マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2021.08.14
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~わが日常の詩~



    まるで戻り梅雨のやうな天気
    全国のあちこちで水害が発生してゐるやうだ
    そんなある日の朝 雨が降ってないので
    俺は久しぶりに走らうと思ったのだが駄目だった
    腰が酷く傷んでゐた
    去年2か月かけてやった断捨離のせいか
    それとも今年の草取りのせいか
    ともかく俺はもうランナーではなくなったみたひだ



      その代わりに俺は畑の野菜を収穫した
      ゴーヤが3本トマトとミニトマトが1個
      洗面所の鏡を見て驚いた
      そこに青い顔した俺がゐたからだ
      これはきっと「苦瓜病」に違ひない
      最近俺はゴーヤばかりを食ってゐた
      ゴーヤの佃煮 ゴーヤの炒め物 ゴーヤのサラダ そしてゴーヤの煮物
      俺は自分が作った野菜を無駄にはしない
      良く出来た野菜は近所の人に配り
      俺は出来損ないの野菜も残さず食ふ
      苦くて青いゴーヤの別名は苦瓜
      ゴーヤを食ひ過ぎたそのせいで俺は顏まで青くなり
      きっと「苦瓜病」になったのかと
      新型コロナと「苦瓜病」はどっちが怖いか



   ビーグル犬のモモが吠へてゐる
   まるで悲しくて鳴くやうに
   まるで淋しくて鳴くやうに

   おいモモよ
   悲しいのはお前だけじゃないぞ
   淋しいのはお前だけじゃないぞ

   正確には比べられないだらうが
   ひょっとしたら俺の方がもっと悲しくて
   もっと淋しいかも知れない
   なあモモよ



    広くて大きな家に一人住まひの俺
    夜中に何度もトイレに起き
    テレビを点けてその音を聞きながら布団に横たはる俺

    俺はきっと頻尿なんだらう
    俺はきっと睡眠障害なんだらう
    そして高血圧に高血糖に不整脈に緑内障
    ちょっと前には耳鳴りや眩暈もあった
    自転車で転んで硬膜下血腫になって手術もしたし
    不整脈の手術は3回やった

    そんな俺でもまだ生きてゐる
    いやひょっとして何者かに生かされてゐるのやも知らん
    不思議な話だが俺はいささか怖いのだよ
    ある日バッタリ仆れても辺りには誰もゐない
    誰も子供たちに知らせるひとがゐないんだよなあ

    人が死ぬのは最初から決まったことで仕方ないが
    自分で自分の葬式は出来ないのだよ
    自分なりに葬式の内容は決めてゐるが
    それを子供たちに伝へることが出来ないのだよ

    さてどうすべきか
    年取った俺はそんなことを想ふ日々だ
    最近の俺は特に



    雨の中で赤いハイビスカスの花が咲いてゐるのが
    和室の窓から見へた
    お~い俺の3人の子供たちよ
    お前たちは元気で暮らしてゐるのだらうか

    特に東京の2人の息子たちは
    新型コロナに感染してはゐまひか
    何か困ってゐることはなからうか
    と、東北に暮らす老ひた親の俺は考へる

    でもどうすることも出来ないでゐる
    悲しい淋しい父親の俺だよ



         ひょっとしてと考へた俺は柚子の枝先を見上げた
         そしてたらばほらね
         今年もちゃんと実が生ってゐたよ
         まだ青くて固い柚子の実が

         柚子の白い花はいかにも清楚だ
         そして良い匂ひがして俺は大好きだ
         桃栗三年柿八年柚子の大馬鹿十八年

         そんな柚子の実を観ることもなく
         かつて俺の妻だった女は俺の許を去った
         彼女がしっかり溜め込んだわが家の金をほとんど持って

         お~い かつて俺の妻だった女よ
         お前は元気で暮らしてゐるのだらうか
         五十代半ばから少しずつ現れた認知症は
         その後もっと進んだのだらうか



      台所のテーブルに立つ3本の「中濃ソース」
      そのうちの2本は最近俺が買った
      ソースが切れかかったため1本買ったが
      それを忘れてまた1本買った

