『 算数の授業で教えてはいけないこと,教えなくてはいけないこと
』
(正木孝昌、黎明書房 、2009、2000円)
子どもの「たい」を大事にする、この本の読書メモを続けます。
今回が第8回。
「第4章 量と測定を教える」から。
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正木孝昌『 算数の授業で教えてはいけないこと,教えなくてはいけないこと
』
読書メモ8(p145~170より)
(・は本の記述の抜粋、 #の緑文字
は僕のコメントです。)
・ 自分から対象に働きかけていく
という
子どもたちの能動性を伸ばすこと。
・ 「分かる」「できる」だけに力を入れすぎると、
一方、能動性、活動力は減衰してくる。
#塾の授業とかは基本的にかなり「分かる」「できる」のみにシフトした授業
のように思います。そういった授業の教授技術から学ぶこともかなりありますが、
特に公立小学校の授業では、「分かる」「できる」だけをめざさない、という
バランス感覚が大事だと考えています。
そこを重視するのが「楽しい授業」「子どもの『たい』を生みだす授業」
といったものではないかと思います。
僕は「分かる」「できる」だけでなく、そういったバランスを大事にしたいです。
・「長さを比べたい」という「たい」の目を覚ますには?
・横向きの線は黒板いっぱいになるほど長くしてある。
「さあ、どちらが長いでしょう」
見ただけで分かります。
しかし、私は大真面目です。
それぞれの線の横にじゃんけんのグーとパーの絵を描きました。
#以前も紹介した「じゃんけん発表」です。
(p148より)
・どちらが長いかは見ただけで分かります。
だから安心して反応できます。
それでも、自分の判断を一人ひとりが手で示すとなると、
ちょっと緊張します。
・子どもが30人もいれば、必ず2,3人は
温かいお風呂に入っているような気分の子ども
がいます。
その子どもたちの目をしっかり開けさせなくてはならない。
だから、このじゃんけん発表をするのです。
#そういう意図があったのですね。
確かに、全員が発表するという機会を授業のはじめのほうで持つことで、
ふわふわしていて気持ちが入っていない子どもの、
授業内容への意識・集中を促す効果があるように思います。
「じゃんけん発表」以外にも「全員起立」などで行うこともあります。
そういう意図的な仕組みを授業の中に入れていくのは大事ですね。
・長い線の方を端から少しずつ消していきます。
「さあ、今度はどちらが長いでしょう」
(p149より)
#2回目のじゃんけん発表では真剣さが変わります。
そして、「答えを知りたい、はっきりさせたい」という「たい」も
生まれました。
このあたりの持っていきかたが、さすがだと思います。
・分かってしまっては、みんなの「たい」が消えてしまいます。
だから、つよし君のアイデアだけ認めて、実際に比べるのは止めた。
#比べる方法を発表しようとする子どもを途中でストップさせるのが
学級全体へのすばらしい配慮だと思います。
正木先生は、「みんなの『たい』が消える」ことに対して、
非常に大きな警戒感を感じておられます。
この授業(模擬授業)では、実際には
発表の1人目はみんなにヒントを促す役割としてとどめておいて、
みんなの様子をうかがいながら、その次の人が自分のやり方を見せる、
という流れでした。
この、「 答えを出すまでに、ヒントだけ出す
」という授業の流れ、
そして、その ヒントは「子どもから子どもに出す」
という授業の経営法、
どちらも素晴らしいと思います。
そして、最後に正木先生は
発表した子の発表内容の「いいところはどこですか」と
全体に問いかけることもされています。
「ひとりひとりが考える」という授業の具体的内容を見た思いです。
・この『芳子さんのいいところはどこですか』という問いかけが
とても大切なのです。
・これがなかったら、芳子さんの手柄だけで終わってしまいます。
芳子さんはすばらしい。
その彼女のすばらしさをみんなで共有する。
みんなのものにしていく。
そこが授業者の腕です。
・芳子さんは、黒板消しを使って長さを比べた。
では、他に使えるものはないだろうか。
子どもたちに聞くと、たくさん単位として使えるものを見つけます。
(以上、p170まで)======================
上で紹介したのは「長さの測定」に関わる授業内容でしたが、
章の後半では「 速さを教える
」という例も出てきます。
そこでは、「 電卓の速押し競
争」など、いかにも楽しそうな活動をはさみながら、
時間や速さについてきまりを見つけ出していく様子が描かれています。
「 第5章 資料集めを教える 」と最後の「 授業で大切にしたいこと 」については次回にまわしたいと思います。
では、また次回!お楽しみに。
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