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ドラマを観たので、原作を再読してみたくなり、先程読み終わりました。いやあ、宮部みゆきは時代物も現代物も読みごたえがありますが、この作品は面白くて一気に読了してしまいました。原作が面白いから、ドラマには少し物足りなさを感じてしまいます。
2024年05月17日
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最初から最後までスリリングな展開が続きましたが、ラストシーンが不穏な形で終わってしまって残念でした。
2024年05月17日
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表紙素材は、このはな様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。シエルが両性具有です、苦手な方はご注意ください。 セバスチャンとユリウスは、日本人の母と、英国人の父との間に産まれた。 母は、かつて隆盛を極めた士族の出で、家計を助ける為芸者となり、お座敷で父に見初められ、二人を授かった。 しかし、父には英国に婚約者を残していた。 英国貴族である父にとって、母は星の数ほど居る愛人の一人だった。 混血の上に私生児を産んだ母は、置屋から追い出さされた。 路頭に迷い、行き倒れ寸前となっている彼らを救ったのが、今の義父だった。 義父は華族で、訳有りの母を正妻として迎えた。 彼は母方の祖母を呼び寄せ、共に暮らすようになった。 母方の祖母・文乃は、優秀なセバスチャンだけを溺愛し、ユリウスを事あるごとに蔑ろにし、時折彼を折檻するようになった。 同じ顔をしているのに、何でも出来るセバスチャンと、病弱で役立たずな自分。 いつしかユリウスは、自分に劣等感を抱くようになっていった。 そんな中、遠縁の伯父が亡くなり、彼の診療所をセバスチャンが継ぐ事になった。 セバスチャンは時折ユリウスに手紙を送ってくれたが、ユリウスは一度も返事を寄越さなかった。 だが、セバスチャンから出征するという連絡が来た。『わたしが帰って来るまで、シエルをお願いします。』 セバスチャンの手紙の中にある『シエル』が何処の誰なのかわからず、ユリウスは混乱した。 取り敢えず、ユリウスは手紙に書かれていた住所を頼りに、セバスチャンの診療所を訪ねる事にした。 すると、そこには一人の少女の姿があった。 彼女が、セバスチャンが言っていた“シエル”だと勘で解った。「失礼、貴殿がシエル=ファントムハイヴ殿か?」 ユリウスがそう少女に尋ねると、彼女は訝し気な視線を自分に送った後、静かに頷いた。 シエルはユリウスがセバスチャンの双子の弟だと名乗ると、彼女は証拠を見せろと迫って来たので、彼女に戸籍謄本を見せると、彼女の頑なだった態度はすぐさま軟化した。 そして、少女―兄の恋人・シエルを深川へと連れて来た。 自分の妻とする為に。 シエルは、美しい少女だった。 雪のように白い肌、そして左右違う色の瞳。 その瞳には兄しか映っていないが、それでもいいと、ユリウスは思っていた。「シエル様、何をなさっているのです?」「米を炊こうと思って・・」「まぁ、ユリウス様の奥様となられる方に、そのような事はさせられません。」「今、何と言った?」「申し訳ありません、今の事は忘れて下さいませ!」 菊はそう言ってシエルに頭を下げると、台所から出て行った。 ユリウスが帰って来たら色々と問い詰めようとしたシエルだったが、彼は中々帰って来なかった。「向こうのお宅で何かあったのでしょうか?」「向こうのお宅?」「ユリウス様のご実家は、銀座にあるのですよ。まぁ、色々と複雑な事情がおありなのかも・・」「そうか・・」 シエルは米を研ぎながら、戦地に居るセバスチャンに想いを馳せていた。 同じ頃、セバスチャンは満州に居た。(シエルは、元気にしているのでしょうか?) セバスチャンはそんな事を思いながら、シエルへ手紙を書いていた。「何だ、これ?」「手紙ですよ、見てわからないのですか?」「フン、相変わらず愛想のない・・」 セバスチャンの手紙を見ていた男は、そう言うと何処かへと行ってしまった。 彼は、セバスチャンとは同じ部隊で、何かとセバスチャンに突っかかって来る。「またあいつかい。気にするな。」「はい。」「その手紙、里に居る恋人宛かい?」「ええ。」 セバスチャンは、そう言うと部隊長にシエルの写真を見せた。「ほぉ、中々の別嬪さんじゃないか。いくつだい?」「今年で13になります。結婚は、シエルが成人するまで待とうと思っています。」「健気だねぇ。」 舞い散る雪の中で、セバスチャンは凍える手を時折擦りながら、何とかシエル宛の手紙を書き終えた。『シエル、元気にしていますか。ちゃんとご飯は食べていますか?こんなつまらない事を書くな、と、あなたはこの手紙をご覧になった後、お怒りになるでしょうね。ですが、このような月並みの言葉しか書けないわたしを許して下さい。どうかお元気で、あなたのセバスチャンより。』 その手紙は、シエルの元に届く事はなかった。 1945(昭和20)年元日。 新年だというのに、食糧難の所為でお節料理を作れず、元日の食卓には芋ばかり並んでいた。 育ち盛りのシエルにとって、それは満足な物ではなかったが、野菜の屑を浮かべただけの汁物や、大根の切れ端しかない漬物ばかり食べていなかったので、我が儘は言えなかった。「ごちそう様でした。」「あなたが、ユリウスのお嫁さんとなる方?おいくつなの?」 そう言った文乃は、シエルが床に入るまでシエルを質問攻めにした。「いい加減にして下さい。シエルさんが怖がっているじゃありませんか。」「でも・・」「シエルさん、この人は放っておいていいので、先に部屋で休んでいて下さい。」「はい・・」 セバスチャンとユリウスの継父・尚哉はそう言うと、シエルに微笑んだ。「ありがとうございます、お義父様。」 その日の夜、シエルが自室で寝ていると、誰かが寝室に入って来る気配がした。「セバスチャン・・?」 シエルが目を開けると、そこには文乃の姿があった。「あの、何かご用ですか?」「死ね!」 文乃はそう叫ぶと、老人とは思えないような力で、シエルの首を絞めた。「お止め下さい、お祖母様!」「この子が、この子が居るから、あの子は・・」「大奥様、いけません!」 文乃を、女中達が数人がかりでシエルから引き離した。「シエルさん、大丈夫ですか?」「はい・・」「お祖母様の事は、お気になさらないでください。」(あの人は、何かを隠している・・) シエルは深川の家に戻り、家事をしながら昨夜の事を思い出していた。“この子が居るから、あの子は・・” 錯乱した文乃が言った、“あの子”とは、一体誰の事なのだろうか?にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月17日
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爽やかな味で美味しかったです。
2024年05月16日
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摩訶不思議な作品でした。
2024年05月16日
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父が、冤罪だった!?父の死の真相を探るため、故郷へ戻ったセーラを待っていたものは。最初から最後まで一気読みするほど面白かったです。
2024年05月15日
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インディアンに対する差別や偏見を真正面から描いた作品。ヒロインのメアリーの芯の強さに共感しました。面白くて一気に読み終わりました。
2024年05月15日
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「黒執事」「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。「はぁ・・」 その日、ファントムハイヴ社社長・シエル=ファントムハイヴは何度目かの溜息を吐いていた。 というのも、新商品を開発しようと思い立ったはいいものの、中々そのアイディアが湧いてこない。 かといって、今更中止にも出来ない。「坊ちゃん、失礼致します。」 ベルを鳴らしてもいないのに、部屋に滑るように入って来たのは、ファントムハイヴ伯爵家執事・セバスチャンだった。「本日のデザートは、ガトーショコラのクランベリーソースがけでございます。」「悪くない。」「おやおや、仕事が余り進んでいらっしゃらないようですね?」 セバスチャンは、書類の山を前にして唸るシエルにそう言うと、一通の手紙を差し出した。『可愛い坊やへ、今年の夏は異常な暑さですね。プリマスの街で、最近猟奇殺人事件が起きていて、被害者は皆10~13歳までの子供達です。どうか、子供達が安心して家族と眠れる夜を迎えられますように、ヴィクトリア。』「プリマスか・・遠いな。」「夏の休暇を取って、プリマスへ行かれてはいかがでしょう?そうされた方が、新商品開発のアイディアが浮かぶかと。」「今すぐ身支度をしろ、プリマスへ向かう。」「イエス、マイ・ロード。」 こうしてシエルとセバスチャンは、プリマスへと向かった。「暑い・・」 ロンドンのキング=クロスから汽車でプリマスへと向かったシエルは、駅舎から出た途端、強烈な日差しに襲われ思わず顔を顰めた。「こんな日差しだったら、エリザベス様から頂いた日傘を持って行けば良かったですね。」「お前、ふざけているのか!?」 シエルがそう言って執事の方を睨むと、彼は黒い雨傘をさしていた。 真夏の強烈な日差しを浴びたシエルは、プリマスの警察署に着くまで何度も気絶しそうになった。「あ、あなたは!?」 プリマス警察の記録保管庫に居た一人の刑事と、シエルとセバスチャンは鉢合わせしてしまった。「確か君は、アバーライン君だっけ?」「そうです。お久しぶりです、ファントムハイヴ伯爵!」「どうして、君がここに?」「異動になりました!」「そ、そうか・・」 セバスチャンは記録保管庫から事件の捜査資料を書き写すと、被害者達の写真を抜き取った。「では僕達はこれで失礼する。」 警察署を出たシエル達は、近くのカフェで昼食を取る事にした。「フィッシュ&チップスか。ロンドンで食べた物よりも美味いな。」「港町だから、新鮮な魚介類が入って来るので、ロンドンの物よりも美味しいのでしょう。」「そうか。それにしても、事件の被害者達は皆黒髪かブルネットか・・しかも、年齢が・」「坊ちゃんが、あの儀式に生贄にされた時と同じ年齢ですね。」 あの時、悪魔崇拝者達は全員セバスチャンに殺された筈だった。 だが、まだその残党が居るかもしれない。 シエルとセバスチャンは昼食を済ませると、カフェから出て、“ホーの丘”へと向かった。 そこは、何も無い所だった。「確か、ここだったな。」「ええ、確か最初の被害者・ジムはある儀式の最中に殺されたようです。」「ある儀式だと?」「妖精の国へ行く儀式だそうです。」「下らん、妖精なんて居る訳が・・」「悪魔を呼び出した坊ちゃんがそれを言いますか?」「うるさい。」「この“ホーの丘”は、妖精の国へと通じる“トンネル”があると、昔から噂されております。」「時間の無駄だったな・・帰るぞ、セバスチャン・・」 シエルがそう言ってセバスチャンの方を振り返ろうとした時、突然シエルの足元の地面が光り出した。「坊ちゃん!」「セバスチャ・・」 シエルがセバスチャンに向かって手を伸ばそうとした時、シエルは地中深くに吸い込まれてしまった。(妖精は、本当に居るのですね・・) セバスチャンは呆然としながら、シエルを吸い込んだ“穴”を見つめた。 いつまで、気を失ってしまったのか、わからなかった。 ただシエルにわかるのは、全身に広がって来る鈍い痛みだけだった。「う・・」 シエルが呻いて起き上がろうとすると、右足に激痛が走った。「セバスチャン、何処だ!返事をしろ、セバスチャン!」 シエルが呼べはすぐに自分の元に駆けつけてくれる執事は、何時まで経っても来ない。(どうなっているんだ・・) シエルが混乱した頭で周囲の状況を確認していると、丘の麓の方から、馬車の音と人の話し声が聞こえて来た。「カイト、本当に“ホーの丘”に・・」「リリー、間違いないって・・」「それにしても、こんな日に・・」 シエルは護身用の銃を取り出すと、話し声が徐々に近づいて来る事に気づいた。 海斗とリリー、ジェフリーが“ホーの丘”へと向かうと、一人の少年が自分達に銃口を向けている事に気づいた。「誰だ、お前達!?」「お前こそ誰だ?俺はジェフリー=ロックフォード。坊主、その身なりからして、貴族の子供か何かか?」「僕は、シエル=ファントムハイヴ伯爵だ。」「ファントムハイヴ伯爵・・ファントムハイヴ伯爵家の者か?」 自分の隣に立っていた恋人がそう呟いたのを、海斗は聞き逃さなかった。「ジェフリー、どうしたの?」「お~いジェフリー、どうした・・ってあれ、このガキは・・」 海斗達に遅れてやって来たのは、キットだった。「キット、そいつを知っているのか?」