち、将来の収益性の低下を示唆しているものであればともかく、そうでなければ当期利益の低下は一時的要因に過ぎません。最近のいくつかの企業の四半期決算を見ていると、この減損損失に過剰反応することが見られました。その一時的な株価下落に対して逆張りで望めば短期的に相応のリターンが得られたのではないでしょうか。(2)季節要因に伴う収益と費用に関する期間配分の歪み四半期決算が年次決算に比べて「利益の経済的実質の把握」を困難にしている要因の一つがこの「季節要因」ではないでしょうか?季節要因が特にない企業、すなわち、「四半期売上×4=当期売上」というきれいな関係がある企業であればともかく、明確な季節要因がある企業の場合、それを事前に確かめておかなければなりません。季節要因を考慮せずに当期純利益だけを見ていると、表面上の数字に惑わされて間違った意思決定をすることになりかねません。(3)季節要因以外の収益と費用に関する期間配分の歪み上記に述べた季節要因であれば、過去の履歴から何とか検証できる術があるのでまだ対応のしようがあります。例えば、アイスクリームを売っている会社があったとして、その会社は、夏は売上を伸ばし冬は売上が低迷するというのは常識だから、そうした要因を取り除くとどうなるかという形で考えることが出来るからです。問題は、こうした季節要因以外で収益と費用に関する期間配分に歪みが生じている場合です。収益と費用の適切な期間配分に限界があり、それらが同じ四半期に対応しておらず、四半期ベースで見ると利益を先送り(もしくは、水増し)されているように見えることが往々にしてあります。それらを把握するためには、その企業が行っている事業内容や採用している会計方針などを確認するしかありません。********************今回の四半期決算でも、バリュー投資家の中では割と有名な銘柄がそのような誤認(過剰反応/過小反応)を示しました。株価の値動きに関しては事後的な話になってしまいますが、次回はそうしたいくつかの銘柄を「ケーススタディ」として紹介します。今日の言葉:「四半期決算が開示されて情報が増えたからといって喜んでばかりはいられない。年次収益が恣意的に4分割されている分、利益の経済的実質の把握がより困難になっているからだ。」
2005年08月17日
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前回は、タイプの異なる3種類のリスク管理論を単に列挙するだけに留めましたが、実際にはこれらを自分の性格や目的に合うように組み合わせなければならないと思います。そして、優れた投資家はこれを意識・無意識に関わらずやっているはずだと私は考えています。(リスク管理が疎かな投資家が長期的に生き残れるとは到底思えないので。)今回は、そのために必要なことについて何らかのきっかけとなればと思います。1.投資銘柄を分散させる2.投資銘柄をよく調査して安全域を大きくとる3.間違ったと思えばすぐに切る世間一般のイメージとはやや異なるかもしれませんが、リスク管理として強固なのは2や3であり、1はそれに比べるとかなり弱いと思います。**************************1.投資銘柄を分散させるこのリスク管理論が有効なのは「一定規模の分散まで」であり、それ以上の規模でやっても効果が大きく改善しないと思います。学者の論理である「ポートフォリオ理論」を持ち出すならば「銘柄数がN倍になると、個別リスクは√N分の1に減る」となります。もちろん、ある一定の仮定が満たされての架空の計算上の話であり、実際にはそこまで減らないのですが、ここのポイントは「減るのはあくまでも個別リスクであって、市場リスクは除去できない」という点です。これは「とりわけ市場の暴落時には、いくら銘柄分散をしていても下がるときは下がる」と言っているようなものですから、ある一定規模を超えて銘柄数を増やしたところで、それによるリスク分散の効果を享受できるものではありません。したがって、「銘柄数を増やすことで期待出来るリスク分散効果は一定規模までである」と結論付けることが出来そうです。さらに、銘柄分散をさせるなら、「業種特性が異なる銘柄」「投資スタイルが異なる銘柄」という形で分散させたほうが良いと思います。もっとも、こうした多角化をあまりやりすぎると、それ自体がリスクだということにもなりかねないですが。