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私は菅野完氏を「胡散臭い人物」だとは思っているが、反安倍という点では一致しているし、今回のアイディアは「買い」だと思っていた。すなわち、首相が明日の臨時国会で「冒頭解散」をするのならば、その前に内閣不信任案を野党が出せば、与党はそれを否決せざるをえなくなる。そうなれば、いったん内閣を信任した与党が、そのまま解散などできなくなるというアイディアである。
ツイッターでつぶやいたそのアイディアをジャーナリストのまさのあつこ氏がブログでつぶさに検証した。この辺りの連携にも感心してしまった。
内容は読んでいただくとして、結論的に言うと、内閣不信任案は無理、動議だけは出すことはできるかもしれないが、採決は無理だろう。とのことだ。しかし、議事録には残るだろう、とのことだ。
だから止めよう、ではなくて、私的には是非とも出してもらいたいと思う。本来臨時国会は「議論する場」であるのに、憲法で求められているのに、それをしない。ことごとく、「対話はしない」。国会でも、北朝鮮問題でも、テレビでも、街頭演説でも、それは徹底している。こんな「独裁首相」は今まで決していなかった。その一つの証拠を「後世のために」国会議事録に残しておきたい。それは意義のあることだと思うからである。
まさのさんの論旨は非常に明確であり、是非読んでいただきたい。
野党は臨時国会冒頭に、内閣不信任案を提出できるのか?
ジャーナリストの菅野完(すがのたもつ)氏が「野党は臨時国会冒頭に、内閣不信任案を提出すればよいのではないか」とツイートした後、現在までに、そのアカウントが凍結となっているが、これは興味深いアイデアなので、それが物理的に可能なのかを探ってみた。
解散詔書は天皇→内閣総務官→官房長官→事務総長→議長
憲法第7条に基づいて天皇は「内閣の助言と承認により、国民のために」衆議院を解散するが、まずその具体的な流れを、本会議の裏方である衆議院議院運営委員会の事務方に尋ねてみると、次の通りである。
天皇の書く「解散詔書」を内閣総務官が国会まで持ってくる。それを菅義偉官房長官に渡し、官房長官がそれを向大野新治事務総長に渡し、事務総長がそれを大島理森衆議院議長に渡して、議長が読み上げると「解散」となる。あっけない手続である。
「動議」は出せるのか
続いて、後に解説する「動議」による「内閣不信任案」提出のチャンスについて、その道筋を尋ねてみることにした。
Q:たとえば、そこで野党が動議を出すことはありうるんですか?
A:解散詔書の読み上げの最中にですか?
Q:議長が読み上げる最中または前のタイミングで。
A:本会議が開かれている最中に動議が出されたとすると、「議場内交渉」となります。「議場内交渉係」がいて、議運(議院運営委員会の略)の理事ですけれども、そこが交渉することにはなるんですが、ただ、詔書が本会義場に来た場合は、議長が読み上げるので、そこで解散になり、動議も未了となります。
「動議」という裏技
ちなみに、衆議院本会議の運営は、衆議院の議院運営委員会(議運)やその前段で国会対策委員会が取り仕切るが、そこでの決め事は原則全会一致である。
どうしても全会一致とならない場合、議運の委員長を務める与党側の議員が職権で物事を決してしまう場合がある(だから権力の使い方を間違う人物が委員長になると、民主主義が危機にさらされる)。
また、野党の場合、たとえば、菅野氏のアイデア通りに内閣不信任案を本会議で採決にかけたいと提案しても、与党が議運や国会対策委員会でそれを了承しないことが予想され、このアイデアは潰えてしまう。なぜなら、内閣不信任案が採決にかれば与党はそれを否決するしかなく、内閣が信任されれば解散はできなくなって困る(だからこその菅野氏のアイデアだった)。
そんな場合の裏技が「動議」だ。「動議を出す」とは、本会議場や委員会室で、突然、何かを議題にするよう求めることだ。
この場合、「内閣不信任案を採決する」動議を出すということになる。
しかし、議運の裏方の整理によれば、たとえ動議を出せても、自動的にそれで採決となるわけではない。「議場内交渉」となる。そうすれば、交渉が難航したり、議場が騒然としたりはするだろうが、最終的には採決に至らない可能性が高い。
それにしても、このアイデアが実行されれば、最低でもその事実は本会議の議事録に残る。それが大切なところだ。とりわけ、今回の解散は、
1)憲法第53条(いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない)に基づいて6月22日から求めれていた臨時国会を、安倍内閣が開こうとせず、
2)その安倍内閣総理大臣が、「森友学園への国有地売却の件、加計学園による獣医学部の新設、防衛省の日報問題など、様々な問題が指摘され、国民の皆様から大きな不信を招く結果」を「深く反省」すると8月3日に会見をして、
3)その脈略とは関係がない「仕事師内閣」というネーミングで内閣改造を行い、
4)3カ月も放置した臨時国会を開催するかと思えば、会見を開いて、「消費税の使い道」と「緊迫する北朝鮮情勢」という、本来は「解散」「選挙」を経ずに対応できることを理由に解散すると説明した。
5)しかも、所信表明演説の要求にも、予算委員会や党首討論の要求にも応じていない(日経新聞)。
そんな経緯を辿った解散だ。
議運や国会対策委員会が、所信表明の要求や内閣不信任案の提出を認めないのであれば、少なくとも、大島衆議院議長は、それらの動議の提出を受け止め、実現する度量を見せるべきではないか。
そうでなければ、後世の人が2017年9月28日の本会議議事録を読んで分かるのは、大島議長が解散詔書を読み上げたということだけになるからだ。
刻一刻と変わる国づくりの経緯が文書で残らない国家は、もはや民主主義国家ではない。そのことが、安倍内閣が抱えた問題とも共通する。森友学園への国有地売却の経緯、加計学園による獣医学部の新設の経緯、南スーダンPKOの日報不開示の経緯、それらの記録の不存在・未解明問題だ。それら安倍内閣の誤りを、衆議院解散で繰り返してはならないからだ。
まさのあつこ
ジャーナリスト。ラテン諸国放浪後、衆議院議員の政策担当秘書等を経て、東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。著書に『投票に行きたくなる国会の話』(ちくまプリマー新書、2016)、『四大公害病』(中公新書、2013)『水資源開発促進法 立法と公共事業』(築地書館、2012)、共著に『公害・環境問題と東電福島原発事故』、『社会的共通資本としての水』など。
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