まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2020.10.25
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映画版の『鬼滅の刃』が異例のヒットで、
日本中が異様な興奮状態になってて、
たぶん、この土日も、
さらに動員は伸びるのだろうと思います。

わたしもテレビ版と地上波の映画2本を消化して、
にわかブームの真っただなか。

映画も見てないのに、
昨夜のNHK「SONGS」では、
LiSA&梶浦由記による「炎」のピアノver.に滂沱してしまいました。



その一方、
すっかりハマっている自分が言うのもなんだけど、
なぜこのアニメがこんなに大ヒットしているのか?
と考えると、とても不思議です。

見た目のショッキングな残虐性と、
迫力の戦闘シーンがウケているだけなのでしょうか?

じつは、かなり深いお話だけど、
子供にとっては残虐すぎるし難しい内容だとも思います。



「るろ剣」や「犬夜叉」あたりが先行作品とはいえますが、
そもそも日本のマンガ・アニメ史において、
このような 「和もの」 がヒットした例は少なかったはず。

従来のセオリーからいえば、
「宇宙」「ロボット」「近未来」「超能力」
などの要素を揃えるのが、
子供向けのマンガ・アニメをヒットさせる条件だったはず。

でも、この作品の場合は、
「日本」「着物」「時代劇」「刀剣」
といった和の要素で構成されていて、真逆です。

わたしが子供のとき、
こうした要素に対しては、
ネガティヴな印象しかありませんでした。
地味で、暗くて、不気味なイメージ。

実際、「鬼滅の刃」も、
けっこう地味で、暗くて、不気味だと思います。

本来、
子供が好きなのは、近未来のロボット漫画、
大人が好きなのは、実写の時代劇チャンバラ、
それが当たり前の図式だったはず。

でも、なぜか「鬼滅の刃」では転倒している。

「千と千尋」あたりで潮目が変わって、
子供と大人の境界線が消滅しているのでしょうか?



そういえば、
むかしの人気マンガや人気アニメには、
ほとんどのカタカナの題名がついていました。

「アトム」「ヤマト」「ルパン」「ドラえもん」
「ガンダム」「ナウシカ」「ドラゴンボール」…

みんなカタカナです。
これはおそらく、
手塚治虫以来の「モダン漫画」のファンタジー路線なのだと思います。

これに対して、
漢字タイトルの作品もあったのですが、
それはきっと、
梶原一騎にはじまる「ドメスティック漫画」の劇画路線だと思います。

「巨人の星」「北斗の拳」「火垂るの墓」
「君の名は」「進撃の巨人」「鬼滅の刃」…

かつては傍流だったはずなのですが、
最近では、むしろこっちが主流になりつつありますね。



いちおう「鬼滅の刃」は時代劇なのですが、
大正という舞台設定は、ちょっと不思議で特殊です。

「和」と「洋」がせめぎあい、
「漢字」と「カタカナ」がまじりあい、
「ドメスティックな文化」と「モダンな文化」が溶け合った、
「過去」と「未来」が交錯するような不思議な時代です。

自由と平等の「モダニズム」と、
排外主義的な「ナショナリズム」が、
たがいに矛盾しながら炎のようにうねっていました。

関東大震災から大東亜戦争に向かって、
異様な興奮状態が社会を渦巻いていた時代でもあります。



この大正という時代に「鬼」が現れます。

もともと「鬼」というのは、
日本の国家の成り立ちにかかわる根幹的なテーマです。
つまり、
「古墳時代に大和政権が何をやったのか?」
という謎を解くための、最大の鍵こそが「鬼」です。

そこには、おそらく、
縄文と弥生が葛藤しあった記憶も刻まれています。

この国家的な問題が、
大正という異様な時代の、
「和」と「洋」のせめぎ合い、
「土着性」と「近代性」のせめぎあいの中で、
亡霊のようによみがえってくるのです。



このようなテーマ性において、
梶原一騎の路線と、手塚治虫の路線が、
本質的な境界線を失くしてしまっています。

かつて、この境界線上にいたのは、ちばてつやです
彼が「鬼滅」を熱心に読んでるのは偶然ではないはずです。

おそらく、その意味でも、
この『鬼滅の刃』は、
日本漫画史上の大きな転換点になるのだろうと思っています。

「鬼滅以前」と「鬼滅以後」では、大きく状況が変わるはずです。



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最終更新日  2021.09.16 17:40:25


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