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2010年08月16日
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カテゴリ: 戦争映画
2010 TBS 演出:鴨下信一 脚本:倉本聡 
出演者:ビートたけし、小栗旬、堀北真希、ARATA、生瀬勝久、長渕剛、向井理 ほか
約140分 カラー 


 戦後65年を経て、南方で戦死した日本兵の英霊たちが初めて日本を訪れるという設定のヒューマンドラマで、終戦記念日特番のテレビドラマ。もとになる原作は棟田博の「サイパンから来た列車」で、1956年に「 姿なき一〇八部隊 」として映画化されている。こちらは戦後10年目という設定だが、本作は倉本聡の脚本によって、戦後65年たった2010年という設定になっている。登場人物やエピソードも全て倉本聡による脚色がなされ、英霊が日本に戻ってきて、現代の日本の姿に驚き嘆くという設定のみが踏襲されている。舞台としても上演されているらしい。

 本作の根底に流れるのは、名もなき兵士たちの悲しみと怒りであるが、戦後の日本の豹変ぶりと対比することによって、戦後金と権力と欲に溺れた日本人への警鐘でもある。さらに、ただ単に批判するのではなく、戦時の日本兵たちの価値観と、戦後の平和国家日本における価値観の相違を、平和や進歩の意義を問うものとなっている。平和ボケした戦後日本人にとっては非常に耳が痛いテーゼとなっており、作品の主題としては素晴らしい内容だけに作品の出来が気になるところ。

 映画の「姿なき一〇八部隊」はモノクロ映画だったということもあるが、かなりおどろおどろしく厳かな雰囲気が流れていたが、本作はある程度その雰囲気を踏襲しつつも、やや現代版的な軽さも感じた。近年の戦争テレビドラマの中では群を抜いてシリアスで、歴史に真面目に取り組んだことは感じるが、正直映画ほど心に響くものがなかったのも事実。
 その理由の一つには、倉本脚本が懲りすぎたところと思われる。映画作にはない設定で、たとえば戦死した報道班員が部隊員を案内する設定、検閲係の自殺兵が靖国神社でさまよっているなど、かなり凝った設定がある。これはこれで興味深く良い設定なのだが、逆に面白い設定に気がひかれて、登場人物の心情移入がややおざなりになった感があるのだ。やや舞台的な軽さが感じられた。
 もう一点はやはり役者陣で、一番だめだったのは大隊長を演じた長渕剛か。相当の思い入れと感情移入しているのは良くわかるが、本人にオーラがありすぎるのか、余りに常人離れしていて違和感ありすぎ。映画作で部隊長役を演じた笠智衆と比較してしまうと、余りに人間味がない。もう一人はビートたけし。会話が聞き取りにくいのと兵隊らしい演技力はまるでなし。役柄の大宮上等兵と言えば「兵隊やくざ」を思い出すが(笑)、迫力も威厳も悲しみもほぼゼロ。ストーリーの厳かさをまるで殺いでしまった感じ。
 とはいえ、その他の役柄、役者はそれなりの出来。設定が設定だけに、多少は泣ける内容となったのが救い。特に検閲係を演じたARATAの苦しい演技は素晴らしく、内容に緊迫感を与え続けた。
 このほか、後半の長渕演じる秋吉少佐の御高説とビートたけしと石坂浩二の臭い絡みが間延びしていただけないが、まあこのあたりは倉本らしさが出たと思ってあきらめるしかないか。

 ちなみに、本作は沖縄戦に投入され、輸送中に敵機爆撃によって撃沈された大隊が主役となっている。隊長は大隊長の秋吉少佐という設定。ボロボロになった衣装や装備品は良くできている。当然兵器類は登場しないが、学徒出陣シーンなど少しだけ記録映像も登場する。あと、向井が演じる少尉の妻役で女性ヌードがほんの少しあり(笑)。

 全般に、テレビドラマとしては良くできた部類。映画作と比較すると残念な部分も多々あるが、倉本脚本による凝った演出で良い部分もあったので、総合的な出来はどっこいどっこいといったところか。

興奮度★★
沈痛度★★★★
爽快度★★
感涙度★★



(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)