「知っているも何も、この子は失踪中のファントムハイヴ伯爵家の双子の片割れじゃないか!」「えっ・・」 海斗は、思わず目の前に居る少年の服装を見た。 シルクハットに上等な外出着、そして靴下留めと、ヒールのある編み上げブーツ。 どう見ても、16世紀の服装ではない。「どうしたの、カイト?」「リリー、もしかしたらあの子、俺達と同じかもしれない。」「え?」 海斗がリリーに、少年の服装を見て、彼が16世紀の人間ではなく、19世紀の人間なのではないかという事を話した。「カイト、どうした?」 ジェフリーとキットが謎の少年と睨み合っていると、海斗が自分達の方へと近づいて来た事に気づいた。「ねぇジェフリー、この子はきっと俺と同じなんだと思う。」「そりゃ一体どういう事だ?」「上手く言えないけれど・・“ホーの丘”にこの子が居るのなら・・」「もしかして、この子も“妖精”に連れて来られたというのか?」「“妖精”だと?」 海斗の言葉を聞いたシエルは、驚きの余り目を見開いた。「ジェフリー、この子怪我をしているし、うちの店まで連れて行きましょう。」 リリーはそう言うとシエルの右足に触れようとしたが、シエルに邪険に手を払われた。「僕に触るな!」「落ち着いて、わたしはあなたを助けようとしているの。」「助けなんて、要らない・・」 シエルはそう言って呻くと、そのまま意識を失った。「右足は骨折しているわね。」「“ホーの丘”でタイムスリップした時に、骨折したんじゃない?」「やっぱり、この子の服は、この時代のものじゃないわね。ブーツはオーダーメイドだし、杖もあなたが言う通り、19世紀のものね、カイト。」“ホーの丘”から気絶したシエルを馬車で白鹿亭へと運んだリリーは、シエルの右足の治療をしながら、海斗と話をしていた。「やっぱり、この子の服装は薄着だから、向こうの世界は夏だったんだろうね。」「キットとジェフリーが話していた“ファントムハイヴ伯爵家”の事が気になるなぁ。」「後でジェフリー達に聞いてみたら?」「そうする。」 シエルが白鹿亭のベッドの上で目を覚ますと、丁度部屋に“ホーの丘”で見た女性が入って来た。「あら、起きたのね。」「ここは?」「わたしの店よ。こんな所にあなたみたいな子供を連れて来るのはいけない事だけど、緊急事態だから仕方ないわね。」 そう言いながら女性―リリーがシエルに手渡したのは、鶏肉とハーブが入ったスープだった。 いつもセバスチャンが作ってくれた料理とは比べ物にならない程の粗末なものだったが、シエルは空腹だったのでそのスープを平らげた。「今は、何年だ?」「1589年1月よ。それがどうかした?」「そんな、嘘だろう・・」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月15日
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表紙素材は、このはな様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。シエルが両性具有です、苦手な方はご注意ください。「す、済まない、僕は怪しい者じゃないんだ。」 そう言った男は、シエルに一枚の名刺を差し出した。 そこには、“私立探偵・アバーライン”と印刷されていた。「私立探偵が、この僕に何の用だ?」「君が、ファントムハイヴ君だね?セバスチャン=ミカエリスさんから伝言を預かりました。」 アバーラインは、そう言うと自分を睨みつけているシエルを見た。「ここは人目があるから、中に入れ。」「あ、ありがとう・・」 アバーラインを診療所の中へと招き入れたシエルは、彼に水が入った湯呑みを出した。「茶を出したいが、茶が無いから水で我慢してくれ。」「ありがとう、朝から歩き通しだったから、丁度喉が渇いていたところなんだ。」 アバーラインはそう言った後、一気に湯呑みの中の水を飲み干した。「はぁ~、生き返るっ!」「それで、伝言というのは何だ?」「実は・・」 アバーラインは、数日前セバスチャンと会った事をシエルに話した。「もうすぐ、わたしは出征する事になるでしょう。わたしが出征する時、この書類をシエルに渡して下さい。」「必ず、この書類をあなたに渡してくれるようにと、セバスチャンさんから・・」 アバーラインから書類を受け取ったシエルは、それに目を通した。 そこには、セバスチャンの親族の住所が書かれていた。「わざわざ書類を届けに来てくれて、ありがとう。」「じゃぁ、僕はこれで失礼するよ。」「あぁ・・」 アバーラインを玄関先で見送った後、シエルは下腹の鈍痛に襲われ、その場に蹲った。(セバスチャン、助けて・・)“シエル”―坊ちゃん、またこんな所で寝てしまっては、風邪をひきますよ。 また、誰かの声がした。 シエルが目を開けると、そこはいつもの自分の部屋だった。「僕は、どうして・・」「君が玄関先で倒れているのを見て、部屋まで運んだんだよ。」「すいません、ご迷惑をおかけしてしまって・・」「いいんだ。」 シエルは月の障りが来ると、下腹の鈍痛とそれに伴う貧血の所為で五日も寝込んでしまう事があった。「シエル君は、ここの生まれじゃなかったよね?」「はい。家族と数年前まで東京で暮らしていました。」「そうか。それにしても、ここにはセバスチャンさんと二人で暮らしていたの?」「はい。」「僕は向こうの部屋に居るから、何かあったら呼んでくれ。」「わかりました・・」 アバーラインが自室から出て行ったのを確認した後、シエルは机の引き出しから通帳と印鑑が入っている袋を取り出し、それをリュックの中に入れた。 いつ出掛けられてもいいように、着替えや通帳、現金を入れたリュックを、シエルは枕元に置き、再び布団の中へと戻って寝た。 月の障りが終わり、シエルが診療所の前で掃き掃除をしていると、シエルの前に一人の男が現れた。「失礼、貴殿がファントムハイヴ殿か?」「はい、そうですが・・あなたは?」「失礼、わたしはセバスチャン=ミカエリスの双子の弟の、ユリウスと申します。貴殿をお迎えに上がりました。」「え・・」 突然、セバスチャンの双子の弟と名乗る男に腕を掴まれそうになったシエルは、慌てて男の手を乱暴に振り払った。「僕に気安く触れるな!」「そんなに怒らなくてもいいでしょう。出征した兄の代わりに、あなたを守りに来たのですよ。」「お前の言葉は信用出来ない。お前がセバスチャンの弟だという証拠を見せろ!」「そう来ると思いましたよ。」 男はそう言って深い溜息を吐くと、持っていた鞄の中から戸籍謄本の写しを取り出してそれをシエルに見せた。「これで、納得頂けましたか?」「あぁ。支度をしてくるから、待っていてくれ。」「わかりました。」 シエルは診療所の中へと入ると、素早く自室に置いていたリュックと旅行鞄を持って診療所から外へと出て行った。「では、行きましょうか。」「何処へ?」「東京へ、わたし達の新しい“家”へ。」「わかった。」 ユリウスに連れられ、シエルがユリウスの自宅がある東京・深川に着いたのは、その日の夜だった。「お帰りなさいませ。」「今すぐ風呂と寝床の用意を。」「はい。」 玄関先でユリウスとシエルを出迎えたのは、彼の家政婦・菊だった。「そちらの方が・・」「わたしの花嫁となる方ですよ。」「まぁ、それは嬉しゅうございます。」 二人の会話を、熟睡していたシエルは聞いていなかった。「おはようございます、シエル様。」 シエルが目を開けると、そこは全く知らない部屋の中だった。「ここは?」「ここは、ユリウス様のお宅ですよ。わたくしは、こちらで家政婦として働いております、菊と申します。」「ユリウスは・・あいつは何処だ?」「坊ちゃま・・ユリウス様なら、お仕事へ出掛けられていますよ。」「お仕事?」 シエルが深川の家で戸惑っている頃、ユリウスは銀座にある実家に居た。「ご無沙汰しております、義父上、お祖母様。」「ユリウス、ここに来るなんて珍しいわね。」 そう言ったのは、セバスチャンとユリウスの祖母・文乃だった。「お祖母様、お元気そうで何よりです。」「全く、久し振りにこちらへあなたが顔を見せる時は、何か厄介事を持ち込むと決まっているのよ。今回はどんな厄介事を持ち込んだの?」「厄介事とは、わたしの未来の花嫁に向かって失礼ですよ、お祖母様。」「未来の花嫁ですって?」 文乃の眦が、ユリウスの言葉を聞いて吊り上がった。「はい。いずれこちらへ彼女と挨拶に伺うつもりです。」「セバスチャンならともかく、あなたにそんな相手が出来たなんてねぇ。」 文乃はジロリとユリウスを睨んでそう言った後、溜息を吐いた。 そんな彼女の反応を見ても、ユリウスは眉ひとつ動かさなかった。 彼女は昔から、兄のセバスチャンばかりを可愛がっていた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月15日
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・デリック達が紫寮にいない…うん、そうだよね。・セバスチャン、水の運びかたw・ソーマ、カッコいい!・クリケット大会は、校長と会えるチャンス!・基準が難しいなあ…・セバスチャンナイスアシスト!・二人とも悪いかおw・前夜祭のシーン、原作読んだとき良かったけど、アニメも良かった!・緑寮長がエルヴィンにしか見えないw・ドルイット子爵w・ミッドフォード家の中の人豪華!・ヴィンセントパパー!
2024年05月12日
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アメリカ大統領がルーズベルトではなく、反ユダヤ主義のリンドバーグだったら・・という歴史IF小説。ユダヤ人排斥の動きが加速化する中、主人公・フィリップ一家を取り巻く社会を一変させる様が描かれており、読んでいて怖かったです。
2024年05月11日
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普通のものと比べて、上品な味わいで美味しかったです。
2024年05月11日
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表紙素材は、このはな様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。シエルが両性具有です、苦手な方はご注意ください。「助けて・・」少女は、苦しそうに呻きながら、シエルに向かって手を伸ばしたが、その手も酷く焼け爛れていた。「シエル、諦めなさい。」「でも・・」「わたし達には、どうする事も出来ません。」 少女は、夜明け前に死んだ。「シエル、いい加減泣き止みなさい。」「でも・・」「どんなに泣いても、死んだ人は戻って来ませんよ。」 セバスチャンはそう言うと、診療所の中へと戻っていってしまった。 あの少女は、生きていた。 それなのに、理不尽に命を奪われてしまった。(これが、戦争なのか・・) 全ての人を、救う事は出来ない。 ならば、自分に出来る事をしよう。 シエルは涙を手の甲で乱暴に拭うと、診療所の中へと戻った。「シエル、もう大丈夫なのですか?」「あぁ。」「もう皆さん落ち着いたようですし、わたし達も休みましょう。」「お休み。」 シエルは泥のように眠った。「おはようございます、シエル。」「ん・・」「朝ごはんが出来ましたよ。」 そう言ってセバスチャンに連れられて台所へと向かったシエルが見たものは、白米の小さな塩むすびだった。「これは?」「朝早くにお米の配給があったので、作ってみました。」「頂きます・・」 その塩むすびは、美味しかった。 その日を境に、シエルは滅多な事では泣かなくなった。 死と常に隣り合わせの日々の中で、涙を流す時間すら惜しいと思ったからだ。 実際、空襲は連日あり、配給があった米は徐々にその量が減り、それに比例するかのように書籍や文房具類、医薬品などが不足していった。「これが、一日分の食事です。」 ある日、そう言ってセバスチャンがシエルに渡したのは、十粒の大豆だった。「そうか。」「シエル、今日は大事な話があるので、早く帰って来てくださいね。」「わかった。行って来ます。」「行ってらっしゃい。」 セバスチャンは玄関先でシエルを笑顔で見送った後、診療所の中へと戻って行った。 事務机の上に置かれた手紙を見たセバスチャンは、それに目を通すと、火鉢の上に置いた。 それはたちまち灰となった。(シエルには・・坊ちゃんには決してこの事は知られてはならない・・) 昼休み、シエルは朝セバスチャンから貰った十粒の大豆をハンカチの中から出し、一粒口に放り込んで良く噛んだ後、水を飲んで空腹を満たした。「あ~、毎日空襲ばかりで嫌になる。」「毎日寝不足になるわ。」 シエルが少し離れた所で女学生達が話しているのを聞いていると、郵便配達人が彼女達の元へとやって来た。「佐伯静子さんですね?」「あ、はい・・」「お手紙が届いています。」 女学生達の一人が郵便配達人から一通の手紙を受け取った後、彼女は突然泣き崩れた。「どうしたの?」「彼が・・」 その手紙は、彼女の恋人の死を知らせるものだった。「ただいま。」「お帰りなさい、シエル。今日はご馳走ですよ。」「ご馳走?」 シエルがセバスチャンと共に居間に入ると、そこには赤飯と野菜の味噌汁、そして鯛の塩焼きが食卓の上に並べられていた。