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2011年02月19日
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カテゴリ: 戦争映画
2011 東宝 監督:平山秀幸
出演者: 竹野内豊、唐沢寿明、山田孝之、井上真央、中嶋朋子、ショーン・マクゴーウァンほか
128分 カラー 

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 第二次世界大戦時のサイパン島を舞台に、終戦後もタッポーチョ山に篭り抗戦を続け、米軍から「フォックス」と呼ばれて恐れられた実在の陸軍大場栄大尉をモデルにした戦争ドラマ。原作はドン・ジョーンズの「タッポーチョ「敵ながら天晴」大場隊の勇戦512日」で、これをもとに西岡琢也が脚本化し、平山秀幸が監督を務めた。
 平山監督は「学校の怪談」などを手がけた監督で、正直言って本作のような映画を作るとは思ってもみなかったが、良い意味で期待を裏切られた。もともと原作はハリウッド映画化が以前から噂されていたのだが、本作は日本映画とハリウッド映画の良いところを取ったような、新しい戦争邦画の誕生を予感させた。雰囲気的にはクリント・イーストウッドの「硫黄島からの手紙」と似ているが、より日本人の感情や感覚に沿った出来栄えで、日本人にとっても外国人にとっても十分理解できる作品となったのではないだろうか。
 なお、本作は大場栄大尉が多くの日本兵や民間人を救ったという美談英雄的なPRがなされていたが、そういうものではなく、むしろ名も無き日本兵、民間人、米兵も含めた、戦争に翻弄された苦悩や無念さを如実に表わしたものと言った方が良いだろう。

 サイパン島は日本軍にとって太平洋防衛の重要な拠点で、歩兵第43師団が主力として防衛にあたっていた。1944年6月に米軍が上陸戦を開始し、物量に勝る米軍はアスリート飛行場を占領し、7月の日本兵による総攻撃玉砕をもってほぼサイパン島は陥落している。その後、島中央部のタッポーチョ山に篭る大場栄大尉ら少数の日本兵や民間人らが投降を拒み、1945年11月になって上官からの投降命令をもって47名の日本兵が下山している。サイパン島では米軍投降を拒んだ民間人が崖から飛び降りた、バンザイクリフも良く知られている。
 大場栄大尉は歩兵第29師団歩兵第18連隊に所属の衛生隊大尉で、第18連隊の主力大半はサイパン上陸時に撃沈戦死し、残りはグアム島に転進していたが、衛生隊だけがサイパン島に残っていたらしい。その前には中隊長も経験していたようなので、当時は大隊長格だったと思われる。また、映画中に登場する日本兵には歩兵第43師団のほか、海軍横須賀陸戦隊や戦車第9連隊と思しき姿もみえる。
 米軍側は第2海兵師団、第4海兵師団、第27歩兵師団が主力となって上陸しているが、本作中では第2海兵師団の第6海兵連隊所属の情報将校の大尉が主役となっている。
 本作は原作段階から登場人物等の設定に若干脚色がなされており、大場大尉以外の登場人物は実名で登場するものの、完全にノンフィクショという訳でもないらしい。様々なエピソードも、多くは大場大尉等への取材で実際にあった出来事をモデルにしているようだが、細部についてはやはり脚色がなされているそうだ。原作を読んだ大場大尉自身も、若干美化されすぎている点に違和感をもったとのこと。このあたり、史実に沿っていればもっと良かったのだが、なかなか日本側の史実を正しくひも解くことは難しいかもしれない。

 ストーリーは、日本軍(大場大尉)、日本民間人、米海兵隊の3視点で主に展開する。米兵は英語で話し、公平な視点で描かれているのが良い。現実の善悪、優劣を語るのはなかなか難しい問題ではあるが、米兵役に親日的人物を置いたのが効を奏したと思われる。エピソード類も角が立たず、かといって平坦でもない、なかなか微妙なスタンスで描かれ、悲壮感や憎悪心を強調させすぎないのが良い。
 また、各エピソードのつながりが効果的だった。短かすぎず、ダレすぎず、三者の関係が次々に展開し、最後まで画面に食いつくことができた。

