マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2018.10.24
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カテゴリ: 文化論
~わが国語は日本語~

  ホトトギスソウ

 先だっての俳句教室でホトトギスソウの話になった。どんな花か知らないと言うので、「鳴いて血を吐くのあれだよ」と私が言うと、「それは鳥でしょ」と1人の女性。それはそうなんだが、なぜ花の名が鳥の名から来たかを私は話したつもり。花びらに赤い点々が散らばるのが花のホトトギス(草)。その様子が「鳴いて血を吐く」ように見えるため、そう名付けたと思ったのだ。

       ホトトギス  

 一方、この鳥にも羽根に斑点があるが、これが血のようには到底見えない。ところがこの鳥の口の中は真っ赤で、まるで血を吐くように古人は感じたのかも。だが人は普通、鳥の口の中まで見ることはない。それにこの鳥は深い森に棲み、滅多に姿を見せることはないのだ。だが声なら聴いたことがあるかも知れない。「特許許可局」とか「てっぺんかけたか」と聞こえるので有名。

  白花のホトトギスソウ

 昔から例えとして使用されるのが鳴き声。「鳴かぬなら」の次が「殺してしまえ」なら信長。「鳴かしてみしょう」が秀吉。そして「鳴くまで待とう」が家康とされ、武将の気性を表すとされる。私は夜、鳴き声を聞いたことがある。もう1度は「いわて銀河」の100kmレースの途中。こちらは深い森の中だった。また、ウグイスなどの巣に托卵することでも有名。他の鳥に育児を委ねる変わりものだ。

      正岡子規   

 近代俳句で有名な正岡子規。実はこの「子規」もホトトギスと読む。彼は従軍記者として戦地に赴く途中喀血し、帰国して入院する。不治の病である結核と覚悟し、「鳴いて血を吐く」ことから俳号を子規とし、何句かホトトギスに因む句を詠んだ由。徳富蘆花の小説『不如帰」も、ホトトギスと読む。他に時鳥、杜鵑、霍公鳥などの漢字表記がある。かつては案外暮らしの中で親しみ深い鳥だったのだろう。

雑誌『ホトトギス』

 また雑誌の『ホトトギス』も有名。こちらは子規の友人、柳原極堂が明治30年(1897年)に創刊し、平成25年(2013年)には通巻1400号に達した。俳句の専門誌だが、当初は漱石の『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』も載った総合文芸誌。現在は高浜虚子の曽孫である稲畑広太郎が主宰し、五七五の定形と季語を厳守する本格派。ホトトギスは、俳句を学ぶ者には極めて関りの深い名なのだ。


  バベルの塔  

 新約聖書ヨハネ伝には「最初に言があった。言は神と共にあった。言は神であった」とある。だが慢心した人類は、神に近づこうとして高い塔を建てた。いよいよ塔が天に近づいた時、神は怒って塔を破壊する。そして人々の言葉をバラバラにした。言葉が互いに通じないよう、罰したのだ。

 人類が多くの言語を持つのは、この時以降と聖書は説く。有名なバベルの塔の伝説だ。だが最近の研究によれば、アフリカで誕生した現代人「ホモサピエンス」の祖先たちが世界へと拡散する中で、新しい言語が派生したことが判明している。

  木の実

 縄文人が後からやって来た弥生人と混血し、私たち日本人の祖先となった。滅亡したネアンデルタール人の遺伝子が最も良く残っているのが日本人。そして古いアジア人のDNAを色濃く有しているのが日本人、チベット族、インド洋のアンダマン諸島の民族。いずれも海や高原で隔絶されたために、他民族との混血が進まなかった由。縄文人、沖縄の人、アイヌ人のDNAが極めて近いのも、同じ理由による。

   渋柿  

 では言語はどうか。琉球語は日本語の方言で、古代の日本語が色濃く残されている。一方、日本語とアイヌ語は文法上も異なる言語。だが、通商により幾つかの言葉がそれぞれ借用語となった。さらに言えば、神とカムイのように、重要な言葉の類似性が不思議でもある。

 日本人は古来「言霊」を信じて来た。そして「やまとことば」は日本語の原型として縄文以降現在も生き続けている。いわゆる「訓読み」の言葉がそうらしい。「だからこそ決して言葉を軽んじてはいけない」と、老人は静かに微笑むのだが。





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Last updated  2018.10.24 00:00:30
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