まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2023.08.28
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芋煮ゆる紙の器の頼りなく 残暑の夜誰も洗わぬカレー鍋 秋晴や焦げ石に米粒一つ 山雀の高音竹皿のカレー 寸胴に溶かすカレー粉秋の蝉 青空の炊事遠足しゃばカレー 秋涼し銀に口紅底フィルム
プレバト俳句。
お題は「アウトドアのカレー」。




梅沢富美男。
芋煮ゆる紙の器の頼りなく


掲載決定だそうですが、わたしならボツ。

おそらく作者は、兼題に沿うべく、
カレーとも芋煮とも解釈できるように、
動詞を使って「芋煮ゆる」と書いたのだろうけど、
そもそも秋の季語「芋」は里芋のことだから、
その時点でカレーじゃありません。

そして、
「芋が煮えている紙の器」ってのは、
(間違った描写とまでは言わないものの)
まるで紙の器で芋を煮たような言い方で、
やや違和感がある。

下五の「頼りなく」も、
あえて終止形でなく連用形にした必然性が問われる。



そして、何より、
描写すべきは器の "頼りなさ" ではなく、
あくまで "料理の旨さ" であるはずなのだから、

兼題の「カレー」からは離れますが、
頼りなき紙の器の芋煮かな

とするのが常道でしょう。

かりに、
あくまでも兼題に沿うなら、

カレールーを芋煮に溶かして、
頼りなき紙の器に芋煮カレー

にしちゃうか、
破調の17音で、
頼りなき紙皿にじやがいもカレー

とでもすべきでしょうね。

ちなみに、
「玉葱」は夏の季語、
「馬鈴薯/じやがいも」は秋の季語、
「人参」は冬の季語ですが、
カレー自体では季語になりません。




えなこ。
残暑の夜 誰も洗わぬカレー鍋


これが才能アリの1位でしたが、
わたしなら65点ぐらいの凡人かなあ。

たしかに、
堅実な作風には好感がもてるし、
今後に期待できる気はしますけど。



そもそも、
これは屋外のキャンプの場面ではなく、
主婦が自宅で愚痴ている場面に見えるのです。

中七の「誰も洗わぬ」は、
説明的な描写であると同時に、
読み手によっては、
「誰も洗わないから仕方なく自分が洗う」
とネガティブな解釈をされかねません。

作者自身は、
ネガティブなつもりではなく、
「洗ってしまったらキャンプが終わってしまう」
「いつまでも楽しい時間が続いてほしい」
とポジティブなつもりで書いたらしいけど、
その意図はちょっと伝わりにくい。

とくに中七の「誰も」の3音は、
(人数の多さを想像させる効果がある反面)
他人の身勝手さを責めるニュアンスも帯びます。



まずは、
屋外であることを明示する必要があります。

そのために、
たとえば「キャンプ」「テント」などの夏の季語が使える。

そして、
むしろ「誰も」とは書かずに、
テントの夜 洗わぬままのカレー鍋

のように書くほうが、
「あえて余韻を楽しむために洗わない」
という意図は伝わりやすいはずです。



武田真治。
青空の炊事遠足 しゃばカレー


北海道の学校行事で作った水っぽいカレー。
「炊事遠足」は北海道ならではの学校用語。
「しゃばカレー」は作者自身の造語。
そういう単語をどこまで容認するかの是非!

読み手によっては、
出所した人が「娑婆 しゃば 」で食べるカレーとか、
三段切れで「青空の炊事 / 遠足 / しゃばカレー」と読むでしょう。
なお、季語は「遠足」で晩春ですが、
北海道の炊事遠足は夏や秋にも行われるそうです。

才能アリの2位でしたが、
わたしなら40~50点台の凡人ですね。

北海道の地域色を出すのなら、
豊平川の秋 しゃばしゃばのカレー

のようにも出来るわけだし、

かりに「炊事遠足」を容認するとしても、
おかしな造語まで使う必要は感じません。



エルフ荒川。
秋涼し 銀に口紅 底フィルム
秋涼し カレーのための銀の匙
(添削後)

三段切れで意味不明な句。

本人いわく、
屋外でカレーを食べてたら、
写真を撮るのも忘れるほど楽しくて、
銀のスプーンにも口紅をつけてしまった、…とかなんとか。
そしてカバンの底のケータイを「底フィルム」と書いたらしい。


たとえば、
キャンプ小屋 カレースプーンに口紅

のようにも出来るけど、
なんか不倫の証拠をつかんだ場面っぽい?

せいぜい破調の17音で、
インスタ映えも問わぬキャンプのカレー

ぐらいにしか出来ません。



IKKO。
寸胴に溶かすカレー粉 秋の蝉
秋の蝉 寸胴鍋へカレールー
(添削後)

梅沢も、先生も、
季語は上五に置くべきと言ったけど、
わたしは下五に置くほうが印象的だと思うし、
上五に置くなら「秋蝉や」と詠嘆するほうがいい。

動詞が不要といわれれば、
たしかにそうかなとは思いますが、

たとえば「溶かす」と他動詞にせず、
寸胴に溶けるカレー粉 秋の蝉

と自動詞にすれば幾分かは描写的になるし、

あるいは、あえて他動詞を使って、
寸胴へカレー粉溶けば秋の蝉

とする方法もあるかと思います。



キスマイ北山。
秋晴や 焦げ石に米粒一つ


先生絶賛の句でした。

たしかにね。

失礼ながら、
「ほんとに北山が書いたのかしら?」
と思うほどいぶし銀の渋い出来です…。



千原ジュニア。
山雀 やまがら の高音 竹皿のカレー


季語は「山雀」で夏。

ジュニアには珍しく、
まるで横尾みたいな、
句またがりで「AのB/CのD」の対句。

竹の素材と、
甲高い山雀の鳴き声が響き合って爽快です。

ただし、
山雀の鳴き声を知ってる人には、
かえって「高音」の説明が蛇足になりうるし、
それを省く代わりに、
もうひとつ情報を加えることも可能ではある。

かりに場所の情報を加えれば、
山雀の渓谷 竹皿のカレー

のように出来るかもしれません。





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最終更新日  2023.08.28 10:58:37


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