 役者陣がやや肉付きがいいのはちょっと違和感あるし、民間看護師の井上真央ちゃんが美人すぎるのも何だが(笑)、まあそれは大目に見て、時代考証はかなり良くできていると感じた。軍装や陸海軍の敬礼などもきちんとしている。弾薬も食料もなく・・・という悲惨な史実が良く言われ、バンザイ突撃時の豊富な武器弾薬に違和感を覚える向きもあろうが、突撃時は日本軍にはまだ相応の弾薬類が備蓄されていたのでおかしくはない。逆に1年ちかくの潜伏を続け、民間人を収容所に送った後のわずかな映像シーンこそ、武器弾薬に乏しい状況を見事に描いていたことに感動した。さらにこの頃、米軍は「翻弄」されていたというよりは、かなり自由に傍観していたようで、大尉らが収容所に出入りできたり、医薬品類が持ち出されることをある意味許容している描写もなかなか現実的で良い。唐沢演じるごろつきの堀内一等兵はいささかやりすぎかとも思ったが、実際にモデルになる兵がいたのだとか。
 また、教員出の大場大尉が意地でも投降しない感情を、現代の我々はなかなか理解し難いのだが、そのあたりの描写はもう少しあっても良かったかもしれない。米兵への憎悪もあっただろうが、それよりも忠誠に名を借りた「恥」の文化の結果であり、責任ある上官になればなるほど投降を許容できない無限ループの苦悩がそこにはある。上官の命令を絶対にしなければ生き残れないという極限の戦地共同体において、正当性などまるで無意味な運命共同意識こそが、彼らを突き動かした原動力で、その場での唯一の民意なのである。この一種危険な思考が、極限の中ではいつ生まれても不思議ではない、その不条理を戦後世代でも理解できるようになっていればもっと良かった。
 ある意味、戦史や日本人を理解していなければ、この作品の裏にある重要なメッセージを汲み取れないかもしれない。私自身は多くをオブラートに包んだ本作の表現方法を高く評価するのだが、本作を単に娯楽やヒューマンドラマとして捉える人にとっては面白くないかもしれない。

 本作で良かったのは日本映画にしては秀逸の戦闘シーン。CG等も多様しているだろうが、白兵戦のあたりは実に圧巻。音響の効果とあいまって、バンザイ突撃の恐ろしさ、そして悲惨さが見事に表現された。爆薬使用量も日本映画にしては多いほうで、このあたりでリアル感を十分感じることができた。航空機類は CG。願わくば、日米戦車戦や米軍による洞窟掃討戦の悲惨さが描かれていれば良かったが、そこまで入れると作品が重くなりすぎたかも。

 繰り返すが、本作は名も無き兵や民間人の無念さ、悲痛な叫びを表現したものとして秀作であり、押しつけがましい言葉や表現の羅列ではなく、全体の流れの中から自然にそれを感じ取れるのが良い。ラストシーンで大場大尉が「私はこの島で褒められるようなことは1つもしていない」という台詞がそれを一層感じさせた。彼自身が戦争という狂気に翻弄された身であり、それまでに失われた幾多の命への後悔と無念の気持ちがあふれているのだ。
 是非視聴者には、日本映画ならではのストレートな表現ではない、本作の裏に込められた無名戦士、民間人の心を拾い上げて欲しいと思う。様々な戦史書などをひも解き、そこに描かれた悲しみや苦しみを、本作の裏側に見出すことも可能な作品として、高く評価したい。邦画ゆえ、若干評価が甘めだが(笑)、日本人にとっては後世に語り継いでいく意味でも、貴重な作品となったと思う。

