薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
薄桜鬼 薔薇王腐向け転生昼ドラパラレル二次創作小説:◆I beg you◆ 1
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 10
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
黒執事 平安昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:蒼き月満ちて 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
F&B×天愛 異世界転生ファンタジーパラレル二次創作小説:綺羅星の如く 1
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
黒執事 BLOOD+パラレル二次創作小説:闇の子守唄~儚き愛の鎮魂歌~ 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 1
天上の愛地上の恋 大河転生昼ドラ吸血鬼パラレル二次創作小説:愛別離苦 1
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
火宵の月 吸血鬼転生オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華 1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
火宵の月異世界転生昼ドラファンタジー二次創作小説:闇の巫女炎の神子 0
FLESH&BLOOD 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の騎士 1
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 7
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黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
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YOIヴィク勇火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 1
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YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
刀剣乱舞 腐向けエリザベート風パラレル二次創作小説:獅子の后~愛と死の輪舞~ 1
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 2
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天上の愛地上の恋現代昼ドラ人魚転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 2
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
F&B×薄桜鬼 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:北極星の絆~運命の螺旋~ 1
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・愛の螺旋 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「天上の愛地上の恋」の二次創作です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。アルフレートが、ゴンザレスが経営する学校で教師として働き始めてから、一月が経った。「ルドルフ、もう起きたのか?アルフレートはどうした?」 ヨハンはルドルフが台所で悪戦苦闘している姿を見て一瞬目を丸くしたが、いつも影のように彼に付き添っているアルフレートの姿が無い事に気づいた。「アルフレートなら、まだ部屋で寝ている。昨夜は遅くまで教材を作っていたらしい。」「そうか。」「さてと、上手く出来たかな・・」 ルドルフは、そう言うと皿に目玉焼きを載せ、アルフレートの寝室へと向かった。「アルフレート、わたしだ。起きているか?」「ん・・」ノックの音と共に、ルドルフがアルフレートの寝室に入ると、部屋の主はまだ夢の中だった。「おはようございます。」「昨夜は夜遅くまで、仕事をしていたな?」「はい・・」「仕事に熱心なのはいいが、余りやり過ぎるのは良くないぞ。」「はい、わかりました。ルドルフ様、この目玉焼きは、あなた様が作ったのですか?」「あぁ・・初めて作ったから、自信がない。」「頂きます。」 アルフレートは食前の祈りを捧げると、ルドルフが作った目玉焼きを食べた。「美味しいです。」「そうか、良かった。」 ルドルフはそう言った後、安堵の笑みを浮かべた。 ヨハンは、農作業の後に町へ行きたいと言い出したルドルフの顔を驚愕の表情を浮かべながら見ていた。 それもその筈、南米で暮らし始めてから、ルドルフは今まで一度も遠出した事がなかった。 それが、急に町へ行きたいとは、どういう事なのだろう。「どうした大公、そんなに驚いて?」「いや、お前が遠出するなんて珍しいと思って・・」「料理の本を探しに行こうと思ってな。」