まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2023.08.07
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水貝のさくりと清くまず一献 呼び鈴のはんなり抜けて湯びき鱧 鱧の皮あの娘再婚したらしい 古都眩し夜は酒場の氷店 土用鰻大将すまん小ジョッキ 土地区画整理末伏のタッカンマリ じゃあそれとガツ刺し夕涼の酒場 焼酎やけふは店主に辞儀深う 西日溜める店影だけが呑んでる キープボトル墓碑銘となる夏のBAR 命日を集う紫陽花のレストラン 鰻待つ今日は台本家に置き 風青しカンロ杓子の三拍子 混濁のスープ青山椒の蒼 夏惜しむキープボトルを一人呑む
プレバト俳句。夏の炎帝戦。
お題は「行きつけのお店」。




梅沢富美男。
水貝 みずがい のさくりと清く まず一献


これが優勝でしたが、きっと賛否両論あるでしょうね。
村上もフジモンもジュニアも、見るからに不満そうだった。



季語の「水貝」は、アワビのお造り。

中七の「さくりと清く」は、
たんなる食感の形容なので、
実質的には「水貝」と「酒を呑む作者」だけを描いた句。

この食感の形容は独創性に乏しく、
たとえばコーラのことを「スカッと爽やか」と形容するのと同じで、

「さくりと清くない水貝があったら持って来い!!」
と言っていいと思うけど、

なぜか先生いわく、
水貝と日本酒のみならず、
店の雰囲気まで清らかなのが分かる、…とのこと。

でも、
そもそも字面だけではどこの場面かも分からないし、
家呑みの場面だと解釈できなくもない。



強いて好意的に解釈すれば、
ポイントは、下五の副詞「まず」なのかな、とは思う。

つまり、
このあと次々にいろんな料理が来るけれど、
そのはじめが爽やかな水貝であり、まずはそれで一杯呑む、と。
そこから「料亭の場面」だと想像させる仕組み。

そう考えれば、粋な佳作といえるのかもしれません。

とはいえ、
これが優勝句でいいのかなという疑念は残ります。



中田喜子。
呼び鈴のはんなり抜けて湯びき鱧 はも


これが2位でしたが、
じつは梅沢の句と構造が似ています。



実質的には「呼び鈴」と「湯びき鱧」だけの句で、
中七の「はんなり抜けて」は、
ただのサウンドの形容なのだけど、
そこから「京都の料亭」だと想像させる仕組みです。

このサウンドの形容は独創的だけれど、
「呼び鈴が抜ける」という字面だけを見ると、
手や紐や金具から鈴が抜け落ちた…とか、
呼び鈴をもった人が通り抜けた…などの誤読もありうるし、

さらには、
玄関のチャイムが鳴ったら料理が届いたとか、
食事の支度の出来たところに誰かが帰ってきたとか、
そんな誤読もありえなくはないので、
料亭の場面という解釈に到達するのは難しい気もする。

ちなみに、湯引きは、
さっと湯にくぐらせて、すぐに冷やす調理法。
これも水貝と同じく料亭の夏の一品ですね。



…ってことで、
いつもとは毛色の違う作風が1位と2位になった印象。
そして「金持ちの年寄り」に有利な兼題なのかも。


かたせ梨乃。
はも の皮 あの娘再婚したらしい


これは3位の句。

この「季語+口語のセリフ」の形は、
ひとつの型と言ってもいいでしょうね。

ちなみに先生は、
「再婚」を「脱皮」ととらえてるらしい…(笑)
ゴジラ的にいえば "第二形態" ってこと?




…以下は順不同です。


フルポン村上。
じゃあそれとガツ刺し 夕涼の酒場
じゃあそれとガツ刺し 夕涼の屋台
(添削後)
じゃあそれとガツ刺し 夕涼の中洲
(添削後)

これも「口語のセリフ+季語」の形。

ガツは豚の胃袋。
ガッツ(胆力)と同じで「guts」が語源です。



伊集院光。
土用鰻 大将すまん小ジョッキ


これまた「季語+口語のセリフ」の形。

しかし、
なぜ謝って「小ジョッキ」を頼むのか分からない…。

わたしは、
「いつもなら大ジョッキだけど、ちょっと痛風が怖いので…」
みたいな解釈をしましたが、
本人いわく、
「忙しいのに悪いけど…」という程度の意味合いだそうです。
かたや先生は、
「テイクアウトしに来たけど、あまりに暑いので一杯…」
という解釈でした。

いずれにしても、
解釈の余地がありすぎる気がします。



千原ジュニア。
焼酎や けふは店主に辞儀深う


これも、
なぜ深くお辞儀したのかが分からない。
伊集院の句と同様に、解釈の余地がありすぎる。

酔っぱらって店内で粗相したとか、
他の客と喧嘩になって暴れたとか、
そんな解釈をする人のほうが多いのでは?