あと、今の私は消極的ですが、人によっては「資産クラスでリスク分散を図る」ことが有効かもしれません。これは、株式以外の投資対象も考慮するということで、俗に「アセットアロケーション」というものです。例えば、株式とキャッシュでリスク調整している投資家であれば、「株式でいい投資案件がなければキャッシュポジションにする」というだけのことです。下手に投資案件を探してやみくもに銘柄分散するくらいならばこのほうがリスク管理としてはすっきりしていると思います。2.投資銘柄をよく調査して安全域を大きくとる株式投資における最大のリスクは「自分が良く理解していないものに投資すること」だと思います。投資している銘柄の特性(本源的価値や値動きの特性)を理解していないと、新しい情報や価格変動に対してどう対処すれば良いか分からないという事態に陥ります。自分で適切な判断が出来ないのですから、いくら銘柄分散でカバーしようとしてもそれは無理があります。当たり前ですが、まずは、投資銘柄をよく調査することが肝心だと思います。あと、ファンダメンタル投資に関して言えば、銘柄数を増やすことよりも大きな安全域をとることのほうが、リスク管理としては遥かに優れています。安全域の考えは人それぞれですが、「とりわけ将来に関する事項は保守的に見積もること」を心がけていれば、それが身を守ることになるかと思います。そもそも人間には情報処理能力の限界があります。インターネット社会になり多くの投資家とネットワークが広がったとはいえ、多数の銘柄を監視することには限界があります。機械的投資(システムトレード)を行わないならば、一人の投資家がガッチリと監視できる銘柄数はどのくらいか?これを考えると、あまり多くの銘柄を保有するというのは、よく分かっていない銘柄(あるいは、状況確認が遅れる銘柄)が必然的に増えてしまいます。例えば、四半期決算について考えます。別に、これに振り回されることはないとも思いますが、30銘柄保有していてそれをガッチリと監視するためには、(延べ日数で)120日必要だということです(30銘柄×4四半期=120)。そんなことは専業投資家でもない限りなかなかできません。3.間違ったと思えばすぐに切る投資における成否の分かれ目となる要因を一つだけ挙げるとすれば、それは「貴方が株式投資向きの心理状態になっているかどうか」に尽きると思います。そして、心理面でのリスク管理を考えたとき「自分の間違いを素直に認められるかどうか」が非常に重要だと思います。トレーダーの場合、短期のノイズを取りに行くということから自分の判断の成否は価格だけです。このような場合、事前にロスカットラインを定めることは絶対不可欠です。バリュー投資家の場合、基本的には価値判断に関する自分の考えが重要ですから、機械的なロスカットラインを定めることについては賛成しかねるのですが、レバレッジをかけていたり1銘柄のポジションが過大である場合には、ファンダメンタルとは別の判断で動く必要もあることだけは認識しておくべきです。もっとも、バリュー投資でレバレッジをかける場合、「多少の価格下落で凹まないくらいの芯の強さ」のほうが大事ですが。**************************まとめると、以下のようなことになろうかと思います。(1)保有銘柄は「少な過ぎず多過ぎず」を心がけるさすがに1銘柄や2銘柄では殆どの人にとってリスクが高いと思いますが、個人投資家が20銘柄以上保有してするのはやりすぎだと思います。現実には、5銘柄~10銘柄くらいが適切だと思います。これだけの銘柄数があれば、(やるかどうかは別として)よく調査した上での業種分散やスタイル分散もそれなりに実行できます。逆に言うと、そこまで銘柄数を絞れない状況であれば、それはよく調査をすることが先決だと思います。銘柄分散は「無知のカバーでなく不測の事態への備え」という位置づけにしたいものです。(2)買う前に、その後の投資判断をある程度明確にしておく要は投資対象を定量的にも定性的にも事前に良く調べよということです。安全域の計算やそれが覆される可能性などを勘案して、(ぎりぎりではなく)かなり余裕をとった上で投資することが最大のリスク回避策だと言えます。よく調査することで、その後出てくるファンダメンタル情報や価格変動にも適切に対応でき、「このような状況になれば売り」とか「明らかに今は売り時ではない」などが自分で判断できます。ある投資案件について期待できる利益と見込みが外れた場合の損失を考えてみて、損失のほうが大きいと感じればそれは投資するに値しません。