「料理の本?」 この村には小さな商店があるが、品揃えは余り多くないし、取り扱っているものは日用品ばかりだ。 汽車で三駅くらい行った町には、この村よりも大きな商店やカフェ、そして書店がある。「丁度、俺も町に用事があるから、連れて行ってやる。」「ありがとう、大公。」 農作業の後、ヨハンと共にルドルフは、初めて町へと向かった。「ウィーンよりは大きくないが、今居る村よりは大きいな。」「じゃ、ここから先は別行動だ。俺はカルロスの事務所に行って来る。書店の場所はわかるな?」「あぁ。」「じゃぁ、正午にここのカフェで落ち合おう。」「わかった。」 駅舎の前でヨハンと別れたルドルフは、町の書店へと向かった。 ルドルフはそこで、経営学と料理の本、そして今流行りの小説を何冊か買った。 それまで、普通の“買い物”をした事がなかったので、レジで代金を払う時、ルドルフは少し緊張してしまった。 正午になり、ヨハンは先にカフェに入ると、ルドルフが両手に本が入った袋を掲げながら自分の元へとやって来るのを見た。「凄い量だな。一体何冊買ったんだ?」「さぁな。それよりも大公、カルロスと何を話した?」「別に。それよりもルドルフ、料理の本以外に何を買ったんだ?」「経営学と、小説、児童書かな。」「児童書?」「スペイン語の学習に良いと思ってな。何か頼もう。」「どうぞ、ごゆっくり。」 そう言ってヨハンとルドルフに料理を運んで来たカフェの給仕女は、ルドルフにウィンクをしてから厨房へと消えていった。「あの女、お前に気があるな。」「そうか。」「お前、最近どうしちまったんだ?昔のお前なら、ああいう女の誘いに乗った筈だぜ?」「アルフレートは、わたしが浮気すると怒って拗ねてしまうから、しない。」「はぁっ!?」 ヨハンはプレイボーイであったルドルフから信じられない言葉を聞いて、思わず声が裏返ってしまった。「まぁ、人は変わるものだなぁ。さてと、暗くなる前に帰るぞ。」「わかった。」 カフェから出た二人は、汽車で村へと戻った。「ただいま。」「お帰りなさいませ。」 アルフレートは、ルドルフが両手に本が入った袋を掲げている姿を見て、渋面を浮かべた。「また、無駄遣いをされたのですか?」「いいだろう。」「よくありません。後で領収書を見せて下さい。」「わ、わかった・・」 そんな二人のやり取りを彼らの傍らで見ながら、ルドルフは一生アルフレートの尻に敷かれるだろうなとヨハンは思った。「どうしたのジャンナ、溜息なんて吐いて。」「いや、あのルドルフが、今や完全にアルフレートの尻に敷かれていると思ってな・・」「何よ、そんなの今に始まった事じゃないでしょう?」「ま、まぁそうだが・・」「あの二人の事は、二人だけに任せておけばいいのよ。」「そうか・・」 やがて季節は秋から冬へと移り変わっていった。 南米の寒さは、ウィーンの厳しい寒さとは比べ物にならない程マシなものだったが、意識を回復するまで長年寝たきりの生活を送っていたルドルフの身には少し堪えたらしく、彼は町へ遠出した後風邪をひいて寝込んでしまった。「ルドルフ様、どうぞ。」「これは?」「お粥です。マリさんのお母様に作り方を教えて頂きました。日本の方は、病気の時にお粥を食べて滋養をつけるそうです。」「そうか・・」「今日は大人しく寝て下さいね。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年10月19日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「天上の愛地上の恋」の二次創作です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 少女はルドルフの手を引っ張ったまま、お気に入りの花畑へと向かった。『ほら、見て!』少女に言われ、ルドルフは眼前に広がる一面の向日葵を見た。それらは皆、太陽に向かって咲き誇っていた。『ここ、わたしのお気に入りなの!』『君、名前は?』『わたしはマリ、日本から来たの!』『日本?』 かつてウィーンに居た頃、ホーフブルク宮殿を訪ねてきた留学生達の姿がルドルフの脳裏に蘇った。 確か彼らも、この少女と同じ、極東の島国の出身ではなかったか。『どうして、こんな遠いところまで来たんだい?』『父上と母上と一緒に、農園で働いて、将来は自分で農場を経営する為よ。御一新でわたし達の生活は苦しくなってしまったから。』そう言って少し寂しそうな顔をルドルフに見せた少女・マリは、滔々と極東の島国からこの南米の地にやって来た経緯を語り始めた。 マリの家は、かつては“アイヅ”と呼ばれていた王家に仕えていたサムライの家だったこと、それが“御一新”と呼ばれる内戦の所為で全てを失い、一縷の望みに賭けて海を渡り、慣れない異国での生活を送っている事。『わたしには父上や母上、兄上が居るけれど、それだけでも恵まれていると思うの。わたし以外の家族の中では、戦で亡くなった方が沢山いらっしゃるし・・』『君は偉いね、幼いながらもご両親の助けになろうとして。わたしにも、君と同じ年位の娘が居るんだよ。』『その娘さんは、今どこにいらっしゃるの?』『ここから遠い所さ・・もう二度と会えないだろうね。』ルドルフはそう言うと、蒼く澄み切った空を見上げた。 たとえエルジィとは遠く離れていても、この空は彼女が居るウィーンへと繋がっている―そう思うと少しルドルフの気が楽になった。『さぁ、学校に戻ろうか。』『うん!』ルドルフとマリが手を繋ぎながら向日葵畑から学校へと戻ると、アルフレートが慌てた顔をしながら二人の元へと駆け寄った。「二人共、何処へ行っていたんですか!もう午前中の授業は終わりましたよ!」「すまない、少し息抜きをしたくてな。それよりもアルフレート、教師の仕事はどうだ?うまくやっていけそうか?」「ええ。