でも、先生いわく、
「自分のなかで書き留めておく作品」としては、
これで良し、とのことでした。



フジモン。
土地区画整理 末伏 まっぷく のタッカンマリ
地上げの噂 末伏のタッカンマリ
(添削後)

末伏とは、暑さのきわまる晩夏の凶日。

日本では六曜 (先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口) ぐらいしか使いませんが、
中国や韓国では、ほかにもいろんな暦注を使うのですね。
▶ https://jpnculture.net/rekichu/
ちなみに、今年は、
初伏が7月11日で、中伏が7月21日で、末伏が8月10日
…だそうです。

タッカンマリは、
いわば「具を詰めないサムゲタン」みたいな鶏の煮込み。

原句は、
(何となく不吉な雰囲気はあるものの)
前段と後段の関係性が分かりにくく、
やはり解釈の余地がありすぎます。



キスマイ横尾。
古都眩し 夜は酒場の氷店


これは昼間の場面で、
「夜はBARに変わるかき氷屋」ってことなのだけど、
わたしはてっきり夜の場面だと誤読して、
「夜は飲み屋街の氷店に来た」と解釈しました。

つまり、
> 昼間は外で働いて、
> 夜間は酒場に氷を提供する店で働いて、
> ああ、京都のネオンが眩しいなあ。

…みたいな解釈。

形式上は、そういう誤読もありうる。



立川志らく。
西日溜める店 影だけが呑んでる
西日の店 いつも影だけが呑んでる
(添削後)

志らくは過去にも、
影のような野良犬に桜ながし
闇動く幸せが動く梟

などを詠んでいますが…

実景をぼかし、
「影」や「闇」を比喩的な主役にして、
安易に詩情を生み出そうという発想が、
やや小手先の手法になってる気がする。

ちなみに、
「西日溜まりの影」のイメージは、
「夏至の古色蒼然」にも、どこかしら似ています。

なお、以前の村上の句では、
「影の少なき無人駅」を、
「影のみ増ゆる無人駅」と直してましたが、
今回も影の存在感を強める添削になってますね。



春風亭昇吉。
キープボトル 墓碑銘となる夏のBAR
晩夏なるBAR 墓碑銘となるボトル
(添削後)

原句はやや説明的な感じがします。

かといって、
添削の「墓碑銘となるボトル」で意味が伝わるかどうか、
これはこれで勇気がいるかなあ、とも思う。

むしろ、この場合は、
晩夏のBAR 墓碑銘となりしボトル

と過去形にしたほうが分かりやすいのでは?
これから亡くなるのではなく、すでに亡くなってるのだから。



森口瑤子。
命日を集う紫陽花のレストラン


18音の破調ですが、
最後が「ン」なので、さほどの字余り感はない。

先生は「レストラン」じゃないほうがよい、
…とのことですが、

これといった代替案は思い浮かびません。



キスマイ千賀。
鰻待つ 今日は台本家に置き


先生いわく、
季語の「鰻」は「鱧」にも代わりうる、とのこと。

たしかに、
鰻にガッツくより、優雅な鱧料理のほうが、
「今日は仕事を忘れて…」という気分にふさわしいかも。



森迫永依。
風青し カンロ杓子の三拍子


字面だけを見たら何のことか分からないよ…(^^;

カンロ杓子は、
かき氷のシロップだけでなく、
ラーメンのタレを入れるときにも使うし、

そもそも、
三拍子の「シャカシャカシャカ」ってのは、
カンロ杓子の音じゃなくて、氷を削る音でしょ?
それとも「イチゴとあずきと練乳の三拍子揃い踏み!」みたいなこと?

わたしなりに作者の意図を察すれば、
「風青し」は季語として確定してないし、
「氷を削る三拍子」と書いたら冬の句になっちゃうから、
無理やり「カンロ杓子」で代替させたんでしょうねw

たしかに、
「氷」は冬の季語だけど、
「かき氷」は夏の季語なのだから、
風青し 氷搔きたる三拍子

とすれば、ちゃんと夏の句になるのでは?



星野真里。
混濁のスープ 青山椒の蒼


作者は担々麺のことを詠んだらしいけど、
青山椒の入ってるスープは他にもあるし、
具材の多いスープのことだと誤読する人もいるはずです。

作者の意図を察するに、
「濁ったスープ」と「青山椒」が印象的だったから、
その2つの取り合わせにしたのか?

それとも、
ストレートに「担々麺」と書いたら芸がないから、
それを連想させる「混濁のスープ」で代替させたのか?

でも、どっちにしろ、
担々麺のことしか読んでないわけだから、
わざわざ取り合わせにする必要がありませんよね。

かりに一句一章にまとめるなら、
担々麺の青山椒に身の締まる

みたいな感じにすべきだろうし、
かたや二句一章の取り合わせにするなら、
ひとり席 担々麺の青山椒

みたいな感じでしょうか?
さすがに「行きつけ感」までは出せませんが。



ニューヨーク嶋佐。
夏惜しむ キープボトルを一人呑む


全般的に陳腐な内容。

夜のBARの場面だとすれば、
季語が実景として見えないのも弱い。

それとも、
鈴木雅之の「ガラス越しに消えた夏」みたいに、
明るいうちから海を眺めて飲める店でもあるのかしら??





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最終更新日  2023.08.12 12:58:42


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