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2016年07月23日
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テーマ: 本日の1冊(3697)
つゆのあとさき.jpg
「つゆのあとさき」永井荷風 岩波文庫
読んだのは、偶然梅雨の始めから梅雨の終わりにかけてだった。カフェの女給君江の遭う酷い仕打ちも夜の驟雨の中だった。そこから最終頁にかけての展開が面白い。また、導入部の女給たちの風俗は、荷風の面目躍如であって、こんな文を書ける人はもう日本にはいない。文章力のある人は、もしかしたら少しはいるかもしれない。しかし、対象がいない。

爪先で電話室の硝子戸を突きあけ、「清子さん。電話」と呼びながら君江は反身(そりみ)に振返ってあたりを見廻した(20p)

身の崩しと上品さと、色気が一体になったこんな女性は既に絶滅した。足と書かずに爪先と書いた荷風の目の鋭さ。反身に振り返る江戸の名残り。

この本を選んだのは、ワンコインで手軽に読める薄い本を探したからである。しかし、結果的に読了するのに一ヶ月以上必要とした。それほど読み応えがあったからである。

震災の影響がまだ残っている昭和6年の東京「屋根も壁もトタンの海鼠板一枚で囲ってあるばかり」のカッフェー。騙し騙され、愛憎と物欲愛欲蠢く夜の街。荷風も、登場人物たちにほとんど共感していないし、私もしない。それなのに、何がこんなにも魅力的なのか。

これこそが、ゾラ等の本格フランス自然主義作家に学んだ荷風の真骨頂なのだろう。解説の中村真一郎の文章は、たった9頁の中に荷風の人生と文学を余すことなく伝える。けだし、名解説と言うべきだろう。

2016年7月19日読了





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最終更新日  2016年07月23日 10時08分24秒
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