スペイン語の勉強にもなりますし、子供達はみんな元気で明るいから遣り甲斐があります。」「そうか。」 午前の授業が終わり、生徒達は昼食を取るために帰宅したが、マリだけが学校に残り、家から持参した弁当を風呂敷包みから取り出した。『美味しそうだね。これは君のお母様が作ってくれたものなのかい?』『ええ。お米はここでは手に入らないから、代わりにサンドイッチを作ってくれたの。』 そう言ってマリは、母親が作ってくれたサンドイッチをルドルフ達に見せてくれた。そこにはチーズとトマトが上に乗っており、質素ながらも美味しそうなものだった。『ルドルフ様、わたし達もお昼に致しましょう。』『あぁ、そうだな。』 アルフレートが持参したバスケットの中には、彼の手作りのサンドイッチが入っていた。『お前は相変わらず料理が上手いな。』『お褒めに預かり、光栄です。』にほんブログ村
2019年10月27日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「天上の愛地上の恋」の二次創作です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「ルドルフ様、あなた様がついていかなくてもよろしいのに・・」「何を言う、アルフレート。お前の事が心配で堪らないんだ。」 ゴンザレスが経営している学校へと向かう馬車の中で、ルドルフはそう言うとアルフレートの手を握った。「ルドルフ様、もしかして子供達に嫉妬されているのですか?」「ふん、馬鹿な事を・・わたしは、子供には嫉妬しない。」「ウィーンに居た頃、わたしが救護院の手伝いをしている時、遠くから恨めしそうに見ていましたよね?」「そ、それは昔の話だ!」ルドルフはそう言って顔を赤く染めると、アルフレートにそっぽを向いた。いつもウィーンでは凛々しく、クールな顔をしていたルドルフだったが、自分の前でだけ、子供っぽい表情を浮かべていた。 それは、南米に移住した今でも変わらない。「ルドルフ様、わたしは何処にも行きませんから、安心なさってください。」アルフレートはそう言うと、ルドルフの手を握った。「そんな事、知っている。」 二人を乗せた馬車は、やがて教会の前に停まった。『アルフレート様、ようこそお越しくださいました。ルドルフ様も。』 教会に隣接している司祭館にルドルフとアルフレートが入ると、ゴンザレスは笑顔を浮かべて二人を出迎えた。『ゴンザレス様、本日から宜しくお願いいたします。』『こちらへどうぞ、子供達が待っております。』 ゴンザレスと共にルドルフとアルフレートが教室へと向かうと、そこには粗末な身なりをした少年少女達が椅子に座っていた。『みんな、彼は今日から君達の先生になる、アルフレート=フェリックス先生だ。』『皆さん、初めまして。アルフレート=フェリックスです。今日から宜しくお願いしますね。』 黒板の前でアルフレートが子供達にそう挨拶すると、それまで大人しく椅子に座っていた子供達が立ち上がり、一斉に彼の方へと駆け寄って来た。『アルフレート先生、何処から来たの~!』『ねぇ、あっちのブロンドの人誰~!』『一緒に遊んで~!』子供達はそう矢継ぎ早に質問すると、アルフレートをもみくちゃにした。『みんな、ちょっと落ち着こうね?』救護院で子供達の扱いに慣れているアルフレートは、そう言うと子供達を落ち着かせた。ルドルフは教室の後ろで、アルフレートが子供達に文字を教えている姿を見ていた。ウィーンで司祭をしていた頃から、彼はいつも子供達に好かれていた。それは、彼が『天使様』と呼ばれているのも解るような、優しい雰囲気を纏っているからだろう。 子供相手に嫉妬するなんてことはしないが、アルフレートが自分以外の者と親しくしているところを見るとルドルフは何故か落ち着かないのだ。(大人気ないな・・)ルドルフがそう言って溜息を吐いていると、不意に誰かが自分の上着の裾を引っ張って来た。『おじさん、遊んで~!』そう叫んでと突然ルドルフに抱きついて来たのは、彼の一人娘・エルジィと同じ年頃の少女だった。少女を邪険に振り払うことも出来ずに、ルドルフは少女と手を繋いで教室から外へと出た。『何をして遊びたい?』『あっちに綺麗なお花があるのよ、一緒に行こう!』にほんブログ村
2019年10月25日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「天上の愛地上の恋」の二次創作です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「アルフレート、何故止める?」「ゴンザレス様のお話を少し聞いてから、カルロス様にお会いしても宜しいのではないでしょうか?」アルフレートはそう言うと、今にもカルロスを殺しそうな目をしているルドルフを必死で止めた。「そうだな、奴を殺すのはその後にしてもいい。」ルドルフは少し不満げな顔をしてドアに背を向け、アルフレートの隣に座った。『それでゴンザレス殿、アルフレートに学校の手伝いをして欲しいと・・そうおっしゃりたいのですか?』『はい、そうです。もしお嫌ならば・・』『わたしでよければ、学校をお手伝い致しましょう。』「アルフレート、こっちへ来い。」ルドルフはいきなりアルフレートの手を掴むと、そのまま母屋から出て行った。「お前、一体どういうつもりだ? あんな奴の手伝いをするなんて。」「ルドルフ様、ゴンザレス様は悪い方ではないと思います。」「だが、あいつはあのカルロスと繋がっているかもしれないんだぞ? もしお前に何かあったら・・」「お言葉ですがルドルフ様、わたしは拳銃を扱えますよ?」天使のような清らかな笑みを浮かべながら、アルフレートはサラリと物騒な言葉を口にした。