再出発日記

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2010年10月06日
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カテゴリ: 旅の記録
藤戸町の 藤戸饅頭本店を写真 に撮りに行くとき、その目の前にある藤戸寺に初めて参ってみました。

P29藤戸寺遠景.JPG
名前だけは有名な寺なのですが、どういう謂れがあるのかは詳しくは知らなかったのです。

P30謡曲「藤戸」と藤戸寺.JPG
この寺は小さな小山の上にあり、八世紀まだこの辺り一帯が海だったころに創建されたそうです。有名になったのは、この寺が謡曲「藤戸」の舞台になったからです。「藤戸」とはなにか。ちゃんと立て札がありました。

P35沙羅の木.JPG
P39沙羅の花説明.JPG
庭には沙羅の木が植えられていました。夏の夏至ごろに花が咲くということなので、盛りは過ぎていましたが、珍しいので葉を映してみました。

P43供養塔.JPG
寺の裏には、源平合戦の供養塔と見られ1243年の銘がある五重塔もありました。

P36藤戸寺.JPG
しかし、本殿のほうは御他聞に漏れず盛衰を繰り返し現在あるのは約200年前の造りだそうです。現在は毎月21日に縁日が持たれ、地方のお寺には珍しく善男善女でにぎわう寺として成長しています。

P54藤戸の渡し.JPG
藤戸の合戦は、「藤戸」の説明にもあるように、浅瀬を渡りきった源氏の勝利で終わります。大体どこを渡ったかはハッキリしませんが、たぶんここら辺りだろうということでパチリ。

P51盛綱像.JPG
いまは倉敷川がその名残をとどめていますが、盛綱橋には浅瀬を渡る佐々木盛綱の像が置かれています。

……と説明に長く掛かってしまいましたが、今回記事にしたのは、この「藤戸」という話にいたく思うところがあったからです。これはもしかしたら、日本文芸史上最初の反戦芸術ではないでしょうか。

大作「平家物語」は「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」と唱ってはいますが、基本的には軍記物の理屈で作られていて、戦争そのものを否定してはいません。しかし、この「藤戸」は親子の情という「力」を借りて、戦争そのもの、あるいは戦争の論理そのものを否定しているのではないでしょうか。ここには、戦争における非常に重要な「問い」が投げかけられています。

「これから正義の話をしよう」 の本で問いかけられ、答を出していない問いがここでも出されています。つまり 「多数の命のために少数の命を犠牲にすることは正しいのか」 という問いです。盛綱は個人の欲のためだけに漁夫を殺したわけではありません。次の日に浅瀬を渡る事ができる、そのことが万一平家に漏れたならば、自軍が危険に晒されることは明白です。あれはその当時、普通に行われていた「正義の行動」だったわけです。しかし、母親の言葉で、盛綱はふっと自らの行動に疑問を持つのです。だからこその寺の修復であったのでしょう。そして、名も無き民衆の支持があったからこそ、この話が今まで継がれてきたのです。

源平合戦は日本史上当時では最大の戦争でした。戦後にはおそらく日本の第二次世界大戦と同じ虚無感が広がっていたでしょう。つまり、戦争とはなにかとということが「国民的感情」として初めて真剣に考えられた時期だったのかもしれません。だから「平家物語」もあのような調べになったし、源氏の武将で熊谷次郎直実などは実際法然上人に帰依し、栄誉を捨てて僧になったりします。

これが本当に反戦文芸かどうかは、じかに謡曲を聞かないと、判断がつきません。機会があれば聞いてみたいものです。

なお、昨日藤戸は早島と書いてしまいました。ももたろうさんからご指摘がありました。正確には倉敷市藤戸町です。また、今、冷静に考えると、日本初の反戦文芸というのも怪しいものです。たぶん万葉集の防人の歌が「初」になりそうな気がします。





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最終更新日  2010年10月06日 23時49分59秒
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