「どうしたんだ、これ?」「知り合いの方が、調達して下さったのですよ。さぁ、冷めない内に頂きましょう。」「あぁ・・」 シエルは、セバスチャンの様子が少しおかしい事に気づいた。「頂きます。」 夕食の後、シエルはセバスチャンに呼ばれて彼の自室へと向かうと、彼は床に正座してシエルを待っていた。「どうした、そんなにかしこまって?」「シエル、わたしに赤紙が来ました。」「赤紙・・」「これを。」 セバスチャンがそう言ってシエルに手渡したのは、金の懐中時計だった。「父の形見です。これをわたしだと思って、大切に・・」「嫌だ!」「坊ちゃん?」「そんな言葉、お前はこれから死に行くと言っているようなものじゃないか!お前が、こんな物の代わりになるもんか!」 シエルはそう叫ぶと、セバスチャンに抱きついた。「必ず生きて僕の元に帰って来い!僕を独りにするなんて、許さないからな!」「あなたという方は、“昔から”わがままで、放っておけない方でしたが、それは“今でも”変わりませんね。」 セバスチャンはそう言うと、シエルの唇を塞いだ。「必ず、生きてあなたの元へ帰ります。約束します。」「あぁ。」 シエルとセバスチャンは、セバスチャンが出征する数日後まで、共に過ごした。「シエル、もしわたしが死んだら、どうしますか?」「お前の後を追って死んだりなんてしないぞ。」「・・あなたなら、そう言うと思っていましたよ。」 セバスチャンの出征前夜、セバスチャンはそう言うとシエルを抱いた。 そして、セバスチャンが出征する日が来た。 彼を見送る為、地域の婦人会の女性達が千人針をセバスチャンに贈り、駅で立派な幟を振って盛大に彼を見送った。「万歳!」「万歳!」 セバスチャンは汽車に乗り込んだ後、シエルの姿を捜したが、シエルは何処にも居なかった。 シエルは、敢えて元気よく振る舞って、別れの涙を自分の前で流したくないから、ここに来ないのだろう―セバスチャンがそう思っていると、盛大に見送りする人々から少し離れたところで、自分を見つめるシエルとセバスチャンは目が合った。『帰って来い。』 唇だけでそう自分に告げたシエルに、セバスチャンは微笑んだ。(必ず、あなたの元に帰ります。だから、その日まで・・わたしが帰って来るまで、あなたもどうか死なないでください、シエル。) 汽車の汽笛が高らかに鳴り、汽車が静かにホームから離れ、やがてそれはトンネルの中へと消えていった。(セバスチャン・・) シエルは、そっとハンカチに包んだ懐中時計を握り締め、駅から去った。 診療所へと戻ろうとしたシエルは、その前に一人の男が立っている事に気づいた。「おい、そこで何をしている?」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月10日
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表紙素材は、このはな様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。シエルが両性具有です、苦手な方はご注意ください。 シエルの右足の骨折は、一月経った頃には完治した。「ごめん下さい。」「女将さん、わざわざこちらにいらしてくれて、ありがとうございます。」「いいえ。こちらこそ、うちのシエルがお世話になりました。今日は、この子の荷物を持って来ただけですよ。」 山田旅館の女将・静子は、そう言うとシエルの私物が入った風呂敷包みをセバスチャンに手渡した。「伯母様、僕は・・」「セバスチャンの言う事をちゃんと聞くんだよ、いいね?」「はい・・」 静子は、シエルに背を向け、診療所から出て行った。 こうして、シエルはセバスチャンと共に暮らす事になった。「坊ちゃん、おはようございます。」「おはよう、セバスチャン。」 シエルは診療所の奥にある台所へ向かうと、すいとんを作った。「坊ちゃんが料理を作るなんて、珍しいですね。」「あの家に居たら、碌に食事もとれなかったからな。すいとんが作れるだけマシだ。」「そうですね。それよりも今日、お米の配給がありますから、行って来ますね。」「わかった。」 セバスチャンが配給に行った後、シエルは縫製工場へと向かった。「シエル~!」 昼休み、シエルが工場の隅で休憩を取っていると、そこへ白衣の裾を翻しながら自転車でこちらに向かって来るセバスチャンの姿に気づいた。「セバスチャン、どうして・・」「お弁当作ったので、どうぞ。」「あ、ありがとう・・」 セバスチャンから渡された弁当箱に入っていたのは、白米の上に梅干しが乗っているだけのものだった。 だが、毎日稗や粟ばかり食べていたシエルにとって、それはご馳走そのものだった。「シエルさん、ちょっと。」 昼食の後、シエルが持ち場に戻ろうとした時、シエルは数人の女学生達に工場の裏へと連れて行かれた。「さっきの方、あなたとどのような関係の方なの?」「セバスチャンとは、ただの同居人で・・」「嘘よ、ただの同居人に対して、あんなに優しい笑顔を浮かべる訳がないわ!」「そうよ、年端もいかない癖に男を誘惑するなんて、ふしだらね!」 恋愛に疎いシエルは、最初彼女達が話している内容が良く解らなかった。 だが彼女達の顔を見ると、セバスチャンと一緒に暮らしている自分に彼女達が嫉妬している事に気づいた。(下らない・・)「ちょっと、何笑っているのよ!?」「いえ、話はそれだけですか?話がもう終わったのなら帰ります。」 工場を出たシエルが診療所へと帰ると、セバスチャンが何処か疲れたような顔をして診察室の椅子に座っていた。「ただいま。」「シエル、お帰りなさい。」「疲れているようだが、何かあったのか?」「えぇ、実は・・」 セバスチャンは、シエルに昼間起きた事を話した。「先生、助けて下さい!」「どうなさったのです?」「胸が・・苦しくて・・」 シエルに弁当を届け、診療所へと戻ると、その前には一人の女性が蹲っていた。「そうですか、では中へ・・」「胸をさすってくださるだけでもいいのです。」 女性の言葉を聞いたセバスチャンは、彼女の様子に違和感を抱いた。 ふと周りを見渡すと、近くの木に女性の連れと思しき男が立っていた。「申し訳ありませんが、わたしではあなたのお力になれません。」 セバスチャンがそう言って女性を見ると、彼女は舌打ちして何処かへと行ってしまった。「美人局に引っかかりそうになるとは、お前少し弱くなったな?」「おや、そうでしょうか?」 セバスチャンはシエルを自分の方へと抱き寄せると、シエルの唇を塞いだ。「やめろ・・」「そう言っても、まんざらではないでしょう?」 セバスチャンはシエルの唇を塞ぎながら、シエルの下半身を触り始めた。「んっ、やぁっ・・」 シエルは身を捩って暴れたが、セバスチャンの逞しい身体はビクともしなかった。「今すぐ、楽にしてさしあげますね。」 シエルはセバスチャンの愛撫によって絶頂に達した。「坊ちゃん、起きて下さい。」「ん・・」 シエルが起きると、そこは布団の中だった。 いつの間にかブラウスとモンペから、浴衣に着替えさせられていた。「今、何時だ?」「午後八時ですね。」「はぁっ!?」「最近お疲れのようですし、ゆっくり休めて良かったじゃないですか。」「お前なぁ・・」 シエルがそう言って溜息を吐いた時、外から誰かが診察所の扉を激しく叩く音がした。「先生、助けて下さい!うちの子が熱を出して・・」「娘さんを診察台に寝かせて下さい。」 セバスチャンは少女の父親に指示を出すと、無駄のない動きで少女を診察した。「ただの風邪ですね。風邪薬を出しておきますから、安心して下さい。」「ありがとうございました、先生!」 その様子を奥の部屋から見ていたシエルは、翌日セバスチャンにある事を話した。「診療所の手伝いをしたい?」「僕には何も出来ないが、ここに置いて貰っている限り、何かお前の力になりたいんだ。」「わかりました。では、今日からわたしがあなたを厳しく指導致しますので、覚悟していて下さい。」 セバスチャンはそう言うと、シエルに微笑んだ。 脅しかと思ったが、セバスチャンはその日からシエルに厳しく指導した。「包帯の巻き方が遅いですよ!こんな状態では手当てに半日もかかってしまいますよ!」「うるさい、わかっている・・」「ならば、口答えするより手を動かしなさい!」 日が暮れた頃には、シエルはクタクタになっていた。「この程度で疲れるとは、情けないですね。」「うるさい・・」「あなたが言い出したんですよ?」 シエルとセバスチャンがそんな事を言い合っていると、空襲警報が鳴り響いた。「早く、防空壕へ!」「わかった!」 診療所は焼けなかったが、空襲で負傷した人々が次々と診療所に運ばれて来た。「シエル、向こうを頼みます。」「わかった!」 シエルが怪我人の手当てをしていると、微かに自分を呼ぶ声が聞こえて来たので振り向くと、そこに昨夜セバスチャンが診察した少女の姿がある事に気づいた。 彼女の上半身は、酷く焼けただれていた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月10日
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表紙素材は、このはな様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。シエルが両性具有です、苦手な方はご注意ください。―坊ちゃん、お目覚めの時間ですよ。誰かが、自分の耳元で優しく囁く声。目を開けると、そこには何の変哲もない自分の部屋。「いつまで寝ているんだい!」「すいません・・」「まったく、義姉さんは何だってこんな穀潰しを・・」ブツブツと小声で自分の陰口を叩く遠縁の伯母の声を背に受けながら、シエルは家から出て行った。―ほら、あれ・・―山田さんのところの・・学校へと向かう道すがら、通行人達が好奇の視線をシエルに送った。三年前、両親と双子の兄を交通事故で亡くし、シエルは、遠縁の親族の元に引き取られた。華族の令嬢として何不自由なく生きていたシエルは、今の家では使用人同然の生活を送っている。唯一の救いは、伯母の“お情け”で学校に通わせて貰っている事だった。学校といっても、シエルが入学した時に戦争が始まり、授業らしい授業は何もなかった。「鬼っ子!」「早くこの町から出て行け!」家でも学校でも、シエルは独りだった。少し青みがかったダークシルバーの髪、雪のように白い肌、紫と蒼い瞳を持ったシエルは、周囲から浮いていた。病弱な上に良く熱を出して寝込んでいたシエルは、勤労奉仕も満足に出来ない所為で同級生達から疎まれていた。(僕は、独りだ。)―坊ちゃん。風に乗って、懐かしい声が聞こえて来た。あれは、一体誰の声なのだろう。何処かで、聞いたことがあるような声。「おいそこ、手が止まっているぞ!」「す、すいません・・」「全く、この穀潰しが・・」縫製工場での勤務を終えたシエルは、額の汗を拭いながら、工場から家へと向かった。すると、上空で轟音が響き、空襲警報のサイレンが鳴り響いた。「敵機襲来、待避~!」人々の悲鳴や怒号、そして機銃掃射の銃声が響いた。防空壕に逃げ込もうとしたシエルだったが、そこは既に人がひしめいていて入れなかった。逃げ場をなくしたシエルは、近くの木の下に隠れた。その直後、バリバリという音と共に、銃弾の雨が容赦なく降り注いだ。シエルが両手で耳を塞ぎ、身体を丸めていると、誰かが自分を抱き寄せる感覚がした。―坊ちゃん。「あぁ、やっと見つけましたよ、坊っちゃん。」俯いていた顔をシエルが上げると、そこには一人の青年の姿があった。射干玉のような艶やかな黒髪、美しい紅茶色の瞳をした青年は、シエルを見て優しく微笑んだ。「セバスチャン・・」シエルは、そう言うと気を失った。「傷は浅いですね。銃弾が後数センチずれていたら、死んでいましたね。」シエルが目を開けると、そこは診療所と思しきベッドの上だった。「ん・・」「目が覚めましたか?」「ここは?」「遠縁の伯父が経営している診療所ですよ。あなたは怪我をしていたので、こちらに運びました。」「ありがとうございます。」シエルが青年に礼を言ってベッドから起き上がろうとすると、右足に鋭い痛みが走った。「まだ動いてはいけませんよ。あなたはあの時、右足を骨折していたのですよ。ここで暫く休んでいなさい。」青年はそう言うと、シエルに微笑んだ。―坊ちゃん。「あなた、お名前は?」「シエル・・シエル=ファントムハイヴ・・」「確か、山田旅館に引き取られた子ですね?わたしは、セバスチャン=ミカエリス。」その名を聞いた時、シエルの目から自然と涙が流れていた。(あぁ、やっと会えた・・)シエルが溢れ出る涙を必死に手の甲で拭おうとした時、青年がそっとレースのハンカチでシエルの涙を拭ってくれた。「泣かないで、坊っちゃん。こうしてまた、会えたのですから。」「あぁ、そうだな・・」シエルとセバスチャンは、暫く抱き合っていた。「セバスチャンは、どうしてこの町に?」「伯父が亡くなりましてね。遺言状にこの診療所をわたしに譲るとあったので、東京の病院を辞めてこの町に来たのですよ。」「そうか・・」「坊ちゃん・・もし良ければ、一緒に暮らしませんか?」「え・・」「今すぐ、という訳にはいきませんがね。今は、足の怪我を治して下さいね。」「わかった。」こうして、シエルとセバスチャンの、奇妙な同居生活が始まった。「へぇ、あの子がねぇ・・」「どうしますか、女将さん?」「別にいいんじゃないの、あの子が向こうで暮らしたいって言えば、勝手に暮らせばいいのよ。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月10日