(ああ、そうだったな。) その言葉を聞いたルドルフは、ウィーンで7年ぶりに再会したアルフレートが、逞(たくま)しく強(したた)かな男となっていた事を思い出した。ルドルフの中でのアルフレートは、宮廷付司祭として働いていた頃の彼の記憶しかなかった。だが、アルフレートはすっかり変わってしまった。その変化に気づけない自分に、ルドルフは我ながら苦笑した。「ルドルフ様?」ルドルフが我に返ると、自分を心配そうに見つめるアルフレートの姿があった。「いや、何でもない。お前はわたしと離れている間、強くなってしまったようだな?」「ええ。何せあなたよりも3つも年上ですから。」「言ってくれるな、お兄様。」ルドルフはそう言ってアルフレートに微笑むと、彼の胸を拳で軽く小突いた。「戻ろう、大公達が心配している。」「はい。」ルドルフの手を握り返しながら、アルフレートは昔ウィーンでヨハンと追いかけっこをしたことを思い出した。「何を笑っている?」「いいえ。」「おかしな奴だ。」 アルフレートとルドルフが仲良く連れ立って母屋に戻ると、ダイニングルームにゴンザレスの姿はなかった。「ゴンザレス様は?」「もう帰ったよ。その様子だと、お前達もう仲直りしたみたいだな?」「お騒がせ致しました。」「まぁいい、いつもの事だからな。さてと、遅いが朝食にするか。」「わたしも手伝おう、大公。」「お前は座っておけ。慣れないことはしないほうがいいぞ。」「安心しろ、包丁の扱いにはもう慣れた。」そう言ってヨハンに微笑んだルドルフだったが、目が笑っていなかった。「ルドルフ様、朝食の準備は大公様にお任せして、わたし達は草むしりでもいたしましょう。」「わかった。」(助かったぜ、アルフレート。)「何よ、ジャンナ。あなたでもそんな顔するのね?」「う、うるせぇ!」にほんブログ村
2019年10月24日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「天上の愛地上の恋」の二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「誰だ、こんな夜中に・・」「ルドルフ、起きているか!」 ルドルフが寝室から出ると、農場の外が夜だというのに妙に眩しいことに彼は気づいた。「大公、一体何がどうなっている?」「さぁな、俺にも解らねえ。ただ、外に居る連中と一度話をした方がいい。」「そうだな。」 ルドルフとヨハンが母屋の外に出ると、そこには松明を掲げた五十人程の男達が母屋の前に立っていた。『お前達、何者だ?』『夜分遅くに申し訳ございません。わたしは、ゴンザレス=アルファと申します。』 男達の集団の中から、カソックを着た老人がルドルフとヨハンの前に現れた。『わたしは貴方方の農場から少し離れた所で、学校を運営しております。ですが、今は教師の数が足りません。』『それで? こんな夜遅くにわたし達に何かお願いをしに来たのですか、ゴンザレス殿?』 恋人と睦み合おうとしていた時に邪魔が入り、不機嫌な表情を隠そうともせずにルドルフはカルロス達を睨むと、早口のスペイン語でそう捲し立てた。『申し訳ありません、ヨハン様。詳しいお話はまた明日、伺う時に致します。』『解ってくださればいい。』 カルロス達が帰った後、ルドルフは溜息を吐きながら母屋のドアを閉めた。「夜中に頼み事とは、迷惑な輩だな。」「まったくだ。明日も早いっていうのに。」 ルドルフが寝室に戻ると、アルフレートはベッドに入って眠っていた。ルドルフはそっとアルフレートの髪を撫でると、彼の隣に潜り込んで眠った。「アルフレート、起きろ。」「ん・・」カーテンの隙間から射し込む朝日に照らされ、アルフレートがゆっくりと目を開けると、目の前には身支度を終えたルドルフの姿があった。「ルドルフ様、おはようございます。」「おはよう。アルフレート、すぐに支度をしろ。お前に客人だ。」「わたしに、お客様ですか?」「ああ。」 数分後、アルフレートが身支度を終えて寝室を出ると、ダイニングルームには黒いカソックを着た老人が座ってコーヒーを飲んでいた。『初めまして、わたしはゴンザレス=アルファと申します。貴方が、アルフレート=フェリックス様ですね?』『はい。あの、ゴンザレス様はわたしに何のご用でこちらに・・』拙いスペイン語でアルフレートがそうゴンザレスに尋ねると、彼は咳払いをしてこう答えた。『実は、わたしは教会で村の子供達に読み書きを教えております。ですが、教師の数が足りません。確か、フェリックス様は昔司祭をしていらしたとか・・』『ええ。』隣でアルフレートとゴンザレスの話を聞いていたルドルフが、“教会”という単語を耳にして柳眉を微かにつり上げた。 アウグスティーナで宮廷付司祭として働いていた事はこの村の者達は知らない筈だ。『ゴンザレス様、わたしの経歴をどなたが貴方に教えたのですか?』ゴンザレスはアルフレートの言葉を聞き一瞬目を泳がせると、ある人物の名を口にした。『カルロス=エルパソ様からです。』「やはりな・・あの男、一目見た時から只者ではないと解っていたが、わたしが駄目ならアルフレートを狙うか・・」ドイツ語でそう呟いたルドルフの目が笑っていないことに気づいたアルフレートは、嫌な予感がした。「アルフレート、行くぞ。」「ルドルフ様、暫くお待ちください。」 今、彼をカルロスの元へ行かせてはならない―アルフレートはそう思い、怒りで蒼い瞳を滾らせているルドルフを落ち着かせようとした。にほんブログ村
