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2016年08月15日
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カテゴリ: 邦画(12~)
8月15日になると、ニューギニアで亡くなったとという母親の兄(私にとっては伯父)のことを思う。とっても優秀でやさしいお兄さんだったと云うことぐらしいしか、母親からは聞いていない。南方戦線で亡くなった兵士のほとんどが餓死だったと聞いたのは、それよりもずいぶん後のことである。母方の家は二人の兄が戦死して、一人の弟がずいぶん後に帰ってきた。一人の妹と病気がちになった両親の面倒を12歳になったばかりの母親が一身に背負った。母親が亡くなって初めて聞いたのだが、両親のうち父親は自殺したらしい。そんなことんなで、「野火」は私にとっては特別な作品である。今月の映画評です。


「野火」
「観て良かったと思います。でも、もう二度と観たくありません」去年の夏、映画サークルの感想の中で、1人の若い女性がそう言いました。その言葉が、この映画の内容を端的に表していると思います。フィリピン・レイテ島の悪夢の戦場を描いた、昨年戦後70年目の戦争映画渾身の一作です。

冒頭、肺病の田村一等兵(塚本晋也)は部隊と病院との間を二往復たらいまわしされます。それはまるで「上からの命令は絶対」の現代の会社人にも当てはまる理不尽な仕打ちでした。しかし、すぐにその事態は、米軍の機銃掃射によって終わりを告げます。戦争は「日常的な人間関係」をも壊すのです。

そこからは現代人の理解を超えた、非人間性の世界が描かれます。現地人を撃ち殺す兵士、頭を打ちぬかれ飛び散る脳漿、地面に転がる片腕、飢餓で幽鬼になる多くの兵士、サルと称して食人をする兵士。

大岡昇平原作に忠実であっても、田村の独白で話が進む原作とは違い、映画では目の前に鮮明な地獄図が広がります。「俺が死んだら、ここを喰ってもいいよ」と腹を見せる伍長(中村達也)や、何を考えているのかわからないおっさんこと内田(リリー・フランキー)など、共演者も鬼気迫る演技を見せます。「お前も絶対俺を殺して喰うはずだ」と迫る永松(森優作)の顔のアップのあとに、果たして田村はどうしたのか、原作も映画もハッキリは描いていませんが、私は帰国したあとの場面を見せたことで、監督の解釈はハッキリしたと思いました。しかしそれさえもどうでもよくなりました。「野火」はインテリの田村が果たして食人をしたのか、がテーマだとずっと思っていたのですが、そうではなくて、この作品全体が見せる「生き地獄」こそが大岡昇平や監督の見せたかったものだと思いました。

もう観たくはない、けれど一度は観なくちゃいけない。塚本晋也監督は、私と同じ歳でした。20年間準備してきたらしい。この時代だからこそ、使命感に駆られてつくったらしい。私の世代は、小さい頃から戦争体験者の話を直に聞いてきた最後の世代です。監督の気持ちはよくわかります。

部屋を暗くして観ないとよくわからない場面があります。また、戦場と対比的に描かれる、南国の鮮明な白い雲と青い海、緑の山々の自然が印象的で、そこだけホッとします。同時にとても哀しくなります。(2015年作品、レンタル可能)





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最終更新日  2016年08月15日 18時20分56秒
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