マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2011.06.15
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 見えて来るもの 

 ゆっくり走ると、これまでに気づかなかったものが幾つか見えて来る。早朝から応援してくれる人が前より少し増えたみたい。静かな牧野の中に時々現れる家。ここではどんな暮らしをしているのだろう。心地良い涼風、そして美しい野の花。都会では失われた手つかずの自然が、コースの直ぐ傍にあることの不思議さ。木立、小川、曲がりくねる道、遥かな先に聳える青い山々。

 呼吸も脈拍も苦しくはない。きっと遅いなりに一定のリズムで走っていることが、心臓のためにも良いのだと思う。動悸がやがて同期し、徐々に不整脈が治まる。私はそんなイメージで走っていた。H多さんに抜かれたのは4km手前。そしてK村さんに追いついたのは8kmほどの所か。きっと仲間の男性ランナーでは最後尾のはず。でも、いつも通り自分らしいレースが出来ればそれで十分。

 今回はギャラクシー・メンバーズクラブ入りが掛かったレースだったが、もうそんなことはどうでも良かった。香川のTANさんが出場した3回の100kmレースを全てリタイヤしたのは、一昨年のことだったか。「そんなことが本当に起きるのか」と不思議に思ったが、自分にもいつの間にか「老化」が忍び寄っていたのだ。

 10km地点の通過は72分ほど。やはりスピードは依然としてゆっくりのまま。遥かに遠い道のりだが、同じようなペースの人が周囲にいる。津波で死んだ従兄のことを思う。80半ばの彼は最年長の従兄で、海岸にある病院に入院中津波にさらわれた。その時には既に意識が無かったそうだ。彼と最後に話をしたのは確か30年ほど前のはず。自分も歳を取った訳だ。

 きれいなゴルフ場が右手に見えて来る。ここは大体18km辺り。第2回の時はこの付近をクマが横切ったと聞いた。アップダウンが小刻みに続く。太陽は既に高く、あれほど涼しかった風も止んだ。頭から汗が噴き出る。ポシェットからパルプ繊維を取り出して首に巻く。頸動脈を冷やせば楽に走れるからだ。そして目の保護のためにはサングラスを。クール

 秋田自動車道を潜る。20km地点の通過も2時間24分ほど掛かった。第4AS(21.2km)で堪らず頭から水を被る。まだ朝の6時半頃なのに、気温は23度を越えた感じ。北上川の支流である和賀川を渡り、JR北上線の跨線橋を渡り花巻市へ。山口集落付近に「高村光太郎記念館」の標識。ここは光太郎と一体どんな関係があるのだろう。

 間もなく道は東へ曲がり、太陽と向き合う。自販機でミルク紅茶を一気飲み。糖分が命を蘇らすみたい。田圃ではカエルの合唱だ。辛抱に辛抱を重ねて第7AS(35.4km地点)へ到着。ここから花巻温泉街への「なめとこ街道」が始まる。最大の難所である峠に向けて、徐々に高度が上がって行く。<続く> 





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Last updated  2011.06.15 19:11:30
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