まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2020.10.14
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『鬼滅の刃 兄妹の絆』を見ました。

ふだんはマンガも読まないしアニメも見ないので、
「キメツノヤイバ」というタイトルを聞いたことがあっただけで、
どんな内容のものかは、まったく知りませんでした。

今回の映画版を見て、おおよその設定は把握できました。



シネマレビューサイト にも同様のことを書きましたが、

この物語の主人公は、
絶望的な不幸を強いられたにもかかわらず、
自分自身が「鬼」になって復讐の人生を歩むことができません。

なぜなら、
戦うべき敵こそが鬼だからです。

主人公は、
あくまで人間の側に立って鬼を退治しますが、
内心では鬼の悲しみを共有しています。
敵が鬼になってしまった背景を意識せざるをえない。
自分自身も鬼と同じ境遇に立たされており、
唯一残された肉親の妹もまた鬼だからです。

そこに、
この物語のユニークな点があり、
そもそも「鬼とは何なのか」という社会学的な問いが含まれています。



この物語のなかで、
鬼が出現しはじめたのは平安時代とされています。
ちょうど修験道や陰陽道が密教に結びついた時代ですね。

とりわけ『鬼滅の刃』の世界観は、
山民や山伏の世界と重なっているように見えます。

主人公の生まれた竈門家は炭焼きの家系だし、
鬼殺隊の人々は天狗などの神楽面をつけている。

このアニメは、
大正期を舞台にした作品ということで、
当時の怪奇・幻想文学や、
鈴木清順の映画などに通じるところもありますが、

とくに、
平安の呪術的な世界を大正期に移し替えた設定は、
荒俣宏の『帝都物語』とよく似ています。



しかし、
本来の日本の鬼の伝承は、
おそらく平安時代よりももっと古く、
さらに古墳時代にまで遡るのではないかと思います。

一般に、
鬼を退治した桃太郎のモデルは、
百襲姫の弟である吉備津彦や稚武彦ではないかとされています。
あるいは、雄略天皇とする見方もあるかもしれません。

もしかすると、
世界遺産になった百舌鳥・古市古墳群にある、
最大の大山古墳こそが「桃太郎の墓」かもしれないのですよね。

つまり、
日本古来の鬼退治の伝承というのは、
大和王権が、土着の勢力を駆逐していった、
いわば「勝者の歴史」を物語ったものにほかなりません。

この勧善懲悪的な皇国史観こそが、
戦時中にも利用されて大きな影響力をもちました。

『鬼滅の刃』の物語は、
そこに「敗者の歴史」をもちこんだものであり、
鬼退治の歴史観に対する痛烈な批判になっているはずです。






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最終更新日  2021.09.16 17:40:15


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