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みのるという少年と正義との関係とは?オクタヴィア、何か企んでそうで怖いですね。
2024年05月10日
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リチャードとリチャードの母・カトリーヌの関係が明らかに。う~ん、親子というのは複雑なものですね。
2024年05月10日
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今回は、優雅な船旅・・とはいかなかったようですが、リチャードに因縁の相手がいるとは・・さて、どうなるのか。
2024年05月10日
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今回は正義の過去についてのお話。リチャードが、最後に正義に向けた言葉に萌えました。
2024年05月10日
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今回も正義とリチャードのコンビが良かったです。
2024年05月10日
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リチャードの家族に纏わる秘密。貴族というものは、ややこしいものなのですね。
2024年05月10日
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戦闘シーンが臨場感に溢れていて、なおかつ日常生活の面も上手く描かれていて面白かったです。
2024年05月10日
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香ばしくて美味しかったです。
2024年05月10日
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ウィルキンソン、グレープフルーツ味は爽やかで美味しかったです。
2024年05月10日
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ひたすら気持ち悪い本でした。
2024年05月09日
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南樺太で生まれそだった少年を襲った戦争。79年経った今も、戦争の悲劇は繰り返される。負の連鎖を止めるにはどうすればいいのか、本を閉じた後考えてしまいました。
2024年05月09日
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東京の下町を舞台に起こる連続バラバラ殺人事件。真相がわかるまで、面白すぎてページを捲る手が止まりませんでした。主人公・順と八木沢家の家政婦・ハナとのコンビが良かったです。
2024年05月09日
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表紙素材は、装丁カフェからお借りしました。「火宵の月」の二次創作小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。火月は、幸せな頃の夢を見ていた。“先生!” 自分よりも年上で、博識な有匡の事を、火月はいつしか“先生”と呼ぶようになった。 二人はいつも一緒に居た。“ねぇ先生、おとなになったら、けっこんしてくれる?”“あぁ、約束だ!”“やくそくね!” それは、子供の頃に交わした、他愛のない約束だった。 平和で穏やかな日々は、戦争によって突然終わりを告げた。 火月は、家族と共に安全な国外へと避難する事となった。“戦争になったら、会えなくなるの?” そう言って不安がる火月に、有匡はこんな言葉を掛けてくれた。“大丈夫、また会えるよ。” 有匡は、火月に紅玉の耳飾りを贈った。“ありがとう、大切にするね。” それから、二人は離れ離れになった。 有匡は、戦争で名将軍と謳われた父・有仁を亡くし、敵国の捕虜となった。 捕虜となった有匡を待っていたものは、生き地獄そのものだった。 毎日長時間、薄暗く狭い炭鉱で働かされ、粗末な食事を与えられる日々。 少しでも反抗しようものなら、暴力が待っていた。(生き抜いてやる、何としてでも!) 成長した有匡は猛勉強の末に士官学校に入学し、首席で卒業し、幹部候補生の一人となった。 血統と家柄を重んじるラグナス皇国軍の中で、戦災孤児の有匡が大佐となったのは、ごく稀な事だった。 周囲からは、憧憬と嫉妬、そして畏怖の目で見られた。 捕虜だった頃の忌まわしい記憶は、有匡の記憶を大きく傷つけた。 その所為か、有匡は余り人と関わらないようにしていた。 いつしか、彼は“人嫌いの策士”と噂されるようになった。 だがそんな彼にも、一番大切にしているものがあった。 それは―「起きろ。」「ん・・」 火月が目を開けると、そこには長年おもいつづけていた有匡の姿があった。「先生・・」「火月、久し振りだな。」「ここは、何処ですか?」「ここは、ラグナス皇国軍本部だ。お前には、暫くここでわたしと暮らして貰う。」「えっ・・」「何をそんなに驚く事がある?お前は敵の捕虜となったのだから、当然だろう?」「捕虜・・」 有匡の言葉を聞いた途端、火月の脳裏にあの音楽祭で起きた惨劇の光景がよみがえって来た。「あの人達は・・」「皆、死んだ。わたしが殺した。」「どうして・・」「戦争に理由などない。あるのは無限に続く悲しみと憎しみの連鎖だけだ。」 有匡はそう言うと、恐怖に震えている火月を見た。「安心しろ、お前だけは、わたしが絶対に守ってやる。」「本当に?」「あぁ、本当だ。」 火月を抱き締めたい衝動に駆られたが、有匡はそれを堪えて彼女の部屋から出て行った。「大佐、こちらにおられましたか。」 有匡が火月の部屋から出ると、彼を見つけ、一人の青年が彼の元へと駆け寄って来た。「アレクシス、どうした?何か問題でも起きたのか?」「いいえ、何も問題はありません。ただ・・」「その顔だと、また誰かがわたしの事を色々と噂をしているのだろう。全く、暇な連中だ。」 有匡はそう言って部下を見ると、彼が両腕に抱えている手紙の束に気づいた。「それは?」「あ~、これは・・」 部下の戸惑った様子を見た有匡は、彼から手紙の束を受け取った。 それは案の定、自分宛の恋文だった。「これはわたしが全て処分しておくから、お前は仕事に戻れ。」「は、はい!」 廊下を走ってゆく部下を見送ると、有匡は手紙の束を抱えながら執務室へと入った。 中は外と同じように寒かったので、有匡は手紙の束を暖炉にくべた後、執務机の上に置かれている未決済の書類の山を見て溜息を吐いた。「これでよし、と・・」 書類の山を半分片づけた有匡が溜息を吐いていると、執務室のドアが荒々しく何者かにノックされた。「アリマサ、居るか?」「そのようにノックしなくても、居りますよ。」 有匡がそう言って執務室で書類仕事をしていると、そこへ有匡の上司であるフランク将軍が入って来た。「これは何だ!?」「何だ、とは?」 フランク将軍が有匡に見せたのは、一枚の写真だった。 そこには、有匡が火月を横抱きにしている姿が映っていた。「この金髪の娘は、あの歌姫ではないか!一体この娘とお前はどんな関係があるのだ!?」「彼女とは、ただの幼馴染です。それ以上でも、それ以下でもありません。」「それで、今その娘は何処に居るのだ!?」「それは、たとえ閣下であってもお教えする事は出来ません。」「相変わらず、食えない奴だな!とにかく、我が国とエーリシアとの関係は良好とはいえん。いいか、おかしな真似をするなよ、いいな!」「わかりました。」(うるさいジジイだ・・) フランク将軍が執務室から去った後、有匡は溜息を吐いて書類仕事を再開した。 同じ頃、火月は部屋から抜け出し、ラグナス皇軍本部の内部を散策していた。(ここは・・何処?) 広大で複雑に入り組んだ建物の中を歩いている内に、火月は迷子になってしまった。 部屋に戻ろうにも、何処をどう行けばいいのかわからない。(どうしよう・・)「もし、そこのお嬢さん、何かお困りのようですね?」 困り果てた火月の前に現れたのは、銀髪紅眼の青年だった。「あの、部屋に戻りたいのですが、どう戻ればいいのかわからなくて・・」「では、わたしがあなたの部屋まで案内しましょう。」「え、いいんですか!?」「困っている淑女(レディ)を助けるのは、紳士の仕事ですから。」 そう言った青年は、優しく火月に微笑んだ。「火月、こんな所に居たのか!」「先、先生・・」 二人の背後から氷のような冷たい声が聞こえ、彼らが振り向くと、そこには眉間に皺を寄せた有匡が立っていた。「殿下、このような所にいらっしゃるとはお珍しい。」「いやいや、偶には現場に出てみないとわからない事があるからね。」 青年と有匡の間に、ピリピリとした空気が流れている事に火月は気づいた。(何だろう?)「こちらの淑女とは、知り合いかい?」「はい、わたしの大切な客人です。」 有匡は少し苛立った様子で火月を青年から引き離すかのように、自分の方へと抱き寄せた。「おや、こんな時間だ。アリマサ、またね。」「ええ・・」 青年は去り際、火月にウィンクした。「先生、ごめんなさい。」「ここが敵地だという事を忘れるな。」「はい。あの、さっき僕を助けてくれた人は、先生のお知り合いなのですか?」「知り合いではない。あの方は、この国の皇太子様だ。」「え、えぇ~!」「そんなに驚く事はないだろう。あの方はいつも“銀の塔”にいらっしゃるから・・」「“銀の塔”?」「王族のみが住む事を許された場所だ。火月、あの方には余り近づかぬ方がいい。」「え、どうして?」「どうしても、だ。今お前の身分を知っているのは、わたしと、軍の上層部の者だけだ。今、お前の国とこの国との関係が悪いのは、お前も知っているだろう?」「はい・・」「むやみに出歩くな。わたしが留守にしている間、お前に何かあったら・・」 有匡はそう言うと、火月を見つめた。「部屋まで送ろう。」「ありがとう、ございます・・」(何だったんだろう、“あれ”は・・) 部屋に送り届けてくれた際に有匡が一瞬見せた、自分に向けてくれた笑顔の意味を知りたくて、火月はその日の夜、一睡も出来なかった。「今日はいつになくご機嫌ですね、サーシャ様。何か良い事でもありましたか?」「あぁ。今日皇国軍の本部に行ったら、天使に会えたんだ。」「天使、でございますか?」「金色の髪に、わたしと同じ紅い瞳をした美しい娘だったよ。何処かで会ったような気がする。」 ラグナス皇国皇太子・アレクサンドルは、温かい浴槽にその身を沈めながら、自分を睨んでいた黒髪の美丈夫の事を思い出していた。 彼とは、士官学校時代に何度か会った事があったが、余り親しくなかった。「サーシャ様、どうかなさいましたか?」「いいや、少し疲れていてね。君達はもう下がっていいよ。」「わかりました・・」 執事官達が自室から出て行った後、アレクサンドルは浴室から出ると、素肌の上にガウンを羽織り、冷たい夜風が吹くバルコニーへと出た。(これから、楽しくなりそうだ・・) 翌朝、火月が寝返りを打ちながら大きな欠伸をしていると、誰かが部屋の扉を激しくノックした。(誰?) 火月が恐怖で固まっていると、誰かが部屋の前から遠ざかってゆく足音が聞こえた。「なぁ、本当に居るのか、大佐の愛人?」「居るに決まってるって!だって俺、見たんだ、この前・・」「お前達、そこで何をしている?」 火月の部屋の前で騒いでいる兵士達に有匡がそう声を掛けると、彼らはまるで蜘蛛の子を散らすかのようにその場から逃げていった。(全く、人の噂というものは恐ろしいな・・) 有匡がそんな事を思いながら溜息を吐いていると、部屋の中から大きな物音がした。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月09日
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チョコミントの味が薄かったです。物足りなかったかなぁ・・でも、後からチョコミントの味が口の中で広がって好きです。
2024年05月08日