      それで念のために残っていた古いソースの
      消費期限を確かめた
      そしたら驚くことに2014年の10月だった

      それを俺の妻だった女が買ったのは
      それよりもっと前だったことになる
      その古いソースを俺は4年かけて使った
      だが保存料も入ってないのに何ともなかった

      そして俺が買ったのと少し様子が違ふ
      右側のソースの消費期限も確かめて見た 念のために
      そしたらそれは2016年の5月
      やはり彼女が買ったもの
      それを俺が気づかなっただけの話

      滅多に使ふことのない中濃ソース
      使ふのは「鰺フライ」を買った時だけ
      レンジで「チン」した鰺フライに
      中濃ソースをかけて食ふと旨いんだよなあ

      だからこれからもせっせと鰺フライを買はうと思ふ
      自分では作れない油を使ふ揚げ物だから



    広い広い二階建ての一軒家に残る装飾品は
    かつての思ひ出の品
    アイヌ風の彫刻は大阪勤務の時に
    銀婚式の記念で二人で行った北海道で買った
    重い重い彫刻だ

    一対のシーサーは沖縄勤務の最終年に
    俺が思ひ出の品として買った
    沖縄勤務の三年目は俺と長男だけが沖縄に残った
    長男がちょうど高校三年生だったからだ
    残りの家族は四国に行った
    大学生になった長女が棲む街へ
    沖縄の猛暑に辟易した妻が
    高校受験を控へる次男も連れて

    沖縄に残った俺は必死に仕事をし
    一日二回の食事を作り
    何とか長男を飢へさせないやうに頑張った
    そのストレスで俺は糖尿病予備軍になった

    食ふことが二人の生命を繋ぐことだったから
    甘い豆の缶詰を一度に半分ほど食った
    長男と一緒の「単身」生活は苦しかった
    だが俺は走ることと詩を書くこととで救はれた

    そして花台は屋久杉の根っこ
    鹿児島で会議があった際に指宿で買った
    天然記念物の屋久杉は伐採禁止だが
    地下の「根っこ」は入札で買へるとのこと

    どれもみな思ひ出の記念品
    そしてかつて一つの「家庭」があった証拠
    どれもみな重たい物を買ったのは俺だ
    今もまだ重たい「家庭の残骸」



             かつて妻だった女がこの家を出てはや四年と四ケ月
             俺は一度の外食もせず日に三度
             自分の食事を自分で作ってゐる

             その間に俺は歳を取り
             そして走れなくもなった
             かつては100kmや200kmのレースも
             完走出来た男が今や走りたくても走れない

             悲しいし 悔しいし 淋しい日々
             それでも自分で何とか暮らせてゐる日々
             そしてブログを日課と出来る日々

             記憶力はすっかり衰へたが
             一日三食しっかり食べ
             新聞を読みネットとテレビとでニュースを確認し
             自分なりに考へる日々でもある

             それだけでも有難いことじゃないか
             それだけでも嬉しいことじゃないか
             なあ自分よ なあ俺よ



    広い家の居間で一人飲む珈琲
    インスタントの超安物だけど俺にはこれで十分
    ミルクも安物の低脂肪乳だけど俺はこれで満足

    外ではまだ雨が降ってゐる
    それを観ながら俺は詩を書いてゐる
    わが街仙台はもう薄暗くそして寒い

    今日からお盆だがこの先ずっと雨ばかりの予報
    コロナ禍もあって厳しい日々だ
    だが俺にとっては独り暮らしになったあの日からずっと
    実に厳しい耐乏の日々だった

    だが俺よ 年老ひた自分よ
    嘆くのはよさう
    この先に明るい希望の灯はないが
    それでも真っ直ぐ進まうではないか

    なあ俺よ 歳老ひた自分よ
    せめて気持ちだけでも若々しく
    これからも生きて行かうじゃないか

    これまで同様に愚直で一筋に
    それが一番俺には似合ってゐると思ふ
    なあ青い顔した苦瓜病の俺よ
    鏡の中のそこのお前よ





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Last updated  2021.08.14 14:52:26
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