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TBSの深夜ドラマ。藤田みおの漫画のドラマ化です。一見するとイロモノっぽい作品だけど、おそらく倉光泰子の脚本は、野木亜紀子の「逃げ恥」を意識しているはずです。火曜日設定もふくめて。2016年の「逃げ恥」以降、TBSは、去年の「ナギサさん」や、現在放送中の「ハンオシ」にいたるまで、"同居契約"や"結婚契約"などのテーマをくりかえし変奏してます。そして、今回は倉光泰子が、いわば "セフレ協定" "恋愛協定"の話を書いている。つまり、性愛についての契約です。これって、たんなるイロモノ作品とは見過ごせない面があって、じつは倉光泰子も、けっこう真面目に書いてると思います。◇5年前に「逃げ恥」が放送された当初、あれは、あくまで物語上の《設定》であって、たんなる思考実験のフィクションだと思われていた。けれど、新垣結衣と星野源は、フィクションを超えて実際に結婚してしまったし、現在のように、若者が恋愛も結婚もしない時代において、そういった協定や契約が、なにげに現実味を帯びているようにも思う。つまり、恋愛をするのにも、結婚をするのにも、なんらかの《設定》が必要とされてる感はあるのです。高田夏帆のカラダはまるでお人形さんみたい。そんな、恋愛も結婚もしない時代にあって、従来的な結婚制度のほうも、だいぶ限界に来ていますよね。もともと、異性との恋愛関係を基礎にしながら、同時に、生活や経済も成り立たせて、なおかつ出産と子育ても成功させるなんてのは、ほぼ奇跡に近いようなことなんだけど、いまや、そんなことは、途方もない無理難題だと感じてる人々が圧倒的多数。◇他方では、夫婦別姓で生活したい人もいるし、同性どうしで結婚したい人たちもいる。2016年には、テレ朝で「おっさんずラブ」が放送され、2019年には「きのう何食べた」や「腐女ゲイ」が放送され、現在も、テレ朝深夜で「消えた初恋」が放送されてますが、ここ数年で、とくにBLに対するイメージは大きく変わって、もはや日常の風景のなかに溶け込んできた感がある。しかし、そういう社会の要請や変化に対して、従来の結婚制度はまったく対応しきれておらず、すっかり機能不全に陥っているわけですね。はっきりいえば、制度的な耐用年数を過ぎているのです。◇その一方、わたしは、NHK大河「青天を衝け」で描かれている、渋沢栄一の"妻妾同居"のことが気になっています。脚本家の大森美香が、あれをどう捉えているのか分からないけれど、戦後の日本の結婚制度を相対化していくために、あれって、けっこう面白い議論の材料になると思います。それについては、後日あらためて書きます。
2021.11.04
「アライブ がん専門医のカルテ」が終了。すごかった。ご苦労さま。よく11話もやりましたね。低視聴率なのに(笑)。終盤はほぼ一話完結だったので、ある意味、早く切り上げることもできたわけだし、逆に、ずっと続けることも出来たのだろうけど、11話に収めたのが、ちょっと不思議な気もする。低視聴率のわりに(いや、低視聴率だからこそ?)しっかりと丁寧に作ってあったし、スポンサーの圧力にも屈することなく、ひとつひとつの映像にも、妥協しない意志を感じました。屋上で深呼吸をするシーンは、ふつうに考えれば木村佳乃の死亡フラグになるはずだけど、それを逆手にとって、彼女を生かしたことは、医療への希望を抱かせる強いメッセージになってましたね。まさに医療ドラマの真髄を見た感じ。そして、男性中心の医療ドラマにはありえない、女性ならではの独特の美しい世界観がありました。完全無欠の作品とは思いませんが、なにげに、今季の作品の中で、いちばん「終わって寂しい」と感じてるかも…。もうすこし2人の姿を見てたかった。これが、おそらく倉光泰子の代名詞作品になるのかなと思う。「百合」といってしまえば身も蓋もないけど、この脚本家の個性には今後も期待したいと思わせます。
2020.03.20
医療ミスをめぐるエピソードは先週で終わっちゃった?三浦翔平はともかく、田辺誠一さえ登場しないのですね…。木村佳乃と田辺誠一の関係を清算しなくていいのかなあ…。せめて木村佳乃の逡巡にスポットを当てて、退職願を出したり引っ込めたりしながら、松下奈緒の家族(遺族)との和解とかも、もうすこし感動的に描いたらよかったのでは?なんて思うんだけど、意外にあっさり病院に留まることにしたみたいです。なんだかメインのストーリーが一段落して、高畑淳子も旅に出てしまったから、うっすら最終回っぽくなった気がしないでもない。次週につなげる要素が何もなくなっちゃった感じ。まあ、一話完結の物語としては十分に成立してるんですけど…、このドラマって、一話一話がけっこう重たいわけだし、やっぱり次週に引っぱる「繋ぎのストーリー」があったほうが、視聴者のモチベーションのためにも得策じゃないのかしら?などと、よけいなお節介まで考えてしまう。制作者サイドは、もう視聴率のことは気にしてないのかな?あるいは、実際に病気と闘っている視聴者のことを想定して、むやみに翌週へ引っぱるような話の作り方を、みずから控えているのかもしれません。そこらへんは制作者の意図ですよね。毎回、最初と最後に美しい屋上のシーンがあります。遠景に横浜の海を見わたせる場所ですね。今回はとくに癒された。あのシーンにも制作者の意図があるのかな。
2020.02.28
アライブ がん専門医のカルテ。途中参戦だったけど、おどろくほど重いドラマ。よくも民放で、こんな重いテーマに果敢に取り組んでるなァと感心します。たんなる「娯楽」として鑑賞するのは困難なくらい、生死に直面するようなシビアな問題に容赦なく向き合っている。いちおうは、コミカル要素やサスペンス要素もあって、過度に重くなりすぎない演出を心掛けてるようだけど、いかんせん、扱ってるテーマがびっくりするほど重い。はなから視聴率が苦戦するのを覚悟して作ってるのかも。◇脚本は、倉光泰子。前作の「スキャンダル専門弁護士 Queen」では、ちょっと脚本の組み立てが分かりにくかったり、やたらにスタイリッシュな演出にばかり目をとられたけど、考えてみれば、主人公2人の女性の友情をスリリングに描いてる点では同じです。そして、社会的なテーマに取り組んでる点でも共通している。竹内結子と水川あさみのバディがそうだったように、今回の、松下奈緒と木村佳乃のコンビも、普通なら、ちょっと思いつかないような斬新なキャスティング。そして、どちらの場合も、過去に重い因縁を背負ってるという設定なのですね。脇を固める配役にも独自色があって、ほかの脚本家にはない、一種独特な世界観を感じさせます。今後も、心して見ていこうと思います。
2020.01.31
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