ただ、誰もが損をするために投資しようとは思っていないはずで、それゆえに自分の投資判断に主観的かつ楽観的なバイアスがある可能性があります。そのことを踏まえた上で、客観視しなければならないところが難しいところではあります。(3)保有銘柄については、自分の損益状況と切り離して継続保有すべきかどうかを考える「含み損を抱えているから売らない」というのは継続保有するための合理的な理由だとは思えません。希望的観測や不安がある状態で保有していると感じれば、それは一旦切ったほうが無難です。そこで、その後株価がどうなるかを気にしてはいけません。機械的なロスカットラインを置くかどうかについては、その人が採用している投資スタンスに依存します。バリュー投資ならば、その本質からそれはしないということになるのでしょうが、これとて、資本政策次第で変わります。あと、ナンピンをするのは、自分の投資判断が正しいという確信がさらに高まったときに限定すべきであり、損を取り戻したいという気持ちでやると確実に破滅します。今日の言葉:「銘柄を増やさないとリスクを減らせないという投資手法は、その投資手法そのもののリスクが高いのである。」
2005年08月14日
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今回は、ポートフォリオ全体のリスク管理について私が思っていたこと、様々な投資サイトなどを見て感じたことなどを話題にしたいと思います。特に、ポートフォリオ全体のリスクを減少させるための方法について考えたいと思います。ちなみに、最適なリスク管理論は一つではないと思います。自分に合う方法を探すことでリスクを減少させつつ高いリターンを目指すことが肝心だと思います。私が思いつく限りですが、ポートフォリオ全体のリスクを減少させる方法として、以下の3点があるのではないかと思います。それを総合的に考える必要がありますが、今回は各論に留めておきます。1.投資銘柄を分散させる(資本政策面からのリスク管理)2.投資銘柄をよく調査して安全域を大きくとる(銘柄選択面からのリスク管理)3.間違ったと思えばすぐに切る(心理面からのリスク管理)***************************1.投資銘柄を分散させるこれは、「卵を一つの籠に入れてはいけない」で有名なリスク管理論です。自身の無知や不測の事態をカバーするためのリスク管理論だと言えます。これを聞くと「単に銘柄数を増やせば良いのか?」と考える人も多いですが、それだけではありません。(1)銘柄数を増やす(2)1銘柄への投資を一定量に制限する(3)ポートフォリオ全体でも過大なポジションを取らない(4)互いに連動性の低い銘柄へ投資するということが含まれます。以下、それぞれを簡単に見ていきたいと思います。(1)銘柄数を増やすこれは、ある銘柄で失敗しても一度に大きなダメージを食らわないという理屈です。分散投資派の多くはこの効用を最重視していると思えます。(2)1銘柄への投資を一定量に制限する銘柄数が多くても、ある特定の銘柄に集中していれば、それは事実上は集中投資ですから、それだと銘柄の分散によるリスク管理が出来ていないと言えます。(3)ポートフォリオ全体でも過大なポジションを取らないフルインベストメントを敢えて避けたり、レバレッジをかけないという考え方です。(4)互いに連動性の低い銘柄へ投資するテクニカル的に似たような動きをする銘柄やファンダメンタル的に似たような特性を持つ銘柄への投資も銘柄の分散によるリスク管理になっていないと言えます。業種分散や資産クラスの分散も必要だという考えです。2.銘柄をよく調査して安全域を大きくとるこれは、「卵を一つの籠に入れてその籠をがっちり監視する」で有名なリスク管理論です。これを聞くと「集中投資」というイメージが沸きますが、「銘柄の分散」と「銘柄の調査」はその気になれば両立可能ですから、厳密には違うような気もします。それよりも、「自分自身がその銘柄について、どの程度把握しているのか?」が重要だと思います。自分が理解できていない銘柄に集中投資しそれを監視したところで、ポートフォリオ全体のリスク管理が出来ているとは到底思えず、単に「危険なだけ」です。「銘柄をよく調査して、安全域を大きくとる」バリュー投資家にとってはごく当たり前な話のはずですが、最近色々なサイトを見ていると、そうしたことを忘れている人が多いと感じるのは気のせいでしょうか?3.