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「最強日本女子」を徹底的にコケにするような度重なるルール改正と偏向採点。
これを打破すべく、日本スケ連が動き出した・・・かのような動きが 新聞 で伝えられ、浅田選手のファンには、「ようやく・・・」と好意的に受け止められているようだ。
フィギュアスケートの女子ショートプログラム(SP)で必須となっているダブルアクセル(2回転半)をトリプルアクセル(3回転半)でも認められるようにするルール変更を、日本スケート連盟が6月の国際スケート連盟(ISU)総会(バルセロナ)で提案することが29日までに分かった。現在、女子でただ一人トリプルアクセルを跳ぶ浅田真央(中京大)に有利に働く可能性がある。
日本連盟の吉岡伸彦フィギュア強化部長は「(3回転半が)できる選手がいる以上、認めるべきだ。(得点が上がる)可能性が広がる」と話した。男子SPでは、アクセルジャンプは「2回転半か3回転半」と選択が可能になっている。
世界選手権で2年ぶりに優勝した浅田は、SPでは連続ジャンプの中でトリプルアクセルを跳んだ。ルール変更が認められれば、ジャンプの選択の幅が広がることになる。
この変更が浅田選手にとってどう有利になるのかわからない方のために、一応説明しておくと、現在浅田選手のショートプログラムは、
(1)トリプルアクセル+ダブルトゥループ
(2)ステップからのトリプルフリップ
(3)ダブルアクセル
で基礎点の合計は、18.5点になっている。この(3)の部分を「ダブルアクセルもしくはトリプルアクセル」と男子並みにすると、浅田選手のジャンプの選択肢は以下のように広がってくる。
(1)トリプルフリップ+トリプルループ(もしくはトリプルトゥループ)
(2)ステップからのトリプルルッツ
(3)トリプルアクセル
もちろん、ジャンプの順番は任意。これによって基礎点は24.7点もしくは23.7点に上がる。
浅田選手には非常に有利、に見えるかもしれない。日本スケート連盟が提出するという改正案がこれだけなのかどうかよくわからないのだが、もしこの改正案を最重要と考えて活動するというなら、実にヘタクソな戦略だ。
ルール改正を提案するときには、2つの視点が必要だ。
(1)その改正が、選手全体のためになり、フィギュアの技術向上のきっかけとなりうるか。
(2)自国の選手に不利にならないか。
(1)はルール策定をするうえで、なにより大切なものだ。実際には(2)の思惑と絡み合っているが、「すべての選手のため」「フィギュアの将来のため」という理論武装ができなければ、単に「自国の選手を有利にしようとして、ルールを改正しようとしている」と、攻撃されることになる。
ショートに2Aだけでなく3Aも、という改正案は(1)の面で少し弱いように思う。高難度ジャンプへの挑戦を奨励し、男子並みのレベルに揃えるという意味では、筋はとおっているのだが、世界の女子を眺めると、3Aを安定して跳べるのは浅田選手だけ。
浅田選手の3Aが安定してきたこの時期に、日本がこの改正案を出したら、「浅田選手に勝たせようとしてルール改正を提案しているエゴイスチックな国」だと(特に韓国あたりから)クレームがつきそうだ。
こうした「攻撃」に日本人は非常に弱く、理論武装して粘る根性と精神力に欠けている。反論されると、すぐにひるんでしまう。
現状、ショートでキム選手と浅田選手がめいっぱいの演技をして、それで点差が5点だ7点だとつくから、基礎点をあげて対抗しようとしているのなら、それは過去に書いたように愚かなことだ。浅田選手が基礎点を上げれば上げるほど、キム選手の加点と演技構成点はインフレする。それが過去の流れではないか。
だから、たとえ基礎点が5~6点上がったとしても、加点および演技構成点で操作可能な今の採点の流れから言うと、すべてのジャンプを降りたとしても、加点がもらえない、演技構成点が低く抑えられるなどのもろもろの「採点操作テクニック」で、キム選手を含む他の選手に差をつけることができなくなる可能性のほうが高い。
それは、男子のショートの点の出具合を見れば予想がつくことだ。高橋選手にあるのは3F+3Tだけ(しかも、最近はセカンドジャンプの流れがやたら止まって・・・ゴホゴホゴホ)。少し前までは、ショートで4T+3Tを決めてくる選手の上にはいけなかった。ところがオリンピックでああした採点(他のエレメンツに対して、質のよいものを積極的に評価する)がなされ、世界選手権では、ショートで4+3を決めたジュベールの上に来た。
ジャンプの加点も難しいジャンプになればなるほど付きにくくなり、失敗したときの減点割合も大きく設定されているから、ジャンパーにとってはプレッシャーも大きく、それだけのリスクをしょって、世界でもほとんど跳べる人のいないコンビネーションを跳んでも報われなくなっている。