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表紙素材は、装丁カフェからお借りしました。「魔道祖師」「薄桜鬼」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。一部残酷・暴力描写有りです、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。 遠く姑蘇から京までやって来た藩士達が頭を悩ませたのは、京の複雑な裏道だった。「一体何処がどう繋がっているのか、全くわからん!」「そうだな。」「それよりも江澄、少し腹が減ったな。」「お前、今どんな状況なのかわかっているのか!?」「どこだろうなぁ、ここ。」 魏嬰はそう言うと、傘をさしながら乾いた声で笑った。 二人は、いつの間にか他の藩士達とはぐれてしまい、雪降る京で迷子になってしまった。「あ~寒い。なぁ江澄、あたためてくれよ!」「やめろ、気色悪い!」「そこのお武家はん、こちらへどうぞ。」「は~い!」「おい、勝手に行くな!」 寒さと空腹に耐えかねた魏嬰は、近くの和菓子屋へと駆け込んだ。「お汁粉どうぞ。」「ありがとうございます。」「こんな寒い中、あんまり歩き回ったら風邪ひきますえ。」「いやぁ、今日京に来たばかりで、道が全然わからなくて・・」「そうどすか。お武家はんらは、どちらの・・」「姑蘇です。」「へぇ、姑蘇藩の方々ですか。京の道は細くて狭い道が多いさかい、迷うのは当然ですわ。」「お待たせしました。」「うわ~、美味しそう!」「どうぞ、熱いうちにお召し上がりください。」「いただきます!」 魏嬰がお汁粉を食べていると、そこへ眉間に皺を寄せた藍湛が店に入って来た。「ここに居たのか・・」「よぉ、お前も食べるのか!」「皆がお前達を探していた。早くここから出よう。」「え~、今来て食べているのに!そんな固い事を言うなよ~」「あら、あちらのお武家様は?」「俺達の連れです!」「まぁ、えらい別嬪さんやねぇ。さ、お汁粉をどうぞ。」「私は・・」 結局、藍湛は魏嬰達とお汁粉を食べた。「支払いは・・」「わたしが払う。」 魏嬰はそう言うと、藍湛に抱きついた。「恥知らず!」「何だよ~、そんなに怒る事ないじゃん~」「おいやめろ、藍の二の若様が困っていらっしゃるだろう!」 江澄は慌てて藍湛にしがみついて離れようとしない魏嬰を彼から引き剥がした。「すいません、後でこいつに厳しく言い聞かせておきますから!ほら、行くぞ!」「藍湛、またな~!」「君達を、私は迎えに来たのだが・・」「あ、そうだったな!」 色々とあったが、魏嬰達は藍湛と共に黒谷にある金戒光明寺へと辿り着いた。「遅かったね、忘機。」「兄上、申し訳ありません。この者達を迎えに行っておりました。」「そうだったのか。」 その夜、曦臣達姑蘇藩士達は、島原で有志達が開く宴に招かれた。「遠くからはるばるお越し下さっておおきに。ほな、これから親睦を深める為に、一杯どうぞ。」「かたじけない。」「それにしても、姑蘇藩の方々は皆様美男子でいらっしゃいますなぁ。」「そうですか。わたし達はそのような事は思っていないのですが・・」「まぁ、ご謙遜を。」 曦臣と八木源之丞がそんな事を話していると、隣の座敷から悲鳴が聞こえて来た。「一体、何があったんや!?」「長州のお客様が、太夫に絡んで・・酔って手がつけられへんのどす!」「そうか、では様子を見に行ってみよう。」「はい、兄上。」「お客様、危険です!」 曦臣と藍湛が隣の座敷へと向かうと、そこには割れた皿や猪口、膳などが転がり、その隅には泥酔した男と太夫が対峙していた。「何度言われても、うちは芸を売っても身は売りません。」「何を言うがか、男に愛想を振る舞うのがお前の仕事やろうが!」「おやおや、女子一人に手を上げようとするとは、武士の風上にも置けませんねぇ。」「何じゃ、貴様!?」 泥酔していた男がそう叫んで曦臣に殴りかかろうとしたが、その前に彼は曦臣に手刀を打たれ、気絶した。「お怪我はありませんか?」「へぇ、おおきに。」 そう言った太夫は、自分の命を救ってくれた曦臣に礼を言った。「凄いお人や、誰もかなわんかった人を一撃で・・」「それに、えらい男前やわぁ。」 島原での藍曦臣の武勇伝は、後世にわたって多くの人々により語り継がれる事になった。 上洛して一月後、藍湛と曦臣は帝に謁見した。―なんとまぁ・・―お二人共美しいこと・・ 二人は帝から、緋の御衣を下賜された。「藍湛、主上はどんなお方だったんだ?」「それを君が知る必要は、ない。」「何だよ~、少しは教えてくれたっていいじゃねぇか。」「君が居ると気が散る。」「もぉ~、冷たいなぁ・・」 いつものように藍湛が中庭で剣の鍛錬をしていると、そこへ魏嬰がやって来て、話し掛けて来た。 彼を無視して剣の鍛錬をしてきた藍湛だったが、彼の所為で集中できなかった。「どうしたんだい忘機、少しぼーっとして・・」「中々眠れなかったものですから。」「そうかい。余り魏公子の事は嫌いにならないでくれ。」「そう言われましても、わたしは彼の事がわからないのです。何故、彼が私にまとわりつくのか・・」「わからないのなら、わかり合えるまでお互いの事を知る努力をすればいい。」「兄上・・」「お前は昔から、他人と接するのが下手だからね。だから、魏公子と仲良くして欲しいとわたしは思っているんだよ。」「わかりました。」 兄からそう言われたが、藍湛は魏嬰とどう接すればいいのかわからなかった。「なぁ江澄、俺藍の二の若様に嫌われたのかなぁ?」「そんなの、京に来る前からだろうが。」 江澄は弓の手入れをしながら、魏嬰の愚痴を聞き流していた。「俺、あいつに嫌われるような事をしたかなぁ?」「今まで藍の二の若様に、お前はしつこく付きまとっていただろう!」「あ、そうだったか?」「本当に、お前はもう・・」 義兄の言葉を聞いた江澄は、そう言って頭を抱えた。「おい魏嬰、お前本当に覚えていないのか!?」「う~ん、思い当たる節がないなぁ。それよりも、島原で見た太夫さん達綺麗だったよなぁ。“東男に京女”とは、良く言ったもんだよなぁ。」「あぁ。」「あ、そうだ今度二人で島原に行かないか?」「俺達のような平藩士が簡単に行けるような場所じゃないだろう。」「え~」「え~、じゃないだろう!」 そんな事を二人が話していると、丁度そこへ藍湛が通りかかった。「あ、藍湛、お前も今度島原に行くか?お前だったら、すぐに可愛い子が寄ってくるぞ!」「行かない。」「行こうぜ、絶対楽しいぞ!」「行かない。」「お前、いい加減にしないか!」 江澄は慌てて止めようとしたが、無駄だった。「何だぁ、蘭の二の若様は俺に興味がないのか?あ、だったら俺にしないか?いつでも相手にしてやるぜ?」「この、恥知らず!」 藍湛は顔を赤くしながらそう叫ぶと、そのまま去っていった。「あ~あ、また嫌われちゃったよ。」「嫌われるような事を言うからだ!」「すいまへん、誰か居りませんか~?」 江澄と魏嬰がそんな事を言い合っていると、正門の方から若い女の声がした。 二人が正門の方を見ると、そこには一人の女が立っていた。 髪は割れしのぶに結われており、着物は薄紅色の麻の葉文様のものを着ていた。「あの、何かご用でしょうか?」「うちは、島原の揚羽屋の女中で、きぬと申します。」 きぬは、島原の揚羽屋からの使いで、先日太夫の命を救って貰ったお礼として、藍曦臣と藍忘機の二人を今夜揚羽屋に招待してもてなしたいのだという。「申し訳ありませんが、只今兄は外出中でして、いつ戻ってくるのかわかりません・・」「そうどすか・・」「あれ、あんた昨夜揚羽屋で見た・・」「申し訳ないのだが、そちらのご厚意に甘える訳にはいきません・・」「しかし・・」「え、なになにどうしたの?」 魏嬰はきぬから揚羽屋の件を知り、揚羽屋からの招待を断ろうとする藍湛を押し退け、きぬにこう言った。「喜んでご招待をお受けします!」「お前、何言って・・」「だって、こんな可愛い子ちゃんがわざわざ招待してくれているんだから、断るなんてもったいないだろ!」「わたしは・・」「丁度島原に行きたかった所だから、願ったりかなったりだ!」「結局それかよ!」 その日の夜、魏嬰達は揚羽屋へと向かった。「ようこそいらっしゃいました。さぁ、“楓の間”へどうぞ。」 魏嬰達は店主に案内され、太夫が待つ座敷へと向かった。 そこには、天女のように美しい太夫の姿があった。「ようこそ、いらっしゃいました。どうぞ、ごゆるりとお過ごし下さいませ。」 それから魏嬰達は、美味い酒と料理に舌鼓を打った。「いやぁ~、美人に囲まれて飲む酒は美味いなぁ。」 すっかり上機嫌となった魏嬰は、ちらりと自分の隣に座っている藍湛の方を見ると、彼は静かに猪口の中の酒を飲み干していた。「お~い藍湛、大丈夫か?」「うん。」 そう言った藍湛は、いつの間にか左右逆の足袋を履いていた。(あれ、何でこいつ足袋を・・)「あら、どないしはりました?」「いやぁ、それが・・」「藍の二の若様、大丈夫なのか?もう、帰らせた方が・・」「触るな。」「え?」 突然、藍湛が魏嬰と江澄との間に割って入って来た。「すいません、何処か休める所ないですか?」「それでしたら、隣のお部屋へどうぞ。」「ありがとうございます。」 女中に案内され、魏嬰は藍湛と共に奥の部屋へと向かった。「今、お水を持って参ります。」「ありがとうございます。」 部屋から女中が居なくなり、藍湛は魏嬰に抱きついた。「おい、急にどうしたんだ?」「わたしのだ・・」「は?」「わたしの・・」 そう呟いた藍湛は、魏嬰に抱き着いたまま眠ってしまった。(あ~あ、困ったな・・)「おい、大丈夫か?」「江澄、済まないが藍家に文を出してくれないか?」「わかった。」「俺はここで藍湛の世話をしているよ。」(そうは言ってみたものの、どうすればいいのか・・) このまま藍湛を部屋に寝かせたまま黒谷へと戻ろう―そう思った魏嬰が藍湛を布団に寝かせようとしたが、彼は自分にしがみついたまま離れようとしなかった。「おいおい、どうしたんだ?」「傍に居て。」「もう、しょうがないなぁ。」 その日の夜、魏嬰は一晩中藍湛と共に部屋で休んだ。「そうか。わざわざ伝えに来てくれてありがとう。」「いえ・・」「忘機は昔から何を考えているのかわからないが、どうやらあの子は魏公子の事が気になっているようだね。」「は、はぁ・・」「まぁ、あの子が恋愛に対して奥手だから、温かい目で見守ってやってくれないか?」「えぇ・・」(一体、何をしたんだ、魏無羨!) 江澄はそう思いながら、胃がキリキリと痛むのを感じた。「兄上、只今帰りました。」「忘機、魏公子は?」「彼は、自室で休んでおります。」「そうか。」「兄上、わたしも部屋で休みます。」「そうしなさい。」「お休みなさい。」 藍湛は兄に一礼した後、自室に入って休んだ。「殿、上様から文が届きました。」「そうか。ありがとう、そこに置いておいてくれ。」「はい。」 曦臣は将軍の文に目を通すと、深い溜息を吐いた。(どうやら、ここに来たのは間違いだったようだね。) 京では、尊王攘夷を声高に叫ぶ岐山藩士の過激派による、幕府要人暗殺などが相次いでいた。 この状況を変える為、江戸から清河八郎ら率いる浪士組が上洛して来たという知らせが曦臣の耳に入ったのは、年が明けて二月経った頃だった。「なぁ、あいつらは?」「さぁ・・何でも江戸からやって来た浪士組だとか。」「へぇ、面白そうだな。」 魏嬰はそう言うと、大広間の様子を見に行った。 するとそこには、紋付羽織姿の男達が真剣な表情を浮かべながら何かを話していた。 その中で一際目立っていたのは、黒髪に紫色の瞳をした男だった。 雪のように白い肌をしたその男は、まるで役者絵から抜き出て来たかのように美しかった。(へぇ、ああいう綺麗な男が居るんだなぁ。) そんな事を思いながら魏嬰が男を見ていると、彼の視線を感じた男がゆっくりと魏嬰が居る方を振り向いたが、そこに彼の姿はなかった。「どうした、トシ?」「いや、何でもねぇ。」(はぁ、後少しで気づかれる所だった。)「魏嬰、そこで何をしている?」「いや、ちょっと大広間の様子が気になって・・」「そんなの、気にしなくていい。」 そう言った藍湛は、何処か拗ねたような表情を浮かべていた。(え、何だその顔?)「おい魏嬰、お前島原で藍の二の若様と一晩過ごしたって本当か?」「何処から、そんな話を・・」「いや、みんな噂しているぞ。」「そうなのか?」「それで、どうだったんだ?」「どうだったって?」「まぁ、後で聞くから!」(何だあいつ、変だったな・・)「魏嬰。」「え、藍湛、まだ居たのか?」「私は、島原で何かをしたのか?」「いや、何も・・」「そうか。」(一体、あいつは 何をしているんだ?) 揚羽屋では、あの太夫が一人の男と向かい合って座っていた。「うちに何かご用どすか?」「藍家の若様方に助けられたんは、本当か?」「へぇ。」「そうか。これから、藍家の若様方を“利用”するのや、わかったな?」「そないな事・・」「出来へんとは言わせへんぞ。お前には色々と“借り”があるんやからなぁ。」 男はそう言うと、意地の悪い笑みを口元に浮かべた。「お前だけが頼りなんや、東雲。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月08日
