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第 49 回鴎座通信句会 選句結果のお知らせ
第 49 回鴎座通信句会は 41 名 205 句でした 。選句と講評は作者名を伏せて鴎座代表、同人会長・編集長・副編集長・Ⅰ欄同人などに依頼しました。また投句された方の互選(任意・5句選)も行いました。句番号はランダムに変換されたものです。結果は「鴎座」に発表するとともにFACEBOOKなどにも発表します。毎月開催(締切 24 日)。
なお、今回より 招待選者は鈴木砂紅さんに代り、川目智子さんに依頼しました 。 鴎座俳句会 代表 松田ひろむ
49 回鴎座通信句会結果〉 作者名は特選のみ追加記入しました。他は一覧をご覧ださい。
石口 榮(編集長)選
9 平和という種の欠けたる種袋
52 飛花落花今できること迷わずに
特選 68 老鶯や千代田区千代田一丁目/高矢実來
105 みどりの日砂漠に植えるスカイツリー
139 修司忌の星にずぶ濡れソロキャンプ
176 歯のことは歯医者に任せ柏餅
188 囀りの遠のいてゆく園児バス
(選評)特選にいただいた 68 「老鶯や」の句。千代田区千代田は皇居全体の住所で一丁目の表示はない。千代田区千代田一番は誰でも本籍を置くことが出来、約二千百人が本籍地にしている。中七から下に掛けてテンポいい。そう言えば先日行われた都区協、春の吟行会で行った時も老鶯が鳴いていた。
9 「平和という」の句。いつの時代も地球上から戦争が無くならないと言う嘆き。いま生粋の平和の種を誰もが望んでいる。平和という重いテーマを詩的に昇華している。
52 「飛花落花」の句。一寸先は闇である。今日のことは明日に持ち越さない、生き方が素晴らしい。相田みつをの言葉に「考えてばかりいると日がくれちゃうよ」がある。
105 「みどりの日」の句。なかなかスケールの大きい句である。「東京砂漠」は歌を想起するも、東京オリンピックがあった一九六四年に開催が危ぶまれるほど東京に雨が降らなかったことに所以する。スカイツリーは何の木であろうか、楽しい句である。
139 「修司忌」の句。都会の喧騒から離れ、暗闇の中で星々がきらめく夜空を見上げる、何んと贅沢な時間。日本三選星名所は長野県の野辺山高原、沖縄県の石垣島、岡山県の井原市美星町が挙げられる。中七の星にずぶ濡れの措辞に惹かれた。
176 「歯のことは」の句。餅屋は餅屋の言葉通り歯のことは歯医者に「その通り」なんだが季語の柏餅が効いている。虫歯の原因になる餡たっぷりの柏餅との取合せに屈折感あり一句を成した。
188 「囀りの」の句。全開の窓から園児の声が聞えて来たのだろう。目の前を通過したバス。元気な園児の姿が目に浮かぶ。日常的な生活の一部を活写したウイットな句。
小髙沙羅(同人会長)
112 三鬼来よ兜太来よとて四月尽
137 少子化や甘夏柑の種いくつ
171 修司忌や仮面夫婦も芸のうち
183 夫ふっと沖見るしぐさ桜東風
205 町内一周そして始まる躑躅 酔い
(選評) 特選にいただいた 60 「さくらさくら」の句。サクラが満開になり、だれもが浮き浮きと花見の季節。そんな時にも元気な人ばかりではない。特に最近は何かしらのストレスで精神的な不調を抱えている方も多い。老後の不安も募る現代社会である。句は「混みあって」と淡々と述べているが、心療内科と無縁の時代を願っているのである。
72 花冷えや」の句。二合五勺の五勺に魅かれた。これはいうまでもなく尺貫法である。こんな言葉の持つ響きの良さ。古き良き時代と心を通わせている作者である。季語の花冷えも美しい。
112 「三鬼来よ」の句。三鬼・兜太と個性の強い二人を並べて印象に残る句となった。ちなみに三鬼の忌は四月一日。そんな四月が過ぎたのである。
137 「少子化や」の句。甘夏の種は小さいが多い。止まらない日本の少子化、そんなことを考えながら甘夏を食べているのであろうか。社会的なテーマながら作者の生活のレベルで把握していることに好感がもてる。
171 「修司忌や」の句。「仮面夫婦」の表現にドキっ。表面を繕っているだけの夫婦をいうのだろうか。ただ「芸のうち」と手の内を見せない方がよかったかも。修司忌との取り合わせは微妙。修司も恋多いひとだった。
183 「夫ふっと」の句。沖を見る眼差しをあたたかく見守っている妻である。ロマンチックな夫か詩人か。桜東風が明るく穏やかであるがそれが、かえって夫の病を案じているのかとも思った。省略の効いている句。
