マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2022.03.20
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 英国国防省が17日に発表した分析によれば、太平洋戦争の「硫黄島の戦い」で米国海兵隊が36日間で失った兵士は7千人なのに対し、今回のウクライナ侵攻でロシア軍は20日間で8千人(ウクライナ側の発表では1万2千人)の兵士を失い、装備の10%を失ったと。別の情報によれば、ロシア軍内の通信、ラジオ及び携帯電話の内容は全てウクライナ側に筒抜けで、戦死した4人の高級将官も狙い撃ちされたようだ。



 以下は3月16日の夕刊フジ電子版「ZAKZAK」に寄せた、元自衛隊東部方面総監渡辺悦和氏が考える「プーチンとロシア軍の誤算」に関するレポートを、筆者の責任で取りまとめたもの。

① ロシアは「全領域戦」で敗北している。つまり陸軍、海軍、空軍に加えて情報戦、サイバー戦、メディア戦、経済戦の総力を上げて戦うのが現代戦争だが、ウクライナはゼレンスキー大統領自らが連日国民を勇気づけ、世界にロシアの暴挙を訴えるメッセージを発信し続けている。これに対してロシアは「嘘」や「陰謀論」で固めた粗雑な情報を発信した。



② ロシアは侵攻を開始した2月24日から20日経っても、首都キエフを陥落させていない。それどころか武器の供与や経済的な支援を中国に要請していると伝えられるほど。一方ウクライナ軍の士気の高さと欧米が供与した兵器の性能の高さ、ロシア軍の侵攻計画の杜撰さが、ロシア軍の苦境を招いた。




➂ ロシア軍の現兵力で戦力を分散させる多方向への侵攻作戦は間違い。昨年11月からウクライナ国境付近でロシア軍は軍事演習をしていて疲れている。第一線の部隊は数日間程度の燃料や食料しか携行しておらず、兵站線(食料や燃料を補給するための部隊)が長距離になっている。そして制空権も取ってないため空輸も出来ない。加えて西側諸国のロシア侵攻に対する反発や軍事支援の「見積」が甘く、多くのミスが重なった。



④ 欧米諸国がウクライナに供与した武器の中でも、トルコが提供した偵察型攻撃ドローン。米国が提供した対戦車ミサイル「ジャベリン、携帯型地対空ミサイル「スティンガー」などが特に効果を発揮した。しかしこれまでロシアが発射したミサイルは千発を超え、市民が避難するビルなどを砲撃する非人道的行為は日を増すごとに激しくなっている。プーチンの焦りが深刻だ。



⑤ 通常戦争では攻撃側5,防御側1の割合で戦うのが普通。ロシアがウクライナに勝つためにはウクライナの5倍の兵力が必要。ところがウクライナ軍は正規軍が16万人、国家親衛隊が6万人、市民の義勇軍である領土防衛隊が13万人の合計35万人がいる。この5倍だとロシア軍は175万人必要なことになるが、侵攻に参加した正規兵は15万人から19万人。しかもこれが分散したため1正面は4万人ちょっとにしかならない。



⑥ 独裁政権の情報機関で分析官は、トップが喜ぶような情報しか出さない。ロシア連邦保安庁(FSB=KGBの後継組織)自体が「侵攻は完全に失敗した」との内部文書を出していることを西側の情報機関が確認している。



⑦ 米国の情報機関はロシア側の軍事機密を完全に掌握しており、それを開示することで敵を動揺させる作戦を取った。欧米諸国は今後ロシア国内の反政府運動を拡大させる戦略を考え、プーチン政権は倒れることになる。



<追補> 元軍人の渡辺氏は軍事的な要素からの敗因を述べたが、ロシアを困窮に追い詰めたのは欧米日などが徹底して行った経済制裁やSWIFTのような国際的な決済手段から排除したのが大きかったように思う。ルーブルの価値は半分以下に下がり、外貨建てによる決済不能いわゆるデフォルトが、今後利払いの度に困窮するはず。4月には元本支払いが待っている。欧米は今後電子マネーによる決済にも制限をかける模様だ。



 しかし「経済制裁」はそれを受けるロシアのみならず、制裁する欧米日側にとっても厳しい側面がある。いわゆる「両刃の刃だ。経済の減速、株価と通貨の下落、商品流通の停滞などを伴うためだ。円は弱いが「戦時のドル買い」でドルは強い。このまま行けばロシア経済は5月には破綻すると言われる。ロシアの中国への支払いは「人民元」になるかも。停戦の行方と戦争終結後の世界の変化が懸念される。



 行き詰まったロシアが、生物化学兵器や核兵器を使うのを懸念する。プーチンはウクライナのみならず国際関係を破壊した。機能不全の国連の存在意義を問いたい。国際司法裁判所が出した裁決を、ロシアは無視すると表明。中国も東シナ海や南シナ海を自国の領海と宣言して同裁判所から不法と裁定されたが無視した。世界には国際法を守らない「ならず者国家」が存在することを忘れてはならない。<続く>






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Last updated  2022.03.20 07:12:37
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