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表紙素材は、装丁カフェからお借りしました。「魔道祖師」「薄桜鬼」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。一部残酷・暴力描写有りです、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。 サラサラと、桜が風に舞う音が聞こえ、藍忘機はそっと襖を開けた。 上着を羽織り、庭へと出みると、桜の木の近くに植えられている白木蓮の花が満開になっていた。 “魏嬰、この木が大きく育ったら、ここで花見をしよう。” “わかった。” あの日、そんな約束をしていた愛しい伴侶は、もう鬼籍に入ってしまった。 彼だけではなく、かつて熱い志を持ち、共に学び夢を語り合った友達は、皆自分だけを置いて、常世へと旅立ってしまった。 “藍湛!” 白い花弁の向こうに、愛しい伴侶の笑顔が見えたような気がした。 「魏嬰、会いに来てくれたのか?」 “当たり前だろ!” 「やっと・・」 白い花弁に藍忘機は覆われ、やがてその姿は見えなくなっていった。 「含光君、お食事をお持ち致しました。」 藍景儀が師の部屋を訪れると、そこの主は居らず、彼は白木蓮の根元に倒れていた。 「そんな・・」 景儀が師の死を嘆き悲しんでいると、彼の頬を誰かが優しく撫でられたような気がした。 ふと景儀が顔を上げると、そこには自分に笑顔を浮かべている魏無羨の姿があった。 「魏先輩・・」 彼の笑顔を見て、景儀は全てを悟った。 「そうか、忘機が・・」 「とても、安らかなお顔をされておりました。」 「きっと、魏公子が迎えに来てくれたのだろうね。そんなに悲しむ事はない、いつかわたし達も、黄泉へ旅立つ日が来るのだから。」 藍曦臣は、そう言うと青空を仰いだ。 「これは・・」 「これは、忘機の日記だよ。」 藍忘機の四十九日の法要が終わり、景儀と曦臣が彼の遺品を整理していると、桐箱の中に三十冊もの日記帳を見つけた。 「彼は、幼い頃から日記をつけていたよ。」 「そうですか・・」 「一番古いものは、忘機が六歳の頃に書いた物だね。」 日記を曦臣が頁を捲ると、そこから微かに白檀の香りがした。 そこには、ただ一行だけ書かれてあった。 “母上が死んだ。”「ああ、何という事・・」「お子様方はまだ幼いというのに・・」 母が長患いの末にこの世から去ったのは、藍湛が六歳の時だった。「若様、早く中に入りませんと、お風邪を召されますよ。」「母上がここへ帰って来るのを待ちます。」「いけません・・」 乳母が慌てて藍湛を屋敷の中へ入れようとしたが、彼は頑として正門前に座り込み、その場から動こうとしなかった。 その日から藍湛は、毎日屋敷の正門前で母の帰りを待ち続けるようになった。「藍湛、こんな所に居ては風邪をひいてしまうよ。」「兄上、母上は・・」「母上はもうわたし達の元へ帰られる事はない。けれども、母上の魂は常にわたし達の傍にいらっしゃる。」「うわ~ん、兄上!」「うんうん、良く我慢したね。」 泣きじゃくる弟の小さな背を、藍渙は彼が泣き止むまで優しく撫で続けた。「そんな事があったのですね?」「あの子はまだ六歳・・母の温もりが恋しい年頃だった。さてと、次の頁を捲ろうか。」「はい・・」 次の頁は、最初の頁よりも文字数が多かった。「おや珍しい。あの子は無口で何を考えているのかわからなかったが、日記には色々と書いていたようだね。」「あ、何か落ちましたよ。」 景儀は、そう言って床に落ちた紙を拾い上げた。 そこには、藍湛の―十代の頃の彼が、美しく描かれた墨絵だった。「これは、魏先輩が・・」「まだ、持っていたんだね。」 藍渙は目を閉じ、藍湛と魏嬰が初めて会った時の事を思い出していた。 姑蘇藩は、初代藩主の御世から、将軍家に忠誠を尽くして来た。 そしてそれは、“家訓”として代々藩主に伝えられ、いつしか姑蘇藩は武芸に秀でた藩となった。 姑蘇藩は、藩士達の教育に力を注いだ。“雲深不知処”と呼ばれる藩校では、藩士の子供達が数え六つの頃から通い、そこでは毎日、“什の掟”を叩き込まれていた。一.年長者の言ふことに背いてはなりませぬ一.年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ一.卑怯な振舞をしてはなりませぬ一.弱い者いじめをしてはなりませぬ一.戸外で夫人と言葉を交へてはなりませぬ ならぬことは、ならぬものです 幼き頃からこの掟を叩きこまれている子供達は、性別、年齢問わず団結し、年長者は年少者を守り、年少者は年長者を敬った。 やがて“雲深不知処”の教育は他藩にも知られる事となり、姑蘇藩士の子弟のみならず他藩の子供達が“留学”に来るようになった。「急に賑やかになりましたね、兄上。」「あぁ。今年も他藩の子供達が来たようだね。忘機、くれぐれも彼らと争いを起こさないように。」「はい・・」 藍湛は兄からそう釘を刺され、彼は平穏無事な生活を送ろうと、己の胸に誓ったのだった。 しかし、彼は一人の少年と運命の出逢いを果たした事により、その後の人生が大きく変わる事になった。「あ、お前もしかして藍の二の若様か?俺は・・」「魏無羨、お前授業を抜け出してこんな所に・・」「じゃ、またな!」 その少年―魏無羨は、赤い髪紐を揺らしながら、まるで嵐のように藍湛の前から去っていった。「あの子は?」「申し訳ございません、あいつは俺の義兄で魏嬰と申します。俺は・・」「雲夢江藩の江楓眠様のご嫡男、江澄様ですね。」「た、沢蕪君!」「そんなに緊張しないでくれ。わたしは偉くも何ともないのだから。」「は・・」「それにしても、君の連れは不思議な子だね。忘機の心をすぐに掴んでしまう。」「あいつは、問題児です。いつも父上や母上を困らせてばかりで・・」「彼と忘機は、良い友になりそうだな。」「さぁ、それはどうだか・・」 江澄は、そう言って溜息を吐いた。 魏嬰は、無口な藍湛とは対照的に、良く喋った。「なぁ藍湛、いつも小難しい顔をして何の本を読んでいるんだ?」「君には関係ない。」「そうか。」 江澄は、藍湛に執拗につきまとう魏嬰の姿を見た途端、慌てて藍湛の元から引き離した。「お前、いい加減にしろ!来て早々問題を起こす気か!?」「そんなに目くじら立てるなよ、江澄。俺はただ、藍湛と仲良くしたいだけだよ。」「仲良くしたいだと?藍の二の若様はお前を迷惑がっているように見えるがな。とにかく、余り問題を起こすなよ!」「はいはい、わかったよ。」 自分の忠告を魏嬰が素直に聞く筈がないという事を、江澄はその身をもって知っていた。案の定、魏嬰は“雲深不知処”に入校してから色々と問題を起こした。その度に江楓眠が“雲深不知処”を訪れては、義理の息子に対する己の躾の足りなさを藍啓仁に詫びたものだった。だが当の本人はどこ吹く風で、自由気ままに過ごしていたのだった。「全く、何だってあいつは問題ばかり・・」「いやぁ、この前の魏先輩の太刀さばきは凄かったですね。」」 そう言って扇子で口元を隠しながらひょっこりと江澄の前に姿を現したのは、魏嬰の悪友・聶懐桑だった。「その口ぶり、何か知っているようだな?」「これ、わたしから聞いたって、魏先輩には言わないでくださいよ?」 懐桑は軽く咳払いすると、数日前に起きた事を話した。 それは、魏嬰達が入校して数日後の子だった。 その日、魏嬰達は姑蘇の城下町・彩衣鎮を散策していた。「へぇ、美味い物あるんだなぁ。ひとつ貰おうか?」「魏先輩、そんなに食べるんですか?」「だって、藩校の食事、みんな薄味で食えたもんじゃないぜ!」「まぁ、確かに・・」「それよりも、藍湛はどうして俺の事を嫌うんだろうなぁ?俺は仲良くしたいのになぁ。」「魏先輩がしつこいからじゃないですか?あんまり強く押すよりも、一旦引いた方がいいですよ。」「そうか~?」 茶屋の軒先で魏嬰達が団子を食べながらそんな事を話していると、突然向こうから甲高い女の悲鳴が聞こえて来た。「何でしょう、今のは?」「行くぞ!」 魏嬰達が、悲鳴が聞こえて来た方へと駆け付けると、そこには数人の男達が一人の少女を取り囲んでいた。「お前ら、一人相手に弱い者いじめか?姑蘇藩士の名が廃るぜ!」「うるせぇ、すっこんでろ餓鬼」!」 激昂した男の一人が、そう叫ぶと魏嬰に持っていた棍棒で殴りかかろうとしたが、魏嬰はそれをひょいと躱した。「俺は、弱い者いじめをする奴が大嫌いなんだよ!」 魏嬰はそう叫ぶと、男の手から棍棒を奪い取り、怒号を上げる男達と戦い始めた。 五対一という劣勢だというのに、魏嬰は男達の攻撃を難なく躱し、棍棒一本で彼らに立ち向かっていった。「凄ぇ・・」「魏先輩、頑張れ~!」「お前ら、突っ立ってないで力を貸せ!」「おう!」 それから、魏嬰達の大立ち回りが始まり、野次馬が次々とその騒ぎを聞きつけてやって来た。「お前ら、一体何をやっている!」 運悪く、騒ぎを聞きつけた奉行所の役人達が魏嬰達の元へ駆けつけ、“雲深不知処”にその騒ぎが届く事になった。「全く、お前達はロクな事をしないな!」「藍先生、お言葉ですが俺達はゴロツキに絡まれていた娘を助けただけです!」「そうですよ、あの娘さん、わたし達が助けなければ今頃どうなっていたか・・」 必死に魏嬰達が藍啓仁に対して抗議の声を上げたが、魏嬰達は七日間の謹慎処分を受けた。「納得いかねぇ、悪いのは向こうなのに!」「魏先輩、さっさと罰則の書き取りを済ませましょうよ。」「あ~、腹立つ!」 藍啓仁が魏嬰達に課した罰則は、“姑蘇藩什の掟を千回書き取りする事”だった。「何だって、こんな事・・」「魏先輩・・」「君の自業自得だ。少しは慎みを身につけなさい。」」「何だよ~、慰めてくれないのか?」 魏嬰はそう言うと、様子を見に来た藍湛に抱きついた。「恥知らず!」「魏先輩、まぁた藍の二の若様にちょっかい出してるよ。」「若様も気の毒に。」「でも若様の方もまんざらではない様子でしたよ?」 懐桑がそんな事を言いながら書き取りをしていると、廊下の方から誰かが言い争っているかのような声が聞こえて来た。「何故、我が藩が京都守護職を・・」「初代藩主の御世から、我が藩は将軍家に仕える身なのだ。」「ですが叔父上・・」「これはもう、決まった事だ。」「そんな・・」 雲夢の夏は蒸し暑いが、姑蘇の夏はうだるような暑さだった。「あ~、暑い!」 魏嬰は夏の暑さを凌ぐ為、彩衣鎮の郊外にある川で水浴びをしていた。「はぁ~、やっぱり暑い日には水浴びが一番だよな~」 魏嬰がそんな事を言いながら川の中を泳いでいると、そこへ藍湛がやって来た。 彼は下帯一枚の姿の魏嬰を見ると、眉間に皺を寄せた。「あ、藍湛!」「はしたない!」「何だよ、そんなに目くじら立てなくてもいいだろ?あ、お前も入るか?」「わたしはいい。」「遠慮するなって!同じ男同士、恥ずかしがらなくてもいいだろう?」「止めろ!」 藍湛は魏嬰に半ば強引に川の中へと引き摺り込まれ、着物と袴が濡れてしまったので、思わず魏嬰を睨みつけた。「君の所為でびしょ濡れだ!」「はは、水も滴るいい男じゃないか!」「うるさい!」 川での出来事以来、藍湛と魏嬰の関係は良くなるどころか、悪化してしまった。「お前、また何をやらかしたんだ?」「ちょっと強引に水浴びに誘ったのに、あいつ着物が汚れたから怒って来てさ・・」「当然だろう!お前、京に着くまでおかしな事をするなよ!」「はいはい、わかっているよ!」 姑蘇藩主・藍曦臣が京都守護職に就任し、藩士らを引き連れて上洛したのは、夏が過ぎ、厳しい冬の事だった。「ひぃ、寒い!」「うるさい、黙って歩け!」「こんなに寒いのに、何であいつは涼しい顔をしているんだ?」「うるさい!」「寒いから黙っていられないじゃないか!」「全く、この先が思いやられる・・」「どうしたんだい忘機、少し嬉しそうだね?」「いいえ、何でもありません。」 だが、この時藍湛の心の中では小さな漣が起きていたのだった。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月08日
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ヒロイン・エレナは強靭な精神の持ち主。麻薬王のもとから逃れ、傭兵・ガレンとともに麻薬王から追われる身になるが…アイリス・ジョハンセンが描くタフなヒロインには共感が持てるし、彼女の作品はまるで一本の映画を観ているかのようにスリリングな展開が続いて面白いです。
2024年05月07日
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母がスーパーで買って来た、カスタード味の鯛焼き。カスタードが少し苦くて微妙な味でした。
2024年05月06日
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近未来のNYを舞台にした人気シリーズ最新作。今回は欲望渦巻くショウビズ界が舞台。敵が強かでイヴ負けるな!と、思いながら読み進めていましたが、イヴとクロークのロマンスシーンが今回は沢山あって良かったです。後味が悪い結末が多いこのシリーズですが、主人公夫婦のロマンスシーンがあるので安心して読めます。続編が楽しみです。
2024年05月06日
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・礼拝堂のシーン、いい!・青寮の寮長の寮弟の寮弟になって忙しいシェル。・セバスチャン嫌味炸裂!・「まるで囚人だ」…確かに、寄宿学校の掟は独特だものね。・寮対抗クリケット大会、これから楽しみ!・バイオレット先輩w・シェル、疲れるよねぇ、演技。・デリックの名を出したP4の反応…あっ(察し)・まだ言えないよー、言えないよー・この寄宿学校おかしい…・エドワード、鋭い!・アガレス先生w・図書館でのシーン、萌える!・セバスチャンが蹴って紫寮へランタンを入れるシーン、素敵!