2019年10月13日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「天上の愛地上の恋」の二次創作です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「先ほどまであなたの話を聞いていたが、あなたは出鱈目(でたらめ)ばかり言うのだな。」「出鱈目だと?」「この新聞に、ルドルフ皇太子が棺の中で眠っている写真が載っているでしょう? 死んだ人間が何故あなたの目の前に居ると思うのですか?」「そ、それは・・」ルドルフの言葉を聞いた男の目が少し泳いだ。「申し訳ありませんが村長、あなたの戯言に付き合っている暇はないので、これで失礼いたします。行くぞ、アルフレート。」「はい。」ルドルフは男に背を向け、アルフレートと共に居間から出ようとした。「待ってください、ひとつだけ質問をしても良いですか?」「何ですか?」「その右手の火傷はどうされたのです? 随分と古いもののように見えるのですが・・」「ああ、これですか? 昔、銃が暴発して怪我をしてしまいましてね・・それが何か?」「いいえ、何も。わざわざお呼び立てしてしまってすいませんでした、お気をつけてお帰り下さい。」「では、失礼致します。」 ルドルフは慇懃無礼な口調でそう言うと、男―カルロスに愛想笑いを浮かべて居間から出て行った。「さっきは危なかったな。」「ええ。それよりもルドルフ様、あの人は何故ルドルフ様のことをご存知なのでしょう?」「さぁな。それよりもアルフレート、今日の夕飯は何だ?」「それは秘密です。あなた様が夕飯の準備を手伝ってくださるのならお教え致しますが。」アルフレートの言葉に、ルドルフは軽く舌打ちした。 カルロスの家から農場へと戻ったアルフレートは、キッチンでルドルフとともに夕飯の準備をしていた。「手際が良いな、お前。何処でそんなことを覚えたんだ?」「昔から、ローザと一緒に家事をしていましたから、料理も自然と覚えました。」「そうか・・」恋人の口から、幼馴染の少女の名を聞いたルドルフは少し不機嫌そうな表情を浮かべた。「ルドルフ様、もしかして嫉妬しました?」「ふん、嫉妬などするか、馬鹿らしい。」ルドルフはそう言って誤魔化したが、玉葱を潰す時に少し力が入ってしまった。「あら美味しそうね、またアルフレートが作ったの?」「はい。でもルドルフ様にも手伝って貰いました。」「へぇ、珍しいわね。どれどれ・・美味しいわ!」ミリはルドルフが作ったサラダを一口食べると、そう言って笑った。「ウィーンに居た頃は料理なんか全然しなかったお前が、料理を覚えるとはね・・人って変わるものだよな。」「少しはわたしを見直したか、大公?」「う、うるせぇ!」 楽しいひと時は、静かに過ぎていった。「アルフレート、今夜はゆっくりできるな。」「ルドルフ様、明日は朝が早いのですから、寝ませんと・・」「そんなつれないことを言うな。夜はまだまだ長いぞ。」 夜の帳が下りようとしている頃、ルドルフは寝室でそう言ってアルフレートに迫った。 ルドルフがアルフレートの唇を塞ごうとした時、母屋のドアが誰かに激しくノックされた。にほんブログ村
2019年10月13日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「天上の愛地上の恋」の二次創作です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 舗装されていない砂利道の揺れを感じながら、ルドルフ達は案内役の少女と共に馬車で村長の家へと向かっていた。「わたしにその村長が一体何の用なんだ?」「それがわかったら、わざわざこっちから出向くわけがねぇだろう?」ヨハンがそう言ってルドルフの方を見ると、彼の隣に座っているアルフレートが不安そうな顔で恋人を見た。「どうした、アルフレート?何を考えている?」「もしかしたら、ルドルフ様の素性が露見してしまったのではないかと思うのですが・・」「馬鹿を言え、アルフレート。ここがメキシコならばともかく、こんなコロンビアの田舎でハプスブルク家の名を知る者などいないだろう?」アルフレートの言葉をそう一蹴したルドルフは、アルフレートの唇を塞いだ。「お二人さん、イチャつくのは後にしてくれないか?」「いちいち煩い奴だ・・」ルドルフは舌打ちすると、窓の外を見た。『あとどのくらいで村長の家に着く?』『あと少しで着くわ。』ヨハンの隣に座っている少女―マリアは、そう言うとじっと彼を見た。『あなたは、あの二人とはお友達なの?』『まぁ、そんなところかな。知っての通り、あいつらはスペイン語が話せないから、俺が通訳役として駆り出された訳だ。』『大人って、大変なのね。』『まぁな。』『丘の上にあるのが、村長さんの家よ。』 マリアがそう言って指したのは、煉瓦造りの瀟洒(しょうしゃ)な家だった。『驚いたな、こんな田舎に豪邸があるとは。』『マリアによれば、この豪邸の持ち主は遣り手の商売人らしい。』『そうか・・その“商売人”とやらが、どんな顔をしているのかが楽しみだな。』ルドルフがそう言って口元を少し歪めて笑うと、居間から糊の利いたエプロンを掛けた黒いワンピース姿のメイドが出て来た。『ご主人様が、あなた方にお会いしたいそうです。』 メイドの案内で居間に入ったルドルフ達は、暖炉の前に置かれた安楽椅子に座ってパイプを吹かしている肥満体の男がこの豪邸の主であるということに気づいた。『お忙しい中、急にお呼び立てして申し訳ございません・・ルドルフ様。』男の口から自分の名が出たのを聞いたルドルフは、少し眦(まなじり)を上げた。「何故、わたしの名を知っている?」ルドルフがそうドイツ語で男に尋ねると、彼は笑みを口元に湛(たた)えながら、流暢(りゅうちょう)なドイツ語で答えた。「わたしはこんな小さな村の長をしておりますが、本業はヨーロッパとの貿易をしておりましてね。海を越えて向こうの政治情勢などが商品とともに入ってくるのですよ。そう、例えば・・マイヤーリンク事件のことなどが。」 男は安楽椅子の近くに置いてあるテーブルの上から、一枚の新聞記事を取った。そこには、ルドルフの葬儀の様子が書かれていた。「お前の望みは何だ?」「望みも何もありません。ただ、あなたが本当にマイヤーリンク事件で“自殺”されたルドルフ皇太子様なのかどうか、この目で確かめたかっただけです。」(こいつ・・頭が切れる男のようだな。)「ルドルフ様・・」ルドルフの隣に立っていたアルフレートが、そっと彼の手に触れた。彼はそれに応えるかのように、恋人の手を握った。(安心しろ、大丈夫だ。)にほんブログ村
