inatoraの投資日記

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2005年10月23日
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前回取り上げた代替指標のうち、EV/EBITDA倍率について考えてみたいと思います。様々な投資サイトにEV/EBITDA倍率の解説がなされており、それをおさらいするだけであれば、いまさら私が取り上げる必要はないとも思いましたが、「強気相場に伴う代替指標の登場」という事態を想定して、ここで整理しておくのも悪くないと思いました。

EV/EBITDAには、「イーブイ・イービットディーエー」とか「イーブイ・イービットダー」などの呼び方があり、どちらの呼び方がポピュラーであるかというのは本質的な話ではありません。

ちなみに、EVとEBITDAの定義等は以下のとおりです。

*****************************

(1)EV
英語:Enterprise Value
日本語:企業価値
算出式:EV=株式時価総額+有利子負債-現預金

(2)EBITDA
英語:Earnings before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization
日本語:利払い税引き前減価償却償却前利益
算出式:EBITDA=営業利益+減価償却費

注)
教科書によっては、EBITDAを「経常利益+支払利息-受取利息+減価償却費」と定義しているものもあります。

「営業利益=経常利益+支払利息-受取利息」という関係式が概ね成立している企業であれば、どちらを使っても支障はありませんが、会計項目(営業項目と営業外項目)の振り分けの都合から、この関係式がくずれている企業については適宜修正が必要です。

なお、アメリカの会計では「経常利益」という項目がありませんので、それとの比較ということであれば、「営業利益+減価償却費」という定義のほうが扱いやすいでしょう。

*****************************

で、このEV/EBITDA倍率は近年盛んに行われている企業買収の際によく出てくる指標で、「(買収時に投下した実質的な資金である)EVが(買収先の簡易的なキャッシュフローを表す)EBIDTAの何倍であるか?」という点に注目しています。

この数字が小さければ、買収資金の回収年数が短くて済むということからPERと同様、バリュー系の指標として利用されることもありますが、いくつかの違いがあります。

やや話が長くなるので、今回はEVのみに留めておいて、次回にEBITDAについて考えます。


(1)EVについて

まず、EVについて考えます。

本質的な話ではありませんが、日本語で「企業価値」となっていることにはいつも違和感を覚えます(「価値と価格は違う」というバリュー投資の立場から考えれば、EVは「企業価値」では「企業価格」と言うべきだと思うのです。)

それはさておき、標準的なコーポレート・ファイナンスの教科書ではEVを「買収時に必要な実質的な資金」と解説していることが多く、これは「部分的な事業の清算」を意味します。

すなわち、「買収者が買収先の事業改革に乗り出し、本業とは無関係な財務活動資産を清算し、その資金は一旦買収者(株主)に還元され、残った営業活動資産だけで本業を継続することで、従来よりも高い資本効率を目指す」ことを前提としています。

EVはその財務活動資産の代表として「現預金」と「有利子負債」に焦点を当てているということに他なりません。したがって、本業を継続することに支障がない財務活動に相当する資産が他にあれば、EV(実質的な買収資金)の定義を再考して、その減算項目とすることが出来ます。

このことから、簡単に言えば、EVとは主にキャッシュリッチな企業を買収する際に考慮する補足的指標であることになります。ただし、現実にはそうしたキャッシュリッチな企業でさえ、通常営業における「資金繰り」の問題は発生し、「保有している全ての現預金と有利子負債が本業の継続に不要である」と言い切ることは出来ませんので、この点は注意が必要です。

さらに、金融業のように、現預金と有利子負債の管理・運用能力こそが本業の収益力の源泉となっている企業については、現預金も有利子負債も(財務活動資産でなく)営業活動資産となりますので、EVを買収時に必要な実質的な資金であると定義することの妥当性に欠けます。

したがって、EVを「実質買収資金」と定義するためには

*キャッシュリッチな企業であること
*現預金と有利子負債の管理・運用能力が本業の収益力の源泉である企業ではないこと

が重要な前提条件となっています。

次回は、EBITDAのほうです。こちらはEV以上に多くの前提条件や問題点がありますので、そのあたりに触れてみたいと思います。

今日の言葉:
「いらぬ物を買えば、いるものを売るに至る。」
ベンジャミン・フランクリン





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最終更新日  2005年10月23日 21時37分34秒
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