 士官の木谷少尉(小栗)は上野音楽学校に、日下少尉(向井)は上野美術学校のもとに向かう。上野の音楽学校で、木谷少尉は、報道班員で慶良間基地で逃亡して射殺され、英霊になりきれずにさまよっている立花(生瀬)と出会う。木谷は立花から、木谷らが出動前に制裁した手紙の検閲係志村伍長(ARATA)がその後自殺を図り、英霊になれずに靖国神社をさまよっていることを聞かされる。任務とは言え兵の手紙を情もなく切り捨てた志村は、靖国神社で手紙を朗読しては嗚咽しているというのだ。
 1時38分、竹下中尉(塚本)は神宮球場にいた。戦前早稲田大学の投手として活躍した竹下はマウンドにたたずむ。そこで立花と出会うが、竹下は立花がかつて左翼活動家で転向を余儀なくされる際に、恋人だった坂部節子を売り、彼女が自殺したことを非難する。
 1時43分、浅草に大宮上等兵(たけし)と坂本上等兵(温水)がやってくる。大宮上等兵はかつて浅草でバナナのたたき売りをしており、二人はかつて華やかだった演芸場をしのぶ。浅草にはリリーあけびというダンサーがおり、彼女は大宮の妹だった。幼い頃親を亡くし、親戚をたらいまわしにされ幼い妹ともに東京へ逃げてきたのだった。水間上等兵(遠藤)は会津若松の床屋を訪れた。
 木谷少尉は学徒出陣前はチェロ奏者として活躍し恋人の河西洋子(堀北)と楽曲の制作をしていた。洋子は木谷に軍楽隊に入るよう勧めるが、木谷はそれを潔しとしなかった。その洋子は結婚もせずに現在も生きていたが、視力を失っていた。
 2時、大宮上等兵は立花報道員に連れられて新宿大久保の病院にやってくる。そこには延命装置をつけられた老婆が一人いた。彼女こそ妹のあけびだった。もはや死を待つだけの状態だが、大学教授に出世し、政府の金融アドバイザーにもなっていた一人息子の健一(石坂)が、病院に頼んで延命措置をしえいたのだった。だが、健一は多忙を理由に病院を訪れることはない。立花は大宮に人間の冷たさと延命治療の無意味さを問う。そこに同じ病院に入院する少女がやってくる。以前意識のあるとき、あけびから延命装置を止めてくれるよう頼まれていたのだ。少女もまたまもなく命を落とす運命であり、天国で会おうねと言って少女は機械を止める。大宮上等兵は少女に一礼し、怒りの面持ちで健一のもとを訪ねる。
 2時25分、秋吉少佐は山梨の実家を訪れる。空き家となった家の中で自分と両親の写真を見つける。そこに生存している遠山中将の声が聞こえてくる。お盆の迎え火で車いすの遠山は秋吉少佐に生き延びた恥を語るのだった。無言で聞き入る秋吉少佐。
 2時32分、日下少尉は長野県上田市にある戦没学生の絵を飾った美術館にいた。未完成の自身が描いた妻の裸体の絵を前に、出征前の束の間の愛を思い出す。
 靖国神社では相変わらず志村伍長が手紙を朗読していたが、にわかにマスコミらが騒がしくなる。真夜中に政府要人が参拝するというのだ。堂々と参拝しない政府要人の姿に怒りをあらわにする英霊たち。立花は報道のマスコミたちは参拝に賛成でも反対でもない、愛国心のかけらもない奴らだと吐き捨てる。
 3時15分、健一は母あけび死去の報を受ける。だが、健一は肩の荷が下りたといい、関係者にばれぬように密葬の指示を部下にする。その姿に怒った大宮は健一を刺し殺そうとする。殺せば英霊に戻れないと制止する立花だったが、ついに大宮は健一を軍刀で刺殺してしまう。
 3時45分、志村伍長は日下少尉に検閲の非情を邂逅しながら、かつて木谷が洋子に送った手紙の暗号に気づきつつ検閲を通したことを語る。
 河西洋子の家では目の見えない洋子が木谷少尉の存在に気づく。今夜来る予感があったというのだ。どんどん心が貧しくなって行く日本を感じ、洋子はもう死にたいという。だが木谷少尉は洋子に生きろという。
 4時05分、集合時間となったが大宮上等兵はもう戻ることができない。東京駅で立花は秋吉少佐と今の日本の姿について議論する。便利さを求めた結果だとする立花に、少佐は便利とはさぼることだ、豊かと便利を勘違いしている、今のような日本を作るために死んだのではないと切り捨てる。そして祖国の平和を祈り、英霊を思い出してもらればいいという。だが立花はすでに日本では誰も覚えてなどいない。人間は二度死ぬ、一度は肉体、二度目は忘れ去られることだと言うのだった。そして、英霊たちは再び乗車し、残された大宮に葬送のラッパを吹いて南海の底に戻っていくのだった。
 そのころ、大宮上等兵は健一を殴りつけていた。健一は母を守るために頑張ってきたが、どこかで道をはずしたのかと後悔する。そして天からあけびの笑い声が聞こえてくる。
 虎ノ門ではマスコミが健一の死を報道していた。凶器は錆ついて藤壺のついた旧日本軍の軍刀と報じる。





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最終更新日  2010年08月16日 20時55分59秒
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