2019年10月06日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「天上の愛地上の恋」の二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 ルドルフの怪我は、数ヶ月で完治した。「ルドルフ様、もう歩けますか?」「ああ。アルフレート、畑を案内しろ。」「わかりました。」 怪我が治り、ルドルフはアルフレートとともに農作業に勤(いそ)しむ日々を送っていた。「人って、突然変わるものなのかしらねぇ。」「何だ急に?」「ルドルフ様のことよ。ルドルフ様、今まで農場で働きたくないって言っていたでしょう? それなのに、足の怪我が治ってからは毎日アルフレートと一緒に農場に行っているわ。きっとこれもアルフレートのお蔭ね。」「ふん・・」 ヨハンはミリの言葉を聞き、渋面を浮かべた。「そんな顔をしていると、色男が台無しよ。」「うるせぇ、放っておけ!」ヨハンはそう言うと、コーヒーを一口飲んだ。口の中に、苦味が広がった。「ルドルフ様、そろそろ戻りましょうか?」「まだコーヒー豆の収穫が終わっていないぞ?」「コーヒー豆の収穫は明日でもできます。ルドルフ様はまだ怪我が治ったばかりなのですから、余り無理をなさっては・・」「お前、いつからそんなに説教臭くなったんだ?」ルドルフは少し呆れたような顔をしながらアルフレートを見た。「昔からですよ。誰かさんが無茶ばかりなさるから・・」「うるさい奴だ。」ルドルフがそう言って溜息を吐いた時、向こうの茂みから何やら物音がした。「アルフレート、さがっていろ。」ルドルフは上着の内ポケットから拳銃を取り出すと、銃口を茂みに向けた。「いけません、むやみに発砲しては!」「最近畑を動物が荒らしていると聞くじゃないか。久しぶりの狩りになりそうだな。」ルドルフはそう言って嬉しそうに笑うと、引き金に指を掛けた。その時、茂みから何かが出て来た。それは動物ではなく、一人の5歳くらいの女児だった。「アルフレート、何故こんな所に子供が居るんだ?」「それはわたしの方が聞きたいです。」アルフレートとルドルフがそんな話をしていると、ルドルフの拳銃に気づいた女児が突然叫び出すと、早口のスペイン語で何かを二人に訴えた。「アルフレート、一体あいつは何を言っているんだ?」「さぁ・・」スペイン語に不慣れなアルフレートは、彼女が自分達に何を伝えようとしているのかが全く解らなかった。「おい、お前らそこで何してる?」「大公、いいところに来た。そいつが話している事をわたし達に伝えてくれ。」「なんで俺が?」「お前はイタリアで育ったのだろう?だったら、スペイン語も解る筈だ。」「無茶を言うな。」 ヨハンは溜息を吐くと、ゆっくりと女児に近づいた。『俺はお前に危害を加えたりはしない、安心しろ。』自分に怯えている女児を落ち着かせる為、ヨハンは彼女にスペイン語で話しかけた。 すると彼女は、ヨハンの背後に立っているルドルフを指し、こう言った。『あの人に用があるから呼んで来いって、村長さんが・・』『ルドルフに?』『早く呼んで来ないとわたしが村長さんに怒られちゃう。』『わかった。』 ヨハンは女児の元から去り、ルドルフ達の元へと戻った。「ルドルフ、お前に会いたい奴が居るそうだ。」「わたしに?」にほんブログ村
2019年10月06日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「天上の愛地上の恋」の二次創作です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 ルドルフは息苦しさで目を覚めると、自分の手を舐める愛犬の姿が見えた。「アレクサンダー、どうしたんだ?」ルドルフの言葉に応えるかのように、アレクサンダーはクゥンと鳴いた。「また熱を出されたとか・・」「今月でもう何回目かしら?」「本当に、ルドルフ様は皇帝陛下の・・」 ドアの隙間から、女官達の口さがない噂話が聞こえてくる。「アレクサンダー、僕は大丈夫だから、お休み。」 息苦しさに耐えながら、ルドルフは再び目を閉じた。「う・・」 ルドルフが低く呻いて目を開けると、そこはホーフブルク宮にある自分の寝室ではなかった。 今自分が寝ているのは、農場の母屋に与えられた部屋だった。ベッドから少し起き上がって見渡すと、白いヴェネツィアンレースのカーテンや壁に掛けられた鏡があった。(なんだ、夢か・・) 愛に飢えていた頃の、懐かしい夢を見てしまった。あの頃のルドルフには、抱き締めてくれる温かい手も、太陽のような優しい笑みを浮かべてくれる人は誰も居なかった。 けれども、今は違う。 ルドルフは、自分の隣で眠っているアルフレートを見た。彼はうつ伏せになって、ルドルフの手を握ったまま眠っている。アルフレートの寝顔をずっと見ていたくて、ルドルフは一晩中起きていた。「アルフレート、起きろ。そんなところで寝ていたら風邪をひくぞ。」「ん・・ルドルフ様、おはようございます。」 翌朝、アルフレートが見たものは、ルドルフが自分に向けた優しい笑顔だった。「お怪我の具合はいかがですか?」「お前が居てくれたお蔭で少し良くなった。」「そうですか・・」ルドルフはアルフレートの腰を掴み、自分の方へと引き寄せた。「ルドルフ様?」「ここ暫くご無沙汰だっただろう?」「何をおっしゃっているのですか!」ルドルフの言葉を聞いた瞬間、アルフレートの顔が耳まで赤く染まった。「別にいいだろう、こんな退屈な生活にはたまには刺激が必要だ。」「ルド・・」自分に抗議をしようとするアルフレートの唇を塞ぐと、彼のエメラルドの瞳が熱を帯びた。「どうした、嫌なのか?」「いいえ・・」「そうか。」眩い朝日に照らされながら、恋人達は夢のような時間を過ごした。「おはようございます、大公様。」 朝食を取る為に食堂へとやって来たアルフレートの顔は、少し赤くなっていて様子がおかしかった。 ヨハンは、彼の白い首筋に紅い痕がついているのを目敏く見つけ、内心溜息を吐いた。(朝からイチャつきやがって・・)「どうした、大公?」「ルドルフ、その様子だと元気になったようだな。」「ああ、お蔭様で。」(本当に食えない奴だよ、お前は。)にほんブログ村