205 「町内一周」の句。日常の散歩だろうか。いまはまさにツツジ真っ盛り。躑躅酔いに納得。
7 メーデーや力瘤より脹脛 ( ふくらはぎ )
12 海胆に針沖に空母の静かなる
25 月山や余り苗にも潦(にわたずみ)
54 月光のひとり遊びを藤の花
70 和をもって尊し躑躅同じ色
148 この宇宙始めの始めシャボン玉
特選 177 花筏言いたいことが浮いている/翠雲母
(選評) 特選 177 「花筏」の句。花の多寡、花筏の模様はさまざまである。世の言説もうつろってゆく。しかし、今の時代ほど訴えたい、伝えたいことが多い時代はない。
7 「メーデーや」の句。メーデーの七つのテーマのひとつは、人権を守ること。今や生活そのものが脅かされている。ふくらはぎから鍛えよう。
12 「海胆に針」の句。いざ食べようとすると海胆に針。その海には空母が鎮座する。離島防衛のもと海の動く航空基地化が進む。
25 「月山や」の句。わがふるさと山形の名山。連休中の田植である。余り苗へも心配りの月山の姿が美しい。
54 「月光の」の句。月光が藤房にたわむれる。それをひとり遊びと表現したところが秀逸である。幻想的な美。
70 「和をもって」の句。和を尊重するのも美徳であるが、すべて同じ色にはならない。無限の色があり、それが自然を成り立たせている。違いこそよい。
148 「この宇宙」の句。宇宙は一三八億年前に火の玉から発生した。それをシャボン玉と表現したやわらかさ、発想の斬新さ。
16 葱坊主自分の色をもっている
66 さくらさくら心療内科混みあって
94 ジーンズとて穴は穴なり春の風
137 少子化や甘夏柑の種いくつ
171 修司忌や仮面夫婦も芸のうち
176 歯のことは歯医者に任せ柏餅
特選 195 体力の目安高尾の若葉道/小出和子
(選評) 特選の 195 「体力の」の句。山登りが趣味の人は普段は二千メートル、三千メートルを登っているがその合間に低い山も足馴らしに登る。そういう人にとって高尾山は低いながら起伏に富んでいて条件のいい山なのである。作者は新緑の一番いい今、高尾山を歩いて自分の体力を試しているのである。
16 「葱坊主」の句。自分の色を持つに共感していただいた。人間も自分と言う物をしっかり持ちたいものだ。葱坊主が頑張っているように。
60 「さくらさくら」の句。四月、五月は新人社員など急に環境が変わって精神的に疲れる時期である。心療内科混みあって、でそれが良く分かる。さくらと心療内科の取り合わせが微妙に効いている。
94 「ジーンズとて」の句。いくら流行だから、おしゃれだからと言われても穴は穴である。どう見てもだらしなく見えてしまう。作者もそう感じたのだろう。季語が難しい気がする。
137 「少子化や」の句。少子化は今では大きな社会問題になっている。それを踏まえての句。最近の甘夏は種が少なく食べやすい。昔は沢山あったのに。子供も種も確かに少ない。
171 「修司忌や」の句。修司の忌は五月四日、今頃である。仮面夫婦とは大胆な表現だ。テレビや映画ではよく出て来るが現実ではもしそうであっても外からでは分からない。修司と仮面夫婦のあくの強さで妙に響き合っている。
176 「歯のことは」の句。当たり前の事を堂々と言っているところが新鮮。作者はきっと歯が悪くて歯医者へ行っての帰りであろう、ちょっと楽になったから早速桜餅を買って来たのだ。
川目智子(招待)選
特選 32 君にいま鋼の匂い卒業期/古川塔子
45 葉桜や家族余熱のブギウギよ
85 あうんの呼吸ネモフィラと青い空
88 年金は絮タンポポになる途中
120 菜種梅雨キンピラ牛蒡作ろうか
177 花筏言いたいことが浮いている
(選評) 特選にいただいた 32 「君にいま」の句。卒業期の句としては実に硬派、新たな世界へ打って出る揺るぎない覚悟が伝わって来る。「鉄は熱いうちに打て」との格言を想起し、瑞々しい門出にエールを送りたくなる。
12 「海胆に針」の句。第二次大戦前夜の択捉島を彷彿とさせる。だが一見平和に見える今の日本とて一触即発の危機感を孕んでいると警鐘を鳴らす。
45 「葉桜や」の句。難しい理屈抜きに、ブギウギのスウィングに身を任せたくなる。リズムの良さは少し浮足立った今の季節感にぴったり。
85 「あうんの呼吸」の句。ネモフィラと青空のつき過ぎ感を確信犯的な力技で押し切った。ネモフィラの丘が青空に溶け込む景が「呼吸」の措辞により、生き生きと目に浮かぶ。
88 「年金は」の句。一読して身につまされる内容にも拘わらず、先行きに対する不安よりケセラセラと受け流す軽いノリに救われる。