興奮度★★★★★
沈痛度★★★★
爽快度★★★★
感涙度★★★★



(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

  1944年6月サイパン島を守備する日本軍に対し、アメリカ軍が総攻撃上陸を敢行する。島は艦砲射撃等で破壊され、上陸した米軍の脇を非難する民間人の列が歩いていく。そんな中、新たに米海兵隊に配属された情報将校ハーマン・ルイス大尉は司令部に向うジープで、日本人を馬鹿にする運転兵に日本人を軽視しないよう叱責する。大尉はかつて2年間日本に留学した経験があり、日本語を話し、日本人の決して降伏しない精神を理解していた。司令部では上官のボラード大佐がおり、日本兵のしぶとさについて大尉は将棋の駒を用いて忠誠心を解くのだった。
 日本軍は水際作戦で大打撃を受け、第43師団の斎藤中将以下はサイパン島放棄の命令を受けて、玉砕総攻撃を決意する。中将以下4名の将官は自決し、翌日から陸軍兵によって、歩けないものは自決し、バンザイ突撃が決定される。第18連隊の大場栄大尉も部下をひきつれて南部に移動し、総攻撃の時を待つ。いよいよ総攻撃が敢行され、日本兵は全滅する。
 大場大尉は爆風を受けて気を失っていたが生還し、ごろつき風の堀内一等兵(後にサイパンタイガーと呼ばれる)等と合流してタッポーチョ山に隠れる。その途中孤児となった赤ん坊を見つけ、米軍に保護してもらうため軒先に帯を巻いて目印にする。運よくルイス大尉らが発見し孤児は保護された。さらに、別に逃げていた木谷曹長らと合流し、アメリカ兵を倒すためにゲリラ戦を開始し始める。
 アメリカ海兵隊は山に篭る日本軍の残党を掃討しようとするが、霧や地形を利用した大場大尉らの仕掛けた罠で損害をこうむる。ルイス大尉の部下の軍曹も負傷し、死の間際に大場大尉を「フォックス」だと言い残す。大場大尉はさらに山中で金原海軍少尉、永田憲兵隊少尉らが率いる民間人約200人に野営地に出会う。そこで民間の大城一雄や看護師の青野千恵子らに警護を頼まれるが、米兵を倒すのが役目だとして去っていく。だが、直後野営地は米軍の砲撃で大打撃を受ける。その姿を見て大場大尉は民間人らを守るのが使命と感じる。
 大場大尉は民間人らを3つの野営地に分散させるが、次第に米軍の偵察が迫ってくる。そこで、ジャングルの崖の上に隠れることとするが、老婆を抱える奥野春子らは隠れることができず捕虜となり米軍収容所に入る。そこで、ルイス大尉は奥野春子からフォックスが大場大尉であることを知る。ルイス大尉はいつまでもたって完全支配できぬことにいらだつ大佐を説得し、ビラや広報活動で日本兵の投降を呼びかけることにする。
 焼け野原となった東京の写真ビラに兵や民間人は動揺し、真偽を確かめるため大場大尉は米軍収容所に潜入する。そこで、米軍に協力した民間人元木末吉から真実らしいことを聞かされ、投降を求められるが、大尉は投降を良しとしなかった。また、山中に娘と息子がいることを知った、収容所の民間人馬場明夫が山中に投降を呼びかけに来るが、山の兵らはそれを追い返してしまう。
 山中に篭る大場大尉ら民間人は次第に食料、医薬品が欠乏してくる。いらだつ看護師の青野千恵子は堀内一等兵に頼んで、収容所に忍び込む。一方大場大尉も収容所の元木と連絡し、医薬品を調達しようとしていた。その時、堀内一等兵が米兵に気付いて銃を乱射し、堀内一等兵らが戦死し、看護師の青野も捕らえられてしまう。
 さらに時が流れ、1945年8月15日終戦を迎える。しかし、大場大尉らはそれを信じようとしなかったが、疲弊する民間人の姿に民間人だけの投降を決意する。民間人らは山をおり、収容所に入る。
 山に篭り疲弊する大場大尉らだが、民間人元木の取り持ちでルイス大尉と面談することに。そこで、  に恨みを持つ木谷曹長が元木を射殺してしまうが、大場大尉は上官の命令であれば投降するとルイス大尉に申し出る。そして、天羽少将の投降命令が届き、1945年12月1日、大場大尉は投降を決意し、軍装も新たに行進してアメリカ軍に下るのだった。





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最終更新日  2011年02月19日 20時37分06秒
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