2019年09月29日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「天上の愛地上の恋」の二次創作です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「ルドルフ様、お待ちください!」 母屋から出て行ったルドルフをアルフレートが慌てて追いかけると、彼は厩(うまや)で白馬に鞍をつけているところだった。「何処へ行かれるおつもりですか?」「少し頭を冷やしてくるだけだ。」そう言ったルドルフの蒼い瞳が、怒りの光を宿していることにアルフレートは気づいた。「では、わたしも一緒に参ります。」「放っておいてくれ。」「嫌です。」頑として遠乗りについてゆくというアルフレートに折れたルドルフは、そう言うと溜息を吐いた。「現実を見ろとさっき大公から言われた時、わたしはオーストリア=ハンガリー帝国皇太子という地位に今まで固執していたことに気づいたんだ。」「ルドルフ様・・」「愚かだな、わたしは。今は守るべき国も民も、皇太子という地位すらもないというのに・・」ルドルフは乾いた笑みをアルフレートに浮かべると、白馬の尻に鞭を入れた。「ルドルフ様、お待ちください!」ルドルフの異変に気づいたアルフレートが慌てて彼を追おうとしたが、彼は白馬と共に瞬く間にアルフレートの前から遠ざかっていった。“もうお前は皇太子じゃない。現実を見ろ、ルドルフ。” 全てが終わったら、もう自分は世界を冠する帝国の皇太子という地位を失うだろうということを、解っていた。 解っていた筈なのに。それなのに、失って初めて、あれほど苦痛だった皇太子という地位に固執している。もう、自分には何もないというのに。白馬を無我夢中で走らせていたルドルフは、目の前に野良犬が横切ろうとしたことに気づくのに遅れてしまった。 激しく混乱した白馬は暴れ、乗っていたルドルフを勢いよく地面へと振り落すと、何処かへ行ってしまった。「ルドルフ様、大丈夫ですか!?」「ああ、大丈夫だ・・」ルドルフはそう言って立ち上がろうとしたが、その時右足に激痛が走り、思わず顔を顰(しか)めた。「ルドルフ様、あれ程無茶をなさってはいけませんとおっしゃったのに・・」「うるさい、黙れ。」ルドルフは心配そうに自分へと手を伸ばす恋人の手を邪険に払いのけた。「戻りましょう。」 アルフレートとルドルフが母屋に戻ると、ルドルフの異変に気づいたヨハンがすぐさま医者を呼びに行った。「足が折れていますね。暫く養生なさった方がいいでしょう。」「大公様、ルドルフ様と二人きりにしてくださいませんか?」「わかった。」 ヨハンが部屋から出て行き、アルフレートはベッドに寝ているルドルフの方を見た。「ざまぁみろと思っているのだろう? 自棄をおこした挙句、落馬して怪我をするなんてな。」「そんな事は思っておりません。」アルフレートはベッドの傍に置いてある椅子に腰を下ろすと、ルドルフの手をそっと握った。「わたしはもう何処へも行きませんから、ゆっくりとお休みになってください。」「わかった・・」 ルドルフはアルフレートの手を握り締め、やがて深い眠りへと落ちていった。にほんブログ村
2019年09月29日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「天上の愛地上の恋」の二次創作です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 オーストリアからこの南米の地・コロンビアに来た頃、ルドルフは依然として正気を失ったままで、彼の着替えや食事は全てアルフレートが世話していた。 ルドルフは一日の大半の殆どをベッドで過ごしていた。時折寝室から出てヨハン達と食事を取ることがあったが、それすらアルフレートの介助がなければできなかった。 そんな彼が正気を取り戻したのは、ヨハン達がコロンビアに移住して一年目の春を迎えようとしている頃だった。「それでは、行って参ります。」「本当に一人で大丈夫なのか?」「はい。大公様、わたしが留守の間どうかルドルフ様の事を宜しくお願いいたします。」「ルドルフの事は任せておけ。」 その日、アルフレートは所用でブエノスアイレスへと向かうことになった。アルフレートは、自分が留守の間ルドルフの世話をヨハンに頼んで、農場から馬車で最寄り駅まで向かった。だが、彼が乗ろうとしていた汽車は既に出てしまっていた。次の汽車が来るのは二時間後だと駅員に言われ、アルフレートは溜息を吐きながらプラットホームに置かれている長椅子に腰を下ろし、汽車が来るのを待った。 その時、誰かが自分の名を呼ぶ声が聞こえた。(気の所為か?)そう思いながら線路の方を見たアルフレートは、その中に農場に居るはずのルドルフが立っていることに気づき、思わず椅子から立ち上がった。「ルドルフ様、そこに居たら危険です、離れてください!」「アルフレート、何処へ行く!」鋭い光を放った蒼い瞳で射るようにアルフレートを見つめるルドルフの声を聞いたアルフレートは、驚愕の表情を浮かべた。