マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2013.06.15
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 じぇじぇじぇ~ 

 真っ暗なトンネルを走るのは勇気が要る。足元が全く見えないからだ。それでも道路が平らなことを信じて足を踏み出す。所々に避難用の照明があり、そこだけは明るい。また、たまに車が通る時は、周囲が見えて助かる。そのうち壁が自分の方に寄って来るような錯覚に陥る。闇との戦いは、暗くて狭い所が嫌いな人にとっては相当恐怖に感じるはず。中には思わず歩き出すランナーもいるほどだ。

 トンネルの前方に光が見えて来るとホッとする。8年前の第2回大会は5月開催だったが、トンネルの外に大量の雪があった。中山峠のあるこの県道34号線は、冬期には閉鎖すると聞いた。それほど雪が深く、厳しい気象条件なのだろう。だからトンネル内が寒いのも当然。でも私はランニングシャツでも平気。むしろ気持ちが良いくらいだ。

 景色が眩しい57.5km地点の第11AS。ここには水が十分にあった。第1関門で水を飲めなかったランナーは、13.3kmを水無しで走ったことになる。きっと苦しい思いをしたに違いない。いや、中には走る気持ちが失せてしまった人もいると思う。スタッフの人が自分のお握りを出してくれた。有難くそれを頂き、水と塩をペットボトルに補給する。





57.5km.jpg


               ≪ 57.5km地点の疲れ切った自分 ≫




 変な顔だが、ここで撮った写真を載せておこう。頭からはみ出したオレンジ色の物体は、濡れたタオルハンカチ。常に頭が冷えるよう、帽子の下に入れているのだ。そして後ろ向きに帽子を被るのは、延髄が直射日光に照らされ、運動機能が落ちるのを防ぐため。長時間高温に曝されるウルトラマラソンでは、色んな工夫が必要だ。

 ここからは急激な下り。時間を稼ぐには好都合だが、あまり速く走ると後で足や膝に来る。下り坂は疲労したランナーにとって、結構負担になる場所でもある。まだ元気だった頃は猛スピードで下ったものだが、走り込んでいない今は、慎重に下るしかない。後から誰かが追って来る。シャツを見て、「宮城県の人ですか。○○さんを知ってますか」と聞く。「ああ知ってるよ、仲間だもの」。

 彼も宮城の人で、100kmレースは今回が初挑戦の由。「もう少し落とせば良いのですが」と言う彼の体重は75kgとか。まだ気持ち良いスピードを出せるのが嬉しい。この先のコースや注意点を彼に教える。足が痛いと言って、そのうち彼は遅れ出した。渓流ではフライフィッシングの釣り人。これも毎回見かける懐かしい風景だ。

 ほぼ峠を下り切った所が61.9km地点の第12AS。スタッフの小母さんが巻き寿司を出してくれた。たった1個だが、今は貴重な食べ物。ウルトラマラソンはバナナだけじゃ走れない。腹に溜まる「ご飯もの」が、どうしても必要なのだ。ここで第2関門の制限時間を確認。1人のランナーが正確に教えてくれた。そこまでの距離と残りの時間を疲れた頭で計算する。

 「大丈夫、行けるぞ~!!」。大声で叫んで飛び出した私。目の前には1人のランナーが激走中。第2関門の制限時間を教えてくれた彼は5回完走のGMCメンバーで、ゼッケンの色が違う。「制限は12時40分だが、第3関門を通過するためには12時30分までに着く必要がある」と彼。今回は50kmまでと思っていた私は、正直そこまでは考えてなかった。

 緩い下りが心地良い。ここで飛ばすと、後で効くのは分かっているが、自分の体に任せる。どうやら第2関門は突破出来、第3関門の銀河高原までは行ける計算。良いぞ良いぞ、これは嬉しい誤算。もうすぐ50kmの部のコースと出会う県道1号線は近い。問題はそこから。緩いがずっと続く登り坂。日光を遮るものが全くない地獄のような道なのだ。

 ようやく県道1号線に合流。足音を聞いて振り返ると、体重75kgのランナー。彼にも注意点を教える。第3関門まで行くには、次のレストハウスでのんびり休憩しないことが大事だ。ところが彼はそこに荷物を預け、着替えする予定とか。初挑戦の彼なりに立てた作戦だろうが、多分それでは苦戦するはず。

 選手のゼッケンナンバーを読み上げる声が前方から聞こえる。おお~っ、やっとここまで来たか~。喜び勇んでASに飛び込むと、お握りが1個もない。何と走り去ったランナー達が全部食べてしまったのだ。「味噌汁とキュウリがあるよ」と小母さん達。あのねえ、それじゃ全然エネルギーにはならないの。

 水が全くない関門も酷いが、ご飯ものが全くない「レストステーション」も酷い。まさにじぇじぇじぇ~!!の事態発生。「レストステーションと言うのは、ご馳走がある場所の意味なんだよ」。小母さん達にそう話しても解決にはならない。そこでポシェットから草餅を取り出して食べる。驚く小母さん達を尻目に、ペットボトルにはアスリートソルトを投入。これはミネラル類を豊富に含んだ、沖縄県宮古島産の優れ物なのだ。何事も用心が肝要。ウルトラは経験が物を言うスポーツだ。


 次の目標73.3km地点の銀河高原。そこはこれまで自分が走った最低記録の場所。だがこの体調と練習不足でそこまで行けたら「オンの字」だ。この「いわて銀河」は「秋田内陸」と違って、関門を通過した場合はリタイヤの意思表示をしない限り次の関門まで走らせてくれる。これでどうやらY田さんと話した「銀河高原ビール」が飲めそうだ。<続く>




第3関門.jpg


                       ≪ 次の目標は・・ ≫         






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Last updated  2013.06.15 05:37:11
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