2024年05月05日
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結構魚介の旨味がきいていて美味しかったです。
2024年05月05日
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「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「姫様、どちらにおられますか~?」「姫様~!」海底の、人魚達が住む王国では、金髪紅眼の人魚達が何やら慌てふためいた様子で“誰か”を捜していた。その“誰か”とは、この王国の第一王女・火月だった。この日18歳の誕生日を迎える彼女は、結婚相手を見つめる為の宴に出席する事になっていたが、火月は結婚するのが嫌で、宴が開かれている王宮から抜け出し、“ある場所”へと向かった。そこは、彼女が見つけた、秘密の場所だった。難破船から海の底へと沈んでいった、様々な人間の物が、そこには集められていた。食器類、装身具類、そして地球儀・・火月が初めて目にする物ばかりだった。(いつか、人間の世界で暮らしてみたいな・・)そんな叶わぬ願いを抱えながら、火月は紅玉と真珠のティアラを頭に被った。「うわぁ、綺麗・・」火月の金髪に、そのティアラはよく映えていた。「火月、またここに居たの!?」「禍蛇・・」洞窟の入口の方から声がしたので火月が振り向くと、そこには黒髪の人魚―火月の従妹・禍蛇が居た。禍蛇は、そっと火月の手を取り、洞窟から出て行った。「ねぇ火月、あの噂、知ってる?」「噂?」「火月がよく行っている洞窟の近くに、黒魔術を使う呪術師が居るんだって。何でもそいつ、どんな願いでも叶えてくれるんだって。」「本当!?」「あ、あくまで噂だから!」火月が興味深そうな様子で自分の話を聞いている事に気づいた禍蛇は、慌ててその話をやめた。「火月、遅かったな。」「申し訳ありません!」「まぁいい、宴を始めるとしよう。」宴の後、火月は自室に入り、頭に被っていたティアラを外した。「火月、今いい?」「うん・・」「ねぇ、そのティアラ、あの洞窟で見つけたの?」「似合う?」「うん、良く似合っているよ。それよりも火月、もうあの洞窟には行かない方がいいよ。」「どうして?」「どうしてって言われてもね・・」禍蛇はそう言った後、溜息を吐いた。彼女の脳裏に、祖父と交わした会話がよみがえった。『禍蛇、火月はまたあの洞窟に行ったのか?』『はい・・』『あそこには、魔物が棲んでいる。火月には、あそこへ近づけさせるな。』『うん、わかった。』禍蛇は、火月に祖父との会話の事を話そうとしたが、やめた。「ねぇ、何か聞こえない?」「え?」「ほら、上の方から・・僕、行って見て来る!」「火月、待って!」自室から出て行った火月を、慌てて禍蛇は追い掛けた。火月が向かったのは、海上だった。そっと水面から顔を出した彼女は、空に浮かぶ綺麗な花火を見つめた。「綺麗・・」「もぉ~、早く戻ろうよぉ~!」「待って、もう少しだけ・・」火月がそう言って暫く花火を見つめていると、船の方から何かが落ちたかのような音がした。「なに、今の!?」「行ってみよう!」火月と禍蛇が船の方へと向かうと、一人の男が気絶している事に気づき、彼女達は男を安全な場所へと移動させた。「ねぇ、死んでいるの?」「ううん、気を失っているみたい。あ、もしかして・・」火月は、人間が溺れた時に助ける方法を突然思い出し、男の唇に己のそれを重ねた。「か、火月!?」火月が息を吹き込むと、彼は水を吐き出し、激しく咳込んだ。「火月、早く海に戻らないと!」「わ、わかった・・」男は低く呻くと、海の底へと潜ってゆく“何か”を見つめた。それを追い掛けようとした彼は、波打ち際で光る“何か”を見つけた。(何だ?)それは、紅玉(ルビー)の耳飾りだった。「殿下、ご無事ですか~!?」「誰か、担架を持って来い!」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月04日
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表紙素材は、装丁カフェからお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。・捏造設定あり、年齢操作あり、死ネタありです。こういった設定が苦手な方はご注意ください。―熱い。四方を炎に囲まれ、荒い呼吸を幾度も繰り返し、刀を握った。遠くで、誰かが自分を呼ぶ声がした。だがそれを無視して、刀を振るい、炎の中へと駆け出した。熱い。熱い―(暑い!)肌に纏わりつくような暑さに耐え切れず、シエルはベッドから起き上がった。「おはよう、シエル。」「おはようございます。」シエルが部屋から出ると、厨房ではシエルの養父・繁が朝食を作っていた。「手伝います。」「ありがとう。それにしても、暑いなぁ。」「そうですね。」両親を交通事故で亡くし、児童養護施設で暮らしていたシエルを、繁が引き取り、“家族”となった。繁は、那覇市内で居酒屋を経営していた。「おはよう、あ、シエルもう起きていたのか?」「おはようございます。」繁の長男・豊は、欠伸をしながら冷蔵庫から麦茶が入ったボトルを取り出すと、それをグラスの中に注いだ。「今日も暑いなぁ~」「そうですね。」「なぁシエル、今日は朝練じゃなかったのか?」「あ、そうだった!」シエルが店内にある時計を見ると、それは7時を指していた。「行って来ます!」「シエル、弁当忘れんなよ。」豊から弁当を受け取り、シエルは店の裏口から外に出て、中学校へと走っていった。(こっちの方が近道か・・)国際通りは普段観光客で賑わっているが、朝のこの時間帯は静かだった。国際通りを抜けた花壇の近くに人だかりが出来ていたので、何だろうと思いながら花壇の方を見ると、そこではチェロを弾いている一人の青年の姿があった。その音色は、優しくも哀愁を何処か感じさせるかのようなものだった。シエルが目を閉じてその音色を聞いていると、脳裏にある映像が浮かんだ。シエルは、何処か古びた洋館の仲を走っていた。そして、シエルはある扉の前で立ち止まり、そして―「ダメだ!」我に返ったシエルは、自分が花壇の中に突っ込んでしまっている事に気づき、慌ててその場から立ち去った。「遅かったな、シエル。」「すいません・・」何とかギリギリの時間で朝練に間に合ったシエルは、剣道部の朝練を終えた後、繁が作ってくれた弁当を教室で食べた。「シエル、今日は何だか調子悪そうだね?」「そうかなぁ。」「お~いシエル、病院に行く時間だぞ!」「わかった、すぐ行く!」「明日の大会、遅れるなよ!」クラスメイトに手を振ったシエルは、豊が運転するバイクで病院へと向かった。「それで、“あの子”は、まだ見つからないのかい?」「申し訳ありません。」「まぁ、すぐに見つかるといいけどね。」流れるように美しい銀髪の隙間から黄緑色の瞳を煌めかせながら、男は一枚の写真を見つめていた。(もうすぐ、“弟”に会えるよ。)病院から帰宅したシエルは、剣道の道着を学校に忘れてしまった事に気づいた。「豊さん、僕学校に行って来ます!」「俺が送っていくよ。」「すぐに帰って来ますから!」「気を付けるんだぞ!」シエルが家を飛び出した後、彼のクラスメイトが店に入って来た。「すいません、シエル君の道着を届けに来ました。」「そうか、わざわざ済まないな。」中学校の校門を越えて学校の中に入ったシエルは、一人の青年とぶつかった。「漸く会えましたね、“坊ちゃん”。」「あなたは、誰・・?」シエルがその青年を見つめた時、獣のような唸り声が空気を震わせた。「ひぃ!」シエルが背後を振り向くと、そこには化物が―異形の化物が立っていた。「“坊ちゃん”、こちらへ。」「え、ちょっと、何・・」青年は有無を言わさずシエルを抱き上げると、校舎の中へと入っていった。理科室に入った青年は、シエルを床に寝かせた。「あれは、一体・・」「翼手、人を喰らい、その血を吸う化物です。」青年はそう言うと、チェロケースから一振りの日本刀を取り出し、己の掌にその刃先を食い込ませた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月03日
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王様可哀想だなあ。なんか、ご都合主義っぽいなあ…うーん、わたしには合わなかったのかしら。
2024年05月02日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。総司と歳三は、港町から出て、順調に王都への旅を進めていった。(このまま、何事もなく王都に着けばいいが・・)そんな事を思いながら歳三が総司と共に街道を歩いていると、風に乗って遠くから賑やかな音楽と人の笑い声が聞こえて来た。「町の方から聞こえて来ますね。」「行ってみるか。」二人が町へと向かうと、町の広場で旅芸人達が芸を披露していた。(あの人達、確か前に会ったような気が・・)総司がそう思いながら広場の舞台の方を見ていると、舞台に一人の少女が現れた。(やっぱり、あの時の・・)「どうした、総司?」旅芸人達の後を総司が追い掛ける姿を見て、歳三も慌てて彼女の後を追った。「待って、待って下さい!」「あなたは、わたしを助けてくれた・・」ユニコーン一座の団員・キキは、そう言って総司を見た。「まぁ、貴族のお嬢様がわたし達に何の用かしら?」キキと総司の間に割って入ったのは、キキの保護者代わりの団員・エミリーだった。「突然で申し訳ないのだけれど、皆さんと一緒に働かせて頂けないかしら?」「え・・」「おいおい、一体何を言い出すんだい、お嬢さん?」そう言って総司の前に立ったのは、赤毛の大男だった。「俺は、団長のユリウス。何やら、訳有りのようだな?」「はい、実は・・」「まぁ、こんなところで立ち話も何だから、俺達が泊まっている宿へ行こう。そっちの兄さんも。」「あぁ。」ユリウス達が泊まっている宿は、運河沿いにあった。「さぁ、狭い部屋だが、どうぞ入ってくれ。」ユリウス達が泊まっている部屋は、最上階にある大きな部屋だった。「うちは大人数だから、少し値は張るがこの宿に泊まっている間は宿代を稼ぐ為に宿屋の仕事を手伝ってんのさ。」ユリウスにコーヒーを勧められ、それを一口飲んだ後、総司は自分達が抱える事情を彼らに話した。「そんな・・あのお優しい奥様が・・」「あなたも苦労したのね。」ユリウスの母・クララは、そう言った後総司の手を握った。「まぁ、俺達も色々と事情を抱えているからな。人手不足だし、雇ってやろう。」「ありがとうございます!」「ま、そっちの兄さんは用心棒として雇うにしては問題ないが、そちらのお嬢さん・・総司さんは、何が出来る?」「剣術と馬術、弓術と刺繍が出来ます!」「そうか。じゃぁ、総司さんは、暫くお袋と一座の衣装係をやって貰おう。」「はい、よろしくお願い致します!」こうして、歳三と総司は、ユニコーン一座の団員となった。「あ~、今日はツイているぜ!あんた達が幸運の女神様を連れて来てくれたのかもしれねぇな!」町での興行を終え、船で次の町へと移動しながら、ユリウスは上機嫌な様子でそう言って笑った。「総司さんは、何でも出来るのねぇ。」「わたしを助けてくれた時、見事な剣術で悪ガキ達をやっつけてくれたもの!ねぇ総司さん、今度わたしに剣術を教えて!」「えぇ、いいですよ。」総司はすっかり一座の皆と打ち解け、キキはまるで実の姉のように総司を慕った。「ねぇ、あなたは魔女の国から来たのでしょう?向こうには、本当に魔女や魔法使いが居るの?」「いいえ。でも、わたしの故郷には美しい花があるんです。」「へぇ~」「その花の花言葉は、“真実の愛”というのですって。」「わぁ~、素敵!」「そういえば、土方さんは?」「あの怖い人なら、団長と話しているよ。」「ありがとう。」「キキ、総司さん、ここに居たのね。買い物に行くから、手伝って頂戴。」「はぁ~い。」キキと総司、エミリーは、王都の近くにある宿場町の市場で買い物をしていた。「キキ、そのネックレスは、亡くなったお母さんの形見だと、昔言っていましたね?お母さんは、どんな人だったのですか?」「亡くなったお母さんは、昨年流行り病で亡くなったの。このネックレスは、わたしと本当のお母さんを繋ぐ絆のようなものなんだって、話してくれたわ。」「本当のお母さん?」「わたしは、亡くなったお母さんと、お父さんの養女だったんだって。わたしには、二人のお母さんが居るんだって、亡くなったお母さんが話してくれたの。」「そうなんですか。じゃぁ、わたしと同じですね。」そんな事を総司がキキと話をしていると、総司は一人の男とぶつかってしまった。「すいません・・」「お怪我はありませんでしたか、レディ?」そう言った青年は、美しい翠の瞳で総司を見つめた。「あなたは・・」「総司、帰るぞ。」「隊長、隊長なんですか!?」青年がそう言って歳三の腕を掴んだが、彼の手を歳三は乱暴に振り払うと、そのまま去っていった。「土方さん、さっきの方、お知り合いですか?」「さぁな。」宿場町を出た総司達が王都に着いたのは、木枯らしが吹く頃だった。「う~、寒い!厚手の上着でも持ってくればよかったな!」「そうだね。」これまで順調に稼いでいたユニコーン一座だったが、娯楽が発達し、多様化している王都の人々には、彼らの芸は全く見向きもされなかった。「どうすりゃいいんだ?」「ユリウス、あたしにいい考えがあるよ。」クララは、知り合いの貴族に会いに、総司を連れてある場所へとやって来た。そこは、教会だった。「うわぁ~、凄い・・」教会の中へと足を踏み入れた総司は、美しいステンドグラスの装飾が施された薔薇窓を見て絶句した。「さぁ、こっちだよ。」クララが総司を連れて行ったのは、金糸の美しい刺繍が施された紫のストラを肩に掛けた、一人の司祭の元だった。「司祭様、お久し振りでございます。」「クララさん、どうも。そちらの方は?」「うちの一座の衣装係の、総司です。総司、こちらがこの教会の主任司祭の、グスタフ様だよ。」「初めまして、総司と申します。」「総司、とおっしゃるのですね。成程、“あの方”に良く似ていらっしゃる。」「“あの方”?」「魔女!」クララの背後で悲鳴を上げた女は、そう言って総司を指した。「皆さん、この娘は・・」「誰か、この女をつまみ出せ!」グスタフ司祭と数人の神父達が女を教会の外へとつまみ出そうとしたが、女は身を捩って暴れた。「離せ~!」「申し訳ありません、見苦しいところをお見せしてしまって。」「あの、グスタフ司祭、さっきのは・・」「どうぞ、お気になさらず。」そう言ったグスタフ司祭は、力無く笑った。「総司さん、こちらの方はわたしの知り合いの、クラディア子爵夫人だよ。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年05月01日
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母が、イオンのミスドで抹茶・ほうじ茶ドーナツを買ってくれました。あられ入りのドーナツは、美味しかったです。黒蜜入りのほうじ茶ドーナツは、しっとりとして美味しかったです。
2024年04月30日
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ある仇討ちを巡る話。ラストシーンが爽快感溢れ、いい「幕引き」となったような気がします。
2024年04月29日
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しっとりとした味わいと、カスタードとキャラメルクリームとの相性が抜群でした。
2024年04月29日
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第一次世界大戦下、インフルエンザが猛威を振るうなか、妊産婦と赤ん坊を守ろうとする看護師達の闘いを描いた作品。看護師達の闘いは、100年以上経ったコロナ禍でも続いているという事実ー読み終わった後、全ての医療従事者に感謝したいと思いました。
2024年04月29日
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CM観て、気になって近所のスーパーで買いました。まろやかで美味しかったです。
2024年04月29日
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最初から最後までおもしろくて、ロザリンどうなってしまうの?と思いながらページをめくる手が止まらず、「え、これで終わり!?」と叫びそうになりました。あー、続きが早く読みたいです!
