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2016年07月22日
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テーマ: 本日の1冊(3696)
泣き童子.jpg
「泣き童子」宮部みゆき 角川文庫

なんで、そんなにいけずをするんや。
なんで、わてだけまた仲間外れにするんや。
長次郎は両手を挙げて顔を覆った。呻くような声が、指の隙間から漏れて出た。
お陸には語れなかったこと。
長次郎が胸に想いを秘めてきたこと。
それが今、溢れ出てくる。
「わてかて、わかっているんや。わて1人だけ残ってしもうて、生き延びてしもうて、どんなにかみんなに済まんと思ってきたんや」
みんなに恨まれても、仕方ないと思ってきたんや。
「謝るから、なんぼでも謝るから、もういけずはやめて連れていっておくれよと」
泣いても叫んでも、応える声は聞こえない。ただもう一度、そっと背中に触れる小さくて柔らかい掌の感覚を覚えたと思ったら、長次郎は息を吹き返し、お陸や倅や嫁たちに取り囲まれて横たわっていたという。
(98p第二話「くりから御殿」より)

第二話は2011年7月号の雑誌に掲載された。一日中震災の報道がされていた頃に着想を得たのだと想像される。あの頃は、津波で流された家族への想いを「淡々と」語る人々が、何度も何度も報道された。宮部みゆきは、当然「遠野物語」を読んでいるはずだ。そこには、津波被害に遭った妻の話や、あの世から引き戻された男の話が載っているだろう。そんなこんなが混じあわさって、山津波で1人生き残った少年の話が生まれてもおかしくはない。いや、むしろ宮部みゆきの「変調百物語」の役割でさえあっただろう。国民的体験である大震災のトラウマを、少しでも和らげる役割を、怪談話は持ち合わせている。

その他の怪談話もなかなか快調でした。また、語り手も第二話のように関西訛りもあれば、かなり高度な東北訛りもあり。当時世界有数の人口密集地であった江戸の町の特徴も良く出ていた。

2016年7月16日読了





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最終更新日  2016年07月22日 11時08分40秒
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