そうした状況のなかで、高難度ジャンプを入れられるようにルール改正することに、どれほどの意味があるのか。ルールの根源的な問題点はそこにはないし、実際になされる採点上の問題に目をつぶっている限り、また加点や演技構成点をいじって、「それでも勝てないように操作」されることは十分にありえる。
そして、ちょっと詳しいファンなら「おかしい」とわかる点を鵜呑みにしたメディアが、選手の欠点をクローズアップして叩き、選手を傷つけ、自信を失わせるという悪循環に陥る。
もう1つ、これが一番重要なことだが、ショートでの単独3Aの選択肢が浅田選手にとっても、必ずしも「有利には働かない」かもしれないということ。
浅田選手が個人的にかかえる課題は何だろう? ルッツのエッジとセカンドにもってくる3回転ジャンプの回転不足だ。
もしこの2つの問題がなければ、そもそも今でさえ、ショートにトリプルアクセルを入れる構成にする必要はない。
トリプルフリップ+トリプルループ
トリプルルッツ
ダブルアクセル
こちらのほうが、基礎点は20点で、今の浅田選手のショートより点数が高いのだ。
今季セカンドに3回転を入れず、ルッツも入れなかった浅田選手は、これからこの課題に取り組むことになる。どちらも簡単なようでいて、簡単ではない。
もっと言ってしまえば、今季浅田選手がショートで安定して跳べたジャンプはダブルアクセルだけなのだ。
そこに「ダブルアクセルではなくトリプルアクセルでもいい」というオプションが加われば、浅田選手はまちがいなくトリプルアクセルに挑戦するだろう。
決まれば難なく決めているように見える浅田選手の3Aだが、そもそもフィギュア女子の歴史においても、この大技を安定して跳べた選手はほとんどいないのだ。これから20歳を超えてくる浅田選手がいつまで3Aを安定して跳べるかわからない。
トリノ五輪の直前に浅田選手が颯爽とシニアにデビューしたとき、Mizumizuは、あのコマのように速く細い回転軸で回る浅田選手のジャンプのタイプを見て、「4年後、身体が大きくなったら跳べなくなるのでは」と思っていたのだ。
それを浅田選手は徹底したウエイトコントロールと訓練で乗り越えた。あの驚異的にすらりとしたスタイルを保っているからこそ、あれだけ背が伸びても、トリプルアクセルを跳べている。本人の栄養管理もあるだろうけれど、体形というのは自分で選べない。あの妖精のようなスタイルも、浅田真央が神様から与えられた贈り物だ。しかも、3Aという大技をジュニアのころからやり続けて大きなケガもない。これだけで奇跡と言っていい。
それでもトリプルアクセルをコンスタントに試合で決めるのが容易なことでなかったのは、今シーズン初めの大不調を見ればわかるだろうと思う。
安定して跳べているダブルアクセルを捨ててトリプルアクセルを入れ、さらにルッツのエッジ矯正をして、セカンドにもってくる3回転の回転不足を克服するなど、またも狂気の沙汰だ。
なぜそんな「十字架」を浅田真央に背負わせる必要があるのか。今回トリプルアクセル+ダブルトゥループを2つとも、ダブルアクセル+ダブルトゥループの基礎点にされながらも、世界一の点数を出した選手だ。
浅田選手の強みは、今はジャンプではないのだ。あまりに美しいポジションのスパイラルやスピン。動的で華麗で迫力あふれるステップ。そして、誰より過酷なスケジュールであっても、長いフリーを滑り切ってしまう驚異のスタミナなのだ。
ジャンプはむしろ、年齢とともにややほころびが見えてきている。浅田選手はずっとショートが弱い。連続ジャンプを連続ジャンプにできず、リカバリーもできないというパターンが多い。これが浅田真央の大きな欠点だ。それを克服することが一番大切なことで、ショートでまたもリスクの高い大技に挑戦することには到底賛成できない。
むしろ、ショートは「失敗しない」だけでいい。なんといっても浅田選手は、ショートでの自爆が多すぎる。そしてフリーがあれほど強いのだから、トリプルアクセルも1つでいいのだ。そのかわりルッツは絶対に入れる。たとえワンシーズンを棒に振っても。
今季ルッツを外すという選択は、浅田選手の現状と不可解な判定(特定の選手には甘く、特定の選手には辛い・・・ように見える)を考えると、結果として十分に理性的なものであり、かつ最後に世界女王奪還という素晴らしい果実を手にしたのだから何も言うことはないが、やはりルッツを入れずにトリプルアクセルを2つというのは、順番が間違っているし、それゆえリスクも高くなる。
日本のファンは基本的に賢い。浅田選手の本当の強みも弱点も、メディアの「洗脳報道」にもかかわらず、きちんと理解していると思う。
派手な大技だけに注目するのではなく、足元の小さな欠点の克服を。それがさらに浅田真央を輝かしいスケーターにすると思う。
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