2024年04月29日
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表紙素材は、黒獅様からお借りしました。「陰陽師」・「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「不味いな・・」「不味いとは?」「すぐにわかる。」檜扇の中でそんな会話を晴明と有匡が交わしていると、渡殿の方から騒がしい足音が聞こえて来た。「晴明!」「まぁ、何ですか博雅殿、中宮様の御前ですよ。」晴明達の元へ向かおうとした博雅だったが、中宮付の女房に止められた。「も、申し訳ありませぬ。知り合いが居たような気がしたので・・」(危なかった・・)晴明はなるべく博雅と目を合わさぬよう、自分に宛がわれた局へと戻っていった。―ねぇ、あの方なの?―お美しい方ね・・―姉妹共に、まるで絵巻物から抜け出て来たかのような美しさだわ・・楽競べから数日後、有匡と火月は時折女達の視線を感じるようになった。「それにして、晴明様・・晴子様はどうなさっているのでしょうね?」「さぁな。中宮様を呪詛しようとする者は未だに見つからないし、いつまで後宮に居るのやら・・」そんな事を言いながら有匡が書類仕事をしていると、そこへ一匹の猫が迷い込んで来た。「まぁ、可愛らしい事。」「何処の猫かしら?」その猫は、雪のように白く、碧い目をしていた。猫は、自然に有匡の方へと寄って来た。「可愛い・・」「迷い猫か?だとしたら、すぐに飼い主に届け・・」有匡がそう言った時、猫が彼の膝上に丸まった。「すっかり、懐かれてしまいましたわね、有子様。」猫は、飼い主が見つかるまで、有匡と火月が世話をする事になった。「ねぇ、この子の名前を決めましょう。“猫”と呼ぶのはね・・」「う~ん、そうだな・・」有匡はそう言うと、猫の碧い目を見た。「碧、というのはどうだ?」「いいですね。碧、良かったね~」火月に撫でられ、碧は嬉しそうに喉を鳴らした。「あの猫は、ちゃんと藤壺へ放ったか?」「はい、仰せの通りに。」彰子が住まう藤壺から少し離れた桐壺では、一人の女が、そう言って主を見た。「幸いにも、あの陰陽師達はまだこちらには気づいておりません。」「そうか、決してあやつらには気づかれてはならぬぞ。」「はい・・」女は、衣擦れの音を立てながら桐壺を出て、藤壺へと向かった。「遅かったわね、大山掌侍。」「申し訳ございませぬ、中宮様。」「ねぇ、あの二人がここに来てから、藤壺が少し華やかになったとは思わない?」「ええ。」「あの二人には、ずっとここに居て欲しいわ。」「わたくしも、そう思います。」彰子付きの女房・大山江子は、そう言って頷いた。内に秘めた、企みに気づかれないよう、俯いたまま。「晴子様、わたくしに琵琶を教えてくれない?」「定子様、何故わたくしのような身分卑しき者に・・」「楽の音は、人の貴賎など関係ないわ。楽競べでわたしはあなたの琵琶の音に心が癒されたのよ。」「中宮様・・」こうして晴明は、定子に琵琶を教える事になった。だがそれを、快く思わない者が居た。「きゃぁ~!」「晴子様の夜着に、野犬の死骸が!」「誰がこんな酷い事を!」「晴子様がお可哀想・・」周囲が騒然としている中、晴明はじっと、“ある人物”を見つめていた。「ねぇ、晴子様の夜着に・・」「酷いわねぇ・・」「一体、犯人は誰なのかしら?」晴明への嫌がらせは、日に日に酷くなっていった。だが、晴明は冷静だった。「晴明・・晴子様、大丈夫なのでしょうか?」「大丈夫だろう、あの方はお強いから。」有匡と火月がそんな事を話していると、渡殿の方から何処か力強い足音が聞こえて来た。「晴明、晴明はおるか~!」(あの声は、道長様・・)有匡が御簾の中から外の様子を窺うと、道長が顔を怒りで赤く染めながら定子の元へと向かってゆくのを見た。「これはこれは、道長様。そのように大声を出されて、何かありましたか?」「“何かありましたか?”ではないわ!見よ、これを!」道長はそう晴明に向かって怒鳴ると、ある物を彼に投げて寄越した。「これは?」「桐壺の庭に埋められておった!」それは、定子の名が書かれた呪詛人形だった。「成程、“敵”は色々と焦っているようですね。」「そのような悠長な事を言っている場合か!早くこの人形を埋めた相手を見つけよ!」「わかりました・・」(これはまた、厄介な事を・・)道長が去った後、晴明は深い溜息を吐いていた。「晴子、顔色が悪いわよ、大丈夫?」「大丈夫、です・・」晴明はその日、朝から誰かに見張られているような気がしてならなかった。(何だ、この絡みつくようなものは・・)「中宮様、中宮様、大変でございます!」「どうなさったの、少納言?」「弘徽殿から、火の手が上がっております!早く、安全な場所へ避難なさってください!」―またなの?―この前は桐壺で付け火が・・―桐壺といえば、“あの方”の・・慌てふためきながら安全な場所へと避難しながら、女房達がそんな事を囁いている姿を、“ある人物”は遠巻きに眺めていた。「どうした?」「呪詛は、もうすぐ成就致します。」「そうか。」(そのあかつきには、あなたには消えて頂かなければなりません・・)「晴明・・晴子様、ご無事で良かった。」「有子様も、ご無事で何より。」藤壺で晴明と合流した有匡と火月は、そう言いながら笑い合った。「前回は桐壺、今回は弘徽殿・・何やら、共通点がありそうですね。」「共通点?」「今、紫式部がお書きになられている“物語”に登場する、二人の女性―桐壺更衣と、弘徽殿女御・・」「では、次に狙われるのは・・」「これ以上、悪い事を考えるのは止めましょう。」「ええ。」晴明はその時、全身に悪寒が走り、そのままその場に蹲ってしまった。「晴子様!?」「どうかなさったのですか!?」「誰か、誰か来て!」晴明は、謎の高熱に苦しめられた。「晴明様、どうしちゃったんだろう?」「恐らく、誰かが晴明様に呪詛をかけたのだろう。」「呪詛って、誰に?」「さぁな。それよりも、少し出掛けて来る。」「どちらへ?」「桐壺だ。そこに呪詛の痕跡が残っているかもしれないからな。」「そうですか、お気をつけて。」火月に見送られ、有匡は桐壺へと向かった。かつては美しい妃とその女房達が住み、華やかであったそこは、不気味な雰囲気を醸し出す廃墟と化していた。(あそこか・・)有匡が、人形が埋められていた庭へと向かうと、そこには何かがまた埋められた跡があった。(何だ?)有匡がそっと新しく埋められた穴を掘ると、そこには晴明の名が書かれた呪詛人形が埋められていた。「やはり、な・・」有匡は祭文を唱え、人形に込められた“念”を、元の持ち主へと“返し”た。その日の夜、一人の男の屋敷に雷が落ちた。「お館様、どちらに・・きゃぁぁ~!」「誰か、誰かぁ~!」その屋敷の主は、両目から血を流して死んでいた。「これから、どうなさいますか・・“御息所様”?」「あとは、わたくしに任せておきなさい。」女は、そう言った後笑った。「晴子様、もう大丈夫なのですか?」「えぇ。」晴明は、高熱に襲われてから数日後、回復した。「良かった、心配していたんですよ!」火月はそう言うと、晴明に抱きついた。「おやめなさい、はしたない!」有匡はそう言った後、火月の頭を軽く小突いた。「す、すいません・・」「申し訳ありませんでした、“姉上”・・」「火月は、本当に晴子様がお好きなのね。」「あら晴子様、もう体調は大丈夫なの?」「はい。紫式部様、ご心配をおかけしました。」「そうだ、これを皆さんにお見せしたかったの。」紫式部はそう言うと、有匡達にある書物を見せた。「それは?」「この前のお話の、続きを書いてみたの。」「まぁ、嬉しい!読んでもいいですか?」「えぇ、勿論。」有匡達が紫式部の“物語”に夢中になっていると、そこへ大山江子が通りかかった。「随分と楽しそうね?」「また、紫式部様の“物語”を皆で読んでいたのですよ。江子様も如何です?」「わたくしは、遠慮しておくわ。」江子はそう言って晴明と有匡を睨みつけた後、去っていった。「何あれ、カンジ悪いわねぇ。」「もしかして、晴明様に嫌がらせしていたの、あの方じゃない?」「下らん憶測だけで人を犯人扱いするな。」有匡はそう言うと、式神達を睨んだ。「も、申し訳ございません、殿・・」「さ、仕事に戻りましょう!今日は主上がお渡りになられる日だから、忙しいわ~」「そうね~」宮中の外―京では、疫病が猛威をふるっていた。「疫神か・・」「殿、どうかなさいましたか?」「いや、何でもない。」(陰の気が押し寄せて来る・・外側からではなく、内側から?)にほんブログ村二次小説ランキング
2024年04月29日
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この小説、ずっと読んでみたかったのですが、長らく絶版になっており、映画化するのを記念して再版するということで、予約して購入しました!アニメや漫画とは違う、シリアス満載のストーリーとなっており、土井先生が軍師となって六年生達と戦うシーンや、きり丸と土井先生のシーンなど、読みごたえがありました。きり丸が、土井先生に語りかけるシーン、胸を締め付けられましたが、ハッピーエンドで終わって良かったです。
2024年04月29日
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濃厚でしっとりとした味わいで美味しかったです。
2024年04月28日
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甘くて美味しかったです。ハートのクリームが可愛いです。
2024年04月28日
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