間違ったと思えばすぐに切るどんなに優秀な投資家でも調査ミスはやってしまうものです。あと、本来あってはならないことですが、大した調査もせずに「何となく良さそうだ」ということで、衝動的に買ってしまうこともありがちな話です。そうした銘柄について希望的観測と不安を抱きながら保有し続けている人がかなりいますが、私の場合、「損益に関わらず迷ったら切る」です。そんな自信がない状態で保有し続けてはいけません。テクニカル派であれば「事前に定めた一定幅のロスカットライン」でしょうし、ファンダメンタル派であれば「価値と価格の安全域に関する自分なりの判断」になろうかと思います。ここに自信がなければ、必然的にリスク管理が疎かになってしまいます。***************************次回は、「銘柄を分散する」「銘柄をよく調査する」「間違ったと思えばすぐに切る」を総合的に考えて、ポートフォリオ全体のリスクを極小化することを考えます。今日の言葉:「リスクは株にあるのではなく、貴方自身にある。」
2005年08月13日
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雇用・利子および貨幣の一般理論第四編 投資誘因第11章 資本の限界効率(p135~p146)第12章 長期期待の状態(p147~p164)今回は最終回です。第12章の残りの部分を簡単にまとめます。**************************(1)企業という言葉を資産の全存続期間にわたる予想収益を予測する活動に当てることが許されるなら、投機が企業以上に優位を占めるということは必ずしもつねに事実ではない。しかし、投資市場の組織が改善されるにつれて、投機が優位を占める危険は事実増大する。(第12章 p156~157)現在の資本主義、ひいては、株式市場が投機的な行為によって成立している部分があると同時に、その危うさを指摘しています。株式市場が近代化し大衆化するにつれて、「予想収益」という個々の企業実態を加味しない意思決定が横行し、それが健全な資本市場の発展を阻害しかねないことを指摘しています。例えば、事業内容や財務内容からして、上場していなければ誰からも相手にされず淘汰されていただろうボロ株などは、市場参加者が作り出す「値動き」そのものが呼び水となり、結果的に、その企業に資金が流れる可能性があるといえます。(2)投機に基づく不安定性がない場合にも、われわれの積極的な活動の大部分は、数学的期待値に依存するよりもむしろ、自生的な楽観に依存しているという人間本性の特徴に基づく不安定性が存在する。十分な結果を引き出すためには将来の長期間を要するような、なにか積極的なことをしようとするわれわれの決意のおそらくの大部分は、血気の結果としてのみ行われるものであって、数量的確率を乗じた数量的利益の加重平均の結果として行われるものではない。(第12章 p161~p162)大多数の人々の意思決定は、必ずしも経済的合理性を満たすものでなく、それどころか、衝動的に行われることもままあると指摘しています。これは裏を返すと、「この世界は何でも数量的に把握できる」と考えがちな、理科系タイプの投資家に対する一種の牽制球だと私は勝手に解釈しています。(ちなみに、私は理科系出身です。もし、理科系出身でこのあたりのニュアンスが良くわからないという御仁はそもそも株式投資向きの性格でないと断言できます。)「合理的な計算によるとこうなるはずである」ということを、模索することは知的興味としては非常に素晴らしいことではありますが、それと同時に「そんなことを考えて行動している人は少ない」ことも知っておかなければならないと思います。2004年12月31日の日記で述べましたが、そこで挙げた以下の「格言」が参考になろうかと思います。*証券市場は愚か者の巣窟であることを知った上で、自分は賢明に振舞うことを要求される場である。*「自分は賢い」と思うようになったら、それは「愚か者への第一歩」であると思え。**************************今さらながらですが、株式投資においては収益還元法のような理論的側面を知った上で、その理論と現実が如何に違うかを吟味することが大事なのではないかと思います。
2005年08月10日
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