120 「菜種梅雨」の句。降り続く長雨に対してキンピラの歯切れの良さが際立つ。雨脚と細切り牛蒡が微妙に呼応しながら、鬱陶しい雨雲も甘辛いきんぴらでご飯をかき込めば気分が晴れそうだ。
177 「花筏」の句。流れの中で刻一刻と形を変える花筏に移り気な春の気分を重ねる。淵や瀬に飲み込まれる花の渦があるように、口に出す言葉と胸に秘める思いとのスリリングなせめぎ合いが垣間見える。
準特選 47 半仙戯ぼくらの国の受信料/川崎果連
60 さくらさくら心療内科混み合って
85 あうんの呼吸ネモフィラと青い空
107 福耳と聞いていますが花は葉に
148 この宇宙始めの始めシャボン玉
準特選 161 鰊曇り小樽忍路(おしょろ)の木のベンチ/横山小鼓
特選 183 夫ふっと沖見るしぐさ桜東風/増田萌子
190 二歳児の知恵たくましくこいのぼり
201 花の雲誘眠剤の抜けきれず
(選評) 特選にいだだいた 183 「夫ふっと」の句。「沖見るしぐさ」の「沖」が微妙で見ているのは現実か虚か。これは健康な夫でもいいが。ここは病の夫であろう。穏やかな、桜東風がせつない。
準特選にいただいた 47 「半仙戯」はぶらんこのこと。「受信料」はもちろんNHKのそれをさしているのだが税金のことでもあろう。「ぼくらの国」というのも一つの批判。いやおうなしにきょうせいされている「ぼくらの国」である。
おなじく準特選の 161 「鰊曇り」の句。単純に木のベンチに焦点をあてているが、忍路(おしょろ)の地名がよく効いている。そこは女人禁制の地だった。江刺追分の一節もふまえ、鰊曇とともに過去と現実の情感が胸を打つ。
7 「メーデーや」の句。かつては「がんばろう」と唄って拳をあげたこともあった。句は「脹脛」がおもしろい。やはり、歩く、行進に通じるが、小生も膝に悩む年になった。やっぱり脹脛が大切。
60 「さくらさくら」の句。春、桜のときは心が乱れる季節といっては身も蓋もない。歳を重ねて体のことも、心の持ちようも気になる。ここは俳句が心にも効くといっておこう。
95 「あうんの呼吸」の句。ネモフィラは青、それが青空とお互いに響き合っている。それを阿吽の呼吸といって一句になった。
91 「還らざる」の句。「花あかり」という春の豊かな言葉であるが、古い戦争も今の戦争も多くの命が還ってきていない。ちなみにかつての旧陸軍の象徴は桜であった。
107 「福耳と」の句。福耳は富裕の意味もあるが、なんのことはない、もう桜は散って葉桜に。なんでもない福耳という。ちょっとした諧謔が楽しい。
148 「この宇宙」の句。シャボン玉の句は多いが、宇宙の始めにまで発想を飛ばしたのには驚いた。
190 「二歳児の」の句。生まれたばかりなのに、もう知恵を感じる。成長を見守っている眼差し。ただ「たくましく」の主観表現はもう一考するところ。
201 「花の雲」の句。眠れなかったのだろうか。「誘眠剤」でややぼんやりしている頭。それが花の雲のぼんやりのようでもあるのだろう。
(互選高点句)○数字は点数 3点以上
1 位 52 飛花落花今できること迷わずに⑦岡崎久子
2 位 7 メーデーや力瘤より脹脛 ( ふくらはぎ ) ⑥川目智子
2 位 9 平和という種の欠けたる種袋⑥ 後藤よしみ
2 位 137 少子化や甘夏柑の種いくつ⑥ 古川塔子
5 位 4 カルメン序曲バラを投げればひとり死ぬ⑤松田ひろむ
5 位 12 海胆に針沖に空母の静かなる⑤ 川崎果連
5 位 60 さくらさくら心療内科混み合って⑤ 古川塔子
5 位 88 年金は絮タンポポになる途中⑤ 木野俊子
5 位 171 修司忌や仮面夫婦も芸のうち⑤ 吉村きら
10 位 10 おたまじゃくし尾が消えてから考える④石口 榮
10 位 32 君にいま鋼の匂い卒業期④ 古川塔子
10 位 47 半仙戯ぼくらの国の受信料④ 川崎果連
10 位 85 あうんの呼吸ネモフィラと青い空④ 石口りんご
10 位 112 三鬼来よ兜太来よとて四月尽④ 高橋透水
10 位 117 散りどきを風にあずけて花万朶④ 横山小鼓
10 位 148 この宇宙始めの始めシャボン玉④ 信岡さすけ
10 位 177 花筏言いたいことが浮いている④ 翠 雲母
18 位 97 学帽と「人生手帖」黴匂う③ 松田ひろむ
18 位 188 囀りの遠のいてゆく園児バス③ 岩渕純子
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