「ルドルフ様、あなたは・・」「またわたしを置いていくのか、アルフレート!」そう言ったルドルフの瞳には、微かに恐怖の色が滲んでいた。(ああ、この方は・・)また自分が捨てられることを、ルドルフは恐れているのだ―かつて、アルフレートがウィーンでルドルフに背を向けた時の事を、ルドルフは憶えていた。 ルドルフは線路からプラットホームへと上がると、アルフレートの前に立った。「お前はわたしのものだ。」「ルドルフ様、わたしはあなたを置いていきません。必ずあなたの元へ戻ります。」「もう二度と、わたしを置いていくな・・」「はい・・」 アルフレートは翠の瞳を涙で潤ませながら、ルドルフを抱き締めた。正気を取り戻したルドルフは、その日から順調に快復していった。ルドルフの快復ぶりにヨハンやミリは驚いたが、ルドルフが正気を取り戻した事を知って一番喜んだのはこの二人だった。 だが、ルドルフが快復したことにより、困った問題が出て来た。それは、ルドルフがアルフレートに対して過保護になってしまったことだ。アルフレートと農場へ仕事に行く時も、街へ買い物に行く時も、ルドルフは必ず彼と手を繋ぐ。もう二度と彼と離れたくないという気持ちからくるものなのだろうが、周囲にとっては迷惑以外の何物でもない。その上、ルドルフは農作業を嫌がり、母屋で読書などしてアルフレートの帰りを待っている事が多い。ただでさえ家計が逼迫(ひっぱく)していて苦しいのに、ルドルフの我が儘(まま)にこれ以上振り回されていては堪(たま)らない。意を決したヨハンは、昼食の時間にルドルフに本音をぶつけた。「ルドルフ、話がある。」「何だ、大公?」「単刀直入に言うが、うちは穀潰しを置いておく余裕はない。自分の食い扶持は、自分で稼ぐんだな。」「わたしに働けというのか?」「もうお前は皇太子じゃない。現実を見ろ、ルドルフ。」 ヨハンの言葉を聞いたルドルフは、食事の最中だというのに席を立って何処かへ行ってしまった。にほんブログ村
2019年09月27日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「天上の愛地上の恋」の二次創作です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 南国の灼熱の太陽が、容赦なく自分の肌を突き刺すのを感じながら、アルフレートは農作業に勤しんでいた。 両親が流行病で亡くなる前、故郷の農村で農作業を手伝っていたからか、こういう肉体労働は苦にはならなかった。「こんな所にいたの、アルフレート。」「ミリさん。」額の汗をハンカチでアルフレートが拭っていると、日傘を差したミリがバスケットを抱えながら彼の元へとやって来た。「毎日こんな調子じゃぁ、身体を壊すわよ? ほどほどにしておかないと。」「すいません。でも、農作業をしていると子供の頃の事を思い出すのですよ。」「そうなの。」ミリがそう言ってアルフレートの方を見た時、蹄の音が聞こえた。「何だミリ、そんなところにいたのか。」「大公・・」 ミリとアルフレートが背後を振り向くと、そこには黒馬に跨ったヨハン=サルヴァトールが馬上から二人を見下ろしていた。「あらジャンナ、アルフレートに嫉妬してわたしのことを探しに来てくれたの?」「違ぇよ、馬鹿。昼飯の時間になっても母屋に来ないから、ルドルフが心配したから農場に連れて来たんだ。」ヨハンはミリの言葉を聞いて仏頂面を浮かべながらそう言うと、自分の背後に座っているルドルフを指した。「アルフレート、わたしを放っておいて何をしている?」「申し訳ありません、ルドルフ様。」 アルフレートはさっと砂で汚れた手を払うと、ルドルフの元へと駆け寄った。「お前を探しに行くと言ったら、大公が御親切にも馬に乗せてくれてな。乗り心地は悪かったが。」「お前なぁ、礼のひとつくらい言ったらどうだ?」「自分で乗った方が早く着いたな。」ヨハンの眉間に皺が寄るのを見て、くすりと笑ったルドルフは、優雅に馬から降りた。「ルドルフ様、もうおかげんはよろしいのですか?」「ああ。お前がかいがいしく看病してくれたお蔭で、すっかり元気になった。」ルドルフの言葉を聞いて頬を赤く染めるアルフレートは、ルドルフにそっぽを向いた。「何だ、今わたしは変な事を言ったか?」「い、いいえ・・」「お~いそこのお二人さん、そろそろ昼飯にしようぜ!」ルドルフとアルフレートのいちゃつきそうな気配を察知したヨハンは、そう言うとわざとらしく二人の間に割って入った。「邪魔をするな大公、さっきの腹いせか?」「違う、こんなクソ暑い所に居たくねぇからさっさと移動したいだけだ。」「だったら大公はそちらの麗しいご婦人と先に母屋へ行けばいいだろう? わたし達はゆっくりと積もる話をしながら・・」「駄目だ、またそうやって農作業をサボろうとしていやがるな?」「バレたか・・」「お前はもう皇太子でも何でもないんだ、ルドルフ。いい加減こっちの生活に慣れてくれないとな。」「わたしに農民たちに混じって働けと?」「ルドルフ様、そろそろ母屋へ参りましょう。こんな暑い所に居たら、またお体を壊してしまいます。」 一触即発状態となっていたルドルフとヨハンの様子を見たアルフレートは、そう言うと慌ててルドルフの手を取った。「そうだな。アルフレート、行こう。」「はい。」「ったく、暇さえあればイチャつきやがって・・」「まぁまぁ、許してあげなさいよ。それに、ルドルフ様があんなに元気になったのも、ひとえにアルフレートのお蔭じゃないの。」「まぁ、そうだな・・」 母屋へと歩いてゆくルドルフとアルフレートの姿を見ながら、ヨハンはこの国に来た頃の事を思い出していた。にほんブログ村
2019年09月27日
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