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2011年10月13日
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「慶州は母の呼び声」森崎和江

大市の日は夕方までにぎわうので、下校のときに樹かげでしゃべり合っているアブジたちに会う。顔を赤く染めて三々五々に談笑していて、朝鮮人はほんとうに悠々と暮らすのだなあとおもう。スリチビに寄ってマッカリをサバルになみなみとついで飲んだ人たちだ。三、四人でチョッタ、チョッタと踊っている。夏も冬も。スリチビは飲み屋のこと。マッカリは濁り酒のことといつか私も知った。踊っているアブジのそばでは木につないでいた牛の手綱をといている人、牛車をがたがたと動かしている人、長い太った太刀魚の頭と尾を結び合わせて輪にして、チゲにぶら下げている人などがいる。そのかたわらを頭上に荷を乗せ、「何をぐずぐずしているの!」と言っている風情でオモニがどなっていく。ゴムシンに入った砂をぱたぱたと爪を動かして払い、去っていくオモニ。私はこの人々の間をかきわけるように歩いた。市の終わりはぬくもりがあった。チョゴリの襟元に覗く胸は男も女も日焼して厚い



おそらく戦後に、何度も何度も、知らずに育っていた植民地朝鮮での生活とはなんだったのか、自分に問いかけたのだろうと思う。そして詩人としての文章力がこの白眉の半自伝的文学を成立させたのだろうと思う。

この本を読んでいると、戦前の朝鮮のぬくもりまで伝わってくる。幼年の眼から見た朝鮮と、少女の眼から見た朝鮮はまた違うが、そのために立体的な朝鮮像が浮かび上がってくる。この本は思わぬ収穫だった。

この本を手引きにして、もう一度大邱(私は大邱を大邸と今まで書いてしまっていた。申し訳ない)と慶州に行きたいと思っている。大邸(たいきゅう)府三笠町というのが、森崎さんが生まれた町である。もちろん今はそんな地名はない。釜山の古書店に行けば、昔の地図はあるだろうか。彼女は鳳町小学校に通い、近くに新川、寿城橋がある。片倉製糸には友達がいる。彼女はその工場で年端も行かない少女たちが働いているのを見て心を痛めている。

慶州では市街地を西に外れると、武列王陵がある。彼女の家族はそこにハイキングをしている。そこからはトガン山が見える。その麓に石窟庵があるという。市街地を越して雁鴨池の辺りに慶州中学校があり、彼女の父はその校長として赴任したのである。家族もその官舎に住んだ。官舎から東に行くとふん皇寺があり、三層の石塔がある。その先に小さな村があり、日本人もすんでいて、松永さんという人と親しくしていたらしい。

そのように昔を偲びながら、あてどなくぶらぶら歩くのもいいかもしれない。
1385慶州の古墳.JPG





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最終更新日  2011年10月13日 23時59分57秒
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