まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2024.02.19
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本職に黙礼される今年も春 春の雲血のり右目に染みており 春夕焼台本ト書き「ここで泣く」 初刑事手錠震わす余寒かな 冴えかえる帰宅後妻の取り調べ ロケバスに積む犯人の春日傘 張り込みのあんぱん香る桜漬け 刑事ドラマ沈黙破る鶯よ
2月15日のプレバト俳句。
お題は「刑事ドラマ」。



矢柴俊博。
春の雲 血のり右目に染みており
春の雲 右目に染みてくる血のり
(添削後a)
撮影のどか 右目に染みてくる血のり (添削後b)

紺野まひる。
春夕焼 台本ト書き「ここで泣く」
春夕焼 ト書き犯人「ここで泣く」
(添削後)

どちらの句も、
上五に季語を置き、撮影の場面と取り合わせた作品。
添削は入ったものの2句とも「才能アリ」の査定でした。

なお、矢柴俊博の添削は、
(b)よりも(a)のほうがいいと思う。
状況は下五の「血のり」で想像できるはずだから、
わざわざ冒頭から字余りでネタバレしなくともよい。



内藤剛志。
本職に黙礼される 今年も春
本職に黙礼さるる春やまた
(添削後)

上の2句をおさえて、
今週の一位だったのがこの作品。
しかし、その評価が適切かは疑問です。

まず作者が誰かを知らなければ、
上五の「本職」の意味が分かりにくい。

リズムや形式の面でいうと、
下6の字余りもさることながら、
中七に切れがあるかどうかも判然とせず、
(終止形か連体形かが不明瞭)

俳句の形として、いまいちボヤッとしてる。



添削句は、
古語を使って動詞が連体形であることを明示し、
くわえて下五の字余りも解決してます。

ちなみに、ここで注目したいのは、
添削句の下五「や」の用法です。
以前もこういう添削があった気がするけど、思い出せない。


一般に、
切れ字「や」は場面を転換するため、
リズムだけでなく意味の切れも生むのですが、

実際には、
場面転換をともなわない「や」もあって、
たとえば芭蕉の「古池や」も、
じつは場面を転換してないとの解釈がある。

また、日本語の間投助詞「や」には、
詠嘆のみならず呼びかけの意味もあるので、
たとえば「ポチや、お食べ」のようにも使える。

そこに場面転換はなく、
多くの場合はリズムの切れさえありません。
詩歌にも「これやこの」「春や春」などの例がある。
それらは切れ字とは異なる「や」の用法です。

なお、
場面を転換しない「や」の用法については、
↓以下の記事でも言及されてます。
https://www.sakigake.jp/special/2020/haiku/article_55.jsp



トレンディエンジェル斎藤。
冴えかえる帰宅後妻の取り調べ
冴返る深夜の帰宅 妻や待つ
(添削後)

下五の「取り調べ」はつまらない比喩。
しかも、比喩だと伝わらなければ、
妻が容疑者になった場面と誤読されます。

かたや添削のほうは、
またも下五で切れ字ではない「や」の用法!
もしや先生のマイブーム?

その是非はともかく、
今後、この用法が増える可能性もあります。



大友花恋。
初刑事手錠震わす余寒かな
余寒なり 手錠をかける初シーン
(添削後)

切れのない一句一章を「かな」で締める形。
俳句の型はちゃんと出来てますが、
主語に助詞がないため、
リズムが上五で切れるのはちょっと惜しい。

上五の造語「初刑事」は、
兼題写真がなければ読み手に伝わらず、
「刑事としての初仕事」
「生まれて初めて会った刑事業の人」
などの誤読を招きます。

また、
初めての刑事役に挑んだ「緊張」を、
季語の「寒さ」と重ね合わせたことで、
かえって焦点が散漫になっている。

それらの問題は、
刑事 デカ 役の手錠震わす余寒かな

のように書けば、いちおう解決します。

季語の「余寒」と「震え」が、
重複 (もしくは因果関係) に当たるとの見方もありますが、
「刑事役の手錠の震えない余寒があったら持って来い!」
とまでは言えないし、

むしろ原句の問題は、
「緊張」&「寒さ」の二重の因果が重複する点にあるので、
「緊張」の要素を排して「寒さ」だけに特化したほうが、
(添削というよりも改作になるけれど)

手錠の金属の冷たさも際立ってくるはず。

かたや添削句のほうは、
「緊張」&「寒さ」を両立させたまま、
それらが「震え」に帰結する因果関係を排除した形です。
もちろん、それもひとつの選択ではある。

ちなみに、
添削の上五は「なり」で言い切る珍しい形ですが、
その是非はちょっと判断しかねます。



清水アナ。
刑事ドラマ 沈黙破る鶯よ


ここで描かれてる状況は、
舞台かドラマかの違いはあれど、

森口瑶子の「くつさめ (くっさめ) 」の句とほぼ同じ。

上7字余りの「刑事ドラマ」はちょっと状況説明的だし、
下五の「よ」は詠嘆するだけの必然性に乏しく、
取ってつけただけの音数合わせに見える。

鶯の鳴き声を《子季語》と見なせば、
刑事 デカ 役の台詞遮るホーホケキョ

のような定型にも出来ますが、
それでもまだ因果関係の説明くささが残る。

やはり森口瑶子の「くっさめ」と同じく、
刑事 デカ 役の沈黙 鶯の初音

のような対句に直すほうが描写的ですね。



森口瑤子。
ロケバスに積む犯人の春日傘


犯人が女…ってところにドラマがありますよね。
しかも日焼けを嫌う優雅な金持ち女の役どころ。
その天気の良さとサスペンスの暗さの対比も面白い。



梅沢富美男。
張り込みのあんぱん 香る桜漬け
桜漬けほんのり 張り込みのあんぱん
(添削後)

原句は、
切れがあるのかないのか分かりにくいものの、
香るのは「あんぱん」じゃなく「桜漬け」だろうから、
構造的には中七で切れる句またがりです。
(作者にその自覚があるかは知らんけど)


そして、
そのことをハッキリさせるためには、
張り込みのあんぱん 桜漬け香る

と書いて動詞の主語を明確にすればよい。


▽過去の記事はこちら
https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12




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最終更新日  2024.02.22 15:28:30


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